説明

酒造用精米機

【課題】簡単な構造で冷却効果が得られ、結露の発生も防止でき特別な制御も不要になる酒造用精米機を提供する。
【解決手段】米粒を循環させながら繰り返し研削して精米する酒造用精米機1であって、精米タンク2と、精米タンク2から供給された米粒を研削する精白ロール11を備え、精米タンク2に冷却フィン20が取り付けられている。この構成によれば、冷却フィン20を用いた簡単な構造で冷却効果が得られ、あわせて結露の発生を防止でき特別な制御も不要になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粒を循環させながら繰り返し研削して精米する酒造用精米機に関する。
【背景技術】
【0002】
酒造用精米機においては、米粒を循環させながら繰り返し研削する。これは、酒造用の米粒は、精米歩合を高めたものとする必要があるためである。米粒が装置内を循環する毎に、米粒が繰り返し研削され精米歩合が高まっていく。米粒の研削時には米粒同士の摩擦により、米粒の温度が上昇する。米粒の温度が40℃程度以上の高温になると、米粒の胴割れが生じ米粒の品質低下が問題になる。
【0003】
一方、米粒の温度を低下させるための冷却手段を備えた酒造用精米機が、各種提案されている。特許文献1、2には、米粒の循環経路に配置されたタンクに、冷却管を設けた酒造用精米機が記載されている。これらの酒造用精米機においては、冷却管内に冷却用流体を流動させて、タンク内の米粒が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭35−5012号公報
【特許文献2】特開平4−200752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のような冷却管を用いた冷却方法では、冷却用流体を冷却するための冷却装置や冷却用流体を循環させるためのポンプが必要になり、装置自体が高価になるとともに、ランニングコストも高くなる。また、冷却管を用いた場合には、冷却管が結露し冷却管に糠が付着する。この状態が維持されると、腐敗した糠が米粒に混入するといった問題があった。このため、特許文献2の酒造用精米機では、制御手段を設け冷却管内の流体の温度を、冷却管の表面に結露を生じさせない温度に調節するようにしている。このように、冷却管を用いた冷却方法では、コスト負担が大きくなる上、結露対策が必要であった。
【0006】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、簡単な構造で冷却効果が得られ、結露の発生も防止でき特別な制御も不要になる酒造用精米機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の酒造用精米機は、米粒を循環させながら繰り返し研削して精米する酒造用精米機であって、精米タンクと、前記精米タンクから供給された米粒を研削する精白ロールを備え、前記精米タンクに冷却フィンが取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、冷却フィンの放熱効果で精米タンク内の米粒を冷却でき、研削による米粒の温度上昇幅を抑えることができ、米粒の胴割れによる品質低下を防止することができる。冷却フィンで米粒の冷却を実現できるので、簡単な構造で冷却効果が得られ、結露の発生も防止でき特別な制御も不要になる。
【0009】
前記本発明においては、前記精米タンクの内周面に、米粒との接触面積を大きくするための突出部を設けていることが好ましい。この構成によれば、突出部に米粒が接触することにより、精米タンクと米粒との接触面積を大きくすることができ、冷却効果をより高めることができる。
【0010】
前記冷却フィンは、縦方向に延在して取り付けられていることが好ましい。この構成によれば、個々の冷却フィンは、直線的に伸びた帯状部材とすることができる。このことにより、冷却フィンは平板状部材から効率良く板取りすることができる。また、冷却フィンを精米タンクに溶接する際には、直線的に溶接ができ溶接作業が容易になる。
【0011】
前記冷却フィンに向けて送風する送風機をさらに備えていることが好ましい。この構成によれば、冷却フィンによる放熱効果をより高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、冷却フィンの放熱効果で精米タンク内の米粒を冷却でき、簡単な構造で冷却効果が得られ、結露の発生も防止でき特別な制御も不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る酒造用精米機の概略構成図。
【図2】本発明の一実施形態に係る冷却フィン構造を示す平面図。
【図3】本発明の別の実施形態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る酒造用精米機1の概略構成図を示している。最初に図1を参照しながら、酒造用精米機1の概略構成について説明する。酒造用精米機1は、米粒を蓄積する精米タンク2、精米タンク2から落下した米粒を精白する精白室3、精白室3で精白された米粒を下方に導く万石4、万石4からの米粒を精米タンク2に向けて搬送する昇降機5を主要部としている。精米タンク2には、冷却フィン20が取り付けられており、精米タンク2内の米粒が冷却されるようにしている。この詳細については後に説明する。
【0015】
酒造用精米機1の運転開始時には、昇降機5に取り付けられた供給口6から精米対象の米粒が昇降機5内に供給される。昇降機5はベルト9を備えており、ベルト9には多数のバケット7が取り付けられている。ベルト9の下降と一体に、バケット7が昇降機5の下部に順次送られてくる。バケット7は開口8を備えており、バケット7はベルト9と一体に移動しつつ、米粒を開口8側からすくい上げる。このことにより、バケット7内に米粒が充填される。
【0016】
米粒が充填されたバケット7は、ベルト9の移動と一体に上昇する。ベルト9の上部において、バケット7の開口8から米粒が昇降機5に取り付けられた供給筒10に向けて投入される。供給筒10に投入された米粒は精米タンク2に供給され、精米タンク2内に米粒が一時的に蓄積される。
【0017】
精米タンク2内に蓄積された米粒は、自重により精白室3に向けて落下する(矢印a)。精白室3内には、竪配置された精白ロール11及び外筒12が配置されている。精白ロール11は外筒12内に包み込まれように配置されている。精白ロール11は回転軸14に取り付けられている。回転軸14にはプーリー15が固定されており、プーリー15に掛け合わされたベルト(図示せず)による駆動により、プーリー15及び回転軸14が回転し、これと一体に精白ロール11が回転する。
【0018】
精白ロール11の外周面と外筒12の内周面との間には、隙間13が形成されている。この隙間13に、精米タンク2から落下した米粒が投入される。精白ロール11の回転により、米粒は隙間13において、精白ロール11により研削される。
【0019】
隙間13を通過し研削された米粒は、排出口16を通過して精白室3から排出される。排出口16からの米粒は、排出筒17を経て万石4に供給される。万石4は、昇降機5の下部に向けて傾斜して配置されている。このため、万石4上の米粒は、万石4に沿って下方に運ばれて行く(矢印b)。万石4の底部は網状になっており、糠は網状の底部から落下する。落下した糠は、万石4の下部に設置された回収筒18を経て回収される。万石4によって下方に運ばれた米粒は、昇降機5に取り付けられた投入筒19を経て、昇降機5の下部に移送される。
【0020】
前記の一連の工程を経て、米粒は酒造用精米機1内を1循環し、米粒の1回分の研削が終了する。2回目の循環移動の経路は、1回目の循環移動の経路と同じであり、2回目の循環移動により、米粒に対し2回目の研削が実行される。
【0021】
以後、循環移動を繰り返す毎に、米粒の研削回数が増して行く。精白ロール11による研削の効果で、玄米の糠が除去され玄米が白米になる。研削回数が増すにつれて、白米の質量が減少し精米歩合が高まって行く。精米歩合は、白米のその玄米に対する質量の割合のことである。精米完了時における白米の質量が、精米当初に投入された玄米の質量の半分になっていれば、精米歩合は50%となる。
【0022】
ここで、飯米用の米粒の精米では、玄米を研削して白米にするが、白米にした後の研削量は少なくても足りる。これに対し、酒造用の米粒は、蛋白質や脂肪を減らし、米粒の中心部にある澱粉質の割合を高めたものとする必要がある。このため、酒造用の米粒は飯米用の米粒に比べ、精米歩合を高める必要がある。具体的には、飯米用の米粒の精米歩合は90%程度であるが、酒造用の米粒では30〜70%程度であり、30%未満とする場合もある。
【0023】
したがって、酒造用精米機1では、目標とする精米歩合に達するまで、研削が繰り返えされる。これに伴い、米粒の温度も上昇していく。米粒の冷却手段を備えていない精米機においては、研削が繰り返されると、外気温に対する米粒の温度上昇幅は15℃程度になる。したがって、外気温が25℃以上になると米粒の温度は40℃以上になる。米粒の温度が40℃程度以上になると、精米中に胴割米が生じ易くなり、仕上り白米に胴割米が多く混入する。このため、精米中の米粒を冷却して、精米中における胴割米の発生を防止することが望ましい。
【0024】
一方、前記の通り、胴割米は米粒の温度が40℃程度以上になると生じ易くなる。このため、胴割米の発生を防止するには、大幅な温度低下をさせる冷却は必ずしも必要ではなく、米粒の温度を少なくとも40℃程度以下に抑えればよい。また、外気温が25℃を下回る場合には、あえて冷却をしなくても、米粒温度は40℃程度以下に抑えられる。本願発明者は、この点に着眼し、下記の通り冷却管を用いる冷却方式の問題を解決しつつ、胴割米の発生を防止できる程度の冷却ができる冷却フィン20を用いた冷却仕様を導き出した。
【0025】
本実施形態では、図1に示したように精米タンク2には、冷却フィン20が取り付けられている。このことにより、精米タンク2内の米粒が冷却されるようにしている。図2は、図1の精米タンク2を上側から(矢印A方向)見た平面図である。精米タンク2の外周面2bには、冷却フィン20が取り付けられている。
【0026】
冷却フィン20は、金属で形成することが好ましく例えば薄板状の鉄材で形成し、これを精米タンク2に溶接すればよい。冷却フィン20は、放熱効果を高めるために、アルミニウム等の熱伝導性の良好な材料で形成することが好ましい。冷却フィン20が溶接困難な材料である場合は、冷却フィン20を機械的に固定すればよい。例えば、冷却フィン20の根元部にフランジ部を設け、このフランジ部と精米タンク2の外周面とをねじ等により固定すればよい。
【0027】
また、図2は複数の冷却フィン20を個別に精米タンク2の外周面2bに固定した例であるが、複数の冷却フィン20が一体となった部材を、精米タンク2を包み込むように取付けてもよい。例えば、冷却フィン20をシート部材かから切り起こして形成し、このシート部材を精米タンク2の外周面2bに巻き付けて取り付ければよい。
【0028】
図1に示したように、本実施形態では、冷却フィン20は縦方向に延在して取り付けられている。この構成では、個々の冷却フィン20は、直線的に伸びた帯状部材とすることができる。この場合、冷却フィン20は平板状部材から効率良く板取りすることができる。また、冷却フィン20を精米タンク2に溶接する際には、直線的に溶接ができ溶接作業が容易になる。
【0029】
図2において、米粒は精米タンク2の内周面2aに接して充満する。このため、米粒の熱は精米タンク2の内周面2aから外周面2bに伝達され、外周面2bから放熱される。外周面2bは外気に接しているとともに、冷却フィン20により放熱効果が高められている。このため、米粒が外気温よりも高くなっていると、冷却フィン20による放熱効果により、精米タンク2内の米粒の冷却が促進される。
【0030】
本実施形態では、精米タンク2に取り付けられた冷却フィン20の放熱効果により、米粒は精米タンク2に供給される毎に冷却される。したがって、精白室3で温度上昇した米粒は、精米タンク2に戻った際に冷却され、この冷却された米粒が精白室3に供給される。すなわち、米粒が酒造用精米機1内を1循環する毎に、米粒は精米タンク2内で冷却され、米粒の温度上昇幅が抑えられる。
【0031】
精米タンク2は冷却フィン20が取り付けられているので、送風機を併用することにより、冷却フィン20の放熱効果をより高めることができる。送風機は、酒造用精米機1とは別個に設けたものでもよく、酒造用精米機1の構成部品として設けたものでもよい。送風機の運転は特に外気温の高いときに有効である。このため、送風機は常時運転してもよいが、外気温に応じて運転してもよい。
【0032】
本実施形態では冷却管を用いる冷却方式のように、冷却用流体を冷却するための冷却装置や冷却用流体を循環させるためのポンプは不要になる。このため、本実施形態では、送風機を用いた場合であっても、構造が簡単になるとともに、ランニングコストは低く抑えられる。
【0033】
また、冷却フィン20による冷却は、精米タンク2を過度に冷却することはないので、精米タンク2に結露を生じることは防止される。このため、結露防止のための温度制御も不要になる。精米タンク2における結露が防止されることにより、精米タンク2に糠が付着することが防止され、腐敗した糠が米粒に混入することも防止される。
【0034】
図3は、本発明の別の実施形態を示す平面図である。図3の構成は、図2の構成に突出部21を追加したものである。図3では、精米タンク2の外周面2bに冷却フィン20が取り付けられているともに、精米タンク2の内周面2aに突出部21が設けられている。突出部21の材料、精米タンク2への取り付け方法は、冷却フィン20と同様である。
【0035】
図3において、突出部21は精米タンク2の内周面2aから、精米タンク2の中心に向かって突出している。精米タンク2の内部に米粒が充填されると、冷却突出部21に米粒が接触する。すなわち、精米タンク2の内周面2a側において、精米タンク2と米粒との接触面積が大きくなる。このことにより、米粒から精米タンク2への熱の伝達効果が高まり、米粒の冷却効果も高まることになる。
【0036】
前記実施形態においては、冷却フィン20は、縦方向に延在して取り付けた例で説明したが、この例に限るものではなく、精米タンク2の周方向に沿って取り付けてもよい。突出部21についても同様である。また、図1に示した酒造用精米機1の全体構成は一例であり、循環式の酒造用精米機であれば他の構成であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 酒造用精米機
2 精米タンク
2a 精米タンクの内周面
2b 精米タンクの外周面
3 精白室
5 昇降機
11 精白ロール
20 冷却フィン
21 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粒を循環させながら繰り返し研削して精米する酒造用精米機であって、
精米タンクと、
前記精米タンクから供給された米粒を研削する精白ロールを備え、
前記精米タンクに冷却フィンが取り付けられていることを特徴とする酒造用精米機。
【請求項2】
前記精米タンクの内周面に、米粒との接触面積を大きくするための突出部を設けている請求項1に記載の酒造用精米機。
【請求項3】
前記冷却フィンは、縦方向に延在して取り付けられている請求項1又は2に記載の酒造用精米機。
【請求項4】
前記冷却フィンに向けて送風する送風機をさらに備えている請求項1から3のいずれかに記載の酒造用精米機。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−91038(P2013−91038A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235167(P2011−235167)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(592154721)新中野工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】