酢酸菌の細胞質膜の酵素系を利用したホルムアルデヒドの除去方法
【課題】
酢酸菌の細胞質膜の酵素系を利用した、ホルムアルデヒドの新規な除去方法の確立が課題である。
【解決手段】
酢酸菌の細胞質膜に存在するホルムアルデヒド酸化系とギ酸酸化系の酵素を用いることにより、新規なホルムアルデヒドの除去方法が確立できた。
酢酸菌の細胞質膜の酵素系を利用した、ホルムアルデヒドの新規な除去方法の確立が課題である。
【解決手段】
酢酸菌の細胞質膜に存在するホルムアルデヒド酸化系とギ酸酸化系の酵素を用いることにより、新規なホルムアルデヒドの除去方法が確立できた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古来より食酢製造に用いられている酢酸菌の酵素を利用して、有害物質であるホルムアルデヒドを除去する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルムアルデヒドの人体への危険性は、1ppm ほどの希薄なホルムアルデヒドガスでさえ呼吸器などの粘膜を刺激し、呼吸困難に陥る可能性があると指摘されている(非特許文献1)。また、動物実験において発がん性、催奇形性があることが米国で報告されている(非特許文献2)。このため、日本では厚生労働省により毒劇物に指定され、屋内濃度を規制されている(非特許文献3)。
【0003】
2003年に、トラフグ養殖において生け簀中の寄生虫除去にホルマリンが使われ、使用後に海中に放出されていたことが確認された(非特許文献4および5)。トラフグの養殖が盛んになり養殖密度が高くなるにつれ、生け簀内の潮の流れが悪くなるために病気が発生するようになってくる。その中でもエラムシ(ヘテロボツリューム)の発生頻度が高くなる。寄生虫駆除薬として過酸化水素を主成分にする水産用医薬品が販売されているが、単価が高い一方で効能が低いために、業者間では毒劇法で劇物に指定されているホルマリンの使用が主流となっている。消毒シートの中にホルマリンを投入し、海水と混ぜ合わせた後にトラフグを追い込み、一定時間シートの中でトラフグを回遊させ、生け簀に戻す。トラフグを生け簀に戻した後、シート中のホルマリンは海中に放出される。ホルマリン消毒は短い期間に数回行なわれるため、生け簀一基で年間約1トンものホルマリンが使用されている(フグではえらに3.4ppm、筋肉に2.5ppm、肝臓には14.5ppm含まれ、天然のたらで10ppm、イセエビでは40〜50ppm含まれていた)。
【0004】
また、トラフグ養殖場近くの真珠養殖場では、アコヤ貝が突然海中で大量斃死する事件が相次いだ(非特許文献6)。養殖業者が斃死した貝を調査したところ、外套膜が縮み内側真珠層の石灰等の異常が確認され、さらに生きている貝についても同じような異常が発見された。同時に海底を調査すると、白い沈殿物で海底が覆われていた。白い沈殿は、成分などの詳しいことはまだ解明されていない。水産庁が中心となり調査に乗り出したが、原因不明のまま被害は拡大していった。以上のことから、ホルムアルデヒドが使用された周囲の海洋環境のホルムアルデヒド汚染が懸念されるようになった。
【0005】
現在、行なわれているホルマリンの処理方法として、活性汚泥法による微生物処理、有機廃液処理と同様の噴霧燃焼処理、活性炭への吸着処理、次亜塩素酸を加えた酸化分解処理、酸化チタンを使用した光触媒法などが挙げられる(非特許文献7)。
【非特許文献1】Control Products Regulations SOR/88-64, Canada Gazette, Part II (1988)
【非特許文献2】R.Schoental and S.Gbband, Brit. J. Cancer, 26, 504 (1972)
【非特許文献3】毒物および劇物取締法(毒劇法)法81、指97
【非特許文献4】http://www.botanical.jp/library/news/060/index.shtml
【非特許文献5】http://www.pearl.ne.jp/umi/fugu.htm
【非特許文献6】http://cat.zero.ad.jp/~zan811839/EarthTOP/Earth8/Earth8.htm
【非特許文献7】毒物及び劇物の廃棄の方法に関する基準について 昭和50年11月26日付薬発第1090号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、古来より食酢製造に用いられている酢酸菌の酵素を利用して、有害物質であるホルムアルデヒドを除去する、新規な方法の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
酢酸菌の細胞質膜には、ホルムアルデヒド酸化系とギ酸酸化系が存在している。ホルムアルデヒド酸化系は、ホルムアルデヒド脱水素酵素と呼吸鎖よりなっており、酸素存在下にホルムアルデヒドを酸化してギ酸を生成する。また、ギ酸酸化系はギ酸脱水素酵素と呼吸鎖よりなり、ギ酸を酸化して炭酸ガスと水を生成する。これら二つの酸化系の働きにより、ホルムアルデヒドは最終的に炭酸ガスと水という無害物質になることに着目し、本発明のホルムアルデヒドを除去する新規な方法の開発へと至った。
【0008】
ホルムアルデヒド酸化系とギ酸酸化系は酢酸菌の細胞質膜に存在しているため、菌体より細胞質膜画分を調製して使用することができる。または酢酸菌の菌体自身を使用することでも、ホルムアルデヒドを炭酸ガスと水として除去することが可能である。
【0009】
これまで報告されているホルムアルデヒドの除去に用いられている酵素は、NAD(P)のような補酵素を反応に必要とするホルムアルデヒド脱水素酵素と、反応生成物としてギ酸と過酸化水素を生成するホルムアルデヒドオキシダーゼの二つだけである。
【0010】
酢酸菌は食酢醸造をはじめとする発酵産業に、古くから利用されてきた。酢酸菌の発酵は、いずれも酸素を消費しながら基質の不完全酸化で中間代謝産物を大量に蓄積するので、酸化発酵と呼ばれている。この酸化発酵に関係するのは細胞質内の酵素ではなく、細胞質膜外表層に存在するアルコール脱水素酵素やグルコース脱水素酵素などの多くの各種脱水素酵素で、同じく細胞質膜内に存在する電子伝達系と末端酸化酵素とともに酸化系を形成している。これらの酸化系によって、各種の基質は最終的に酸素によって酸化されることになる。
【0011】
近年、本発明者らは、Acetobacter sp. SKU 14 から、ホルムアルデヒドをギ酸へと酸化する反応を触媒するホルムアルデヒド脱水素酵素を精製し、酵素について研究を行った結果、アルコールに対して高い基質特異性を持っていることがわかってきた。さらに、同菌株からギ酸を二酸化炭素へと酸化する反応を触媒するギ酸脱水素酵素についても研究を行なった。
【0012】
本発明では、酢酸菌の代表菌株として Gluconobacter suboxydans IFO 12528 と Acetobacter sp. SKU 14 の2株を用いて、細胞質膜に局在するホルムアルデヒド酸化系とギ酸酸化系を利用するホルムアルデヒドの分解について検討を行なった。
【発明の効果】
【0013】
酢酸菌は、古来より食酢の製造に用いられている微生物であり、その安全性については問題なく、食品の分野でも使用することが可能である。本発明により、酢酸菌の細胞質膜に存在するホルムアルデヒド酸化系とギ酸酸化系の酵素を用いる、食品をはじめとする物質のホルムアルデヒドの新規な除去方法が確立できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
酢酸菌の細胞質膜に局在するホルムアルデヒド脱水素酵素がアルコール脱水素酵素と同一のものであることが、精製酵素の研究より明らかとなった。酢酸菌はエタノールより酢酸を生成する細菌の総称で、アルコール脱水素酵素はその酢酸生成に関係している酵素 である。すなわちホルムアルデヒドの分解には全ての酢酸菌が利用可能である。
【実施例】
【0015】
試薬は、すべて市販のものを使用した。使用菌株は、Gluconobacter suboxydans IFO 12528 と Acetobacter sp. SKU 14 の2株を用いた。
【0016】
Acetobacter sp. SKU 14 の培養については、モリブデンを添加した培地とモリブデン無添加の培地の2種類を用いた。モリブデン添加の培地は、グリセロール10g、酵母エキス3g、グルタミン酸ナトリウム2g、モリブデン20mg/Lという組成であった。また、モリブデン無添加の培地は、グリセロール10g、酵母エキス3g、グルタミン酸ナトリウム2gという組成であった。G. suboxydans IFO 12528 の培養には、グルコン酸ナトリウム20g、グルコース5g、グリセロール3g、酵母エキス3g、ポリペプトン2g/Lという組成の培地を用いた。
【0017】
Acetobacter sp. SKU 14 の培養については、培地100mlを300mlの三角フラスコに入れ、滅菌後、保存菌を植菌して30℃で2日間振とう培養を行なった。なお、菌株の保存には、グリセロール20g、グルコース5g、ポリペプトン10g、酵母エキス10g、ポテトエキス250ml/Lという組成の酢酸菌保存用ポテト培地に炭酸カルシウムを加えた保存用スラント培地を用いた。
【0018】
休止菌体の調製法は、培養菌体を集菌、洗菌後、10mM リン酸緩衝液(pH 6.0) に懸濁し、得られた懸濁液を休止菌体とした。
【0019】
膜画分の調製法は、以下の通り。培養菌体を集菌、洗菌後、10mM リン酸緩衝液(pH 6.0) に懸濁し、フレンチプレス(18,000 psi )により菌体を破砕した。破砕されなかった菌体を遠心分離(10,000xg、60min )により取り除き、その上清を無細胞抽出液とした。この無細胞抽出液をさらに超遠心分離(70,000xg、10min )し、得られた沈殿を膜画分とした。
【0020】
膜懸濁液の調製は、膜画分 0.1g を1mlの10mM リン酸緩衝液(pH 6.0) に懸濁後、ホモゲナイズしたものを膜懸濁液とした。
【0021】
酸素電極を用い、緩衝液1ml、膜懸濁液0.1 ml、基質0.1 ml/2.5 mlという反応組成にて 30℃で反応を行わせ、溶存酸素量を測定した。酸化活性は、溶存酸素量の減少速度より求めた。1分間あたり1μmol の酸素を減少させる酵素量を1unit とした。30℃での溶存酸素量は、0.237μmol O2/ml H2Oである。
【0022】
タンパク質の定量法は Lowry らの方法の改良法(J.R.Dulley & P.A.Grieve, Anal. Biochem., 64, 136 ,1975)に従い行なった。タンパク質標準液として、牛血清アルブミンを使用した。
【0023】
膜画分によるホルムアルデヒドの除去は、緩衝液0.5ml、1Mホルムアルデヒド溶液0.002〜0.2ml、膜懸濁液0.1〜0.4ml/mlという組成の反応液を30℃にて30分間、振とうすることで行なった。反応後、反応液1mlに50%トリクロロ酢酸を 0.5ml 添加し、反応を止めた。その後、遠心分離(20,000xg、20min )後の上清中のホルムアルデヒドを、Nash法(T.Nash, Biochem. J., 55, 416,1953)により定量した。Nash試薬の組成は、酢酸アンモニウム30g、1M酢酸溶液10ml、アセチルアセトン400μl、蒸留水190mlである。Nash試薬を、1mlの試料に対して2ml添加後、60℃で5分間放置し、412nmでの吸光度を測定した。
【0024】
図1に、酢酸菌の細胞質膜の模式図を示した。ホルムアルデヒドはホルムアルデヒド酸化系によってギ酸に酸化されること、末端酸化酵素が酸素と反応する部位であることを示している。
【0025】
ホルムアルデヒド酸化活性および脱水素酵素活性とギ酸酸化活性および脱水素酵素活性はモリブデンを培地に添加することで、活性の上昇が認められた。特にギ酸脱水素酵素活性は無添加の場合と比較して約3倍の活性上昇がみられた(図2)。
【0026】
ホルムアルデヒド脱水素酵素は細胞質膜に局在しているために、まず細胞質膜から界面活性剤(Tween 20)で可溶化し、その後二つのイオン交換カラムクロマトグラフィーで精製を行ったが、可溶化はpH 2.85で行なうことで収率よく高い比活性の可溶化酵素液が得られることを示している(図3)。
【0027】
細胞質膜画分より130倍に精製された酵素は3つのサブユニットよりなっていること、精製酵素は赤色を呈しており、スペクトルよりチトクロムcを含んでいること、また、ヘム染色によりそのチトクロムcは78と55kDaのサブユニットに含まれていることを明らかにした(図4)。また、図5には、ホルムアルデヒド脱水素酵素の至適pH、至適温度、pH安定性および温度安定性を示した。酵素の基質特異性に関しては、ホルムアルデヒド脱水素酵素として精製した本酵素は、アルデヒド類よりはアルコール類に対して高い活性を持ち、特にエタノールに対して最も高い活性を示した(図6)。図7には、Acetobacter sp. SKU 14株から精製した、ホルムアルデヒド脱水素酵素の諸性質を示した。
【0028】
図8には、ホルムアルデヒド分解測定法の実験方法を示した。図6に示したように、ホルムアルデヒドの分解に関わるホルムアルデヒド脱水素酵素を精製したところアルコールに高い活性があった。そこで、アルコール脱水素酵素活性の高いG. suboxydans IFO 12528も実験に用いた。G. suboxydans IFO 12528はAcetobacter sp. SKU 14と違いギ酸脱水素酵素活性はみられなかった。ホルムアルデヒド分解の至適pHを図9に、ホルムアルデヒド分解の至適温度を図10に示した。ホルムアルデヒド酸化活性の比活性(units/mg protein)とホルムアルデヒド分解活性を比較すると、ホルムアルデヒド分解活性が高いG. suboxydans IFO 12528の方が、高いホルムアルデヒド酸化活性を有することが示された(図11)。
【0029】
図12中の実線は、膜懸濁液中のタンパク量が2倍(=細胞質膜画分の量が2倍)時のホルムアルデヒドの分解を示しており、タンパク量が2倍になると分解に要する時間はおおよそ半分になっていること、また、試料中のホルムアルデヒド量が少ない場合は、分解に要する時間は短くなっていた。なお、このデータは、G. suboxydans IFO 12528の膜懸濁液を用いた場合の結果である。
【0030】
図13は、Acetobacter sp. SKU 14のホルムアルデヒド酸化活性(図13 A))とギ酸酸化活性(図13 B))を示す図であり、ホルムアルデヒド酸化活性の至適pH は4〜5であり、ギ酸酸化活性は5〜6であった。酢酸菌はほとんどの菌株がホルムアルデヒド脱水素酵素活性(=アルコール脱水素酵素活性)をもっているが、ギ酸脱水素酵素活性がみられない菌株もあり、 G. suboxydans IFO 12528はギ酸脱水素酵素活性がみられない。それで、このG. suboxydans IFO 12528に関しては、ホルムアルデヒド酸化活性のデータだけを示してある(図14)。また図15 A)にはG. suboxydans IFO 12528の生育速度と培地のpH変化を、図15 B)には、各生育時間における休止菌体でのホルムアルデヒド分解の経時変化を示した。
【0031】
Acetobacter sp. SKU 14の細胞質膜よりホルムアルデヒド脱水素酵素をpH 2.85にて界面活性剤にTween 20を用いて可溶化し、カラムクロマトグラフィーにより精製を行った。精製酵素の諸性質を調べたところ、至適pHは6、至適温度は40℃、pH 3〜8で安定な酵素であった。また基質特異性はホルムアルデヒド以外に多くのアルコールを酸化し、アルデヒドよりもアルコールに対して特異性があり、特にエタノールに対して高い活性を有していた。
【0032】
酢酸菌の代表菌株として G. suboxydans IFO 12528 と Acetobacter sp. SKU 14 の2株を用い、それらの細胞質膜を調製し、ホルムアルデヒドの分解実験を行った。分解の至適温度は前者が50℃、後者が40℃であった。また、分解の至適pHは、前者はpH4〜8、後者はpH4〜6で、G. suboxydans IFO 12528では広いpH領域で効率よく分解が行われた。また、使用する細胞質膜画分の量を変化させることで、ホルムアルデヒドの分解時間の調節することが可能であった。更に、菌体を用いてのホルムアルデヒド分解を試みた。細胞質膜と同様に分解が行われ、生育度の違いによる顕著な分解速度の違いは認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】酢酸菌の細胞質膜の模式図であり、ホルムアルデヒドはホルムアルデヒド酸化系によってギ酸に酸化されること、末端酸化酵素が酸素と反応する部位であることを示す図である。
【図2】培地にモリブデン、セレン、タングステンとEDTAを添加して、菌を培養後、ホルムアルデヒドとギ酸の酸化活性と脱水素酵素活性を測定したもので、モリブデンの添加により、両酵素活性が上昇することを示す図である。
【図3】ホルムアルデヒド脱水素酵素は細胞質膜に局在しているために、まず細胞質膜から界面活性剤(Tween 20)で可溶化し、その後二つのイオン交換カラムクロマトグラフィーで精製を行ったが、可溶化はpH 2.85で行うことで収率よく高い比活性の可溶化酵素液が得られることを示す図である。
【図4】細胞質膜画分より130倍に精製された酵素は3つのサブユニットよりなっていること、精製酵素は赤色を呈しており、スペクトルよりチトクロムcを含んでいること、また、ヘム染色によりそのチトクロムcは78と55kDaのサブユニットに含まれていることを明らかにした図である。
【図5】ホルムアルデヒド脱水素酵素の至適pH、至適温度、pH安定性および温度安定性を示す図である。
【図6】酵素の基質特異性を示す図であり、ホルムアルデヒド脱水素酵素として精製した本酵素は、アルデヒド類よりはアルコール類に対して高い活性を持ち、特にエタノールに対して最も高い活性を示した。
【図7】Acetobacter sp. SKU 14株から精製した、ホルムアルデヒド脱水素酵素の諸性質を示す図である。
【図8】図6に示したように、ホルムアルデヒドの分解に関わるホルムアルデヒド脱水素酵素を精製したところアルコールに高い活性があった。そこで、アルコール脱水素酵素活性の高いG. suboxydans IFO 12528も試験に用いた。G. suboxydans IFO 12528はAcetobacter sp. SKU 14と違いギ酸脱水素酵素活性はもっていない。
【図9】ホルムアルデヒド分解の至適pHを示す図である。
【図10】ホルムアルデヒド分解の至適温度を示す図である。
【図11】図中の数字は比活性(units/mg protein)を示しており、ホルムアルデヒド分解活性が高い方が、高いホルムアルデヒド酸化活性を有することを示す図である。
【図12】実線はタンパク量が2倍(=細胞質膜画分の量が2倍)時のホルムアルデヒドの分解を示しており、タンパク量が2倍になると分解に要する時間はおおよそ半分になっていること、また、試料中のホルムアルデヒド量が少ない場合は当然だが、分解に要する時間は短くなっていることを示す図である。
【図13】Acetobacter sp. SKU 14のホルムアルデヒド酸化活性とギ酸酸化活性の至適pH 範囲を示す図である。
【図14】酢酸菌はほとんどの菌株がホルムアルデヒド脱水素酵素活性(=アルコール脱水素酵素活性)をもっているが、ギ酸脱水素酵素活性はみられない菌株もあり、 G. suboxydans IFO 12528はギ酸脱水素酵素活性が認められない、それでこの菌株にはホルムアルデヒド酸化活性のデータだけを示してある。
【図15】G. suboxydans IFO 12528の各培養時間( 図15 A)の各測定点 )で菌体を集め、それを休止菌体としてホルムアルデヒドと反応させて、30、60、90、120分後のホルムアルデヒドの分解量を定量した結果を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、古来より食酢製造に用いられている酢酸菌の酵素を利用して、有害物質であるホルムアルデヒドを除去する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルムアルデヒドの人体への危険性は、1ppm ほどの希薄なホルムアルデヒドガスでさえ呼吸器などの粘膜を刺激し、呼吸困難に陥る可能性があると指摘されている(非特許文献1)。また、動物実験において発がん性、催奇形性があることが米国で報告されている(非特許文献2)。このため、日本では厚生労働省により毒劇物に指定され、屋内濃度を規制されている(非特許文献3)。
【0003】
2003年に、トラフグ養殖において生け簀中の寄生虫除去にホルマリンが使われ、使用後に海中に放出されていたことが確認された(非特許文献4および5)。トラフグの養殖が盛んになり養殖密度が高くなるにつれ、生け簀内の潮の流れが悪くなるために病気が発生するようになってくる。その中でもエラムシ(ヘテロボツリューム)の発生頻度が高くなる。寄生虫駆除薬として過酸化水素を主成分にする水産用医薬品が販売されているが、単価が高い一方で効能が低いために、業者間では毒劇法で劇物に指定されているホルマリンの使用が主流となっている。消毒シートの中にホルマリンを投入し、海水と混ぜ合わせた後にトラフグを追い込み、一定時間シートの中でトラフグを回遊させ、生け簀に戻す。トラフグを生け簀に戻した後、シート中のホルマリンは海中に放出される。ホルマリン消毒は短い期間に数回行なわれるため、生け簀一基で年間約1トンものホルマリンが使用されている(フグではえらに3.4ppm、筋肉に2.5ppm、肝臓には14.5ppm含まれ、天然のたらで10ppm、イセエビでは40〜50ppm含まれていた)。
【0004】
また、トラフグ養殖場近くの真珠養殖場では、アコヤ貝が突然海中で大量斃死する事件が相次いだ(非特許文献6)。養殖業者が斃死した貝を調査したところ、外套膜が縮み内側真珠層の石灰等の異常が確認され、さらに生きている貝についても同じような異常が発見された。同時に海底を調査すると、白い沈殿物で海底が覆われていた。白い沈殿は、成分などの詳しいことはまだ解明されていない。水産庁が中心となり調査に乗り出したが、原因不明のまま被害は拡大していった。以上のことから、ホルムアルデヒドが使用された周囲の海洋環境のホルムアルデヒド汚染が懸念されるようになった。
【0005】
現在、行なわれているホルマリンの処理方法として、活性汚泥法による微生物処理、有機廃液処理と同様の噴霧燃焼処理、活性炭への吸着処理、次亜塩素酸を加えた酸化分解処理、酸化チタンを使用した光触媒法などが挙げられる(非特許文献7)。
【非特許文献1】Control Products Regulations SOR/88-64, Canada Gazette, Part II (1988)
【非特許文献2】R.Schoental and S.Gbband, Brit. J. Cancer, 26, 504 (1972)
【非特許文献3】毒物および劇物取締法(毒劇法)法81、指97
【非特許文献4】http://www.botanical.jp/library/news/060/index.shtml
【非特許文献5】http://www.pearl.ne.jp/umi/fugu.htm
【非特許文献6】http://cat.zero.ad.jp/~zan811839/EarthTOP/Earth8/Earth8.htm
【非特許文献7】毒物及び劇物の廃棄の方法に関する基準について 昭和50年11月26日付薬発第1090号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、古来より食酢製造に用いられている酢酸菌の酵素を利用して、有害物質であるホルムアルデヒドを除去する、新規な方法の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
酢酸菌の細胞質膜には、ホルムアルデヒド酸化系とギ酸酸化系が存在している。ホルムアルデヒド酸化系は、ホルムアルデヒド脱水素酵素と呼吸鎖よりなっており、酸素存在下にホルムアルデヒドを酸化してギ酸を生成する。また、ギ酸酸化系はギ酸脱水素酵素と呼吸鎖よりなり、ギ酸を酸化して炭酸ガスと水を生成する。これら二つの酸化系の働きにより、ホルムアルデヒドは最終的に炭酸ガスと水という無害物質になることに着目し、本発明のホルムアルデヒドを除去する新規な方法の開発へと至った。
【0008】
ホルムアルデヒド酸化系とギ酸酸化系は酢酸菌の細胞質膜に存在しているため、菌体より細胞質膜画分を調製して使用することができる。または酢酸菌の菌体自身を使用することでも、ホルムアルデヒドを炭酸ガスと水として除去することが可能である。
【0009】
これまで報告されているホルムアルデヒドの除去に用いられている酵素は、NAD(P)のような補酵素を反応に必要とするホルムアルデヒド脱水素酵素と、反応生成物としてギ酸と過酸化水素を生成するホルムアルデヒドオキシダーゼの二つだけである。
【0010】
酢酸菌は食酢醸造をはじめとする発酵産業に、古くから利用されてきた。酢酸菌の発酵は、いずれも酸素を消費しながら基質の不完全酸化で中間代謝産物を大量に蓄積するので、酸化発酵と呼ばれている。この酸化発酵に関係するのは細胞質内の酵素ではなく、細胞質膜外表層に存在するアルコール脱水素酵素やグルコース脱水素酵素などの多くの各種脱水素酵素で、同じく細胞質膜内に存在する電子伝達系と末端酸化酵素とともに酸化系を形成している。これらの酸化系によって、各種の基質は最終的に酸素によって酸化されることになる。
【0011】
近年、本発明者らは、Acetobacter sp. SKU 14 から、ホルムアルデヒドをギ酸へと酸化する反応を触媒するホルムアルデヒド脱水素酵素を精製し、酵素について研究を行った結果、アルコールに対して高い基質特異性を持っていることがわかってきた。さらに、同菌株からギ酸を二酸化炭素へと酸化する反応を触媒するギ酸脱水素酵素についても研究を行なった。
【0012】
本発明では、酢酸菌の代表菌株として Gluconobacter suboxydans IFO 12528 と Acetobacter sp. SKU 14 の2株を用いて、細胞質膜に局在するホルムアルデヒド酸化系とギ酸酸化系を利用するホルムアルデヒドの分解について検討を行なった。
【発明の効果】
【0013】
酢酸菌は、古来より食酢の製造に用いられている微生物であり、その安全性については問題なく、食品の分野でも使用することが可能である。本発明により、酢酸菌の細胞質膜に存在するホルムアルデヒド酸化系とギ酸酸化系の酵素を用いる、食品をはじめとする物質のホルムアルデヒドの新規な除去方法が確立できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
酢酸菌の細胞質膜に局在するホルムアルデヒド脱水素酵素がアルコール脱水素酵素と同一のものであることが、精製酵素の研究より明らかとなった。酢酸菌はエタノールより酢酸を生成する細菌の総称で、アルコール脱水素酵素はその酢酸生成に関係している酵素 である。すなわちホルムアルデヒドの分解には全ての酢酸菌が利用可能である。
【実施例】
【0015】
試薬は、すべて市販のものを使用した。使用菌株は、Gluconobacter suboxydans IFO 12528 と Acetobacter sp. SKU 14 の2株を用いた。
【0016】
Acetobacter sp. SKU 14 の培養については、モリブデンを添加した培地とモリブデン無添加の培地の2種類を用いた。モリブデン添加の培地は、グリセロール10g、酵母エキス3g、グルタミン酸ナトリウム2g、モリブデン20mg/Lという組成であった。また、モリブデン無添加の培地は、グリセロール10g、酵母エキス3g、グルタミン酸ナトリウム2gという組成であった。G. suboxydans IFO 12528 の培養には、グルコン酸ナトリウム20g、グルコース5g、グリセロール3g、酵母エキス3g、ポリペプトン2g/Lという組成の培地を用いた。
【0017】
Acetobacter sp. SKU 14 の培養については、培地100mlを300mlの三角フラスコに入れ、滅菌後、保存菌を植菌して30℃で2日間振とう培養を行なった。なお、菌株の保存には、グリセロール20g、グルコース5g、ポリペプトン10g、酵母エキス10g、ポテトエキス250ml/Lという組成の酢酸菌保存用ポテト培地に炭酸カルシウムを加えた保存用スラント培地を用いた。
【0018】
休止菌体の調製法は、培養菌体を集菌、洗菌後、10mM リン酸緩衝液(pH 6.0) に懸濁し、得られた懸濁液を休止菌体とした。
【0019】
膜画分の調製法は、以下の通り。培養菌体を集菌、洗菌後、10mM リン酸緩衝液(pH 6.0) に懸濁し、フレンチプレス(18,000 psi )により菌体を破砕した。破砕されなかった菌体を遠心分離(10,000xg、60min )により取り除き、その上清を無細胞抽出液とした。この無細胞抽出液をさらに超遠心分離(70,000xg、10min )し、得られた沈殿を膜画分とした。
【0020】
膜懸濁液の調製は、膜画分 0.1g を1mlの10mM リン酸緩衝液(pH 6.0) に懸濁後、ホモゲナイズしたものを膜懸濁液とした。
【0021】
酸素電極を用い、緩衝液1ml、膜懸濁液0.1 ml、基質0.1 ml/2.5 mlという反応組成にて 30℃で反応を行わせ、溶存酸素量を測定した。酸化活性は、溶存酸素量の減少速度より求めた。1分間あたり1μmol の酸素を減少させる酵素量を1unit とした。30℃での溶存酸素量は、0.237μmol O2/ml H2Oである。
【0022】
タンパク質の定量法は Lowry らの方法の改良法(J.R.Dulley & P.A.Grieve, Anal. Biochem., 64, 136 ,1975)に従い行なった。タンパク質標準液として、牛血清アルブミンを使用した。
【0023】
膜画分によるホルムアルデヒドの除去は、緩衝液0.5ml、1Mホルムアルデヒド溶液0.002〜0.2ml、膜懸濁液0.1〜0.4ml/mlという組成の反応液を30℃にて30分間、振とうすることで行なった。反応後、反応液1mlに50%トリクロロ酢酸を 0.5ml 添加し、反応を止めた。その後、遠心分離(20,000xg、20min )後の上清中のホルムアルデヒドを、Nash法(T.Nash, Biochem. J., 55, 416,1953)により定量した。Nash試薬の組成は、酢酸アンモニウム30g、1M酢酸溶液10ml、アセチルアセトン400μl、蒸留水190mlである。Nash試薬を、1mlの試料に対して2ml添加後、60℃で5分間放置し、412nmでの吸光度を測定した。
【0024】
図1に、酢酸菌の細胞質膜の模式図を示した。ホルムアルデヒドはホルムアルデヒド酸化系によってギ酸に酸化されること、末端酸化酵素が酸素と反応する部位であることを示している。
【0025】
ホルムアルデヒド酸化活性および脱水素酵素活性とギ酸酸化活性および脱水素酵素活性はモリブデンを培地に添加することで、活性の上昇が認められた。特にギ酸脱水素酵素活性は無添加の場合と比較して約3倍の活性上昇がみられた(図2)。
【0026】
ホルムアルデヒド脱水素酵素は細胞質膜に局在しているために、まず細胞質膜から界面活性剤(Tween 20)で可溶化し、その後二つのイオン交換カラムクロマトグラフィーで精製を行ったが、可溶化はpH 2.85で行なうことで収率よく高い比活性の可溶化酵素液が得られることを示している(図3)。
【0027】
細胞質膜画分より130倍に精製された酵素は3つのサブユニットよりなっていること、精製酵素は赤色を呈しており、スペクトルよりチトクロムcを含んでいること、また、ヘム染色によりそのチトクロムcは78と55kDaのサブユニットに含まれていることを明らかにした(図4)。また、図5には、ホルムアルデヒド脱水素酵素の至適pH、至適温度、pH安定性および温度安定性を示した。酵素の基質特異性に関しては、ホルムアルデヒド脱水素酵素として精製した本酵素は、アルデヒド類よりはアルコール類に対して高い活性を持ち、特にエタノールに対して最も高い活性を示した(図6)。図7には、Acetobacter sp. SKU 14株から精製した、ホルムアルデヒド脱水素酵素の諸性質を示した。
【0028】
図8には、ホルムアルデヒド分解測定法の実験方法を示した。図6に示したように、ホルムアルデヒドの分解に関わるホルムアルデヒド脱水素酵素を精製したところアルコールに高い活性があった。そこで、アルコール脱水素酵素活性の高いG. suboxydans IFO 12528も実験に用いた。G. suboxydans IFO 12528はAcetobacter sp. SKU 14と違いギ酸脱水素酵素活性はみられなかった。ホルムアルデヒド分解の至適pHを図9に、ホルムアルデヒド分解の至適温度を図10に示した。ホルムアルデヒド酸化活性の比活性(units/mg protein)とホルムアルデヒド分解活性を比較すると、ホルムアルデヒド分解活性が高いG. suboxydans IFO 12528の方が、高いホルムアルデヒド酸化活性を有することが示された(図11)。
【0029】
図12中の実線は、膜懸濁液中のタンパク量が2倍(=細胞質膜画分の量が2倍)時のホルムアルデヒドの分解を示しており、タンパク量が2倍になると分解に要する時間はおおよそ半分になっていること、また、試料中のホルムアルデヒド量が少ない場合は、分解に要する時間は短くなっていた。なお、このデータは、G. suboxydans IFO 12528の膜懸濁液を用いた場合の結果である。
【0030】
図13は、Acetobacter sp. SKU 14のホルムアルデヒド酸化活性(図13 A))とギ酸酸化活性(図13 B))を示す図であり、ホルムアルデヒド酸化活性の至適pH は4〜5であり、ギ酸酸化活性は5〜6であった。酢酸菌はほとんどの菌株がホルムアルデヒド脱水素酵素活性(=アルコール脱水素酵素活性)をもっているが、ギ酸脱水素酵素活性がみられない菌株もあり、 G. suboxydans IFO 12528はギ酸脱水素酵素活性がみられない。それで、このG. suboxydans IFO 12528に関しては、ホルムアルデヒド酸化活性のデータだけを示してある(図14)。また図15 A)にはG. suboxydans IFO 12528の生育速度と培地のpH変化を、図15 B)には、各生育時間における休止菌体でのホルムアルデヒド分解の経時変化を示した。
【0031】
Acetobacter sp. SKU 14の細胞質膜よりホルムアルデヒド脱水素酵素をpH 2.85にて界面活性剤にTween 20を用いて可溶化し、カラムクロマトグラフィーにより精製を行った。精製酵素の諸性質を調べたところ、至適pHは6、至適温度は40℃、pH 3〜8で安定な酵素であった。また基質特異性はホルムアルデヒド以外に多くのアルコールを酸化し、アルデヒドよりもアルコールに対して特異性があり、特にエタノールに対して高い活性を有していた。
【0032】
酢酸菌の代表菌株として G. suboxydans IFO 12528 と Acetobacter sp. SKU 14 の2株を用い、それらの細胞質膜を調製し、ホルムアルデヒドの分解実験を行った。分解の至適温度は前者が50℃、後者が40℃であった。また、分解の至適pHは、前者はpH4〜8、後者はpH4〜6で、G. suboxydans IFO 12528では広いpH領域で効率よく分解が行われた。また、使用する細胞質膜画分の量を変化させることで、ホルムアルデヒドの分解時間の調節することが可能であった。更に、菌体を用いてのホルムアルデヒド分解を試みた。細胞質膜と同様に分解が行われ、生育度の違いによる顕著な分解速度の違いは認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】酢酸菌の細胞質膜の模式図であり、ホルムアルデヒドはホルムアルデヒド酸化系によってギ酸に酸化されること、末端酸化酵素が酸素と反応する部位であることを示す図である。
【図2】培地にモリブデン、セレン、タングステンとEDTAを添加して、菌を培養後、ホルムアルデヒドとギ酸の酸化活性と脱水素酵素活性を測定したもので、モリブデンの添加により、両酵素活性が上昇することを示す図である。
【図3】ホルムアルデヒド脱水素酵素は細胞質膜に局在しているために、まず細胞質膜から界面活性剤(Tween 20)で可溶化し、その後二つのイオン交換カラムクロマトグラフィーで精製を行ったが、可溶化はpH 2.85で行うことで収率よく高い比活性の可溶化酵素液が得られることを示す図である。
【図4】細胞質膜画分より130倍に精製された酵素は3つのサブユニットよりなっていること、精製酵素は赤色を呈しており、スペクトルよりチトクロムcを含んでいること、また、ヘム染色によりそのチトクロムcは78と55kDaのサブユニットに含まれていることを明らかにした図である。
【図5】ホルムアルデヒド脱水素酵素の至適pH、至適温度、pH安定性および温度安定性を示す図である。
【図6】酵素の基質特異性を示す図であり、ホルムアルデヒド脱水素酵素として精製した本酵素は、アルデヒド類よりはアルコール類に対して高い活性を持ち、特にエタノールに対して最も高い活性を示した。
【図7】Acetobacter sp. SKU 14株から精製した、ホルムアルデヒド脱水素酵素の諸性質を示す図である。
【図8】図6に示したように、ホルムアルデヒドの分解に関わるホルムアルデヒド脱水素酵素を精製したところアルコールに高い活性があった。そこで、アルコール脱水素酵素活性の高いG. suboxydans IFO 12528も試験に用いた。G. suboxydans IFO 12528はAcetobacter sp. SKU 14と違いギ酸脱水素酵素活性はもっていない。
【図9】ホルムアルデヒド分解の至適pHを示す図である。
【図10】ホルムアルデヒド分解の至適温度を示す図である。
【図11】図中の数字は比活性(units/mg protein)を示しており、ホルムアルデヒド分解活性が高い方が、高いホルムアルデヒド酸化活性を有することを示す図である。
【図12】実線はタンパク量が2倍(=細胞質膜画分の量が2倍)時のホルムアルデヒドの分解を示しており、タンパク量が2倍になると分解に要する時間はおおよそ半分になっていること、また、試料中のホルムアルデヒド量が少ない場合は当然だが、分解に要する時間は短くなっていることを示す図である。
【図13】Acetobacter sp. SKU 14のホルムアルデヒド酸化活性とギ酸酸化活性の至適pH 範囲を示す図である。
【図14】酢酸菌はほとんどの菌株がホルムアルデヒド脱水素酵素活性(=アルコール脱水素酵素活性)をもっているが、ギ酸脱水素酵素活性はみられない菌株もあり、 G. suboxydans IFO 12528はギ酸脱水素酵素活性が認められない、それでこの菌株にはホルムアルデヒド酸化活性のデータだけを示してある。
【図15】G. suboxydans IFO 12528の各培養時間( 図15 A)の各測定点 )で菌体を集め、それを休止菌体としてホルムアルデヒドと反応させて、30、60、90、120分後のホルムアルデヒドの分解量を定量した結果を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸菌の細胞質膜に存在する酵素系を利用したホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項2】
酢酸菌の細胞質膜に存在するホルムアルデヒド酸化系とギ酸酸化系を用い、ホルムアルデヒドを炭酸ガスと水に分解する、請求項1に記載のホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項3】
酢酸菌の細胞質膜に存在するホルムアルデヒド酸化系を用いる、請求項1に記載のホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項4】
ホルムアルデヒド酸化系はホルムアルデヒド脱水素酵素と呼吸鎖よりなっている、請求項1から3のいずれかに記載のホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項5】
ギ酸酸化系はギ酸脱水素酵素と呼吸鎖よりなっている、請求項1から3のいずれかに記載のホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項6】
酢酸菌の中でもアルコール脱水素酵素活性が高いGluconobacter suboxydans IFO 12528 または Acetobacter sp. SKU 14を用いる、請求項1から4のいずれかに記載のホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項7】
酢酸菌の菌体より細胞質膜画分を調製して使用する、請求項1から5のいずれかに記載のホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項8】
酢酸菌菌体を用いるホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項9】
酢酸菌のアルコール酸化系を用いるホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項10】
モリブデン添加培地により培養した酢酸菌の酵素系を利用したホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項1】
酢酸菌の細胞質膜に存在する酵素系を利用したホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項2】
酢酸菌の細胞質膜に存在するホルムアルデヒド酸化系とギ酸酸化系を用い、ホルムアルデヒドを炭酸ガスと水に分解する、請求項1に記載のホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項3】
酢酸菌の細胞質膜に存在するホルムアルデヒド酸化系を用いる、請求項1に記載のホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項4】
ホルムアルデヒド酸化系はホルムアルデヒド脱水素酵素と呼吸鎖よりなっている、請求項1から3のいずれかに記載のホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項5】
ギ酸酸化系はギ酸脱水素酵素と呼吸鎖よりなっている、請求項1から3のいずれかに記載のホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項6】
酢酸菌の中でもアルコール脱水素酵素活性が高いGluconobacter suboxydans IFO 12528 または Acetobacter sp. SKU 14を用いる、請求項1から4のいずれかに記載のホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項7】
酢酸菌の菌体より細胞質膜画分を調製して使用する、請求項1から5のいずれかに記載のホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項8】
酢酸菌菌体を用いるホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項9】
酢酸菌のアルコール酸化系を用いるホルムアルデヒドの除去方法。
【請求項10】
モリブデン添加培地により培養した酢酸菌の酵素系を利用したホルムアルデヒドの除去方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−6992(P2006−6992A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183259(P2004−183259)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(800000013)有限会社山口ティー・エル・オー (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(800000013)有限会社山口ティー・エル・オー (6)
【Fターム(参考)】
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