説明

酵母、乳酸菌を配合した食品用ミックス粉及びこれを使用した食品

【課題】本発明は、食品用微生物として有用な酵母、乳酸菌を配合した食品用ミックス粉及びこれを使用した食品を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、穀粉又は穀粉加工品100重量部に対して酵母を1〜200重量部、乳酸菌を0.01重量部配合し、水分を1〜10%とした食品用ミックス粉及びこれを用いた食品である。本発明によれば、通常、加工時に新規に微生物の添加が必要な発酵食品製造において、既に必要な酵母、乳酸菌が上記食品用ミックス粉に配合されているため新たな微生物の添加が不必要となり、種々の場面において容易に且つ良好な発酵食品の製造が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンなどの発酵食品を製造するのに適した食品用ミックス粉及びこれを使用して製造された食品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品製造に必要な粉体の全部又は一部を混合した食品用ミックス粉は、製造時の計量の煩雑さや在庫管理面、小口包装形態などから製造企業のみならず一般消費者にも広く使用されている。
【0003】
粉体全部を混合した食品用ミックス粉としてはホットケーキミックス粉やお好み焼きミックス粉などが知られている。
また、一部を混合したものとしては自動ホーム製パン機用プレミックス(特許文献1を参照)がある。
【0004】
これら食品用ミックス粉の製造適性向上のため、通常は配合しないパン粉(特許文献1を参照)や小麦ふすま(特許文献1を参照)、酵素製剤(特許文献2を参照)を混合したミックス粉が開発されている。
また、ホットケーキミックス粉などでは配合する膨張剤の安定性向上のための技術(特許文献3を参照)も知られている。
【0005】
製パンでは膨張剤ではなくパン酵母による発酵ガスを利用するため、製パンにおける食品用ミックス粉の利用は製造時にさらにドライイーストの混合が必要である。
米粉に小麦グルテンを配合する米粉パンの製造(特許文献4を参照)においてもプレミックスの利用が可能であり、一般消費者からのその開発が求められている。
【0006】
食品用ミックス粉の利用は製造工程の簡便化を目的の一つとしている。
膨化を伴う食品製造においては膨張剤又は酵母の発酵ガスが利用されるが、膨張剤を配合したミックス粉は開発されているが酵母を配合した食品用ミックス粉は開発されていない。
【0007】
また、乳酸菌は広範囲な食品製造に利用されており発酵食品にとって有用な微生物であり、乳酸菌を配合した食品用ミックス粉の開発が強く望まれている。
【0008】
消費者の安全、安心な食品への要望は高く、化学的な製剤の使用は控える傾向が強く、安全な微生物利用による食品用ミックス粉の開発が求められている。
【0009】
しかしながら、良好な発酵適性と乾燥耐性を合わせ持つ酵母、乳酸菌の開発、製造が伴わなかったため酵母、乳酸菌を配合した食品用ミックス粉の開発は遅れていた。
【0010】
【特許文献1】特開平09−019258号公報
【特許文献2】特開2003−102368号公報
【特許文献3】特開2004−313185号公報
【特許文献4】特開2003−274845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、食品用微生物として有用な酵母、乳酸菌を配合した食品用ミックス粉及びこれを使用した食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の食品用ミックス粉は、穀粉又は穀粉加工品100重量部に対して酵母を1〜200重量部配合したものである。
穀粉又は穀粉加工品に酵母を配合した混合物の水分が1〜10%である。
本発明の食品用ミックス粉は、穀粉又は穀粉加工品100重量部に対して乳酸菌を0.01重量部配合したものである。
穀粉又は穀粉加工品に乳酸菌を配合した混合物の水分が5〜8%である。
本発明の食品用ミックス粉は、穀粉又は穀粉加工品100重量部に対して酵母1〜200重量部及び乳酸菌0.01重量部を配合したものである。
本発明の食品は、上記の食品用ミックス粉を使用したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通常、加工時に新規に微生物の添加が必要な発酵食品製造において、既に必要な酵母、乳酸菌が配合されているため新たな微生物の添加が不必要となり、種々の場面において容易に且つ良好な発酵食品の製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、良好な発酵適性と乾燥耐性を合わせ持つ酵母、乳酸菌及びその配合方法、利用方法について鋭意検討の結果、完成するに至った。
【0015】
本発明は、穀粉又は穀粉加工品100重量部に対して酵母を1〜200重量部、乳酸菌を0.01重量部配合し、水分を1〜10%とした食品用ミックス粉及びこれを用いた食品である。
【0016】
本発明において使用する穀粉又は穀粉加工品としては、小麦粉又はパン粉が挙げられるが、食品素材となる米粉等、他の穀粉又は穀粉加工品でも良い。
【0017】
本発明において食品用微生物は、酵母単独、乳酸菌単独及び両菌併用して配合することができる。
【0018】
本発明において使用する酵母は、白神こだま酵母(特開2001−178449号公報を参照)が最適であるが、同程度以上の発酵ガス発生能及び乾燥耐性を有する酵母でも良い。
また、2種類以上の酵母の混合でも良い。
【0019】
本発明において使用する乳酸菌は、白神の乳酸菌作々楽(特開2005−192553号公報を参照)が最適であるが、同程度以上の発酵適性及び乾燥耐性を有する乳酸菌でも良い。
また、2種類以上の乳酸菌の混合でも良い。
【0020】
本発明において製造する食品用ミックス粉の水分は1〜10%、好ましくは4〜9%である。
【0021】
本発明において食品用ミックス粉を使用した食品は、製パンである。
【0022】
以下に実施例・製造例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
高い乾燥耐性を示す白神こだま酵母500gを通風乾燥により水分5.0%としたものを配合用乾燥酵母とした。
【0024】
市販強力小麦粉100gに上記乾燥酵母158gを混合して食品用ミックス粉Aとした。
混合後の水分は8.0%であった。
【0025】
食品用ミックス粉Aを使用したパンは自動製パン機(リーガルブレッドメーカーRJ7884)で直捏製パン法により製パンした。
原料配合を表1に示した。
【0026】
【表1】

【0027】
食品用ミックス粉Aを調製後密閉して30℃で一定期間保存後に表1の配合での自動製パン機を使用した製パン結果を表2に示した。
【0028】
【表2】

【0029】
表2の結果より、小麦粉と乾燥酵母のミックス品の製パン性は4週間は安定であることがわかった。
【実施例2】
【0030】
乾燥乳酸菌は白神の乳酸菌作々楽の市販凍結菌体を凍結乾燥により水分1%以下としたものを配合用乾燥乳酸菌とした。
部分乾燥市販強力小麦粉100gに上記乾燥乳酸菌0.1gを混合して食品用ミックス粉Bとした。
混合後の水分は5.0%であった。
【0031】
食品用ミックス粉Bを使用したパンは自動製パン機で直捏製パン法により製パンした。原料配合を表3に示した。
【0032】
【表3】

【0033】
食品用ミックス粉Bを調製後密閉して30℃で4週間保存し自動製パン機で製パンしたところ、好適なパン容積を有するもちもち感の強い食パンが得られた。
【実施例3】
【0034】
高い乾燥耐性を示す白神こだま酵母500gを通風乾燥により水分5.0%としたものを配合用乾燥酵母とした。
乾燥乳酸菌は白神の乳酸菌作々楽の市販凍結菌体を凍結乾燥により水分1%以下としたものを配合用乾燥乳酸菌とした。
市販強力小麦粉100gに上記乾燥酵母158g及び上記乾燥乳酸菌0.1gを混合して食品用ミックス粉Cとした。
混合後の水分は8.0%であった。
【0035】
食品用ミックス粉Cを使用したパンは自動製パン機で直捏製パン法により製パンした。原料配合を表4に示した。
【0036】
【表4】

【0037】
食品用ミックス粉Cを調製後密閉して30℃で一定期間保存後の自動製パン機での製パン結果を表5に示した。
【0038】
【表5】

【0039】
表5の結果より、小麦粉と乾燥酵母・乾燥乳酸菌のミックス品の製パン性は序々に低下するが4週間は保存性が十分であることがわかった。
【実施例4】
【0040】
高い乾燥耐性を示す白神こだま酵母500gを通風乾燥により水分5.0%としたものを配合用乾燥酵母とした。
市販細目パン粉100gに上記乾燥酵母122gを混合して食品用ミックス粉Dとした。
混合後の水分は8.0%であった。
【0041】
食品用ミックス粉Dを使用したパンは自動製パン機で直捏製パン法により製パンした。原料配合を表6に示した。
【0042】
【表6】

【0043】
食品用ミックス粉Dを調製後密閉して30℃で一定期間保存後の自動製パン機での製パン結果を表7に示した。
【0044】
【表7】

【0045】
表7の結果より、市販細目パン粉と乾燥酵母のミックス品の製パン性は30℃・4週間の保存でも非常に良好であることがわかった。
【実施例5】
【0046】
高い乾燥耐性を示す白神こだま酵母500gを通風乾燥により水分5.0%としたものを配合用乾燥酵母とした。
市販強力小麦粉100gに上記乾燥酵母1〜200gを混合して食品用ミックス粉Eとした。
混合後の水分は12.6〜7.6%であった。
【0047】
食品用ミックス粉Eを調製後密閉して30℃で4週間保存後の酵母生存率をプレート法により測定し、保存前の生存率を100としたときの生存率を算出したところ表8の結果が得られた。
【0048】
【表8】

【0049】
表8の結果より、酵母の配合量が小麦粉に対して50%以上であれば30℃・4週間の保存では酵母は全く死滅しないことが観察された。
50%未満の配合で生存率が低下したのは配合比率より、配合後のミックス粉の水分が高いためと考えられた。
【実施例6】
【0050】
高い乾燥耐性を示す白神こだま酵母500gを通風乾燥により水分5.0%としたものを配合用乾燥酵母とした。
市販強力小麦粉100gに上記乾燥酵母3gを混合後、30℃で通風乾燥し水分12.5〜1%の食品用ミックス粉Fを調製した。
【0051】
食品用ミックス粉Fを密閉して30℃で4週間保存後の酵母生存率をプレート法により測定し、保存前の生存率を100としたときの生存率を算出したところ表9の結果が得られた。
【0052】
【表9】

【0053】
表9の結果より、小麦粉とミックスした酵母を30℃で保存した際の生存率はその配合割合ではなく、ミックス粉の水分含量に大きく影響され、水分1〜10%で生存率が90%以上、好ましくは4〜9%が最適であることがわかった。
【0054】
以上の結果、本発明によれば、通常、加工時に新規に微生物の添加が必要な発酵食品製造において、既に必要な酵母、乳酸菌が食品用ミックス粉に配合されているため新たな微生物の添加が不必要となり、種々の場面において容易に且つ良好な発酵食品の製造が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉又は穀粉加工品100重量部に対して酵母を1〜200重量部配合したことを特徴とする食品用ミックス粉。
【請求項2】
穀粉又は穀粉加工品に酵母を配合した混合物の水分が1〜10%であることを特徴とする請求項1記載の食品用ミックス粉。
【請求項3】
穀粉又は穀粉加工品100重量部に対して乳酸菌を0.01重量部配合したことを特徴とする食品用ミックス粉。
【請求項4】
穀粉又は穀粉加工品に乳酸菌を配合した混合物の水分が5〜8%であることを特徴とする請求項3記載の食品用ミックス粉。
【請求項5】
穀粉又は穀粉加工品100重量部に対して酵母1〜200重量部及び乳酸菌0.01重量部を配合したことを特徴とする食品用ミックス粉。
【請求項6】
上記請求項1乃至5のいずれか一つに記載の食品用ミックス粉を使用したことを特徴とする食品。


【公開番号】特開2007−267653(P2007−267653A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96250(P2006−96250)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(591108178)秋田県 (126)
【出願人】(506013287)株式会社光風舎 (1)
【Fターム(参考)】