説明

酵母供給装置

【課題】酵母濃度が閾値以上の液のみを正確に供給可能な酵母供給装置を提供する。
【解決手段】酵母を含む液を貯蔵するタンクから酵母を供給する酵母供給装置であって、タンク1に一端が接続された管路8と、管路8に配置され管路8を流れる液の粘度を検出する粘度計3と、管路8の他端に接続された流路切替バルブとを含む。流路切替バルブは、粘度計3により検出された粘度に基いて制御される。また、該バルブによって切り替えられる流路は、酵母を輸送するタンクローリーに接続される流路と、酵母濃度が閾値未満の液を排水処理設備に放出する流路とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵母を含む液を貯蔵するタンクから酵母を供給する酵母供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールや発泡酒等のアルコール飲料の製造において酵母が使用される。ビールの製造を例にあげると、若ビールを発酵タンクから貯酒タンクに移し変える際に、発酵タンクから麦汁の発酵に用いた酵母が引き抜かれる。熟成工程ではその途中で、後発酵に使用された酵母が貯酒タンクから引き抜かれる。ろ過工程では、熟成したビールがろ過され、酵母が取り除かれる。これら各工程で発生した酵母のうち、醸造において再利用されない使用済みの酵母は、処理を施す又は酵母の利用者に送るため一時的にタンクに貯蔵される。
【0003】
酵母は、医薬品原料、健康食品、化粧品原料、飼料等として有効利用される。ビール製造工場等で貯蔵されている酵母をその利用者の元へ輸送するためにタンクローリーが使用される。酵母を貯蔵するタンクには管路が接続され、管路の末端には流路切替バルブが設けられ、酵母を利用者の元に輸送するタンクローリーのタンクを管路と接続可能なように設けられている。
【0004】
酵母の液を貯蔵するタンクから酵母をタンクローリーに供給する場合、タンクから最後に排出される酵母は、管路に供給される水の圧力によって押し出されうる。酵母が排出され空の状態のとき、タンクの内部は水によって洗浄されうる。タンクが洗浄された後、タンクに接続される管路には水が残存する。
【0005】
そこで、タンクから余剰酵母をタンクローリーに移し変えるとき、まず酵母をあまり含んでいない液を管路から放出し、その後に酵母濃度の高い液をタンクローリーに供給する。したがって、管路から送り出される液の酵母濃度を確認した上で、管路からの流路をタンクローリーに切り替える必要がある。
【0006】
従来、管路を通過する液の酵母濃度が所定の水準を上回っているか否かは、液の状態を目視したり、液の導電率や濁度を検出したりすることによって判定されていた。例えば、液の導電率によって液の酵母濃度を判定する手法は特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平9−238671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
作業者が液の状態を目視することによって液の酵母濃度を判定する手法は、作業者の個人差によるばらつきが大きく、タンクローリーに供給する酵母の濃度が一定とならない。
【0008】
液の濁度によって酵母濃度を判定する手法では、光源から管路の一部に設けた透明な窓を介して液に射出された近赤外光によって発生する液の酵母濃度に応じた散乱光の強度を電流信号として検出する。また、液の導電率によって酵母濃度を判定する手法では、管路内に突出させた導電率計の端子部分に接触する液の導電率を計測することによって酵母濃度を判定する。
【0009】
しかし、液の濁度による酵母濃度の判定手法は、液の酵母濃度が比較的小さい場合、酵母濃度の変化に対する濁度の変化が小さく、判定結果に対する信頼性が乏しい。液の導電率による酵母濃度の判定手法は、酵母濃度の変化に対する濁度の変化が小さい。また、導電率計の端子部分に酵母を含む液が接触する場合、酵母が接触するか水が接触するかによって導電率の計測値が大きく変化する。したがって、液の導電率による酵母濃度の判定手法も信頼性に欠ける。
【0010】
本発明は、酵母濃度が閾値以上の液のみを正確に供給可能な酵母供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、酵母を含む液を貯蔵するタンクから酵母を供給する酵母供給装置であって、タンクに一端が接続された管路と、管路に配置され管路を流れる液の粘度を検出する粘度計と、管路の他端に接続された流路切替バルブとを含み、粘度計により検出された粘度に基いて流路切替バルブを制御することを特徴とする。流路切替バルブによって切り替えられる流路は、酵母を輸送するタンクローリーに接続される流路と酵母濃度が閾値未満の液を排水処理設備に放出する流路とを含みうる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、酵母濃度が閾値以上の液のみを正確に供給可能な酵母供給装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1を用いて本発明に係る酵母供給装置の一例を説明する。タンク1には、酵母を含む液が貯蔵される。液は、酵母以外に主として水を含んでいる。タンク1には管路8の一端が接続され、管路8の他端は、タンク1内に貯蔵される液の流路を切り替える流路切替バルブ4が接続される。
【0014】
管路8のタンク1と流路切替バルブ4との間には、ポンプ2及び粘度計3が配置されている。粘度計3は、センサーロッドを高周波で捩れ振動させ、管路8を流れる液の粘度変化に伴って変化する共振特性を利用してエネルギーの損失を導き出して液の粘度を検出する。
【0015】
粘度計3の検出した粘度の情報は制御器5に送られ、制御器5は粘度計3により検出された粘度の情報に基いて流路切替バルブ4を制御し、管路8と接続する流路を切り替える。
【0016】
流路切替バルブ4によって切り替えられる流路は、酵母を輸送するタンクローリー10に接続される流路11と酵母濃度が閾値未満の液を排水処理設備14に放出する流路12とを含む。この実施形態において、流路切替バルブ4によって切り替えられる流路は、タンク1を洗浄するために使用される定置洗浄(CIP)ユニット9に接続される流路13をさらに含んでいる。定置洗浄ユニット9は管路8に対して開閉弁7bを介して接続されている。さらに、酵母を含む液の末端を押し出すために、水供給源6が管路8に接続されている。
【0017】
酵母を含む液がタンク1内に貯蔵する状態において、タンク1からタンクローリー10に酵母を供給する方法について以下説明する。まず、タンクローリー10のタンクと流路切替バルブ4の一つの口とをタンクローリーに接続される流路としてのホース11によってつなぐ。
【0018】
初期状態では、最後の酵母の押し出しの後、定置洗浄ユニット9によりタンク1を洗浄するのに使用した水が管路8内に残存しているので、管路8内に存在する液は酵母濃度が低いものである。したがって、最初に管路8内に存在する酵母濃度の低い液を管路8から廃水処理設備14に放出する必要がある。そこで、流路切替バルブ4を切り替えて管路8と液を排水処理設備14に放出する流路12とを接続させ、酵母濃度の低い液を管路8から廃水処理設備14に放出させる。
【0019】
今、タンクローリーに供給する液の酵母濃度の閾値となる下限値に対応する液の粘度が8cpであるとする。管路8を流れる液の粘度を検出する粘度計3の検出値が8cpに達すると、制御器5は流路切替バルブを作動させ、管路8と接続する流路をタンクローリーのタンクから延びるホース11に切り替える。
【0020】
酵母を含む液の末端が管路8に到達すると、液の末端を押し出すために水供給源6から水が管路8内に供給され、液を流路切替バルブ4に向けて押す。管路8を流れる液の粘度を検出する粘度計3の検出値が8cpを下回ると、制御器5は流路切替バルブを作動させ、管路8とホース11との接続を遮断する。したがって、タンクローリー10には、酵母濃度が閾値以上の液のみが供給されることになる。
【0021】
酵母を含む液の酵母濃度とほぼ比例して液の粘度が変化するので、本発明に係る酵母供給装置は、酵母濃度が閾値以上の液のみを正確にタンクローリーに供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る酵母供給装置の一例を示す図
【符号の説明】
【0023】
1:酵母を含む液を貯蔵するタンク、2:ポンプ、3:粘度計、4:流路切替バルブ、5:制御器、6:水供給源、7a〜7c:開閉弁、8:管路、9:定置洗浄ユニット、10:酵母輸送タンクローリー、11:ホース(タンクローリーに接続される流路)、12:液を放出する流路、13:定置洗浄ユニットに接続される流路、14:排水処理設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母を含む液を貯蔵するタンクから酵母を供給する酵母供給装置であって、
前記タンクに一端が接続された管路と、
前記管路に配置され前記管路を流れる液の粘度を検出する粘度計と、
前記管路の他端に接続された流路切替バルブと
を含み、
前記粘度計により検出された粘度に基いて前記流路切替バルブを制御することを特徴とする酵母供給装置。
【請求項2】
前記流路切替バルブによって切り替えられる流路は、酵母を輸送するタンクローリーに接続される流路と酵母濃度が閾値未満の液を排水処理設備に放出する流路とを含むことを特徴とする酵母供給装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−45037(P2009−45037A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216368(P2007−216368)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】