酵母細胞触媒支持体における細胞表面ディスプレイの使用
新規触媒支持体を提供するための方法および組成物が本明細書中に含まれる。一実施形態において、本明細書中に含まれるのは、Saccharomyces cerevisiae種を有する酵母細胞の表面上に均一にディスプレイされた1種以上のレセプタータンパク質を含む酵母細胞支持体である。各レセプタータンパク質は、リガンドに固定され、このリガンドは、そのタンパク質のために選択され、そして各リガンドは、次いで、触媒に結合される。触媒支持体−触媒組み合わせ、および触媒支持体単独の両方が、本発明によって企図される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2006年10月13日に出願された、係属中の米国仮特許出願第60/851,434号に対する優先権の利益を主張する。米国仮特許出願第60/851,434号は、あたかも完全に本明細書中に再び記載されているかのように参考として本明細書に援用される。
【0002】
(発明の背景)
1.発明の分野
本発明は、合成触媒用の均質な触媒支持体としての表面ディスプレイ技術の使用に関する。本発明の触媒支持体は、それら表面に触媒の均一な(uniform)層を含み、均質な(homogeneous)触媒の特性を有する触媒を可能にすると同時に、上記触媒の効率的な分離およびリサイクルをさらに可能にする。種々の生物学的支持体が本明細書中に教示されているが、酵母細胞支持触媒(yeast cell−supported catalyst)が特に好ましい。
【背景技術】
【0003】
2.背景
A.細胞表面ディスプレイ
多くの微生物およびビリオンは、タンパク質がそれら表面に遺伝子的にディスプレイされるように操作され得る。酵母Saccharomyces cerevisiaeは、しばしばこの目的で使用される。多くの方法、構造、および酵母細胞表面ディスプレイの適用が報告されてきた。非特許文献1;非特許文献2。
【0004】
BoderおよびWittrupは、S.cerevisiaeが哺乳動物細胞のものに類似した、分泌装置およびタンパク質折りたたみ機構の両方を持っていることから、S.cerevisiaeがタンパク質の細胞表面ディスプレイにとって理想的であると報告している(非特許文献3)。他の利点としては、1細胞あたり多数の表面融合物があること、およびフローサイトメトリーを使用して上記細胞を試験できることが挙げられる(非特許文献3)。酵母細胞は、非特許文献4によって報告されるように、異なる安定性および発現レベルのタンパク質をディスプレイし得る。
【0005】
酵母細胞表面ディスプレイ技術は、特許文献1(Wittrupら,「Yeast Cell Surface Display of Proteins and Uses Thereof」)においてさらに報告されている。Wittrupらは、酵母細胞壁にポリペプチドを固定する(anchor)ための遺伝的方法を報告している。特許文献2(Kiekeら,「Yeast Cell Surface Display of Proteins and Uses Thereof,」)は、「目的のポリペプチド」のN末端を、酵母Aga2p細胞壁タンパク質のC末端に融合するための方法を報告している。
【0006】
Kiekeの方法は、評判によれば、scFv抗体フラグメントを酵母細胞壁の外部に固定するために使用され得る。酵母細胞表面ディスプレイはまた、抗体エピトープマッピングにおける使用が報告された。非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;Weaver−Feldhausら,「Directed Evolution for the Development of Conformation−Specific Affinity Reagents using Yeast Display」18(11):527−536(2005);Littleら,「Bacterial Surface Presentation of Proteins and Peptides:An Alternative to Phage Technology?」Trends in Biotechnology 11(1993)もまた参照のこと。
【0007】
細胞表面ディスプレイはまた、報告によれば、環境金属(environmental metal)の吸収に使用されてきた。Wernerus,H.&Stahl,S.,「Biotechnological Applications for Surface− Engineered Bacteria」Biotechnol.Appl.Biochem.40:209−228(2004)。細胞表面ディスプレイはまた、報告によれば、真核生物細胞ディスプレイライブラリーを固体表面に結合するために使用されてきた。Peelleら,特許文献3「Cell Display Libraries」;Andresら,「Immobilization of Saccharomyces cerevisiae Cells to Protein G−Sepharose by Cell Wall Engineering」J.MoI.Microbiol.&Biotech.5(3)161−166(2003)。Staphylococcus aureusからのZZドメイン(これは、免疫グロブリンG(IgG)のFc部分に結合する)の発現がまた、報告された。Shimojyoら,「Preparation of Yeast Strains Displaying IgG Binding Domain ZZ and Enhanced green Fluorescent Protein for Novel Antigen Detection Systems」J.Biosci&Bioeng.96(5):493−495(2003)。
【0008】
Kondoは、酵母細胞表面ディスプレイが生体触媒作用のために使用されたことを報告している;しかし、Kondoの生体触媒は、それらの一般的適用性を妨げる多くの欠点を有する。例えば、生体触媒は、酵母細胞の表面に直接結合される。このような触媒は、必要性が生じたときに他の触媒の代わりに交換されない可能性があり、そして科の(familial)酵母株が単一の生体触媒形態に限定される。さらに、求められていない標的に吸着される生体触媒は、細胞に変更できない損傷を与えることなく、この細胞を除去または分離するのが困難であるかまたは不可能である。生体触媒はまた、伝統的に、細胞表面上に直接発現され得るそれら触媒(例えば、タンパク質分子または酵素)に限定される。
【0009】
酵母以外の微生物を使用する細胞表面ディスプレイがまた、報告された。例えば、Wangら,「Specific Adhesion to Cellulose and Hydrolysis of Organophosphate Nerve Agents by a Genetically Engineered Escherichia coli Strain with a Surface−Expressed Cellulose−Binding Domain and Organophosphorus Hydrolase」,App.and Env.Microbiol.68(4):1684−1689(2002)は、有機リン化合物加水分解酵素(OPH)およびセルロース結合ドメインをディスプレイするあるE.coli株を使用した、パラチオンおよびパラオクソンの分解を報告している。上記OPHは、Lpp−OmpA融合系または短縮された氷核形成タンパク質アンカー(truncated ice nucleation protein anchor)を使用して、細胞表面上に発現された。
【0010】
B.触媒支持体
大きさが均一でかつ触媒を触媒支持体の表面を均一に覆うように配置させた触媒支持体が必要である。均一な支持体は、多くの利点を提供し、その利点としては、拡散の効果および触媒部位間の差異を最小にすることが挙げられる。触媒支持体はまた、いくつかの触媒の便利な取り扱いを補助し得る。
【0011】
概して均一な無機触媒支持体の一例は、特許文献4(Yuengら)において見いだされ得る。この特許文献4は、金属酸化物結晶に固定された金属触媒を含む触媒性物質を報告している。この金属触媒は、金属酸化物の表面上のヒドロキシル基との相互作用によって、金属酸化物の表面に固定される。
【0012】
触媒(例えば、特許文献4において報告されるもの)は、多くの欠点を有する。例えば、これらは、有機的用途には不適切であり得る。さらに、これらは、金属触媒の使用のみを許容し得る。それらの生成はまた、高価であり得、そしてそれらの構築は、触媒再生を困難にし得る。各支持体は、単一の触媒に限定され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,423,538号明細書
【特許文献2】米国特許第6,300,065号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0003387号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0009354号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Kondo,A.,およびUeda,M.,「Yeast Cell−Surface Display−Applications of Molecular Display」,Appl.Microbiol.Biotechnol.(2004)64:28−40
【非特許文献2】Ueda,M.& Tanaka,A.,「Cell Surface Engineering of Yeast:Construction of Arming Yeast with Biocatalyst」J.Biosci.and Bioeng.(2000)90(2):125−136
【非特許文献3】Boder,E.T.&Wittrup,D.K.,「Yeast Surface Display for Screening Combinatorial Polypeptide Libraries」,Nature Biotech.(1997)15:553−557
【非特許文献4】Parkら,「Limitations of Yeast Surface Display in Engineering Proteins of High Thermostability」,PEDS,(2006)19(5):211−217
【非特許文献5】Chaoら,「Fine Epitope Mapping of Anti−Epidermal Growth Factor Receptor Antibodies Through Random Mutagenesis and Yeast Surface Display」,J.MoI.Biol.(2004)342(2):539−550
【非特許文献6】Colbyら,「Development of a Human Light Chain Variable Domain (VL) Intracellular Antibody Specific for the Amino Terminus of Huntingtin via Yeast Surface Display」,J.Molec.Biol.(2004)342(3):901−912
【非特許文献7】Min Li,「Applications of Display Technology in Protein Analysis」,Nature Biotech.(2000)18:1251−1256
【非特許文献8】Feldhaus,MJ.&Siegel,R.W.,「Yeast Display of Antibody Fragments:A Discovery and Characterization Platform」,J.Immunol.Methods(2004)290(1−2):69−80
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の実施形態は、先行技術の上記欠点のうちの1つ以上に対処し得る触媒および触媒支持体を提供する。これら触媒の構築方法、使用方法、および再生方法もまた、提供される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、生物学的支持体の表面から処理される(disposed from)1種以上のレセプタータンパク質を含む触媒物質を提供する。代表的な実施形態において、上記レセプタータンパク質は、上記生物学的支持体の表面を均一に覆うように配置される。上記レセプタータンパク質は、同一のタンパク質であってもよいし、異なるタンパク質であってもよい。各レセプタータンパク質は、生物学的支持体の表面と結合される(engaged)固定タンパク質に連結される。
【0017】
代表的実施において、上記レセプタータンパク質は、融合タンパク質の形態において上記固定タンパク質に連結され、それによって、上記固定タンパク質ドメインのアミノ酸は、上記レセプタータンパク質のアミノ酸との連続ポリペプチド配列として連結され、それによって、上記固定タンパク質由来の固定ドメインおよび上記レセプタータンパク質由来のリガンド結合ドメインを有する異種融合タンパク質を形成する。上記固定ドメインは、上記生物学的支持体の表面に上に配置される他のタンパク質もしくは炭水化物に結合されるか、それらの中に吸着されるかまたはそれらに架橋されることによって、上記生物学的支持体の表面を結合し得る。代表的には、上記生物学的支持体が細胞である場合、上記固定ドメインは、上記細胞の外膜に埋め込まれるかまたは細胞壁タンパク質もしくは炭水化物に結合する。使用される固定タンパク質に依存して、上記固定ドメインは、上記生物学的支持体の表面内に、例えば、表在性膜タンパク質の形態において、部分的に配置され得るか、または生物学的支持体支持体を貫通して、例えば、内在性膜タンパク質の形態において、伸長し得る。各レセプタータンパク質は、リガンド結合ドメインを含み、リガンド結合ドメインは、リガンドにさらに結合され、次に、各リガンドは、触媒に結合される。レセプター−リガンド結合およびリガンド−触媒結合は、共有結合(例えば、化学的架橋)または非共有結合によって達成され得る。
【0018】
本発明はさらに、生物学的支持体の表面上にディスプレイされる1種以上のレセプタータンパク質を含む触媒支持体を提供する。上記レセプタータンパク質は、それによって、上記表面を均一に覆うように代表的にはディスプレイされる。上記レセプタータンパク質は、同一のタンパク質であってもよいし、異なるタンパク質であってもよい。上記レセプタータンパク質は、選択されたリガンドに結合するために選択され、この選択されたリガンドは、次いで、支持されるべき選択された触媒に結合するために選択される。
【0019】
本発明はまた、上記のような触媒物質および/または触媒支持体系を作製するための方法を提供する。1種以上のレセプタータンパク質は、固定タンパク質との融合タンパク質として発現され、生物学的支持体の表面の周りに配置される。一実施形態において、上記タンパク質は、同一のタンパク質であり、そして別の実施形態において、上記タンパク質は、1種以上の異なるタンパク質である。一実施形態において、上記タンパク質は、生物学的支持体の表面の周りに均一にディスプレイされ、触媒支持体物質を形成する。1種以上の触媒分子は、リガンド/触媒構築物を形成するために、それぞれのリガンドに結合される。上記リガンドは、上記レセプタータンパク質の結合ドメインに選択的に結合するかまたは架橋される(本明細書中で「つなぐ(tethering)」といわれる。)ように設計または選択される。上記レセプタータンパク質をディスプレイする上記リガンド/触媒構築物、および上記生物学的支持体は混合され、上記リガンド/触媒構築物が上記レセプタータンパク質につながれることを可能にし、触媒物質を形成する。
【0020】
生物学的支持体は、例えば、ビリオンおよび微生物から選択され得る。微生物は、例えば、細菌または酵母であり得る。細菌は、例えば、Escherichia属、Corynebacterium属、Bacillus属、またはLactococcus属から選択され得る。Escherichia coliが好ましい細菌である。本発明における使用について、酵母は、例えば、Saccharomyces属、Pichia属またはCandida属に由来するものを包含し得る。好ましい酵母は、Saccharomyces cerevisiaeである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の単一の酵母細胞表面ディスプレイ触媒系の2次元図を模式的に示す。
【図2】図2は、A α−アグルチニン(配列番号1)、B a−アグルチニン(配列番号2)、C Flolp(配列番号3)のC末端領域、およびD Flolp(配列番号3)のN末端凝集機能ドメインを使用する、酵母細胞表面ディスプレイ系を示す。(Kondo,前出;およびvan der Vaart,J.M.ら,「Comparison of Cell Wall Proteins of Saccharomyces cerevisiae as anchors for Cell Surface Expression of Heterologous Proteins」,App.&Env.Microbiol.63(2):615−620(1997))。
【図3】図3は、酵母細胞およびこの酵母細胞の表面に示される1種以上のレセプタータンパク質を含む、触媒性支持体物質を示す。
【図4】図4は、プラスミドpCT302(Boder&Wittrup)を示し、このプラスミドは、GAL1,10ガラクトース誘導性プロモーターの制御下で酵母Aga2pアグルチニン接合タンパク質への融合物として、レセプタータンパク質を発現するために使用され得る。pCT302の上記N末端隣接配列は、配列番号4として示され、そのC末端隣接配列は、配列番号5として示される。
【図5】図5は、プラスミドpYD1(配列番号6)のマップを示す。
【図6】図6は、プラスミドpYD1(配列番号7)のポリリンカーを示す。
【図7a】図7aは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【図7b】図7bは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【図7c】図7cは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【図7d】図7dは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【図7e】図7eは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【図7f】図7fは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【図7g】図7gは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【図7h】図7hは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【図7i】図7iは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
以下の説明は、当業者が本発明の種々の局面を理解または実施するのを補助し得る種々の言及を引用する。このような言及に対する引用は、本発明を実施するために使用され得る、当業者を先行技術のより詳細な技術および例示材料およびシステムに方向付けるために略式の方法として意図される。従って、各々のこのような言及は、その目的を達成するために必要な程度まで、本明細書中に参考として援用される。本明細書中での言及の引用は、このような言及が特許性の何らかの決定のための先行技術を構成するという容認ではない。
【0023】
本明細書で使用される場合、本明細書および特許請求の範囲において使用される単数形「an」、「a」、および「the」は、その内容が明らかに別のものを示さなければ、単数形および複数形の両方を含む。特に、当業者は、触媒物質および触媒支持体の設計および作製が、単一の細胞または他の生物学的支持体に関して記載される一方で、より有効な系が、1つ以上の細胞または生物学的支持体(各々が、1種以上のレセプタータンパク質を発現する)を含むことを認識する。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「固定タンパク質(anchoring protein)」とは、ポリペプチド配列であって、このポリペプチドを生物学的粒子(例えば、細胞、ウイルスまたはビリオン殻)の表面と結合するように機能するアミノ酸配列ドメイン、またはドメインの組み合わせを有するものを意味する。上記ポリペプチド配列は、本質的に天然に存在するようなタンパク質全体を具現化する必要はなく、代表的には具現化しないが、むしろ、その固定ドメインを提供するために必要な十分な量のアミノ酸配列を有するようなタンパク質のフラグメントのみを含む必要がある。特定の場合において、固定ドメインが、細胞の膜(これは、その膜と結合しない1または数個の連続する配列によって隔てられる)内で結合するアミノ酸の2個または数個の連続する配列を含み得ることが、当業者によって理解される。このような場合において、膜と結合しかつ固定機能を提供するために必要であるドメインのみが含まれる必要がある一方で、上記膜と結合しないアミノ酸配列が、全て欠失され得るか、または上記天然に存在するタンパク質に対して異種である配列によって置換され得る。
【0025】
本発明の一局面は、生物学的支持体表面上に1種以上のレセプタータンパク質をディスプレイする生物学的支持体を含む触媒支持体物質を提供する。上記触媒支持体は、均一の利用性を、レセプタータンパク質につながれるリガンドに結合された触媒に提供する。これら触媒は、有機性であっても無機性であってもよい。先行技術の表面ディスプレイ触媒作用技術とは異なって、上記触媒は、天然の固定タンパク質に融合され得かつ上記生物学的支持体によって発現され得る酵素またはタンパク質に限定されない。
【0026】
一実施形態において、上記触媒作用支持体物質は、図3によって表されるような、酵母細胞、および上記酵母細胞の表面上にディスプレイされた1種以上のレセプタータンパク質を含む。上記レセプタータンパク質は、天然の酵母細胞機構の機能によって上記細胞壁に固定するタンパク質への融合によって、上記細胞の表面に固定される。例えば、アグルチニンシステムおよびフロキュリン(flocculin)システムは、当業者に周知であり、そして本発明の実施形態において使用され得る。固定は、例えば、(1)上記レセプタータンパク質がα−アグルチニン構築物のC末端側半分に融合されているか;(2)上記レセプタータンパク質がa−アグルチニン構築物のN末端側半分に融合されているか;(3)上記レセプタータンパク質がFlo1pのC末端領域に融合されているか;または(4)上記レセプタータンパク質がFlo1pの凝集機能ドメインに融合されている、融合タンパク質を作製することによって達成され得る。考えられるレセプタータンパク質としては、アビジン(配列番号26)、セルロース結合ドメイン、レクチン、および抗体結合ドメインが挙げられる。
【0027】
本発明の一実施形態において、上記レセプタータンパク質は、上記酵母細胞に付加されたかまたは上記酵母細胞の親に付加されたかのいずれかである1種以上の遺伝子の発現によって、上記酵母細胞に導入される。遺伝子は、例えば、リチウム塩、スフェロプラスト、遺伝子銃、またはエレクトロポレーションを使用する形質転換によって、付加され得る。
【0028】
触媒作用支持体物質を作製するための方法はまた、本明細書に提供される。本発明の一実施形態において、生物学的支持体は、上記酵母細胞の外膜に運ばれる天然の酵母タンパク質に融合されるレセプタータンパク質を発現する。1種以上のレセプタータンパク質が、上記酵母細胞の表面の周りにディスプレイされる。上記レセプタータンパク質は、同一のタンパク質であってもよいし、異なるタンパク質であってもよい。上記レセプタータンパク質は、上記酵母細胞の表面の周りに均一に配置され得る。上記レセプタータンパク質は、上記触媒支持体系によって支持されるべき触媒に接着され得るリガンドに結合する。
【0029】
本発明のさらなる実施形態において、本発明は、触媒物質を含む。上記触媒物質は、リガンドに結合される有機触媒または無機触媒を含み、上記リガンドは、次に、本明細書に記載されるような酵母触媒作用性支持体物質上のレセプタータンパク質につながれる。本発明の触媒物質は、図1において二次元図に示される。上記触媒は、上記酵母細胞表面上の単層を形成する。これは、均質な触媒作用の特性を与え、さらに、上記触媒の効率的な分離および迅速なリサイクルを可能にする。
【0030】
I.細胞および他の生物学的支持体
種々の生物学的細胞は、本発明の実施形態における使用に適切である。当業者は、多くの微生物株が本発明の実施形態における使用に適していることを認識する。酵母株が好ましい。酵母株Saccharomyces cerevisiaeは、本発明の実施形態において特に有用である。なぜなら、一部は、酵母ゲノムは広範囲に研究されているからであり、食品医薬品局によるGRAS(「一般に安全と考えられる(Generally Regarded As Safe)」)状態を享受するからである。Saccharomyces cerevisiaeは、迅速に増殖し得かつ融通の利くDNA形質転換系を有するモデル真核生物として認識される。
【0031】
背景情報、ならびに一般に酵母、特にS.cerevisiaeを増殖し、試験しそして保存するための例示的方法および培地は、例えば、Sherman,F.,「Getting Started with Yeast」,Dept.of Biochem.and Biophysics,Univ.of Rochester Med.Sch.(August 2003)(Sherman,F.,「Getting Started with Yeast」,Methods Enzymol,350:3−41(2002)(本明細書中以降「Sherman(I)」)から改作されている)において;そしてSherman,F.,「An Introduction to the Genetics and Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces cerevisiae」,Dept.of Biochem.and Biophysics,Univ.of Rochester Med.Sch.(1998)(Sherman,F.,「Yeast Genetics」The Encyclopedia of Molecular Biology and Molecular Medicine」6:302−325(R.A.Meyersにより編集,Weinheim,Germany,1997)から変更);ならびにBurke,D.ら,「Methods in Yeast Genetics:A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,2000);Colbyら,「Engineering Antibody Affinity by Yeast Surface Display」Methods Enzymol.388:348−58(2004)に見いだされる。
【0032】
いくつかの非酵母微生物およびビリオンはまた、研究されかつ本発明の実施形態において有用であり得るディスプレイ機構を有する。例えば、Escherichia coliは、PgsAアンカーの補助により、酵素の表面ディスプレイのために使用され得る。Naritaら,「Display of Active Enzymes on the Cell Surface of Escherichia coli using PgsA Anchor Protein and Their Application to Bioconversion」,Appl.Microbiol.Biotechnol.(2005)。アンカーとしてfadLを使用するリパーゼのディスプレイが報告された。Lee,S.H.ら,「Display of Bacterial Lipase on the Escherichia coli Cell Surface by Using FadL as an Anchoring Motif and Use of the Enzyme in Enantioselective Biocatalysis」,Appl.&Env.Microbiol.70(9):5074−80(2004)。Lactococcus lactis上でのタンパク質の細胞表面ディスプレイがまた報告された。Steidlerら,「Functional Display of a Heterologous Protein on the Surface of Lactococcus lactis by Means of the Cell Wall Anchor of Staphylococcus aureus Protein A」 Appl.&Env.Microbiol.64(1):342−345(1998)。
【0033】
他の実施形態において、上記生物学的支持体はビリオンであり得る。ビリオンは、完全なビリオン粒子としてかまたは「裸の」ビリオンと呼ばれるかのいずれかである(これらは、ウイルスゲノムを欠いているウイルス粒子である)、真核生物ウイルスまたはバクテリオファージであり得る。適切な真核生物ウイルスとしては、遺伝子操作目的で一般に使用されるものが挙げられ、例えば、バキュロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレトロウイルスが挙げられる。同様に、適切なバクテリオファージとしては、例えば、λファージ(Lysogen)、T4ファージ、T7ファージ、R17ファージ、M13ファージ、MS2ファージ、G4ファージ、P1ファージ、P2ファージ、N4ファージ、φ6ファージ、およびφ29ファージが挙げられる。M13の繊維状ファージ(M13、fd、およびflが挙げられるが、これらに限定されない)が好ましい。バクテリオファージの表面上にレセプターをディスプレイする方法は、当該分野で周知である。ファージディスプレイは、例えば、Willats,W.G.T.,「Phage Display:practicalities and prospects」,Plant Mol.Biol.50:873−54(2002);Bassら,「Hormone Phage:An Enrichment Method for Variant Proteins with Altered Binding Properties」,Proteins:Structure,Function,and Genetics,8:309−314(1990);およびZucconiら,「Selection of Ligands by Panning of Domain Libraries Displayed on Phage Lambda Reveals New Potential Partners of Synaptojanin 1」,J.Mol.Biol.307:1329−1339(2001)(これらは全て、本明細書に参考として援用される)に報告されている。アビジンディスプレイバキュロウイルスの作製および使用は、Ratyら,「Enhanced Gene Delivery by Avidin−Displaying Baculovirus」,Mol.Therapy 9(2):282−291(2004)によって報告されている。バクテリオファージT7を使用する表面ディスプレイは、「T7 Select(登録商標) System Manual」,TB 178 Rev.B0203,Novagen,Inc.による著作権(2003)において報告されている。
【0034】
II.固定タンパク質
当業者は、種々の固定タンパク質が本発明の実施形態において使用され得ることを認識する。理想的には、固定タンパク質は、細胞機能または細胞構造にとって必須ではなく、それによって、細胞または他の生物学的支持体に対する増殖欠陥または機能的問題を避ける。Leeら,「Microbial Cell−Surface Display」 Trends in Biotech.21(1):45−52(2003)。Leeらは、固定タンパク質の有益な特徴を報告している:
首尾よいキャリアは、以下の4つの要件を満たすべきである:上記キャリアは、未熟(premature)融合タンパク質が内膜を通って行くことを可能にするのに効率的なシグナルペプチドまたは輸送シグナルを有するべきである;上記キャリアは、細胞表面上に融合タンパク質を分離することなく保持するために、強い固定構造(strain anchoring structure)を有するべきである;上記キャリアは、挿入または融合されるべき外来の配列と適合性であるべきである(すなわち、上記キャリアは、異種配列の挿入または融合に対して不安定にならないはずである);そして、上記キャリアは、細胞周辺腔または培地中に存在するプロテアーゼによる攻撃に抵抗するべきである。
【0035】
BoderおよびWittrup(前出)は、目的のタンパク質に融合され得かつ細胞壁に固定され得る2種の細胞表面レセプターを報告している。これらレセプター(a−アグルチニンおよびα−アグルチニン)は、酵母が二倍体形成の前に細胞融合を可能にするために通常使用される。
【0036】
BoderおよびWittrupは、S.cerevisiaeの細胞壁上での機能的抗フルオレセインscFvおよびc−mycエピトープタグの酵母細胞表面ディスプレイの開発において、a−アグルチニンを使用することを報告している。彼らは、このことがAga2タンパク質(配列番号8)へ目的のタンパク質をC末端融合することによって達成されたことを主張している。上記Aga2タンパク質は、Agalタンパク質サブユニット(配列番号2)にジスルフィド結合によって連結される。次に、上記Agalサブユニットは、β−グルカン共有結合によって細胞壁に固定される。BoderおよびWittrupは、Aga2−scFv融合物が誘導性GAL1プロモーター(配列番号9)の制御下に置かれているベクターの構築物をさらに報告している。上記Agalタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号10に示される。上記Aga2タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号11に示される。α−アグルチニン遺伝子(sagl)をコードする核酸配列は、配列番号12に報告される。
【0037】
これらタンパク質を固定するための多くの方法が、図1に示されるように、記載されてきた。これら方法としては、α−アグルチニンのC末端側半分のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー接着、a−アグルチニンのN末端側半分のGPIアンカー接着(C末端部分への硫黄結合と組み合わせられる)、フロキュリンFlolpのC末端領域のGPI固定、フロキュリンFlolpのN末端固定(GPI固定なし)が挙げられる。フロキュリンFlolp(配列番号3)のC末端領域の上記GPIアンカー長は、例えば、42アミノ酸、102アミノ酸、146アミノ酸、318アミノ酸、428アミノ酸、および1326アミノ酸の長さを有し得る。Flolpは、例えば、配列番号13の核酸配列によってコードされる。GPIアンカー(これは、タンパク質−CO−NH−CH2−CH2−PO4−6−マンノース(Man)α1,2−Man−α1,6−Man−α1,4−GlcN−α1,6−イノシトール−PO4−脂質の保存されたコア構造を有する)は、Newmanら,「Gpi19,the Saccharomyces cerevisiae Homologue of Mammalian PIG−P, Is a Subunit of the Initial Enzyme for Glycosylphosphatidylinositol Anchor Biosynthesis」,Eukaryotic Cell,4(11):1801−1807(2005);Eisenhaberら,「Enzymes and Auxiliary Factors for GPI Lipid Anchor Biosynthesis and Post−translational Transfer to Proteins」,BioEssays,25:367−385(2003);Kinoshita,T.&Inoue,N.,「Dissecting and Manipulating the Pathway for Glycosylphosphatidylinositol−anchor Biosynthesis」,Curr.Opin.Chem.Biol.4:632−638(2000);McConville,M.J.&Menon,A.K.,「Recent Developments in the Cell Biology and Biochemistry of Glycosylphosphatidylinositol Lipids」,Mol.Membr.Biol.17:1−17(2000);Pringleら,(編),「Molecular and Cellular Biology of the Yeast Saccharomyces cerevisiae」Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.におけるOrlean,P.,「Biogenesis of Yeast Wall and Surface Components」,p.229−362;ならびにTiedeら,「Biosynthesis of Glycosylphosphatidylinositols in Mammals and Unicellular Microbes」,Biol.Chem.380:503−523(1999)において議論されている。
【0038】
酵母細胞において有用な他の固定タンパク質は、本発明の実施形態において使用され得る。これらとしては、例えば、例えば、配列番号21の核酸配列によってコードされるCwplp(配列番号14)のC末端フラグメント;例えば、配列番号22の核酸配列によってコードされるCwp2p(配列番号15);例えば、配列番号23の核酸配列によってコードされるTiplp(配列番号16);例えば、配列番号24の核酸配列によってコードされるTirlp(配列番号17);例えば、配列番号38の核酸配列によってコードされるSedlp(配列番号18);YCR89(配列番号25)のフラグメントであるYCR89−313(配列番号19);YCR89−744(配列番号20)、Flolp−344、およびFlolp−596が挙げられるが、これらに限定されない。これら固定タンパク質の使用方法、およびそれらの効力は、van der Vaart,J.M.ら,「Comparison of Cell Wall Proteins of Saccharomyces cerevisiae as anchors for Cell Surface Expression of Heterologous Proteins」,App.&Env.Microbiol.63(2):615−620(1997)に報告されている。
【0039】
III.レセプタータンパク質
広い範囲のタンパク質が、報告されるところによれば、細胞表面上にディスプレイされてきた。これらタンパク質は、細胞の形質膜を貫通して伸びることによってかまたは細胞膜表面との共有結合的相互作用もしくは非共有結合的相互作用によってかのいずれかで、細胞の外側にディスプレイされ得る。代表的には、酵母細胞は、上記細胞の表面上にタンパク質を発現することによって、そして上記タンパク質を、上記固定タンパク質のうちの1つと融合することによって、つなげられる(armed)。必須ではないものの、理想的には、上記融合タンパク質をコードする遺伝子は、上記酵母細胞のゲノムに組み込まれ得る。この組み込みは、当業者に公知の方法によって達成され得る。例えば、上記酵母細胞は、リチウム塩法、組み込み複製ベクター、スフェロプラスト、「遺伝子銃」、またはエレクトロポレーションを使用して形質転換され得る。
【0040】
Kondo(前出)によれば、報告されるところによれば、α−アグルチニン結合を用いて酵母細胞の表面上にディスプレイされたタンパク質としては、Rhizopus oryzaeグルコアミラーゼ、Bacillus stearothermophilus α−アミラーゼ、Aspergillus aculeatus β−グルコシダーゼ、Trichoderma reeseiエンドグルカナーゼ、Rhizopus oryzaeリパーゼ、およびAequorea victoria GFP(BFP、ECFP、EYFP、アポエクオリン、ヘキサ−His、ZZ、および抗体のFabフラグメントを含む)が挙げられる。a−アグルチニン系を用いてディスプレイされたタンパク質としては、一本鎖抗体および一本鎖T細胞レセプターが挙げられる。FlolpのC末端領域を用いてディスプレイされたタンパク質としては、Rhizopus oryzaeグルコアミラーゼおよびEGFPが挙げられる。Flolpの凝集機能ドメインを用いてディスプレイされたタンパク質としては、Rhizopus oryzaeリパーゼおよびEGFPが挙げられる。当業者は、この開示の利益から、ディスプレイされ得る他のタンパク質を認識する。
【0041】
適切な結合するリガンドの本体は、触媒作用支持体物質によって示されるレセプタータンパク質に依存して変化する。例えば、上記触媒支持体がレクチンをディスプレイするのであれば、有機性触媒は、そのレクチンと結合するグリカンが、上記触媒上の側鎖に接着されるように改変され得る。
【0042】
上記触媒支持体はまた、抗原抗体結合対のうちの一方のメンバーをディスプレイし得る。用語「抗体」は、可変性領域および定常領域(ここで上記可変領域が抗原に結合する)を有する任意のタンパク質分子を含むために、最も広い範囲で本明細書において使用される。従って、用語抗体は、IgG、IgM、およびIgAクラスのScFv分子、一本鎖T細胞レセプター分子、ならびにジスルフィド結合によって連結された一本鎖T細胞レセプター分子の複数鎖バージョンを包含する。上記触媒支持体が抗体に融合された固定タンパク質を含む場合、上記抗体は、好ましくは、ScFvであり、その大部分の場合、上記リガンドは、その対応する抗原である。上記抗原は、少なくとも、上記抗体を結合するエピトープタグを含み、上記リガンドまたはリガンド触媒対をつなぐために使用され得る1種以上の非エピトープ領域もまた含み得る。Kiekeらは、エピトープタグとして使用され得る多くのポリペプチド配列を報告している。Kiekeによって報告されたタンパク質は、表面タンパク質によって融合され得、抗体によって結合され得る。本明細書中の開示を利用して、当業者は、Kiekeの抗体が触媒に結合され得、次に、それらエピトープタグをディスプレイする細胞表面につながれることに気づく。
【0043】
当業者は、本発明における使用に適切であり得る他のレセプター/リガンド組み合わせを企図する。これらは、例えば、アビジン/ビオチン組み合わせおよびストレプトアビジン/ビオチン組み合わせを含む。
【0044】
レセプタータンパク質を発現する酵母細胞は、上記ディスプレイされたレセプタータンパク質に結合するように設計されたリガンドに結合され得る任意の触媒のための触媒作用支持体物質として作用し得る。従って、単一の酵母系統が、支持体に使用され得、次に、複数触媒に使用され得る。
【0045】
ビオチン/アビジン相互作用
好ましい実施形態において、ビオチン/アビジン結合は、上記レセプタータンパク質に上記触媒をつなぐために使用され得る。ビオチン/ストレプトアビジン結合もまた、使用され得る。これらは、例えば、アビジンもしくはストレプトアビジンを酵母細胞の表面上にレセプタータンパク質としてディスプレイし、ビオチンを上記触媒に結合させることによって達成され得る。上記細胞および触媒は混合され、強いビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジンの結合相互作用が、上記細胞に上記触媒をつなぐ。
【0046】
上記ビオチン/アビジン相互作用は、広く研究されてきており、同様に、ビオチン化に必要とされる手順および試薬が広く研究されてきている。ビオチン/アビジン化学作用およびビオチン/ストレプトアビジン化学作用は、ビオチン化のための試薬および方法、ならびにビオチン化分子の検出を含め、M.D.Savageら,「Avidin−Biotin Chemistry:A Handbook」(Pierce Chemical Co.,1992)において議論されている。ストレプトアビジンとともに組み込んだビオチン化金属触媒を使用する金属酵素の作製は、Skanderら,「Chemical Optimization of Artificial Metalloenzymes Based on the Biotin−Avidin Technology:(S)−selective and Solvent−tolerant Hydrogenation Catalysts via the Introduction of Chiral Amino Acid Spacers」,Chem.Commun.,4815−4817(2005)において報告されている。
【0047】
タンパク質(抗原および抗体の両方を含む)のビオチン化は、ELISA/EIA手順において広く使用されている。この広範にわたる使用は、当業者がどのようにして分子を最もよくビオチン化するかを決定する方法および試薬のライブラリーを提供する。この開示の利益から、それら技術は、酵母細胞につながれるべき触媒をビオチン化するために使用され得る。例えば、Alpha Diagnostic Internationalは、ロングアームビオチン(long−arm biotin)(アミノヘキサノイル−ビオチン N−ヒドロキシスクシンイミド)を使用して、タンパク質のビオチン化するための以下の試薬および方法を報告している。上記ADIビオチン化は、上記ビオチン化タンパク質上に少なくとも1つの遊離アミノ基を要し、理想的には、そのタンパク質は、カップリング効率を改善するために、アミン含有緩衝剤(例えば、Tris)を含まない:
ADIキット中に提供される試薬:
1.ビオチン1バイアル(10mg;Cat#80301)
2.結合緩衝液(pH8.4,100ml,Cat#80302)
3.安定化緩衝液;5ml,Cat#80303。
【0048】
必要であるがADIキット中に提供されていない試薬:
1.結合体を透析するためのPBS(pH7.4)(0.26g KH2PO4、2.17g Na2HPO4・7H2O、および8.71gのNaClを1L H2Oに溶解する)。
2.透析バッグ(カットオフサイズ<10,000kDa)
3.ビオチンを溶解するためのDMF。
【0049】
手順
1.1×結合緩衝液(0.1M NaHCO3,pH8.4)中で結合させるためにタンパク質を徹底的に透析する。上記タンパク質濃度は、1〜10mg/mlであるべきである。上記タンパク質が純粋形態であるかまたは生理食塩水中もしくはH2O中に存在するのであれば、10×結合緩衝液を添加し、透析を省略することによって、そのpHを調整することが可能である。
2.使用前に、ビオチンをDMF中に、10mg/mlで溶解する。所定の比率の溶解したビオチンタンパク質溶液を、タンパク質溶液に、連続して混合しながらゆっくりと添加する。1:10(ビオチン:タンパク質)の比率が、ヤギ抗体またはウサギ抗体のために使用され得る。室温で1時間または4℃で一晩、それを混合する。
3.そのビオチン−結合体をPBSに対して4℃で徹底的に透析する。
4.安定化緩衝液を、その透析した結合体に添加する(出発タンパク質容量各500μlに対して2ml添加する)。
5.その結合体は、4℃で6ヶ月間まで保持され得る。凍結および融解を回避する。
【0050】
アビジンをコードする代表的な核酸配列は、配列番号28に提供される。ストレプトアビジンをコードする代表的な核酸配列は、配列番号29に提供される。アビジンの代表的なアミノ酸配列は、配列番号26に提供される。ストレプトアビジンの代表的なアミノ酸配列は、配列番号27に提供される。
【0051】
IV.プラスミド
多くのプラスミドが、固定タンパク質、レセプタータンパク質およびこれらの融合物の発現のために適切である。多くのプラスミドがまた、酵母ゲノムへのこれらタンパク質をコードする核酸の組み込みのためおよびそのコード配列の発現のために利用可能である。発現プラスミドは、代表的には、上記タンパク質をコードする核酸の発現のためのプロモーターエレメントを含む。発現プラスミドはまた、発現されたタンパク質を細胞表面にタンパク質を運ぶための細胞輸送装置に指向するように、コード配列への融合のために、シグナルペプチドおよび輸送ペプチド配列(transit peptide sequence)を含み得る。Boder,E.T.&Wittrup,K.D.,「Yeast Surface Display for Directed Evolution of Protein Expression,Affinity,and Stability」,Methods in Enzymology,25:430−444(2000)(本明細書中以降「Boder&Wittrup(II)」)は、pCT302プラスミドの構築を報告している。このpCT302プラスミド(図4に示される)は、Aga2pアグルチニン接合タンパク質へのタンパク質融合物の発現を可能にする。発現は、GAL1,10ガラクトース誘導性プロモーターの制御下にある。上記プロモーターの5’隣接配列(配列番号4)および3’隣接配列(配列番号5)の両方が報告された。Boder&Wittrup(II)はまた、この報告されたプラスミドの使用を通じて、細胞表面上に固定されたタンパク質の検出法を報告している。
【0052】
酵母細胞表面ディスプレイに有用な別のプラスミドは、Invitrogenによって提供されるpYD1 Yeast Display Vector Kitである。pYD1(配列番号6)のマップは、図5として含められる。pYD1のポリリンカー(配列番号7)は、図6として含められ、制限マップは、図7として含められる。Invitrogenによれば、「pYD1は、Saccharomyces cerevisiae細胞の細胞外表面上にタンパク質を発現、分泌、およびディスプレイするために設計された、5.0kbの発現ベクターである。このベクターの特徴は、発現されるタンパク質の制御された発現、分泌および検出を可能にする・・・。」このベクターは、以下のエレメントを含む:
(a)Saccharomyces cerevisiae由来のAGA2遺伝子。この遺伝子は、a−アグルチニンレセプターのサブユニットのうちの1つをコードする。AGA2への目的の遺伝子の融合は、目的のタンパク質の分泌およびディスプレイを可能にする。
【0053】
(b)AGA2遺伝子融合物の制御された発現のためのGAL1プロモーター
(c)ディスプレイされるタンパク質の検出のためのXpressTMエピトープおよびV5エピトープ
(d)検出および金属キレート化樹脂上での考えられる精製のためのポリヒスチジン(6×His)タグ
(e)Saccharomyces cerevisiaeにおける選択のためのTRPl遺伝子
(f)酵母における安定なエピソーム複製のためのCEN6/ARS4
(g)E.coliにおける選択および複製のためのアンピシリン耐性遺伝子およびpUC起点。
pYD1プラスミドの調製および使用のための方法は、「pYD1 Yeast Display Vector Kit」,Catalog No.V835−01,Version D,December 10,2002,25−0259,Invitrogenに示されている。
【0054】
V.触媒
種々の触媒が、本発明の実施形態において有用である。本発明における使用に適切であるために、触媒は、レセプタータンパク質につながれる(例えば、吸着されるかまたは結合されるかのいずれか)リガンドに、触媒が結合されるように、改変され得るべきである。次に、上記レセプタータンパク質は、細胞表面に固定される。理想的には、触媒はまた、上記酵母細胞によって有害でもなく、破壊的でもないべきである。触媒は、無機性であってもよいし、有機性であってもよい。
【0055】
例えば、[{N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルサリチリデン)1,2−シクロヘキサンジアミナト(−2−)}コバルト(2)]は、グリカンが上記触媒の側鎖に接着されるように、改変され得る。このグリカンに適切なレクチンは、上記酵母触媒支持体上にディスプレイされる。上記グリカン保有コバルト触媒およびレクチンディスプレイ酵母支持体は混合され、コバルト触媒が酵母支持体に吸着されるのを可能にする。このことは、コバルト触媒を酵母に固定化し、コバルト触媒が酸化反応において使用されることを可能にする。
【0056】
酸化反応および還元反応に有用な多くの触媒が、本明細書において教示されるように、リガンドに結合され得、細胞表面、特に酵母細胞表面につながれ得る。例えば、触媒は、遷移金属、ニトロキシルラジカル、または支持貴金属であり得る。以下の支持触媒は、当業者に公知でありかつ本明細書に示される方法に従ってビオチン化され得、次いで、アビジンディスプレイ酵母細胞もしくはストレプトアビジンディスプレイ酵母細胞につながれる。上記酵母細胞は、各場合において記載される支持体として作用する。各触媒は、触媒:クロロメチルポリスチレン樹脂−1,10−フェナントロリンルテニウム(Kang,Q.ら,「Catalytic Oxidation of Alcohols with Polymer−supported Ruthenium Complex under Mild Conditions」,J Organometallic Chem.,26:690(2005));2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)ファミリーのポリ(エチレングリコール)支持ニトロキシルラジカル(Ferreira,P.ら,「Catalytic Oxidation of Alcohols using Molecular Oxygen Mediated by Poly(ethyleneglycol)−supported Nitroxyl Radicals」,Applied Catalysis,61:3−4(2005))およびCiriminnaら,「Sol−gel Entrapped TEMPO for the Selective Oxidation of Methyl α−D−glucopyranoside」,Chem.Commun.,1441−1442(2000);Rh6クラスター触媒およびOs6クラスター触媒(Pomogailo,S.I.ら,「Synthesis and Catalytic Properties of Polymer−immobilized Noble Metal Clusters」,PMSE Preprints,93:945(2005));バナジウム触媒(Kirihara,M.ら,「Aerobic Oxidation catalyzed by Polymer−supported Vanadium Compounds」,ITE Letters,5(5):479−482(2004);マンガンポルフィリン(Moghadam,M.ら,「A Convenient Preparation of Polymer−supported Manganese Porphyrin and Its Use as Hydrocarbon Monooxygenation Catalyst」,J.Mol.Catalysis,217(1−2):9−12(2004);ビス(サリチリデンエチレンジアミン)のCo(II)錯体(CoSalen)(Finashina,E.D.ら,「Oxidation of Catecholamines on Chitosan−immobilized Co(II) Salen Complexes」,Macromolecular Symposia,204:205−217(2003);銅(ii)イオン(Owsid,I.ら,「Immobilized Cu(II) Ions as the Oxidation Catalysts」,Zeszyty Naukowe Politechniki Slaskiej,Chemia,146:113−116(2001);ホモキラルパラジウム錯体 ポリマー性ポリマー性の2’−固定,6−固定および6’−固定の2−ジフェニルホスフィノ−1−1’−ビナフチル(MOP)リガンド(Hocke,H.&Uozumi,Y.,「PS−PEG Resin−supported Palladium−MOP Complexes.Application in Asymmetric π−allylic Reduction」,Tetrahedron,60(41):9297−9306(2004);オキソアザボリリジン(oxazaborolidine)(Franot,Cら,「A Polymer−bound Oxazaborolidine Catalyst:Enantioselective Borane Reductions of Ketones」,Tetrahedron:Asymmetry,6(11):2755−66(1995)を記載する刊行物によって理解される。
【0057】
複数の触媒が、単一の細胞表面につながれ得る。上記細胞が単一のタイプのレセプタータンパク質のみを有しているのであれば、これは、各触媒を同一のリガンドに結合させることによって達成され得る。例えば、上記細胞表面がアビジンをディスプレイしているのであれば、2種以上の異なる触媒が、別個のビオチン分子に接着され得る。類似の結果が、細胞の表面上に1種より多いレセプタータンパク質を発現させ、次いで、異なるリガンド(各リガンドは、異なるレセプタータンパク質に結合するように設計され得る)に結合される異なる触媒を提供することによって達成され得る。
【実施例】
【0058】
以下の実施例は、本発明の実施にあたって、当業者を導くことが意図される。実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって外延が規定される。
【0059】
(実施例1)
実施例1は、sec−フェネチルアルコールのアミノスルホンアミドルテニウム錯体酸化を提供する。この触媒ビオチン複合体は、J.Collotら,J.Am.Chem Soc.125(2003)に報告される方法によって調製する。この複合体を、水中でアビジンディスプレイ酵母と混合して、固定化無機触媒/酵母複合体を調製し、この酵母を、全ての非結合触媒から遠心分離によって分離する。以下の条件下で酸化を行う:室温で90時間、窒素雰囲気:62.5ミリモルのフェネチルアルコール、および75ミルモルのtert−ブチルヒドロペルオキシドを、500mlの水と100mlのアセトンとの混合物中で混合する。この混合物に、0.25ミリモルのビオチン金属酵素複合体を有する固定化複合体を添加する。反応が完了すると、酸化フェネチルアルコールが観察される。上記酵母金属酵素複合体を、濾過または遠心分離により、反応混合物から除去する。
【0060】
(実施例2)
実施例2は、ビオチン化触媒合成を提供する。ビオチン(0.1mol)を、60℃で、90mLのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解する。(上記アミドの1つの合成は、S.Amslingerら,Tetrahedron 60(2004)11565−11569に報告されている)。次いで、上記溶液を室温に冷却し、0.1molのN,N’−カルボニルジイミダゾールを窒素下で添加する(約7時間)。反応が完了したときに、二酸化炭素放出は止まる。等モル量(0.1mol)の所定のNH2−R(ここでRは適切な触媒作用部位である)を、125mLのDMF中で添加し、24時間攪拌する。例えば、上記NH2−R化合物は、アミノ−TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−オキシ−4−ピペリジニル)アミンであり得る。DMFを、60℃で、真空下で除去し、次いで、その生成物を、フラッシュクロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィーまたは再結晶化によって精製し得る。
【0061】
(実施例3)
実施例3は、アビジン酵母細胞表面ディスプレイプラスミドの構築を報告する。短縮化アビジンタンパク質(配列番号42)をコードする短縮化アビジンDNA(配列番号41)を、PCRのテンプレートとしてニワトリアビジンcDNAクローンを使用して、以下のプライマーを使用する30サイクルのPCR増幅によって行う:順方向,CGAACTGGATCCTCTCCCAGAAAGTGCTCGCTG(配列番号30)および逆方向,CGGATCCTCGAGTCACTCCTTCTGTGTGCG(配列番号31)。この増幅したDNAをBamHIおよびXhoIで切断し、BamHIおよびXhoIで切断したベクターpYD1(Invitrogen)に連結する。
【0062】
得られたクローンをE.coliに形質転換し、形質転換体を単離し、配列決定して、アビジンおよびaga2タンパク質の適切なインフレーム融合物を確認する。次いで、正確な構築物を、コンピテントS.cerevisiae細胞を調製するために、Invitrogen S.c.EasyComp Kitを用いて、Saccharomyces cerevisiae EBY100(Invitrogen)に形質転換する。アビジン−Aga2融合タンパク質の発現を、Invitrogenの説明書に従って、2% ガラクトースを含有するYNB−CAA培地中、少なくとも約4時間、形質転換細胞を増殖させることによって達成する。アビジン分子の細胞表面ディスプレイは、蛍光分子(例えば、Atto 425−ビオチン(Flukaから市販)と結合体化したビオチンを使用して確認される。
【0063】
(実施例4)
実施例4は、グルコピラノシドのTEMPO触媒酸化を提供する。tempo/ビオチン複合体は、実施例2の方法によって調製される。次いで、この複合体を、アビジンタンパク質をディスプレイして、固定化Tempo複合体を形成する酵母細胞の懸濁物と混合し;非結合Tempoを、遠心分離によって酵母から分離する。この複合体を、pH10および20℃において、αメチルグルコシド(25mM)およびNaOCl(50mM)の水溶液と混合する。反応が完了すると、αメチルグルクロン酸が観察される。上記触媒複合体は、遠心分離によって上記混合物から容易に分離される。例えば、R. Ciriminnaら,「Sol−gel entrapped TEMPO for the selective oxidation of methyl−α−D−glucopyranoside」,J.Chem.Soc.Chem.Comm.,1441−1442(2000)から、上記TEMPO触媒に関するさらなる情報が得られ得る。
【0064】
(実施例5)
実施例5は、カップリング酵素反応を示す。グルコースオキシダーゼおよびカタラーゼのビオチン化形態は、上記で議論されるように調製される。これらを、6 IUのカタラーゼ 対 1 IUのグルコースオキシダーゼの割合で混合する。アビジンをディスプレイする酵母細胞を、酵素活性の全てを吸収する量でこの混合物に添加する。この触媒作用性複合体を、約25℃で6.0にpH制御した10% デキストロース溶液に添加する。約24時間通気する。この反応が完了すると、グルコン酸が観察され、この反応の間に精製された過酸化水素の全てが、カタラーゼによって分解される。この触媒複合体は、濾過によって容易に回収される。
【0065】
一般に、酵素の挙動および触媒作製に関するさらなるガイダンスは、M.T.Reetz,「Controlling the Enantioselectivity of Enzymes by Directed Evolution:Practical and Theoretical Ramifications」,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,101:5716−5722(2004)、Wilson,M.E.およびWhitesides,G.M.,「Conversion of a Protein to a Homogeneous Asymmetric Hydrogenation Catalyst by Site−Specific Modification with a Diphosphinerhodium(I) Moiety」,J.Am.Chem.Soc,100:306−307(1978);ならびにC.M.Thomasら,「Aqueous Oxidation of Alcohols Catalyzed by Artificial Metalloenzymes based on the Biotin−Avidin Technology」,J.Organomet.Chem.,690:4488(2005)から得られ得る。
【0066】
(実施例6)
実施例6は、ストレプトアビジンが表面上にディスプレイされたT7バクテリオファージの構築を示す。短縮化ストレプトアビジンタンパク質(配列番号44)をコードする短縮化ストレプトアビジンDNA(配列番号43)を、以下のプライマー:
順方向,GCGAATTCAGACCCCTCCAAGGACTCG(配列番号32)および逆方向,GCAAGCTTCTACTGCTGAACGGCGTC(配列番号33)、
を使用して、ならびにテンプレートとしてStreptomyces avidinii(ATCC 27419D)のゲノムDNAを使用して、30サイクルのPCR増幅によって作製する。
【0067】
上記増幅DNAを、EcoRIおよびHindIIIで切断し、NovagenのT7Select Cloning Kit中で提供される、NovagenのT7Select 10−3b EcoRI/HindIIIベクターアームに連結する。この連結反応物を、Novagenによって供給される手順に従うインビトロパッケージングのために、T7パッケージング抽出物に添加する。種々のクローンを配列決定のために選択し、T7キャプシドタンパク質10Bへの上記ストレプトアビジン遺伝子の適切な融合物を有するものを、さらなる研究のために選択する。表面上にアビジンがディスプレイされた正確なT7ファージを適用し、ファージ粒子を回収する。
【0068】
(実施例7)
実施例7は、E.coliの株の細胞表面上にストレプトアビジンをディスプレイするためのプラスミドの構築を報告する。短縮化fadL遺伝子(配列番号40)を、以下のプライマー:
順方向,GGAATTCATGGTCATGAGCCAGAAAACC(配列番号34)および逆方向,GCTCTAGAACGATTCTGTGCAGGAAC(配列番号35)
を使用して、ならびにE.coliゲノムDNA(ATCC 700926D)を使用して、PCR増幅によってクローニングする。
【0069】
このPCR生成物を、EcoRIおよびXbaIで切断し、EcoRIおよびXbaIで切断したpTrc99Aにクローニングして、pTrcFadLといわれるプラスミドを作製する。このストレプトアビジンDNAを、以下のプライマー:
順方向,GCTCTAGAGACCCCTCCAAGGACTCG(配列番号36)、および逆方向,GCAAGCTTCTACTGCTGAACGGCGTC(配列番号33)を使用して、ならびにテンプレートとしてStreptomyces avidinii(ATCC 27419D)ゲノムDNAを使用して、PCRによって作製する。
【0070】
上記ストレプトアビジンDNAを、XbaIおよびHindIIIで切断し、XbaIおよびHindIIIで消化したpTrcFadLに連結する。これは、pTrcFadL−ストレプトアビジン(配列番号37)といわれるプラスミドを生じ、このプラスミドは、fadL遺伝子生成物(配列番号40)およびストレプトアビジンタンパク質のインフレーム融合物である。このプラスミドを、TOP10 E.coliコンピテント細胞(Invitrogen)に形質転換し、アンピシリン(100mg/L)含有LBに対して選択する。個々のコロニーを試験して、アンピシリン(50mg/L)およびイソプロピルβ−D−1チオガラクトピラノシド(IPTG)含有LB中で上記形質転換細胞を増殖させることによって、細胞表面上でのストレプトアビジンの発現が達成されているか否かを決定する。
【0071】
ストレプトアビジン分子の上記細胞表面ディスプレイは、蛍光分子(例えば、Atto 425−ビオチン(Flukaから市販))とのビオチン結合体を使用して確認される。ストレプトアビジンが細胞表面上にディスプレイされた正確なE.coliを、アンピシリン(50mg/L)および種々の濃度のIPTGの存在下で増殖させて、それらの細胞表面上にストレプトアビジンがディスプレイされた細胞を作製する。
【0072】
本明細書において使用される短縮化fadL遺伝子の開始コドンは、配列番号39の塩基8で始まる。本実施例および他の実施例において使用されるアビジンおよびストレプトアビジンは、ペプチドリーダー配列の除去に起因して短縮されている。当業者は、PCRプライマー配列に基づいて、これらタンパク質が短縮化形態において精製されることを認識する。
【0073】
本発明の特定の実施形態が例示目的で記載されてきたのに対して、本教示の詳細についての多くのバリエーションが、添付の特許請求の範囲において規定されるような本発明から逸脱することなく作製され得ることは、当業者にとって明らかである。本明細書において議論されている特許および刊行物は、当該分野の技術水準を示すものとして示されているべきであるが、任意の文書が先行技術の参考文献であるということを認めるものではない。本明細書において議論される前述の特許および刊行物は全て、参考として援用される。
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2006年10月13日に出願された、係属中の米国仮特許出願第60/851,434号に対する優先権の利益を主張する。米国仮特許出願第60/851,434号は、あたかも完全に本明細書中に再び記載されているかのように参考として本明細書に援用される。
【0002】
(発明の背景)
1.発明の分野
本発明は、合成触媒用の均質な触媒支持体としての表面ディスプレイ技術の使用に関する。本発明の触媒支持体は、それら表面に触媒の均一な(uniform)層を含み、均質な(homogeneous)触媒の特性を有する触媒を可能にすると同時に、上記触媒の効率的な分離およびリサイクルをさらに可能にする。種々の生物学的支持体が本明細書中に教示されているが、酵母細胞支持触媒(yeast cell−supported catalyst)が特に好ましい。
【背景技術】
【0003】
2.背景
A.細胞表面ディスプレイ
多くの微生物およびビリオンは、タンパク質がそれら表面に遺伝子的にディスプレイされるように操作され得る。酵母Saccharomyces cerevisiaeは、しばしばこの目的で使用される。多くの方法、構造、および酵母細胞表面ディスプレイの適用が報告されてきた。非特許文献1;非特許文献2。
【0004】
BoderおよびWittrupは、S.cerevisiaeが哺乳動物細胞のものに類似した、分泌装置およびタンパク質折りたたみ機構の両方を持っていることから、S.cerevisiaeがタンパク質の細胞表面ディスプレイにとって理想的であると報告している(非特許文献3)。他の利点としては、1細胞あたり多数の表面融合物があること、およびフローサイトメトリーを使用して上記細胞を試験できることが挙げられる(非特許文献3)。酵母細胞は、非特許文献4によって報告されるように、異なる安定性および発現レベルのタンパク質をディスプレイし得る。
【0005】
酵母細胞表面ディスプレイ技術は、特許文献1(Wittrupら,「Yeast Cell Surface Display of Proteins and Uses Thereof」)においてさらに報告されている。Wittrupらは、酵母細胞壁にポリペプチドを固定する(anchor)ための遺伝的方法を報告している。特許文献2(Kiekeら,「Yeast Cell Surface Display of Proteins and Uses Thereof,」)は、「目的のポリペプチド」のN末端を、酵母Aga2p細胞壁タンパク質のC末端に融合するための方法を報告している。
【0006】
Kiekeの方法は、評判によれば、scFv抗体フラグメントを酵母細胞壁の外部に固定するために使用され得る。酵母細胞表面ディスプレイはまた、抗体エピトープマッピングにおける使用が報告された。非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;Weaver−Feldhausら,「Directed Evolution for the Development of Conformation−Specific Affinity Reagents using Yeast Display」18(11):527−536(2005);Littleら,「Bacterial Surface Presentation of Proteins and Peptides:An Alternative to Phage Technology?」Trends in Biotechnology 11(1993)もまた参照のこと。
【0007】
細胞表面ディスプレイはまた、報告によれば、環境金属(environmental metal)の吸収に使用されてきた。Wernerus,H.&Stahl,S.,「Biotechnological Applications for Surface− Engineered Bacteria」Biotechnol.Appl.Biochem.40:209−228(2004)。細胞表面ディスプレイはまた、報告によれば、真核生物細胞ディスプレイライブラリーを固体表面に結合するために使用されてきた。Peelleら,特許文献3「Cell Display Libraries」;Andresら,「Immobilization of Saccharomyces cerevisiae Cells to Protein G−Sepharose by Cell Wall Engineering」J.MoI.Microbiol.&Biotech.5(3)161−166(2003)。Staphylococcus aureusからのZZドメイン(これは、免疫グロブリンG(IgG)のFc部分に結合する)の発現がまた、報告された。Shimojyoら,「Preparation of Yeast Strains Displaying IgG Binding Domain ZZ and Enhanced green Fluorescent Protein for Novel Antigen Detection Systems」J.Biosci&Bioeng.96(5):493−495(2003)。
【0008】
Kondoは、酵母細胞表面ディスプレイが生体触媒作用のために使用されたことを報告している;しかし、Kondoの生体触媒は、それらの一般的適用性を妨げる多くの欠点を有する。例えば、生体触媒は、酵母細胞の表面に直接結合される。このような触媒は、必要性が生じたときに他の触媒の代わりに交換されない可能性があり、そして科の(familial)酵母株が単一の生体触媒形態に限定される。さらに、求められていない標的に吸着される生体触媒は、細胞に変更できない損傷を与えることなく、この細胞を除去または分離するのが困難であるかまたは不可能である。生体触媒はまた、伝統的に、細胞表面上に直接発現され得るそれら触媒(例えば、タンパク質分子または酵素)に限定される。
【0009】
酵母以外の微生物を使用する細胞表面ディスプレイがまた、報告された。例えば、Wangら,「Specific Adhesion to Cellulose and Hydrolysis of Organophosphate Nerve Agents by a Genetically Engineered Escherichia coli Strain with a Surface−Expressed Cellulose−Binding Domain and Organophosphorus Hydrolase」,App.and Env.Microbiol.68(4):1684−1689(2002)は、有機リン化合物加水分解酵素(OPH)およびセルロース結合ドメインをディスプレイするあるE.coli株を使用した、パラチオンおよびパラオクソンの分解を報告している。上記OPHは、Lpp−OmpA融合系または短縮された氷核形成タンパク質アンカー(truncated ice nucleation protein anchor)を使用して、細胞表面上に発現された。
【0010】
B.触媒支持体
大きさが均一でかつ触媒を触媒支持体の表面を均一に覆うように配置させた触媒支持体が必要である。均一な支持体は、多くの利点を提供し、その利点としては、拡散の効果および触媒部位間の差異を最小にすることが挙げられる。触媒支持体はまた、いくつかの触媒の便利な取り扱いを補助し得る。
【0011】
概して均一な無機触媒支持体の一例は、特許文献4(Yuengら)において見いだされ得る。この特許文献4は、金属酸化物結晶に固定された金属触媒を含む触媒性物質を報告している。この金属触媒は、金属酸化物の表面上のヒドロキシル基との相互作用によって、金属酸化物の表面に固定される。
【0012】
触媒(例えば、特許文献4において報告されるもの)は、多くの欠点を有する。例えば、これらは、有機的用途には不適切であり得る。さらに、これらは、金属触媒の使用のみを許容し得る。それらの生成はまた、高価であり得、そしてそれらの構築は、触媒再生を困難にし得る。各支持体は、単一の触媒に限定され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,423,538号明細書
【特許文献2】米国特許第6,300,065号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0003387号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0009354号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Kondo,A.,およびUeda,M.,「Yeast Cell−Surface Display−Applications of Molecular Display」,Appl.Microbiol.Biotechnol.(2004)64:28−40
【非特許文献2】Ueda,M.& Tanaka,A.,「Cell Surface Engineering of Yeast:Construction of Arming Yeast with Biocatalyst」J.Biosci.and Bioeng.(2000)90(2):125−136
【非特許文献3】Boder,E.T.&Wittrup,D.K.,「Yeast Surface Display for Screening Combinatorial Polypeptide Libraries」,Nature Biotech.(1997)15:553−557
【非特許文献4】Parkら,「Limitations of Yeast Surface Display in Engineering Proteins of High Thermostability」,PEDS,(2006)19(5):211−217
【非特許文献5】Chaoら,「Fine Epitope Mapping of Anti−Epidermal Growth Factor Receptor Antibodies Through Random Mutagenesis and Yeast Surface Display」,J.MoI.Biol.(2004)342(2):539−550
【非特許文献6】Colbyら,「Development of a Human Light Chain Variable Domain (VL) Intracellular Antibody Specific for the Amino Terminus of Huntingtin via Yeast Surface Display」,J.Molec.Biol.(2004)342(3):901−912
【非特許文献7】Min Li,「Applications of Display Technology in Protein Analysis」,Nature Biotech.(2000)18:1251−1256
【非特許文献8】Feldhaus,MJ.&Siegel,R.W.,「Yeast Display of Antibody Fragments:A Discovery and Characterization Platform」,J.Immunol.Methods(2004)290(1−2):69−80
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の実施形態は、先行技術の上記欠点のうちの1つ以上に対処し得る触媒および触媒支持体を提供する。これら触媒の構築方法、使用方法、および再生方法もまた、提供される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、生物学的支持体の表面から処理される(disposed from)1種以上のレセプタータンパク質を含む触媒物質を提供する。代表的な実施形態において、上記レセプタータンパク質は、上記生物学的支持体の表面を均一に覆うように配置される。上記レセプタータンパク質は、同一のタンパク質であってもよいし、異なるタンパク質であってもよい。各レセプタータンパク質は、生物学的支持体の表面と結合される(engaged)固定タンパク質に連結される。
【0017】
代表的実施において、上記レセプタータンパク質は、融合タンパク質の形態において上記固定タンパク質に連結され、それによって、上記固定タンパク質ドメインのアミノ酸は、上記レセプタータンパク質のアミノ酸との連続ポリペプチド配列として連結され、それによって、上記固定タンパク質由来の固定ドメインおよび上記レセプタータンパク質由来のリガンド結合ドメインを有する異種融合タンパク質を形成する。上記固定ドメインは、上記生物学的支持体の表面に上に配置される他のタンパク質もしくは炭水化物に結合されるか、それらの中に吸着されるかまたはそれらに架橋されることによって、上記生物学的支持体の表面を結合し得る。代表的には、上記生物学的支持体が細胞である場合、上記固定ドメインは、上記細胞の外膜に埋め込まれるかまたは細胞壁タンパク質もしくは炭水化物に結合する。使用される固定タンパク質に依存して、上記固定ドメインは、上記生物学的支持体の表面内に、例えば、表在性膜タンパク質の形態において、部分的に配置され得るか、または生物学的支持体支持体を貫通して、例えば、内在性膜タンパク質の形態において、伸長し得る。各レセプタータンパク質は、リガンド結合ドメインを含み、リガンド結合ドメインは、リガンドにさらに結合され、次に、各リガンドは、触媒に結合される。レセプター−リガンド結合およびリガンド−触媒結合は、共有結合(例えば、化学的架橋)または非共有結合によって達成され得る。
【0018】
本発明はさらに、生物学的支持体の表面上にディスプレイされる1種以上のレセプタータンパク質を含む触媒支持体を提供する。上記レセプタータンパク質は、それによって、上記表面を均一に覆うように代表的にはディスプレイされる。上記レセプタータンパク質は、同一のタンパク質であってもよいし、異なるタンパク質であってもよい。上記レセプタータンパク質は、選択されたリガンドに結合するために選択され、この選択されたリガンドは、次いで、支持されるべき選択された触媒に結合するために選択される。
【0019】
本発明はまた、上記のような触媒物質および/または触媒支持体系を作製するための方法を提供する。1種以上のレセプタータンパク質は、固定タンパク質との融合タンパク質として発現され、生物学的支持体の表面の周りに配置される。一実施形態において、上記タンパク質は、同一のタンパク質であり、そして別の実施形態において、上記タンパク質は、1種以上の異なるタンパク質である。一実施形態において、上記タンパク質は、生物学的支持体の表面の周りに均一にディスプレイされ、触媒支持体物質を形成する。1種以上の触媒分子は、リガンド/触媒構築物を形成するために、それぞれのリガンドに結合される。上記リガンドは、上記レセプタータンパク質の結合ドメインに選択的に結合するかまたは架橋される(本明細書中で「つなぐ(tethering)」といわれる。)ように設計または選択される。上記レセプタータンパク質をディスプレイする上記リガンド/触媒構築物、および上記生物学的支持体は混合され、上記リガンド/触媒構築物が上記レセプタータンパク質につながれることを可能にし、触媒物質を形成する。
【0020】
生物学的支持体は、例えば、ビリオンおよび微生物から選択され得る。微生物は、例えば、細菌または酵母であり得る。細菌は、例えば、Escherichia属、Corynebacterium属、Bacillus属、またはLactococcus属から選択され得る。Escherichia coliが好ましい細菌である。本発明における使用について、酵母は、例えば、Saccharomyces属、Pichia属またはCandida属に由来するものを包含し得る。好ましい酵母は、Saccharomyces cerevisiaeである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の単一の酵母細胞表面ディスプレイ触媒系の2次元図を模式的に示す。
【図2】図2は、A α−アグルチニン(配列番号1)、B a−アグルチニン(配列番号2)、C Flolp(配列番号3)のC末端領域、およびD Flolp(配列番号3)のN末端凝集機能ドメインを使用する、酵母細胞表面ディスプレイ系を示す。(Kondo,前出;およびvan der Vaart,J.M.ら,「Comparison of Cell Wall Proteins of Saccharomyces cerevisiae as anchors for Cell Surface Expression of Heterologous Proteins」,App.&Env.Microbiol.63(2):615−620(1997))。
【図3】図3は、酵母細胞およびこの酵母細胞の表面に示される1種以上のレセプタータンパク質を含む、触媒性支持体物質を示す。
【図4】図4は、プラスミドpCT302(Boder&Wittrup)を示し、このプラスミドは、GAL1,10ガラクトース誘導性プロモーターの制御下で酵母Aga2pアグルチニン接合タンパク質への融合物として、レセプタータンパク質を発現するために使用され得る。pCT302の上記N末端隣接配列は、配列番号4として示され、そのC末端隣接配列は、配列番号5として示される。
【図5】図5は、プラスミドpYD1(配列番号6)のマップを示す。
【図6】図6は、プラスミドpYD1(配列番号7)のポリリンカーを示す。
【図7a】図7aは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【図7b】図7bは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【図7c】図7cは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【図7d】図7dは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【図7e】図7eは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【図7f】図7fは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【図7g】図7gは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【図7h】図7hは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【図7i】図7iは、プラスミドpYD1の制限マップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
以下の説明は、当業者が本発明の種々の局面を理解または実施するのを補助し得る種々の言及を引用する。このような言及に対する引用は、本発明を実施するために使用され得る、当業者を先行技術のより詳細な技術および例示材料およびシステムに方向付けるために略式の方法として意図される。従って、各々のこのような言及は、その目的を達成するために必要な程度まで、本明細書中に参考として援用される。本明細書中での言及の引用は、このような言及が特許性の何らかの決定のための先行技術を構成するという容認ではない。
【0023】
本明細書で使用される場合、本明細書および特許請求の範囲において使用される単数形「an」、「a」、および「the」は、その内容が明らかに別のものを示さなければ、単数形および複数形の両方を含む。特に、当業者は、触媒物質および触媒支持体の設計および作製が、単一の細胞または他の生物学的支持体に関して記載される一方で、より有効な系が、1つ以上の細胞または生物学的支持体(各々が、1種以上のレセプタータンパク質を発現する)を含むことを認識する。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「固定タンパク質(anchoring protein)」とは、ポリペプチド配列であって、このポリペプチドを生物学的粒子(例えば、細胞、ウイルスまたはビリオン殻)の表面と結合するように機能するアミノ酸配列ドメイン、またはドメインの組み合わせを有するものを意味する。上記ポリペプチド配列は、本質的に天然に存在するようなタンパク質全体を具現化する必要はなく、代表的には具現化しないが、むしろ、その固定ドメインを提供するために必要な十分な量のアミノ酸配列を有するようなタンパク質のフラグメントのみを含む必要がある。特定の場合において、固定ドメインが、細胞の膜(これは、その膜と結合しない1または数個の連続する配列によって隔てられる)内で結合するアミノ酸の2個または数個の連続する配列を含み得ることが、当業者によって理解される。このような場合において、膜と結合しかつ固定機能を提供するために必要であるドメインのみが含まれる必要がある一方で、上記膜と結合しないアミノ酸配列が、全て欠失され得るか、または上記天然に存在するタンパク質に対して異種である配列によって置換され得る。
【0025】
本発明の一局面は、生物学的支持体表面上に1種以上のレセプタータンパク質をディスプレイする生物学的支持体を含む触媒支持体物質を提供する。上記触媒支持体は、均一の利用性を、レセプタータンパク質につながれるリガンドに結合された触媒に提供する。これら触媒は、有機性であっても無機性であってもよい。先行技術の表面ディスプレイ触媒作用技術とは異なって、上記触媒は、天然の固定タンパク質に融合され得かつ上記生物学的支持体によって発現され得る酵素またはタンパク質に限定されない。
【0026】
一実施形態において、上記触媒作用支持体物質は、図3によって表されるような、酵母細胞、および上記酵母細胞の表面上にディスプレイされた1種以上のレセプタータンパク質を含む。上記レセプタータンパク質は、天然の酵母細胞機構の機能によって上記細胞壁に固定するタンパク質への融合によって、上記細胞の表面に固定される。例えば、アグルチニンシステムおよびフロキュリン(flocculin)システムは、当業者に周知であり、そして本発明の実施形態において使用され得る。固定は、例えば、(1)上記レセプタータンパク質がα−アグルチニン構築物のC末端側半分に融合されているか;(2)上記レセプタータンパク質がa−アグルチニン構築物のN末端側半分に融合されているか;(3)上記レセプタータンパク質がFlo1pのC末端領域に融合されているか;または(4)上記レセプタータンパク質がFlo1pの凝集機能ドメインに融合されている、融合タンパク質を作製することによって達成され得る。考えられるレセプタータンパク質としては、アビジン(配列番号26)、セルロース結合ドメイン、レクチン、および抗体結合ドメインが挙げられる。
【0027】
本発明の一実施形態において、上記レセプタータンパク質は、上記酵母細胞に付加されたかまたは上記酵母細胞の親に付加されたかのいずれかである1種以上の遺伝子の発現によって、上記酵母細胞に導入される。遺伝子は、例えば、リチウム塩、スフェロプラスト、遺伝子銃、またはエレクトロポレーションを使用する形質転換によって、付加され得る。
【0028】
触媒作用支持体物質を作製するための方法はまた、本明細書に提供される。本発明の一実施形態において、生物学的支持体は、上記酵母細胞の外膜に運ばれる天然の酵母タンパク質に融合されるレセプタータンパク質を発現する。1種以上のレセプタータンパク質が、上記酵母細胞の表面の周りにディスプレイされる。上記レセプタータンパク質は、同一のタンパク質であってもよいし、異なるタンパク質であってもよい。上記レセプタータンパク質は、上記酵母細胞の表面の周りに均一に配置され得る。上記レセプタータンパク質は、上記触媒支持体系によって支持されるべき触媒に接着され得るリガンドに結合する。
【0029】
本発明のさらなる実施形態において、本発明は、触媒物質を含む。上記触媒物質は、リガンドに結合される有機触媒または無機触媒を含み、上記リガンドは、次に、本明細書に記載されるような酵母触媒作用性支持体物質上のレセプタータンパク質につながれる。本発明の触媒物質は、図1において二次元図に示される。上記触媒は、上記酵母細胞表面上の単層を形成する。これは、均質な触媒作用の特性を与え、さらに、上記触媒の効率的な分離および迅速なリサイクルを可能にする。
【0030】
I.細胞および他の生物学的支持体
種々の生物学的細胞は、本発明の実施形態における使用に適切である。当業者は、多くの微生物株が本発明の実施形態における使用に適していることを認識する。酵母株が好ましい。酵母株Saccharomyces cerevisiaeは、本発明の実施形態において特に有用である。なぜなら、一部は、酵母ゲノムは広範囲に研究されているからであり、食品医薬品局によるGRAS(「一般に安全と考えられる(Generally Regarded As Safe)」)状態を享受するからである。Saccharomyces cerevisiaeは、迅速に増殖し得かつ融通の利くDNA形質転換系を有するモデル真核生物として認識される。
【0031】
背景情報、ならびに一般に酵母、特にS.cerevisiaeを増殖し、試験しそして保存するための例示的方法および培地は、例えば、Sherman,F.,「Getting Started with Yeast」,Dept.of Biochem.and Biophysics,Univ.of Rochester Med.Sch.(August 2003)(Sherman,F.,「Getting Started with Yeast」,Methods Enzymol,350:3−41(2002)(本明細書中以降「Sherman(I)」)から改作されている)において;そしてSherman,F.,「An Introduction to the Genetics and Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces cerevisiae」,Dept.of Biochem.and Biophysics,Univ.of Rochester Med.Sch.(1998)(Sherman,F.,「Yeast Genetics」The Encyclopedia of Molecular Biology and Molecular Medicine」6:302−325(R.A.Meyersにより編集,Weinheim,Germany,1997)から変更);ならびにBurke,D.ら,「Methods in Yeast Genetics:A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,2000);Colbyら,「Engineering Antibody Affinity by Yeast Surface Display」Methods Enzymol.388:348−58(2004)に見いだされる。
【0032】
いくつかの非酵母微生物およびビリオンはまた、研究されかつ本発明の実施形態において有用であり得るディスプレイ機構を有する。例えば、Escherichia coliは、PgsAアンカーの補助により、酵素の表面ディスプレイのために使用され得る。Naritaら,「Display of Active Enzymes on the Cell Surface of Escherichia coli using PgsA Anchor Protein and Their Application to Bioconversion」,Appl.Microbiol.Biotechnol.(2005)。アンカーとしてfadLを使用するリパーゼのディスプレイが報告された。Lee,S.H.ら,「Display of Bacterial Lipase on the Escherichia coli Cell Surface by Using FadL as an Anchoring Motif and Use of the Enzyme in Enantioselective Biocatalysis」,Appl.&Env.Microbiol.70(9):5074−80(2004)。Lactococcus lactis上でのタンパク質の細胞表面ディスプレイがまた報告された。Steidlerら,「Functional Display of a Heterologous Protein on the Surface of Lactococcus lactis by Means of the Cell Wall Anchor of Staphylococcus aureus Protein A」 Appl.&Env.Microbiol.64(1):342−345(1998)。
【0033】
他の実施形態において、上記生物学的支持体はビリオンであり得る。ビリオンは、完全なビリオン粒子としてかまたは「裸の」ビリオンと呼ばれるかのいずれかである(これらは、ウイルスゲノムを欠いているウイルス粒子である)、真核生物ウイルスまたはバクテリオファージであり得る。適切な真核生物ウイルスとしては、遺伝子操作目的で一般に使用されるものが挙げられ、例えば、バキュロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレトロウイルスが挙げられる。同様に、適切なバクテリオファージとしては、例えば、λファージ(Lysogen)、T4ファージ、T7ファージ、R17ファージ、M13ファージ、MS2ファージ、G4ファージ、P1ファージ、P2ファージ、N4ファージ、φ6ファージ、およびφ29ファージが挙げられる。M13の繊維状ファージ(M13、fd、およびflが挙げられるが、これらに限定されない)が好ましい。バクテリオファージの表面上にレセプターをディスプレイする方法は、当該分野で周知である。ファージディスプレイは、例えば、Willats,W.G.T.,「Phage Display:practicalities and prospects」,Plant Mol.Biol.50:873−54(2002);Bassら,「Hormone Phage:An Enrichment Method for Variant Proteins with Altered Binding Properties」,Proteins:Structure,Function,and Genetics,8:309−314(1990);およびZucconiら,「Selection of Ligands by Panning of Domain Libraries Displayed on Phage Lambda Reveals New Potential Partners of Synaptojanin 1」,J.Mol.Biol.307:1329−1339(2001)(これらは全て、本明細書に参考として援用される)に報告されている。アビジンディスプレイバキュロウイルスの作製および使用は、Ratyら,「Enhanced Gene Delivery by Avidin−Displaying Baculovirus」,Mol.Therapy 9(2):282−291(2004)によって報告されている。バクテリオファージT7を使用する表面ディスプレイは、「T7 Select(登録商標) System Manual」,TB 178 Rev.B0203,Novagen,Inc.による著作権(2003)において報告されている。
【0034】
II.固定タンパク質
当業者は、種々の固定タンパク質が本発明の実施形態において使用され得ることを認識する。理想的には、固定タンパク質は、細胞機能または細胞構造にとって必須ではなく、それによって、細胞または他の生物学的支持体に対する増殖欠陥または機能的問題を避ける。Leeら,「Microbial Cell−Surface Display」 Trends in Biotech.21(1):45−52(2003)。Leeらは、固定タンパク質の有益な特徴を報告している:
首尾よいキャリアは、以下の4つの要件を満たすべきである:上記キャリアは、未熟(premature)融合タンパク質が内膜を通って行くことを可能にするのに効率的なシグナルペプチドまたは輸送シグナルを有するべきである;上記キャリアは、細胞表面上に融合タンパク質を分離することなく保持するために、強い固定構造(strain anchoring structure)を有するべきである;上記キャリアは、挿入または融合されるべき外来の配列と適合性であるべきである(すなわち、上記キャリアは、異種配列の挿入または融合に対して不安定にならないはずである);そして、上記キャリアは、細胞周辺腔または培地中に存在するプロテアーゼによる攻撃に抵抗するべきである。
【0035】
BoderおよびWittrup(前出)は、目的のタンパク質に融合され得かつ細胞壁に固定され得る2種の細胞表面レセプターを報告している。これらレセプター(a−アグルチニンおよびα−アグルチニン)は、酵母が二倍体形成の前に細胞融合を可能にするために通常使用される。
【0036】
BoderおよびWittrupは、S.cerevisiaeの細胞壁上での機能的抗フルオレセインscFvおよびc−mycエピトープタグの酵母細胞表面ディスプレイの開発において、a−アグルチニンを使用することを報告している。彼らは、このことがAga2タンパク質(配列番号8)へ目的のタンパク質をC末端融合することによって達成されたことを主張している。上記Aga2タンパク質は、Agalタンパク質サブユニット(配列番号2)にジスルフィド結合によって連結される。次に、上記Agalサブユニットは、β−グルカン共有結合によって細胞壁に固定される。BoderおよびWittrupは、Aga2−scFv融合物が誘導性GAL1プロモーター(配列番号9)の制御下に置かれているベクターの構築物をさらに報告している。上記Agalタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号10に示される。上記Aga2タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号11に示される。α−アグルチニン遺伝子(sagl)をコードする核酸配列は、配列番号12に報告される。
【0037】
これらタンパク質を固定するための多くの方法が、図1に示されるように、記載されてきた。これら方法としては、α−アグルチニンのC末端側半分のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー接着、a−アグルチニンのN末端側半分のGPIアンカー接着(C末端部分への硫黄結合と組み合わせられる)、フロキュリンFlolpのC末端領域のGPI固定、フロキュリンFlolpのN末端固定(GPI固定なし)が挙げられる。フロキュリンFlolp(配列番号3)のC末端領域の上記GPIアンカー長は、例えば、42アミノ酸、102アミノ酸、146アミノ酸、318アミノ酸、428アミノ酸、および1326アミノ酸の長さを有し得る。Flolpは、例えば、配列番号13の核酸配列によってコードされる。GPIアンカー(これは、タンパク質−CO−NH−CH2−CH2−PO4−6−マンノース(Man)α1,2−Man−α1,6−Man−α1,4−GlcN−α1,6−イノシトール−PO4−脂質の保存されたコア構造を有する)は、Newmanら,「Gpi19,the Saccharomyces cerevisiae Homologue of Mammalian PIG−P, Is a Subunit of the Initial Enzyme for Glycosylphosphatidylinositol Anchor Biosynthesis」,Eukaryotic Cell,4(11):1801−1807(2005);Eisenhaberら,「Enzymes and Auxiliary Factors for GPI Lipid Anchor Biosynthesis and Post−translational Transfer to Proteins」,BioEssays,25:367−385(2003);Kinoshita,T.&Inoue,N.,「Dissecting and Manipulating the Pathway for Glycosylphosphatidylinositol−anchor Biosynthesis」,Curr.Opin.Chem.Biol.4:632−638(2000);McConville,M.J.&Menon,A.K.,「Recent Developments in the Cell Biology and Biochemistry of Glycosylphosphatidylinositol Lipids」,Mol.Membr.Biol.17:1−17(2000);Pringleら,(編),「Molecular and Cellular Biology of the Yeast Saccharomyces cerevisiae」Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.におけるOrlean,P.,「Biogenesis of Yeast Wall and Surface Components」,p.229−362;ならびにTiedeら,「Biosynthesis of Glycosylphosphatidylinositols in Mammals and Unicellular Microbes」,Biol.Chem.380:503−523(1999)において議論されている。
【0038】
酵母細胞において有用な他の固定タンパク質は、本発明の実施形態において使用され得る。これらとしては、例えば、例えば、配列番号21の核酸配列によってコードされるCwplp(配列番号14)のC末端フラグメント;例えば、配列番号22の核酸配列によってコードされるCwp2p(配列番号15);例えば、配列番号23の核酸配列によってコードされるTiplp(配列番号16);例えば、配列番号24の核酸配列によってコードされるTirlp(配列番号17);例えば、配列番号38の核酸配列によってコードされるSedlp(配列番号18);YCR89(配列番号25)のフラグメントであるYCR89−313(配列番号19);YCR89−744(配列番号20)、Flolp−344、およびFlolp−596が挙げられるが、これらに限定されない。これら固定タンパク質の使用方法、およびそれらの効力は、van der Vaart,J.M.ら,「Comparison of Cell Wall Proteins of Saccharomyces cerevisiae as anchors for Cell Surface Expression of Heterologous Proteins」,App.&Env.Microbiol.63(2):615−620(1997)に報告されている。
【0039】
III.レセプタータンパク質
広い範囲のタンパク質が、報告されるところによれば、細胞表面上にディスプレイされてきた。これらタンパク質は、細胞の形質膜を貫通して伸びることによってかまたは細胞膜表面との共有結合的相互作用もしくは非共有結合的相互作用によってかのいずれかで、細胞の外側にディスプレイされ得る。代表的には、酵母細胞は、上記細胞の表面上にタンパク質を発現することによって、そして上記タンパク質を、上記固定タンパク質のうちの1つと融合することによって、つなげられる(armed)。必須ではないものの、理想的には、上記融合タンパク質をコードする遺伝子は、上記酵母細胞のゲノムに組み込まれ得る。この組み込みは、当業者に公知の方法によって達成され得る。例えば、上記酵母細胞は、リチウム塩法、組み込み複製ベクター、スフェロプラスト、「遺伝子銃」、またはエレクトロポレーションを使用して形質転換され得る。
【0040】
Kondo(前出)によれば、報告されるところによれば、α−アグルチニン結合を用いて酵母細胞の表面上にディスプレイされたタンパク質としては、Rhizopus oryzaeグルコアミラーゼ、Bacillus stearothermophilus α−アミラーゼ、Aspergillus aculeatus β−グルコシダーゼ、Trichoderma reeseiエンドグルカナーゼ、Rhizopus oryzaeリパーゼ、およびAequorea victoria GFP(BFP、ECFP、EYFP、アポエクオリン、ヘキサ−His、ZZ、および抗体のFabフラグメントを含む)が挙げられる。a−アグルチニン系を用いてディスプレイされたタンパク質としては、一本鎖抗体および一本鎖T細胞レセプターが挙げられる。FlolpのC末端領域を用いてディスプレイされたタンパク質としては、Rhizopus oryzaeグルコアミラーゼおよびEGFPが挙げられる。Flolpの凝集機能ドメインを用いてディスプレイされたタンパク質としては、Rhizopus oryzaeリパーゼおよびEGFPが挙げられる。当業者は、この開示の利益から、ディスプレイされ得る他のタンパク質を認識する。
【0041】
適切な結合するリガンドの本体は、触媒作用支持体物質によって示されるレセプタータンパク質に依存して変化する。例えば、上記触媒支持体がレクチンをディスプレイするのであれば、有機性触媒は、そのレクチンと結合するグリカンが、上記触媒上の側鎖に接着されるように改変され得る。
【0042】
上記触媒支持体はまた、抗原抗体結合対のうちの一方のメンバーをディスプレイし得る。用語「抗体」は、可変性領域および定常領域(ここで上記可変領域が抗原に結合する)を有する任意のタンパク質分子を含むために、最も広い範囲で本明細書において使用される。従って、用語抗体は、IgG、IgM、およびIgAクラスのScFv分子、一本鎖T細胞レセプター分子、ならびにジスルフィド結合によって連結された一本鎖T細胞レセプター分子の複数鎖バージョンを包含する。上記触媒支持体が抗体に融合された固定タンパク質を含む場合、上記抗体は、好ましくは、ScFvであり、その大部分の場合、上記リガンドは、その対応する抗原である。上記抗原は、少なくとも、上記抗体を結合するエピトープタグを含み、上記リガンドまたはリガンド触媒対をつなぐために使用され得る1種以上の非エピトープ領域もまた含み得る。Kiekeらは、エピトープタグとして使用され得る多くのポリペプチド配列を報告している。Kiekeによって報告されたタンパク質は、表面タンパク質によって融合され得、抗体によって結合され得る。本明細書中の開示を利用して、当業者は、Kiekeの抗体が触媒に結合され得、次に、それらエピトープタグをディスプレイする細胞表面につながれることに気づく。
【0043】
当業者は、本発明における使用に適切であり得る他のレセプター/リガンド組み合わせを企図する。これらは、例えば、アビジン/ビオチン組み合わせおよびストレプトアビジン/ビオチン組み合わせを含む。
【0044】
レセプタータンパク質を発現する酵母細胞は、上記ディスプレイされたレセプタータンパク質に結合するように設計されたリガンドに結合され得る任意の触媒のための触媒作用支持体物質として作用し得る。従って、単一の酵母系統が、支持体に使用され得、次に、複数触媒に使用され得る。
【0045】
ビオチン/アビジン相互作用
好ましい実施形態において、ビオチン/アビジン結合は、上記レセプタータンパク質に上記触媒をつなぐために使用され得る。ビオチン/ストレプトアビジン結合もまた、使用され得る。これらは、例えば、アビジンもしくはストレプトアビジンを酵母細胞の表面上にレセプタータンパク質としてディスプレイし、ビオチンを上記触媒に結合させることによって達成され得る。上記細胞および触媒は混合され、強いビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジンの結合相互作用が、上記細胞に上記触媒をつなぐ。
【0046】
上記ビオチン/アビジン相互作用は、広く研究されてきており、同様に、ビオチン化に必要とされる手順および試薬が広く研究されてきている。ビオチン/アビジン化学作用およびビオチン/ストレプトアビジン化学作用は、ビオチン化のための試薬および方法、ならびにビオチン化分子の検出を含め、M.D.Savageら,「Avidin−Biotin Chemistry:A Handbook」(Pierce Chemical Co.,1992)において議論されている。ストレプトアビジンとともに組み込んだビオチン化金属触媒を使用する金属酵素の作製は、Skanderら,「Chemical Optimization of Artificial Metalloenzymes Based on the Biotin−Avidin Technology:(S)−selective and Solvent−tolerant Hydrogenation Catalysts via the Introduction of Chiral Amino Acid Spacers」,Chem.Commun.,4815−4817(2005)において報告されている。
【0047】
タンパク質(抗原および抗体の両方を含む)のビオチン化は、ELISA/EIA手順において広く使用されている。この広範にわたる使用は、当業者がどのようにして分子を最もよくビオチン化するかを決定する方法および試薬のライブラリーを提供する。この開示の利益から、それら技術は、酵母細胞につながれるべき触媒をビオチン化するために使用され得る。例えば、Alpha Diagnostic Internationalは、ロングアームビオチン(long−arm biotin)(アミノヘキサノイル−ビオチン N−ヒドロキシスクシンイミド)を使用して、タンパク質のビオチン化するための以下の試薬および方法を報告している。上記ADIビオチン化は、上記ビオチン化タンパク質上に少なくとも1つの遊離アミノ基を要し、理想的には、そのタンパク質は、カップリング効率を改善するために、アミン含有緩衝剤(例えば、Tris)を含まない:
ADIキット中に提供される試薬:
1.ビオチン1バイアル(10mg;Cat#80301)
2.結合緩衝液(pH8.4,100ml,Cat#80302)
3.安定化緩衝液;5ml,Cat#80303。
【0048】
必要であるがADIキット中に提供されていない試薬:
1.結合体を透析するためのPBS(pH7.4)(0.26g KH2PO4、2.17g Na2HPO4・7H2O、および8.71gのNaClを1L H2Oに溶解する)。
2.透析バッグ(カットオフサイズ<10,000kDa)
3.ビオチンを溶解するためのDMF。
【0049】
手順
1.1×結合緩衝液(0.1M NaHCO3,pH8.4)中で結合させるためにタンパク質を徹底的に透析する。上記タンパク質濃度は、1〜10mg/mlであるべきである。上記タンパク質が純粋形態であるかまたは生理食塩水中もしくはH2O中に存在するのであれば、10×結合緩衝液を添加し、透析を省略することによって、そのpHを調整することが可能である。
2.使用前に、ビオチンをDMF中に、10mg/mlで溶解する。所定の比率の溶解したビオチンタンパク質溶液を、タンパク質溶液に、連続して混合しながらゆっくりと添加する。1:10(ビオチン:タンパク質)の比率が、ヤギ抗体またはウサギ抗体のために使用され得る。室温で1時間または4℃で一晩、それを混合する。
3.そのビオチン−結合体をPBSに対して4℃で徹底的に透析する。
4.安定化緩衝液を、その透析した結合体に添加する(出発タンパク質容量各500μlに対して2ml添加する)。
5.その結合体は、4℃で6ヶ月間まで保持され得る。凍結および融解を回避する。
【0050】
アビジンをコードする代表的な核酸配列は、配列番号28に提供される。ストレプトアビジンをコードする代表的な核酸配列は、配列番号29に提供される。アビジンの代表的なアミノ酸配列は、配列番号26に提供される。ストレプトアビジンの代表的なアミノ酸配列は、配列番号27に提供される。
【0051】
IV.プラスミド
多くのプラスミドが、固定タンパク質、レセプタータンパク質およびこれらの融合物の発現のために適切である。多くのプラスミドがまた、酵母ゲノムへのこれらタンパク質をコードする核酸の組み込みのためおよびそのコード配列の発現のために利用可能である。発現プラスミドは、代表的には、上記タンパク質をコードする核酸の発現のためのプロモーターエレメントを含む。発現プラスミドはまた、発現されたタンパク質を細胞表面にタンパク質を運ぶための細胞輸送装置に指向するように、コード配列への融合のために、シグナルペプチドおよび輸送ペプチド配列(transit peptide sequence)を含み得る。Boder,E.T.&Wittrup,K.D.,「Yeast Surface Display for Directed Evolution of Protein Expression,Affinity,and Stability」,Methods in Enzymology,25:430−444(2000)(本明細書中以降「Boder&Wittrup(II)」)は、pCT302プラスミドの構築を報告している。このpCT302プラスミド(図4に示される)は、Aga2pアグルチニン接合タンパク質へのタンパク質融合物の発現を可能にする。発現は、GAL1,10ガラクトース誘導性プロモーターの制御下にある。上記プロモーターの5’隣接配列(配列番号4)および3’隣接配列(配列番号5)の両方が報告された。Boder&Wittrup(II)はまた、この報告されたプラスミドの使用を通じて、細胞表面上に固定されたタンパク質の検出法を報告している。
【0052】
酵母細胞表面ディスプレイに有用な別のプラスミドは、Invitrogenによって提供されるpYD1 Yeast Display Vector Kitである。pYD1(配列番号6)のマップは、図5として含められる。pYD1のポリリンカー(配列番号7)は、図6として含められ、制限マップは、図7として含められる。Invitrogenによれば、「pYD1は、Saccharomyces cerevisiae細胞の細胞外表面上にタンパク質を発現、分泌、およびディスプレイするために設計された、5.0kbの発現ベクターである。このベクターの特徴は、発現されるタンパク質の制御された発現、分泌および検出を可能にする・・・。」このベクターは、以下のエレメントを含む:
(a)Saccharomyces cerevisiae由来のAGA2遺伝子。この遺伝子は、a−アグルチニンレセプターのサブユニットのうちの1つをコードする。AGA2への目的の遺伝子の融合は、目的のタンパク質の分泌およびディスプレイを可能にする。
【0053】
(b)AGA2遺伝子融合物の制御された発現のためのGAL1プロモーター
(c)ディスプレイされるタンパク質の検出のためのXpressTMエピトープおよびV5エピトープ
(d)検出および金属キレート化樹脂上での考えられる精製のためのポリヒスチジン(6×His)タグ
(e)Saccharomyces cerevisiaeにおける選択のためのTRPl遺伝子
(f)酵母における安定なエピソーム複製のためのCEN6/ARS4
(g)E.coliにおける選択および複製のためのアンピシリン耐性遺伝子およびpUC起点。
pYD1プラスミドの調製および使用のための方法は、「pYD1 Yeast Display Vector Kit」,Catalog No.V835−01,Version D,December 10,2002,25−0259,Invitrogenに示されている。
【0054】
V.触媒
種々の触媒が、本発明の実施形態において有用である。本発明における使用に適切であるために、触媒は、レセプタータンパク質につながれる(例えば、吸着されるかまたは結合されるかのいずれか)リガンドに、触媒が結合されるように、改変され得るべきである。次に、上記レセプタータンパク質は、細胞表面に固定される。理想的には、触媒はまた、上記酵母細胞によって有害でもなく、破壊的でもないべきである。触媒は、無機性であってもよいし、有機性であってもよい。
【0055】
例えば、[{N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルサリチリデン)1,2−シクロヘキサンジアミナト(−2−)}コバルト(2)]は、グリカンが上記触媒の側鎖に接着されるように、改変され得る。このグリカンに適切なレクチンは、上記酵母触媒支持体上にディスプレイされる。上記グリカン保有コバルト触媒およびレクチンディスプレイ酵母支持体は混合され、コバルト触媒が酵母支持体に吸着されるのを可能にする。このことは、コバルト触媒を酵母に固定化し、コバルト触媒が酸化反応において使用されることを可能にする。
【0056】
酸化反応および還元反応に有用な多くの触媒が、本明細書において教示されるように、リガンドに結合され得、細胞表面、特に酵母細胞表面につながれ得る。例えば、触媒は、遷移金属、ニトロキシルラジカル、または支持貴金属であり得る。以下の支持触媒は、当業者に公知でありかつ本明細書に示される方法に従ってビオチン化され得、次いで、アビジンディスプレイ酵母細胞もしくはストレプトアビジンディスプレイ酵母細胞につながれる。上記酵母細胞は、各場合において記載される支持体として作用する。各触媒は、触媒:クロロメチルポリスチレン樹脂−1,10−フェナントロリンルテニウム(Kang,Q.ら,「Catalytic Oxidation of Alcohols with Polymer−supported Ruthenium Complex under Mild Conditions」,J Organometallic Chem.,26:690(2005));2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)ファミリーのポリ(エチレングリコール)支持ニトロキシルラジカル(Ferreira,P.ら,「Catalytic Oxidation of Alcohols using Molecular Oxygen Mediated by Poly(ethyleneglycol)−supported Nitroxyl Radicals」,Applied Catalysis,61:3−4(2005))およびCiriminnaら,「Sol−gel Entrapped TEMPO for the Selective Oxidation of Methyl α−D−glucopyranoside」,Chem.Commun.,1441−1442(2000);Rh6クラスター触媒およびOs6クラスター触媒(Pomogailo,S.I.ら,「Synthesis and Catalytic Properties of Polymer−immobilized Noble Metal Clusters」,PMSE Preprints,93:945(2005));バナジウム触媒(Kirihara,M.ら,「Aerobic Oxidation catalyzed by Polymer−supported Vanadium Compounds」,ITE Letters,5(5):479−482(2004);マンガンポルフィリン(Moghadam,M.ら,「A Convenient Preparation of Polymer−supported Manganese Porphyrin and Its Use as Hydrocarbon Monooxygenation Catalyst」,J.Mol.Catalysis,217(1−2):9−12(2004);ビス(サリチリデンエチレンジアミン)のCo(II)錯体(CoSalen)(Finashina,E.D.ら,「Oxidation of Catecholamines on Chitosan−immobilized Co(II) Salen Complexes」,Macromolecular Symposia,204:205−217(2003);銅(ii)イオン(Owsid,I.ら,「Immobilized Cu(II) Ions as the Oxidation Catalysts」,Zeszyty Naukowe Politechniki Slaskiej,Chemia,146:113−116(2001);ホモキラルパラジウム錯体 ポリマー性ポリマー性の2’−固定,6−固定および6’−固定の2−ジフェニルホスフィノ−1−1’−ビナフチル(MOP)リガンド(Hocke,H.&Uozumi,Y.,「PS−PEG Resin−supported Palladium−MOP Complexes.Application in Asymmetric π−allylic Reduction」,Tetrahedron,60(41):9297−9306(2004);オキソアザボリリジン(oxazaborolidine)(Franot,Cら,「A Polymer−bound Oxazaborolidine Catalyst:Enantioselective Borane Reductions of Ketones」,Tetrahedron:Asymmetry,6(11):2755−66(1995)を記載する刊行物によって理解される。
【0057】
複数の触媒が、単一の細胞表面につながれ得る。上記細胞が単一のタイプのレセプタータンパク質のみを有しているのであれば、これは、各触媒を同一のリガンドに結合させることによって達成され得る。例えば、上記細胞表面がアビジンをディスプレイしているのであれば、2種以上の異なる触媒が、別個のビオチン分子に接着され得る。類似の結果が、細胞の表面上に1種より多いレセプタータンパク質を発現させ、次いで、異なるリガンド(各リガンドは、異なるレセプタータンパク質に結合するように設計され得る)に結合される異なる触媒を提供することによって達成され得る。
【実施例】
【0058】
以下の実施例は、本発明の実施にあたって、当業者を導くことが意図される。実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって外延が規定される。
【0059】
(実施例1)
実施例1は、sec−フェネチルアルコールのアミノスルホンアミドルテニウム錯体酸化を提供する。この触媒ビオチン複合体は、J.Collotら,J.Am.Chem Soc.125(2003)に報告される方法によって調製する。この複合体を、水中でアビジンディスプレイ酵母と混合して、固定化無機触媒/酵母複合体を調製し、この酵母を、全ての非結合触媒から遠心分離によって分離する。以下の条件下で酸化を行う:室温で90時間、窒素雰囲気:62.5ミリモルのフェネチルアルコール、および75ミルモルのtert−ブチルヒドロペルオキシドを、500mlの水と100mlのアセトンとの混合物中で混合する。この混合物に、0.25ミリモルのビオチン金属酵素複合体を有する固定化複合体を添加する。反応が完了すると、酸化フェネチルアルコールが観察される。上記酵母金属酵素複合体を、濾過または遠心分離により、反応混合物から除去する。
【0060】
(実施例2)
実施例2は、ビオチン化触媒合成を提供する。ビオチン(0.1mol)を、60℃で、90mLのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解する。(上記アミドの1つの合成は、S.Amslingerら,Tetrahedron 60(2004)11565−11569に報告されている)。次いで、上記溶液を室温に冷却し、0.1molのN,N’−カルボニルジイミダゾールを窒素下で添加する(約7時間)。反応が完了したときに、二酸化炭素放出は止まる。等モル量(0.1mol)の所定のNH2−R(ここでRは適切な触媒作用部位である)を、125mLのDMF中で添加し、24時間攪拌する。例えば、上記NH2−R化合物は、アミノ−TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−オキシ−4−ピペリジニル)アミンであり得る。DMFを、60℃で、真空下で除去し、次いで、その生成物を、フラッシュクロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィーまたは再結晶化によって精製し得る。
【0061】
(実施例3)
実施例3は、アビジン酵母細胞表面ディスプレイプラスミドの構築を報告する。短縮化アビジンタンパク質(配列番号42)をコードする短縮化アビジンDNA(配列番号41)を、PCRのテンプレートとしてニワトリアビジンcDNAクローンを使用して、以下のプライマーを使用する30サイクルのPCR増幅によって行う:順方向,CGAACTGGATCCTCTCCCAGAAAGTGCTCGCTG(配列番号30)および逆方向,CGGATCCTCGAGTCACTCCTTCTGTGTGCG(配列番号31)。この増幅したDNAをBamHIおよびXhoIで切断し、BamHIおよびXhoIで切断したベクターpYD1(Invitrogen)に連結する。
【0062】
得られたクローンをE.coliに形質転換し、形質転換体を単離し、配列決定して、アビジンおよびaga2タンパク質の適切なインフレーム融合物を確認する。次いで、正確な構築物を、コンピテントS.cerevisiae細胞を調製するために、Invitrogen S.c.EasyComp Kitを用いて、Saccharomyces cerevisiae EBY100(Invitrogen)に形質転換する。アビジン−Aga2融合タンパク質の発現を、Invitrogenの説明書に従って、2% ガラクトースを含有するYNB−CAA培地中、少なくとも約4時間、形質転換細胞を増殖させることによって達成する。アビジン分子の細胞表面ディスプレイは、蛍光分子(例えば、Atto 425−ビオチン(Flukaから市販)と結合体化したビオチンを使用して確認される。
【0063】
(実施例4)
実施例4は、グルコピラノシドのTEMPO触媒酸化を提供する。tempo/ビオチン複合体は、実施例2の方法によって調製される。次いで、この複合体を、アビジンタンパク質をディスプレイして、固定化Tempo複合体を形成する酵母細胞の懸濁物と混合し;非結合Tempoを、遠心分離によって酵母から分離する。この複合体を、pH10および20℃において、αメチルグルコシド(25mM)およびNaOCl(50mM)の水溶液と混合する。反応が完了すると、αメチルグルクロン酸が観察される。上記触媒複合体は、遠心分離によって上記混合物から容易に分離される。例えば、R. Ciriminnaら,「Sol−gel entrapped TEMPO for the selective oxidation of methyl−α−D−glucopyranoside」,J.Chem.Soc.Chem.Comm.,1441−1442(2000)から、上記TEMPO触媒に関するさらなる情報が得られ得る。
【0064】
(実施例5)
実施例5は、カップリング酵素反応を示す。グルコースオキシダーゼおよびカタラーゼのビオチン化形態は、上記で議論されるように調製される。これらを、6 IUのカタラーゼ 対 1 IUのグルコースオキシダーゼの割合で混合する。アビジンをディスプレイする酵母細胞を、酵素活性の全てを吸収する量でこの混合物に添加する。この触媒作用性複合体を、約25℃で6.0にpH制御した10% デキストロース溶液に添加する。約24時間通気する。この反応が完了すると、グルコン酸が観察され、この反応の間に精製された過酸化水素の全てが、カタラーゼによって分解される。この触媒複合体は、濾過によって容易に回収される。
【0065】
一般に、酵素の挙動および触媒作製に関するさらなるガイダンスは、M.T.Reetz,「Controlling the Enantioselectivity of Enzymes by Directed Evolution:Practical and Theoretical Ramifications」,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,101:5716−5722(2004)、Wilson,M.E.およびWhitesides,G.M.,「Conversion of a Protein to a Homogeneous Asymmetric Hydrogenation Catalyst by Site−Specific Modification with a Diphosphinerhodium(I) Moiety」,J.Am.Chem.Soc,100:306−307(1978);ならびにC.M.Thomasら,「Aqueous Oxidation of Alcohols Catalyzed by Artificial Metalloenzymes based on the Biotin−Avidin Technology」,J.Organomet.Chem.,690:4488(2005)から得られ得る。
【0066】
(実施例6)
実施例6は、ストレプトアビジンが表面上にディスプレイされたT7バクテリオファージの構築を示す。短縮化ストレプトアビジンタンパク質(配列番号44)をコードする短縮化ストレプトアビジンDNA(配列番号43)を、以下のプライマー:
順方向,GCGAATTCAGACCCCTCCAAGGACTCG(配列番号32)および逆方向,GCAAGCTTCTACTGCTGAACGGCGTC(配列番号33)、
を使用して、ならびにテンプレートとしてStreptomyces avidinii(ATCC 27419D)のゲノムDNAを使用して、30サイクルのPCR増幅によって作製する。
【0067】
上記増幅DNAを、EcoRIおよびHindIIIで切断し、NovagenのT7Select Cloning Kit中で提供される、NovagenのT7Select 10−3b EcoRI/HindIIIベクターアームに連結する。この連結反応物を、Novagenによって供給される手順に従うインビトロパッケージングのために、T7パッケージング抽出物に添加する。種々のクローンを配列決定のために選択し、T7キャプシドタンパク質10Bへの上記ストレプトアビジン遺伝子の適切な融合物を有するものを、さらなる研究のために選択する。表面上にアビジンがディスプレイされた正確なT7ファージを適用し、ファージ粒子を回収する。
【0068】
(実施例7)
実施例7は、E.coliの株の細胞表面上にストレプトアビジンをディスプレイするためのプラスミドの構築を報告する。短縮化fadL遺伝子(配列番号40)を、以下のプライマー:
順方向,GGAATTCATGGTCATGAGCCAGAAAACC(配列番号34)および逆方向,GCTCTAGAACGATTCTGTGCAGGAAC(配列番号35)
を使用して、ならびにE.coliゲノムDNA(ATCC 700926D)を使用して、PCR増幅によってクローニングする。
【0069】
このPCR生成物を、EcoRIおよびXbaIで切断し、EcoRIおよびXbaIで切断したpTrc99Aにクローニングして、pTrcFadLといわれるプラスミドを作製する。このストレプトアビジンDNAを、以下のプライマー:
順方向,GCTCTAGAGACCCCTCCAAGGACTCG(配列番号36)、および逆方向,GCAAGCTTCTACTGCTGAACGGCGTC(配列番号33)を使用して、ならびにテンプレートとしてStreptomyces avidinii(ATCC 27419D)ゲノムDNAを使用して、PCRによって作製する。
【0070】
上記ストレプトアビジンDNAを、XbaIおよびHindIIIで切断し、XbaIおよびHindIIIで消化したpTrcFadLに連結する。これは、pTrcFadL−ストレプトアビジン(配列番号37)といわれるプラスミドを生じ、このプラスミドは、fadL遺伝子生成物(配列番号40)およびストレプトアビジンタンパク質のインフレーム融合物である。このプラスミドを、TOP10 E.coliコンピテント細胞(Invitrogen)に形質転換し、アンピシリン(100mg/L)含有LBに対して選択する。個々のコロニーを試験して、アンピシリン(50mg/L)およびイソプロピルβ−D−1チオガラクトピラノシド(IPTG)含有LB中で上記形質転換細胞を増殖させることによって、細胞表面上でのストレプトアビジンの発現が達成されているか否かを決定する。
【0071】
ストレプトアビジン分子の上記細胞表面ディスプレイは、蛍光分子(例えば、Atto 425−ビオチン(Flukaから市販))とのビオチン結合体を使用して確認される。ストレプトアビジンが細胞表面上にディスプレイされた正確なE.coliを、アンピシリン(50mg/L)および種々の濃度のIPTGの存在下で増殖させて、それらの細胞表面上にストレプトアビジンがディスプレイされた細胞を作製する。
【0072】
本明細書において使用される短縮化fadL遺伝子の開始コドンは、配列番号39の塩基8で始まる。本実施例および他の実施例において使用されるアビジンおよびストレプトアビジンは、ペプチドリーダー配列の除去に起因して短縮されている。当業者は、PCRプライマー配列に基づいて、これらタンパク質が短縮化形態において精製されることを認識する。
【0073】
本発明の特定の実施形態が例示目的で記載されてきたのに対して、本教示の詳細についての多くのバリエーションが、添付の特許請求の範囲において規定されるような本発明から逸脱することなく作製され得ることは、当業者にとって明らかである。本明細書において議論されている特許および刊行物は、当該分野の技術水準を示すものとして示されているべきであるが、任意の文書が先行技術の参考文献であるということを認めるものではない。本明細書において議論される前述の特許および刊行物は全て、参考として援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
表面を有する生物学的支持体;
該表面と結合される固定ドメインを含む固定タンパク質;
該固定タンパク質に融合されかつ該表面から配置されるリガンド結合ドメインを有するレセプタータンパク質;
該リガンド結合ドメインに結合されるリガンド;および
該リガンドに結合される非生物学的触媒、
を含む、触媒物質組成物。
【請求項2】
複数の異なるレセプタータンパク質が複数の固定タンパク質に結合される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記生物学的支持体は、酵母細胞、細菌細胞およびビリオンからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ビリオンは、λファージ、T4ファージ、T7ファージ、R17ファージ、M13ファージ、MS2ファージ、G4ファージ、P1ファージ、P2ファージ、N4ファージ、φ6ファージ、およびφ29ファージからなる群より選択されるバクテリオファージである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記生物学的支持体は、Escherichia、Corynebacteria、Brevibacteria、Bacillus、Saccharomyces、Candida、Pichia、およびLactococcusからなる群より選択される属の微生物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記微生物は、Saccharomyces cerevisiae株の酵母細胞である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記生物学的支持体は、酵母細胞でありかつ前記固定タンパク質およびレセプタータンパク質は、酵母細胞表面ディスプレイ系を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記酵母細胞表面ディスプレイ系は、α−アグルチニンに融合されたグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー(anchor);該細胞表面上にα−アグルチニンのC末端領域のジスルフィド結合で合わせられたa−アグルチニンのN末端領域に融合されたGPIアンカー;FlolpのC末端領域に融合されたGPIアンカー;およびGPIなしのFlolpの凝集機能ドメインのN末端固定(anchoring)からなる群より選択されるポリペプチド成分を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記レセプタータンパク質は、アビジンとストレプトアビジンからなる群より選択されるタンパク質を含み;前記リガンドはビオチンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記レセプタータンパク質はレクチンを含み、前記リガンドは該レクチンに結合するグリカンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記触媒は、[{N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルサリチリデン)1,2−シクロヘキサンジアミナト(−2−)}コバルト(2)]、クロロメチルポリスチレン樹脂−1,10−フェナントロリンルテニウム、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)ファミリーのポリ(エチレングリコール)支持ニトロキシルラジカル、Rh6クラスター触媒およびOs6クラスター触媒、バナジウム触媒、マンガンポルフィリン、ビス(サリチリデンエチレンジアミン)のCo(II)錯体、ニトロキシルラジカル、遷移金属、銅(ii)イオン、ホモキラルパラジウム錯体、貴金属、ポリマー性の2’−固定,6−固定および6’−固定の2−ジフェニルホスフィノ−1−1’−ビナフチル(MOP)リガンド、ならびにオキソアザボリリジン(oxazaborolidine)からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
以下:
表面を有する生物学的支持体;
該表面に結合された固定ドメインを含む固定タンパク質;
該固定タンパク質に融合されかつ該表面から配置されたリガンド結合ドメインを有するレセプタータンパク質;および
選択された触媒に結合するためのドメインを有する、該リガンド結合ドメインに結合されたリガンド
を含む、触媒支持体組成物。
【請求項13】
化学反応のための反応物と、表面を有する生物学的支持体、該表面に結合(engaged)された固定ドメインを含む固定タンパク質、該固定タンパク質に融合されかつ該表面から配置されたリガンド結合ドメインを有する、レセプタータンパク質、該リガンド結合ドメインに結合されたリガンド、ならびに該リガンドに結合された非生物学的触媒、を含む触媒物質組成物とを接触させる工程を包含する、化学反応を触媒するための方法。
【請求項14】
生物学的支持体の表面から非生物学的触媒をディスプレイする工程を包含する、触媒支持体組成物を作製するための方法。
【請求項15】
前記生物学的支持体の表面から前記非生物学的触媒をディスプレイする工程は、以下:
固定タンパク質への融合によって、少なくとも1種のレセプタータンパク質を該生物学的支持体の表面上にディスプレイする工程;
リガンドに結合された少なくとも1種の非生物学的触媒分子を提供する工程;および
該リガンドを該レセプタータンパク質に結合して、該触媒物質組成物を形成する工程、
を包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記生物学的支持体は、酵母細胞、細菌細胞およびビリオンからなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ビリオンは、λファージ、T4ファージ、T7ファージ、R17ファージ、M13ファージ、MS2ファージ、G4ファージ、P1ファージ、P2ファージ、N4ファージ、φ6ファージ、およびφ29ファージからなる群より選択されるバクテリオファージである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記生物学的支持体は、Escherichia、Corynebacteria、Brevibacteria、Bacillus、Saccharomyces、Candida、Pichia、およびLactococcusからなる群より選択される属の微生物である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記生物学的支持体は、酵母細胞ディスプレイ系の一部である固定タンパク質に融合されるレセプタータンパク質を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記酵母細胞表面ディスプレイ系は、α−アグルチニンに融合されたグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー;該細胞表面上にα−アグルチニンのC末端領域のジスルフィド結合で合わせられたa−アグルチニンのN末端領域に融合されたGPIアンカー;FlolpのC末端領域に融合されたGPIアンカー;およびGPIなしのFlolpの凝集機能ドメインのN末端固定からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記酵母ディスプレイ系は、前記レセプタータンパク質に融合された前記固定タンパク質をコードする組換え核酸配列を含み、該レセプタータンパク質は、前記酵母細胞において該レセプタータンパク質に融合される固定タンパク質を発現するプロモーター配列と、該酵母細胞の表面に該レセプタータンパク質を融合した該固定タンパク質を輸送するように機能するペプチドドメインをコードする輸送配列とともに、作動可能に構成されている、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記組換え核酸は、前記細胞の染色体に組み込まれる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記レセプタータンパク質は、アビジンとストレプトアビジンからなる群より選択されるタンパク質を含み;前記リガンドはビオチンである、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記レセプタータンパク質はレクチンであり、前記リガンドは該レクチンに結合するグリカンである、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記触媒分子は、[{N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルサリチリデン)1,2−シクロヘキサンジアミナト(−2−)}コバルト(2)]、クロロメチルポリスチレン樹脂−1,10−フェナントロリンルテニウム、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)ファミリーのポリ(エチレングリコール)支持ニトロキシルラジカル、Rh6クラスター触媒およびOs6クラスター触媒、バナジウム触媒、マンガンポルフィリン、ビス(サリチリデンエチレンジアミン)のCo(II)錯体、ニトロキシルラジカル、遷移金属、銅(ii)イオン、ホモキラルパラジウム錯体、貴金属、ポリマー性の2’−固定,6−固定および6’−固定の2−ジフェニルホスフィノ−1−1’−ビナフチル(MOP)リガンド、ならびにオキソアザボリリジンからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項1】
以下:
表面を有する生物学的支持体;
該表面と結合される固定ドメインを含む固定タンパク質;
該固定タンパク質に融合されかつ該表面から配置されるリガンド結合ドメインを有するレセプタータンパク質;
該リガンド結合ドメインに結合されるリガンド;および
該リガンドに結合される非生物学的触媒、
を含む、触媒物質組成物。
【請求項2】
複数の異なるレセプタータンパク質が複数の固定タンパク質に結合される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記生物学的支持体は、酵母細胞、細菌細胞およびビリオンからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ビリオンは、λファージ、T4ファージ、T7ファージ、R17ファージ、M13ファージ、MS2ファージ、G4ファージ、P1ファージ、P2ファージ、N4ファージ、φ6ファージ、およびφ29ファージからなる群より選択されるバクテリオファージである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記生物学的支持体は、Escherichia、Corynebacteria、Brevibacteria、Bacillus、Saccharomyces、Candida、Pichia、およびLactococcusからなる群より選択される属の微生物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記微生物は、Saccharomyces cerevisiae株の酵母細胞である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記生物学的支持体は、酵母細胞でありかつ前記固定タンパク質およびレセプタータンパク質は、酵母細胞表面ディスプレイ系を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記酵母細胞表面ディスプレイ系は、α−アグルチニンに融合されたグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー(anchor);該細胞表面上にα−アグルチニンのC末端領域のジスルフィド結合で合わせられたa−アグルチニンのN末端領域に融合されたGPIアンカー;FlolpのC末端領域に融合されたGPIアンカー;およびGPIなしのFlolpの凝集機能ドメインのN末端固定(anchoring)からなる群より選択されるポリペプチド成分を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記レセプタータンパク質は、アビジンとストレプトアビジンからなる群より選択されるタンパク質を含み;前記リガンドはビオチンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記レセプタータンパク質はレクチンを含み、前記リガンドは該レクチンに結合するグリカンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記触媒は、[{N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルサリチリデン)1,2−シクロヘキサンジアミナト(−2−)}コバルト(2)]、クロロメチルポリスチレン樹脂−1,10−フェナントロリンルテニウム、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)ファミリーのポリ(エチレングリコール)支持ニトロキシルラジカル、Rh6クラスター触媒およびOs6クラスター触媒、バナジウム触媒、マンガンポルフィリン、ビス(サリチリデンエチレンジアミン)のCo(II)錯体、ニトロキシルラジカル、遷移金属、銅(ii)イオン、ホモキラルパラジウム錯体、貴金属、ポリマー性の2’−固定,6−固定および6’−固定の2−ジフェニルホスフィノ−1−1’−ビナフチル(MOP)リガンド、ならびにオキソアザボリリジン(oxazaborolidine)からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
以下:
表面を有する生物学的支持体;
該表面に結合された固定ドメインを含む固定タンパク質;
該固定タンパク質に融合されかつ該表面から配置されたリガンド結合ドメインを有するレセプタータンパク質;および
選択された触媒に結合するためのドメインを有する、該リガンド結合ドメインに結合されたリガンド
を含む、触媒支持体組成物。
【請求項13】
化学反応のための反応物と、表面を有する生物学的支持体、該表面に結合(engaged)された固定ドメインを含む固定タンパク質、該固定タンパク質に融合されかつ該表面から配置されたリガンド結合ドメインを有する、レセプタータンパク質、該リガンド結合ドメインに結合されたリガンド、ならびに該リガンドに結合された非生物学的触媒、を含む触媒物質組成物とを接触させる工程を包含する、化学反応を触媒するための方法。
【請求項14】
生物学的支持体の表面から非生物学的触媒をディスプレイする工程を包含する、触媒支持体組成物を作製するための方法。
【請求項15】
前記生物学的支持体の表面から前記非生物学的触媒をディスプレイする工程は、以下:
固定タンパク質への融合によって、少なくとも1種のレセプタータンパク質を該生物学的支持体の表面上にディスプレイする工程;
リガンドに結合された少なくとも1種の非生物学的触媒分子を提供する工程;および
該リガンドを該レセプタータンパク質に結合して、該触媒物質組成物を形成する工程、
を包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記生物学的支持体は、酵母細胞、細菌細胞およびビリオンからなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ビリオンは、λファージ、T4ファージ、T7ファージ、R17ファージ、M13ファージ、MS2ファージ、G4ファージ、P1ファージ、P2ファージ、N4ファージ、φ6ファージ、およびφ29ファージからなる群より選択されるバクテリオファージである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記生物学的支持体は、Escherichia、Corynebacteria、Brevibacteria、Bacillus、Saccharomyces、Candida、Pichia、およびLactococcusからなる群より選択される属の微生物である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記生物学的支持体は、酵母細胞ディスプレイ系の一部である固定タンパク質に融合されるレセプタータンパク質を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記酵母細胞表面ディスプレイ系は、α−アグルチニンに融合されたグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー;該細胞表面上にα−アグルチニンのC末端領域のジスルフィド結合で合わせられたa−アグルチニンのN末端領域に融合されたGPIアンカー;FlolpのC末端領域に融合されたGPIアンカー;およびGPIなしのFlolpの凝集機能ドメインのN末端固定からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記酵母ディスプレイ系は、前記レセプタータンパク質に融合された前記固定タンパク質をコードする組換え核酸配列を含み、該レセプタータンパク質は、前記酵母細胞において該レセプタータンパク質に融合される固定タンパク質を発現するプロモーター配列と、該酵母細胞の表面に該レセプタータンパク質を融合した該固定タンパク質を輸送するように機能するペプチドドメインをコードする輸送配列とともに、作動可能に構成されている、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記組換え核酸は、前記細胞の染色体に組み込まれる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記レセプタータンパク質は、アビジンとストレプトアビジンからなる群より選択されるタンパク質を含み;前記リガンドはビオチンである、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記レセプタータンパク質はレクチンであり、前記リガンドは該レクチンに結合するグリカンである、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記触媒分子は、[{N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルサリチリデン)1,2−シクロヘキサンジアミナト(−2−)}コバルト(2)]、クロロメチルポリスチレン樹脂−1,10−フェナントロリンルテニウム、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)ファミリーのポリ(エチレングリコール)支持ニトロキシルラジカル、Rh6クラスター触媒およびOs6クラスター触媒、バナジウム触媒、マンガンポルフィリン、ビス(サリチリデンエチレンジアミン)のCo(II)錯体、ニトロキシルラジカル、遷移金属、銅(ii)イオン、ホモキラルパラジウム錯体、貴金属、ポリマー性の2’−固定,6−固定および6’−固定の2−ジフェニルホスフィノ−1−1’−ビナフチル(MOP)リガンド、ならびにオキソアザボリリジンからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図7f】
【図7g】
【図7h】
【図7i】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図7f】
【図7g】
【図7h】
【図7i】
【公表番号】特表2010−506701(P2010−506701A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532411(P2009−532411)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/021729
【国際公開番号】WO2008/063310
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(501183976)アーカー−ダニエルズ−ミッドランド カンパニー (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/021729
【国際公開番号】WO2008/063310
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(501183976)アーカー−ダニエルズ−ミッドランド カンパニー (12)
【Fターム(参考)】
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