説明

酵素によるDNA合成の特異性を増大するための方法

【課題】PCRを強化するものとして使用するための新規な化合物を提供する。
【解決手段】N-ピリジニウム基を分子内に含有するピリジン-N-オキシド、3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート、2-ピリジノール1-オキシド等をDNAポリメラーゼを含有する反応混合物に含ませることによって、DNAポリメラーゼの反応を実施する方法。更に上記化合物とDNAポリメラーゼとを含むキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正に荷電したN-ピリジニウム基を分子内に含有する、3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート(PPS)及びピリジン-N-オキシド等のような有機化合物の添加による、酵素による核酸の合成法の改善に関する。特に、本発明は、DNAポリメラーゼを使用する実験法における改善のための方法及びキットを提供する。本明細書に開示される方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の特異性及び収量を改善するために特に有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、基礎的な生物学的研究だけでなく、バイオテクノロジー産業の発展に対しても非常に重要である。現在、PCR反応は、複数の変化する加熱及び冷却ステップを使用してDNAを増幅するマルチサイクルプロセスで、耐熱性DNAポリメラーゼ酵素(例えば、Taq DNAポリメラーゼ)を使用して実施する(米国特許第4,683,202号及び第4,683,195号)。最初に、二本鎖の標的DNAが2つの一本鎖に変性するのに十分な温度まで、反応混合物を加熱する。次いで、その反応混合物の温度を特異的なオリゴヌクレオチドプライマーが各々の相補的な一本鎖の標的DNAにアニールするまで低下させる。アニーリングステップに続いて、使用するDNAポリメラーゼの至適温度まで温度を上昇させ、アニールしたオリゴヌクレオチドプライマーの3'末端の相補的なヌクレオチドを組み込ませて、それにより二本鎖の標的DNAを再生する。熱に安定なDNAポリメラーゼを使用することで、変性、アニーリング、及び伸長のサイクルを、各熱変性後にポリメラーゼを添加せずに所望の産物を生じるために必要な回数繰り返す。20又は30の複製サイクルで、標的DNA配列の百万倍の増幅まで生じさせることが可能である("Current Protocols in Molecular Biology in Molecular Biology" F.M. Ausuvel et al. (Eds.), John Wiley and Sons, Inc., 1998)。
【0003】
PCR技術は、生物医学的研究及び遺伝的同一性分析に対する大きな影響を有したが、標的ではないオリゴヌクレオチドの増幅及び標的ではないバックグラウンドのDNA、RNA、及び/またはプライマー自体に対するミスプライムが、重大な問題として依然として存在する。これは、標的DNAが非常に低いレベルの割合で存在する複雑な遺伝的背景の環境でPCRを実施する診断的応用において、及びGCリッチの鋳型DNAのPCRによる増幅において特に該当する。主な問題は、DNA配列と相補的であるプライマーの3'末端における数個の塩基対のみが安定な複製開始複合体を生じさせることが可能であるため、プライマーが非特異的な配列で伸長を開始する可能性がある事である。結果として、所望の産物を犠牲にして、競合又は阻害産物が生産され得る。
【0004】
各種のPCRの応用のために設計された多数のプロトコルは、ほぼ必ず、実施するために至適化ステップを必要とする(Dieffenbach, C.W. and Dveksler, G.S. (1995) PCR Primer: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, NY.)。ある場合、特に、複雑なcDNA又はゲノムDNAをPCRの鋳型として使用し、且つ計算されたアニーリング温度が比較的低い場合には、全ての実験的パラメータを至適化するようにしても、複数の非特異的なバンドを排除することは不可能である。テトラメチルアンモニウム(TMA)クロリド (Chevet, E., et al, (1995) Nucleic Acids Res., 23, 3343-3344; Hung, T., et al,(1990) Nucleic Acids Res., 18, 4953; Warner, C.K. and Dawson, J.E. (1996) In Persing, D.H. (ed.), PCR Protocols for Emerging Infectious Diseases. ASM Press, Washington DC)、ジメチルスルホキシド(Wmship, P.R. (1989) Nucleic Acids Res., 17, 1266; Bookste in, R., et al, (1990) Nucleic Acids Res., 18, 1666; Sidhu, M.K., et al, (1996) Biotechniques, 21, 44-47.)、アミド(Chakrabarti, R., et al, (2001) Nucleic Acids Res., 29, 2377-2381)、及びベタイン(Weissenstemer, T., et al, (1996) Biotechniques, 21, 1102-1108; Henke, W., et al, (1997) Nucleic Acids Res., 19, 3957; 米国特許第6,270,962号)のような幾つかの試薬が、PCRの有効性及び特異性を改善することができると報告されている。これらの試薬は、市販のPCRを至適化及び強化するキットの構成成分として通常使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,683,202号
【特許文献2】米国特許第4,683,195号
【特許文献3】米国特許第6,270,962号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"Current Protocols in Molecular Biology in Molecular Biology" F.M. Ausuvel et al. (Eds.), John Wiley and Sons, Inc., 1998
【非特許文献2】Dieffenbach, C.W. and Dveksler, G.S. (1995) PCR Primer: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, NY.
【非特許文献3】Chevet, E., et al, (1995) Nucleic Acids Res., 23, 3343-3344
【非特許文献4】Hung, T., et al,(1990) Nucleic Acids Res., 18, 4953
【非特許文献5】Warner, CK. and Dawson, J.E. (1996) In Persing, D.H. (ed.), PCR Protocols for Emerging Infectious Diseases. ASM Press, Washington DC
【非特許文献6】Wmship, P.R. (1989) Nucleic Acids Res., 17, 1266
【非特許文献7】Bookstem, R., et al, (1990) Nucleic Acids Res., 18, 1666; Sidhu, M.K., et al, (1996) Biotechniques, 21, 44-47.
【非特許文献8】Chakrabarti, R., et al, (2001) Nucleic Acids Res., 29, 2377-2381
【非特許文献9】Weissenstemer, T., et al, (1996) Biotechniques, 21, 1102-1108
【非特許文献10】Henke, W., et al, (1997) Nucleic Acids Res., 19, 3957
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
残念ながら、多数の場合において、上述の化合物が、非特異的なPCR産物を抑制するか、または特異的なフラグメントの収量を増大することは不可能である。かくして、PCRを強化するものとして使用するための新規な化合物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、酵素によるDNAの合成の改善のための方法を提供する。特に、本発明は、N-アルキルピリジニウム塩(例えば、1-プロピルピリジニウムブロミド)、ピリジニウムの分子内塩(例えば、3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート)、及びピリジン-N-オキシド等のような正に荷電したピリジニウム基を分子内に含有する有機化合物の添加によるPCRの特異性及び収量の改善に主に関連する。本発明は、プライマー伸長法及びDNA配列決定のようなDNAポリメラーゼを使用する他の実験法を改善するためにも有用であって良い。
【0009】
本発明は、DNAポリメラーゼによって触媒される反応において、非特異的な産物を抑制し、及び/又は特異的な産物の収量を増大するための方法、試薬、及び反応キットを提供する。反応に非特異的な産物の減少及び特異的な産物の増大は、本明細書に記載の正に荷電したN-ピリジニウム基を分子内に含有する有機化合物の、反応混合物への添加によって達成される。
【0010】
特に、本発明は、DNAポリメラーゼを含有する反応混合物に式Iの化合物を含ませることによって、DNAポリメラーゼの反応を実施する方法を提供する。
【0011】
【化1】

【0012】
式中、
R1、R2、R3、R4、R5は同一又は異なるものであって良く、-H、-OH、-F、-Cl、-Br、-CF3、-CCl3、-CBr3、-NH2、-NO2、-CN、-CONH2、-CHO、-CO2H、-SH、-SO3H、-OPO3H2、及びR7基からなる群から独立に選択され、
R6は、-O-、-OPO3H2、-CF3、-CCl3、-CBr3、-CN、-CONH2、-CHO、-CO2H、及びR7基からなる群から選択され、
各々のR7は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、又は5から8員環のアリール若しくはヘテロアリール環(ヘテロアリール環である場合は、1又は2つの窒素、酸素、又は硫黄原子あるいはそれらの混合物を含み、残部が炭素であって良い)から独立に選択され、R7は、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-CF3、-CCl3、-CBr3、-NH-NH2、-NH2、-NO、-NO2、-CN、-CONH2、-CHO、-CO2H、-SH、-SO3H、-OPO3H2、又はそれらの混合物から選択される1から4つの基によって場合により置換され、更に場合により、R7は、-NH-NH-、-NN-、-NH-、-CO-、-S-S-基を含んで良い。
【0013】
本発明は、プライマー伸長反応、逆転写反応、DNA配列決定、ニックトランスレーション、PCR、及びDNAポリメラーゼに触媒される他の反応のようなDNAポリメラーゼの反応の有効性及び特異性を改善することができる。
【0014】
DNAポリメラーゼの反応の有効性及び特異性を改善することができる、正に荷電したN-ピリジニウム基を分子内に含有する有機化合物は、N-アルキルピリジニウム塩(例えば、1-プロピルピリジニウムブロミド)、ピリジニウムの分子内塩(例えば、3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート)、ピリジン-N-オキシド、及び本明細書に記載の他のものであって良い。
【0015】
DNAポリメラーゼの反応を実施するために使用されるDNAポリメラーゼは、AMV又はMMLV逆転写酵素のようなRNA依存性DNAポリメラーゼ、及びクレノーフラグメント、DNAポリメラーゼI E. coli、Taq、Tth、又はPfu DNAポリメラーゼのようなDNA依存性DNAポリメラーゼであって良い。
【0016】
本発明の反応キットは、DNAポリメラーゼの反応の特異性及び/又は有効性を改善するために必要であり、本明細書に記載の有機化合物を含有する。更に、反応キットは、複数の更なる反応成分を含有して良い。前記更なる反応成分の1つとして、PCR、逆転写、又はDNA配列決定のためのDNAポリメラーゼのような酵素を含んで良い。
【0017】
本発明の他の特徴、態様、利点は、以下の図面及び詳細な記述を吟味することで、当業者には明らかであろう。本明細書に含まれる、その様な更なるシステム、特徴、態様、及び利点は、いかなるものも本発明の範囲内であり、添付の特許請求の範囲に含まれる。
【0018】
本発明のこれらの及び他の特徴、態様、利点は以下の説明、特許請求の範囲及び添付される図面により一層理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例1で得られたPCR産物の電気泳動による分析を示す。614bpのDNAフラグメントを25ngのGallus domesticusゲノムDNAから30サイクルで増幅した。追加の添加物なしで従来の条件下(レーン1)、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5Mのピリジン-N-オキシドの存在下(レーン2、3、4、5、6)、及び0.1M、0.2M、0.3M、0.4Mの3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートの存在下(レーン7、8、9,10)でPCRを実施した。
【図2】図2は、実施例2で得られたPCR産物の電気泳動による分析を示す。614bpのDNAフラグメントを25ngのGallus domesticusゲノムDNAから30サイクルで増幅した。追加の添加物なしで従来の条件下(レーン1);0.2M及び0.4Mの3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートの存在下(レーン2及び3);0.3M、0.6M、及び1.2Mベタインの存在下(レーン4、5、及び6);12.5mM、25mM、及び50mMのテトラエチルアンモニウムクロリド(TMA-Cl)の存在下(レーン7、8、及び9);並びに0.7M、1.4M、及び2.1MのDMSOの存在下(レーン10、11、及び12)でPCRを実施した。
【図3】図3は、実施例3で得られたPCR産物の電気泳動による分析を示す。X. laevis cDNAの1450bpのDNAフラグメントを100ngのXenopus laevis embryo MATCHMAKER LexA cDNAライブラリー(Clontech Laboratories)から40サイクルで増幅した。追加の添加物なしで従来の条件下(レーン1)、1.25M及び1.7Mのベタインの存在下(レーン2及び3);並びに0.3M、0.35M、及び0.4Mの3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートの存在下(レーン4、5、及び6)でPCRを実施した。レーンMはDNAマーカーを示す。
【図4】図4は、実施例4で得られたPCR産物の電気泳動による分析を示す。614bpのDNAフラグメントを25ngのGallus domesticusゲノムDNAから30サイクルで増幅した。追加の添加物無しで従来の条件下(レーン1);0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、及び0.5Mのピリジン-N-オキシドの存在下(レーン2、3、4、5、及び6);並びに0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、及び0.5Mのトリメチルアミン-N-オキシドの存在下(レーン7、8、9、10、及び11)でPCRを実施した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書及び特許請求の範囲の明確で着実な理解を提供するために、以下の定義を挙げる。
【0021】
本明細書で使用する用語「核酸」は、DNA又はRNAの何れかを意味する。「核酸」は、プラスミド、染色体DNA又はRNA、非機能性DNA又はRNA、及びin vitroで合成されたDNA又はRNAを含む。
【0022】
用語「核酸配列」又は「ポリヌクレオチド配列」は、5'から3'末端に読まれるデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド塩基の一本鎖又は二本鎖ポリマーを意味する。
【0023】
用語「オリゴヌクレオチドプライマー」、「オリゴヌクレオチド」、又は「プライマー」は、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドの一本鎖ポリマーを意味する。
【0024】
本明細書で使用する用語「相補的」は、2つの核酸は配列の間の関係を意味する。1つの核酸配列が第2の核酸配列と二本鎖を形成でき、その二本鎖の各残基がグアノシン-シチジン(G-C)又はアデノシン-チミジン(A-T)塩基対、あるいは等価な塩基対を形成する場合には、第2の核酸配列に相補的である。等価な塩基対は、グアノシン、シチジン、アデノシン、又はチミジン以外の、ヌクレオシド又はヌクレオチドアナログを含んで良い。
【0025】
本明細書で互換的に使用される用語「熱安定性(thermostable)」、「熱的に安定(thermally stable)」、及び「熱に安定(heat-stable)」は、不可逆的に変性せずに、数分の間少なくとも95℃までの温度に耐え得る酵素を意味する。典型的に、その様な酵素は、45℃より高い、好ましくは50℃から75℃の間の至適温度を有する。
【0026】
本明細書で使用する用語である酵素の「修飾」は、酵素の化学的又は遺伝的な修飾を意味する。
【0027】
本明細書で使用する用語「鋳型DNA」、「鋳型RNA」、又は「鋳型」は、ポリメラーゼが新しい相補的な核酸を合成するために使用する核酸を意味する。
【0028】
本明細書で使用する用語「ベタイン」は、N,N,N-トリメチルグリシンを意味する。
【0029】
本明細書で使用する用語「ピリジニウムベタイン」は、ピリジニウムの分子内塩を意味する。
【0030】
本発明の幾つかの化合物は、溶液のpHに依存して、正電荷又は不電荷、あるいは正電荷及び負電荷の双方と共に存在して良い。これらの化合物のこれら各種の形態が、本発明に含まれると解される。
【0031】
1つの態様では、本発明は、DNAポリメラーゼの反応において非特異的な産物を抑制し、特異的な産物の収量を増大するための試薬及び方法を提供する。これらの反応は、プライマー伸長反応、逆転写反応、DNA配列決定、ニックトランスレーション、PCR、又はDNAポリメラーゼによって触媒される他の反応であって良い。反応に非特異的な産物を抑制し、特異的な産物の収量を増大することは、正に荷電したピリジニウム基を含有する有機化合物の添加によって達成される。DNAポリメラーゼの有効性及び特異性を改善することができるこれらの化合物は、N-アルキルピリジニウム塩(例えば、1-プロピルピリジニウムブロミド)、ピリジニウムの分子内塩(例えば、3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート)、及びピリジン-N-オキシド等であって良い。
【0032】
他の態様では、本発明は、DNAポリメラーゼの反応の特異性及び/又は有効性を増大するための反応キットを提供する。前記キットは、分子内に正に荷電したピリジニウム基を含有する有機化合物、又は該化合物を含有する複合試薬、あるいは該試薬の溶液を含んで良い。前記キットは、上記の酵素のプロセスを促進する1つ以上の更なる反応成分を更に含んで良い。前記キットは、上記の酵素のプロセスを実施するための1つ以上のDNAポリメラーゼを更に含んで良い。
【0033】
一般的に、キットは、式Iの化合物を含有する第1の容器及び少なくともDNAポリメラーゼの反応を実施するために適する1つ以上の成分を有する第2の容器を含んで良い。前記第2の容器は、1つ以上の(a) dTNP;(b)ddNTP;(c)DNAポリメラーゼ;(d)反応バッファー;及び(e)プライマーを含有して良い。前記キットは、別々に又は組み合わせてパッケージされる、これら又は他の成分を含有する2つ以上の、例えば3つ、4つ、又は5つの別々の容器を含有して良い。キットは前記試薬の使用のための説明書を含有しても良い。
【0034】
前記キットは、例えば、約5×から10×の試薬濃度である濃縮溶液に式Iの化合物を含有して良い。
【0035】
本発明の方法、キット、及び他の態様における使用に適切なDNAポリメラーゼは、E. coli DNAポリメラーゼI、クレノー酵素、T4 DNAポリメラーゼ、及びT7 DNAポリメラーゼを含む。これらのポリメラーゼは、野生型配列又は合成変異体及びフラグメントであって良い。
【0036】
前記ポリメラーゼは、AMV又はMMLV逆転写酵素のような逆転写酵素であって良く、その合成変異体又はフラグメントを含んで良い。
【0037】
好ましい態様では、前記DNAポリメラーゼは熱安定性DNAポリメラーゼであろう。熱安定性DNAポリメラーゼは、Thermus aquaticus DNAポリメラーゼ;Klentaq-278、Klentaq-235、及びDNAポリメラーゼのStoffelフラグメントを含むTaqポリメラーゼのN末端欠失体、Thermus thermophilus DNAポリメラーゼ;Bacillus caldotenax DNAポリメラーゼ;Thermus flavus DNAポリメラーゼ;Bacillus stearothermophilus DNAポリメラーゼ;及びThermucoccus litoralis DNAポリメラーゼ(VentR(登録商標)とも称される)、Pfu、Pfx、Pwo、及びDeepVentR(登録商標)のような古細菌DNAポリメラーゼ、又はそれらの混合物を含むが、それらに限らない。他の市販のDNAポリメラーゼは、TaqLA又はExpand High FidelityPlus Enzyme Blend (Roche);KlentaqLA、KlenTaq1、TthLA (Perkin-Elmer)、ExTaq(登録商標) (Takara Shuzo);Elongase(登録商標) (Life Technologies);Taquenase(商標) (Amersham)、TthXL (Perkin Elmer);Advantage(商標) klenTaq及びAdvantage(商標) Tth (Clontech);TaqPlus(登録商標)及びTaqExtender(商標) (Stratagene);又はそれらの混合物を含む。
【0038】
DNAポリメラーゼの反応の特異性及び/又は有効性を増大するための正に荷電したピリジニウム基を含有する化合物を使用する方法は、該化合物が反応混合物に添加されて提供されても良い。更なる工程は、鋳型の核酸、オリゴヌクレオチドプライマー、及びポリメラーゼ等を含んで良い更なる反応成分を含ませること、並びに酵素プロセスを活性化及び/又は完了するために反応条件(例えば、温度の増大)を調節することを含む。
【0039】
好ましい実施態様では、本発明はPCRの特異性を増大するための試薬及び方法を含む。具体的には、本発明は特異的にPCRを実施するためのプロセス及びキットを提供する。前記プロセス及びキットは、本明細書に記載のPCRの特異性を改善することができる有機化合物をPCRの反応混合物に添加する工程を利用する。
【0040】
PCRは、米国特許第4,683,202号及び第4,683,195号に記載のポリメラーゼ連鎖反応である。PCRは、反応を進ませるための加熱及び冷却サイクルを使用する。まず、反応混合物を核酸の融点以上まで加熱し、次いで冷却して、特異的なオリゴヌクレオチドプライマーをサンプルに結合させ(アニーリング)、次いで加熱して、増幅される核酸に対する相補的な塩基の付加を至適化する(伸長)。熱安定性DNAポリメラーゼの使用(米国特許第4,889,818)は、所望の産物が産生されるのに必要な回数まで変性、アニーリング、及び伸長のサイクルを繰り返すことを可能にする。20回の複製回数で、標的DNA配列の百万倍の増幅まで生じさせることが可能である。
【0041】
PCR増幅における使用に好ましいDNAポリメラーゼは、熱安定性DNAポリメラーゼ及び/又はその組み合わせを含む。熱安定性DNAポリメラーゼは本明細書で挙げたものを含むが、それらに限らない。
【0042】
本明細書に記載の1つ以上の化合物の適当な量の添加は、PCRの有効性及び特異性の改善を促進する。1-プロピルピリジニウムブロミド、3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート及びピリジン-N-オキシドのPCRの有効性及び特異性に対する効果の実証に関して、本明細書に記載の実施例を参照すべきである。本発明の他の化合物を同様に使用して、PCR法の有効性及び特異性を改善することが可能である。
【0043】
上で示したように、本発明で使用する化合物は、PCR及び逆転写若しくはDNA配列決定のようなDNAポリメラーゼを使用する他の実験法の非特異的な産物を除去又は低限することができるN-ピリジニウム基を含有する有機分子又はイオンである。これらの化合物は、本明細書で規定する式Iによって表わされる。
【0044】
1つの実施態様では、式Iの化合物において、R1、R2、R3、R4、及びR5基は同一又は異なるものであって良く、-H、-CO2H、-OH、-Cl、Br、-NH2、又は-SO3H、-CO2H、-OPO3H2、若しくは-OHによって場合により置換されたC1-6アルキルからなる群から独立に選択され、R6は、-O-、-OPO3H2、-CO2H、-CONH2、-CHO、又は-SO3H、-CO2H、-OPO3H2、若しくは-OHによって場合により置換されたC1-6アルキルからなる群から選択されて良い。
【0045】
好ましい実施態様では、R1、R2、R4、及びR5基は水素であり、R3基は水素又は-SO3-、-CO2-、又は-OH基によって場合により置換されたC1-6アルキルであり、R6基は式Iで規定したようなものである。
【0046】
他の実施態様では、R1、R2、R4、及びR5基は水素であり、R3基は、-SO3-、-CO2-、又は-OH基によって末端の炭素が場合により置換された非分枝のC1-4アルキルであり、R6基は式Iで規定したようなものである。
【0047】
好ましいR6基は、-SO3-;-CO2-; -OH;酸素;又は4-ピリジル基若しくはその酸付加塩によって場合により置換された直鎖又は分枝のC1-6アルキル基を含む。前記C1-6アルキル基は、最も好ましくは、-SO3-、-CO2-又は-OH基によって場合により置換されたメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-アミル、又はn-ヘキシルである。好ましいR6基は、2つ前の段落に記載の好ましいR1、R2、R3、R4、及びR5基との併用が好ましいことが理解されるであろう。
【0048】
式Iで表わされる幾つかの化合物は、溶液のpHに依存して正電荷又は正電荷と負電荷の双方と共に存在して良い。これらの化合物のこれら各種の形態が本発明に含まれることが理解される。
【0049】
かくして、-CONH2、-CO2H、-SO3H、-OPO3H2のような基が特にそれらの対応する荷電した基として存在して良いと解され、その様な基がそれらの荷電した形態並びにそれらの塩を含むと理解されるであろう。
【0050】
PCRの適用を改善するための好ましい化合物は、表1に記載の化合物の群から選択されて良いが、それらに限らない。
【0051】
【表1】

【0052】
一般的に、PCR、DNA配列決定、及びDNAポリメラーゼを使用する他の実験法を改善するために使用する化合物は市販されている。例えば、3-(1-ピリジノ)-1-プロパンスルホネート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムクロリド、ピリジン-N-オキシド、2-ヒドロキシピリジン-N-オキシド (2-ピリジノール1-オキシド)、及び1-(4-ピリジル)ピリジニウムクロリドヒドロクロリドは全てFluka社より得ることができ、1-プロピルピリジニウムブロミドはSigma社より得ることができる。これらの化合物は、当業者に既知の慣例となっている方法によって合成されても良い。
【0053】
好ましい実施態様では、本発明はPCRの特異性を増大するための方法を含む。具体的には、本発明は、非特異的な産物を抑制し、及び/又は特異的なPCR産物の収量を増大するための方法、試薬、及びキットを提供する。前記方法、試薬、及びキットは、正に荷電したN-ピリジニウム基を分子内に含有する有機化合物を利用する。本発明の方法を使用する事によって、標的DNA分子のPCRによる増幅の特異性が増大される。
【0054】
本発明の方法及び試薬は、実施例に記載のPCRのプロセスに適用することができる。PCRを実施するための本明細書に記載の原理、方法論、及び例は、上述の各種のタイプのDNAポリメラーゼの反応の実施に同様に適用して良い。
【0055】
本発明に係るDNAポリメラーゼの反応を実施するために、適切な濃度の式Iの化合物と共にDNAポリメラーゼを含む反応混合物が提供される。典型的には、式Iの化合物(又はその様な化合物の混合物)が、0.05から1.0M、好ましくは0.1から0.9M、例えば0.2から0.75M、より好ましくは0.2から0.5M、例えば0.25から0.5Mの終濃度で提供されて良い。
【0056】
DNAポリメラーゼに加えて、前記反応混合物は、典型的に、鋳型DNA、1つ以上のプライマー、dNTP、及びポリメラーゼのためのバッファーのような当該技術分野で従来使用されている他の成分を含有する。これらの成分は、慣例となっている技術及び知識を用いて当業者によって提供されて良く、これらの成分の厳密な性質及び量は、本発明には重要ではない。
【0057】
以下の実施例は本発明の態様を説明するものである。実施例は本発明を説明するが、それに拘束されるものではない。具体的に規定されていない任意の方法、調合、及び溶液等がSambrook et al.において確認することができる。他に特定されていない限り、如何なる溶液も水溶液であり、滅菌された脱イオン水で構成される。全ての酵素をPromega Corporationより入手した。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
正に荷電したピリジニウム基を分子内に含有する化合物(ピリジン-N-オキシド及び3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート)を添加することによるPCRの特異性及び収量の改善。
【0059】
25ngのGallus domesticusゲノムDNAから、614bpのDNAフラグメントを30サイクル:95℃-30秒;58℃-30秒;72℃-30秒で増幅した。反応混合物(50μl)は、1.5mM MgCl2、20mM Tris-HCl (25℃でpH 9.0)、50mM KCl、0.1% Triton X-100、0.2mM 各dNTP、20pmol プライマー Pr1 (5'-attactcgagatcctggacaccagc)、20pmolプライマー Pr2 (5'-attaggatcctgccctctcccca)、及び2.5U Taq DNAポリメラーゼを含有した。
【0060】
PCR反応は、任意の追加の添加物の非存在下、及び追加の添加物:ピリジン-N-オキシド又は3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートの存在下で実施した。前記追加の添加物は、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5Mのピリジン-N-オキシド、及び0.1M、0.2M、0.3M、0.4Mの3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートの終濃度まで反応混合物に添加した。
【0061】
図1は、得られた増幅産物の電気泳動分析を示す。これらの反応条件下で、本発明の方法(正に荷電したピリジニウム基を分子内に含有する化合物の添加)のみが、検出可能な量の所望の産物(PCRの収量の増大)及び非特異的な増幅産物の除去(PCRの特異性の増大)を提供した。追加の添加物なしの従来のPCR法(レーン1)と比較して、標的DNAの合成及び非特異的なPCR産物の除去が0.3Mから0.5Mの濃度のピリジン-N-オキシド(レーン4-6)又は0.2Mから0.4Mの濃度の3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート(レーン8-10)を使用することによって得られた(レーン1と比較して、レーン4-6及びレーン8-10における標的の増幅産物の存在と非特異的な産物の非存在に特に言及する)。
【0062】
(実施例2)
ベタイン、テトラメチルアンモニウムクロリド(TMA-Cl)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及び3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートのPCRの特異性を改善する能力の比較。
【0063】
ベタイン、テトラメチルアンモニウムクロリド(TMA-Cl)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)は、DNAポリメラーゼの反応の特異性及び収量を改善するために使用されるDNAポリメラーゼの反応混合物(例えば、PCR及びDNA配列決定の混合物)への最も一般的な添加物である。ベタイン、TMA-Cl、DMSO、及び本発明の3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートのDNAポリメラーゼの反応の特異性及び収量を改善する能力を、Gallus domesticusゲノムDNAからの614bp DNAフラグメントのPCRによる増幅において比較した。
【0064】
PCRを実施例1に記載のように実施した。反応混合物は追加の添加物を含有していたか、又は含有していなかった。
【0065】
図2は、得られた増幅産物の電気泳動による分析を示す。これらの反応条件下で、0.2から0.4M 3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート(レーン2及び3)及び1Mより高い濃度のベタイン(レーン6-1.2Mのベタイン)の存在のみが、非特異的な増幅産物の除去並びに検出可能な量の所望の産物を生じさせる。
【0066】
0.2M 3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートは1.2M ベタインと同一の効果を提供することに注意するべきである。ベタインと3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートとの間の更なる比較を実施例3に記載する。
【0067】
ベタイン(米国特許第6,270,962号)及び3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート(本発明)のDNAのPCRによる増幅を改善する能力の比較。
【0068】
X. laevis cDNAの1450bp DNAフラグメントを、40サイクル:94℃-30秒;58℃-35秒;72℃-60秒において、100ngのXenopus laevis embryo MATCHMAKER LexA cDNAライブラリー (Clontech Laboratories) から増幅した。反応混合物 (50μl)は、1.5mM MgCl2、20mM Tris-HCl (25℃でpH 9.0)、50mM KCl、0.1% Triton X-100、0.2mM 各dNTP、20pmol プライマー Pr3 (5'-attaccatggacccagcggctcctgccacc)、20pmol プライマー Pr4 (5'-ccgctcgagagctcctctacctccttc)、及び2.5U Taq DNAポリメラーゼを含有した。
【0069】
任意の追加の添加物の非存在下、及び以下の追加の添加物:1.25M若しくは1.7Mベタイン、又は0.3M、0.35M、若しくは0.4M 3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートの存在下でPCR反応を実施した。
【0070】
図3は、得られた増幅産物の電気泳動による分析を示す。これらの反応条件下で、3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート(レーン4-6)の存在下でのみ、検出可能な量の所望の産物を生じさせた。追加の添加物無しの従来のPCR法(レーン1)と比較して、ベタイン(レーン2及び3)と3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート(レーン4-6)の双方のPCR混合物への添加が非特異的な増幅産物を低減するが、非特異的な産物の完全な除去は0.4M 3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート(レーン6)によってのみ達成された。
【0071】
(実施例4)
トリメチルアミン-N-オキシド(米国特許第6,270,962号)及びピリジン-N-オキシド(本発明)のPCRの特異性及び収量を増大する能力の比較。
【0072】
2つのN-オキシド化合物、トリメチルアミン-N-オキシド、及びピリジン-N-オキシドをPCRのようなDNAポリメラーゼの反応の特異性及び収量を増大する化合物として試験した。トリメチルアミン-N-オキシドは、DNA配列決定のようなDNAポリメラーゼの反応を改善する化合物として米国特許第6,270,962号に記載されていた。本発明のピリジン-N-オキシドは、トリメチルアミン-N-オキシド内の正に荷電したN,N,N-トリメチル基の代わりに正に荷電したピリジニウム基を含有している。
【0073】
PCR反応は実施例1に記載のように実施した。反応混合物は、0.1Mから0.5Mのピリジン-N-オキシド、又は0.1Mから0.5Mのトリメチルアミン-N-オキシドを含有するか、あるいは追加の添加物を含有しなかった。
【0074】
図4は、得られた増幅産物の電気泳動による分析を示す。これらの反応条件下で、0.3から0.5Mのピリジン-N-オキシド(レーン4-6)の存在下でのみ、非特異的な増幅産物の除去並びに検出可能な量の所望の産物を生じさせた。追加の添加物無しの従来のPCR法(レーン1)と比較して、0.1Mから0.5Mの濃度のトリメチルアミン-N-オキシド(レーン7-11)はPCRの大きな改善を示さなかった。
【0075】
上述の方法は単に本発明の趣旨を説明する代表的な実施態様であり、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、該方法の他の変形例が当業者によって為されて良いことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

[式中、
R1、R2、R3、R4、R5は同一又は異なるものであって良く、-H、-OH、-F、-Cl、-Br、-CF3、-CCl3、-CBr3、-NH2、-NO2、-CN、-CONH2、-CHO、-CO2H、-SH、-SO3H、-OPO3H2、及びR7基からなる群から独立に選択され、
R6は、-O-、-OPO3H2、-CF3、-CCl3、-CBr3、-CN、-CONH2、-CHO、-CO2H、及びR7基からなる群から選択され、
各々のR7基は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、又は5から8員環のアリール若しくはヘテロアリール環(ヘテロアリール環である場合は、1又は2つの窒素、酸素、又は硫黄原子あるいはそれらの混合物を含み、残部が炭素であって良い)から独立に選択され、R7は、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-CF3、-CCl3、-CBr3、-NH-NH2、-NH2、-NO、-NO2、-CN、-CONH2、-CHO、-CO2H、-SH、-SO3H、-OPO3H2、又はそれらの混合物から選択される1から4つの基によって場合により置換され、更に場合により、R7は、-NH-NH-、-NN-、-NH-、-CO-、-S-S-基を含んで良い]
をDNAポリメラーゼを含有する反応混合物に含ませることによって、DNAポリメラーゼの反応を実施する方法。
【請求項2】
前記R1、R2、R3、R4、及びR5基が同一又は異なるものであり、-H、-CO2H、-OH、-Cl、-Br、-NH2、又は-SO3H、-CO2H、-OPO3H2、若しくは-OHによって場合により置換されたC1-6アルキルからなる群から独立に選択され、R6が、-O-、-OPO3H2、-CO2H、-CONH2、-CHO、又は-SO3H、-CO2H、-OPO3H2、若しくは-OHによって場合により置換されたC1-6アルキルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記R1、R2、R3、R4、及びR5基が水素であり、前記R6基が請求項1に規定されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記R1、R2、R4、及びR5基が水素であり、前記R3基が-SO3H、-CO2H、又は-OH基によって場合により置換されたC1-6アルキルであり、前記R6基が請求項1に規定されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記R1、R2、R4、及びR5基が水素であり、前記R3基が-SO3H、-CO2H、又は-OHによって末端の炭素が場合により置換された非分枝のC1-4アルキルであり、前記R6基が請求項1に規定されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記R6基が-SO3H、-CO2H、若しくは-OH基によって場合により置換された直鎖若しくは分枝のC1-6アルキル、酸素、又は4-ピリジル基、あるいはそれらの酸付加塩である、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記R6基が-SO3-、-CO2-、又は-OHによって場合により置換されたメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-アミル、又はn-ヘキシル基である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記R1、R2、R3、R4、及びR5基が水素であり、前記R6基がスルホメチル、スルホエチル、スルホプロピル、又はスルホブチルである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物がピリジン-N-オキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が2-ピリジノール1-オキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記DNAポリメラーゼの反応がPCRである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記DNAポリメラーゼの反応がチェーンターミネーションDNA配列決定の反応である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記DNAポリメラーゼの反応がプライマー伸長反応である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記DNAポリメラーゼの反応が逆転写反応である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記DNAポリメラーゼの反応がニックトランスレーション反応である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応混合物がGCリッチのトリヌクレオチドリピートを有するDNA分子を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
別々の容器に
a)DNAポリメラーゼの反応のための成分;及び
b)1つ以上の式Iの化合物
【化2】

[式中、
R1、R2、R3、R4、R5は同一又は異なるものであってあって良く、-H、-OH、-F、-Cl、-Br、-CF3、-CCl3、-CBr3、-NH2、-NO2、-CN、-CONH2、-CHO、-CO2H、-SH、-SO3H、-OPO3H2、及びR7基からなる群から独立に選択され、
R6は、-O-、-OPO3H2、-CF3、-CCl3、-CBr3、-CN、-CONH2、-CHO、-CO2H、及びR7基からなる群から選択され、
各々のR7基は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、又は5から8員環のアリール若しくはヘテロアリール環(ヘテロアリール環である場合は、1又は2つの窒素、酸素、又は硫黄原子あるいはそれらの混合物を含み、残部が炭素であって良い)から独立に選択され、R7は、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-CF3、-CCl3、-CBr3、-NH-NH2、-NH2、-NO、-NO2、-CN、-CONH2、-CHO、-CO2H、-SH、-SO3H、-OPO3H2、又はそれらの混合物から選択される1から4つの基によって場合により置換され、更に場合により、R7は、-NH-NH-、-NN-、-NH-、-CO-、-S-S-基を含んで良い]
を含有する容器
を含む、DNAポリメラーゼの反応を実施するためのキット。
【請求項19】
前記式Iの化合物が請求項2から11のいずれか一項に規定されたものである、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
DNAポリメラーゼ酵素を更に含む、請求項18又は19に記載のキット。
【請求項21】
前記DNAポリメラーゼ酵素が、E. coli DNAポリメラーゼI、クレノー酵素、T4 DNAポリメラーゼ、及びT7 DNAポリメラーゼからなる群から選択される、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記DNAポリメラーゼが逆転写酵素である、請求項20に記載のキット。
【請求項23】
前記逆転写酵素がAMV及びM-MuLVからなる群から選択される、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記DNAポリメラーゼが熱安定性DNAポリメラーゼである、請求項20に記載のキット。
【請求項25】
前記熱安定性DNAポリメラーゼが、Taq DNAポリメラーゼ;TaqポリメラーゼのN-末端欠失体、Tth DNAポリメラーゼ、Bacillus caldotenax DNAポリメラーゼ;Thermus flavus DNAポリメラーゼ;Bacillus stearothermophilus DNAポリメラーゼ;並びにPfu DNAポリメラーゼ、Pfx DNAポリメラーゼ、Pwo DNAポリメラーゼ、Thermococcus litoralis DNAポリメラーゼ、及びDeepVentR(登録商標)のような古細菌DNAポリメラーゼからなる群から選択される、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
式Iの化合物
【化3】

[式中、
R1、R2、R3、R4、R5は同一又は異なるものであってあって良く、-H、-OH、-F、-Cl、-Br、-CF3、-CCl3、-CBr3、-NH2、-NO2、-CN、-CONH2、-CHO、-CO2H、-SH、-SO3H、-OPO3H2、及びR7基からなる群から独立に選択され、
R6は、-O-、-OPO3H2、-CF3、-CCl3、-CBr3、-CN、-CONH2、-CHO、-CO2H、及びR7基からなる群から選択され、
各々のR7基は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、又は5から8員環のアリール若しくはヘテロアリール環(ヘテロアリール環である場合は、1又は2の窒素、酸素、又は硫黄原子あるいはそれらの混合物を含み、残部が炭素であって良い)から独立に選択され、R7は、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-CF3、-CCl3、-CBr3、-NH-NH2、-NH2、-NO、-NO2、-CN、-CONH2、-CHO、-CO2H、-SH、-SO3H、-OPO3H2、又はそれらの混合物から選択される1から4つの基によって場合により置換され、更に場合により、R7は、-NH-NH-、-NN-、-NH-、-CO-、-S-S-基を含んで良い]
をDNAポリメラーゼを含有する反応混合物中に含ませることを含む、DNAポリメラーゼの反応の実施における改善方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−254833(P2011−254833A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177965(P2011−177965)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【分割の表示】特願2007−542117(P2007−542117)の分割
【原出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(507017196)バイオライン・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】