説明

酸化スズ多孔質層の形成方法及びエレクトロクロミック表示素子

【課題】表示速度に優れ、軽量、フレキシビリティであるエレクトロクロミック表示素子を提供する。
【解決手段】有機スズを含有する有機スズペーストを用いて有機スズ層を形成後、150〜250℃の温度で加熱処理して酸化スズ多孔質層を形成することを特徴とする酸化スズ多孔質層の形成方法及びそれを用いたエレクトロクロミック表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化スズ多孔質層の形成方法および低温加熱で形成された酸化スズ多孔質層を有するエレクトロクロミック表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は必ずしも人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない(メモリー性)反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低く白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は電圧高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。
【0006】
一方、エレクトロクロミック表示素子は、3V以下の低電圧で駆動が可能であるが、黒色またはカラー色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、グリーン、レッド等)の色品質が十分でなく、メモリー性を確保するため表示セルに蒸着膜等の複雑な膜構成が必要などの懸念点がある。
【0007】
これらのエレクトロクロミック表示方式の課題を改良する方式として、例えば、少なくとも1方が透明である2枚の導電基板間に、多孔質層、酸化反応及び還元反応の少なくとも1方により可逆的に発色又は消色するエレクトロクロミック色素を含有する電解質を介在させてなるエレクトロクロミック素子を用いたエレクトロクロミック表示装置が開示されており、構造が簡単であり、明るくて見やすく、省消費電力化が可能であるとされている。(例えば特許文献1、2参照)。
【0008】
本発明者は、より詳細に検討を進めた結果、上記特許文献1、2に開示されている方法でフルカラーエレクトロクロミック表示素子を作製して表示特性を評価した結果、酸化スズ層の形成に400〜500度の焼成が必要なため、ITO等の透明電極やTFTの特性が低下し、表示速度が遅くなることが分かった。また、素子の軽量化やフレキシブル化のためには、プラスチック樹脂基板を用いることが有効であるが、上述の酸化スズ層の形成において、400〜500度の焼成が必要なことがネックになっていた。
【特許文献1】国際公開第2004/068231号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/067673号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、表示速度に優れ、軽量、フレキシビリティであるエレクトロクロミック表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の構成により解決することができた。
【0011】
1.有機スズを含有する有機スズペーストを用いて有機スズ層を形成後、150〜250℃の温度で加熱処理して酸化スズ多孔質層を形成することを特徴とする酸化スズ多孔質層の形成方法。
【0012】
2.前記有機スズが、有機酸とのスズ塩であることを特徴とする前記1に記載の酸化スズ多孔質層の形成方法。
【0013】
3.前記有機酸が三級脂肪酸であることを特徴とする前記2に記載の酸化スズ多孔質層の形成方法。
【0014】
4.前記三級脂肪酸がピバリン酸、ネオヘプタン酸、ネオノナン酸またはネオデカン酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記3に記載の酸化スズ多孔質層の形成方法。
【0015】
5.前記有機スズペーストにアンチモンがドープされていることを特徴とする前記1〜4の何れか1項に記載の酸化スズ多孔質層の形成方法。
【0016】
6.対向電極、エレクトロクロミック色素を吸着させた酸化チタンを含む多孔質層を少なくとも1層、及び酸化スズ多孔質層を少なくとも1層を有するエレクトロクロミック表示素子であって、該酸化スズ多孔質層が前記1〜5の何れか1項に記載の酸化スズ多孔質層の形成方法で形成され酸化スズ多孔質層であることを特徴とするエレクトロクロミック表示素子。
【0017】
7.前記エレクトロクロミック色素が下記一般式(1)で表されることを特徴とする前記6に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【0018】
【化1】

【0019】
〔式中、R1は、−(CH2m−(ここにおいてmは0或いは1〜10の整数を表す。)、各々炭素原子数14までのアリーレン基、ヘテロアリーレン基、或いは各々炭素原子数10までの分岐アルキレン基、アルケニレン基、或いはシクロアルキレン基であり、各々のアリーレン基、ヘテロアリーレン基、分岐アルキレン基、分岐アルケニレン基、或いはシクロアルキレン基は任意に−P(O)(OH)2基を−(CH2n−基を介して有していてもよい。また、任意に置換されていてもよい。ここにおいてnは0或いは1〜10の整数を表す。
【0020】
2は、R34で表される基であり、ここにおいてR3は、−(CH2p−(ここにおいてpは0或いは1〜10の整数を表す。)を表し、R4は、−P(O)(OH)2基、或いは、炭素原子数14までのアリール基、ヘテロアリール基、各々炭素原子数10までの分岐アルキル基、或いはアルケニル基、或いはシクロアルキル基、を表す。
【0021】
-は、荷電を中和するイオンを表す。
【0022】
但し、R2が−(CH22−P(O)(OH)2である場合、R1は、−(CH2m−(mは2または3)であることはない。また、R2がフェニル基の場合、R1は−(CH2m−(mは2)であることはない。〕
8.前記エレクトロクロミック色素が下記一般式(2)で表されることを特徴とする前記6に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【0023】
【化2】

【0024】
〔式中、R1は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R2、R3は各々水素原子または置換基を表す。X1は>N−R4、酸素原子または硫黄原子を表し、R4は水素原子、または置換基を表す。〕
9.前記酸化チタンを含む多孔質層、または、酸化スズ多孔質層の厚みが1μm以上、5μm以下であることを特徴とする前記6〜8の何れか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【0025】
10.前記エレクトロクロミック表示素子を複数積層して複数色を表示可能としたことを特徴とする前記6〜9の何れか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【0026】
11.異なるエレクトロクロミック色素を吸着させた酸化チタンを含む多孔質層を、対向電極間にパターン状に配置することにより、複数色を表示可能としたことを特徴とする前記6〜9の何れか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【0027】
12.複数種のエレクトロクロミック色素を同一の酸化チタンを含む多孔質層に吸着させることにより、複数色を表示可能としたことを特徴とする前記6〜9の何れか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【0028】
13.少なくとも1方の電極がプラスチック基板上に構成されていることを特徴とする前記6〜12の何れか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【発明の効果】
【0029】
本発明の上記手段により、表示速度に優れ、軽量、フレキシビリティであるエレクトロクロミック表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0031】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、有機スズ、更には脂肪酸のスズ塩、特には三級脂肪酸のスズ塩を含有した有機スズペーストを用いて有機スズ層を形成後、150〜250℃の温度で加熱処理して酸化スズ多孔質層を形成することを特徴とする酸化スズ多孔質層の形成方法により、表示速度に優れ、軽量、フレキシビリティであるエレクトロクロミック表示素子を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0032】
<エレクトロクロミック色素>
本発明に係るエレクトロクロミック色素としては、エレクトロクロミック特性を示すいかなる化合物でもよい。
【0033】
具体的には、特開昭62−297382号、同63−286489号、特開平3−54528号、特開平5−224242号、特開平5−98251号、特開2004−01729号、特開2000−241835号、国際公開第2004/067673号パンフレット等に記載されている色素を挙げることができる。
【0034】
例えば前記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0035】
1で表される、各々炭素数14までのアリーレン基、ヘテロアリーレン基、各々炭素数10までの分岐のアルキレン基、分岐のアルケニレン基、或いはシクロアルキレン基は、任意に、置換基を有してもよく、これらの基は一つ或いは2以上置換されていてもよく、また複数置換されている場合、それぞれ異なっていてもまた同じ置換基でもよい。
【0036】
これらの置換基としては、以下の基が挙げられる。
【0037】
低級アルキル基、低級アルケニル基、フェニル置換−低級アルキル基、ジフェニル置換−低級アルキル基、フェニル基、フェノキシ基、低級アルカノイルオキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、低級アルキルアミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、フェニルアミノ基、低級アルカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、低級アルキルスルフォニルアミノ基、フェニルスルフォニルアミノ基、低級アルカノイル基、ベンゾイル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N−低級アルキルカルバモイル基、N,N−ジ−(低級アルキル)カルバモイル基、ウレイド基、N−低級アルキルウレイド基、低級アルキルスルフォニル基、フェニルスルフォニル基、ヒドロキシル基、低級アルコキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ(低級アルキル)アミノ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、或いは低級アルコキシカルボニル基で置換された低級アルコキシ基、炭素原子数3〜7のアルコキシ基、そして2価のメチレンジオキシ基等があげられる。
【0038】
また、上記において挙げられたフェニル基、またベンゾイル基、フェニルアミノ基等に含まれるフェニル基は、全て、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、そして/またニトロ基等により置換されていてもよい。
【0039】
また、R4で表されるアリール基、ヘテロアリール基、分岐のアルキル基、或いはアルケニル基、或いはシクロアルキル基等も無置換でもよいが、前記R1の置換基として定義された基により一つ或いは複数以置換されていてもよい。
【0040】
前記一般式(1)において、好ましい化合物としては、R1が、−(CH2m−(ここにおいてmは、1、2、3を表す)、フェニル基(−(CH2n−基を介してp位が−P(O)(OH)2基で置換されており、nは1或いは2を表す)であり、R2(R34で表される)において、R3は−(CH2p−(ここにおいてpは0、1、2、3を表す)を表し、R4は、未置換のフェニル或いはナフチル、或いは、炭素原子数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、フェノキシ基、或いはベンゾイル基によってモノ−、ジ−或いはトリ−置換されたフェニル或いはナフチル基である。
【0041】
また、X-は、Cl-、Br-、ClO4-、PF6-、BF4-、C26NO42-、或いはCF3SO3-であり、特に好ましくは、Cl-、PF6-である。
【0042】
以下に、一般式(1)で表されるエレクトロクロミック色素の好ましい具体例を挙げる。
(1)1−フォスフォノエチル−1’−(3−プロピルフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(2)1−フォスフォノエチル−1’−(3−プロピルフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ビス−ヘキサフルオロフォスフェート
(3)1−フォスフォノエチル−1’−(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(4)1−フォスフォノエチル−1’−(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ビス−ヘキサフルオロフォスフェート
(5)1−フォスフォノエチル−1’−(ナフチル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(6)1−フォスフォノエチル−1’−(4−シアノナフチル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(7)1−フォスフォノエチル−1’−(4−メチルフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(8)1−フォスフォノエチル−1’−(4−シアノフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(9)1−フォスフォノエチル−1’−(4−フルオロフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(10)1−フォスフォノエチル−1’−(4−フェノキシフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(11)1−フォスフォノエチル−1’−(4−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(12)1−フォスフォノエチル−1’−(2,6−ジメチルフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(13)1−フォスフォノエチル−1’−(3,5−ジメチルフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(14)1−フォスフォノエチル−1’−(4−ベンゾフェノン)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(15)1−フォスフォノベンジル−1’−(3−プロピルフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(16)1−フォスフォノベンジル−1’−(3−プロピルフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ビス−ヘキサフルオロフォスフェート
(17)1−フォスフォノベンジル−1’−(フォスフォノエチル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(18)1−フォスフォノベンジル−1’−(2,4−ジニトロフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(19)1−フォスフォノベンジル−1’−(2,4−ジニトロフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ビス−ヘキサフルオロフォスフェート
(20)1−フォスフォノベンジル−1’−(4−フェノキシフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(21)1−フォスフォノベンジル−1’−(4−フェノキシフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ビス−ヘキサフルオロフォスフェート
(22)1−フォスフォノベンジル−1’−(4−フルオロフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(23)1−フォスフォノベンジル−1’−(4−メチルフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(24)1−フォスフォノベンジル−1’−(2,4,6−トリニトロフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(25)1−フォスフォノベンジル−1’−(ベンジル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(26)1−フォスフォノベンジル−1’−(ナフチル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(27)1−フォスフォノベンジル−1’−(フェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(28)1−フォスフォノベンジル−1’−(4−シアノフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(29)1−フォスフォノベンジル−1’−(4−ベンゾフェノン)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(30)1−フォスフォノベンジル−1’−(4−シアノフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(31)1−フォスフォノベンジル−1’−(2,6−ジメチルフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(32)1−フォスフォノベンジル−1’−(3,5−ジメチルフェニル)−4,4’−ビピリジニウム ジクロライド
(33)1−フォスフォノベンジル−1’−(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,4’−ビピリジニウム トリフルオロメタンスルフォンイミド
これらの化合物の製造法は前記国際公開第2004/067673号パンフレットに記載されている。
【0043】
また、本発明において好ましいエレクトロクロミック色素としては、前記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0044】
一般式(2)において、R1は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R2、R3は各々水素原子または置換基を表すが、R1、R2、R3で表される置換基の具体例としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレタン基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、フェニルウレイド基、2−ピリジルウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、メチルウレイド基等)、アミド基(例えば、アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブタンアミド基、ヘキサンアミド基、ベンズアミド基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、フェニルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メチルスルホンアミド基、オクチルスルホンアミド基、フェニルスルホンアミド基、ナフチルスルホンアミド基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ホスホノ基(例えば、ホスホノエチル基、ホスホノプロピル基、ホスホノオキシエチル基)、オキザモイル基等を挙げることができる。また、これらの基はさらにこれらの基で置換されていてもよい。
【0045】
1は、置換もしくは無置換のアリール基であり、好ましくは置換もしくは無置換のフェニル基、更に好ましくは置換もしくは無置換の2−ヒドロキシフェニル基または4−ヒドロキシフェニル基である。
【0046】
2及びR3として好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、複素環基であり、より好ましくは、R2及びR3のいずれか一方がフェニル基、他方がアルキル基、更に好ましくはR2及びR3の両方がフェニル基である。
【0047】
1として好ましくは>N−R4である。R4として好ましくは、水素原子、アルキル基、芳香族基、複素環基、アシル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のアリール基、アシル基である。
【0048】
以下に、一般式(2)で表されるエレクトロクロミック色素の具体的化合物例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0049】
【化3】

【0050】
【化4】

【0051】
【化5】

【0052】
【化6】

【0053】
【化7】

【0054】
【化8】

【0055】
【化9】

【0056】
【化10】

【0057】
【化11】

【0058】
【化12】

【0059】
【化13】

【0060】
【化14】

【0061】
【化15】

【0062】
〈対向電極〉
本発明の対向電極としては、金属電極または透明電極を用いることができる。金属電極としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス、及びそれらの合金等の公知の金属種を用いることができる。電極の作製方法は、蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、CVD法等の既存の方法を用いることができる。
【0063】
透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0064】
本発明の対向電極としては、フルカラーの色表示の色域を十分に大きくとるために、透明電極を用いるのが好ましく、特に、光透過率と抵抗の観点からITO電極またはFTOでコートしたITO電極が好ましい。
【0065】
〈多孔質層〉
本発明に係る多孔質層には金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ、Snドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛等、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
本発明においては、対向電極に隣接する多孔質層の1方は酸化チタンを含み、他方は酸化スズを含むことを特徴とする。酸化チタン、酸化スズの組み合わせを用いることにより、3V程度以下の印加電圧において、可逆性の高いエレクトロクロミック色素の発色・消色を行うことができる。
【0067】
多孔質層は、上記金属酸化物の複数個の微粒子を結着または接触させることにより形成される。金属酸化物微粒子の平均粒子径は5nm〜10μmが好ましく、より好ましくは20nm〜1μmである。また、金属酸化物微粒子の比表面積は、簡易BET法で1×10-3〜1×1022/gであることが好ましく、より好ましくは1×10-2〜10m2/gである。また、金属酸化物微粒子の形状は、不定形、針状、球形など任意の形状のものが用いられる。
【0068】
本発明の多孔質層の厚みは、1μm以上、5μm以下が好ましい。1μm以下では、十分な量のエレクトロクロミック色素の吸着が行えずコントラストの低下を招き、また5μmを超える場合は、解像度の低下を招き不利である。
【0069】
金属酸化物微粒子の形成または結着法としては、公知のゾルゲル法や焼結法を採用することができ、例えば、1)Journal of the Ceramic Society of Japan,102,2,p200(1994)、2)窯業協会誌90,4,p157、3)J.of Non−Cryst.Solids,82,400(1986)等に記載の方法が挙げられる。また、気相法により作製した酸化チタンデンドリマー粒子を溶液上に分散して基体上に塗布し、120〜150℃程度の温度で乾燥して溶媒を除去して多孔質電極を得る方法を用いることもできる。
【0070】
また、「透明導電膜の低抵抗・低温・大面積成膜技術」(2005年7月、株式会社技術協会刊 ISBN4−86104−078−7 C3058)に記載の化学溶液析出法等の低温プロセスを用いることにより、特に多孔質層が透明電極を介して画素回路の一部に接続されている場合は、画素画素回路へのダメージが少なく、画素回路が集積したディスプレイ表示において、画素間の表示バラつきを低減できる利点がある。
【0071】
金属酸化物微粒子は結着させた状態が好ましく、連続加重式表面性測定機(例えば、スクラッチ試験器)で0.1g以上、好ましくは1g以上の耐性を有する状態が好ましい。
【0072】
本発明でいう多孔質とは、多孔質層を配置し、対向電極間に電位差を与え、エレクトロクロミック反応を生じさせることが可能で、イオン種が多孔質層内を移動可能な貫通状態をいう。
【0073】
〔有機スズペーストおよび酸化スズ多孔質層の形成方法〕
本発明の対向電極に隣接する多孔質層の1方である酸化スズ多孔質層の形成には、本発明の有機スズペーストが用いられる。有機スズペーストとは、溶媒中に有機スズを分散して得られるペースト状分散物をいい、酸化スズ分散物と混合して用いても良い。得られた有機スズペーストを塗布、乾燥して有機スズ層を形成後、加熱することにより酸化スズ多孔質層を形成することができる。
【0074】
本発明の有機スズペーストに用いられる溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、キシレン、トルエン、アセチルアセトン、アセトニトリル等の沸点が100℃を超える溶媒から選択されることが好ましい。
【0075】
本発明の有機スズペーストに用いられる有機スズとしては、有機酸とスズとのスズ塩を用いることができ、好ましくは脂肪酸のスズ塩であり、より好ましくは三級脂肪酸との塩である。また、Sbがドープされた酸化スズと混合されていてもよい。
【0076】
本発明の有機スズペーストに用いられる有機スズを形成する三級脂肪酸塩としては、ピバリン酸、ネオヘプタン酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸との塩から形成されていることが好ましい。
【0077】
本発明の有機スズペーストは、保存時は冷暗所での保管が推奨され、使用前に室温に放置し、必要に応じて再分散を行ってから使用することが望ましい。
【0078】
本発明の有機スズペーストを用いた有機スズ層の形成方法は、ブレード法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法などの常法の中から用途に応じて、選択することが可能である。
【0079】
有機スズ層形成後の加熱は、150〜250℃の範囲で30分〜2時間程度加熱することで、溶媒の蒸発、有機物のスズからの脱離、有機物の蒸発、金属スズの酸化を促進し、酸化スズ多孔質層の抵抗値を下げることができる。200℃を超える加熱をする場合には、100〜150℃のプレ加熱で溶媒を蒸発させてから、所望温度まで加熱することが望ましい。
【0080】
〔白色散乱層〕
本発明においては、白表示を可能とするために、対向電極間、または対向電極間の外側に白色散乱層を設けることができる。本発明に適用可能な白色散乱層は、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
【0081】
本発明で適用可能な白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0082】
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛が好ましく用いられる。また、無機酸化物(Al23、AlO(OH)、SiO2等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えて、トリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンを用いることができる。
【0083】
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0084】
本発明において、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子としては、水溶性高分子、水系溶媒に分散した高分子を挙げることができる。
【0085】
水溶性化合物としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニールアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。更に、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SO3M(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えばメタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダーは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0086】
本発明においては、ゼラチン及びゼラチン誘導体、または、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体を好ましく用いることができる。
【0087】
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの高分子のうち、特開平10−76621号に記載の水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0088】
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kgあたりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、質量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0089】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水系化合物/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
【0090】
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物を塗布する媒体は、表示素子の対向電極間の構成要素上であればいずれの位置でもよいが、対向電極の少なくとも1方の電極面上に付与することが好ましい。媒体への付与の方法としては、例えば、塗布方式、液噴霧方式、気相を介する噴霧方式として、圧電素子の振動を利用して液滴を飛翔させる方式、例えば、ピエゾ方式のインクジェットヘッドや、突沸を利用したサーマルヘッドを用いて液滴を飛翔させるバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットヘッド、また空気圧や液圧により液を噴霧するスプレー方式等が挙げられる。
【0091】
塗布方式としては、公知の塗布方式より適宜選択することができ、例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースローラーコーター、トランスファーローラーコーター、カーテンコーター、ダブルローラーコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ビードコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カレンダーコーター、押し出しコーター等が挙げられる。
【0092】
媒体上に付与した水系化合物と白色顔料との水混和物の乾燥は、水を蒸発できる方法であればいかなる方法であってもよい。例えば、熱源からの加熱、赤外光を用いた加熱法、電磁誘導による加熱法等が挙げられる。また、水蒸発は減圧下で行ってもよい。
【0093】
本発明でいう多孔質とは、前記水系化合物と白色顔料との水混和物を電極上に塗布乾燥して多孔質の白色散乱物を形成した後、該散乱物上に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質液を与えた後に対向電極で挟み込み、対向電極間に電位差を与え、銀の溶解析出反応を生じさせることが可能で、イオン種が電極間で移動可能な貫通状態のことを言う。
【0094】
本発明の表示素子では、上記説明した水混和物を塗布乾燥中または乾燥後に、硬化剤により水系化合物の硬化反応を行うことが望ましい。
【0095】
本発明で用いられる硬膜剤の例としては、例えば、米国特許第4,678,739号の第41欄、同第4,791,042号、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、同61−249054号、同61−245153号、特開平4−218044号等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド等)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン等)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素等)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号等に記載の化合物)が挙げられる。水系化合物としてゼラチンを用いる場合は、硬膜剤の中で、ビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。また、ポリビニルアルコールを用いる場合はホウ酸やメタホウ酸等の含ホウ素化合物の使用が好ましい。
【0096】
これらの硬膜剤は、水系化合物1g当たり0.001〜1g、好ましくは0.005〜0.5gが用いられる。また、膜強度を上げるため熱処理や、硬化反応時の湿度調整を行うことも可能である。
【0097】
〔電解質材料〕
本発明の表示素子において、電解質が液体である場合には、以下の化合物を電解質中に含むことができる。カリウム化合物としてKCl、KI、KBr等、リチウム化合物としてLiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等、テトラアルキルアンモニウム化合物として過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、ホウフッ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等が挙げられる。また、特開2003−187881号公報の段落番号〔0062〕〜〔0081〕に記載の溶融塩電解質組成物も好ましく用いることができる。さらに、I-/I3-、Br-/Br3-、キノン/ハイドロキノン等の酸化還元対になる化合物を用いることができる。
【0098】
また、支持電解質が固体である場合には、電子伝導性やイオン伝導性を示す以下の化合物を電解質中に含むことができる。
【0099】
パーフルオロスルフォン酸を含むフッ化ビニル系高分子、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、トリフェニルアミン類、ポリビニルカルバゾール類、ポリメチルフェニルシラン類、Cu2S、Ag2S、Cu2Se、AgCrSe2等のカルコゲニド、CaF2、PbF2、SrF2、LaF3、TlSn25、CeF3等の含F化合物、Li2SO4、Li4SiO4、Li3PO4等のLi塩、ZrO2、CaO、Cd23、HfO2、Y23、Nb25、WO3、Bi23、AgBr、AgI、CuCl、CuBr、CuBr、CuI、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl4、LiAlF4、AgSBr、C55NHAg56、Rb4Cu167Cl13、Rb3Cu7Cl10、LiN、Li5I2、Li6NBr3等の化合物が挙げられる。
【0100】
また、支持電解質としてゲル状電解質を用いることもできる。電解質が非水系の場合、特開平11−185836号公報の段落番号〔0057〕〜〔0059〕に記載のオイルゲル化剤を用いことができる。
【0101】
〔電解質添加の溶媒〕
本発明の表示素子においては、本発明の目的効果を損なわない範囲で溶媒を用いることができる。具体的には、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,Nジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、水等が挙げられる。これらの溶媒の内、凝固点が−20℃以下、且つ沸点が120℃以上の溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0102】
更に本発明で用いることのできる溶媒としては、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,”Organic Solvents”,4th ed.,John Wiley&Sons(1986)、Y.Marcus,”Ion Solvation”,John Wiley&Sons(1985)、C.Reichardt,”Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,”Nonaqueous Electorlytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる
〔電解質添加の増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解質に増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダーとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0103】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0104】
〔その他の添加剤〕
本発明の表示素子の構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の添加剤、例えば、以下のリサーチディスクロージャーにおいて、化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等としてあげられている添加剤を、必要に応じて含有させることができる。
【0105】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0106】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0107】
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜26 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7 XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
〔基板〕
本発明で用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。更に、ステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。
【0108】
これらの支持体には、米国特許第4,141,735号のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行っても良い。本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。更に公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。更にRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板や、ガラスを練りこんだエポキシ樹脂を用いることができる。
【0109】
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0110】
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0111】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0112】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0113】
〔スクリーン印刷〕
本発明においては、シール剤、柱状構造物、電極パターン等をスクリーン印刷法で形成することもできる。スクリーン印刷法は、所定のパターンが形成されたスクリーンを基板の電極面上に被せ、スクリーン上に印刷材料(柱状構造物形成のための組成物、例えば、光硬化性樹脂など)を載せる。そして、スキージを所定の圧力、角度、速度で移動させる。これによって、印刷材料がスクリーンのパターンを介して該基板上に転写される。次に、転写された材料を加熱硬化、乾燥させる。スクリーン印刷法で柱状構造物を形成する場合、樹脂材料は光硬化性樹脂に限られず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニールエーテル樹脂、ポリビニールケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニールピロリドン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂等が挙げられる。樹脂材料は樹脂を適当な溶剤に溶解するなどしてペースト状にして用いることが望ましい。
【0114】
以上のようにして柱状構造物等を基板上に形成した後は、所望によりスペーサーを少なくとも一方の基板上に付与し、一対の基板を電極形成面を対向させて重ね合わせ、空セルを形成する。重ね合わせた一対の基板を両側から加圧しながら加熱することにより、貼り合わせて、表示セルが得られる。表示素子とするには、基板間に電解質組成物を真空注入法等によって注入すればよい。あるいは、基板を貼り合わせる際に、一方の基板に電解質組成物を滴下しておき、基板の貼り合わせと同時に液晶組成物を封入するようにしてもよい。
【0115】
〔フルカラー表示素子の構成〕
本発明のエレクトロクロミック表示素子を用いてフルカラー表示を行う場合は、
1.イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルー、ブラック等に異なる色調に発色−消色するエレクトロクロミック表示素子を複数積層して複数色を表示可能とする方法、
2.異なる色調に発色−消色するエレクトロクロミック色素を吸着させた酸化チタンを含む多孔質層を、対向電極間にパターン状に配置することにより、複数色を表示可能とする方法、
3.異なる色調に発色−消色するエレクトロクロミック色素を同一の酸化チタンを含む多孔質層に吸着させることにより、複数色を表示可能とさせる方法、等が挙げられる。
【0116】
3の場合は、エレクトロクロミック色素に閾値を持たせる必要があり、閾値を持たせる方法としては、発色または消色方向の電圧または電荷量、あるいは、発色または消色方向への電圧ヒステリシスを色素毎に変更する方法が挙げられる。
【0117】
〔表示素子駆動方法〕
本発明の係るアクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路や、「エレクトロクロミックディスプレイ」(1991 産業図書株式会社刊)の77〜102ページに記載の方法を用いることができる。
【0118】
本発明においては、エレクトロクロミック表示素子の、該酸化スズ多孔質層が該対向電極の一方を介して、アクティブマトリックス駆動に用いる画素回路に接続されていることが好ましくスイッチングトランジスタのドレインとコンタクトをとり、これにより、エレクトロクロミック色素を吸着させた酸化チタンを含む多孔質層を有する対極側とは、切断されている状態になるため、電流リークが生じにくく、カラー表示時の色ずれが生じにくい利点がある。
【0119】
実際の画素回路においては、着色駆動の他、減衰、消去等の駆動に係わるトランジスタ、そのための電源線等が実装され、例えば、前記特開2004−29327号の図8に記載された等価回路で示される様にコンタクトをとって接続が行われるが、その効果については全く同様である。
【0120】
〔商品適用〕
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェーカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0121】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0122】
尚、以下の実施例において用いたエレクトロクロミック色素を以下に示す。
【0123】
【化16】

【0124】
<表示素子1の作製>
ガラス基板上にITO電極を形成し、ITO電極上にテルピネオールに分散した酸化チタン(平均一次粒径30nm)分散液を付与し、400℃で1時間焼成して、酸化チタン多孔質層(乾燥膜厚5μm)を形成した。これをエレクトロクロミック色素Ex1の10mmol/Lエタノール溶液に4時間浸漬してEx1を酸化チタン多孔質層に吸着させ、エタノールを蒸発させ、部材1を得た。次に、別のITO電極上にテルピネオールに分散したアンチモンをドープした酸化スズ(平均一次粒径:30nm)分散液を付与し、400℃で1時間焼成して、酸化スズ多孔質層(乾燥膜厚5μm)を形成し、さらに酸化スズ多孔質層上にSiO2で被覆された酸化チタン(平均一次粒径300nm)とポリビニルアルコールと水とエタノールの混合液をブレード塗布法で白色散乱層(乾燥膜厚10μm)を形成して部材2を得た。部材1と部材2を100μmのスペーサーを介して挟み込んで周辺部をエポキシ系UV硬化樹脂にてシールし、1mmol/Lの過塩素酸リチウムを含むγ−ブチロラクトン溶液を部材1と部材2間に注入し表示素子1を得た。
【0125】
<表示素子2の作製>
加熱温度を400度から250℃に変更した以外は表示素子1と同様な方法で表示素子2を得た。
【0126】
<有機スズペースト1の作製>
テルピネオール10gにピバリン酸のスズ塩2.5gとSbをドープした酸化スズ(ともに平均一次粒径:30nm)を2.5g添加して得られた液を十分に攪拌後、ビーズミルで分散して有機スズペースト1を得た。
【0127】
<有機スズペースト2の作製>
テルピネオール10gにネオヘプタン酸のスズ塩2.5gとSbをドープした酸化スズ(ともに平均一次粒径:30nm)を2.5g添加して得られた液を十分に攪拌後、ビーズミルで分散して有機スズペースト2を得た。
【0128】
<有機スズペースト3の作製>
テルピネオール10gにネオノナン酸のスズ塩2.5gとSbをドープした酸化スズ(ともに平均一次粒径:30nm)を2.5g添加して得られた液を十分に攪拌後、ビーズミルで分散して有機スズペースト3を得た。
【0129】
<有機スズペースト4の作製>
テルピネオール10gにネオデカン酸のスズ塩2.5gとSbをドープした酸化スズ(ともに平均一次粒径:30nm)を2.5g添加して得られた液を十分に攪拌後、ビーズミルで分散して有機スズペースト4を得た。
【0130】
<有機スズペースト5の作製>
テルピネオール10gにn−ペンタン酸のスズ塩2.5gとSbをドープした酸化スズ(ともに平均一次粒径:30nm)を2.5g添加して得られた液を十分に攪拌後、ビーズミルで分散して有機スズペースト5を得た。
【0131】
<有機スズペースト6の作製>
テルピネオール10gに安息香酸のスズ塩2.5gとSbをドープした酸化スズ(ともに平均一次粒径:30nm)を2.5g添加して得られた液を十分に攪拌後、ビーズミルで分散して有機スズペースト6を得た。
【0132】
<表示素子3の作製>
有機スズペースト1をスクリーン印刷でITO電極上に成膜後、150℃で10分加熱し、さらに250℃で1時間加熱して、酸化スズ多孔質層(乾燥膜厚5μm)を形成し、さらに酸化スズ多孔質層上にSiO2で被覆された酸化チタン(平均一次粒径300nm)とポリビニルアルコールと水とエタノールの混合液をブレード塗布法で白色散乱層(乾燥膜厚5μm)を形成して部材3を得た。
【0133】
表示素子1で得られた部材1と部材3を100μmのスペーサーを介して挟み込んで周辺部をエポキシ系UV硬化樹脂にてシールし、1mmol/Lの過塩素酸リチウムを含むγ−ブチロラクトン溶液を部材1と部材3間に注入し表示素子3を得た。
【0134】
<表示素子4の作製>
酸化スズペースト2を用いた以外は、表示素子3と同様な方法で表示素子4を得た。
【0135】
<表示素子5の作製>
酸化スズペースト3を用いた以外は、表示素子3と同様な方法で表示素子5を得た。
【0136】
<表示素子6の作製>
有機スズペースト4を用いた以外は、表示素子3と同様な方法で表示素子6を得た。
【0137】
<表示素子7の作製>
有機スズペースト5を用いた以外は、表示素子3と同様な方法で表示素子7を得た。
【0138】
<表示素子8の作製>
有機スズペースト6を用いた以外は、表示素子3と同様な方法で表示素子8を得た。
【0139】
<表示素子9の作製>
加熱温度を250℃から300℃に変更した以外は表示素子3と同様な方法で表示素子9を得た。
【0140】
<表示素子10の作製>
加熱温度を250℃から150℃に変更した以外は表示素子3と同様な方法で表示素子10を得た。
【0141】
<表示素子11の作製>
加熱温度を250℃から100℃に変更した以外は表示素子3と同様な方法で表示素子11を得た。
【0142】
<表示素子12の作製>
酸化スズ多孔質層の乾燥膜厚を5μmから10μmに変更した以外は表示素子3と同様な方法で表示素子12を得た。
【0143】
<表示素子13の作製>
酸化スズ多孔質層の乾燥膜厚を5μmから1μmに変更した以外は表示素子3と同様な方法で表示素子13を得た。
【0144】
<表示素子14の作製>
酸化スズ多孔質層の乾燥膜厚を5μmから0.5μmに変更した以外は表示素子3と同様な方法で表示素子14を得た。
【0145】
<表示素子15〜19の作製>
表示素子3のエレクトロクロミック色素Ex1を表1に記載のエレクトロクロミック色素に変更した以外は表示素子3と同様にして表示素子15〜19を作製した。
【0146】
<表示素子の評価>
《表示素子の評価:表示速度の評価》
上記で作製した各表示素子に1.5Vの電圧を0.5秒間印加し、着色状態での反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定した。測定した反射率の極小値をRminとし、Rminを表示速度の指標とした。ここでは、Rminが低いほど表示速度が高いとする。
【0147】
以上の結果を表1に示す。
【0148】
【表1】

【0149】
表1に記載の結果より明らかなように、400℃の焼成をして酸化スズ多孔質層を形成した表示素子1は、ITOの抵抗値の上昇により表示速度が低下し、ITOの抵抗値の上昇を避けるために250℃の加熱で酸化スズ多孔質層を形成した表示素子2は、酸化スズ層の抵抗値が十分に下がらないために、表示速度が大幅に低下することが分かる。
【0150】
また、有機スズを含有した有機スズペーストを用いて酸化スズ多孔質層を形成した表示素子3〜11は、150℃から250℃の加熱でITOの抵抗値の上昇を抑え、かつ酸化スズ層の抵抗値を下げることができるため、表示速度が向上することが分かる。
【0151】
以上の効果は、ブラスチック基板を用いた電極の場合でも十分に効果があることも確認された。
【0152】
また、エレクトロクロミック表示素子を複数積層した表示素子、異なるエレクトロクロミック色素を吸着させた酸化チタンを含む多孔質層を、対向電極間にパターン状に配置した表示素子、複数種のエレクトロクロミック色素を同一の酸化チタンを含む多孔質層に吸着させた表示素子を作製して複数色を表示した場合でも十分に効果があることも確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機スズを含有する有機スズペーストを用いて有機スズ層を形成後、150〜250℃の温度で加熱処理して酸化スズ多孔質層を形成することを特徴とする酸化スズ多孔質層の形成方法。
【請求項2】
前記有機スズが、有機酸とのスズ塩であることを特徴とする請求項1に記載の酸化スズ多孔質層の形成方法。
【請求項3】
前記有機酸が三級脂肪酸であることを特徴とする請求項2に記載の酸化スズ多孔質層の形成方法。
【請求項4】
前記三級脂肪酸がピバリン酸、ネオヘプタン酸、ネオノナン酸またはネオデカン酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の酸化スズ多孔質層の形成方法。
【請求項5】
前記有機スズペーストにアンチモンがドープされていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の酸化スズ多孔質層の形成方法。
【請求項6】
対向電極、エレクトロクロミック色素を吸着させた酸化チタンを含む多孔質層を少なくとも1層、及び酸化スズ多孔質層を少なくとも1層を有するエレクトロクロミック表示素子であって、該酸化スズ多孔質層が請求項1〜5の何れか1項に記載の酸化スズ多孔質層の形成方法で形成され酸化スズ多孔質層であることを特徴とするエレクトロクロミック表示素子。
【請求項7】
前記エレクトロクロミック色素が下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項6に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【化1】

〔式中、R1は、−(CH2m−(ここにおいてmは0或いは1〜10の整数を表す。)、各々炭素原子数14までのアリーレン基、ヘテロアリーレン基、或いは各々炭素原子数10までの分岐アルキレン基、アルケニレン基、或いはシクロアルキレン基であり、各々のアリーレン基、ヘテロアリーレン基、分岐アルキレン基、分岐アルケニレン基、或いはシクロアルキレン基は任意に−P(O)(OH)2基を−(CH2n−基を介して有していてもよい。また、任意に置換されていてもよい。ここにおいてnは0或いは1〜10の整数を表す。
2は、R34で表される基であり、ここにおいてR3は、−(CH2p−(ここにおいてpは0或いは1〜10の整数を表す。)を表し、R4は、−P(O)(OH)2基、或いは、炭素原子数14までのアリール基、ヘテロアリール基、各々炭素原子数10までの分岐アルキル基、或いはアルケニル基、或いはシクロアルキル基、を表す。
-は、荷電を中和するイオンを表す。
但し、R2が−(CH22−P(O)(OH)2である場合、R1は、−(CH2m−(mは2または3)であることはない。また、R2がフェニル基の場合、R1は−(CH2m−(mは2)であることはない。〕
【請求項8】
前記エレクトロクロミック色素が下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項6に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【化2】

〔式中、R1は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R2、R3は各々水素原子または置換基を表す。X1は>N−R4、酸素原子または硫黄原子を表し、R4は水素原子、または置換基を表す。〕
【請求項9】
前記酸化チタンを含む多孔質層、または、酸化スズ多孔質層の厚みが1μm以上、5μm以下であることを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項10】
前記エレクトロクロミック表示素子を複数積層して複数色を表示可能としたことを特徴とする請求項6〜9の何れか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項11】
異なるエレクトロクロミック色素を吸着させた酸化チタンを含む多孔質層を、対向電極間にパターン状に配置することにより、複数色を表示可能としたことを特徴とする請求項6〜9の何れか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項12】
複数種のエレクトロクロミック色素を同一の酸化チタンを含む多孔質層に吸着させることにより、複数色を表示可能としたことを特徴とする請求項6〜9の何れか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。
【請求項13】
少なくとも1方の電極がプラスチック基板上に構成されていることを特徴とする請求項6〜12の何れか1項に記載のエレクトロクロミック表示素子。

【公開番号】特開2008−26606(P2008−26606A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199189(P2006−199189)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】