説明

酸化保護されたリード線をもつランプの製造方法

本発明は、ガス充填物、発光素子又は電極(4)を含む透明容器(1)を有するランプを製造する方法であって、この電極が、容器の内側に延在し、容器のピンチ部を通って延在するリード線(7)に接続され、このリード線が保護コーティング(8)を備え、該保護コーティングは、リード線がピンチ部から延在するピンチ部の外側に、液体を付与することによって得られる方法であって、この液体が、酸化されるリード線材料と反応して、保護コーティングを形成するようにその性質について選択される材料の陽イオンを含む化合物の溶液であることを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス充填物、発光素子又は電極を含む透明容器を有するランプを製造する方法であって、この電極が、容器の内側に延在し、容器のピンチ部を通って延在するリード線に接続され、このリード線が保護コーティングを備え、この保護コーティングは、リード線がピンチ部から突き出るピンチ部の外側に、液体を付与することによって得られる方法に関する。本発明は、有利なことに、ガス放電ランプに適用されることができ、この場合、リード線が電極に接続される。本発明は、ハロゲンランプにも適用されることができ、この場合、リード線が発光素子に接続される。本出願では「ピンチ部(pinched portion)」という表現が使用されているが、この表現は容器のいかなる封止される部分(sealed portion,以下、シール部と称す)をも含むものとして理解されたい。
【背景技術】
【0002】
このような方法は、米国特許第4,835,439号明細書から知られる。石英又は硬質ガラス製のバーナ又はランプ内の電流フィードスルー(current feed-through)は、バーナの使用中に生じる高温下で簡単に酸化される。この酸化は、ピンチ部の外部リード線(lead-out wire)と石英又はガラスとの間の毛管に生じることが多い。なぜならば、ランプがオンである場合、リード線の表面が空気及び高温の双方にさらされるからである。「ピンチ部の保護」と称されることが多いコーティングを使用することによって、酸化はスローダウンされ得る。
【0003】
本発明が関係する方法では、液体が外部リード線の各シール部の外端に付与され、その結果として、この液体がガラスと外部リード線との間の毛管空隙に侵入する。既知の方法では、上記の液体が、ケイ酸ナトリウム即ち「水ガラス(water-glass)」のようなアルカリ金属ケイ酸塩溶液であり、その後、アルカリ金属ケイ酸塩に保護層を形成させるために、ランプはオーブン内で乾燥されなければならない。多くのランプタイプの場合と同様に、この明細書に説明されたランプのリード線は、ピンチ部の内側に延在するモリブデンストリップに取り付けられ、その中で液体がリード線に沿って毛管作用により取り付け領域に達し、それにより、取り付け領域及びストリップに保護コーティングを施す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これは、リード線及びこのリード線に接続される任意のあり得る金属部に保護層を形成する簡単なやり方であるけれども、水ガラスとしても知られるケイ酸ナトリウムが、ピンチ部のガラス材料又は石英と反応して、そのピンチ部の硬さに悪影響を及ぼし、起こり得るクラックにつながることが知られる。
【0005】
本発明の目的は、長い耐用寿命をもつランプを製造する代替の廉価で効果的な方法を提供することにあり、特に、より安価、簡単及び/又はより効果的なやり方において、ランプの金属部を腐食から保護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、ピンチ部に付与される液体は、好ましくは、酸化されるリード線材料と反応して、保護コーティングを形成するようにその性質について選択される材料の陽イオンを含む化合物の水溶性の溶液である。従って、この保護層は、ピンチ部の材料にではなく、リード線の材料に結合される。他の利点は、ランプをオーブン内で乾燥させる必要がないことである。なぜならば、既知の方法とは対照的に、水が室温で蒸発するからである。
【0007】
上記のリード線は、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、レニウム(Re)又はタンタル(Ta)から作製されてもよく、上記の陽イオン形成材料は、例えば、銀(Ag)、金(Au)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びルテニウム(Ru)のグループから選択されてもよい。例えば、銀は、モリブデン酸化物と反応し、おそらくAgMoO4又は他の可能な相の形態において銀モリブデン酸化物相を形成する。この混合物は、約400℃を上回る動作温度まで加熱される場合は流体であり、そのため、リード線に非常に効率的な保護層を形成する。
【0008】
ランプのために広く使用される材料の組み合わせは、ピンチ部については石英ガラス及びリード線についてはモリブデンの組み合わせか、又は代替例として、ピンチ部については硬質ガラス及びリード線についてはタングステンの組み合わせである。本発明は、双方のタイプのランプに適用され得る。
【0009】
好ましくは、化合物の陰イオンは、425℃の温度で、好ましくは400℃で、より好ましくは375℃で、更により好ましくは350℃で分解するように選択されるので、陽イオン形成材料のみを後に残し、その結果、あらゆる不利な反応が防止される。この陰イオンの例は、NO3及びClO3である。モリブデン/石英の組み合わせに対して、硝酸銀溶液を用いて実施された広範なテストは、非常に良好な結果を示した。
【0010】
本発明は、更に、上記に説明された方法により得られる保護コーティングを備えたランプにも関する。
【0011】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかになり、これらの実施形態を参照することにより明瞭に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1において、電気ランプは、真空密閉のやり方で閉じられるランプ容器1と、スペース3を囲む石英ガラス壁2と、をもつ高圧ガス放電ランプである。電気素子4は、それぞれの内部リード線5を介してそれぞれのモリブデン箔6へ接続され、ランプ容器1の壁2からスペース3に突き出ている。金属箔6は、ランプ容器1の壁2のピンチ部に埋め込まれ、それぞれの外部モリブデンリード線7がそのピンチ部に、例えば、溶接によって取り付けられている。
【0013】
内部リード線5及び電気素子4は、タングステンでできている。イオン化可能な充填物がスペース3にある。ランプ容器1は、水銀、希ガス、並びにジスプロシウム(dysprosium)、ホルミウム(holmium)、ガドリニウム(gadolinium)、ネオジム(neodymium)及びセシウム(cesium)のハロゲン化物で充填されている。この図に示されるランプは、動作中に700Wの電力を消費する。
【0014】
図2及び図2Aは、外部導電体7が、外部リード線7と、これらの外部リード線7の周りの毛管9と、を互いから遮蔽(shield,シールド)する保護コーティング8をもつことを示す。毛管9は外部リード線7の端部30で終端することが示されている。更に、毛管10が金属箔6の先端11にあることも示されている。毛管9及び毛管10は、ランプ外側の雰囲気とオープン接続され、そのため、保護コーティング8により、金属箔6と外部リード線7との間の少なくとも取り付け領域についての過度に急速な腐食を防止する。このシール部は、外部リード線7と内部リード線5との間のゾーン31の金属箔6の領域で真空密封されている。
【0015】
図3は、図2及び図2Aに示されるシール部を線I−Iで切った断面図である。この図は、金属箔6が最大厚さDをもつことを示す。金属箔6のナイフエッジ面25によって形成されるナイフエッジ(knife edge,鋭い端部)15には毛管がない。外部リード線7の周りの毛管9は、ランプ外側の雰囲気に通じる中空スペース22をもつ。
【0016】
特に、かど(corner,コーナ)16、17及び18は、金属箔6及び外部リード線7の腐食に関する限りでは、重要な領域である。これらの領域では、中空スペース22において腐食による膨張(expansion)の余地はない。それゆえ、かど16、17及び18で金属箔6及び/又は外部リード線7が僅かに膨張しても、壁2において高い引張り応力が生じる。更に、金属箔6及び外部リード線7の腐食並びに付随する膨張は、石英ガラスが金属箔6及び外部リード線7と係合する場所の鋭角による、くさび効果(wedge effect)をもつ。
【0017】
外部リード線7及び金属箔6の空気にさらされる表面は、以下のやり方で保護コーティング8を備える。ある液体が、外部リード線7がピンチ部から突き出ている壁2のピンチ部の外側に付与される。この液体が、毛管作用によって毛管9及び中空スペース22に入り込む。この液体は、例えば、リード線7ごとに約10μモル硝酸銀(silver nitrate)の量の1モル/1水溶液の硝酸銀である。従って、この溶液は、この場合は銀である材料の陽イオンと、この場合はNO3イオンである陰イオンと、を含有する。この陽イオンは、酸化されるモリブデンリード線及び箔材料と反応して、これらの上に保護コーティングを形成するようにその性質に関して選択される。更に、この陰イオンは、約400℃を下回る温度で分解(disintegrate)するように選択される。この水溶液の水は、室温で乾燥させることによって簡単に蒸発する。
【0018】
ランプがオンである場合、ピンチ部の温度は400℃を上回るまで上昇する。この温度では、硝酸塩は分解し消滅する。銀はモリブデン酸化物と反応し、銀酸化物/モリブデン酸化物の相混合物を形成する。この反応材料は、400℃を上回る温度では流体であり、それゆえ、流体保護層8aを形成する。流体であるので、この保護層8aは、毛管9内側の腐食性の加熱された金属部の表面にわたって均一に分布される。ランプが冷却される場合、銀は、再び部分的に分離され、それ自体が表面全体にわたって均一に分布される必要はない固体材料を形成する。
【0019】
本発明は、特定のランプタイプを参照して上記に説明されたけれども、当業者であれば、本発明が多くの他のランプタイプにも同様に適用され得ることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるランプの平面図である。
【図2】図1のランプのシール部を詳細に示す図である。
【図2A】図1のランプのシール部を詳細に示す図である。
【図3】図1に示されるランプのシール部を(図2の)線I−Iで切った断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス充填物、発光素子又は電極を含む透明容器を有するランプを製造する方法であって、
前記電極が、前記容器の内側に延在し、前記容器のピンチ部を通って延在するリード線に接続され、
前記リード線が保護コーティングを備え、前記保護コーティングは、前記リード線が前記ピンチ部から突き出る前記ピンチ部の外側に、液体を付与することによって得られる方法であって、
前記液体が、酸化されるリード線材料と反応して、前記保護コーティングを形成するようにその性質について選択される材料の陽イオンを含む化合物の溶液であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記化合物の陰イオンが、425℃の温度で、好ましくは400℃で、より好ましくは375℃で、更により好ましくは350℃で分解するように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記陽イオン形成材料が、銀、金、コバルト、ニッケル、パラジウム、ロジウム及びルテニウムのグループから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記陰イオンが、NO3及びClO3のグループから選択される、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記リード線が、モリブデン、タングステン、レニウム又はタンタルから作製される、請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ピンチ部が石英ガラスから作製され、前記リード線がモリブデンから作製され、又は前記ピンチ部が硬質ガラスから作製され、前記リード線がタングステンから作製される、請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記リード線が前記ピンチ部の内側に延在するモリブデンストリップに取り付けられ、前記液体が前記リード線に沿って毛管作用により前記取り付け領域に達し、それにより、前記取り付け領域に保護コーティングを施す、請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が硝酸銀である、請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ランプがハロゲンランプである、請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
ガス充填物、発光素子又は電極を含む透明容器を有するランプであって、
前記電極が、前記容器の内側に延在し、前記容器のピンチ部を通って延在するリード線に接続され、前記リード線が、請求項1乃至9の何れか一項に記載の方法によって保護コーティングを備えるランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−525637(P2006−525637A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506918(P2006−506918)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/IB2004/050541
【国際公開番号】WO2004/097892
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】