説明

酸化状態の測定及び使用方法

本発明は体液又は組織の酸化還元電位(ORP)の測定によって患者の体液又は組織の総合的な酸化状態を決定する方法を提供する。同方法は、外傷(頭部外傷のような)に罹患している患者、重症であると疑われる患者、ウイルス感染している患者、心筋梗塞と疑われる患者の診断、評価及び監視に有用であることが見出されている。同方法はまた患者の運動パフォーマンスを監視及び評価する上においても有用であることが見出されている。加えて、同方法は、保存された血液製剤及び同製剤を受け取る患者を監視及び評価する上においても有用であることが見出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体液又は患者の組織の酸化還元電位(ORP)の測定により、同体液又は組織の総合的な酸化状態を決定する方法に関する。より詳細には、本発明は、外傷(頭部外傷のような)に罹患した患者、重症疾患である疑いのある患者或いは重症疾患を有する患者、ウイルスに感染した患者、及び心筋梗塞(MI)である疑いのある患者或いはMIである患者を診断、評価及び監視する方法に関する。本発明はまた、患者の運動パフォーマンスを評価及び監視する方法に関する。本発明は更に、保存された血液製剤及び当該製剤を受け取る患者を評価及び監視するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2007年5月18日に出願された、米国仮特許出願第60/938925号の利益を主張するものであり、当該出願の完全な開示は、本明細書において参照により援用される。
【0003】
酸化ストレスは、活性酸素種及び活性窒素種のより高い産生又は内因性保護抗酸化能力の減少によって引き起こされる。酸化ストレスはさまざまな疾患及び老化と関連し、全ての種類の重症疾患において起こることが見出されている。例えば、非特許文献1及び2並びに特許文献1及び2を参照されたい。複数の調査は臨床的に重症な疾患の患者の酸化状態と、患者の結果との間に密接した関係があることを示している。非特許文献2を参照されたい。
【0004】
患者の酸化ストレスはさまざまな個々のマーカーの測定によって評価されてきた。例えば、非特許文献1及び2並びに特許文献1及び2を参照されたい。しかしながら、そのような測定は多くの場合、信頼できるものではなく、患者の酸化状態の、矛盾した、かつ可変的な測定値を提供するものである。非特許文献1及び2を参照されたい。患者の総合的な酸化状態のスコア又はその他の評価を提供するために使用されている多数のマーカーの測定は、単一のマーカーの測定を使用する問題を克服するために開発されてきた。非特許文献1及び2を参照されたい。そのような試みは、単一のマーカーの測定よりも信頼できるものであり、感度も高いが、複雑かつ時間のかかるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,290,519号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0142613号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Veglia他、Biomarkers,11(6):562−573(2006)
【非特許文献2】Roth他、Current Opinion in Clinical Nutrition and Metabolic Care,7:161−168(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、患者の総合的な酸化状態を確実に測定するための、より簡単かつ迅速な方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、外傷に罹患した患者を診断、評価、又は監視するための方法に関し、同方法は:
患者の体液、患者の組織又はそれら両方の、酸化還元電位(ORP)を測定する工程と;以下の工程、即ち
ORPが正常な患者からの同じ体液、組織又はそれら両方のORPと有意に(significantly)異なるかどうかを決定する工程;及び/又は
患者の体液、患者の組織又はそれら両方のORPを現在の測定よりも前に少なくとも一回測定した場合、ORPが、以前の測定と比較して増加又は減少していたかどうかを決定する工程と
のうちの一方又は両方を実施する工程と;からなる、方法である。
【0009】
幾らかの実施形態において、患者の治療の有効性を決定するために、ORPは監視される。
幾らかの実施形態において、患者の症状が回復しているか又は悪化しているかを決定するために、ORPは監視される。
【0010】
幾らかの実施形態において、ORPは、1日に一回又は1日に複数回、測定される。
幾らかの実施形態において、ORPは体液にて測定され、かつ同体液は血漿である。
幾らかの実施形態において、外傷は頭部外傷である。
【0011】
幾らかの実施形態において、ORPは、1日に一回又は1日に複数回、測定される。
幾らかの実施形態において、ORPは体液にて測定され、かつ同体液は血漿である。
幾らかの実施形態において、ORPは体液にて測定され、かつ同体液は脳脊髄液である。
【0012】
本発明の別の態様は、ウイルスに感染した患者を診断、評価、又は監視するための方法に関し、同方法は:
患者の体液、患者の組織、又はそれら両方の、酸化還元電位(ORP)を測定する工程と;以下の工程、即ち
ORPが正常な患者からの同じ体液、組織又はそれら両方のORPと有意に異なるかどうかを決定する工程;及び/又は
患者の体液、患者の組織、又はそれら両方のORPを現在の測定よりも前に少なくとも一回測定した場合、ORPが、以前の測定と比較して増加又は減少していたかどうかを決定する工程と
のうちの一方又は両方を実施する工程と;からなる、方法である。
【0013】
幾らかの実施形態において、患者の治療の有効性を決定するために、ORPは監視される。
幾らかの実施形態において、患者の症状が回復しているか又は悪化しているかを決定するために、ORPは監視される。
【0014】
幾らかの実施形態において、ORPは、1日に一回又は1日に複数回、測定される。
幾らかの実施形態において、ORPは体液にて測定され、かつ同体液は血漿である。
本発明の別の態様は、重症疾患である疑いのある患者を診断、評価又は監視する方法、或いは重症疾患であると診断された患者を評価又は監視する方法に関し、同方法は:
患者の体液、患者の組織又はそれら両方の、酸化還元電位(ORP)を測定する工程と;以下の工程、即ち
ORPが正常な患者からの同じ体液、組織又はそれら両方のORPと有意に異なるかどうかを決定する工程;及び/又は
患者の体液、患者の組織又はそれら両方のORPを現在の測定よりも前に少なくとも一回測定した場合、ORPが、以前の測定と比較して増加又は減少していたかどうかを決定する工程と
のうちの一方又は両方を実施する工程と、からなる、方法である。
【0015】
幾らかの実施形態において、ORPは患者が重症であるか否かを決定するために評価の一部として使用される。
幾らかの実施形態において、患者の治療の有効性を決定するために、ORPは監視される。
【0016】
幾らかの実施形態において、患者の症状が回復しているか又は悪化しているかを決定するために、ORPは監視される。
幾らかの実施形態において、ORPは、1日に一回又は1日に複数回、測定される。
【0017】
幾らかの実施形態において、ORPは体液にて測定され、かつ同体液は血漿である。
本発明の別の態様は、心筋梗塞である疑いのある患者を診断、評価又は監視する方法、或いは心筋梗塞であると診断された患者を評価又は監視する方法に関し、同方法は:
患者の体液、患者の組織又はそれら両方の、酸化還元電位(ORP)を測定する工程と;以下の工程、即ち
ORPが正常な患者からの同じ体液、組織又はそれら両方のORPと有意に異なるかどうかを決定する工程;及び/又は
患者の体液、患者の組織又はそれら両方のORPを現在の測定よりも前に少なくとも一回測定した場合、ORPが、以前の測定と比較して増加又は減少していたかどうかを決定する工程と
のうちの一方又は両方を実施する工程と;からなる、方法である。
【0018】
幾らかの実施形態において、患者が心筋梗塞を有しているか、又は有していないかを決定するために、評価の一部としてORPが監視される。
幾らかの実施形態において、患者の治療の有効性を決定するために、ORPは監視される。
【0019】
幾らかの実施形態において、ORPは、1日に一回又は1日に複数回、測定される。
幾らかの実施形態において、ORPは体液にて測定され、かつ同体液は血漿である。
本発明の別の態様は、患者の運動パフォーマンスを評価する方法に関し、同方法は:
患者の体液、患者の組織又はそれら両方の、酸化還元電位(ORP)を運動の前後において測定し、ORPが運動の前と比較して、運動の後では有意に異なるかどうかを決定する工程;又は
患者の体液、患者の組織又はそれら両方のORPを運動の前及び運動時に測定し、同ORPが、運動の前と比較して、運動時には有意に異なるかどうかを決定する工程;又は
患者の体液、患者の組織又はそれら両方のORPを運動の前、運動時及び運動の後に測定し、同ORPが、運動の前と比較して、運動時、運動の後またはその両方とでは有意に異なるかどうかを決定する工程;
と、からなる方法である。
【0020】
幾らかの実施形態において、ORPは体液にて測定され、かつ同体液は血漿である。
本発明の別の態様は、保存される血液製剤を評価又は監視する方法に関し、同方法は:
血液製剤の、酸化還元電位(ORP)を、同製剤を1日以上保存した後に測定する工程と;
保存された血液製剤のORPが、同製剤がドナーより得られた直後の同製剤のORPとは有意に異なるかどうかを決定する工程と、からなる方法である。
【0021】
幾らかの実施形態において、血液製剤は血液である。
幾らかの実施形態において、血液製剤は、濃厚赤血球である。
幾らかの実施形態において、血液製剤のORPは、保存時に一日一回測定される。
【0022】
幾らかの実施形態において、同方法は更に:
血液製剤を受け取る患者の体液、同患者の組織、又はその両方の、酸化還元電位(ORP)を測定し;かつ
正常な患者からの同じ体液、組織又はその両方におけるORPレベルと、同ORPとが有意に異なるかどうかを決定する工程を含む。
【0023】
本発明はそのような方法を提供する。より詳細には、本発明は、患者の体液又は組織の酸化還元電位(ORP)を測定することによって、同患者の体液又は組織の総合的な酸化状態を決定する方法を提供する。同方法は、外傷(頭部外傷のような)に罹患した患者、重症疾患である疑いのある患者若しくは重症疾患であると診断された患者、ウイルスに感染した患者、及び心筋梗塞(MI)である疑いのある患者若しくはMIであると診断された患者、を診断、評価及び監視する上において有用であることが見出されている。同方法はまた、患者の運動パフォーマンスを監視及び評価する上において有用であることが見出されている。加えて、同方法は、保存された血液製剤及び同製剤を受け取る患者を監視及び評価する上において有用でることが見出されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書において使用されているように、「患者」は、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ又はヒトのようなほ乳動物を意味する。最も好ましくは、同患者はヒトである。
患者のいかなる体液でも本発明の方法にて使用することができる。適切な体液は、血液サンプル(例えば、全血、血清又は血漿)、尿、唾液、脳脊髄液、涙液、精液、腟分泌物、羊水及び臍帯血を含む。また、洗浄物、組織ホモジュネート及び細胞溶解物を利用することができ、本明細書において使用されているように、「体液」なる用語はそのような調製物を含む。好ましくは、体液は、血液、血漿、血清又は脳脊髄液である。頭部外傷に対し、体液は最も好ましくは脳脊髄液又は血漿である。頭部外傷以外の場合では、体液は最も好ましくは血漿である。
【0025】
患者のいかなる組織も本発明の方法にて使用することができる。適切な組織は、皮膚、目及び口の組織及びバイオプシーからの組織を含む。
本明細書において使用されているように、「正常な」、「正常な患者」又は「対照」は、患者と同じ種の哺乳動物であって、いかなる疾病にも罹患していない哺乳動物を意味する(例えば、患者がヒトである場合には、「正常な対象」は「ヒト」であろう)。ORPは年齢とともに増加するので、「正常な対象(normals)」は、試験される患者と同じ年齢又は年齢幅であるべきである。
【0026】
酸化還元反応システム、すなわち、レドックス(redox)システムは、以下の式に従って、還元体から酸化体への電子の移動を含む:
【0027】
【化1】

ここで、neは移動する電子の数に等しい。平衡時において、レドックス電位(E)、又は酸化還元電位(ORP)は、Nernst−Petersの式に従って計算される:
E(ORP)=E−RT/nF ln[還元体]/[酸化体] (2)
ここで、R(ガス定数)、T(絶対温度)及びF(ファラデー定数)は一定である。Eは、水素電極に関して測定されたレドックスシステムの標準電位であり、0ボルトのEが任意に割り当てられており、かつnは移動した電子の数である。従って、ORPは還元体及び酸化体の総濃度に依存し、かつORPは、特定システムにおける総酸化体と総還元体の間のバランスの統合された測定値である。従って、ORPは患者の体液又は組織の総合的な酸化状態の測定値を提供する。
【0028】
正常な対象のORP測定値より有意に高いORP測定値は酸化ストレスの存在を示すであろう。酸化ストレスは多くの疾病と関連しており、あらゆる種類の重症疾患において起こり得ることが見出されている。従って、正常な対象より有意に高いORPレベルは、疾病の存在、そしておそらくは重症疾患であり得ることを示す。正常な対象のORP測定値と同じであるか、若しくはそれより低いORP測定値は、酸化ストレスが存在しないこと、及び、疾患若しくは重症疾患が存在しないことを示す。従って、患者のORPのレベルは、疾患の存在、特に重症疾患の存在を診断又は排除する上における手助けとなるものとして、医師又は獣医師によって使用され得る。ORPを経時的に連続して測定することは、疾患の進行、及び疾患の治療における有効性もしくは治療において有効性に欠けることを監視するために使用され得る。患者のORPが処置後に減少しない、或いは特に、治療にもかかわらず増加すれば、これは予後の状態が良好ではなく、更に積極的な治療及び/又は付加的な治療及び/又は異なる治療が必要であることを示す。心筋梗塞の徴候を経験している患者のような患者により実施された測定の場合、ORPレベルは、患者が、医師の診察を受ける必要があるか、或いは治療のために緊急治療室に直ぐに進む必要があるか、を示す。
【0029】
体液又は組織のORPは、同体液又は組織をORP若しくはレドックス電極に接触させることにより容易に測定され得る。そのような電極は、マイクロエレクトロード社(Microelectrodes、Inc)(ニューハンプシャー州ベッドフォード所在)より市販されている。そのような電極は日差変動の問題があるので、参照標準の使用が必要である。適切な参照標準は、複数のpHにおいて飽和キンヒドロンを含む。電極は、ミリボルト単位のORPの読み出し、及び、選択的に、pH及び温度のようなその他のパラメータを提供するメータに接続されている。そのようなメータは、ハンナインスツルメント社(Hanna Instruments)(ロードアイランド州ウーンソケット所在)から市販されている。
【0030】
本発明の方法は、特定の疾患に罹患している患者、或いは特定の疾患を有する疑いのある患者を、診断、評価及び監視する上において有用であることが見出されている。ORPは、これらの疾患及びその治療を診断、評価及び監視する上における補助として、病歴、症状及びその他の試験結果と組み合わせて使用され得る。特に、正常なORPは、疾患、特に深刻な疾患の存在を除外する上において、そして、そうでなければ不必要に患者を治療することになる医療資源を節約する上において、非常に有用となり得る。さらに、有意に高いORP(酸化ストレスを示す)は、それらの疾病に対して即時の治療若しくは更に積極的な治療、及び/又は酸化ストレスを減らす治療、を必要とする患者を識別するために使用され得る。
【0031】
正常な対象と比較して有意に高いORPは、酸化ストレス又は疾病の理由若しくはその原因をよりよく理解し、よって、そのための最良の治療を理解するために、酸化ストレスの一つ以上の個々のマーカーに対して、試験を実施する必要がある又は試験を実施することが望ましいことを示し得る。従って、本発明はまた、酸化ストレスの一つ以上の個々のマーカー(本明細書においては、「試験の酸化ストレスパネル」として集合的に参照される)に対する試験との組み合わせでのORPの使用を含む。酸化ストレスのそのようなマーカー及びその測定方法は周知である。例えば、非特許文献1;Rana他,Mol.Cell Biochem.,291:161−166(2006);非特許文献2;Horton,Toxicology,189:75−88(2003);Winterbourn他,Crit.Care Med.,28:143−149(2000);Ghiselli他,Free Radic.Biol.Med.,29(11):1106−1114(2000);Rice−Evans,Free Radic.Res.,33 Suppl.:S59−S66(2000);Prior及びCao,Free Radic.Biol.Med.,27(11−12):1173−1181(1999);Galley他,Crit.Care Med.,24:1649−53(1996);Goode他,Crit.Care Med.,23:646−651(1995)を参照されたい。それらの文献の全体の開示は、本明細書において参照により援用される。
【0032】
外傷性傷害は60歳以下のすべての年代別グループにおける死亡及び身体障害の主たる原因である。米国では、外傷性傷害は、毎年160,000人以上の死者及び数百万人の生存可能な傷害をなす。多くの人々に対して、傷害は、一時的な苦痛及び不都合の原因となる。別の人々に対しては、傷害は、身体障害、慢性的な疼痛及び実質的な財政面の結果を含むクオリティ・オブ・ライフにおける深刻な変化をもたらす。外傷性傷害の経済的損失は医療に関連した費用及び生産力のコストの損失を含む。2000年のみにおいて、医療上の治療を必要とする5000万件の傷害は、最終的には4060億ドルの損失を要することになるであろう。この損失には、推定、802億ドルの医療における損失及び3260億ドルの生産力の損失が含まれる。
【0033】
本発明の方法は、外傷に罹患した患者を診断、評価及び監視する上において有用であることが見出されている。本明細書において使用されているように、「外傷」は患者の身体の任意の部分又は患者の身体の複数の部分に対する物理的な損傷を指す。外傷性傷害は、頭部外傷、身体内部損傷、鈍傷、多数の外傷、骨折及び火傷を含む。
【0034】
本発明は、損傷を受けた患者の酸化状態を決定及び監視する手段を提供し、かつ外傷の治療及びケアを案内するためのリアルタイムの情報を医師及び獣医師に提供する。特に、損傷を受けた患者の酸化ストレスの存在及び程度が決定され、かつ監視される。例えば、外傷を受けた患者の(屋外での救急医療隊員による、または緊急救命室での医師による)最初の検査において、正常な対象のORPレベルと統計学的に同一であるか、或いはそれより低いORPレベルは、酸化ストレスが存在していないこと、患者が積極的な処置を必要としないか、もしくは入院する必要すらないこと、を示す。このように、医療資源が節約され、かつ費用が低減される。一方、外傷を受けた患者の最初の検査において、正常な対象のORPレベルよりも有意に高いORPレベルは、酸化ストレスの存在、及び患者を直ぐに治療し、そして同患者のORPを継続的に監視する必要性、を示す。ORPレベルが高ければ高いほど、酸化ストレスのレベルが高くなり、患者を積極的に治療する必要性が大きくなる。治療に伴って減少するORPレベルは患者が快方に向かい、治療が有効であることを示す。治療にも関わらずORPレベルが増大することは、患者の状態が悪化し、更なる積極的な治療、付加的な治療及び/又は別の治療が必要であることを示す。正常な対象のORPレベルと比較してもはや有意に高くない地点までORPレベルが低減したことは、患者が退院可能であることを示す。無論、ORPレベルは、診断における一つのパラメータに過ぎず、外傷を受けた患者の適切な治療法を決定するために、他の症状、物理的検査の結果、病歴、及びその他任意の検査室での検査と組み合わせて使用されるべきである。
【0035】
本発明の方法はまた、ウイルスに感染した患者を診断、評価及び監視する上において有用であることが見出されている。ウイルス感染は、ヒト免疫不全ウイルス、脳炎ウイルス、肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、肺炎ウイルス及び重症ウイルス性疾患を引き起こすその他のウイルスによって引き起こされる感染を含む。
【0036】
ウイルスに感染した患者において、同患者の検査において、正常な対象のORPレベルと統計学的に同一であるか、或いはそれより低いORPレベルは、酸化ストレスが存在していないこと、患者が標準的な治療のみを必要とすることを示す。一方、患者の検査において、正常な対象のORPレベルよりも有意に高いORPレベルは、酸化ストレスの存在、患者に対して場合によっては入院することをも含む更なる積極的な治療の必要性、及び同患者のORPを継続的に監視する必要性、を示す。ORPレベルが高ければ高いほど、酸化ストレスのレベルが高くなり、患者を積極的に治療する必要性が大きくなる。治療に伴って減少するORPレベルは患者が快方に向かい、治療が有効であることを示す。治療にも関わらずORPレベルが増大することは、患者の状態が悪化し、更なる積極的な治療、付加的な治療及び/又は異なる治療が必要であることを示す。正常な対象のORPレベルと比較してもはや有意に高くない地点までORPレベルが低減したことは、患者が退院することを含む、同患者に対する積極的な治療を中断できることを示す。無論、ORPレベルは、診断における一つのパラメータに過ぎず、ウイルスの感染を受けた患者の適切な治療法を決定するために、他の症状、物理的検査の結果、病歴、及びその他任意の検査室での検査と組み合わせて使用されるべきである。
【0037】
毎年米国では、約600乃至800万人が胸痛又は他の心臓における症状(例えば、息切れ及び疼痛、或いは左腕のうずき)を伴って病院の緊急治療室(ER)にいる。残念ながら、ERから自宅に送られた300乃至400万人のうちの約2乃至5%は、誤って診断されている。胸痛に対する誤診は、救急医療における医療事故訴訟の裁定の主たる原因である。入院したその他の300乃至400万人のうちの約60乃至75%は心臓疾患ではない。各入院患者に対する最低限の費用は3,000乃至5,000ドルであり、それは、不必要な入院により、毎年、60億ドル以上の医療に係る費用が無駄になっていることを意味する。非診断心電図(ECG)とともに使用される、信頼できる早期のバイオマーカは存在しない。トロポニンI又はトロポニンTのレベルは、低感受性ゆえに、症状が現れた最初の6乃至24時間の間は、信頼できるものではなく、クレアチンキナーゼアイソザイム(CK−MB)及びミオグロビンは心臓特異的ではない。心筋梗塞の診断を援助するか、又は心筋梗塞を除外できる実験室検査の結果が得られることは非常に望ましいであろう。
【0038】
本発明の方法はそのような検査結果を提供し、心筋梗塞(MI)を患っている疑いのある患者を診断、評価及び監視する上において有用であることが見出されている。本発明の方法はMIの早期診断に対して特に有用である。「早期診断」によって、胸痛、息切れ及び疼痛或いは左腕のうずきのような、MIを示す症状の発病に続く最初の数時間(24時間未満、特に、12時間未満)におけるMIの存在又は非存在を確認することを意味する。本発明の方法はまた、MIと診断された患者の評価及び監視において有用であることが見出されている。
【0039】
特に、MIの症状を伴う患者の酸化ストレスの存在及び程度は、本発明に従って決定及び監視される。例えば、MIの疑いのある患者の(屋外での救急医療隊員による、または緊急救命室での医師による)最初の検査において、正常な対象のORPレベルと統計学的に同一であるか、或いはそれより低いORPレベルは、酸化ストレスが存在していないこと、患者がMIではないことを示す。このような場合に、患者は治療の必要はなく、そして、ERに留められる必要もないか、若しくは入院する必要はないと考えられる。このようにして、医療資源が節約され、かつ費用が低減される。一方、MIの疑いのある患者の最初の検査において、正常な対象のORPレベルよりも有意に高いORPレベルは、酸化ストレスの存在、及び患者がMIに罹患していることを、を示す。そのようなORPレベルは、患者を直ぐに治療する必要性及び患者のORPの継続的な監視の必要性を示す。ORPレベルが高ければ高いほど、酸化ストレスのレベルが高くなり、患者を積極的に治療する必要性が大きくなる。治療に伴って減少するORPレベルは患者が快方に向かい、治療が有効であることを示す。治療にも関わらずORPレベルが増大することは、患者の状態が悪化し、更なる積極的な治療、付加的な治療及び/又は別の治療が必要であることを示す。正常な対象のORPレベルと比較してもはや有意に高くない地点までORPレベルが低減したことは、患者が退院可能であることを示す。無論、ORPレベルは、診断における一つのパラメータに過ぎず、MIの疑いのある患者または実際にMIであると診断された患者は、適切な治療法を決定するために、他の症状、物理的検査の結果、病歴、及びその他任意の検査室での検査と組み合わせて使用されるべきである。
【0040】
本発明の方法はまた、重症疾患である疑いのある患者を診断、評価及び監視する上において有用であること、そして、重症疾患が認められている患者を評価及び監視する上において有用であることが、見出されている。重症疾患の患者における酸化ストレスの存在は、不良転帰と正の相関性を有することは周知である。例えば、非特許文献2を参照されたい。従って、重症疾患である患者、重症疾患の疑いのある患者、又は重症疾患になるかもしれない患者のORPは、監視されるべきである。正常な対象のORPレベルと統計学的に同一であるか、或いはそれより低いORPレベルは、酸化ストレスが存在していないこと、患者が重症疾患ではないことを示す。そのようなORPレベルは患者の積極的な治療を必要としないことを示す。正常な対象のORPレベルよりも有意に高いORPレベルは、酸化ストレスの存在、及び患者が重症疾患であることを、を示す。そのようなORPレベルは、患者の積極的な治療の必要性及び患者のORPの継続的な監視の必要性を示す。ORPレベルが高ければ高いほど、酸化ストレスのレベルが高くなり、患者を積極的に治療する必要性が大きくなる。治療に伴って減少するORPレベルは患者が快方に向かい、治療が有効であることを示す。治療にも関わらずORPレベルが増大することは、患者の状態が悪化し、更なる積極的な治療、付加的な治療及び/又は異なる治療が必要であることを示す。正常な対象のORPレベルと比較してもはや有意に高くない地点までORPレベルが低減したことは、患者がもはや重症疾患ではなく、患者が退院可能であることを示す。無論、ORPレベルは診断における一つのパラメータに過ぎず、患者に対して適切な治療法を決定するために、他の症状、物理的検査の結果、病歴、及びその他任意の検査室での検査と組み合わせて使用されるべきである。
【0041】
保存された血液製剤の使用は、明らかに有益であるという理由から、医学界において全世界的に実施される一般的な業務である。しかしながら、血液製剤の患者への輸血に伴って有害な副作用の起こる危険性がある。そのような副作用としては、輸血関連急性肺障害(TRALI)、多臓器不全(MOF)及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)が含まれる。Brittingham他、J.Am. Med.Assoc.,165:819−825(1957年);Sauaia他、Arch.Surg.,129:39−45(1994年);ミラー他、Am.Surg.,68:845−850(2002年)。これらの副作用を回避する又は低減する手段を有することが望ましい。
【0042】
本発明の方法はそのような手段を提供し、そして、本発明の方法は貯蔵された(保存された)血液製剤を監視及び評価する上において有用であることが見出されている。本発明に従って監視され、評価することができる血液製剤は、全血、濃厚赤血球、血小板及び新鮮凍結血漿を含む。特に、本発明の方法を使用して、保存された血液製剤のORPが保存時間に対して増加することが明らかとなった。例えば、濃厚赤血球は、1日目と比較して、42日目にはORPが有意に増大していた。ORPの増大は、血液製剤中における酸化体レベルの増大を示し、酸化体のレベルの増大は、血液製剤を受け取る患者の副作用の発生の一因となる。その理由は、そのような血液製剤の輸血は、患者において酸化体レベルの増大及び酸化ストレスの増大が予測されるからである。
【0043】
本発明の方法は保存された血液製剤を受け取る患者を評価及び監視にする上においても有用である。特に、そのような患者において、正常な対象のORPレベルと比較して有意に高いORPレベルは酸化ストレスの存在を示し、そのような患者は輸血されるべきではないか、又はより低い酸化体種のレベルを含有する血液製剤を輸血されるべきである(即ち、ORPレベルのより低い血液製剤、好ましくは、新鮮な血液製剤と同じORPレベルの血液製剤)。血液製剤のORPレベルは、正常な対象のORPレベルと統計学的に同一であるか、或いはそれより低いORPレベルである患者においては深刻ではなく、その理由は、そのようなレベルは、酸化ストレスが存在しないことを示すからである。患者の酸化状態及び血液製剤の酸化状態を決定することは、輸血に関連した副作用の低減を生ずるものである。
【0044】
運動は、活性酸素種(ROS)形成の増大を生ずる好気的代謝及び/又は嫌気的代謝の上昇と関連している。激しい運動、過度の運動及びオーバートレーニングは、抗酸化防御系を圧倒するレベルまでROSを生ずる。Sen、Sports Med.,31:891−908(2001年);Margonis他、Free Radical Biol.Med.,43(6):901−910(2007年9月15日);Gomez−Cabrera他、Free Radical Biol.Med.,44(2):126−131(2008年);Radak他、Ageing Res.Rev.,7(1):34−42(2008年)を参照されたい。結果は酸化ストレスであり、酸化ストレスにより広範な分子の、細胞の、及び組織の損傷を引き起こす可能性がある。一つの起こり得る結果は筋肉組織に対する酸化損傷である。運動訓練時に筋肉組織の損傷を防ぐか、又は減らすことは、訓練の効果及び最終的なパフォーマンスを最大限に活用するのを助けることになる。適度な強度及び持続期間である規則的な運動はまた、ROSを発生させるものの、自然な抗酸化酵素及びタンパク質の発生並びに抗酸化防御系のアップレギュレーションを引き起こす。Ji、Proc. Soc.Exp.Biol.Med.,222:283−292(1999年);Rahnama他、J.Sports Med.Phys.Fitness,47:119−123(2007年);Gomez−Cabrera他、Free Radical Biol.Med.,44(2):126−131(2008年);Ji、Free Radical Biol.Med.,44:142−152(2008年);Radak他、Ageing Res.Rev.,7(1):34−42(2008年)を参照されたい。これらの適応は、身体への酸化的攻撃の低減及び酸化体−抗酸化体恒常性の維持を生ずる。更に、運動に誘引されたレドックス状態の調整は、同運動が身体に有益であり、酸化ストレスに対する抵抗性を増大するとともに酸化ストレスからの回復を促進するという理由から重要な手段であると考えられる。Radak他、Appl.Physiol.Nutr.Metab.,32:942−946(2007年);Radak他、Free Radical Bil.Med.,44:153−159(2008年)。上記したように、運動の最大の利益は、酸化ストレスを生じない運動、可能な場合はいつでも酸化ストレスの回避を引き起こす運動から実現されることは明らかである。
【0045】
本発明の方法は、患者の運動パフォーマンスを監視及び評価する上において使用することができる。運動の前後の患者のORP、運動前及び運動中の患者のORP、又は運動の前後及び運動中の患者のORPが測定される。運動前の患者のORPレベルと統計学的に同一であるか、或いはそれより低い運動時又は運動後のORPレベルは、酸化ストレスが存在しないことを示す。そのようなORPレベルは運動を変更する必要のないことを示す。運動前の患者のORPレベルよりも、運動時及び運動後の患者のORPレベルが有意に高いことは酸化ストレスの存在を示す。そのようなORPレベルは、運動が損害を与え、いくらかの様式の変更、例えば、運動の頻度の変更、運動の長さの変更又は運動の種類の変更、を行うべきであることを示す。以上のように、患者のORPを監視することにより、同患者に対する最適な運動プログラムを設計することができ、それにより、酸化ストレスに起因する有害な影響及び損害を被ることなく、同患者が所望とする体力の目的を達成することができる。
【実施例1】
【0046】
急性心筋梗塞の診断
全血はヘパリンナトリウムを含有するVacutainer(登録商標)(アメリカ合衆国、ニュージャージー州、フランクリンレイクス所在のベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson))を使用して静脈穿刺によって、正常な被験者及び急性心筋梗塞(AMI)に罹患した患者から採取した。血漿は1mLの量に等分され、使用時まで−80℃で保存した。
【0047】
酸化還元電位(ORP)測定は、HI4222 pH/mV/温度ベンチメータ(アメリカ合衆国、ロードアイランド州、ウーンソケット(Woonsocket)所在のハンナ・インスツルメンツ(Hanna Instruments))に接続されたマイクロPt/AgClと組合せたMI−800/410cm酸化還元電極(アメリカ合衆国、ニューハンプシャー州、ベッドフォード(Bedford)所在のマイクロエレクトロード社(Microelectrodes、Inc.))を使用して記録した。電極は血漿サンプル中に浸され、定常状態のORPの読み取り値(mV)を記録した。
【0048】
結果を以下の表1に示す。データは、不均等な変動を仮定して、スチューントの両側t検定を使用して分析した。表1に認められるように、AMI患者からの血漿のORPは、正常な対象の血漿のORPと比較して有意な差が認められた。従って、血漿ORP測定は、AMIに実際に罹患している患者と、別の原因によってAMIに類似の兆候を呈する患者との区別を支援するものとして使用することができる。
【0049】
【表1】

【実施例2】
【0050】
重症外傷患者の監視及び判別
生体系における酸化還元電位(ORP)は、システムの総合的な酸化促進成分と総合的な抗酸化成分との間の均衡の統合測定値である。血漿中において、多くの要素がORPに寄与する。超酸化物イオン、水酸ラジカル、過酸化水素、一酸化窒素、ペルオキシ亜硝酸塩、遷移金属イオン及び次亜塩素酸のような反応酸素種(ROS)は酸化電位に寄与する。血漿酸化防止剤は、チオール、ビタミンC、トコフェロール、βカロチン、リコピン、尿酸、ビリルビン及びフラビノイドを含んでいる。SOD、カタラーゼ、及びグルタチオンペルオキシダーゼのような酵素は、より活性の少ない種へROSを転換することに関与している。血漿のORP監視は、システムの酸化促進成分と抗酸化成分との間の総合的な定量均衡を統合する一つの測定値を提供し、そして、ORPレベルは、患者の総合的な酸化状態のインジケータである。
【0051】
重症患者は酸化ストレスに苦しんでおり、細胞内環境及び細胞外環境の酸化促進成分を優先して不均衡性に影響を与える。この不均衡による生物学的な結果は、関与するシステム及び疾患のプロセスに基づいて、同システムに有利にもなり、かつ不利にもなる、ある種の化学反応を支持する。重症患者の酸化還元状態を評価するこれまでの試みは、個々の酸化防止剤の濃度(Goode他、Crit.Care Med.,23:646−51(1995年))又は脂質の過酸化反応の量(Rana他、Mol.Cell Biochem.,291:161−6(2006年))のような一つのパラメータの測定に制限されていた。これらのパラメータは有用となりうるであろうが、重症患者において発生する酸化ストレスの完全な評価を臨床医に与えないかもしれない。さらに、これらの種々のパラメータの測定は煩雑かつ時間のかかるものであり、従って、臨床の場においては実用的ではないことが判明されるであろう。ここでは、患者の血漿中のORPを、起こり得るリアルタイムの基準において測定する電極を使用して、重症の外傷患者の総合的な酸化状態を測定する方法について記載されている。
【0052】
材料及び方法
この調査は、研究におけるリスクからの保護のために、健康及び人的サービス省(HHS Office)によって発行された指針に従って、HCA−HealthOneの施設内倫理委員会によって承認されている。血液は、ヘパリンナトリウムを含有するVacutainer(登録商標)(アメリカ合衆国、ニュージャージー州、フランクリンレイクス所在のベクトン・ディッキンソン)を使用して静脈穿刺によって、正常な被験者(N=10)及び重症外傷に罹患している重症患者(N=39)から採取した。重症患者について、ほぼ毎日の割合にて、退院するまで血液を採取した。血漿は1mLの量に等分され、使用時まで−80℃で保存した。患者の情報は表2に列挙されている。
【0053】
【表2】

酸化還元電位(ORP)測定は、HI4222 pH/mV/温度ベンチメータ(アメリカ合衆国、ロードアイランド州、ウーンソケット所在のハンナ・インスツルメンツ)に接続されたマイクロPt/AgClと組合せたMI−800/410cm酸化還元電極(アメリカ合衆国、ニューハンプシャー州、ベッドフォード所在のマイクロエレクトロード社)を使用して室温にて記録した。血漿サンプルを解凍し、ORP電極を血漿サンプル中に浸した。ORP値が5秒間安定となった後に、読み取り値(mV)を記録した。
【0054】
全タンパク質は、ビシンコニン酸タンパク質検定(アメリカ合衆国イリノイ州ロックフォード(Rockford)所在のピアース・バイオテクノロジー(Pierce Biotechnology))を使用して、全ての血漿サンプル中にて定量化した。全ての血漿サンプルは、96ウェルプレートに適用される前に、pH7.4にて、1Xリン酸緩衝生理食塩水を用いて1:100に希釈した。全てのサンプルは2連にて分析した。
【0055】
パラオキソナーゼ(PON)は血漿中に存在するカルシウム依存型アリールエステラーゼ(AE)である。PONが高密度リポタンパク質(HDL)と関連付けられるとき、脂質の過酸化反応に対する酸化防止効果が観察された(Ferretti他、Biochim.Biophys.Acta,1635:48−54(2003年))。実際に、より低いPONの活性は、酸化的損傷の増加によって特徴付けられる疾患によって影響を受ける患者におけるHDLの過酸化反応へのより高い感受性と関連付けられている(Ferretti他、J.Clin.Endocrinol.Metab.,89:2957−2962(2004年);Ferretti他、J.Clin.Endocrinol.Metab.,90:1728−1733(2005年))。
【0056】
血漿のPON−AE活性は既に述べたように測定した。Ahmed他、J.Biol.Chem.,280:5724−5732(2005年)。端的に説明すると、血漿は、pH7.4にて、1Xリン酸緩衝生理食塩水を用いて1:20に希釈した。希釈された血漿は、96−ウェルプレート中にて、2連にて、4mMのパラニトロフェノールアセテート(ミズーリ中セントルイスに所在のシグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)社)と1:1にて混合した。プレートは、410nmに設定された予め加温された(37℃)プレートリーダー(FL600 Microplate Fluorescence Reader、バーモント州、ウィヌースキ(Winooski)所在のバイオ−テック・インスツルメンツ社(Bio−Tek Instruments Inc.))にて直ぐに読み取られた。吸光度の読み取りは、2分毎に20分間実施した。反応プロットの線形部分の傾斜(R≧0.99)を使用して、PON−AEの活性を生成した。PON−AEの活性は血漿タンパク質に対して正規化された。PON−AE活性は単位(U)にて報告されており、同単位は、全血漿タンパク質の410nm/分/mgにおけるミリ吸光度単位における変化と等しい。
【0057】
ORP、PON−AE及び全タンパク質のデータは、Matlab R14(マサチューセッツ州、ナティック(Natick)に所在のマスウォークス(Mathworks))を使用して分析した。一元配置分散分析(one−way ANOVA)を使用して、全ての患者のデータを正常な対象のデータと比較し、0.05の有意水準と多重比較するために、テューキ・クレーマー(Tukey−Kramer)補正を用いて有意差を検定した。全てのデータは、平均の±標準誤差(SEM)として報告される。
【0058】
結果及び結論
血漿は、重篤な外傷に苦しむ重症患者から、入院時から退院までの間、採取された。ORPは、ORP電極の日差変動を制限するために、特定の患者からは、同患者の退院後も、同患者より採取された全系列の血漿サンプルについて測定した。
【0059】
ORPの急激な増大は、入院時の初期の−19.9mV(±3.0のSEM)の読み取りの後に患者全員において観察された。入院時のORP値は、正常な対象の血漿のORP値(−52.0mV、±3.1のSEM、p<0.05)より有意に高い。6日目にORPは最高値に達し(±0.5のSEM)、+13.7mV(±2.5のSEM)の値となり、入院時の値より有意に高いものであった。ORPの最大値はまた、正常な対象の血漿のORP値(−52.0mV、±3.1のSEM、p<0.05)より有意に高かった。入院中の残りの経過期間の間に、これらの重篤な外傷を受けた患者の血漿のORPは、正常な対象の血漿のORPに徐々に近づいた。退院時、重篤な外傷を受けた患者から得られた血漿のORPは、正常な対象の血漿のORP(−52.0mV±3.1SEM)と有意な差はなかった。
【0060】
方法確認の為に、PON−AE活性及び全体のタンパク質レベルを測定した。PON−AE活性はORP最大時のサンプル(649.1U/mgタンパク質±18.8SEM)と比較して、入院時のサンプル(740.0U/mgタンパク質±20.2SEM)においては有意に高かった。従って、結果は、外傷とPON−AE活性の減少との間の相関関係を示す。同様に、タンパク質のレベルは、ORP最大時のサンプル(41.6±1.3SEM)と比較して、入院時のサンプル(47.3mg/ml±1.6SEM)ではより高かった。
【0061】
重症患者における酸化ストレスのマーカーの存在は、予後不良と関連している(非特許文献2)。しかしながら、いかなる単一のパラメータも、重症患者の総合的な酸化還元の状態を正確に予測できない。酸化促進剤及び酸化防止剤の定量化のための多数の検定の煩雑な実施は臨床上実用的ではない。従って、迅速かつ簡単な診断試験を必要とする。
【0062】
ここでは、重篤な外傷を受けた患者から、入院時から退院時まで連日採取された血漿の酸化還元電位(ORP)を測定した。日々のORPレベルは、各患者の医療記録に記録された臨床兆候と関連しており、ORPの増大は患者の症状が悪化していることを示し、ORPの減少は患者の症状が改善されていることを示す。従って、ORPを監視することは、酸化ストレスの存在及び程度、傷害の重篤度、患者の予後及び治療の効果を評価及び監視するための有用なツールとなるべきである。ORPの監視は、外傷患者の治療(例えば、抗酸化剤の投与)を必要とする適切な臨床の状態及び時期を決定する上において使用される。特に、ORPの監視は、重症である患者の判別、並びに同患者の症状及びその他の診断試験結果によって示され得るものよりも更に積極的な治療を必要とするかの判別を助けるために使用され得る。
【実施例3】
【0063】
運動前後の血漿ORP
この実験の目的は、運動が血漿中の酸化還元電位(ORP)に影響を与えるかどうかを決定するものである。全血は、女性の大学サッカーチームのメンバーから運動の前後に採取された。運動は1時間の集中した循環器系のトレーニングから構成されていた。血液は、ヘパリンナトリウムを含有するVacutainer(登録商標)(アメリカ合衆国、ニュージャージー州、フランクリンレイクス所在のベクトン・ディッキンソン)を使用して静脈穿刺によって採取した。血液の管は、2000のrpmで10分間遠心分離され、そして血漿が回収され、同血漿は1mLの量に等分され、使用時まで−80℃で保存した。
【0064】
血漿サンプルは室温にて解凍した。ORPの測定は、HI4222 pH/mV/温度ベンチメータ(アメリカ合衆国、ロードアイランド州、ウーンソケット所在のハンナ・インスツルメンツ)に接続されたマイクロPt/AgClと組合せたMI−800/410cm酸化還元電極(アメリカ合衆国、ニューハンプシャー州、ベッドフォード所在のマイクロエレクトロード社)を使用して記録した。電極は血漿サンプル中に浸され、定常状態のORPの読み取り値(mV)を記録した。
【0065】
結果は以下の表3に示されている。表3から明らかなように、これらの高いパフォーマンスを行う運動選手の血漿のORPは、運動後には減少していた。
【0066】
【表3】

【実施例4】
【0067】
ウイルスに感染した重症患者からの血漿のORP
患者GR−1029は、飼育ラットの檻の清掃中に、同ラットの糞尿にさらされることにより誘発された、インフルエンザ様の症状、肺炎及び呼吸器不全により、コロラド州エングルウッド(Englewood)に所在のスウェーディッシュ(Swedish)病院の集中治療室に入院した。同患者は、齧歯動物から感染したウイルス感染であろうと診断された。
【0068】
この調査は、研究におけるリスクからの保護のために、健康及び人的サービス省(HHS Office)によって発行された指針に従って、HCA−HealthOneの施設内倫理委員会によって承認されている。
【0069】
血液は、ヘパリンナトリウムを含有するVacutainer(登録商標)(アメリカ合衆国、ニュージャージー州、フランクリンレイクス所在のベクトン・ディッキンソン)を使用して静脈穿刺によって、入院中の間、数日間にわたり患者から採取した(以下の表4を参照)。血漿は1mLの量に等分され、使用時まで−80℃で保存した。
【0070】
血漿サンプルは室温にて解凍した。ORPの測定は、HI4222 pH/mV/温度ベンチメータ(アメリカ合衆国、ロードアイランド州、ウーンソケット所在のハンナ・インスツルメンツ)に接続されたマイクロPt/AgClと組合せたMI−800/410cm酸化還元電極(アメリカ合衆国、ニューハンプシャー州、ベッドフォード所在のマイクロエレクトロード社)を使用して記録した。電極は血漿サンプル中に浸され、定常状態のORPの読み取り値(mV)を記録した。
【0071】
結果は以下の表4に示されている。表4から明らかなように、ORPは、入院後の最初の8日間の間が最も高く、重篤な外傷患者の場合と同様に、患者が退院するまでの間、低減した(実施例2を参照)。しかしながら、患者GR−1029のORPレベルは、退院する前は、正常な対象のレベル(−52.0mV±3.1SEM)には戻らなかった。ORPレベルは患者の医療記録に記録された臨床兆候と関連しており、ORPレベルの増大は同患者の症状が悪化していることを示し、ORPレベルの減少は同患者の症状が改善されていることを示す。
【0072】
【表4】

【実施例5】
【0073】
貯蔵された血液製剤(PBRC)の監視
輸血関連急性肺障害(TRALI)は輸血の副作用であり、かつ輸血に関連した死亡の主たる原因である。Silliman他、Blood,105:2266−2273(2005年)。濃厚赤血球(PBRC)及び他の血液製剤のより長期にわたる保存期間は、輸血患者においてTRALIを発生させる危険性の増大と関連付けられている。Biffl他、J.Trauma,50:426−432(2001年)を参照されたい。
【0074】
米国血液銀行協会の基準に従って、4℃にてアデニン、クエン酸塩及びD形グルコース(ACD)の緩衝液にて保存されたPBRCを含有する合計10個の輸血バッグは、ボンフィルズ・ブラッド・センター(Bonfils Blood Center)(コロラド州デンバー)から入手した。ボンフィルズにて、PBRCの各バッグのサンプルは、貯蔵日の1日目及び42日目に回収した。サンプルは、4℃にて10分間、1000gにて直ぐに遠心分離し、上清を回収し、更なる分析時まで−80℃にて保存した。
【0075】
酸化還元電位(ORP)は、1日目及び42日目の両方のサンプルの上清中について、室温にて測定された。HI4222 pH/mV/温度ベンチメータ(アメリカ合衆国、ロードアイランド州、ウーンソケット所在のハンナ・インスツルメンツ)に接続されたマイクロPt/AgClと組合せたMI−800/410cmの酸化還元電極(アメリカ合衆国、ニューハンプシャー州、ベッドフォード所在のマイクロエレクトロード社を使用してORP測定値を記録した。電極はサンプル上清中に浸され、定常状態のORPの読み取り値(mV)を記録した。
【0076】
結果は以下の表5に示す。有意差(p<0.05、Microsoft Excel(登録商標))を試験するために、スチューデントt検定を使用して、1日目のデータと42日目のデータとを比較した。明らかなように、ORPは、42日目のサンプル(98.1mV±21.9SD)では、1日目のサンプル(62.6mVの±21.5SD)と比較して、有意に増大していた(p<0.05)。
【0077】
方法確認の為に、サンプル上清のタンパク質の酸化は、質量分析(MS)による上清中の血漿タンパク質の測定によって決定した。サンプル上清は、既に記載されている方法を使用して、正のエレクトロスプレー−イオン化飛行時間型質量分析装置(+ESI−TOF MS、LCT(英国、マイクロマス(Micromass)社)と組み合わせたHPLC(Waters 2795 Separations Module)(アメリカ合衆国マサチューセッツ州ミルフォード(Milford)所在のウォーターズ(Waters))によって分析した。Bar−Or他、Crit.Care Med.,33:1638−1641年(2005年)。10μLの各サンプルは、50℃に加熱された、YMC−Pack Protein−RP HPLCカラム(アメリカ合衆国マサチューセッツ州ミルフォード(Milford)所在のウォーターズ)に注入された。水/0.1%トリフルオロ酢酸(A)及びAcN/0.1%TFA(B)を使用して、10%から40%までのBを含む20分の直線勾配を1mL/分の流速にて使用した。検出された各血漿タンパク質に対して、MSスペクトルは、MaxEnt1ソフトウェア(英国、マイクロマス社)を用いて、未変化の親質量(parent mass)に、特性を取り除いた(deconvolved)。次に親質量のスペクトルを統合し、各々の種の相対的な割合を、社内にて開発された高度な独自のMS統合ソフトウエアパッケージを使用して計算した。
【0078】
ヒト血清アルブミン(HSA)の酸化修飾は、システイン34のシステイニル化及びリジン487のデヒドロアラニン(DHA)修飾を含む。酸化したHSA種のパーセントは、上清中において、1日目(44.1%±6.9SD)から42日目(72.1%±8.4SD)まで有意に増大した。
【0079】
MSによって識別された上清中のその他の血漿タンパク質は、ヘモグロビンのα鎖(αHb)、ヘモグロビンのβ鎖(βHb)、アポリポタンパク質A1(ApoA1)及びトランスサイレチン(TTR)であった。αHb、βHb及びTTRの酸化修飾の有意に高いレベルは、1日目の上清と比較して42日目の上清で観察された(p<0.05)。また、αHb及びApoA1に対して、開裂されたC末端アミノ酸を有する種が観察され、それは炎症のマーカーであるカルボキシペプチダーゼ活性の存在を示す。
【0080】
データは、貯蔵時間とともに増大するPBRCの酸化環境の存在を示す。これは、より古い血液製剤での輸血と関連していたTRALIを発生するリスクの増大を部分的に説明することができる。
【0081】
従って、PBRCのORP及び他の保存された血液製剤のORPは監視されるべきであり、血液製剤を受け取る患者のORPもまた監視されるべきである。重篤な酸化ストレスを有する患者(即ち、高いORPレベル)は、より少ない酸化促進剤種を含有するより新鮮な血液製剤(即ち、より低いORPレベルであるもの)を輸血されるべきである。患者及び血液製剤の酸化状態を検討することにより、TRALIのような輸血に関連した危険因子の低減が得られる。
【0082】
【表5】

【実施例6】
【0083】
外傷性の脳損傷の患者の監視及び識別
この実験では、孤立性外傷性脳障害(ITBI)の患者の総合的な酸化状態を、同患者の血漿の酸化還元電位(ORP)の測定によって決定した。
【0084】
連続した全血のサンプルは、重症ITBI患者(簡易式外傷スコア(AIS)≧3,N=32)から、及び人口統計的に類似する非頭部損傷患者(N=26)から、ほぼ毎日の割合にて、入院時から退院時まで入手した。全血はまた、軽度から中程度までのITBI患者(AIS≦2,N=18)及び健常者(N=22)からも採取した。血漿は1mLの量に等分され、使用時まで−80℃で保存した。
【0085】
ORP測定は、HI4222 pH/mV/温度ベンチメータ(アメリカ合衆国、ロードアイランド州、ウーンソケット所在のハンナ・インスツルメンツ)に接続されたマイクロPt/AgClと組合せたMI−800/410cm酸化還元電極(アメリカ合衆国、ニューハンプシャー州、ベッドフォード所在のマイクロエレクトロード社)を使用して室温にて記録した。血漿サンプルを解凍し、ORP電極を血漿サンプル中に浸した。ORP値が5秒間安定となった後に、読み取り値(mV)を記録した。
【0086】
血漿ORPは、全ての外傷群において、入院後の最初の数日間の間は増大し、退院時には正常なレベルに近づいた。提示時のORPは健常な対照と比較して全ての外傷患者において有意に上昇した(p< 0.05)。ORPの最大値は、重症のITBI患者及び非頭部損傷患者では6日目に検出された。しかしながら、ORPの最大値は、非頭部損傷患者の群(−5.2mV±2.9SEM)と比較して、重症ITBI群(+8.5mVの±3.4SEM)では有意に高かった(p<0.05)。
【0087】
これらの結果は、特に重症ITBI患者を含む、外傷を受けた患者の血漿中の酸化環境の存在を、示す。従って、ORPを監視することは、酸化ストレスの程度、傷害の重篤度及びITBI患者の治療効果を評価する上において有用なツールである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外傷に罹患した患者を診断、評価、又は監視するための方法であって、前記方法は:
a.患者の体液、患者の組織又はそれら両方の、酸化還元電位(ORP)を測定する工程と;
b.以下の工程:
i.前記ORPが、正常な患者からの同じ体液、組織又はそれら両方のORPと有意に異なるかどうかを決定する工程;及び
ii.患者の体液、患者の組織又はそれら両方のORPを現在の測定よりも前に少なくとも一回測定した場合、前記ORPが、以前の測定と比較して増加又は減少していたかどうかを決定する工程と、
のうちの一方又は両方を実施する工程と;
からなる、方法。
【請求項2】
前記患者の治療の有効性を決定するために、前記ORPは監視される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者の症状が回復しているか又は悪化しているかを決定するために、前記ORPは監視される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ORPは、1日に一回又は1日に複数回、測定される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ORPは体液にて測定され、かつ前記体液は血漿である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記外傷は頭部外傷である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ORPは、1日に一回又は1日に複数回、測定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ORPは体液にて測定され、かつ前記体液は血漿である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ORPは体液にて測定され、かつ前記体液は脳脊髄液である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
ウイルスに感染した患者を診断、評価、又は監視するための方法であって、前記方法は:
a.患者の体液、患者の組織、又はそれら両方の、酸化還元電位(ORP)を測定する工程と;
b.以下の工程:
i.前記ORPが正常な患者からの同じ体液、組織又はそれら両方のORPと有意に異なるかどうかを決定する工程;及び
ii.患者の体液、患者の組織、又はそれら両方のORPを現在の測定よりも前に少なくとも一回測定した場合、前記ORPが、以前の測定と比較して増加又は減少していたかどうかを決定する工程と、
のうちの、一方又は両方を実施する工程と、
からなる、方法。
【請求項11】
前記患者の治療の有効性を決定するために、前記ORPは監視される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記患者の症状が回復しているか又は悪化しているかを決定するために、前記ORPは監視される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ORPは、1日に一回又は1日に複数回、測定される、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ORPは体液にて測定され、かつ前記体液は血漿である、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
重症疾患である疑いのある患者を診断、評価又は監視する方法、或いは重症疾患であると診断された患者を評価又は監視する方法であって、前記方法は:
a.患者の体液、患者の組織、又はそれら両方の、酸化還元電位(ORP)を測定する工程と;
b.以下の工程:
i.前記ORPが正常な患者からの同じ体液、組織又はそれら両方のORPと有意に異なるかどうかを決定する工程;及び
ii.患者の体液、患者の組織、又はそれら両方のORPを現在の測定よりも前に少なくとも一回測定した場合、前記ORPが、以前の測定と比較して増加又は減少していたかどうかを決定する工程と、
のうちの、一方又は両方を実施する工程と、
からなる、方法。
【請求項16】
前記ORPは、前記患者が重症であるか否かを決定するために評価の一部として使用される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記患者の治療の有効性を決定するために、前記ORPは監視される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記患者の症状が回復しているか又は悪化しているかを決定するために、前記ORPは監視される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ORPは、1日に一回又は1日に複数回、測定される、請求項15乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ORPは体液にて測定され、かつ前記体液は血漿である、請求項15乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
心筋梗塞である疑いのある患者を診断、評価又は監視する方法、或いは心筋梗塞であると診断された患者を評価又は監視する方法であって、前記方法は:
a.患者の体液、患者の組織、又はそれら両方の、酸化還元電位(ORP)を測定する工程と;
b.以下の工程:
i.前記ORPが正常な患者からの同じ体液、組織又はそれら両方のORPと有意に異なるかどうかを決定する工程;及び
ii.患者の体液、患者の組織、又はそれら両方のORPを現在の測定よりも前に少なくとも一回測定された場合、前記ORPが、以前の測定と比較して増加又は減少していたかどうかを決定する工程と、
のうちの、一方又は両方を実施する工程と、
からなる、方法。
【請求項22】
前記ORPは、前記患者が心筋梗塞に罹患しているか否かを決定するために評価の一部として使用される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記患者の治療の有効性を決定するために、前記ORPは監視される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記ORPは、1日に一回又は1日に複数回、測定される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記ORPは体液にて測定され、かつ前記体液は血漿である、請求項21乃至24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
患者の運動パフォーマンスを評価する方法であって、前記方法は:
a.患者の体液、患者の組織、又はそれら両方の、酸化還元電位(ORP)を運動の前後において測定し、ORPが運動の前と比較して、運動の後では有意に異なるかどうかを決定する工程と;
b.患者の体液、患者の組織、又はそれら両方のORPを運動の前及び運動時に測定し、同ORPが、運動の前と比較して、運動時には有意に異なるかどうかを決定する工程と;
c.患者の体液、患者の組織、又はそれら両方のORPを運動の前、運動時及び運動の後に測定し、同ORPが、運動の前と比較して、運動時、運動の後またはその両方とは有意に異なるかどうかを決定する工程と、
からなる方法。
【請求項27】
前記ORPは体液にて測定され、前記体液は血漿である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
保存される血液製剤を評価又は監視する方法であって、前記方法は:
a.血液製剤の、酸化還元電位(ORP)を、同製剤を1日以上保存した後に測定する工程と;
b.保存された血液製剤の前記ORPが、同製剤がドナーより得られた直後の同製剤のORPとは有意に異なるかどうかを決定する工程と、
からなる方法。
【請求項29】
前記血液製剤は血液である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記血液製剤は、濃厚赤血球である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記血液製剤のORPは、保存時に一日一回測定される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
請求項28乃至31のいずれか一項に記載の方法であって、
c.血液製剤を受け取る患者の体液、同患者の組織、又はその両方の、酸化還元電位(ORP)を測定する工程と;
d.前記ORPが正常な患者からの同じ体液、組織又はその両方におけるORPレベルと有意に異なるかどうかを決定する工程と、
を更に含む方法。

【公表番号】特表2010−528290(P2010−528290A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509472(P2010−509472)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/063855
【国際公開番号】WO2008/144481
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(507243991)インスティチュート フォー モレキュラー メディスン インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE FOR MOLECULAR MEDICINE,INC.
【Fターム(参考)】