説明

酸化触媒と低温プラズマとを利用する気体処理方法及び気体処理装置

金属酸化物酸化触媒の存在下で低温プラズマを発生させることを特徴とする気体の処理方法及び金属酸化物酸化触媒を保持する低温プラズマ発生部を有することを特徴とする気体の処理装置を開示する。前記の処理方法及び処理装置によって、被処理気体中の有害成分(例えば、一酸化炭素又は揮発性有機化合物)を高効率で酸化して無害化し、臭気を無臭化し、更に、処理済み気体中から微生物を排除ないし低減化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、酸化触媒(例えば、酸化マンガン及び酸化銅などの金属酸化物を含む酸化触媒、特には、ホプカライト触媒)と低温プラズマとを利用する気体処理方法及び気体処理装置に関する。本発明によれば、低温プラズマによって金属酸化物酸化触媒の活性が向上するため、被処理気体中の有害成分(例えば、一酸化炭素又は揮発性有機化合物)を高効率で酸化して無害化し、臭気を無臭化することができる。更に、処理済み気体中から微生物を排除ないし低減化することができる。
【背景技術】
ホプカライト(hopcalite)触媒は、酸化マンガン、酸化銅、及びその他の金属酸化物(例えば、酸化カリウム、酸化銀、又は酸化コバルト)からなる酸化触媒であり、一酸化炭素の酸化除去機能を有するだけでなく、亜硫酸ガス、塩化水素、硫化水素、又は窒素酸化物に対する浄化機能や、ホルムアルデヒドの除去機能を有することが知られている。
ホプカライト触媒を用いて気体を処理する具体的な技術としては、例えば、医療品質の空気を製造する際にホプカライト触媒を一酸化炭素吸着用として使用する方法(特開平8−266629号公報)、又は不活性ガス気流中の不純物である一酸化炭素の吸着剤としてホプカライト触媒を使用する方法(特開平10−137530号公報)、更には、ガス燃料の臭気成分除去用触媒としてホプカライト触媒を用いる方法(特開平8−24576号公報)が知られている。
一方、低温プラズマを利用した脱臭技術も公知であり、例えば、低温プラズマを発生させることのできる高圧放電部と、酸化促進触媒が充填されている触媒部とを含む低温プラズマ脱臭装置が知られている(タクマ技報,Vol.5,No.1,66−71,1997)。また、低温プラズマを利用した有機溶媒除去方法、及び低温プラズマを利用したガスの酸化作用として、窒素酸化物を除去する方法も知られているが、低温プラズマを利用して気体中の一酸化炭素を二酸化炭素に変換する方法は特には知られていない。更に、ホプカライト触媒と低温プラズマとを併用する技術も知られておらず、従って、低温プラズマによってホプカライト触媒の活性が向上することも知られていない。
【発明の開示】
本発明者は、有害成分(例えば、一酸化炭素、一酸化窒素化合物)を含む気体を高効率で無害化する技術の開発を鋭意研究していたところ、低温プラズマによって金属酸化物酸化触媒(例えば、ホプカライト触媒)の活性が向上することを見出し、金属酸化物酸化触媒(例えば、ホプカライト触媒)存在下で低温プラズマを発生させて有害成分を含む気体を処理すると、向上した金属酸化物酸化触媒(例えば、ホプカライト触媒)の活性と、低温プラズマの作用により、高効率で一酸化炭素が二酸化炭素に酸化され、高効率で一酸化窒素が二酸化窒素に酸化され、更に揮発性有機化合物(VOC)も高効率で二酸化炭素と水とに分解されることを見出した。更に、悪臭も同時に高効率で無臭化されることを見出した。
本発明はこうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、金属酸化物酸化触媒(例えば、酸化マンガン及び酸化銅などの金属酸化物を含む酸化触媒、特には、ホプカライト触媒、又は活性二酸化マンガン)の存在下で低温プラズマを発生させることを特徴とする気体の処理方法に関する。
本発明の処理方法の好ましい態様によれば、気体を酸化するか(例えば、被処理気体中の有害成分、例えば、一酸化炭素又は一酸化窒素をそれぞれ酸化して二酸化炭素又は二酸化窒素にするか)、揮発性有機化合物を分解するか、あるいは悪臭を無臭化する。
また、本発明は、金属酸化物酸化触媒(例えば、酸化マンガン及び酸化銅などの金属酸化物を含む酸化触媒、特には、ホプカライト触媒、又は活性二酸化マンガン)を保持する低温プラズマ発生部を有することを特徴とする気体の処理装置にも関する。
本発明の処理装置の好ましい態様においては、低温プラズマ発生部が、円筒型電極と、前記円筒型電極の中心軸の位置に配置した棒状電極を備えており、前記円筒型電極の内部表面に粒状触媒表面が露出するように担持された金属酸化物酸化触媒を備えているか、あるいは、前記円筒型電極と棒状電極との間に充填された金属酸化物酸化触媒を備えている。
本発明の処理装置の別の好ましい態様においては、低温プラズマ発生部が、円筒型絶縁体と、その円筒型絶縁体の外側表面に接触して設けられた円筒型電極と、前記の円筒型絶縁体の内側表面上に配置された複数の帯状電極と、同じく前記の円筒型絶縁体の内側表面上に配置された金属酸化物酸化触媒とを備え、前記の帯状電極は、円筒型絶縁体の内側表面上を、相互に平行に軸方向に延びており、金属酸化物酸化触媒は、前記の帯状電極の間に粒状触媒表面が露出するように担持されているか、あるいは、前記の円筒型絶縁体の内側に充填されている。
本発明の処理装置の更に別の好ましい態様においては、低温プラズマ発生部が、ハウジング内部に、相互に放電を行う2群に分かれた多数の円柱状電極を備え、円柱状電極表面に触媒表面が露出するように担持された金属酸化物酸化触媒を備えているか、あるいは、前記ハウジング内部に充填された金属酸化物酸化触媒を備えている。
本発明の処理装置の更に別の好ましい態様においては、低温プラズマ発生部が、ハウジング内部に、(a)芯電極と、その芯電極の周囲を包囲する円筒状絶縁性鞘体とを含む円柱状保護電極と(b)導電性メッシュ状電極とを備え、前記の導電性メッシュ状電極上に触媒表面が露出するように担持された金属酸化物酸化触媒を備えているか、あるいは、前記ハウジング内部に充填された金属酸化物酸化触媒を備えている。
【図面の簡単な説明】
図1は、円筒型電極と棒状電極とを備えた同軸円筒型低温プラズマ発生部の円筒内壁部に金属酸化物酸化触媒を分散させて担持させた本発明による低温プラズマ発生装置の模式的斜視図である。
図2は、図1の低温プラズマ発生装置の模式的断面図である。
図3は、円筒型電極と棒状電極とを備えた図1と同様の同軸円筒型低温プラズマ発生部の円筒内部に金属酸化物酸化触媒を充填させた本発明による低温プラズマ発生装置の模式的断面図である。
図4は、円筒型電極と帯状電極とを備えた沿面放電型低温プラズマ発生部の円筒内壁部に金属酸化物酸化触媒を分散させて担持させた本発明による低温プラズマ発生装置の模式的斜視図である。
図5は、図4の沿面放電型低温プラズマ発生装置の模式的断面図である。
図6は、ハウジング内に円柱状電極群を備えた低温プラズマ発生部の円柱状電極群の表面に金属酸化物酸化触媒を分散させて担持させた本発明による低温プラズマ発生装置の模式的斜視図である。
図7は、ハウジング内に円柱状電極群とメッシュ状電極群とを備えた低温プラズマ発生部のメッシュ状電極群の表面に金属酸化物酸化触媒を分散させて担持させた本発明による低温プラズマ発生装置の模式的斜視図である。
図8は、図7の低温プラズマ発生装置の模式的断面図である。
図9は、本発明装置の代表的態様の模式的断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明方法及び本発明装置で処理される気体、すなわち被処理気体は、酸化可能な気体状化合物(すなわち、無機化合物又は有機化合物)である限り特に限定されず、無機化合物としては、例えば、一酸化炭素、亜硫酸ガス、硫化水素、又は窒素酸化物(例えば、一酸化窒素)を挙げることができ、有機化合物としては、揮発性有機化合物(Volatile organic compound;VOC)を挙げることができる。また、被処理気体としては、例えば空気を挙げることもでき、空気中に混在することのある前記の酸化可能な気体状無機化合物若しくは気体状有機化合物を処理することができる。
本発明方法及び本発明装置は、有害成分(例えば、一酸化炭素、一酸化窒素、及び/又は揮発性有機化合物)を含有する気体(例えば、汚染大気)を処理するのに適しており、特には、低濃度の有害成分を含有する気体を処理するのに適している。ここで「低濃度」とは、前記の酸化可能な化合物(特には、一酸化炭素、一酸化窒素、又は揮発性有機化合物)のそれぞれに関して、好ましくは1ppm以下、より好ましくは0.5ppm以下である。なお、揮発性有機化合物(VOC)とは、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、又は芳香族化合物(例えば、フェノール、トルエン、スチレン、又はベンゼン)である。
本発明においては、前記の被処理気体に対して、金属酸化物酸化触媒(例えば、ホプカライト触媒)の存在下にて低温プラズマ処理を実施することにより、被処理気体に含まれている一酸化炭素を二酸化炭素に高効率で変換して無毒化することができ、それとは独立して一酸化窒素を二酸化窒素に高効率で変換して容易に吸着処理及び化学処理することができ、更にそれとは独立してVOCを高効率で分解(例えば、二酸化炭素と水に変換)して無毒化することができる。本発明で用いる低温プラズマは、公知の方法によって、例えば、放電により発生させることができる。前記放電としては、例えば、マイクロ波放電、交流放電、又は直流放電を用いることができる。
これらの放電方法で用いる電極対としては、例えば、平行円筒電極、同軸円筒−棒電極、球ギャップ電極、平行板電極、円筒−平板電極、沿面放電電極、又は特殊電極(例えば、刃形電極)を挙げることができる。例えば、平行板電極を用いる放電において電極間隙を10mm程度にすると、電極間に十数kV〜数十kVの交流電圧を印加することによって電極間の気体をプラズマ化することができる。
また、本発明では、金属酸化物酸化触媒として、例えば、酸化マンガン及び酸化銅を含む公知の酸化触媒、例えば、ホプカライト触媒を用いることができる。金属酸化物酸化触媒としては、前記ホプカライト触媒、又は活性二酸化マンガンを挙げることができる。ホプカライト触媒は、前記の通り、酸化マンガン、酸化銅、及びその他の金属酸化物(例えば、酸化カリウム、酸化銀、又は酸化コバルト)の混合物を粒状に固めて乾燥又は焼結して製造される。本発明において用いる金属酸化物酸化触媒(例えば、ホプカライト触媒)の形状は特に限定されないが、一般に、粉末あるいは顆粒状、例えば約1〜3mmの粒状で用いることができる。
本発明において、低温プラズマ発生用電極に対する金属酸化物酸化触媒(例えば、ホプカライト触媒)の配置は、低温プラズマによって金属酸化物酸化触媒の活性を向上させることが可能な配置である限り、特に限定されない。例えば、金属酸化物酸化触媒を、低温プラズマ発生用の全電極の表面あるいは一部の電極の表面に担持させることができる。一部の電極の表面に担持させる場合は、放電を行う一対の電極(例えば、非接地電極及び接地電極)の両方のそれぞれ任意の一部の電極表面に担持させるか、あるいは放電を行う一対の電極(例えば、非接地電極及び接地電極)のいずれか一方の一部若しくは全部の電極表面に担持させることができる。
金属酸化物酸化触媒(例えば、ホプカライト触媒)を電極表面に担持させる場合は、接着剤を用いることができる。例えば、円柱状電極の電極表面の全体又は一部分に接着剤を塗布し、続いて粉末状又は顆粒状のホプカライト触媒を振りかけて固定させることができる。この場合は、粉末状又は顆粒状のホプカライト触媒の表面の少なくとも一部分が、露出して被処理気体と接触可能な状態であることが好ましく、できる限り広い表面が露出しているのがより好ましい。
電極の形状を、粉末状又は顆粒状の金属酸化物酸化触媒(例えば、ホプカライト触媒)の担持に好適で通気性を有する形状、例えば、メッシュ状にすることもできる。例えば、粒状ホプカライト触媒の粒径よりも小さいフルイ目を有し、水平方向に配置したメッシュ状平板電極上に粒状ホプカライト触媒を単に載置させ、粒状ホプカライト触媒の実質的に全表面を被処理気体と接触可能な状態にすることができる。必要により、メッシュ状平板電極への固定に接着剤を用いることができ、固定された粒状ホプカライト触媒を担持するメッシュ状平板電極を、水平方向以外の方向(例えば、垂直方向)に配置することもできる。更に、メッシュ状の立体構造体(例えば、円柱体)の内部に粒状ホプカライト触媒を閉じこめた形態の電極を用いることもできる。
放電を行う一対の電極を非接地電極及び接地電極の組み合わせにし、電極表面に粒状ホプカライト触媒を担持あるいは載置させる場合には、接地電極側に配置するのが好ましい。
粉末状又は顆粒状の金属酸化物酸化触媒(例えば、ホプカライト触媒)は、電極表面以外の部分(例えば、沿面放電電極における絶縁体表面)に担持させることもできる。この場合、電極表面以外の部分に粉末状又は顆粒状の金属酸化物酸化触媒を担持させると共に、各電極の表面にも粉末状又は顆粒状の金属酸化物酸化触媒を担持あるいは載置させることができる。
また、本発明においては、金属酸化物酸化触媒(特に粉末状又は顆粒状の金属酸化物酸化触媒)を、低温プラズマ発生部に充填させることもできる。この場合、粉末状又は顆粒状の金属酸化物酸化触媒の間を被処理気体が通過可能なように充填する必要がある。また、低温プラズマ発生部から粉末状又は顆粒状の金属酸化物酸化触媒が脱落しないように、フィルターや蓋などの脱落防止手段を設けることが好ましい。
金属酸化物酸化触媒としてのホプカライト触媒を低温プラズマ発生用電極に対して配置する具体的態様を添付図面に沿って説明する。
図1は、円筒型電極と棒状電極とを備えた同軸円筒型低温プラズマ発生部の円筒内壁部に金属酸化物酸化触媒を分散させて担持させた本発明による低温プラズマ発生装置10の模式的斜視図であり、図2はその模式的断面図である。前記低温プラズマ発生装置10は、円筒型電極12と、前記円筒型電極12の中心軸の位置に配置した棒状電極11を備えている。また、前記円筒型電極12の内部表面には、粒状触媒表面が露出するように接着剤等の適当な方法で担持された、多数の粒状ホプカライト触媒13を備えている。被処理気体Gは、前記円筒型電極12の一方の開口部から挿入され、処理済み気体Cは、もう一方の開口部から排出される。
この態様では、棒状電極11及び円筒型電極12のいずれも接地する必要はないが、操作の安全上からいずれか一方を接地することが好ましい。いずれか一方を接地する場合は、棒状電極11を非接地側とし、円筒型電極12を接地側とするのが好ましい。この場合、棒状非接地側電極11は、電線17Aに接続し、また円筒型接地側電極12は、アースされている電線17Bに接続し、各電線17A,17Bは交流電源18と接続しており(図1にのみ示す)、棒状非接地側電極11と円筒型接地側電極12との間に高電圧を印加する。
図3は、円筒型電極と棒状電極とを備えた図1と同様の同軸円筒型低温プラズマ発生部の円筒内部に金属酸化物酸化触媒を充填させた本発明による低温プラズマ発生装置30の模式的断面図である。前記低温プラズマ発生装置30は、図1に示した低温プラズマ発生装置10と同様に、円筒型電極32と、前記円筒型電極32の中心軸の位置に配置した棒状電極31を備えている。また、前記円筒型電極32の内部空間には、図1に示した低温プラズマ発生装置10とは異なり、多数の粒状ホプカライト触媒33が充填されている。これらの粒状ホプカライト触媒33が排出しないように、被処理気体流入用開口部(図示せず)及び処理済み気体排出用開口部(図示せず)にはフィルターなどを設けることが好ましい。被処理気体G(図示せず)は、前記円筒型電極32の一方の開口部から挿入され、処理済み気体C(図示せず)は、もう一方の開口部から排出される。
この態様では、棒状電極31及び円筒型電極32のいずれも接地する必要はないが、操作の安全上からいずれか一方を接地することが好ましい。いずれか一方を接地する場合は、棒状電極31を非接地側とし、円筒型電極32を接地側とするのが好ましい。この場合、棒状非接地側電極31は、電線(図示せず)に接続し、また円筒型接地側電極32は、アースされている電線(図示せず)に接続し、各電線は交流電源(図示せず)と接続しており、棒状非接地側電極31と円筒型接地側電極32との間に高電圧を印加する。
図4は、沿面放電型電極を用いた低温プラズマ発生装置20の模式的斜視図であり、図5はその模式的断面図である。
前記低温プラズマ発生装置20は、円筒型の絶縁体24と、円筒型電極21を備えている。前記の円筒型電極21は、前記の円筒型絶縁体24の外側表面と接触している。また、前記の円筒型絶縁体24の内側表面上には、複数の帯状電極22と、多数の粒状ホプカライト触媒23が配置されている。前記の帯状電極22は、円筒型絶縁体24の内側表面上を、相互に平行に軸方向に延びている。また、多数の粒状ホプカライト触媒23は、前記の帯状電極22の間に接着剤等の適当な方法で担持されている。被処理気体Gは、前記円筒型の絶縁体24の一方の開口部から挿入され、処理済み気体Cは、もう一方の開口部から排出される。
この態様では、円筒型電極21及び帯状電極22のいずれも接地する必要はないが、操作の安全上からいずれか一方を接地することが好ましい。いずれか一方を接地する場合は、円筒型電極21を非接地側とし、帯状電極22を接地側とするのが好ましい。この場合、図4及び図5では、電源及び電線を省略したが、円筒型非接地側電極21は、電線に接続し、また帯状接地側電極22は、もう一方のアースされている電線に接続し、それぞれ前記二つの電線は交流電源と接続しており、円筒型非接地側電極と帯状接地側電極22との間に高電圧を印加する。
前記の図4及び図5に示す低温プラズマ発生装置20と同様に、円筒型絶縁体と円筒型電極と帯状電極とを含む低温プラズマ発生装置の円筒型絶縁体の内部に、図3の示す低温プラズマ発生装置30と同様に、多数の粒状ホプカライト触媒を充填することもできる。この場合も、被処理気体流入用開口部及び処理済み気体排出用開口部にはフィルターなどを設けることが好ましい。
図6は、低温プラズマ発生装置50のハウジング51の側壁の一部を切り欠いて示す模式的斜視図である。前記低温プラズマ発生装置50は、被処理気体Gの流入用開口部52と処理済み気体Cの排出用開口部53とを備えた大略直方体状のハウジング51を有し、前記ハウジング51の内部には、多数の円柱状電極54を備えている。更に、前記の円柱状電極54は、2つの電極群に分かれており、これらの電極群を接地する必要はないが、操作の安全上からいずれか一方を接地することが好ましい。前記の円柱状電極54を非接地側電極群54Aと接地側電極群54Bとに分ける場合は、それぞれ電線57A,57Bに接続し、電線57A,57Bは交流電源58と接続している。また、接地側電極群54Bに接続する電線57Bは、アースされている。更に、接地側電極群54Bの円柱状電極表面には、触媒表面が露出するように接着剤等の適当な方法で担持された、多数の粒状ホプカライト触媒56を備えている。前記の非接地側電極群54Aと前記の接地側電極群54Bとの間に高電圧を印加する。
なお、図6に示す態様において、前記の円柱状電極54は、(a)芯電極と、その芯電極の周囲を包囲する円筒状絶縁性鞘体とを含む保護電極(例えば、円筒状ガラス電極)と、(b)電極表面が被処理気体と直接接触可能な円柱状露出電極(例えば、円筒状ステンレススチール電極)との組み合わせであるか、あるいは、前記保護電極(a)のみからなることができる。前記の保護電極(a)と露出電極(b)との組み合わせからなる場合は、保護電極(a)を非接地側電極群54Aとし、露出電極(b)を接地側電極群54Bとし、粒状ホプカライト触媒56を露出電極(b)上に担持させるのが好ましい。
前記の図6に示す低温プラズマ発生装置50と同様に、ハウジング内に円柱状電極群を備えた低温プラズマ発生装置のハウジング内部に、図3の示す低温プラズマ発生装置30と同様に、多数の粒状ホプカライト触媒を充填することもできる。この場合も、被処理気体流入用開口部及び処理済み気体排出用開口部にはフィルターなどを設けることが好ましい。
図7は、低温プラズマ発生装置60のハウジング61の側壁の一部を切り欠いて示す模式的斜視図であり、図8はその模式的断面図である。前記低温プラズマ発生装置60は、被処理気体Gの流入用開口部62と処理済み気体Cの排出用開口部63とを備えた大略直方体状のハウジング61を有し、前記ハウジング61の内部には、多数の円柱状電極群64と複数のメッシュ状電極群69とを備えている。前記の円柱状電極群64のそれぞれは、芯電極と、その芯電極の周囲を包囲する円筒状絶縁性鞘体とを含む保護電極(例えば、円筒状ガラス電極)である。メッシュ状電極群69は、導電性材料、例えば、金属(例えば、ステンレススチール、チタン合金、又はニッケル合金)の網状平板構造であることができる。
更に、メッシュ状電極群69には、接着剤等の適当な方法で表面が露出するように固定して担持させた多数の粒状ホプカライト触媒66、又はメッシュ状電極群69の上面に、単に載置させた多数の粒状ホプカライト触媒66を備えている。
この態様では、円柱状電極群64及びメッシュ状電極群69のいずれも接地する必要はないが、操作の安全上からいずれか一方を接地することが好ましい。いずれか一方を接地する場合は、円柱状電極群64を非接地側とし、メッシュ状電極群69を接地側とするのが好ましい。更に、前記の円柱状電極群64及びメッシュ状電極群69は、図7及び図8中に図示していないが、それぞれ電線に接続し、電線は交流電源と接続している。接地側電極群(特には、メッシュ状接地側電極群69)に接続する電線は、アースされている。前記の円柱状電極群64と前記のメッシュ状電極群69との間に高電圧を印加する。
メッシュ状平板型電極群69がその表面上に粒状ホプカライト触媒66を単に載置して(非固定状態で)担持している場合には、図7及び図8に示すように、粒状ホプカライト触媒66が落下しないように、メッシュ状平板型電極群69を水平方向に配置する。また、この場合には、メッシュ状平板型電極群69のフルイ目は、粒状ホプカライト触媒66の粒径よりも小さくする必要がある。
一方、メッシュ状平板型電極群69が、その表面上に粒状ホプカライト触媒66を接着剤等の適当な方法で固定して担持している場合には、メッシュ状平板型電極群69の配置方向やフルイ目は、特に制限されない。
前記の図7及び図8に示す低温プラズマ発生装置60と同様に、ハウジング内に円柱状電極群とメッシュ状平板型電極群とを備えた低温プラズマ発生装置のハウジング内部に、図3の示す低温プラズマ発生装置30と同様に、多数の粒状ホプカライト触媒を充填することもできる。この場合も、被処理気体流入用開口部及び処理済み気体排出用開口部にはフィルターなどを設けることが好ましい。
次に、本発明装置の代表的態様を、図9に示す。
図9に示す気体処理装置9は、ホプカライト触媒を担持した低温プラズマ発生装置1を備えている。更に、その低温プラズマ発生装置1には、被処理気体(例えば、汚染大気)Gを供給することのできる供給手段としての移送管8aが設けられており、被処理気体Gを前記低温プラズマ発生装置1の内部に導入することができる。移送管8aの先端には、被処理気体Gを連続的又は断続的に取入れることのできる被処理気体取入手段(図示せず)が設けられている。
更に、前記低温プラズマ発生装置1から処理済み気体Cを排気口5へ移送する移送管8bが設けられている。更に、前記低温プラズマ発生装置1の下流には、必要により、移送管8bを介して、強制送気用ファン6を設けることができる。なお、本明細書において「下流」及び「上流」とは、被処理気体G及び処理済み気体Cの流れ方向に関して下流及び上流を意味する。また、この強制送気用ファン6の下流には、移送管8cを介して、処理済み気体Cの排気口5が設けられている。なお、強制送気用ファン6に代えて、あるいは強制送気用ファン6に加えて、移送管8a内に強制送気用ファンを設けることもできる。
図9に示す気体処理装置9によって、被処理気体Gを処理する場合には、移送管8aから被処理気体Gを前記低温プラズマ発生装置1の内部に導入する。続いて、前記低温プラズマ発生装置1の内部において低温プラズマを発生させると、低温プラズマによってラジカルが発生する。また、低温プラズマによってホプカライト触媒の活性が向上する。従って、そのラジカル及びホプカライト触媒の作用により、被処理気体Gの一酸化炭素が高効率で二酸化炭素に酸化され、更に揮発性有機化合物(VOC)も高効率で二酸化炭素と水とに分解される。また、悪臭も同時に高効率で無臭化される。
こうして得られた処理済み気体Cは、前記移送管8bを経て強制送気用ファン6によって移送管8cを経由して排気口5から排気される。この気体処理装置9によって、被処理気体をバッチ的又は好ましくは連続的に処理することができる。特に連続処理においては、被処理気体中の汚染物質(特に一酸化炭素、一酸化窒素、及びVOC)の量が変化するので、前記移送管8a、前記移送管8b、及び/又は排気口5に、各種の濃度センサを設けて、被処理気体の通気量及び/又は印加電圧を制御することができる。
作用
本発明において、低温プラズマによって金属酸化物酸化触媒(例えば、ホプカライト触媒)の活性が向上する機構は、現在のところ判明していない。しかしながら、金属酸化物酸化触媒と低温プラズマとの併用によって、被処理気体中の一酸化炭素や一酸化窒素、あるいは揮発性有機化合物が予想外に高い効率で無害化される機構の一部については以下のように推定することができる。なお、本発明は、以下の推論に限定されるものではない。
低温プラズマを発生させると、そのプラズマ自体によって酸化反応が起きるだけでなく、オゾンも同時に発生する。オゾンは、金属酸化物酸化触媒の存在下で酸素分子に還元されるので、その還元反応と同時に酸化反応も発生する。従って、その酸化反応が、被処理気体中の一酸化炭素や一酸化窒素、あるいは揮発性有機化合物に作用することが考えられる。もっとも、低温プラズマによる作用の大部分はラジカル発生によるものと考えられるので、前記の酸化反応の寄与は、本発明によって得られる効果のごく一部であると思われる。
また、特にホプカライト触媒は乾燥状態では充分な活性を示すが、水分を含むと不活性化することが知られている。しかしながら、本発明では、ホプカライト触媒を低温プラズマと併用する。低温プラズマ発生時には、放電電極部の温度が上昇するので、仮に被処理気体の湿度が比較的高くても、ホプカライト触媒は乾燥状態に維持されやすく、ホプカライト触媒の失活を回避することができる。
なお、低温プラズマによる気体処理装置では、低温プラズマによるラジカルの発生と共に、オゾンが発生する。オゾンは、通常、その大部分が気体処理工程で消費されるが、一部は消費されずに処理済み気体と共に排出されることがある。オゾンの排出は好ましいことではないので、従来公知の低温プラズマ型気体処理装置では、オゾン吸着用に多孔質吸着剤(例えば、活性炭)を排出口に配置する必要があった。ところが、多孔質吸着剤は、気体中に含まれている粉塵も吸着する。こうして多孔質吸着剤に吸着された粉塵は、微生物の増殖に好適な培地となる。低温プラズマ型気体処理装置を使用している際には、オゾンが発生しているので、微生物の増殖は抑制されているが、低温プラズマ型気体処理装置の運転を停止すると、微生物の増殖が抑制されなくなるので、多孔質吸着剤において微生物が繁殖することになる。この状態で低温プラズマ型気体処理装置の運転を再開すると、処理済み気体と共に微生物が排出されることになる。従来の低温プラズマ型気体処理装置には、こうした欠点があった。
これに対して、本発明で用いる金属酸化物酸化触媒(例えば、ホプカライト触媒)は、オゾン分解能を有しているので、オゾン吸着用に多孔質吸着剤(例えば、活性炭)を排出口に配置する必要がないか、あるいは使用量を低減することができる。更に、本発明によれば、被処理気体中に含まれる粉塵は、主に電極表面に付着し、電極表面に担持されている金属酸化物酸化触媒には、抗菌活性があるので、粉塵が微生物の培地となることも抑制される。従って、本発明によれば、装置の運転停止と運転再開とが繰り返し行われても、処理済み気体において、微生物を排除ないし低減化することができる。
以上のように、本発明は優れた処理効果を示すので、例えば、低濃度の一酸化炭素、一酸化窒素、及び/又はVOCを含有する汚染大気、例えば、自動車の排気ガスなどを含む汚染大気、長時間燃焼系暖房器具を使用して換気していない室内の空気、タバコの煙を含む汚染大気(例えば、喫煙室内部の空気)の処理に好適である。また、本発明は前記のように、処理済み気体中から微生物を排除ないし低減化することができるので、殺菌又は滅菌状態の気体を供給することが望ましい環境(例えば、医療機関や家庭)で用いる空気清浄機に好適に適用することもできる。
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
本実施例では、図9に示す態様と同様の構造を有する気体処理装置9を用いた。また、その気体処理装置9における低温プラズマ発生装置1としては、図6に示す構造と同様の構造を有する低温プラズマ発生装置50を用いた。低温プラズマ発生装置50は、ホプカライト触媒(ジーエルサイエンス社製;平均粒径=2mm;かさ密度=0.82g/cm)を接着剤で表面上に固定して担持した接地側円柱状露出SUS電極群54Bと、ホプカライト触媒を担持していない非接地側円柱状ガラス電極群54Aとを、総数で74本含み、各電極間の距離は4.75mmであった。ホプカライト触媒粒子は、前記の円柱状露出SUS電極54Bの表面上に、0.17g/cm程度の密度で担持させた。なお、非接地側円柱状ガラス電極としては、棒状アルミニウム芯電極(外径=1.5mm)と、円筒状ガラス製鞘体(外径=4mm)とからなり、ガラス製鞘体の内部に空気を充填した保護電極を用いた。また、円柱状露出SUS電極としては、外径が4mmの露出電極を用いた。また、更に、低温プラズマ発生装置50のハウジング51としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)製の直方体(縦=48cm;横=48cm;奥行き=11cm)を用いた。
被処理気体としては、喫煙者の排煙をポリテトラフルオロエチレン(テフロン)製袋に収集して用いた。この被処理気体を、被処理気体供給手段としての移送管8aから前記気体処理装置9の低温プラズマ発生装置1(50)に導入した。低温プラズマの発生は、印加電圧を8kVとし、気温22℃及び湿度60%の条件下で実施した。続いて、処理済み気体を強制送気用ファン6によって移送管8cを経由して排気口5から排気した。
処理能力は、被処理気体が含有する揮発性有機化合物(VOC)の濃度と、本発明の気体処理装置で処理した処理済み気体が含有するVOCの濃度とを測定し、それらの結果から、本発明の気体処理装置によるVOCの除去率を算出した。被処理気体サンプルは、被処理気体吸入口で採取し、処理済み気体サンプルは、処理済み気体の排気口で採取した。VOC濃度の測定は、ガス濃縮装置(エンテック社製;Model7000)を備えたガスクロマトグラフ質量分析装置(ヒューレットパッカード社製;HP6890)を用いて実施した。VOCの測定結果及びその結果から算出されたVOCの除去率を表1に示す。
比較例1
ホプカライト触媒の不在下で、低温プラズマを発生させた場合の処理能力を調べた。具体的には、実施例1で用いた低温プラズマ発生装置50において、ホプカライト触媒を担持した接地側円柱状露出SUS電極群54Bに代えて、ホプカライト触媒を担持していない接地側円柱状露出SUS電極群を有する低温プラズマ発生装置を備えた気体処理装置9を用いること以外は、実施例1と同様に試験を実施した。
被処理気体及び処理済み気体のそれぞれのVOCの濃度と、VOCの除去率を表1に示す。
比較例2
低温プラズマを発生させずに、ホプカライト触媒のみで気体を処理した場合の処理能力を調べた。具体的には、実施例1で用いた低温プラズマ発生装置50において、電圧を印加せずに被処理気体を処理すること以外は、実施例1と同様に試験を実施した。
被処理気体及び処理済み気体のそれぞれのVOCの濃度と、VOCの除去率を表1に示す。

【産業上の利用可能性】
本発明によれば、低温プラズマによって金属酸化物酸化触媒(例えば、ホプカライト触媒)の活性が向上するため、被処理気体中の有害成分(例えば、一酸化炭素、一酸化窒素、又は揮発性有機化合物)を高効率で酸化して無害化し、臭気を無臭化することができる。更に、処理済み気体中から微生物を排除ないし低減化することができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物酸化触媒の存在下で低温プラズマを発生させることを特徴とする気体の処理方法。
【請求項2】
前記金属酸化物酸化触媒がホプカライト触媒又は活性二酸化マンガンである、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
気体状化合物を酸化する、請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項4】
揮発性有機化合物を分解する、請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項5】
悪臭を無臭化する、請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項6】
金属酸化物酸化触媒を保持する低温プラズマ発生部を有することを特徴とする気体の処理装置。
【請求項7】
低温プラズマ発生部が、円筒型電極と、前記円筒型電極の中心軸の位置に配置した棒状電極を備えており、前記円筒型電極の内部表面に粒状触媒表面が露出するように担持された金属酸化物酸化触媒を備えている、請求項6に記載の処理装置。
【請求項8】
低温プラズマ発生部が、円筒型絶縁体と、その円筒型絶縁体の外側表面に接触して設けられた円筒型電極と、前記の円筒型絶縁体の内側表面上に配置された複数の帯状電極と、同じく前記の円筒型絶縁体の内側表面上に配置された金属酸化物酸化触媒とを備え、前記の帯状電極は、円筒型絶縁体の内側表面上を、相互に平行に軸方向に延びており、金属酸化物酸化触媒は、前記の帯状電極の間に粒状触媒表面が露出するように担持されている、請求項6に記載の処理装置。
【請求項9】
低温プラズマ発生部が、ハウジング内部に、相互に放電を行う2群に分かれた多数の円柱状電極を備え、円柱状電極表面に触媒表面が露出するように担持された金属酸化物酸化触媒を備えている、請求項6に記載の処理装置。
【請求項10】
円柱状電極が、
(1)(a)芯電極と、その芯電極の周囲を包囲する円筒状絶縁性鞘体とを含む保護電極と、(b)電極表面が被処理気体と直接接触可能な円柱状露出電極との組み合わせであるか、あるいは、
(2)前記保護電極のみからなる、
請求項9に記載の処理装置。
【請求項11】
低温プラズマ発生部が、ハウジング内部に、(a)芯電極と、その芯電極の周囲を包囲する円筒状絶縁性鞘体とを含む円柱状保護電極と(b)導電性メッシュ状電極とを備え、前記の導電性メッシュ状電極上に触媒表面が露出するように担持された金属酸化物酸化触媒を備えている、請求項6に記載の処理装置。

【国際公開番号】WO2004/112940
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【発行日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507181(P2005−507181)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004521
【国際出願日】平成16年3月30日(2004.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【Fターム(参考)】