説明

酸化還元電流測定装置

【課題】モータの回転数の変動に起因する測定誤差が生じることなく、測定対象成分の濃度に応じた正確な測定値を得ることが可能な酸化還元電流測定装置を提供する。
【解決手段】酸化還元電流測定装置は、モータ31の回転数Rnを検知し、記憶する記憶ステップB1と、回転数Rnと、回転数Rnを検知した時点の回転数制御信号Snと、目標回転数R0と、補正係数Cとを含むデータの演算処理を行い、その結果に基づきモータ31の新たな回転数制御信号Sxを生成し、記憶する回転数制御信号生成ステップB2と、生成した新たな回転数制御信号Sxを出力する回転数制御信号出力ステップB3とを有する回転数制御信号生成工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化還元電流測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水道水、下水、プール水等の残留塩素、塩素要求量、二酸化塩素、亜塩素酸、溶存オゾン、過酸化水素等の測定を目的として、ポーラログラフ方式又はガルバニ電池方式の酸化還元電流測定装置が用いられている。
たとえば、ポーラログラフ方式の酸化還元電流測定装置では、試料水に、白金や金などからなる作用極(検知極)と、銀や鉛などからなる対極とを浸漬し、両極間に所定の電圧を印加して作用極近傍において測定対象成分の電解還元(又は酸化)を生じさせたときに流れる電流を測定することにより測定対象成分の濃度を求めることができる。
【0003】
このような酸化還元電流測定装置において測定される酸化還元電流は、拡散電流と呼ばれ、電解過程で、電極と接し、拡散による物質移動のために溶液本体と濃度勾配を生じている溶液の薄い層(拡散層)の中において、作用極表面に運ばれた測定対象成分が酸化還元されるときに流れる電流である。したがって、測定対象成分の濃度に応じた拡散電流(酸化還元電流)を得るためには、拡散層が常に新しく入れ替わるようにすることが必要である。このため、試料水を作用極表面に対して相対的に流動させることが行われている。試料水を作用極表面に対して相対的に流動させるには、作用極を具備した作用極支持体をモータで回転又は振動(歳差運動)させる方式がある(例えば特許文献1又は特許文献2)。
このような方式では、1分間に数百から数千回転の回転数(例えば、500rpm〜5000rpm程度)でモータを回転させ、試料水の通常の流速よりもはるかに大きい線速度で作用極支持体(作用極)が回転又は振動するようにしている。このため、試料水の流速と無関係に安定な拡散層を得ることができ、試料水の流速の変動による測定値への影響を受けにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−30764号公報
【特許文献2】特開2002−90339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、作用極支持体(作用極)の回転又は振動する速度が変動することにより、酸化還元電流測定装置において測定される酸化還元電流の値は変動し、正確な濃度を求めることができない。すなわち、モータを用いて作用極支持体(作用極)に回転又は振動を与えたとしても、その回転数(又は振動数)にムラがあると、測定対象成分の濃度に応じた正確な測定値が得られない。
【0006】
ところが、モータは、無負荷状態であってもその最大回転数に十数パーセント程度のムラ(許容誤差)がある。また、酸化還元電流測定装置のモータの回転軸には作用極支持体が連結されているので、負荷(トルク)が大きくなっている。このため、正確な測定に必要とされる回転数よりも最大回転数の大きいモータを取り付け、一定の回転数制御信号を与えることにより、最大回転数よりも低い回転数(例えば40%程度)で一定の回転数を保つようにすることが行われている。しかし、その場合でも、電源投入後しばらくの間は、検出部の構成部品間の接触部分の摩擦が大きい(いわゆる「なじみ」がない)こと等により、所望の回転数になるまでに長時間を要し、暖機運転の時間を長くとらなければ正確な測定値が得られないという問題があった。また、一旦所望の回転数に到達した後でも、周囲環境(主に温度)の変化や部品の磨耗・劣化等により負荷(トルク)が変動することや、モータ自体が劣化したりすること等により回転数が変動してしまい、その結果、正確な測定値が得られないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明は、以下の構成を採用した。
[1]作用極と、対極と、前記作用極を具備する作用極支持体と、該作用極支持体を回転又は振動させるモータとを備え、前記作用極支持体を回転又は振動させつつ作用極と対極との間に流れる酸化還元電流を測定する酸化還元電流測定装置において、前記モータの回転数を検知する検知手段と、前記モータの目標回転数を記憶する記憶手段と、前記検知手段が検知した回転数と、前記記憶手段が記憶している目標回転数と、を含むデータの演算処理を行い、該演算処理の結果に基づきモータの回転数制御信号を生成して出力する演算制御手段と、を備えることを特徴とする酸化還元電流測定装置。
[2]前記回転数制御信号は、一定の周波数を有するパルス波であり、該パルス波のデューティ比を変化させることによりモータの回転数を制御することを特徴とする[1]に記載の酸化還元電流測定装置。
【0008】
[3]作用極と、対極と、前記作用極を具備する作用極支持体と、該作用極支持体を回転又は振動させるモータと、前記作用極と前記対極との間に流れる酸化還元電流を測定する測定部と、前記モータの回転数を検知する検知部と、前記モータの回転数を制御するための回転数制御信号を出力し、かつ、全体を制御する演算制御部と、前記モータの目標回転数と、前記検知部が検知したモータの回転数の変化量と前記回転数制御信号の変化量との関係から得られる補正係数と、を記憶する記憶部と、を備え、前記演算制御部により、以下のステップ(1)〜(3)を順に有する回転数制御信号生成工程を行うように制御されることを特徴とする酸化還元電流測定装置。
(1)モータの回転数を検知し、記憶する記憶ステップ。
(2)記憶ステップで記憶した回転数と、該回転数を検知した時点の回転数制御信号と、前記目標回転数と、前記補正係数とを含むデータの演算処理を行い、該演算処理の結果に基づきモータの新たな回転数制御信号を生成し、記憶する回転数制御信号生成ステップ。
(3)生成した新たな回転数制御信号を出力する回転数制御信号出力ステップ。
【0009】
[4]前記記憶部が、さらに前記モータの回転数を制御する基準信号を記憶するものであって、前記演算制御部により、以下のステップ(1)〜(5)を順に有する補正係数算出工程を行うように制御されることを特徴とする[3]に記載の酸化還元電流測定装置。
(1)モータの回転数を制御する第1基準信号を出力する第1基準信号出力ステップ。
(2)第1基準信号により制御されたモータの回転数を検知し、記憶する第1記憶ステップ。
(3)モータの回転数を制御する第2基準信号を出力する第2基準信号出力ステップ。
(4)第2基準信号により制御されたモータの回転数を検知し、記憶する第2記憶ステップ。
(5)第1記憶ステップで記憶した回転数と第2記憶ステップで記憶した回転数との差から算出されるモータの回転数の変化量と、第1基準信号と第2基準信号との差から算出される回転数制御信号の変化量とから前記補正係数を演算し、記憶する補正係数演算ステップ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モータの回転数の変化に応じて回転数制御信号を変化させることができるため、常に目標回転数付近の回転数を維持することが可能となる。このため、酸化還元電流測定装置の暖機運転の時間を短くすることができる。また、周囲環境の変化や部品の磨耗・劣化等が生じても、モータの回転数の変動に起因する測定誤差が生じることを防止し、測定対象成分の濃度に応じて正確に測定することができる酸化還元電流測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る酸化還元電流測定装置の全体構成の模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る酸化還元電流測定装置の検出部の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る酸化還元電流測定装置の補正係数算出工程のフロー図である。
【図4】本発明の実施形態に係る酸化還元電流測定装置の回転数制御信号生成工程のフロー図である。
【図5】本発明の実施形態に係る酸化還元電流測定装置の動作手順のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の酸化還元電流測定装置は、作用極37、対極38及びモータ31等から構成されている検出部1と、作用極37と対極38との間に電圧を印加して両極に流れる酸化還元電流(拡散電流)を測定する測定部2と、モータ31の回転数を検知する検知部3(検知手段)と、全体を制御する演算制御部4(演算制御手段)と、記憶部5(記憶手段)と、を備えている。
【0013】
検出部1は、図2に示すように、略円筒状のケース10と、軸中心部に貫通穴が穿設されたホルダ20とを備えている。また、試料水が連続して導入・排出されるようになっているフローセル(図示せず)に浸漬されている。
【0014】
ホルダ20の上部(ケース10の内部)には、PWM制御により回転速度をコントロールすることができるモータ31が取り付けられており、モータ31の回転軸32には、偏芯カップリング33が固着されている。なお、PWM制御については後に詳述する。
偏芯カップリング33には、略棒状に形成された連結軸34が連結され、連結軸34の偏芯カップリング33に連結している部位は、回転軸32を中心とした円運動を行うようになっている。
連結軸34の下端から約1/3の部位には、円形状のフランジ35がホルダ20の内周面に接するようにして保持されている。フランジ35の下面には作用極支持体36が連結されており、作用極支持体36はフランジ35を支点として振動(歳差運動)するように構成されている。すなわち、フランジ35は、ケース10内に試料水が浸入しないようにするシール材としての機能及び作用極支持体36が歳差運動(すりこぎ運動)をするための支点としての機能を有している。したがって、フランジ35は、弾力性を有する材質、例えば、軟質フッ素系樹脂やシリコンゴム等からなることが好ましい。
【0015】
作用極支持体36の下端部には、金(Au)からなる作用極37が固着されている。
ホルダ20の下端近くに形成された凹部には、全周にわたり塩化銀線(AgCl)からなる対極38が巻きつけられている。
ホルダ20の軸方向略中央部には、上下一対の円形の窓41が穿設され、試料水が流通できるように構成されている。
ホルダ20の下端には、キャップ42が保持され、キャップ42の内部には、作用極37を研磨(洗浄)するためのビーズ43が多数収納されている。
【0016】
作用極37及び対極38は、ケース10の上端開口部に設けられたコネクタ50に電気的に接続されており、ケーブルを介して測定部2に接続されている。
コネクタ50には、また、モータ31が電気的に接続されており、ケーブルを介して検知部3及び演算制御部4に接続されている。
コネクタ50には、さらに、ホルダ20内部に備えられ試料水の温度を測定する白金測温抵抗体(図示せず)が電気的に接続されており、ケーブルを介して演算制御部4に接続されている。
【0017】
測定部2は、作用極37と対極38との間に電圧を印加して両極に流れる酸化還元電流(拡散電流)を測定し、その測定値を演算制御部4に送るようになっている。
検知部3は、モータ31の回転数を検知してその値を演算制御部4に送るようになっている。本実施形態において検知部3は、モータ31に備えられた回転周期パルス信号出力機能により構成されている。
【0018】
演算制御部4は、酸化還元電流測定装置全体の動作を制御し、入力されたデータを必要に応じて記憶部5に記憶させるようになっている。また、測定部2から入力された測定値等から測定対象成分の濃度を求めるようになっている。さらに、演算制御部4は、検知部3から入力されたモータ31の回転数と記憶部5に記憶されたモータ31の目標回転数とを含むデータの演算処理を行い、その結果に基づき出力すべき回転数制御信号を生成し、出力するようになっている。なお、演算制御部4は、演算を行うことなく、あらかじめ記憶部5に記憶されている回転数制御信号を出力することもできる。
また、本実施形態の酸化還元電流測定装置には、図示しない表示部や出力部が設けられ、測定値等をディスプレイに表示することや、外部機器との間で信号の入出力を行うことができるようになっている。
【0019】
次に、本実施形態の動作を説明する。
本実施形態の酸化還元電流測定装置に電源が投入されると、演算制御部4は、装置全体の制御を開始する。演算制御部4は、あらかじめ記憶部5に記憶されている回転数制御信号を出力する。
モータ31は、演算制御部4から出力された信号に基づき動作を開始し、回転軸32が回転する。このとき、連結軸34の偏芯カップリング33に連結している部位は、回転軸32を中心とした円運動を行い、作用極支持体36はフランジ35を支点として振動(歳差運動)する。これにより、フローセル内を流通する試料水の通常の流速とは無関係に、試料水を作用極表面に対して相対的に流動させることができる。
【0020】
測定部2は、作用極37と対極38との間に電圧を印加して両極に流れる酸化還元電流(拡散電流)を測定して演算制御部4に送る。演算制御部4は、測定部2が測定した酸化還元電流の測定値及び白金測温抵抗体が測定した試料水の温度の値等から測定対象成分の濃度を求め、そのデータを記憶部5、表示部、出力部等に送る。
なお、酸化還元電流の測定は、酸化還元電流測定装置の動作中、連続的に行われる。
【0021】
ここで、安定な拡散層を得て、測定対象成分の濃度に応じた酸化還元電流を正確に測定するためには、1分間に数百から数千回転の回転数(例えば、500rpm〜5000rpm程度)でモータを回転させ、常に一定の速さで作用極支持体36を振動させる必要がある。
【0022】
モータの回転数は、一般に、PWM制御によりコントロールすることができる。PWM制御とは、パルス幅変調(Pulse Width Modulation)方式による制御方法をいい、パルス波のデューティ比(オン・オフの割合)を変化させて信号を変調し、制御を行うものである。すなわち、適当なデューティ比となるようなパルス波を回転数制御信号として出力することにより、モータへの印加電圧をオン・オフさせてモータの回転数を制御することができる。
したがって、理論的には、デューティ比を一定にすれば、モータの回転数を一定に維持することができる。しかし、実際には、周囲環境(主に温度)の変化、部品間の「なじみ」、部品の磨耗・劣化等により負荷(トルク)が変動することや、モータ自体が劣化したりすること等により回転数は変動する。
【0023】
例えば、本願発明者らの実験によれば、デューティ比を一定とし、周囲温度を変化させたときのモータの回転数は、25℃のときには3125rpm、5℃のときには2564rpm、45℃のときには3333rpmのように変動した。また、デューティ比を一定とし、周囲温度を20℃に保ち、電源投入から連続してモータの回転数を観察したところ、電源投入直後は1800rpmであり、6時間後は3800rpm、21時間後は4200rpmのように変動した。
【0024】
本実施形態の酸化還元電流測定装置は、PWM制御により回転速度をコントロールすることができるモータを採用している。したがって、デューティ比を変化させることにより、モータ31の回転数を変化させることができる。このため、モータ31の回転数が目標回転数と解離している場合には、デューティ比を変化させることにより目標回転数に近づけることができる。
【0025】
以下、図3を参照して、本実施形態におけるモータ31の回転数を制御するための工程を説明する。
[補正係数算出工程]
補正係数算出工程は、図3に示すように、第1基準信号S1を出力する第1基準信号出力ステップA1と、第1基準信号S1により制御されたモータ31の回転数R1を検知し、記憶する第1記憶ステップA2と、第2基準信号S2を出力する第2基準信号出力ステップA3と、第2基準信号S2により制御されたモータ31の回転数R2を検知し、記憶する第2記憶ステップA4と、回転数R1と回転数R2との差から算出されるモータ31の回転数の変化量と、第1基準信号S1と第2基準信号S2との差から算出される回転数制御信号の変化量との関係から得られる補正係数Cを演算し、記憶する補正係数記憶ステップA5とを有している。
【0026】
第1基準信号出力ステップA1では、モータ31の回転数を制御する第1基準信号S1を演算制御部4が出力する。第1基準信号S1は、一定の周波数を有するパルス波である。第1基準信号S1は、モータの仕様、検出器の構成及び測定条件等に応じて適宜決定され、あらかじめ記憶部5に記憶されるようになっている。例えば、モータの無負荷最大回転数が8000rpmであり、目標回転数を3000rpmとしたい場合の第1基準信号S1は、デューティ比が50%となるようなパルス波が出力されるように生成することができる。
第1記憶ステップA2では、第1基準信号S1により制御されたモータ31の回転数R1を検知部3が検知し、演算制御部4に送る。続いて、演算制御部4は、検知部3から入力されたデータを記憶部5に記憶させる。
【0027】
第2基準信号出力ステップA3では、モータ31の回転数を制御する第2基準信号S2を演算制御部4が出力する。第2基準信号S2は、第1基準信号S1と同一の周波数を有するパルス波であるが、第1基準信号S1とは異なるデューティ比を有するものである。第2基準信号S2は、あらかじめ記憶部5に記憶しておいてもよいし、回転数R1や第1基準信号S1をもとに生成してもよい。
第2記憶ステップA4では、第2基準信号S2により制御されたモータ31の回転数R2を検知部3が検知し、演算制御部4に送る。続いて、演算制御部4は、検知部3から入力されたデータを記憶部5に記憶させる。
【0028】
補正係数記憶ステップA5では、第1記憶ステップA2で記憶した回転数R1と第2記憶ステップA4で記憶した回転数R2との差から算出されるモータ31の回転数の変化量と、第1基準信号S1と第2基準信号S2との差から算出される回転数制御信号の変化量とから補正係数Cを演算制御部4が演算し、記憶部5に記憶させる。
補正係数Cは、例えば、(R2−R1)/(S2−S1)のような式により算出することができる。
【0029】
[回転数制御信号生成工程]
回転数制御信号生成工程は、図4に示すように、モータ31の回転数Rnを検知し、記憶する記憶ステップB1と、回転数Rnと、回転数Rnを検知した時点の回転数制御信号Snと、目標回転数R0と、補正係数Cとを含むデータの演算処理を行い、その結果に基づきモータ31の新たな回転数制御信号Sxを生成し、記憶する回転数制御信号生成ステップB2と、生成した新たな回転数制御信号Sxを出力する回転数制御信号出力ステップB3とを有している。
【0030】
記憶ステップB1では、モータ31の回転数Rnを検知部3が検知し、演算制御部4に送る。続いて、演算制御部4は、検知部3から入力されたデータを記憶部5に記憶させる。
回転数制御信号生成ステップB2では、回転数Rnと、回転数制御信号Snと、目標回転数R0と、補正係数Cとを含むデータの演算処理を行い、その結果に基づきモータ31の新たな回転数制御信号Sxを生成し、記憶部5に記憶させる。なお、目標回転数R0は、あらかじめ記憶部5に記憶されている。
この演算処理は、例えば、Sn+(R0−Rn)/Cのような式により行うことができる。
回転数制御信号出力ステップB3では、生成した新たな回転数制御信号Sxを演算制御部4が出力する。回転数制御信号Sn及びSxは、第1基準信号S1及び第2基準信号S2と同一の周波数を有するパルス波である。
【0031】
本実施形態の酸化還元電流測定装置のフローを、図5を参照しながら説明する。
酸化還元電流測定装置に電源を投入すると、補正係数算出工程が開始される。すなわち、演算制御部4が、記憶部5に記憶している第1基準信号S1を出力する(第1基準信号出力ステップA1)。続いて、検知部3が、モータ31の回転数R1を検知し、演算制御部4に送る。そして、演算制御部4は、検知部3から入力されたデータを記憶部5に記憶させる(第1記憶ステップA2)。
次に、演算制御部4が、第1基準信号S1とは異なるデューティ比を有する第2基準信号S2を出力する(第2基準信号出力ステップA3)。続いて、検知部3が、モータ31の回転数R2を検知し、演算制御部4に送る。そして、演算制御部4は、検知部3から入力されたデータを記憶部5に記憶させる(第2記憶ステップA4)。
次に、回転数R1と回転数R2との差から算出されるモータ31の回転数の変化量と、第1基準信号S1と第2基準信号S2との差から算出される回転数制御信号の変化量とから補正係数Cを演算制御部4が演算し、記憶部5に記憶させる(補正係数記憶ステップA5)。
【0032】
本実施形態の酸化還元電流測定装置は、次に、回転数制御信号生成工程を行う。
ここでは、記憶ステップB1が省略されている。なぜなら、補正係数算出工程の第2記憶ステップA4で記憶したモータ31の回転数R2をRnとみなすことができるからである。
したがって、演算制御部4は、補正係数算出工程に続いて回転数制御信号生成ステップB2を行う。すなわち、回転数Rn(R2)と、回転数制御信号Sn(S2)と、目標回転数R0と、補正係数Cとを含むデータの演算処理を行い、その結果に基づきモータ31の新たな回転数制御信号Sxを生成し、記憶部5に記憶させる。
この演算処理は、例えば、S2+(R0−R2)/Cのような式により行われる。
次に、演算制御部4は、生成した新たな回転数制御信号Sxを出力する(回転数制御信号出力ステップB3)。そして、演算制御部4は、記憶ステップB1を行い、以後、回転数制御信号生成工程を繰り返し行う。
【0033】
本実施形態の酸化還元電流測定装置は、このような工程を行うことにより、モータ31の回転数を目標回転数に近づけることができる。その結果、モータ31の回転数を一定に維持することができるようになり、モータ31の回転数の変動に起因する測定誤差が生じることを防止し、測定対象成分の濃度に応じて正確に測定することができる。
【0034】
なお、補正係数算出工程は、電源投入後の1回行うだけでなく、回転数制御信号生成工程の実行後都度行うことや回転数制御信号生成工程が複数回繰り返された後に再び行うようにしてもよい。
回転数制御信号生成工程は、測定部2が測定するデータの変動が大きかったり、所定の範囲から外れたりする場合にのみ行うようにすることもできる。しかし、モータの回転数の変化に応じて回転数制御信号を変化させ、常に目標回転数付近の回転数を維持するためには、回転数制御信号生成工程は、所定時間毎に行うことが好ましい。例えば1秒毎に記憶ステップB1を行い、順次ステップを繰り返すことができる。
【0035】
酸化還元電流測定装置は、記憶ステップB1で記憶した回転数Rnと目標回転数R0との差が、所定範囲内である場合には、回転数制御信号生成ステップB2及び回転数制御信号出力ステップB3をスキップするよう構成されていてもよい。
また、記憶ステップB1において、モータ31の回転数が検知できない場合には、モータ31の電源をオン・オフさせて再駆動させる回路を備えることができる。さらに、モータ31の回転数が所定回数検知できない場合に、エラー信号を出力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…検出部、2…測定部、3…検知部、4…演算制御部、5…記憶部、10…ケース、20…ホルダ、31…モータ、32…回転軸、33…偏芯カップリング、34…連結軸、35…フランジ、36…作用極支持体、37…作用極、38…対極、41…窓、42…キャップ、43…ビーズ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用極と、対極と、前記作用極を具備する作用極支持体と、該作用極支持体を回転又は振動させるモータとを備え、前記作用極支持体を回転又は振動させつつ作用極と対極との間に流れる酸化還元電流を測定する酸化還元電流測定装置において、
前記モータの回転数を検知する検知手段と、
前記モータの目標回転数を記憶する記憶手段と、
前記検知手段が検知した回転数と、前記記憶手段が記憶している目標回転数と、を含むデータの演算処理を行い、該演算処理の結果に基づきモータの回転数制御信号を生成して出力する演算制御手段と、
を備えることを特徴とする酸化還元電流測定装置。
【請求項2】
前記回転数制御信号は、一定の周波数を有するパルス波であり、該パルス波のデューティ比を変化させることによりモータの回転数を制御することを特徴とする請求項1に記載の酸化還元電流測定装置。
【請求項3】
作用極と、対極と、前記作用極を具備する作用極支持体と、
該作用極支持体を回転又は振動させるモータと、
前記作用極と前記対極との間に流れる酸化還元電流を測定する測定部と、
前記モータの回転数を検知する検知部と、
前記モータの回転数を制御するための回転数制御信号を出力し、かつ、全体を制御する演算制御部と、
前記モータの目標回転数と、前記検知部が検知したモータの回転数の変化量と前記回転数制御信号の変化量との関係から得られる補正係数と、を記憶する記憶部と、を備え、
前記演算制御部により、以下のステップ(1)〜(3)を順に有する回転数制御信号生成工程を行うように制御されることを特徴とする酸化還元電流測定装置。
(1)モータの回転数を検知し、記憶する記憶ステップ。
(2)記憶ステップで記憶した回転数と、該回転数を検知した時点の回転数制御信号と、前記目標回転数と、前記補正係数とを含むデータの演算処理を行い、該演算処理の結果に基づきモータの新たな回転数制御信号を生成し、記憶する回転数制御信号生成ステップ。
(3)生成した新たな回転数制御信号を出力する回転数制御信号出力ステップ。
【請求項4】
前記記憶部が、さらに前記モータの回転数を制御する基準信号を記憶するものであって、
前記演算制御部により、以下のステップ(1)〜(5)を順に有する補正係数算出工程を行うように制御されることを特徴とする請求項3に記載の酸化還元電流測定装置。
(1)モータの回転数を制御する第1基準信号を出力する第1基準信号出力ステップ。
(2)第1基準信号により制御されたモータの回転数を検知し、記憶する第1記憶ステップ。
(3)モータの回転数を制御する第2基準信号を出力する第2基準信号出力ステップ。
(4)第2基準信号により制御されたモータの回転数を検知し、記憶する第2記憶ステップ。
(5)第1記憶ステップで記憶した回転数と第2記憶ステップで記憶した回転数との差から算出されるモータの回転数の変化量と、第1基準信号と第2基準信号との差から算出される回転数制御信号の変化量とから前記補正係数を演算し、記憶する補正係数演算ステップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−185678(P2010−185678A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28262(P2009−28262)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)