説明

酸化防止用オイルポット

【課題】収納したオイルと空気の接触を完全に遮断することができる酸化防止用オイルポットを提供する。
【解決手段】上部が開放したオイル収納容器1内に挿入する蓋部材2が、オイル油面に対して浮上する浮力のフロート3と、このフロート3の外周に設けられ、外径が変化する径方向の伸縮性を有するシール部4bを備え、この蓋部材2に設けた拡径機構5の拡径時にシール部4bの外周をオイル収納容器1の内周に弾力的に圧接させ、また、前記拡径機構5を拡径弾性に抗して縮径状態に係止することでオイル収納容器1内に対する蓋部材2の抜き差しが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オイル収納容器内に収容して保存するオイルを空気に触れないように密閉し、空気による劣化の発生を防ぐことができる酸化防止用オイルポットに関する。
【背景技術】
【0002】
食用油等のオイルは、オイルポットに入れて保存するのが一般的であるが、オイルは空気に触れると酸化して時間の経過と共に劣化するという性質があり、このため、オイルを空気から遮断して収容保存することができるようにするための酸化防止用オイルポットが提案されている。
【0003】
従来の酸化防止用オイルポットは、オイルを収容するポット本体と該ポット本体内に上下動自在に配置された蓋部材とを有し、上記蓋部材の周面には少なくとも3個のボ−ルを自由回転可能に設け、且つ蓋部材の中心部にはオイル流入口を形成し、該流入口には下方から塞ぐ内栓を配置し、該内栓には流入口を貫通して蓋部材の上方へ突出するつまみを形成し、上記ポット本体内側周面には上記ボ−ルに係合する案内溝を上下方向に形成するとともに、上記蓋部材と内栓の比重をオイルの比重よりも小さく、且つ内栓の比重を蓋部材よりも大きく設定した構造になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記酸化防止用オイルポットは、オイルと蓋部材及び内栓の比重を利用し、蓋部材が挿入されているポット本体内に蓋部材の上からオイルが充填されると、オイルは内栓よりも比重が大きいので、オイル流入口と内栓の隙間から蓋部材の下面側に流入して蓋部材が上昇し、内栓は蓋部材より比重が大きいので流入口からオイルが全て入った後、上昇力で流入口を自動的に塞ぎ、これによって、空気とオイルの接触を蓋部材で遮断しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3022287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した従来の酸化防止用オイルポットは、蓋部材を浮力によって上下動させることになるが、蓋部材は、ポット本体に対して水平状態で円滑に上下動できなければ「こじれ」が生じ、「こじれ」が生じて蓋部材が傾くと、油面と蓋部材の下面の間にある空気層を確実に排出することができず、オイルの酸化防止の目的を達成することができないと共に、ポット本体に対して蓋部材を浮力だけで円滑に上下動させようとすると、その外周とポット本体の内周面との水密性の確保が困難になり、構造上どうしても蓋部材の外周とポット本体の内周面に隙間が必要となり、この隙間によってオイルの酸化防止機能が低下するという問題がある。
【0007】
また、蓋部材は単純な円板状であるため、その下面とオイル油面上との間の空気を流入口に逃がす機能はなく、このためオイル油面上との間に気泡が生じたような場合、この気泡が閉じ込められ、オイルが酸化するという問題がある。
【0008】
更に、流入口を閉じる内栓の閉鎖力はオイルに対する浮力を利用しているため、流入口を密閉するという機能はなく、実際には流入口と内栓の間にオイルが介在し、この介在したオイルが蓋部材の上面で空気と接触することになり、これが原因でオイルが酸化することになる。
【0009】
そこで、この発明の課題は、オイル収納容器内に挿入した蓋部材を油面の上に浮上させた状態で、この蓋部材の外周シール部を拡径させてシールすることにより、オイル収納容器を密閉する蓋部材の下面から確実に空気を排除し、収納したオイルと空気の接触を完全に遮断した密閉状態が得られる酸化防止用オイルポットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明は、上部が開放したオイル収納容器と、このオイル収納容器内に上下への移動が可能となるよう挿入し、このオイル収納容器内を密閉するための蓋部材とからなり、前記蓋部材は、オイル油面に対して浮上する浮力と、外径が変化する径方向の伸縮性を有するシール部材を備え、この蓋部材に、外周の配置径が拡径及び縮径自在となり、拡径時にシール部材の外周をオイル収納容器の内周に弾力的に圧接させる拡径機構と、前記拡径機構を拡径弾性に抗して縮径状態に係止し、係止を解くことで拡径機構を拡径させる縮径保持機構を設けたものである。
【0011】
上記蓋部材は、下面側に突出する円錐形のフロートと、前記フロートの上部に位置し、伸縮性材料を用いて平面円板状に形成され、拡径状態で外周がオイル収納容器の内周に圧接してオイル収納容器内を密閉するシール部材とからなり、上記拡径機構は、フロートの上面とシール部材の間に組み込まれ、平面円形のリング状に配置した複数枚の羽根板を半径方向に移動させることによりリング状配置の外径が変化し、縮径状態でシール部材の押し広げを解き、拡径状態でシール部材を押し広げる羽根板リングと、各羽根板に常時半径方向の外方に向けての移動弾性を付勢するスプリングで形成され、上記縮径保持機構は、フロートの上面にシール部材を貫通するよう突設した筒体の上端に、上昇位置と下降位置に係止可能となる操作摘みを設け、この操作摘みと上記各羽根板を、操作摘みの上昇位置で各羽根板を半径方向内側に引圧して拡径機構の縮径状態を保持し、操作摘みの下降位置で各羽根板の引圧を解いて拡径機構を拡径させるように可撓性連結部材で連結して形成されている構造とすることができる。
【0012】
上記蓋部材のフロートによって得られる浮力は、オイル収納容器内のオイル油面に対して蓋部材が浮上する状態で、シール部材の外周下部がオイル油面に一致するように設定されているようにしてもよい。
【0013】
ここで、上記オイル収納容器は、周壁が円筒状となる有底容器に形成され、前記周壁の内径と上記蓋部材に設けたシール部材の外径の関係は、シール部材が縮径状態にあるとき周壁の内径よりも小径となり、オイル収納容器に対する蓋部材の出し入れを自由にしていると共に、シール部材は最大拡径の途中で周壁の内径に圧接し、周壁内を密閉するように設定されている。
【0014】
上記蓋部材におけるフロートは、外径が上記周壁の内径よりも小径となる内部中空の円錐形に形成され、下向きの円錐形にすることで、オイル収納容器内の油面に浮上させたとき、下部尖端からオイルに浸入することでオイルとの間にある空気を上部外周に逃がすことができ、これにより、オイルとの界面に空気が残置することのないようにできる。
【0015】
上記シール部材は、ゴムやシリコンのような伸縮性のある弾性材料を用い、上記フロートの外側全体を包むような比較的薄い膜状の構造になっており、フロートの円錐面に重なる円錐部分と、この円錐部分の外周から立ち上がる筒状のシール部分と、前記シール部分の上端と連なってフロートの上面を覆う円板状の上板とで形成され、前記筒状のシール部分がフロートの外周に位置している。
【0016】
上記拡径機構の羽根板リングは、フロートの上面とシール部材における上板の間に確保した隙間に納まり、この羽根板リングの形成に用いる羽根板は、平面扇形で内径側に低い立ち上がり片を設けた形状を有し、複数枚の羽根板を一部が重なるように平面円形のリング状に配置し、前記羽根板に設けた半径方向の長孔と、この長孔に嵌るようフロートの上面に設けたガイドピンによって、各羽根板の半径方向の移動を誘導するようにしている。
【0017】
上記フロートの上面中央にシール部材の上板を貫通するよう突設した筒体の外周と、各羽根板の立ち上がり片の間にスプリングを縮設することにより、各羽根板に半径方向外側に向けての移動弾性を付勢し、羽根板リングが拡径するようになっている。
【0018】
この羽根板リングが拡径すると、各羽根板は外周縁でシール部材のシール部を内側から押し広げ、前記シール部を拡径状態にする。
【0019】
上記縮径保持機構は、フロートの上面にシール部材を貫通するよう突設した筒体の上端に凹欠部を設け、この筒体の上部に上下動と回転が可能となるよう挿入した操作摘みに係止ピンを設け、操作摘みを引上げて係止ピンを筒体の上端に位置させた上昇位置と、係止ピンを凹欠部に落とし込んだ下降位置とにすることができる。
【0020】
上記操作摘みは、ワイヤーや紐を用いて各羽根板の立ち上がり片と連結され、操作摘みが上昇位置にあるとき各羽根板は半径方向内側に引圧され、羽根板リングは縮径状態に保持され、係止ピンを凹欠部に落とし込んだ下降位置にすると、各羽根板の引圧が解かれることで羽根板リングは拡径することになる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によると、オイル収納容器内に挿入した蓋部材をオイル油面に対して浮上させた状態で、操作摘みを下降位置にするとシール部が自動的に拡径し、オイル収納容器の内周にシール部を圧着させ、オイル収納容器内を蓋部材で弾力的に密閉することで、オイル収納容器内のオイルを空気と完全に遮断することができ、オイル収納容器内に収納したオイルの酸化による劣化発生を確実に防ぐことができる。
【0022】
また、蓋部材におけるフロートを下向きの円錐形にすることで、蓋部材をオイル収納容器内の油面に浮上させたとき、下部尖端からオイルに浸入することでオイル油面との間にある空気を上部外周に逃がすことができ、これにより、オイルとの界面に空気や気泡が残置することがなく、オイルの酸化による劣化発生をより確実に防ぐことができる。
【0023】
更に、蓋部材におけるフロートの浮力を、オイル収納容器内のオイル油面に対して蓋部材が浮上する状態で、シール部材の外周下部がオイル油面に一致するように設定することで、シール部の拡径によるシール時に、シール部分に空気が残置したり閉じ込めることがなく、空気を確実になくしてオイルの酸化による劣化発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明に係る酸化防止用オイルポットを示し、オイル収納容器内に挿入した蓋部材を押し下げる前の状態の要部を切り欠いた正面図
【図2】この発明に係る酸化防止用オイルポットを示し、オイル収納容器内を挿入した蓋部材で密閉した状態の要部を切り欠いた正面図
【図3】この発明に係る酸化防止用オイルポットを示し、オイル収納容器内を挿入した蓋部材で密閉した状態の要部を拡大した縦断正面図
【図4】図1の矢印IV−IVに沿って拡大した横断平面図
【図5】図2の矢印V−Vに沿って拡大した横断平面図
【図6】羽根板リングの形成に用いる羽根板を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の実施の形態を図示例に基づいて説明する。
【0026】
図1乃至図3のように、この発明の酸化防止用オイルポットAは、ガラス、金属、プラスチック、陶器等を材料に用い、上部が開放した周壁1aが円筒状となる有底状のオイル収納容器(オイルポット)1と、このオイル収納容器1内に挿入し、オイル収納容器1内を密閉する蓋部材2との組み合わせによって形成されている。
【0027】
図示の場合、オイル収納容器1における周壁1aの上端は、外側に向けて広がる傾斜部1bとし、周壁1a内に対する蓋部材2の挿入を容易にしていると共に、このオイル収納容器1は不透明材料で形成するのが好ましいが、例えば、周壁1aの一部を透明に形成するようにすれば、収納したオイルaの油面確認が容易となる。
【0028】
上記蓋部材2は、オイル収納容器1内のオイル油面に対して浮上する浮力のフロート3と、このフロート3の外側を包み、外径が変化する径方向の伸縮性を有するシール部材4と、前記フロート3の上面とシール部材4の間に組み込まれ、シール部材4の外径を拡径及び縮径させるための拡径機構5と、フロート3の上面中央位置に設けられ、前記拡径機構5を拡径弾性に抗して縮径状態に保持し、この保持を解くことでシール部材4の外径を自動的に拡径させることができる縮径保持機構6とで形成されている。
【0029】
上記フロート3は、金属やプラスチック等を用い、フラットな円形上壁3aの下面側に、外周から下方中央に突出する円錐壁3bを設け、内部が空洞となって浮力を確保した円錐体に形成され、前記円形上壁3aの外径はオイル収納容器1における周壁1aの内径よりも小径になっている。
【0030】
上記シール部材4は、ゴムやシリコンのような伸縮性と遮水性があり、オイルaと接触しても劣化の発生が少なく、オイルaに有害物質が溶け出ることのない弾性材料を用い、上記フロート3の外側全体を包むような比較的薄い膜状の構造になっており、フロート3の円錐壁3bの外面に重なる薄い円錐部4aと、この円錐部4aの外周からフロート3の上面よりも上方に立ち上がる少し厚みを持たせた円筒状のシール部4bと、前記シール部4bの上端と連なってフロート3の円形上壁3aを覆う円板状の上板部4cとで形成され、前記円筒状のシール部4bがフロート3の外周に対して上部に位置している。
【0031】
上記拡径機構5は、フロート3の円形上壁3aとシール部材4の上板部4c間に設けた隙間に組み込まれ、外径が可変となる羽根板リング7と、この羽根板リング7に常時拡径する方向の弾性を付勢するスプリング8からなり、前記羽根板リング7は、複数枚の羽根板9を平面円形のリング状に並べることにより形成され、フロート3と平面的に同軸心となるよう配置され、各羽根板リング7を半径方向に移動させることによりリング状配置の外径が変化し、縮径状態でシール部4bの押し広げを解き、拡径状態でシール部4bを内側から押し広げるように形成されている。
【0032】
図6のように、羽根板9は、金属やプラスチック等を用い、平面扇形板9aの内径縁側に低い立ち上がり片9bを設けた形状を有し、複数枚、例えば図4と5の場合8枚の羽根板9を周方向の一部が重なるように平面円形のリング状に配置して羽根板リング7を形成し、各羽根板9は、この羽根板9の半径方向に沿って設けた長孔10と、この長孔10に嵌るよう、フロート3の円形上壁3aに設けた断面長円状のガイドピン11によって、半径方向の移動が誘導されるようになっている。
【0033】
図1と図4は、各羽根板9が半径方向の内側に集合し、羽根板リング7の外径が最も小さい縮径状態を示し、羽根板リング7の外径はシール部4bの内径よりも小径となり、シール部4bは収縮弾性によりその内径がフロート3の外径にまで縮まり、このシール部4bの外径はオイル収納容器1の周壁1aの内径よりも少し小径となり、従って、オイル収納容器1の周壁1a内に対して蓋部材2の出し入れを自由にしている。
【0034】
各羽根板9は、上記フロート3の上面中央にシール部材4の上板部4cを貫通するよう突設した筒体12の外周と、各羽根板9の立ち上がり片9bの間に縮設したスプリング8により、半径方向外側に向けての移動弾性が付勢され、羽根板リング7が拡径すると、図3のように、各羽根板9は円弧状となる外周縁でシール部材4のシール部4bを内側から押し広げ、前記シール部4bを拡径状態にすることで周壁1aの内周面に圧接させることになる。
【0035】
上記縮径保持機構6は、フロート3の上面中央位置にシール部材4の上板部4cを貫通するよう突設した筒体12の上端に凹欠部13を設け、この筒体12の上部に上下動と回転が可能となるよう挿入した操作摘み14の軸部外面に係止ピン15を設け、図1のように、操作摘み14を引上げて係止ピン15を筒体12の上端に位置させた上昇位置と、図2のように、係止ピン15を凹欠部13に落とし込んだ下降位置とにすることができる構造になっている。
【0036】
上記操作摘み14の軸部下端と各羽根板9の立ち上がり片9bが、筒体12内に納まる可撓性連結部材であるワイヤーや紐16を用いて連結され、図1のように、係止ピン15を筒体12の上端に係止させて操作摘み14を上昇位置にすると、ワイヤーや紐16によって各羽根板9は半径方向の内側に引圧され、図4で示したように、羽根板リング7は縮径状態に保持され、また、図2のように、操作摘み14を回転操作することで係止ピン15を凹欠部13に落とし込んだ下降位置にすると、図5で示したように、各羽根板9の引圧が解かれることで羽根板リング7は拡径することになる。なお、ワイヤーや紐16は、筒体12の内側下部に設けた誘導部17によって折れ曲がり部分が誘導されている。
【0037】
上記蓋部材2において、フロート3によって得られる蓋部材2全体の浮力は、オイル収納容器1内のオイル油面に対して蓋部材2が浮上する状態で、シール部材4におけるシール部4bの周囲下部がオイル油面に一致するように設定されており、浮力はフロート3の空洞の大きさを設定によって行え、浮力の調整はフロート3内に固形や液体のウエイトを設ける等の手段によって調整することができる。
【0038】
また、上記オイル収納容器1における周壁1aの内径と上記蓋部材2に設けたシール部4bの外径の関係は、シール部材4が縮径状態にあるとき周壁1aの内径よりも小径となり、オイル収納容器1に対する蓋部材2の出し入れを自由にしていると共に、シール部材4は最大拡径の途中でシール部4bが周壁1aの内径に圧接し、周壁1a内を密閉するように設定され、オイル収納容器1は、このような条件を満たすものであれば既存のものを適宜選択して使用することができる。
【0039】
なお、オイル収納容器1内に挿入した蓋部材2の上下動の安定化を図るため、図示省略したが、オイル収納容器1の上端に例えば透明のキャップを被せて取付け、このキャップに設けた中央孔で蓋部材2の筒体12を保持し、蓋部材2の上下動を誘導するようにしてもよい。
【0040】
この発明の酸化防止用オイルポットは、上記のような構成であり、オイル収納容器1内に収納した食用等のオイルaを保存するには、蓋部材2をシール部4bが縮径状態となるよう予めセットしておく。
【0041】
蓋部材2のシール部4bを縮径状態にするには、図1のように、操作摘み14を筒体12に対して引き上げ、係止ピン15を筒体12の上端に係止すればよく、操作摘み14の引上げによって各羽根板9はワイヤーや紐16で半径方向内側に引圧され、スプリング8が圧縮されることになり、図4で示したように、羽根板リング7は縮径状態に保持され、シール部4bは自身の収縮弾性で縮径状態になる。
【0042】
図1のように、オイルaを所定量収納したオイル収納容器1内に蓋部材2を上から水平に挿入し、フロート3の下部をオイルaに浸入させることでこの蓋部材2を油面上に浮上させる。
【0043】
上記フロート3は下部が円錐形になっているので、下部をオイルaに浸入させると、油面と蓋部材2の間にある空気は蓋部材2の外周上部に向けて流出し、油面と蓋部材2の界面に空気や気泡が残るようなことがなく、蓋部材2の浸入によって上昇した油面上に蓋部材2を浮上させると、蓋部材2の設定した浮力により油面はシール部4bの下縁に一致する高さになる。
【0044】
この状態で、蓋部材2を筒体12の部分で保持して操作摘み14を回動させ、係止ピン15を凹欠部13に落ち込ませると、羽根板リング7の縮径状態の保持が解かれ、羽根板リング7の各羽根板9はスプリング8の押圧弾性で半径方向外方へ移動し、図2と図3及び図5のように、羽根板リング7が拡径することで各羽根板9の外側縁でシール部4bを外方に押し、これにより、シール部4bは拡径して外周面が周壁1aの内周面に圧接する。
【0045】
上記蓋部材2は、シール部4bの下縁と油面の高さが一致した状態でシール部4bが拡径して周壁1a内を密閉するので、シール部4bと周壁1aの間に空気の閉じ込めはなく、これによって、オイルaの油面と蓋部材2の間から空気を完全になくし、オイル収納容器1内に収納したオイルaを蓋部材2によって空気から遮断した状態で保存することができ、オイルaの酸化による劣化発生を防ぐことができる。
【0046】
また、オイル収納容器1内に収納したオイルaを使用する場合は、蓋部材2を保持した状態で操作摘み14を筒体12に対して引き上げて回動させ、凹欠部13から抜けた係止ピン15を筒体12の上端に係止させればよく、操作摘み14の引き上げにより各羽根板9が半径方向内側に引かれ、羽根板リング7は縮径状態に保持されてシール部4bが収縮し、周壁1aから離反するので、オイル収納容器1の内部から蓋部材2を上方に抜き取るようにすればよい。
【符号の説明】
【0047】
A 酸化防止用オイルポット
1 オイル収納容器
1a 周壁
1b 傾斜部
2 蓋部材
3 フロート
4 シール部材
4a 円錐部
4b シール部
4c 上板部
5 拡径機構
6 縮径保持機構
7 羽根板リング
8 スプリング
9 羽根板
9a 平面扇形板
9b 立ち上がり片
10 長孔
11 ガイドピン
12 筒体
13 凹欠部
14 操作摘み
15 係止ピン
16 ワイヤーや紐
17 誘導部
a オイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開放したオイル収納容器と、このオイル収納容器内に上下への移動が可能となるよう挿入し、このオイル収納容器内を密閉するための蓋部材とからなり、
前記蓋部材は、オイル油面に対して浮上する浮力と、外径が変化する径方向の伸縮性を有するシール部材を備え、
この蓋部材に、外周の配置径が拡径及び縮径自在となり、拡径時にシール部材の外周をオイル収納容器の内周に弾力的に圧接させる拡径機構と、前記拡径機構を拡径弾性に抗して縮径状態に係止し、係止を解くことで拡径機構を拡径させる縮径保持機構を設けた酸化防止用オイルポット。
【請求項2】
上記蓋部材は、下面側に突出する円錐形のフロートと、前記フロートの上部に位置し、伸縮性材料を用いて平面円板状に形成され、拡径状態で外周がオイル収納容器の内周に圧接してオイル収納容器内を密閉するシール部材とからなり、
上記拡径機構は、フロートの上面とシール部材の間に組み込まれ、平面円形のリング状に配置した複数枚の羽根板を半径方向に移動させることによりリング状配置の外径が変化し、縮径状態でシール部材の押し広げを解き、拡径状態でシール部材を押し広げる羽根板リングと、各羽根板に常時半径方向の外方に向けての移動弾性を付勢するスプリングで形成され、
上記縮径保持機構は、フロートの上面にシール部材を貫通するよう突設した筒体の上端に、上昇位置と下降位置に係止可能となる操作摘みを設け、この操作摘みと上記各羽根板を、操作摘みの上昇位置で各羽根板を半径方向内側に引圧して拡径機構の縮径状態を保持し、操作摘みの下降位置で各羽根板の引圧を解いて拡径機構を拡径させるように可撓性連結部材で連結して形成されている請求項1に記載の酸化防止用オイルポット。
【請求項3】
上記蓋部材のフロートによって得られる浮力は、オイル収納容器内のオイル油面に対して蓋部材が浮上する状態で、シール部材の外周下部がオイル油面に一致するように設定されている請求項1又は2に記載の酸化防止用オイルポット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−90673(P2012−90673A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238546(P2010−238546)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(510236368)
【Fターム(参考)】