酸性イオン基を有する熱可塑性重合体の押出成形
本発明は、酸イオン基を有する熱可塑性重合体の押出方法に関するものである。当該方法は、酸イオン基を有する熱可塑性重合体と可塑剤とから構成される混合物を製造し、この得られた混合物を押し出してフィルムを形成させ、次いで、この得られたフィルムを水性媒体で洗浄して該可塑剤を除去することからなる。該可塑剤は、該重合体のイオン基に対して安定で、水又は水と混和性のある溶媒に可溶である非揮発性化合物から選択され、ここで、該可塑剤は、水素結合型の弱い結合の形成により該重合体の該イオン基と反応する化合物及びイオン結合型の強い結合の形成により該重合体の該イオン基と反応する化合物から選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性イオン基を有する熱可塑性重合体から構成される膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン基を有する重合体は、燃料電池用の膜を製造するために使用できることが知られている。該イオン基は、酸基又はアルカリ基であることができる。
【0003】
また、重合体の揮発性溶媒溶液から流延又は押出のいずれかによって重合体フィルムを製造する方法も知られている。押出は、可燃性であり得る揮発性溶媒を使用しないことが可能であるため、有利である。
【0004】
重合体がガラス転移温度に依存する押出に必要な温度で分解しないように熱安定性を有するという条件で該重合体を押出すことができる。
【0005】
イオン基を保有しない所定の骨格を有する重合体の熱安定性と、同一の骨格を有するがイオン基を保有する重合体の熱安定性とを比較すると、イオン基を有する重合体は熱安定性がさらに低いことが分かる。従って、その分解温度は低いため、これはガラス転移温度に依存する押出に必要な温度とは通常相容れない。
【0006】
重合体のガラス転移温度を該重合体と可塑剤とを混合させることによって低下させて熱分解なしに押出できることが知られているが、ここで、この可塑剤は、押出後に除去される。この方法によって押し出された重合体は、イオン基を有しない重合体である。熱可塑性重合体の押出のために使用される可塑剤としては、塩素化又は非塩素化パラフィン、カルボン酸エステル(例えば、アジピン酸エステル、安息香酸エステル、クエン酸エステル及びフタル酸エステル)、燐酸エステル及びトルエンジスルホンアミドが挙げられる。例えば、H.H.Kausch外(Traite des Materiaux(Materials Compendium),14巻,Presses Polytechniques et Universitaires Romandes,仏国ローザンヌ,2001)には、可塑剤として有機剤を導入した後にポリスチレンを押し出すことが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、酸性イオン基を有する重合体のフィルムを、該重合体と可塑剤の混合物を押出し、次いで押出によって得られたフィルムから該可塑剤を除去することによって製造することを考えてきた。しかしながら、イオン基を有しない重合体の押出用の可塑剤として知られている多くの化合物の全てが酸基を有する重合体では使用できないことが分かった。例えば、パラフィンは、イオン基に対する親和性がほとんどなかった。さらに、少量の水分が存在すると、カルボン酸エステルと燐酸エステルは、押し出される重合体の酸性イオン基によって分解する。
【0008】
本発明者は、鋭意研究の結果、酸性イオン基を有する重合体用の可塑剤として使用できる化合物群を明確にすることができた。該可塑剤は、そのガラス転移温度を低下させ、且つ、該重合体の分解温度よりも低いままである押出温度を可能にする。
【0009】
従って、本発明の主題は、酸性イオン基を有する熱可塑性重合体を押し出すことによって膜を製造するための方法及び得られた膜である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従う方法は、少なくとも1種の可塑剤と酸性イオン基−Ap-(H+)p(Aはイオン基の陰イオン部分を表し、pは陰イオン基の価数である。)を有する少なくとも1種の重合体とから構成される混合物を製造し、得られた混合物を押し出してフィルムを形成し、得られたフィルムを水性媒体中で洗浄して該可塑剤を除去することからなる。当該方法は、該可塑剤が該重合体のイオン基に対して安定で、水又は水と混和性のある溶媒に可溶の非揮発性化合物から選択され、該可塑剤が
・水素結合型の弱い結合の形成によって該重合体のイオン基と反応する化合物であって、スルファミドH2N−SO2−NH2、テトラアルキルスルファミド、アルキルスルホンアミド及びアリールスルホンアミドR3−SO2−NH2(R3はフェニル基、トリル基又はナフチル基である。)よりなる群から選択されるもの、及び
・イオン結合型の強い結合の形成によって該重合体のイオン基と反応する化合物
から選択されることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
押出後に得られたフィルムを洗浄するために使用される水性媒体は、水、可塑剤が溶解できる水と混和性のある溶媒又はこのような溶媒と水との混合物から構成される。
【0012】
表現「非揮発性化合物」とは、所定の化合物であって、その沸点温度が、それと混合される重合体の最大押出温度よりも高いものを意味するものとする。この温度は、一般に200℃よりも高い。
【0013】
イオン基のH+陽イオン部分に対する親和性及び陰イオン部分に対する親和性は、それぞれ、Gutmanによって定義され且つC.Reichardt,「Solvents and solvent effects in organic chemistry」,第2版,VCH,1990で公開された「ドナー数」及び「アクセプター数」スケールで定義されるドナーの性質又はアクセプターの性質によって評価できる。
【0014】
提案する方法は、熱可塑性重合体であってその鎖が同一の又は異なる反復単位から構成されるものから膜を製造するために使用することができ、ここで、それぞれの反復単位は、少なくとも1個の官能基及び少なくとも1個の単環式又は多環式芳香族基を有し、該官能基はエステル、ケトン、エーテル、スルフィド、スルホン、ベンゾオキサゾール、アミド及びイミド基から選択され、該芳香族基の少なくともいくつかは、酸性イオン基を有する。該官能基は、該重合体の主鎖の一部分を構成することができるため、2個の芳香族基の間に見出され得る。また、該官能基は、該重合体の主鎖の一部分を構成する芳香族基の側方置換基を構成することもできる。
【0015】
イオン基−Ap-(H+)pは、反応媒体中で十分に解離する全てのイオン基から選択できる。例としては、−O-H+基、スルホン酸塩−SO3-H+基、硫酸塩−OSO3-H+基、カルボン酸塩−CO2H+基、チオカルボン酸塩−C(=S)O-H+基、ジチオカルボン酸塩−CS2-H+基、ホスホン酸塩−PO32-(H+)2基、スルホニルアミド−SO2NH-H+基及びスルホニルイミド(X−SO2NSO2−)-H+基(式中、Xは、好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくは1〜5個の炭素原子を有する過弗素化又は部分弗素化アルキル基、好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルケニル基、好ましくは1〜5個の炭素原子を有する過弗素化又は部分弗素化アルケニル基、オキシアルキレンCH3−(O−(CH2)m)n基(ここで、好ましくは2≦m<5、1≦n≦10である)又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香環を有し、且つ、随意に置換基を有するアリール基である。)が挙げられる。この方法は、イオン基の含有量が1mol/kg重合体以上である重合体について特に有利である。
【0016】
熱可塑性重合体の例としては、官能基−Ap-(H+)pが上記イオン基のいずれかを表し、記号n、m、x及びyがそれぞれ反復単位の数を表す次のセグメント:
・所定の反復単位が酸性イオン基を有するポリエーテル、例えば式Iに相当するポリフェニレンオキシド(式中、R及びR1は、互いに独立して、H、好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくは2〜5個の炭素原子を有するアルケニル基又はアリール基:
【化1】
・鎖中にエーテル官能基及びケトン官能基を有する単位から構成され、所定の単位が酸性イオン基を有するポリエーテルエーテルケトン、例えば、以下の式IIに相当するポリエーテル:
【化2】
・鎖中にエーテル官能基及びケトン官能基を有する単位から構成され、所定の単位が酸性イオン基を有するポリエーテルケトン、例えば、以下の式IIIに相当するポリエーテル:
【化3】
・所定の単位が酸性イオン基を有するポリベンゾオキサゾール、例えば、反復単位が以下の式IVに相当する重合体:
【化4】
・所定の単位が酸性イオン基を有し、押出の熱によってポリイミド、例えば次のポリイミド:
【化5】
に変換されるポリアミド酸;
・式Vに相当するポリイミド;
・例えば次式VIに相当する単位を含むポリパラフェニレン:
【化6】
例えば、Maxdem社により商品名「POLY−X200」の下で販売されているポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン);
・ポリフェニレンスルフィド、例えば反復単位が以下の式VIIに相当する重合体:
【化7】
・ポリエーテルスルホン、例えば以下の式VIIIに相当する重合体(式中、R2は単結合又は−C(CH3)−基を表す):
【化8】
から選択されるセグメントを含む重合体が挙げられる。
【0017】
該重合体の特定の一群は、以下のセグメントから選択され、そのイオン基が−SO3Hであるセグメントを含む重合体から構成される。これらは、次式:
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
で表される。
【0018】
上記式において、記号n、m、x及びyは、それぞれ反復単位の数を表し、また、これらは、重合体の分子量が好ましくは20000g/mol〜500000g/molの間であり、且つ、イオン交換容量IECが0.8H+/gを超えるように選択される。
【0019】
可塑剤として使用でき、且つ、水素結合型の弱い結合の形成によって該重合体のイオン基と反応する化合物のなかでは、スルホンアミドH2N−SO2−NH2、テトラアルキルスルホンアミドであってアルキル基が好ましくは1〜5個の炭素原子を有するもの(例えば、テトラエチルスルファミド)、アルキルスルホンアミドであってそのアルキル基が好ましくは1〜5個の炭素原子を有するもの及びアリールスルホンアミドR3−SO2NH2(式中、R3は、例えば、フェニル基、トリル基又はナフチル基である。)が挙げられる。
【0020】
可塑剤として使用でき、且つ、イオン結合型の強い結合の形成によって該重合体のイオン基と反応する化合物のなかでは、次のものが挙げられる:
・イミダゾール、N−アルキルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール;
・第一アミン又は第二アミン末端基を有するエチレンオキシドオリゴマー。第一アミン末端基を有するオリゴマーは、商品名JEFFAMINE(商標)の下に販売されている。第二アミン末端基を有するオリゴマーは、1又は2個のアルコール官能基と塩化チオニルとを反応させ、該アルコール官能基を塩素化することによってオリゴエーテル末端基を生じさせ、得られた生成物を過剰量のピペラジンで処理し、次いで最終生成物を精製することからなる方法によって製造できる[X.Ollivrin,F.Alloin,J−F.Le Nest,D.Benrabah,J−Y.Sanchez,Electrochimica Acta,48,14−16,1961−69(2003)参照];
・例えば、整理番号D8,330−3の下でAldrich社により販売されているジエタノールアミン及び整理番号B4,820−7の下でAldrichにより販売されているビス(2−メトキシエチル)アミンのような第二アミン;及び
・3個のオリゴ(オキシエチレン)置換基を有する第三アミン。
【0021】
該重合体のイオン基と共にイオン結合を形成するこのタイプの可塑剤は、アンモニウム又はイミダゾリウム型の、共役酸を与える重合体によって保持される酸基のプロトンを固定する。このような共役酸は、可塑剤も酸性イオン性重合体も分解せず、且つ、さらに高温で押出を実施することを可能にするかなりの弱酸である。
【0022】
上記化合物は、可塑剤単独として使用でき、又はその骨格に対して可塑剤として作用する化合物(これら様々な化合物は混和性がなければならない)と共に使用できる。
【0023】
押出を受けるイオン性熱可塑性重合体と可塑剤の混合物は、さらに、押出後に得られた重合体フィルムの機械的強度を改善させることを目的とした充填剤及び最終材料の他の特性を改善させることを目的とした充填剤から選択できる充填剤をさらに含有することができる。機械的強度を改善させることを目的とした充填剤は、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ及びセルロースミクロフィブリル、アルミナ繊維及び商品名「KEVLAR(商標)」の下で販売されているポリアラミド繊維から選択できる。押出後に得られた重合体フィルムの親水性、つまり伝導性を改善させることを目的とした充填剤としては、ホスファトアンチモン酸(H3)が挙げられる。
【0024】
式(VIIIa)に相当するスルホン化ポリスルホン型の重合体:
【化17】
は、Solvayによって、それぞれ商品名UDEL(商標)(式中、R2は−C(CH3)2−基を表す。)及びRADEL(商標)(式中、R2は単結合を表す。)の下に販売されている重合体から得ることができる。これらのUDEL(商標)及びRADEL(商標)重合体は、上記重合体(VIII)の構造と同様の構造を有するが、これらのものは、いかなるイオン基も有しない。UDEL又はRADEL先駆重合体(VIIIp)から重合体(VIII)を製造するための方法は、次の工程:
1.重合体(VIIIp)を塩素化有機溶媒(例えば、ジクロロエタンDCE、テトラクロロエタンTCE若しくはジクロロメタンDCM)又はクロロホルムから選択される溶媒に溶解してなる無水溶液を調製し;
2.スルホン化反応体であるクロルスルホン酸トリメチルシリルの無水溶液を製造し;
3.これら2つの無水溶液を、強く撹拌しつつ、アルゴン下で数時間にわたり30℃〜65℃の温度で接触させ;
4.ろ過によって直接又は沈殿後、ろ過によってスルホン化重合体を抽出し;
5.該沈殿用溶媒を室温蒸発させ;
6.該スルホン化重合体を水で洗浄し;そして
7.該スルホン化重合体を、動的真空下で40℃〜80℃の温度、例えば50℃で乾燥させること
を含む。
【実施例】
【0025】
本発明を次の実施例で例示する。
例1及び2
例1及び2は、酸基を有するスルホン化ポリスルホンの製造に関する。
【0026】
例1
スルホン化ポリスルホンの製造
第一工程の間に、UDEL(商標)重合体の無水溶液を、1600g(3.62mol)のUDEL(商標)重合体を16LのDCEに50℃で溶解させ、次いで、1LのDCEが除去されるまで共沸蒸留によって該溶液を乾燥させることにより調製した。
同時に、クロルスルホン酸トリメチルシリルの無水溶液を、472g(4.34mol)の塩化トリメチルシラン及び422g(3.6mol)のClSO3Hを500mLの乾燥DCE中にアルゴン下で2時間にわたり磁気撹拌しつつ溶解させ(全ての成分は無水である)、形成されたHClを捕捉して製造した。
第二工程の間に、この2つの無水溶液をアルゴンパージ下で混合し、そして該混合物を17時間にわたり強く撹拌しつつ35℃で保持した。
第三工程の間に、該溶液を石油エーテル中で沈殿させ、形成した沈殿物をろ過によって分離し、そして、このものを石油エーテルで3回洗浄し、次いで、該石油エーテル残分を室温の空気下で蒸発させた。
最後に、該沈殿物を蒸留水で中性のpHにまで洗浄し、このものを20℃の空気中で24時間にわたって乾燥させ、次いで、20mbarの圧力下で72時間にわたり55℃で乾燥させた。
得られた重合体を1H NMR分析、赤外分光分析及び酸塩基滴定に付した。
スルホン化の程度、即ちイオン交換容量IEC(これらの方法によって決定される)は、0.56H+/molの反復単位であったが、これは、1.14ミリ当量/gのイオン交換容量に相当する。
図1は1H NMRスペクトルを示しており、図2はIRスペクトルを示している。図2において、Tは透過率、Nは波数を表している。
【0027】
例2
スルホン化ポリスルホンの製造
UDEL(商標)重合体の無水溶液を、1800g(4.07mol)のUDEL(商標)重合体を18LのDCEに50℃で溶解させ、次いで、1LのDCEが除去されるまで共沸蒸留によって該溶液を乾燥させることにより製造した。
同時に、クロルスルホン酸トリメチルシリルの無水溶液を743g(6.84mol)の塩化トリメチルシラン及び664g(5.7mol)のClSO3Hを700mLの乾燥DCE中にアルゴン下で2時間にわたり磁気撹拌しつつ溶解させ(全ての成分は無水である)、形成されたHClを捕捉して製造した。
第二工程の間に、この2つの無水溶液をアルゴンパージ下で混合し、そして該混合物を17時間にわたり強く撹拌しつつ35℃で保持した。
第三工程の間に、該溶液を石油エーテル中で沈殿させ、形成した沈殿物をろ過によって分離し、そして、このものを石油エーテルで3回洗浄し、次いで、該石油エーテル残分を室温の空気下で蒸発させた。
最後に、該沈殿物を蒸留水で中性のpHにまで洗浄し、このものを20℃の空気中で24時間にわたって乾燥させ、次いで、20mbarの圧力下で72時間にわたり55℃で乾燥させた。
得られた重合体を1H NMR分析、赤外分光分析及び酸塩基滴定に付した。
スルホン化の程度、即ちイオン交換容量IEC(これらの方法によって決定される)は、0.7H+/molの反復単位であったが、これは1.4当量/gのイオン交換容量に相当する。
図3は1H NMRスペクトルを示しており、図4はIRスペクトルを示している。図4において、Tは透過率、Nは波数を表している。
該スルホン化ポリスルホンのガラス転移温度を、商品名Modulated DSC 2920の下にTAインストルメント社により販売されている装置を使用して示差走査熱量測定により決定した。試料を加熱する方法により、全熱流の成分を可逆シグナルと呼ばれるシグナルと不可逆シグナルと呼ばれる別のシグナルとに分けた。可逆シグナルを表す曲線上では、ガラス転移のような可逆温度遷移が観察された。不可逆シグナルを表す曲線上では、溶融又は結晶化のような不可逆温度遷移が観察された。得られたサームグラムを図5に示しており、当該図において、実線の曲線は全熱流を表し、点線の曲線は可逆シグナルを表し、鎖線の曲線は不可逆シグナルを表す。エネルギーQ(W/gのポリスルホン)はy軸に表されており、温度Tはx軸に表されている。図5は、ガラス転移温度が196℃であることを示している(可逆シグナル曲線上の変曲点)。
【0028】
例3〜7
例3〜7は、スルホン化ポリスルホン及び可塑剤を含む様々な組成物の押出性を実証し、且つ、膜の製造を説明するものである。これらの例は、Gottfert1500毛管レオメータで実施した動的レオメトリー及び押出の試験を説明するものである。動的レオメトリーは、時間と温度の等価性を用いると、ブレンドが押出器中で受ける剪断勾配条件下で該ブレンドを特徴付けることを可能にする。該毛管レオメータは、その操作性のため及び重合体の消費量があまり多くないため、押田性の研究によく適する。2タイプの流動試験によって得られたデータは、一軸又は二軸押出器における押出を代表するものである。
【0029】
例3
スルホン化ポリスルホン/イミダゾール
この例を、例2からの手順に従って得られたポリスルホンの画分(PSUSHとして知られている)及び可塑剤としてのイミダゾールを使用して実施した。PSUSHは、例2に従って得られたポリスルホンを摩砕し、次いで300μm未満の寸法にまで選別することによって得られた、300μm未満の寸法を有する粒子から構成させる生成物を表す。該混合物は、27重量%、即ち31容量%の可塑剤を含有していた。
DSCによって決定されるイミダゾールの融点は、イミダゾールのDSCサーモグラムを表す図6に示すように90℃である。図6において、実線の曲線は全熱流を表し、点線の曲線は可逆シグナルを表し、鎖線の曲線は不可逆シグナルを表す。
PSUSH/イミダゾール混合物を、70cm3のチャンバーと25mm直径の逆回転ローターとを備えるRheomixミキサー(Haake社製)内で作製した。該チャンバー上には、充填を実施するホッパーが搭載されていた。該ミキサーの温度を140℃に設定した。これらのローターの回転速度を80rpmに設定したが、これは、80s-1の平均ずりに相当する。
PSUSH及びイミダゾールを1mgまで別々に秤量し、次いで、これらを機械的撹拌によって予備混合してから、該ミキサーのホッパーに投入した。該ローターを20分間作動させた。得られた生成物は、褐色の透明な液体であったが、これは、該混合物の製造温度、即ち140℃ではさほど粘稠ではなかった。室温では、該生成物は固体になり、肉眼では均質に見えた。
該混合物のガラス転移をDSCで決定した。図7は、該混合物のサーモグラムを表しており、ガラス転移温度が102℃であったことを示している。実線の曲線は全熱流束を表し、点線の曲線は可逆シグナルを表し、鎖線の曲線は不可逆シグナルを表す。
該PSUSH/イミダゾール混合物を、2mmシーブを備えた機械的切断ミル(商品名IKAの下で販売)で摩砕した。摩砕後に回収された粒子を、60℃の通風オーブン内に4時間にわたって置いて、押出の障害となるであろう水を除去した。
該PSUSH/イミダゾール混合物の粘度を、ARESレオメーター(Rheometrics社製)により160℃及び180℃で且つ10-1〜102s-1の剪断勾配にわたる動的レオメトリーで特徴付けた。図8は、該混合物の160℃での挙動(正方形)及び180℃での挙動(菱形)を示している。これらのy軸において、η*は粘度を示し、x軸において、fは試料の歪み頻度を示している。
図8は、粘度が100s-1及び180℃で500Pa.sであったこと及び該混合物がそれによって押出できたことを示している。
フィルムを、Gottfert1500毛管レオメータを使用してPSUSH/イミダゾール混合物を押し出すことによって製造した。このレオメーターは、該混合物が導入される加熱容器を備えていた。ピストンが0.8mmの厚さを有するシートダイを介して該溶融混合物を押圧した。この押出温度は、該重合体が流動するように該混合物のガラス転移温度を超える必要があるが、ただし可塑剤の蒸発温度よりも低くなければならない。この場合において選択した押出温度は120℃であった。ダイから出たときのフィルムの厚さは0.8mmであり、そして、該フィルムの延伸によってその厚さを0.1mmにまで減少させた。
次いで、該フィルムを室温にまで冷却させた。このものは透明であり、しかもその表面にはいかなる欠陥もなかった。
次いで、該フィルムを水中に24時間にわたって室温で浸漬させて、該水中に溶解した可塑剤を除去した。該材料の乾燥後のNMR分析により、該可塑剤が完全に除去されたことをチェックすることができた。次いで、この膜を水中又は水飽和雰囲気中で保持した。
これらの電気化学的結果を、低振幅正弦波電圧を電気化学セルにその平行電圧付近で印加することによるインピーダンス測定によって得た。該酸性スルホン化ポリスルホンフィルムのプロトン伝導度(20℃及び90%湿度で測定)は、0.7mS/cmに等しかった。
【0030】
例4
酸性スルホン化ポリスルホン/テトラエチルスルファミド
この例は、例3で使用したPSUSH重合体及び可塑剤としてテトラエチルスルファミドを使用して製造した。該混合物は、26重量%、即ち30容量%の可塑剤を含有していた。
DSCで決定されるテトラエチルスルファミドの融点は、テトラエチレンスルホンアミドのDSCサーモグラムを表す図9に示すように−48℃であった。図9において、実線の曲線は全熱流を表し、点線の曲線は可逆シグナルを表し、鎖線の曲線は不可逆シグナルを表す。
該PSUSH/テトラエチルスルファミド混合物を例3で使用したのと同一のRheomixミキサーで製造した。該ミキサーの温度を100℃に設定した。これらのローターの回転速度を80rpmに設定したが、これは、80s-1の平均ずりに相当する。
PSUSH及びテトラエチレンスルホンアミドを1mgまで別々に秤量し、次いで、これらを機械的撹拌によって予備混合してから、該ミキサーのホッパーに投入した。該ローターを20分間作動させた。得られた生成物は、淡褐色の透明な液体であったが、これは、該混合物の製造温度、即ち100℃ではさほど粘稠ではなかった。室温では、該生成物は固体になり、肉眼では均質に見えた。
該混合物のガラス転移は100℃であったが、この評価は、100℃周辺で液体になった該混合物をゆっくりと加熱することによってこれを評価することによって行った。
図10は、該混合物のDSCサーモグラムを示しているが、ガラス転移温度は、その中では明らかでなかったことが分かる。実線の曲線は全熱流を表し、点線の曲線は可逆シグナルを表し、鎖線の曲線は不可逆シグナルを表す。
該PSUSH/テトラエチルスルファミド混合物を、2mmシーブを備えた機械的切断ミル(IKAの商品名で販売)で摩砕した。摩砕後に回収された粒子を、80℃の通風オーブン内に4時間にわたって置いて、押出の障害となるであろう水を除去した。
PSUSH/テトラスルホンアミド混合物の粘度を、ARESレオメーター(Rheometrics社製)により120℃及び10-1〜102s-1の剪断勾配での動的レオメトリーで特徴付けた。図11は、該混合物の挙動を示している。細い実線で繋がれた円によって定められた曲線は、G’、即ち、弾性係数を表す。破線によって繋がれた四角によって定められた曲線はG”、即ち、粘性係数を表す。太い実線で繋がれた四角によって定められた曲線は粘度η*を表す。この図は、その粘度が100s-1及び120℃で1000Pa.sであったこと及び該混合物がそれによって押出できたことを示している。
フィルムを、例3で使用したのと同一のGottfert1500毛管レオメータを使用してPSUSH/テトラエチルスルファミド混合物を押し出すことによって製造した。この場合において選択した押出温度は120℃であった。ダイから出たフィルムの厚さは0.8mmであり、該フィルムの延伸によってその厚さを0.1mmまで減少させることができた。
次いで、該フィルムを室温にまで冷却させた。このものは透明であり、しかもその表面にはいかなる欠陥もなかった。
次いで、該フィルムを水中に24時間にわたって室温で浸漬させて、該水中に溶解した可塑剤を除去した。該材料の乾燥後のNMR分析によって、該可塑剤が完全に除去されたことを確認することができた。次いで、この膜を水中又は水飽和雰囲気中で保持した。
該酸性スルホン化ポリスルホンフィルムのプロトン伝導性(例3と同様の方法で20℃及び90%湿度で測定)は、1.1mS/cmに等しかった。
【0031】
例5
スルホン化ポリスルホン/テトラエチルスルファミド/H3
この例を、例3で使用したPSUS重合体、可塑剤としてのテトラエチルスルファミド及び充填剤としてのホスファトアンチモン酸(H3)を使用して実施した。該混合物は、26重量%、即ち30容量%の可塑剤を含有していた。H3/PSUSH混合物(これは、3種の構成成分の混合物に対して74重量%又は70容量%に相当する)において、H3は、PSUSHに対して10容量%に相当する。
該PSUSH/テトラエチルスルファミド/H3混合物を例3で使用したのと同一のRheomixミキサーで製造した。該ミキサーの温度を100℃に設定した。これらのローターの回転速度を80rpmに設定したが、これは、80s-1の平均ずりに相当する。
PSUSH、テトラエチルスルファミド及びH3を1mgまで別々に秤量し、次いで、これらを機械的撹拌によって予備混合してから、該ミキサーのホッパーに投入した。該ローターを20分間作動させた。得られた生成物は、黄色の透明な液体であったが、これは、該混合物の製造温度、即ち100℃ではさほど粘稠ではなかった。室温では、該生成物は固体になり、肉眼では均質に見えた。
該PSUSH/テトラエチルスルファミド/H3混合物を、2mmシーブを備えた機械的切断ミル(IKAという商品名で販売)で摩砕した。摩砕後に回収された粒子を、80℃の通風オーブン内に4時間にわたって置いて、押出の障害となるであろう水を除去した。
該PSUSH/テトラエチルスルファミド/H3混合物の粘度を、ARESレオメーター(Rheometrics社製)により160℃及び10-1〜102s-1の剪断勾配での動的レオメトリーで特徴付けた。図12は、該混合物の挙動を示している。円によって定められた曲線は、この例の3成分混合物についての粘度η*を示す。四角によって定められた曲線は、例4からの2成分混合物に相当する。図12は、その粘度が100s-1及び160℃で1000Pa.sであったこと、H3を有しない2成分混合物の粘度とほとんど差がなかったこと及びこの例の3成分混合物がそれによって押出できたことを示している。
フィルムを、例3で使用したのと同じGottfert1500毛管レオメータを使用してPSUSH/テトラエチルスルファミド/H3混合物を押し出すことによって製造した。この場合において選択した押出温度は120℃であった。ダイから出たフィルムの厚さは0.8mmであり、該フィルムの延伸によってその厚さを0.1mmまで減少させることができた。
次いで、該フィルムを室温にまで冷却させた。このものは透明であり、しかもその表面にはいかなる欠陥もなかった。
次いで、該フィルムを水中に24時間にわたって室温で浸漬させて、該水中に溶解した可塑剤を除去した。該材料の乾燥後のNMR分析によって、可塑剤が完全に除去されたことを確認できた。次いで、この膜を水中又は水飽和雰囲気中で保持した。
【0032】
例6〜8
これらの例は、重合体/可塑剤混合物の押出(例3〜5からのものと同一のもの)に関し、この押出は、Microcompounderという商品名でDACA社が販売する押出器を使用して実施した。
該押出器の本体は、共に組み立てられた2個の同様のプレートから形成されている。図13は、該押出器を洗浄のために開いたときに見られるようなプレート(5)の一つの正面図を示している。このものは、2個の逆回転円錐スクリュー(2,2’)が設置された胴部(1)と、該胴部内の温度を均一に維持するように該2個のプレート間に挿入された加熱カートリッジ(図示しない)と、温度センサー(図示しない)と、トルクセンサー(図示しない)と、二方弁(3)と、交換可能ダイ(4)と、該胴部の下部を上部に連結している導管(6)とを備えている。
胴部の体積(1)は4.5cm3であった。
2個の逆回転円錐スクリュー(2,2’)は、100mmの長さ及び10mmの最大直径を有していた。それらの回転速度は、0〜360rpmに変更できた。この例では、その速度は100rpmであったが、これはほぼ1500s-1の平均ずり、即ち、産業上の押出条件を代表するずりに相当する。
二方弁(3)は、該スクリューの終端部にある材料を再度胴部の中に戻すことができる「再循環」位置か、又は該材料をダイから出すための「押出」位置のいずれかにあることができる。この例では、「再循環」位置にある。
この例で使用した交換可能ダイ(4)は、2mm直径の軸対称ダイであった。Microcompounder押出器において、押出を次の条件下で実施した。該押出器のプレートを所定の温度Teに設定した。押し出される混合物を供給ホッパーに置き、そしてピストンで胴部に押し込んだ。該胴部の内部で、2個の共回転スクリューが該材料を混合及び溶融させ、そしてこれを底部に押しやった。該材料が該胴部の底部に達したときに、このものを外部導管(6)を介して戻し、次いで、再度胴部に入れて混合した。このプロセスを、所定の期間Dexにわたって数回繰り返すことができた。該重合体/可塑剤混合物の温度を温度センサーによりリアルタイムで測定した。トルクセンサー(図示しない)により、これらのスクリューの回転中に該材料によって生じた抵抗を0〜5N.mの範囲で測定した。この混合プロセスの終了時に、該弁を押出位置に戻して、該材料を該ダイ(4)から出した。
【0033】
例6:スルホン化ポリスルホン/イミダゾール
この例を、例3と同様の方法で製造されたPSUSH/イミダゾール混合物を使用して実施したが、ただし、イミダゾール/PSUSH重量比は27/73であった。
押出を、3.20gの混合物、160℃のプレート温度Te及び5分の期間Dexで実施した。
温度センサーによってリアルタイムで測定される該PSUSH/イミダゾール混合物の温度は、160℃で一定のままであったが、これは、該混合物が過剰に加熱されなかったことを意味する。測定されたトルクは3.8N.m.であった。つまり、該材料は160℃で高い粘度を有していた。この混合プロセスの終了時に、該弁を押出位置に戻して、該材料を該ダイから出した。得られた押出物は滑らかであり且つ室温では柔らかかった。
【0034】
例7:スルホン化ポリスルホン/テトラエチルスルファミド
この例を、例4と同様の方法で製造されたPSUSH/テトラエチルスルファミド混合物を使用して実施したが、ただし、テトラエチルスルファミド/PSUSH重量比は26/74であった。
押出を5.4gの混合物、130℃のプレート温度Te及び5分の期間Dexで実施した。
温度センサーによってリアルタイムで測定されるPSUSH/テトラエチルスルファミド混合物の温度は130℃のままであったが、これは、該混合物が過剰に加熱されなかったことを意味する。測定されたトルクは2.7N.m.であった。つまり、該材料は容易に流動した。この混合プロセスの終了時に、該弁を押出位置に戻して、該材料を該ダイから出した。得られた押出物は滑らかであり且つ室温では柔らかかった。
【0035】
例8:スルホン化ポリスルホン/テトラエチルスルファミド/H3
この例を、例5と同様の方法で製造されたPSUSH/テトラエチルスルファミド/H3混合物を使用して実施した。該混合物は、26重量%、即ち30容量%の可塑剤を含有していた。H3/PSUSH混合物(これは3種成分の混合物に対して74重量%又は70容量%に相当する)において、H3はPSUSHに対して10容量%に相当する。
押出を、2.90gの混合物を使用して、次の条件下:160℃のプレート温度Te及び5分の期間Dexで実施した。
温度センサーによってリアルタイムで測定される該PSUSH/テトラエチルスルファミド/H3混合物の温度は160℃のままであったが、これは、該混合物が過剰に加熱されなかったことを意味する。測定されたトルクは4N.m.であった。つまり、該材料は160℃で高い粘度を有していた。この混合プロセスの終了時に、該弁を押出位置に戻して、該材料を該ダイから出した。得られた押出物は滑らかであり且つ室温では柔らかかった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】スルホン化ポリスルホンの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図2】スルホン化ポリスルホンのIRスペクトルを示す図である。
【図3】スルホン化ポリスルホンの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図4】スルホン化ポリスルホンのIRスペクトルを示す図である。
【図5】スルホン化ポリスルホンのサーモグラムを示す図である。
【図6】イミダゾールのDSCサーモグラムを示す図である。
【図7】PSUSH/イミダゾール混合物のサーモグラムを示す図である。
【図8】PSUSH/イミダゾール混合物の160℃での挙動(正方形)及び180℃での挙動(菱形)を示す図である。
【図9】テトラエチレンスルホンアミドのDSCサーモグラムを示す図である。
【図10】PSUSH/テトラエチルスルファミド混合物のサーモグラムを示す図である。
【図11】PSUSH/テトラエチルスルファミド混合物の挙動を示す図である。
【図12】PSUSH/テトラエチルスルファミド/H3混合物の挙動を示す図である。
【図13】押出器本体の正面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 胴部
2 逆回転円錐スクリュー
2’ 逆回転円錐スクリュー
3 二方弁
4 交換可能ダイ
5 プレート
6 導管
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性イオン基を有する熱可塑性重合体から構成される膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン基を有する重合体は、燃料電池用の膜を製造するために使用できることが知られている。該イオン基は、酸基又はアルカリ基であることができる。
【0003】
また、重合体の揮発性溶媒溶液から流延又は押出のいずれかによって重合体フィルムを製造する方法も知られている。押出は、可燃性であり得る揮発性溶媒を使用しないことが可能であるため、有利である。
【0004】
重合体がガラス転移温度に依存する押出に必要な温度で分解しないように熱安定性を有するという条件で該重合体を押出すことができる。
【0005】
イオン基を保有しない所定の骨格を有する重合体の熱安定性と、同一の骨格を有するがイオン基を保有する重合体の熱安定性とを比較すると、イオン基を有する重合体は熱安定性がさらに低いことが分かる。従って、その分解温度は低いため、これはガラス転移温度に依存する押出に必要な温度とは通常相容れない。
【0006】
重合体のガラス転移温度を該重合体と可塑剤とを混合させることによって低下させて熱分解なしに押出できることが知られているが、ここで、この可塑剤は、押出後に除去される。この方法によって押し出された重合体は、イオン基を有しない重合体である。熱可塑性重合体の押出のために使用される可塑剤としては、塩素化又は非塩素化パラフィン、カルボン酸エステル(例えば、アジピン酸エステル、安息香酸エステル、クエン酸エステル及びフタル酸エステル)、燐酸エステル及びトルエンジスルホンアミドが挙げられる。例えば、H.H.Kausch外(Traite des Materiaux(Materials Compendium),14巻,Presses Polytechniques et Universitaires Romandes,仏国ローザンヌ,2001)には、可塑剤として有機剤を導入した後にポリスチレンを押し出すことが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、酸性イオン基を有する重合体のフィルムを、該重合体と可塑剤の混合物を押出し、次いで押出によって得られたフィルムから該可塑剤を除去することによって製造することを考えてきた。しかしながら、イオン基を有しない重合体の押出用の可塑剤として知られている多くの化合物の全てが酸基を有する重合体では使用できないことが分かった。例えば、パラフィンは、イオン基に対する親和性がほとんどなかった。さらに、少量の水分が存在すると、カルボン酸エステルと燐酸エステルは、押し出される重合体の酸性イオン基によって分解する。
【0008】
本発明者は、鋭意研究の結果、酸性イオン基を有する重合体用の可塑剤として使用できる化合物群を明確にすることができた。該可塑剤は、そのガラス転移温度を低下させ、且つ、該重合体の分解温度よりも低いままである押出温度を可能にする。
【0009】
従って、本発明の主題は、酸性イオン基を有する熱可塑性重合体を押し出すことによって膜を製造するための方法及び得られた膜である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従う方法は、少なくとも1種の可塑剤と酸性イオン基−Ap-(H+)p(Aはイオン基の陰イオン部分を表し、pは陰イオン基の価数である。)を有する少なくとも1種の重合体とから構成される混合物を製造し、得られた混合物を押し出してフィルムを形成し、得られたフィルムを水性媒体中で洗浄して該可塑剤を除去することからなる。当該方法は、該可塑剤が該重合体のイオン基に対して安定で、水又は水と混和性のある溶媒に可溶の非揮発性化合物から選択され、該可塑剤が
・水素結合型の弱い結合の形成によって該重合体のイオン基と反応する化合物であって、スルファミドH2N−SO2−NH2、テトラアルキルスルファミド、アルキルスルホンアミド及びアリールスルホンアミドR3−SO2−NH2(R3はフェニル基、トリル基又はナフチル基である。)よりなる群から選択されるもの、及び
・イオン結合型の強い結合の形成によって該重合体のイオン基と反応する化合物
から選択されることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
押出後に得られたフィルムを洗浄するために使用される水性媒体は、水、可塑剤が溶解できる水と混和性のある溶媒又はこのような溶媒と水との混合物から構成される。
【0012】
表現「非揮発性化合物」とは、所定の化合物であって、その沸点温度が、それと混合される重合体の最大押出温度よりも高いものを意味するものとする。この温度は、一般に200℃よりも高い。
【0013】
イオン基のH+陽イオン部分に対する親和性及び陰イオン部分に対する親和性は、それぞれ、Gutmanによって定義され且つC.Reichardt,「Solvents and solvent effects in organic chemistry」,第2版,VCH,1990で公開された「ドナー数」及び「アクセプター数」スケールで定義されるドナーの性質又はアクセプターの性質によって評価できる。
【0014】
提案する方法は、熱可塑性重合体であってその鎖が同一の又は異なる反復単位から構成されるものから膜を製造するために使用することができ、ここで、それぞれの反復単位は、少なくとも1個の官能基及び少なくとも1個の単環式又は多環式芳香族基を有し、該官能基はエステル、ケトン、エーテル、スルフィド、スルホン、ベンゾオキサゾール、アミド及びイミド基から選択され、該芳香族基の少なくともいくつかは、酸性イオン基を有する。該官能基は、該重合体の主鎖の一部分を構成することができるため、2個の芳香族基の間に見出され得る。また、該官能基は、該重合体の主鎖の一部分を構成する芳香族基の側方置換基を構成することもできる。
【0015】
イオン基−Ap-(H+)pは、反応媒体中で十分に解離する全てのイオン基から選択できる。例としては、−O-H+基、スルホン酸塩−SO3-H+基、硫酸塩−OSO3-H+基、カルボン酸塩−CO2H+基、チオカルボン酸塩−C(=S)O-H+基、ジチオカルボン酸塩−CS2-H+基、ホスホン酸塩−PO32-(H+)2基、スルホニルアミド−SO2NH-H+基及びスルホニルイミド(X−SO2NSO2−)-H+基(式中、Xは、好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくは1〜5個の炭素原子を有する過弗素化又は部分弗素化アルキル基、好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルケニル基、好ましくは1〜5個の炭素原子を有する過弗素化又は部分弗素化アルケニル基、オキシアルキレンCH3−(O−(CH2)m)n基(ここで、好ましくは2≦m<5、1≦n≦10である)又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香環を有し、且つ、随意に置換基を有するアリール基である。)が挙げられる。この方法は、イオン基の含有量が1mol/kg重合体以上である重合体について特に有利である。
【0016】
熱可塑性重合体の例としては、官能基−Ap-(H+)pが上記イオン基のいずれかを表し、記号n、m、x及びyがそれぞれ反復単位の数を表す次のセグメント:
・所定の反復単位が酸性イオン基を有するポリエーテル、例えば式Iに相当するポリフェニレンオキシド(式中、R及びR1は、互いに独立して、H、好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくは2〜5個の炭素原子を有するアルケニル基又はアリール基:
【化1】
・鎖中にエーテル官能基及びケトン官能基を有する単位から構成され、所定の単位が酸性イオン基を有するポリエーテルエーテルケトン、例えば、以下の式IIに相当するポリエーテル:
【化2】
・鎖中にエーテル官能基及びケトン官能基を有する単位から構成され、所定の単位が酸性イオン基を有するポリエーテルケトン、例えば、以下の式IIIに相当するポリエーテル:
【化3】
・所定の単位が酸性イオン基を有するポリベンゾオキサゾール、例えば、反復単位が以下の式IVに相当する重合体:
【化4】
・所定の単位が酸性イオン基を有し、押出の熱によってポリイミド、例えば次のポリイミド:
【化5】
に変換されるポリアミド酸;
・式Vに相当するポリイミド;
・例えば次式VIに相当する単位を含むポリパラフェニレン:
【化6】
例えば、Maxdem社により商品名「POLY−X200」の下で販売されているポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン);
・ポリフェニレンスルフィド、例えば反復単位が以下の式VIIに相当する重合体:
【化7】
・ポリエーテルスルホン、例えば以下の式VIIIに相当する重合体(式中、R2は単結合又は−C(CH3)−基を表す):
【化8】
から選択されるセグメントを含む重合体が挙げられる。
【0017】
該重合体の特定の一群は、以下のセグメントから選択され、そのイオン基が−SO3Hであるセグメントを含む重合体から構成される。これらは、次式:
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
で表される。
【0018】
上記式において、記号n、m、x及びyは、それぞれ反復単位の数を表し、また、これらは、重合体の分子量が好ましくは20000g/mol〜500000g/molの間であり、且つ、イオン交換容量IECが0.8H+/gを超えるように選択される。
【0019】
可塑剤として使用でき、且つ、水素結合型の弱い結合の形成によって該重合体のイオン基と反応する化合物のなかでは、スルホンアミドH2N−SO2−NH2、テトラアルキルスルホンアミドであってアルキル基が好ましくは1〜5個の炭素原子を有するもの(例えば、テトラエチルスルファミド)、アルキルスルホンアミドであってそのアルキル基が好ましくは1〜5個の炭素原子を有するもの及びアリールスルホンアミドR3−SO2NH2(式中、R3は、例えば、フェニル基、トリル基又はナフチル基である。)が挙げられる。
【0020】
可塑剤として使用でき、且つ、イオン結合型の強い結合の形成によって該重合体のイオン基と反応する化合物のなかでは、次のものが挙げられる:
・イミダゾール、N−アルキルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール;
・第一アミン又は第二アミン末端基を有するエチレンオキシドオリゴマー。第一アミン末端基を有するオリゴマーは、商品名JEFFAMINE(商標)の下に販売されている。第二アミン末端基を有するオリゴマーは、1又は2個のアルコール官能基と塩化チオニルとを反応させ、該アルコール官能基を塩素化することによってオリゴエーテル末端基を生じさせ、得られた生成物を過剰量のピペラジンで処理し、次いで最終生成物を精製することからなる方法によって製造できる[X.Ollivrin,F.Alloin,J−F.Le Nest,D.Benrabah,J−Y.Sanchez,Electrochimica Acta,48,14−16,1961−69(2003)参照];
・例えば、整理番号D8,330−3の下でAldrich社により販売されているジエタノールアミン及び整理番号B4,820−7の下でAldrichにより販売されているビス(2−メトキシエチル)アミンのような第二アミン;及び
・3個のオリゴ(オキシエチレン)置換基を有する第三アミン。
【0021】
該重合体のイオン基と共にイオン結合を形成するこのタイプの可塑剤は、アンモニウム又はイミダゾリウム型の、共役酸を与える重合体によって保持される酸基のプロトンを固定する。このような共役酸は、可塑剤も酸性イオン性重合体も分解せず、且つ、さらに高温で押出を実施することを可能にするかなりの弱酸である。
【0022】
上記化合物は、可塑剤単独として使用でき、又はその骨格に対して可塑剤として作用する化合物(これら様々な化合物は混和性がなければならない)と共に使用できる。
【0023】
押出を受けるイオン性熱可塑性重合体と可塑剤の混合物は、さらに、押出後に得られた重合体フィルムの機械的強度を改善させることを目的とした充填剤及び最終材料の他の特性を改善させることを目的とした充填剤から選択できる充填剤をさらに含有することができる。機械的強度を改善させることを目的とした充填剤は、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ及びセルロースミクロフィブリル、アルミナ繊維及び商品名「KEVLAR(商標)」の下で販売されているポリアラミド繊維から選択できる。押出後に得られた重合体フィルムの親水性、つまり伝導性を改善させることを目的とした充填剤としては、ホスファトアンチモン酸(H3)が挙げられる。
【0024】
式(VIIIa)に相当するスルホン化ポリスルホン型の重合体:
【化17】
は、Solvayによって、それぞれ商品名UDEL(商標)(式中、R2は−C(CH3)2−基を表す。)及びRADEL(商標)(式中、R2は単結合を表す。)の下に販売されている重合体から得ることができる。これらのUDEL(商標)及びRADEL(商標)重合体は、上記重合体(VIII)の構造と同様の構造を有するが、これらのものは、いかなるイオン基も有しない。UDEL又はRADEL先駆重合体(VIIIp)から重合体(VIII)を製造するための方法は、次の工程:
1.重合体(VIIIp)を塩素化有機溶媒(例えば、ジクロロエタンDCE、テトラクロロエタンTCE若しくはジクロロメタンDCM)又はクロロホルムから選択される溶媒に溶解してなる無水溶液を調製し;
2.スルホン化反応体であるクロルスルホン酸トリメチルシリルの無水溶液を製造し;
3.これら2つの無水溶液を、強く撹拌しつつ、アルゴン下で数時間にわたり30℃〜65℃の温度で接触させ;
4.ろ過によって直接又は沈殿後、ろ過によってスルホン化重合体を抽出し;
5.該沈殿用溶媒を室温蒸発させ;
6.該スルホン化重合体を水で洗浄し;そして
7.該スルホン化重合体を、動的真空下で40℃〜80℃の温度、例えば50℃で乾燥させること
を含む。
【実施例】
【0025】
本発明を次の実施例で例示する。
例1及び2
例1及び2は、酸基を有するスルホン化ポリスルホンの製造に関する。
【0026】
例1
スルホン化ポリスルホンの製造
第一工程の間に、UDEL(商標)重合体の無水溶液を、1600g(3.62mol)のUDEL(商標)重合体を16LのDCEに50℃で溶解させ、次いで、1LのDCEが除去されるまで共沸蒸留によって該溶液を乾燥させることにより調製した。
同時に、クロルスルホン酸トリメチルシリルの無水溶液を、472g(4.34mol)の塩化トリメチルシラン及び422g(3.6mol)のClSO3Hを500mLの乾燥DCE中にアルゴン下で2時間にわたり磁気撹拌しつつ溶解させ(全ての成分は無水である)、形成されたHClを捕捉して製造した。
第二工程の間に、この2つの無水溶液をアルゴンパージ下で混合し、そして該混合物を17時間にわたり強く撹拌しつつ35℃で保持した。
第三工程の間に、該溶液を石油エーテル中で沈殿させ、形成した沈殿物をろ過によって分離し、そして、このものを石油エーテルで3回洗浄し、次いで、該石油エーテル残分を室温の空気下で蒸発させた。
最後に、該沈殿物を蒸留水で中性のpHにまで洗浄し、このものを20℃の空気中で24時間にわたって乾燥させ、次いで、20mbarの圧力下で72時間にわたり55℃で乾燥させた。
得られた重合体を1H NMR分析、赤外分光分析及び酸塩基滴定に付した。
スルホン化の程度、即ちイオン交換容量IEC(これらの方法によって決定される)は、0.56H+/molの反復単位であったが、これは、1.14ミリ当量/gのイオン交換容量に相当する。
図1は1H NMRスペクトルを示しており、図2はIRスペクトルを示している。図2において、Tは透過率、Nは波数を表している。
【0027】
例2
スルホン化ポリスルホンの製造
UDEL(商標)重合体の無水溶液を、1800g(4.07mol)のUDEL(商標)重合体を18LのDCEに50℃で溶解させ、次いで、1LのDCEが除去されるまで共沸蒸留によって該溶液を乾燥させることにより製造した。
同時に、クロルスルホン酸トリメチルシリルの無水溶液を743g(6.84mol)の塩化トリメチルシラン及び664g(5.7mol)のClSO3Hを700mLの乾燥DCE中にアルゴン下で2時間にわたり磁気撹拌しつつ溶解させ(全ての成分は無水である)、形成されたHClを捕捉して製造した。
第二工程の間に、この2つの無水溶液をアルゴンパージ下で混合し、そして該混合物を17時間にわたり強く撹拌しつつ35℃で保持した。
第三工程の間に、該溶液を石油エーテル中で沈殿させ、形成した沈殿物をろ過によって分離し、そして、このものを石油エーテルで3回洗浄し、次いで、該石油エーテル残分を室温の空気下で蒸発させた。
最後に、該沈殿物を蒸留水で中性のpHにまで洗浄し、このものを20℃の空気中で24時間にわたって乾燥させ、次いで、20mbarの圧力下で72時間にわたり55℃で乾燥させた。
得られた重合体を1H NMR分析、赤外分光分析及び酸塩基滴定に付した。
スルホン化の程度、即ちイオン交換容量IEC(これらの方法によって決定される)は、0.7H+/molの反復単位であったが、これは1.4当量/gのイオン交換容量に相当する。
図3は1H NMRスペクトルを示しており、図4はIRスペクトルを示している。図4において、Tは透過率、Nは波数を表している。
該スルホン化ポリスルホンのガラス転移温度を、商品名Modulated DSC 2920の下にTAインストルメント社により販売されている装置を使用して示差走査熱量測定により決定した。試料を加熱する方法により、全熱流の成分を可逆シグナルと呼ばれるシグナルと不可逆シグナルと呼ばれる別のシグナルとに分けた。可逆シグナルを表す曲線上では、ガラス転移のような可逆温度遷移が観察された。不可逆シグナルを表す曲線上では、溶融又は結晶化のような不可逆温度遷移が観察された。得られたサームグラムを図5に示しており、当該図において、実線の曲線は全熱流を表し、点線の曲線は可逆シグナルを表し、鎖線の曲線は不可逆シグナルを表す。エネルギーQ(W/gのポリスルホン)はy軸に表されており、温度Tはx軸に表されている。図5は、ガラス転移温度が196℃であることを示している(可逆シグナル曲線上の変曲点)。
【0028】
例3〜7
例3〜7は、スルホン化ポリスルホン及び可塑剤を含む様々な組成物の押出性を実証し、且つ、膜の製造を説明するものである。これらの例は、Gottfert1500毛管レオメータで実施した動的レオメトリー及び押出の試験を説明するものである。動的レオメトリーは、時間と温度の等価性を用いると、ブレンドが押出器中で受ける剪断勾配条件下で該ブレンドを特徴付けることを可能にする。該毛管レオメータは、その操作性のため及び重合体の消費量があまり多くないため、押田性の研究によく適する。2タイプの流動試験によって得られたデータは、一軸又は二軸押出器における押出を代表するものである。
【0029】
例3
スルホン化ポリスルホン/イミダゾール
この例を、例2からの手順に従って得られたポリスルホンの画分(PSUSHとして知られている)及び可塑剤としてのイミダゾールを使用して実施した。PSUSHは、例2に従って得られたポリスルホンを摩砕し、次いで300μm未満の寸法にまで選別することによって得られた、300μm未満の寸法を有する粒子から構成させる生成物を表す。該混合物は、27重量%、即ち31容量%の可塑剤を含有していた。
DSCによって決定されるイミダゾールの融点は、イミダゾールのDSCサーモグラムを表す図6に示すように90℃である。図6において、実線の曲線は全熱流を表し、点線の曲線は可逆シグナルを表し、鎖線の曲線は不可逆シグナルを表す。
PSUSH/イミダゾール混合物を、70cm3のチャンバーと25mm直径の逆回転ローターとを備えるRheomixミキサー(Haake社製)内で作製した。該チャンバー上には、充填を実施するホッパーが搭載されていた。該ミキサーの温度を140℃に設定した。これらのローターの回転速度を80rpmに設定したが、これは、80s-1の平均ずりに相当する。
PSUSH及びイミダゾールを1mgまで別々に秤量し、次いで、これらを機械的撹拌によって予備混合してから、該ミキサーのホッパーに投入した。該ローターを20分間作動させた。得られた生成物は、褐色の透明な液体であったが、これは、該混合物の製造温度、即ち140℃ではさほど粘稠ではなかった。室温では、該生成物は固体になり、肉眼では均質に見えた。
該混合物のガラス転移をDSCで決定した。図7は、該混合物のサーモグラムを表しており、ガラス転移温度が102℃であったことを示している。実線の曲線は全熱流束を表し、点線の曲線は可逆シグナルを表し、鎖線の曲線は不可逆シグナルを表す。
該PSUSH/イミダゾール混合物を、2mmシーブを備えた機械的切断ミル(商品名IKAの下で販売)で摩砕した。摩砕後に回収された粒子を、60℃の通風オーブン内に4時間にわたって置いて、押出の障害となるであろう水を除去した。
該PSUSH/イミダゾール混合物の粘度を、ARESレオメーター(Rheometrics社製)により160℃及び180℃で且つ10-1〜102s-1の剪断勾配にわたる動的レオメトリーで特徴付けた。図8は、該混合物の160℃での挙動(正方形)及び180℃での挙動(菱形)を示している。これらのy軸において、η*は粘度を示し、x軸において、fは試料の歪み頻度を示している。
図8は、粘度が100s-1及び180℃で500Pa.sであったこと及び該混合物がそれによって押出できたことを示している。
フィルムを、Gottfert1500毛管レオメータを使用してPSUSH/イミダゾール混合物を押し出すことによって製造した。このレオメーターは、該混合物が導入される加熱容器を備えていた。ピストンが0.8mmの厚さを有するシートダイを介して該溶融混合物を押圧した。この押出温度は、該重合体が流動するように該混合物のガラス転移温度を超える必要があるが、ただし可塑剤の蒸発温度よりも低くなければならない。この場合において選択した押出温度は120℃であった。ダイから出たときのフィルムの厚さは0.8mmであり、そして、該フィルムの延伸によってその厚さを0.1mmにまで減少させた。
次いで、該フィルムを室温にまで冷却させた。このものは透明であり、しかもその表面にはいかなる欠陥もなかった。
次いで、該フィルムを水中に24時間にわたって室温で浸漬させて、該水中に溶解した可塑剤を除去した。該材料の乾燥後のNMR分析により、該可塑剤が完全に除去されたことをチェックすることができた。次いで、この膜を水中又は水飽和雰囲気中で保持した。
これらの電気化学的結果を、低振幅正弦波電圧を電気化学セルにその平行電圧付近で印加することによるインピーダンス測定によって得た。該酸性スルホン化ポリスルホンフィルムのプロトン伝導度(20℃及び90%湿度で測定)は、0.7mS/cmに等しかった。
【0030】
例4
酸性スルホン化ポリスルホン/テトラエチルスルファミド
この例は、例3で使用したPSUSH重合体及び可塑剤としてテトラエチルスルファミドを使用して製造した。該混合物は、26重量%、即ち30容量%の可塑剤を含有していた。
DSCで決定されるテトラエチルスルファミドの融点は、テトラエチレンスルホンアミドのDSCサーモグラムを表す図9に示すように−48℃であった。図9において、実線の曲線は全熱流を表し、点線の曲線は可逆シグナルを表し、鎖線の曲線は不可逆シグナルを表す。
該PSUSH/テトラエチルスルファミド混合物を例3で使用したのと同一のRheomixミキサーで製造した。該ミキサーの温度を100℃に設定した。これらのローターの回転速度を80rpmに設定したが、これは、80s-1の平均ずりに相当する。
PSUSH及びテトラエチレンスルホンアミドを1mgまで別々に秤量し、次いで、これらを機械的撹拌によって予備混合してから、該ミキサーのホッパーに投入した。該ローターを20分間作動させた。得られた生成物は、淡褐色の透明な液体であったが、これは、該混合物の製造温度、即ち100℃ではさほど粘稠ではなかった。室温では、該生成物は固体になり、肉眼では均質に見えた。
該混合物のガラス転移は100℃であったが、この評価は、100℃周辺で液体になった該混合物をゆっくりと加熱することによってこれを評価することによって行った。
図10は、該混合物のDSCサーモグラムを示しているが、ガラス転移温度は、その中では明らかでなかったことが分かる。実線の曲線は全熱流を表し、点線の曲線は可逆シグナルを表し、鎖線の曲線は不可逆シグナルを表す。
該PSUSH/テトラエチルスルファミド混合物を、2mmシーブを備えた機械的切断ミル(IKAの商品名で販売)で摩砕した。摩砕後に回収された粒子を、80℃の通風オーブン内に4時間にわたって置いて、押出の障害となるであろう水を除去した。
PSUSH/テトラスルホンアミド混合物の粘度を、ARESレオメーター(Rheometrics社製)により120℃及び10-1〜102s-1の剪断勾配での動的レオメトリーで特徴付けた。図11は、該混合物の挙動を示している。細い実線で繋がれた円によって定められた曲線は、G’、即ち、弾性係数を表す。破線によって繋がれた四角によって定められた曲線はG”、即ち、粘性係数を表す。太い実線で繋がれた四角によって定められた曲線は粘度η*を表す。この図は、その粘度が100s-1及び120℃で1000Pa.sであったこと及び該混合物がそれによって押出できたことを示している。
フィルムを、例3で使用したのと同一のGottfert1500毛管レオメータを使用してPSUSH/テトラエチルスルファミド混合物を押し出すことによって製造した。この場合において選択した押出温度は120℃であった。ダイから出たフィルムの厚さは0.8mmであり、該フィルムの延伸によってその厚さを0.1mmまで減少させることができた。
次いで、該フィルムを室温にまで冷却させた。このものは透明であり、しかもその表面にはいかなる欠陥もなかった。
次いで、該フィルムを水中に24時間にわたって室温で浸漬させて、該水中に溶解した可塑剤を除去した。該材料の乾燥後のNMR分析によって、該可塑剤が完全に除去されたことを確認することができた。次いで、この膜を水中又は水飽和雰囲気中で保持した。
該酸性スルホン化ポリスルホンフィルムのプロトン伝導性(例3と同様の方法で20℃及び90%湿度で測定)は、1.1mS/cmに等しかった。
【0031】
例5
スルホン化ポリスルホン/テトラエチルスルファミド/H3
この例を、例3で使用したPSUS重合体、可塑剤としてのテトラエチルスルファミド及び充填剤としてのホスファトアンチモン酸(H3)を使用して実施した。該混合物は、26重量%、即ち30容量%の可塑剤を含有していた。H3/PSUSH混合物(これは、3種の構成成分の混合物に対して74重量%又は70容量%に相当する)において、H3は、PSUSHに対して10容量%に相当する。
該PSUSH/テトラエチルスルファミド/H3混合物を例3で使用したのと同一のRheomixミキサーで製造した。該ミキサーの温度を100℃に設定した。これらのローターの回転速度を80rpmに設定したが、これは、80s-1の平均ずりに相当する。
PSUSH、テトラエチルスルファミド及びH3を1mgまで別々に秤量し、次いで、これらを機械的撹拌によって予備混合してから、該ミキサーのホッパーに投入した。該ローターを20分間作動させた。得られた生成物は、黄色の透明な液体であったが、これは、該混合物の製造温度、即ち100℃ではさほど粘稠ではなかった。室温では、該生成物は固体になり、肉眼では均質に見えた。
該PSUSH/テトラエチルスルファミド/H3混合物を、2mmシーブを備えた機械的切断ミル(IKAという商品名で販売)で摩砕した。摩砕後に回収された粒子を、80℃の通風オーブン内に4時間にわたって置いて、押出の障害となるであろう水を除去した。
該PSUSH/テトラエチルスルファミド/H3混合物の粘度を、ARESレオメーター(Rheometrics社製)により160℃及び10-1〜102s-1の剪断勾配での動的レオメトリーで特徴付けた。図12は、該混合物の挙動を示している。円によって定められた曲線は、この例の3成分混合物についての粘度η*を示す。四角によって定められた曲線は、例4からの2成分混合物に相当する。図12は、その粘度が100s-1及び160℃で1000Pa.sであったこと、H3を有しない2成分混合物の粘度とほとんど差がなかったこと及びこの例の3成分混合物がそれによって押出できたことを示している。
フィルムを、例3で使用したのと同じGottfert1500毛管レオメータを使用してPSUSH/テトラエチルスルファミド/H3混合物を押し出すことによって製造した。この場合において選択した押出温度は120℃であった。ダイから出たフィルムの厚さは0.8mmであり、該フィルムの延伸によってその厚さを0.1mmまで減少させることができた。
次いで、該フィルムを室温にまで冷却させた。このものは透明であり、しかもその表面にはいかなる欠陥もなかった。
次いで、該フィルムを水中に24時間にわたって室温で浸漬させて、該水中に溶解した可塑剤を除去した。該材料の乾燥後のNMR分析によって、可塑剤が完全に除去されたことを確認できた。次いで、この膜を水中又は水飽和雰囲気中で保持した。
【0032】
例6〜8
これらの例は、重合体/可塑剤混合物の押出(例3〜5からのものと同一のもの)に関し、この押出は、Microcompounderという商品名でDACA社が販売する押出器を使用して実施した。
該押出器の本体は、共に組み立てられた2個の同様のプレートから形成されている。図13は、該押出器を洗浄のために開いたときに見られるようなプレート(5)の一つの正面図を示している。このものは、2個の逆回転円錐スクリュー(2,2’)が設置された胴部(1)と、該胴部内の温度を均一に維持するように該2個のプレート間に挿入された加熱カートリッジ(図示しない)と、温度センサー(図示しない)と、トルクセンサー(図示しない)と、二方弁(3)と、交換可能ダイ(4)と、該胴部の下部を上部に連結している導管(6)とを備えている。
胴部の体積(1)は4.5cm3であった。
2個の逆回転円錐スクリュー(2,2’)は、100mmの長さ及び10mmの最大直径を有していた。それらの回転速度は、0〜360rpmに変更できた。この例では、その速度は100rpmであったが、これはほぼ1500s-1の平均ずり、即ち、産業上の押出条件を代表するずりに相当する。
二方弁(3)は、該スクリューの終端部にある材料を再度胴部の中に戻すことができる「再循環」位置か、又は該材料をダイから出すための「押出」位置のいずれかにあることができる。この例では、「再循環」位置にある。
この例で使用した交換可能ダイ(4)は、2mm直径の軸対称ダイであった。Microcompounder押出器において、押出を次の条件下で実施した。該押出器のプレートを所定の温度Teに設定した。押し出される混合物を供給ホッパーに置き、そしてピストンで胴部に押し込んだ。該胴部の内部で、2個の共回転スクリューが該材料を混合及び溶融させ、そしてこれを底部に押しやった。該材料が該胴部の底部に達したときに、このものを外部導管(6)を介して戻し、次いで、再度胴部に入れて混合した。このプロセスを、所定の期間Dexにわたって数回繰り返すことができた。該重合体/可塑剤混合物の温度を温度センサーによりリアルタイムで測定した。トルクセンサー(図示しない)により、これらのスクリューの回転中に該材料によって生じた抵抗を0〜5N.mの範囲で測定した。この混合プロセスの終了時に、該弁を押出位置に戻して、該材料を該ダイ(4)から出した。
【0033】
例6:スルホン化ポリスルホン/イミダゾール
この例を、例3と同様の方法で製造されたPSUSH/イミダゾール混合物を使用して実施したが、ただし、イミダゾール/PSUSH重量比は27/73であった。
押出を、3.20gの混合物、160℃のプレート温度Te及び5分の期間Dexで実施した。
温度センサーによってリアルタイムで測定される該PSUSH/イミダゾール混合物の温度は、160℃で一定のままであったが、これは、該混合物が過剰に加熱されなかったことを意味する。測定されたトルクは3.8N.m.であった。つまり、該材料は160℃で高い粘度を有していた。この混合プロセスの終了時に、該弁を押出位置に戻して、該材料を該ダイから出した。得られた押出物は滑らかであり且つ室温では柔らかかった。
【0034】
例7:スルホン化ポリスルホン/テトラエチルスルファミド
この例を、例4と同様の方法で製造されたPSUSH/テトラエチルスルファミド混合物を使用して実施したが、ただし、テトラエチルスルファミド/PSUSH重量比は26/74であった。
押出を5.4gの混合物、130℃のプレート温度Te及び5分の期間Dexで実施した。
温度センサーによってリアルタイムで測定されるPSUSH/テトラエチルスルファミド混合物の温度は130℃のままであったが、これは、該混合物が過剰に加熱されなかったことを意味する。測定されたトルクは2.7N.m.であった。つまり、該材料は容易に流動した。この混合プロセスの終了時に、該弁を押出位置に戻して、該材料を該ダイから出した。得られた押出物は滑らかであり且つ室温では柔らかかった。
【0035】
例8:スルホン化ポリスルホン/テトラエチルスルファミド/H3
この例を、例5と同様の方法で製造されたPSUSH/テトラエチルスルファミド/H3混合物を使用して実施した。該混合物は、26重量%、即ち30容量%の可塑剤を含有していた。H3/PSUSH混合物(これは3種成分の混合物に対して74重量%又は70容量%に相当する)において、H3はPSUSHに対して10容量%に相当する。
押出を、2.90gの混合物を使用して、次の条件下:160℃のプレート温度Te及び5分の期間Dexで実施した。
温度センサーによってリアルタイムで測定される該PSUSH/テトラエチルスルファミド/H3混合物の温度は160℃のままであったが、これは、該混合物が過剰に加熱されなかったことを意味する。測定されたトルクは4N.m.であった。つまり、該材料は160℃で高い粘度を有していた。この混合プロセスの終了時に、該弁を押出位置に戻して、該材料を該ダイから出した。得られた押出物は滑らかであり且つ室温では柔らかかった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】スルホン化ポリスルホンの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図2】スルホン化ポリスルホンのIRスペクトルを示す図である。
【図3】スルホン化ポリスルホンの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図4】スルホン化ポリスルホンのIRスペクトルを示す図である。
【図5】スルホン化ポリスルホンのサーモグラムを示す図である。
【図6】イミダゾールのDSCサーモグラムを示す図である。
【図7】PSUSH/イミダゾール混合物のサーモグラムを示す図である。
【図8】PSUSH/イミダゾール混合物の160℃での挙動(正方形)及び180℃での挙動(菱形)を示す図である。
【図9】テトラエチレンスルホンアミドのDSCサーモグラムを示す図である。
【図10】PSUSH/テトラエチルスルファミド混合物のサーモグラムを示す図である。
【図11】PSUSH/テトラエチルスルファミド混合物の挙動を示す図である。
【図12】PSUSH/テトラエチルスルファミド/H3混合物の挙動を示す図である。
【図13】押出器本体の正面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 胴部
2 逆回転円錐スクリュー
2’ 逆回転円錐スクリュー
3 二方弁
4 交換可能ダイ
5 プレート
6 導管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性イオン基を有する重合体と少なくとも1種の可塑剤とから構成される混合物を製造し、得られた混合物を押し出してフィルムを形成し、得られたフィルムを水性媒体中で洗浄して該可塑剤を除去することからなる、式−Ap-(H+)p(式中、Aは該イオン基の陰イオン部分を表し、pは該陰イオン基の価数である。)に相当する酸性イオン基を有する熱可塑性重合体の押出による膜の製造方法であって、該可塑剤が該重合体のイオン基に対して安定で、水又は水と混和性のある溶媒に可溶の非揮発性化合物から選択され、該可塑剤が
・水素結合型の弱い結合の形成によって該重合体のイオン基と反応する化合物であって、スルファミドH2N−SO2−NH2、テトラアルキルスルファミド、アルキルスルホンアミド及びアリールスルホンアミドR3−SO2−NH2(R3はフェニル基、トリル基又はナフチル基である。)よりなる群から選択されるもの、及び
・イオン結合型の強い結合の形成によって該重合体のイオン基と反応する化合物
から選択されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
押出後に得られるフィルムを洗浄するために使用される前記水性媒体が、水、前記可塑剤が溶解できる水と混和性のある媒体又は当該溶媒と水との混合物からなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱可塑性重合体は、その鎖が同一の又は異なる反復単位から構成される重合体であり、ここで、それぞれの反復単位は、少なくとも1個の官能基及び少なくとも1個の単環式又は多環式芳香族基を有し、該官能基はエステル、ケトン、エーテル、スルフィド、スルホン、ベンゾオキサゾール、アミノ酸及びイミド基から選択され、該芳香族基の少なくともいくつかは、酸性イオン基を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記官能基が前記重合体主鎖の一部分を構成することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記官能基が芳香族基の側方置換基の一部分を構成し、該芳香族基が前記重合体主鎖の一部分を構成することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記重合体の前記イオン基−Ap-(H+)pが、スルホン酸塩−SO3-H+基、カルボン酸塩−CO2H+基、チオカルボン酸塩−C(=S)O-H+基、ジチオカルボン酸塩−CS2-H+基、ホスホン酸塩−PO32-(H+)2基、スルホニルアミド−SO2NH-H+基及びスルホニルイミド(X−SO2NSO2−)-H+基(式中、Xは、アルキル基、過弗素化又は部分弗素化アルキル基又はアリール基である。)から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記重合体は、記号n、m、x及びyがそれぞれ反復単位の数を表す次のセグメント:
・式Iに相当するポリフェニレンオキシド:
【化1】
(式中、R及びR1は、互いに独立して、H、アルキル基、アルケニル基又はアリール基であり、n及びmは、それぞれ反復単位の数を表す。);
・以下の式IIに相当するポリエーテルエーテルケトン:
【化2】
・以下の式IIIに相当するポリエーテルケトン:
【化3】
・反復単位が以下の式IVに相当するポリベンゾオキサゾール:
【化4】
・所定の単位が酸性イオン基を有し、次式:
【化5】
に相当するポリイミドに変換されるポリアミド酸;
・次式VIに相当するポリパラフェニレン:
【化6】
・以下の式VIIに相当するポリフェニレンスルフィド:
【化7】
・以下の式VIIIに相当するポリエーテルスルホン:
【化8】
(式中、R2は単結合又は−C(CH3)−基を表す。)
から選択されるセグメントを含む重合体から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記可塑剤が、
・イミダゾール、N−アルキルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、
・第一アミン末端基又は第二アミン末端基を有するエチレンオキシドオリゴマー、
・第二アミン、及び
・3個のエチレンオキシドオリゴマー置換基を有する第三アミン
から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
押出を受ける、イオン性熱可塑性重合体と可塑剤との混合物が、充填剤をさらに含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記充填剤が機械的強度を改善させるための充填剤であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記充填剤がガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ及びセルロースミクロフィブリル、アルミナ繊維及びポリアラミド繊維から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記充填剤が、前記重合体の押出後に得られるフィルムの親水性を改善させるための充填剤であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記充填剤がホスファトアンチモン酸であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項1】
酸性イオン基を有する重合体と少なくとも1種の可塑剤とから構成される混合物を製造し、得られた混合物を押し出してフィルムを形成し、得られたフィルムを水性媒体中で洗浄して該可塑剤を除去することからなる、式−Ap-(H+)p(式中、Aは該イオン基の陰イオン部分を表し、pは該陰イオン基の価数である。)に相当する酸性イオン基を有する熱可塑性重合体の押出による膜の製造方法であって、該可塑剤が該重合体のイオン基に対して安定で、水又は水と混和性のある溶媒に可溶の非揮発性化合物から選択され、該可塑剤が
・水素結合型の弱い結合の形成によって該重合体のイオン基と反応する化合物であって、スルファミドH2N−SO2−NH2、テトラアルキルスルファミド、アルキルスルホンアミド及びアリールスルホンアミドR3−SO2−NH2(R3はフェニル基、トリル基又はナフチル基である。)よりなる群から選択されるもの、及び
・イオン結合型の強い結合の形成によって該重合体のイオン基と反応する化合物
から選択されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
押出後に得られるフィルムを洗浄するために使用される前記水性媒体が、水、前記可塑剤が溶解できる水と混和性のある媒体又は当該溶媒と水との混合物からなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱可塑性重合体は、その鎖が同一の又は異なる反復単位から構成される重合体であり、ここで、それぞれの反復単位は、少なくとも1個の官能基及び少なくとも1個の単環式又は多環式芳香族基を有し、該官能基はエステル、ケトン、エーテル、スルフィド、スルホン、ベンゾオキサゾール、アミノ酸及びイミド基から選択され、該芳香族基の少なくともいくつかは、酸性イオン基を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記官能基が前記重合体主鎖の一部分を構成することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記官能基が芳香族基の側方置換基の一部分を構成し、該芳香族基が前記重合体主鎖の一部分を構成することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記重合体の前記イオン基−Ap-(H+)pが、スルホン酸塩−SO3-H+基、カルボン酸塩−CO2H+基、チオカルボン酸塩−C(=S)O-H+基、ジチオカルボン酸塩−CS2-H+基、ホスホン酸塩−PO32-(H+)2基、スルホニルアミド−SO2NH-H+基及びスルホニルイミド(X−SO2NSO2−)-H+基(式中、Xは、アルキル基、過弗素化又は部分弗素化アルキル基又はアリール基である。)から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記重合体は、記号n、m、x及びyがそれぞれ反復単位の数を表す次のセグメント:
・式Iに相当するポリフェニレンオキシド:
【化1】
(式中、R及びR1は、互いに独立して、H、アルキル基、アルケニル基又はアリール基であり、n及びmは、それぞれ反復単位の数を表す。);
・以下の式IIに相当するポリエーテルエーテルケトン:
【化2】
・以下の式IIIに相当するポリエーテルケトン:
【化3】
・反復単位が以下の式IVに相当するポリベンゾオキサゾール:
【化4】
・所定の単位が酸性イオン基を有し、次式:
【化5】
に相当するポリイミドに変換されるポリアミド酸;
・次式VIに相当するポリパラフェニレン:
【化6】
・以下の式VIIに相当するポリフェニレンスルフィド:
【化7】
・以下の式VIIIに相当するポリエーテルスルホン:
【化8】
(式中、R2は単結合又は−C(CH3)−基を表す。)
から選択されるセグメントを含む重合体から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記可塑剤が、
・イミダゾール、N−アルキルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、
・第一アミン末端基又は第二アミン末端基を有するエチレンオキシドオリゴマー、
・第二アミン、及び
・3個のエチレンオキシドオリゴマー置換基を有する第三アミン
から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
押出を受ける、イオン性熱可塑性重合体と可塑剤との混合物が、充填剤をさらに含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記充填剤が機械的強度を改善させるための充填剤であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記充填剤がガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ及びセルロースミクロフィブリル、アルミナ繊維及びポリアラミド繊維から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記充填剤が、前記重合体の押出後に得られるフィルムの親水性を改善させるための充填剤であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記充填剤がホスファトアンチモン酸であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2008−533269(P2008−533269A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501355(P2008−501355)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000526
【国際公開番号】WO2006/097603
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507310949)
【出願人】(507310961)
【出願人】(507308898)
【出願人】(506369944)サントル ナスィオナル ド ラ ルシェルシュ スィアンティフィク (45)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000526
【国際公開番号】WO2006/097603
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507310949)
【出願人】(507310961)
【出願人】(507308898)
【出願人】(506369944)サントル ナスィオナル ド ラ ルシェルシュ スィアンティフィク (45)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]