説明

酸性ゲル状食品用ベース及びゲル製品

【課題】2質量%以上のコラーゲンペプチドを含有し、牛乳を加えたときに、ゲルの状態、なめらかさ、粘度などの食感や、酸味及び風味が共に良好なゲル製品を提供可能な酸性ゲル状食品用ベースを提供することができる酸性ゲル状食品用ベース、及びゲル製品の提供。
【解決手段】低メトキシルペクチンと、コラーゲンペプチドと、有機酸と、有機酸塩とを含み、前記コラーゲンペプチドの含有量が2質量%〜10質量%、前記有機酸の含有量が2質量%以下、且つ前記有機酸塩の含有量が前記有機酸に対する質量比で1未満である酸性ゲル状食品用ベースである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性ゲル状食品用ベース及びゲル製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低メトキシルペクチン、糖類、必要に応じて果汁等に、クエン酸及びクエン酸三ナトリウムを重量比=1:1〜1:1.5で加えて最終組成物のpHを3.8〜4.3に調整し、レトルトパウチ等に密封して加熱処理し、これに牛乳を加えて、酸性ゲル状食品を製造する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、現在、需要者の健康及び美容への意識の高まりから、食品への機能性素材の配合が強く求められており、中でも、コラーゲンペプチドのニーズが高い。
しかしながら、2質量%以上のコラーゲンペプチドを含有し、牛乳などのカルシウム含有物を加えたときに、ゲルの状態、なめらかさ、粘度などの食感や、酸味及び風味が共に良好なゲル製品を提供可能な酸性ゲル状食品用ベースについては、未だ十分満足し得るものが提供されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭59−4104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、2質量%以上のコラーゲンペプチドを含有し、牛乳を加えたときに、ゲルの状態、なめらかさ、粘度などの食感や、酸味及び風味が共に良好なゲル製品を提供可能な酸性ゲル状食品用ベース、及びゲル製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を解決すべく、鋭意検討した結果、低メトキシルペクチン、有機酸及び有機酸塩を含み、且つ前記有機酸と有機酸塩の質量比が1:1〜1.5の酸性ゲル状食品用ベースに2質量%以上のコラーゲンペプチドを含有させた場合に、2質量%未満の低含有量の場合と比較して、牛乳などのカルシウム含有物を加えて得られるゲル製品のゲルの保形成性がやや低下する乃至は流動性が高くなり、よって、良好なゲルの保形成性が得られないことを見出した。また、前記コラーゲンペプチドには独特な臭いがあり、前記酸性ゲル状食品用ベースに3質量%以上のコラーゲンペプチドを含有させた場合に、このコラーゲン臭が残ることを見出した。これらの知見に基づき、本発明者らは、前記コラーゲンペプチドの含有量を2質量%〜10質量%、前記有機酸の含有量を2質量%以下、且つ前記有機酸塩の含有量を前記有機酸に対する質量比で1未満とすることにより、牛乳などのカルシウム含有物を添加した際に良好なゲルの保形成性が得られ、食感、酸味及び風味の良好なゲル製品を提供可能な酸性ゲル状食品用ベース、及びゲル製品を提供できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 低メトキシルペクチンと、コラーゲンペプチドと、有機酸と、有機酸塩とを含み、
前記コラーゲンペプチドの含有量が2質量%〜10質量%、前記有機酸の含有量が2質量%以下、且つ前記有機酸塩の含有量が前記有機酸に対する質量比で1未満であることを特徴とする酸性ゲル状食品用ベースである。
<2> pHが、4.3未満である前記<1>に記載の酸性ゲル状食品用ベースである。
<3> pHが、3.8以上4.3未満である前記<1>から<2>のいずれかに記載の酸性ゲル状食品用ベースである。
<4> 有機酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、アジピン酸、フィチン酸及びリン酸から選ばれる1種以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載の酸性ゲル状食品用ベースである。
<5> 有機酸が、クエン酸である前記<4>に記載の酸性ゲル状食品用ベースである。
<6> 有機酸塩が、クエン酸三ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ピロリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウムから選ばれる1種以上である前記<1>から<5>のいずれかに記載の酸性ゲル状食品用ベース。
<7> 有機酸塩が、クエン酸三ナトリウムである前記<6>に記載の酸性ゲル状食品用ベースである。
<8> コラーゲンペプチドの含有量が、4質量%〜6質量%である前記<1>から<7>のいずれかに記載の酸性ゲル状食品用ベースである。
<9> 有機酸塩の含有量が、有機酸に対する質量比で0.4〜0.8である前記<1>から<8>のいずれかに記載の酸性ゲル状食品用ベースである。
<10> 前記<1>から<9>に記載の酸性ゲル状食品用ベースに、カルシウム含有物を添加してゲル化させたことを特徴とするゲル製品である。
<11> カルシウム含有物が、牛乳である前記<10>に記載のゲル製品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、2質量%以上のコラーゲンペプチドを含有し、牛乳を加えたときに、ゲルの状態、なめらかさ、粘度などの食感や、酸味及び風味が共に良好なゲル製品を提供可能な酸性ゲル状食品用ベース、及びゲル製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、比較例1のゲル製品について、牛乳混合後の粘度を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(酸性ゲル状食品用ベース)
本発明の酸性ゲル状食品用ベースは、少なくとも低メトキシルペクチンと、コラーゲンペプチドと、有機酸と、有機酸塩とを含んでなり、更に必要に応じて、糖類などのその他の成分を含む。
本発明の酸性ゲル状食品用ベースは、前記コラーゲンペプチドの含有量が2質量%〜10質量%、前記有機酸の含有量が2質量%以下、且つ前記有機酸塩の含有量が前記有機酸に対する質量比で1未満であることを必要とする。
前記酸性ゲル状食品用ベースのpHとしては、4.3未満が好ましく、3.8以上4.3未満がより好ましい。
本発明の酸性ゲル状食品用ベースによれば、牛乳などのカルシウム含有物を添加したときに、ゲルの状態、なめらかさ、粘度などの食感や、酸味及び風味が共に良好なゲル製品を提供することができる。
【0011】
<低メトキシルペクチン>
低メトキシルペクチンとは、ペクチン(カルボキシル基の一部がメチルエステル化されたポリガラクツロン酸が主成分である複合多糖類)のうち、メチルエステル化されたガラクツロン酸の割合(%)を示すエステル化度(DE)が50%未満のものを指す。低メトキシルペクチンは、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどの多価金属イオンと反応してゲル化する。
なお、一般に、低メトキシルペクチンは、高メトキシルペクチン(DE50%以上のペクチン)とは異なり、糖含有量乃至pHによらずゲルを形成するといわれているが、本発明者らは、低メトキシルペクチン、有機酸及び有機酸塩を含み、且つ前記有機酸と有機酸塩の質量比が1:1〜1.5の酸性ゲル状食品用ベースに2質量%以上のコラーゲンペプチドを含有させた場合に、2質量%未満の低含有量の場合と比較して、牛乳などのカルシウム含有物を加えて得られるゲル製品のゲルの保形成性がやや低下する乃至は流動性が高くなり、よって、良好なゲルの保形成性が得られないことを見出した。これに対し、本発明者らは、前記コラーゲンペプチドの含有量を2質量%〜10質量%、前記有機酸の含有量を2質量%以下、且つ前記有機酸塩の含有量を前記有機酸に対する質量比で1未満とすることにより、牛乳などのカルシウム含有物を添加した際に良好なゲルの保形成性が得られ、食感、酸味及び風味の良好なゲル製品を提供可能な酸性ゲル状食品用ベース、及びゲル製品を提供できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
前記低メトキシルペクチンの前記酸性ゲル状食品用ベースにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%〜5.0質量%が好ましく、1.0質量%〜3.0質量%がより好ましい。
【0013】
<コラーゲンペプチド>
前記コラーゲンペプチドとは、コラーゲンを酵素処理などにより分解し、低分子化したものであり、前記コラーゲンペプチドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を用いることができる。
該市販品としては、例えば、コラーゲンペプチドSFH(ルスロ社製)、コラーゲンペプチド800F(新田ゼラチン社製)などが挙げられる。
【0014】
上述の通り、本発明者らは、低メトキシルペクチン、有機酸及び有機酸塩を含み、且つ前記有機酸と有機酸塩の質量比が1:1〜1.5の酸性ゲル状食品用ベースに2質量%以上のコラーゲンペプチドを含有させた場合に、2質量%未満の低含有量の場合と比較して、牛乳などのカルシウム含有物を加えて得られるゲル製品のゲルの保形成性がやや低下する乃至は流動性が高くなり、よって、良好なゲルの保形成性が得られないことを見出した。また、前記コラーゲンペプチドには独特な臭いがあり、前記酸性ゲル状食品用ベースに3質量%以上のコラーゲンペプチドを含有させた場合に、このコラーゲン臭が残ることを見出した。これらの知見に基づき、本発明者らは、前記コラーゲンペプチドの含有量を2質量%〜10質量%、前記有機酸の含有量を2質量%以下、且つ前記有機酸塩の含有量を前記有機酸に対する質量比で1未満とすることにより、牛乳などのカルシウム含有物を添加した際に良好なゲルの保形成性が得られ、食感、酸味及び風味の良好なゲル製品を提供可能な酸性ゲル状食品用ベース、及びゲル製品を提供できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0015】
前記コラーゲンペプチドの前記酸性ゲル状食品用ベースにおける含有量としては、2質量%〜10質量%であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、風味、製造時の溶解性、効能及びコストの観点から、4質量%〜6質量%が好ましい。
【0016】
<有機酸>
前記有機酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、アジピン酸、フィチン酸、リン酸などが挙げられる。これらの中でも、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸が好ましく、風味及びコストの点で、クエン酸がより好ましい。
【0017】
前記有機酸の前記酸性ゲル状食品用ベースにおける含有量としては、2質量%以下であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%〜1.5質量%が好ましく、0.7質量%〜1.2質量%がより好ましい。
なお、後述する果肉乃至果汁などのその他の成分に含まれる有機酸も、前記有機酸として扱う。
【0018】
<有機酸塩>
前記有機酸塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クエン酸三ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ピロリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどが挙げられる。これらの中でも、クエン酸三ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウムが好ましく、風味及びコストの点で、クエン酸三ナトリウムがより好ましい。
【0019】
前記有機酸塩の含有量としては、前記有機酸に対する質量比で1未満であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.3〜0.8が好ましく、0.4〜0.6がより好ましい。
【0020】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、例えば、糖類、飲食品を製造するに際して通常用いられる補助的原料乃至添加物などが挙げられる。
【0021】
<<糖類>>
前記糖類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の糖類を選択することができ、例えば、果糖、ブドウ糖、異性化糖等の単糖類;スクロース(ショ糖)、麦芽糖等の二糖類や、マルトトリオース等の三糖類などの少糖類などが挙げられる。
前記糖類の前記酸性ゲル状食品用ベースにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%〜15質量%が好ましく、8質量%〜12質量%がより好ましい。
なお、後述する果肉乃至果汁などのその他の成分に含まれる糖類も、前記糖類として扱う。
【0022】
<<補助的原料乃至添加物>>
前記補助的原料乃至添加物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、エリスリトール、ソルビトール、スクラロース、アセスルファムK、ステビア抽出物等の甘味物質;L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、ビタミンB群、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム等のビタミン類;ポリデキストロース、難消化性デキストリン等の食物繊維;エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤;アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、寒天、アミノ酸類、色素、香料、保存剤、果肉乃至果汁、乳酸菌、ヒアルロン酸、コエンザイムQ10などが挙げられる。
前記果肉乃至果汁としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、いちご、オレンジ、ブルーベリー、マンゴー、桃、バナナ、メロン、リンゴ、パイナップルなどが挙げられる。
【0023】
(ゲル製品)
本発明のゲル製品は、本発明の酸性ゲル状食品用ベースに、カルシウム含有物を添加してゲル化させてなり、更に必要に応じて、その他の成分を含む。
前記カルシウム含有物としては、ゲル化に必要なカルシウムを含有しているものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、牛乳、成分調整牛乳、加工乳などが挙げられる。これらの中でも、牛乳が好ましい。
【0024】
前記カルシウム含有物の前記酸性ゲル状食品用ベースに対する添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、カルシウム及び水分を含有する牛乳に換算して、0.5倍量〜2.0倍量が好ましく、1.0倍量〜1.5倍量がより好ましい。
【実施例】
【0025】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0026】
(比較例1)
低メトキシルペクチンを2.0質量部、食物繊維を6.2質量部、コラーゲンペプチド(コラーゲンペプチドSFH、ルスロ社製)を0.7質量部、グラニュー糖を〔14.1質量部−コラーゲンペプチドの質量部=13.4質量部〕を混合し、水に分散後、85℃で5分間加熱溶解し、クエン酸を0.75質量部、クエン酸三ナトリウムを0.75質量部加え、室温まで冷却後、水で100質量部にゲージアップして、比較例1のゲル状食品用ベースを調製した。
次いで、ゲル状食品用ベースと等量の牛乳とを混合して、比較例1のゲル製品を調製した。
なお、比較例1のゲル状食品用ベースは、クエン酸とクエン酸三ナトリウムの比率が1:1であり、特公昭59−4104号公報に記載の発明に該当する。
【0027】
<評価>
調製した比較例1のゲル状食品用ベースについて、該ベースのpHを測定した。また、比較例1のゲル製品について、牛乳混合後の粘度、ゲルの状態、ゲルのなめらかさ、ゲルの酸味、及びゲルの風味について下記評価基準に従い、評価した。結果を表1に示す。
なお、牛乳混合後の粘度の測定には、HAAKE VT550、MV−DIN(HAAKE社製、回転数:30rpm)を用い、牛乳と30秒間混合し、60秒間静置後、測定開始30秒後の粘度を測定した(図1;図中、η[mPas])。
<<評価基準>>
〔ゲルの状態〕
○:保形成性があり良好
△:保形成性がやや少なく不良
×:流動性が高く不良
〔ゲルのなめらかさ〕
○:舌触りが良く、良好
△:やや液状に近く不良
×:液状に近く不良
××:液状で不良
〔ゲルの酸味〕
○:程良い酸味であり良好
△:やや酸味が強いが酸性食品として問題ない
×:酸味が強く不良
〔ゲルの風味〕
○:コラーゲン臭がなく良好
△:ややコラーゲン臭があり不良
×:コラーゲン臭があり不良
【0028】
(比較例2〜7)
比較例1において、コラーゲンペプチドを0.7質量部から、表1に示す質量部に変え、グラニュー糖の質量部を〔14.1質量部−コラーゲンペプチドの質量部〕とした以外は、比較例1と同様に、比較例2〜7のゲル状食品用ベース、及びゲル製品を調製し、評価を行った。結果を表1に示す。
なお、比較例2〜7のゲル状食品用ベースは、クエン酸とクエン酸三ナトリウムの比率が1:1であり、特公昭59−4104号公報に記載の発明に該当する。
【0029】
【表1】

【0030】
<結果>
クエン酸とクエン酸三ナトリウムの比率が1:1(比較例1〜7)であって、コラーゲンペプチドの添加量が0.7質量%〜1.0質量%の場合(比較例1〜2)、牛乳と混ぜた際に、酸味、風味及び食感の良好なゲルを形成する酸性ゲル状食品用ベースを製造することが可能である。しかしながら、コラーゲンペプチドの添加量が2.0質量%〜4.0質量%の場合(比較例3〜5)、牛乳と混ぜた際に、酸味は良好であったが、保形成性がやや少なくなり、コラーゲン臭もやや感じられ、またpHが4.3以上となり、酸性域から外れ、酸性食品として適さないことがわかった。さらに、コラーゲンペプチドの添加量が5.0質量%〜5.5質量%の場合(比較例6〜7)、牛乳と混ぜた際に、酸味は良好であったが、保形成性が失われ、コラーゲンペプチドの添加量が2.0質量%〜4.0質量%の場合と同様に、酸性域から外れ、酸性食品として適さないことがわかった。
【0031】
(比較例8〜9)
比較例7において、クエン酸及びクエン酸三ナトリウムの添加量を0.75質量部及び0.75質量部から、それぞれ表2に示す質量部に変えた以外は、比較例7と同様に、比較例8〜9のゲル状食品用ベース、及びゲル製品を調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0032】
(実施例1〜5)
比較例7において、コラーゲンペプチドの添加量を5.5質量部から、表2に示す質量部に変え、クエン酸及びクエン酸三ナトリウムの添加量を0.75質量部及び0.75質量部から、それぞれ表2に示す質量部に変えた以外は、比較例7と同様に、実施例1〜5のゲル状食品用ベース、及びゲル製品を調製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
<結果>
5.5質量%コラーゲンペプチドを含み、クエン酸とクエン酸三ナトリウムの比率が1:1又は1以上であると(比較例8〜9)、比較例6〜7と同様に、pHが4.3以上となり、かつ、牛乳と混ぜた際のゲル状態が液状に近くなり、良好なゲルは得られなかった。
一方、比較例7〜9と同量(5.5質量%)のコラーゲンペプチドを配合し、クエン酸三ナトリウムの量をクエン酸と相対比で1未満にした場合(実施例1〜2)では、pHが4.3未満であり、牛乳と混ぜた際に、酸味、風味及び食感の良好なゲルが得られた。さらに、クエン酸三ナトリウムの量をクエン酸との相対比で1未満、かつコラーゲンペプチドの添加量を増加させた場合(実施例3〜5)においても、pHが4.3未満であり、牛乳と混ぜた際に、酸味、風味及び食感の良好なゲルが得られた。また、クエン酸とクエン酸三ナトリウムの比率が1:1の場合に比べて、クエン酸三ナトリウムの量をクエン酸と相対比で1未満にした場合は、酸味がやや増す傾向にあったが、酸性食品としては問題なく、その反面、コラーゲン臭が抑制される傾向にあった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低メトキシルペクチンと、コラーゲンペプチドと、有機酸と、有機酸塩とを含み、
前記コラーゲンペプチドの含有量が2質量%〜10質量%、前記有機酸の含有量が2質量%以下、且つ前記有機酸塩の含有量が前記有機酸に対する質量比で1未満であることを特徴とする酸性ゲル状食品用ベース。
【請求項2】
pHが、4.3未満である請求項1に記載の酸性ゲル状食品用ベース。
【請求項3】
pHが、3.8以上4.3未満である請求項1から2のいずれかに記載の酸性ゲル状食品用ベース。
【請求項4】
有機酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、アジピン酸、フィチン酸及びリン酸から選ばれる1種以上である請求項1から3のいずれかに記載の酸性ゲル状食品用ベース。
【請求項5】
有機酸塩が、クエン酸三ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ピロリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウムから選ばれる1種以上である請求項1から4のいずれかに記載の酸性ゲル状食品用ベース。
【請求項6】
コラーゲンペプチドの含有量が、4質量%〜6質量%である請求項1から5のいずれかに記載の酸性ゲル状食品用ベース。
【請求項7】
有機酸塩の含有量が、有機酸に対する質量比で0.4〜0.8である請求項1から6のいずれかに記載の酸性ゲル状食品用ベース。
【請求項8】
請求項1から7に記載の酸性ゲル状食品用ベースに、カルシウム含有物を添加してゲル化させたことを特徴とするゲル製品。
【請求項9】
カルシウム含有物が、牛乳である請求項8に記載のゲル製品。

【図1】
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