説明

酸性水中油型乳化油脂組成物

【課題】調理工程での加熱、冷凍等の加工工程においても乳化が安定で油分離がほとんどなく、且つ口溶け、食感が良く風味に優れた酸性水中油型乳化油脂組成物及びこれを用いる食品の提供。
【解決手段】合成乳化剤を含有しない酸性水中油型乳化油脂組成物であって、油脂の含有量が、酸性水中油型乳化油脂組成物全体中50重量%〜85重量%であり、且つ、0.1μm〜2.0μmの体積基準平均粒径を有することを特徴とする酸性水中油型乳化油脂組成物及び当該組成物を包餡用、トッピング用、充填用あるいは塗布用として使用した食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マヨネーズ・ドレッシング類に関し、その中でも油脂含有量の高いマヨネーズ・ドレッシング類であるものに関する。
【背景技術】
【0002】
油脂含有量の高いマヨネーズ・ドレッシングは、ベーカリー製品からサラダ惣菜にいたるまで広く使われている。ここでいうマヨネーズ、ドレッシング類とは、油、食酢、卵を主原材料とする酸性水中油型乳化物全般を意味する。従来、マヨネーズ・ドレッシング類は、サラダ、焼き込み調理パンのトッピング、サンドイッチ等で用いられている。しかしながら、従来のマヨネーズ、ドレッシング類の物性、加工特性は極めて限られており、例えばパンの上にトッピングして焼成する場合、油分離が著しく外観を損ねてしまい、また焼成時に熱凝固して線が切れたりひび割れたり、熱凝固のため口溶け、食感が悪いという課題があった。
【0003】
これまで乳化安定性があり、粒径が小さい酸性水中油型乳化組成物として、特許文献1には、0.1〜1μmの油滴の体積基準平均の酸性水中油型乳化物が提案されている。しかしながら、上記提案の酸性水中油型乳化組成物では、加熱時の乳化安定性について改善されているものの十分なレベルであるとはいえず、また実施例による具体的な記載では、合成乳化剤であるポリグリセリン脂肪酸エステルを使うことから風味においてあまり好ましくないという問題があった。さらには、油相の含有量について10〜70%と記載されているが、実施例による油脂含有量の具体的な記載は、酸性水中油型乳化物全体中35.0〜38.5重量%であり、油脂含有量が50重量%未満においては保存性を維持するため食酢、食塩を多く配合する必要があるため風味に劣り、また物性を維持するためガム質や澱粉等を多く配合する必要がありそのため口溶けに劣るという問題があった。そこで、トッピングして加熱しても油分離がほとんどなく、その組織が切れたり、ひび割れすることなく、食感がソフトで口溶けが良く風味の良いマヨネーズ類が望まれてきた。
【特許文献1】特開平7−31413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調理工程での加熱、冷凍等の加工工程においても乳化が安定で油分離がほとんどなく、且つ口溶け、食感が良く風味に優れた酸性水中油型乳化油脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、酸性水中油型乳化組成物中の油脂含有量を50重量%以上と多くし、油滴の体積基準粒径を0.1μm〜2.0μmと小さくすることで、合成乳化剤を添加しなくても、調理工程での加熱、冷凍等の加工工程においても油分離がほとんどなく乳化が安定で且つ口溶け、食感が良く風味に優れた酸性水中油型乳化組成物を得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の第一は、合成乳化剤を含有しない酸性水中油型乳化油脂組成物であって、油脂の含有量が、酸性水中油型乳化油脂組成物全体中50重量%〜85重量%であり、且つ、0.1μm〜2.0μmの体積基準平均粒径を有することを特徴とする酸性水中油型乳化油脂組成物に関する。本発明の第二は、上記記載の酸性水中油型乳化油脂組成物を用いた食品に関する。本発明の第三は、上記記載の酸性水中油型乳化油脂組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の酸性水中油型乳化油脂組成物は、調理工程での加熱、冷凍等の加工工程においても乳化が安定で油分離がほとんどなく、且つ口溶け、食感が良く風味に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の酸性水中油型乳化油脂組成物は、卵液、食用油脂、食酢を主原料としており、マヨネーズ・ドレッシング類として使用されるものである。従って本発明の酸性水中油型乳化組成物は、pH7.0以下のものを指し、特に衛生的な保存性を高めるためにはpHが5.0以下のものが好ましく、pH4.5以下が好ましい。油相は、主に油脂を含有してなり、ほかに着色料などを含有してもよい。水相は、主に卵液、食酢、水を含有してなり、ほかに澱粉などの増粘剤、食塩などの呈味剤、などを含有してもよい。本発明の酸性水中油型乳化油脂組成物の体積基準平均粒径は、0.1μm〜2.0μmであることが好ましい。体積基準平均粒径が0.1μm未満の場合は、風味の出方が遅く目的とする風味を得られなくなる場合がある。また、体積基準平均粒径が2.0μmを超えると、乳化物の安定性が悪くなる場合がある。
【0009】
本発明でいう体積基準平均粒径とは、粒度分布計で測定した時の体積粒径のメジアン径を意味する。例えばマイクロトラックFRA(日機装(株)社製)を用いて光学的な測定することができる。測定サンプルの前処理条件としては、例えば100mlのビーカー中に約1gをサンプリングし水80gを入れマグネチックスターラーで1000rpmの回転で10分間攪拌したものを試料として測定に用いることができる。
【0010】
本発明の油脂は、食用であれば特に限定されず、植物性油脂、動物性油脂、食用精製加工油脂等を用いることができる。具体的にはあまに油、桐油、サフラワー油、かや油、胡桃油、芥子油、向日葵油、綿実油、菜種油、大豆油、辛子油、カポック油、米糠油、胡麻油、玉蜀黍油、落花生油、オリーブ油、椿油、茶油、ひまし油、椰子油、パーム油、パーム核油、カカオ脂、シア脂、ボルネオ脂等の植物油脂や、魚油、鯨油、牛脂、豚脂、乳脂、羊脂等の動物油脂、またこれらの油脂を原料にエステル交換したものや、硬化油、分別油、混合油が挙げられ、これら油脂の群から選択される少なくとも1種を用いることができる。油脂の含有量は、酸性水中油型乳化油脂組成物全体中50重量%〜85重量%であることが好ましい。より好ましくは55重量%〜80重量%であり、70重量%〜80重量%がさらに好ましい。50重量%未満では、粘度が低くなってしまい、所望の物性を付与するためには、澱粉等の増粘剤の添加量を増やさざるを得ず、結果として食感が糊様の食感が顕著になり、口溶けの良さが保持できなくなってしまう場合がある。一方、85重量%よりも多い場合は、油が多すぎて乳化が不安定となってしまう場合がある。
【0011】
また、本発明の呈色剤としては、油溶性であり食用であれば特に限定はないが、アナトー色素、パプリカ色素、クチナシ色素、カロチン色素、コチニール色素、ラック色素、アカネ色素、赤キャベツ色素、シソ色素、紫トウモロコシ色素、エルダーベリー色素、ボイセンベリー色素、ブドウ果皮色素、ブドウ果汁色素、ハイビスカス色素、ムラサキイモ色素、ベニバナ色素、コウリャン色素、タマネギ色素、カカオ色素、シタン色素、タマリンド色素、スピルリナ色素、クロロフィル、赤ビート色素、紅麹色素、紅麹黄色色素、ウコン色素、クチナシ色素などが挙げられ、それらの群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0012】
本発明の酸性水中油型乳化油脂組成物は、合成乳化剤を含有しないで効果を出すことができる。しかし、風味や食感を損なわない程度、即ち酸性水中油型乳化油脂組成物全体中0.005〜1.0重量%の合成乳化剤は油相に添加しても良い。前記合成乳化剤としては、モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、レシチン、サポニンなどが挙げられ、それらの群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0013】
本発明の酸性水中油型乳化油脂組成物の水相に使用できる食酢は、原料を含め特に限定はなく、例えば米や麦を原料とする穀物酢、りんごやぶどう等を原料とする果物酢などを例示することができる。
【0014】
本発明の酸性水中油型乳化油脂組成物の水相に使用できる増粘剤は、その種類を特に限定しないが、コムギ、コメ、モチコメ、トウモロコシ、モチトウモロコシ、オオムギ、サトイモ、リョクトウ、馬鈴薯、ユリ、カタクリ、チューリップ、カンナ、アミロトウモロコシ、シワエンドウ、クリ、クズ、ヤマノイモ、甘藷、ソラマメ、インゲンマメ、タピオカなどに由来の澱粉を用いる事ができ、それらはα化されていてもよい。
【0015】
また本発明の酸性水中油型乳化油脂組成物の水相に使用できる呈味材は、特にその種類の制約を受けないが、例えば、砂糖、水飴、ブドウ糖果糖液糖、ソルビトール、トレハロースなどの糖類、食塩、しょうゆ、ウスターソース、トンカツソース、ケチャップ、レモン、かぼす、ゆず、りんご、オレンジなどの果汁、またピクルス、コーン、たまねぎなどの固形の食材などが挙げられる。
【0016】
本発明の酸性水中油型乳化油脂組成物の製造方法は、特に制約がないが、例えば以下の方法が挙げられる。即ち、食酢、増粘剤、食酢や食塩や糖類以外の呈味材を混合調製後、卵液を添加して水相とする。そこへさらに油脂を添加しながらホモミキサー等で予備乳化を実施後、回転式ホモジナイザー(製品名:クレアミックス、エムテクニック(株)社製)により仕上げ乳化を実施する。この時の仕上げ乳化機としては、従来広く用いられているコロイドミルを用いても構わないが、0.1〜2.0μmの体積基準平均粒径の酸性水中油型乳化油脂組成物を得ることは一般的には困難である。
【0017】
以上の様にして得られた酸性水中油型乳化油脂組成物は、そのままでも他の食材と混合しても使用でき、様々な食品に包み込む包餡用、トッピング用、充填用あるいは塗布用として使用することができる。使用できる食品としては、例えば、焼き込み調理パン、パニーニ、ワッフル、サンドイッチ、サラダ、サラダ、惣菜、ハンバーグ、ミートボール、はんぺん、ちくわ、フライ食品、から揚げ、お好み焼き、たこ焼き、ピザ、焼き肉等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。前記記載の食品のうち、焼き込み調理パン、ハンバーグ、たこ焼きに本発明の酸性水中油型乳化油脂組成物を用いることが好適である。
【実施例】
【0018】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0019】
<マヨネーズ絞り出し時の作業性>
実施例、比較例において、マヨネーズをソーセージ上に絞り出す時の作業性を10人の訓練された作業員により、以下の評価基準で評価し、その平均を評価点とした。5点:絞り出しの太さも一定で絞り袋からの垂れも無く作業性良好、4点:絞り出し時の垂れは無く作業性に大きな問題はないが、太さが一定でない部分がある、3点:絞り出し時にやや垂れがあり作業性がやや悪く、絞ったマヨネーズはやや広がる、2点:絞り出し時の垂れが顕著で作業性悪い、1点:絞り出し時の垂れが顕著で作業が極めて困難。
【0020】
<焼成時の乳化安定性>
実施例、比較例において、パンを焼成時の各マヨネーズの乳化安定性を10人の訓練された作業員の目視により、以下の評価基準で評価し、その平均を評価点とした。5点:油分離が全くなし、4点:わずかに表面に油の浮きが見られる、3点:表面全体に油がでており、油が一部パンに染み込んでいる、2点:油分離は著しく、天板への染み出しが見られる。焼成前の半分程度しか残っていない、1点:油分離が顕著で天板への油のしみだしが顕著で、ほとんどマヨネーズの組織が残っていない。
【0021】
<焼成時の保型性>
実施例、比較例において、パンを焼成時の各マヨネーズの保型性を目視で評価した。その際の評価基準は以下の通りである。良好:流れたり、切れたりせず焼成前とほぼ同じ状態で残っている、流れる:焼成前と比較すると顕著に形が崩れて3倍以上線が太くなっている、やや流れる:やや形がくずれており、焼成前と比べ線が1.5倍程度に広がっている、切れる:全体的に形を保っているが、線が途中でひび割れたり、切れている。
【0022】
<風味評価>
実施例、比較例において、焼成後のパンを10人の訓練されたパネラーに食べてもらい、その際の各マヨネーズの風味を、以下の評価基準で評価し、その平均を評価点とした。5点:風味が良好である、4点:風味がほぼ良好であるが、ややバランスに欠けている、3点:風味のバランスが悪い、2点:風味のバランスが悪い、1点:バランスが悪く、不快感を感じる。
【0023】
<口溶け評価>
実施例、比較例において、焼成後のパンを10人の訓練されたパネラーに食べてもらい、その際の各マヨネーズの口溶け感を、以下の評価基準で評価し、その平均を評価点とした。5点:食べた時口に残るねばりがなく良好である、4点:食べた時口の中に残るねばりがややある、3点:食べた時口の中に残るねばりがある、2点:食べた時口の中に残るねばりがかなりある、1点:食べた時口の中で粘りが顕著で不快感を感じる。
【0024】
<食感評価>
実施例、比較例において、焼成後のパンを10人の訓練されたパネラーに食べてもらい、その際の各マヨネーズの食感を、以下の評価基準で評価し、その平均を評価点とした。5点:柔らかく口こなれが極めて良い、4点:柔らかく口こなれが良い、3点:やや固いが口こなれが悪くない、2点:モロモロとして口こなれが悪い、1点:ゴムの様に固く極めて悪い。
【0025】
(実施例1〜5) マヨネーズ(酸性水中油型乳化油脂組成物)の作製
表1の配合に従い、グルタミン酸ナトリウム、食塩、上白糖を蒸留酢(酸度15%)と水に溶解して水相を調製後、卵黄を水相に添加し、さらに菜種油を添加しながらホモミキサーで予備乳化を実施後、回転式ホモジナイザー(製品名:クレアミックスCL−1.5S、エムテクニック社製)で回転数20000rpm、圧力0.4Mpa、流量1L/分で仕上げ乳化を実施し、所望のマヨネーズを得た。得られた乳化物の体積基準平均粒径は、それぞれ実施例1が1.81μm、実施例2が0.93μm、実施例3が0.92μm、実施例4が1.56μm、実施例5が0.98μmであった。
【0026】
【表1】

【0027】
(比較例1) マヨネーズ(酸性水中油型乳化油脂組成物)の作製
実施例1において、仕上げ乳化を実施する際の乳化用機械としてコロイドミル(製品名:MINI COLOIDER「MC−3」、(株)エスエムテー社製)を用い、調整した予備乳化液をホッパーからコロイドミルに注入し、クリアランス:0.2mm、回転数:4000rpmの運転条件で仕上げ乳化した以外は、実施例1と同様にしてマヨネーズを得た。得られたマヨネーズの体積基準平均粒径は、2.8μmであった。
【0028】
(比較例2) マヨネーズ(酸性水中油型乳化油脂組成物)の作製
本比較例2は、特開平7−31413号公報に記載の実施例1記載のサンプルIに準拠したものであり、表1の配合に従い、グルタミン酸ナトリウム、食塩、上白糖、キサンタンガムを蒸留酢(酸度15%)と水に溶解して水相を調製後、未処理卵黄を水相に添加し、さらに大豆油を添加しながらホモミキサーで予備乳化を実施後、高圧ホモミキサー(製品名:ホモゲナイザー「HV−OA−3−3.7S」、(株)イズミフードマシナリ社製)を用いて、35MPaの圧力を掛けて仕上げ乳化を実施し、マヨネーズを得た。得られたマヨネーズの体積基準平均粒径は、0.25μmであった。
【0029】
(比較例3) マヨネーズ(酸性水中油型乳化油脂組成物)の作製
α化澱粉を加え、その分水を減らした以外は比較例2と同様にして、マヨネーズを得た。得られたマヨネーズの体積基準平均粒径は、1.21μmであった。
【0030】
(比較例4) マヨネーズ(酸性水中油型乳化油脂組成物)の作製
大豆油を増やし、その分α化澱粉と水を減らした以外は比較例3と同様にして、マヨネーズを得た。得られたマヨネーズの体積基準平均粒径は、1.89μmであった。
【0031】
(比較例5) マヨネーズ(酸性水中油型乳化油脂組成物)の作製
実施例2において、合成乳化剤であるデカグリセリンモノステアレートを加え、その分水を減らし、高圧ホモミキサー(製品名:ホモゲナイザー「HV−OA−3−3.7S」、(株)イズミフードマシナリ社製)を用いて、35MPaの圧力を掛けて仕上げ乳化を実施した以外は、実施例2と同様にしたところ、乳化が不安定で壊れてしまい、マヨネーズが得られなかった。
【0032】
(比較例6) マヨネーズ(酸性水中油型乳化油脂組成物)の作製
仕上げ乳化時の圧力条件を1MPaにした以外は、比較例5と同様にしたところ、乳化が不安定で壊れてしまい、マヨネーズが得られなかった。
【0033】
(比較例7) マヨネーズ(酸性水中油型乳化油脂組成物)の作製
表1の配合に従って、グルタミン酸ナトリウム、食塩、上白糖を蒸留酢(酸度15%)と水に溶解して水相を調製後、未処理卵黄を水相に添加し、さらに大豆油を添加しながらホモミキサーで予備乳化を実施後、高圧ホモミキサー(製品名:ホモゲナイザー「HV−OA−3−3.7S」、(株)イズミフードマシナリ社製)を用いて、1MPaの圧力を掛けて仕上げ乳化を実施したところ、乳化が不安定で壊れてしまい、マヨネーズが得られなかった。
【0034】
(実施例6〜10、比較例8〜11) パン焼成テスト
実施例1〜5及び比較例1〜7で得た各マヨネーズを、一般的な菓子パン生地を断面が馬蹄形になるように成型し、窪んだ中央部にソーセージを乗せ、ソーセージの上に幅2mmで波線形に絞り出し、−20℃で30日間冷凍し、解凍後、ホイロ後(38℃、60分間)、200℃で12分間オーブン加熱を実施した。各サンプルについて、ソーセージ上に絞り出す時の作業性、焼成時の乳化安定性、保型性、食べる時の口溶け、食感について評価を実施した。評価結果は表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
実施例6〜10については、作業性、乳化安定性、焼成後の保型性が良好であり、口溶け、食感も良好であった。特にホスホリパーゼA2処理卵黄を用いた実施例8においては油分離、保型性、口溶け、食感とも最も優れていた。また、油脂含有量がやや低い実施例9ではやや口溶けが劣るものの、耐熱性、風味とも良好であり、十分使用に耐えうる結果であった。油脂含有量が高めの実施例5においても乳化安定性、口溶け、風味とも良好であった。乳化粒子径が2.0μmを越える比較例8については焼成後の油分離が顕著であり、保型性が劣っていた。特開平7−31413号公報に記載の実施例記載のサンプルIに準拠した比較例9については、比較例2の酸性水中油型乳化油脂組成物の粘度が極めて低いため、絞り出し時の作業性が著しく悪く、焼成後はパン生地にしみてしまい、乳化安定性は良いものの、また、配合した乳化剤由来の苦味がでており風味の点で劣っていた。また、比較例2の粘度をα化した澱粉を配合することにより粘度を高めた比較例3の酸性水中油型乳化油脂組成物を用いた比較例10では、作業性、乳化安定性等については良好であるが、比較例9と同様ポリグリセリン脂肪酸エステル特有の苦味がでており、また増粘剤を添加しているため、口溶けが悪いという結果であった。比較例3よりも油脂含有量を高めた酸性水中油型乳化油脂組成物(比較例4)を用いた比較例11においては、比較例10と比べると口溶けが若干良くなったものの比較例10とほぼ同等の結果であった。何れの比較例も、口溶け、食感、風味といった官能試験結果は、実施例に較べてかなり悪かった。また、−20℃での冷凍期間を90日間で実施したところ、ほぼ同様の結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成乳化剤を含有しない酸性水中油型乳化油脂組成物であって、油脂の含有量が、酸性水中油型乳化油脂組成物全体中50重量%〜85重量%であり、且つ、0.1μm〜2.0μmの体積基準平均粒径を有することを特徴とする酸性水中油型乳化油脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の酸性水中油型乳化油脂組成物を用いた食品。

【公開番号】特開2007−129980(P2007−129980A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327980(P2005−327980)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】