説明

酸洗装置

【課題】高圧水洗装置の機械部のメンテナンスが容易となり、酸洗ラインを短くして処理時間を短縮させることのできる酸洗装置を提供する。
【解決手段】酸洗処理用の酸洗槽1の下流にシャワー洗浄用の高圧水洗装置4が並ぶ酸洗ライン6を備えた酸洗装置において、酸洗ライン6の進行方向に対し直角方向に高圧水洗装置4の機械部5を配置し、この機械部5には、酸洗ライン6上に配置されたシャワータンク2内へシャワー管を往復動させる機構が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸洗装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているような酸洗装置が存在し、この酸洗装置では、酸洗槽内に線材コイルを浸漬して、線材コイルの表面の黒皮を除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−212465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような酸洗装置により線材コイルの表面の黒皮を除去した後には、線材コイルを高圧水洗装置に通してシャワー洗浄することが行われており、従来では、図3の正面図で、また図4の平面図で示すように、酸洗ラインを形成する固定レール6に沿って、上流側に酸洗処理用の酸洗槽1が配置され、その下流側に、高圧水洗装置4のシャワータンク2と機械部5が酸洗ラインに沿って配置され、さらにその下流側に水洗槽3が配置された構成となっており、固定レール6には走行ローラー7を介して走行する搬送機9が吊り下げられ、搬送機9に設けられたC形フック10に線材コイル11が掛止されて、線材コイル11は、酸洗槽1に浸漬されて酸洗処理された後に、シャワータンク2内に入れられてシャワー水が噴出されて洗浄され、さらに水洗槽3内に浸漬されて水洗いされるように構成されている。
【0005】
この従来の酸洗装置では、高圧水洗装置4の機械部5が、酸洗ラインの下に配置されているため、この機械部5上を線材コイル11が通過する時に、線材コイル11から滴り落ちる液が機械部5に当たるため、これを防ぐために、機械部5の上面には蓋が設けられており、機械部5をメンテナンスする際にメンテナンス作業がし辛いという問題点があった。
また、機械部5が酸洗ラインの下にあるために、酸洗ライン全体が長くなり、酸洗装置全体の設置スペースが増大してしまうという問題点があった。
また、機械部5上を線材コイル11が通過するために、移動時間が長くなり、線材コイル表面の酸化が発生しやすいという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、高圧水洗装置の機械部のメンテナンスが容易となり、しかも、酸洗ライン全体を短くすることができる酸洗装置の提供を目的とし、この目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明は、酸洗処理用の酸洗槽の下流にシャワー洗浄用の高圧水洗装置が並ぶ酸洗ラインを備えた酸洗装置において、前記酸洗ラインの進行方向に対し直角方向に前記高圧水洗装置の機械部を配置したことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
高圧水洗装置の機械部は酸洗ラインの進行方向に対し直角方向に配置されているため、機械部の上面に蓋をしておかなくても良くなり、機械部のメンテナンスが容易に行えるものとなる。
また、機械部は酸洗ライン上にないために、その分、酸洗ラインを短くすることができ、酸洗装置全体の設置スペースも少なくて済み、また、処理時間も短くすることができるものとなる。
【0008】
また、本発明の酸洗装置において、前記高圧水洗装置は、前記酸洗ライン上に配置されたシャワータンクと、該シャワータンク内へシャワー管を往復動させる前記機械部で構成されているものとすることもできる。
こうすれば、シャワータンクが酸洗ライン上に配置されているため、酸洗槽から短い時間でシャワータンク内に移し変えることができ、処理時間を短くできるものとなり、また、シャワータンク内へ機械部からシャワー管を往復動させて良好にシャワータンク内でシャワー洗浄を行うことができる。
【0009】
また、本発明の酸洗装置において、酸洗処理する対象物が線材コイルであるものとすることもできる。
こうすれば、線材コイルを短い時間で酸洗槽から高圧水洗装置のシャワータンクに移し変えて、シャワータンク内で線材コイルを良好にシャワー洗浄することができる。
【0010】
また、本発明の酸洗装置において、前記線材コイルを搬送する搬送機を旋回させる搬送機旋回装置が前記シャワータンクの上方に設けられているものとすることもできる。
こうすれば、シャワータンクの上方で搬送機旋回装置を介して線材コイルを旋回させることにより、機械部側からシャワー管を線材コイル内に挿入させることができて、線材コイルの内周および外周にシャワー水を確実に当てて、良好にシャワー洗浄することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】酸洗装置の要部の正面構成図であり、図2のA−A線断面を示す。
【図2】酸洗装置の要部の平面概略図である。
【図3】従来の酸洗装置の正面概略構成図である。
【図4】従来の酸洗装置の平面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、酸洗装置の要部の正面概略構成図であり、図2におけるA−A線断面を示す。図2は、酸洗装置の要部の平面概略構成図である。
【0013】
図において、酸洗ラインに沿って固定レール6が配設されており、この固定レール6の下方に、上流側から下流側に向かって、酸洗槽1とシャワータンク2と水洗槽3が配置されている。
高圧水洗装置4は、シャワータンク2と機械部5で構成されており、機械部5は、酸洗ラインを形成する固定レール6に対し直角方向、即ち、酸洗ラインの進行方向に対し直角方向に配置されている。
【0014】
この高圧水洗装置4の機械部5には、シャワータンク2内に配置された線材コイル11の内周にシャワー水を噴出させる内洗シャワー管17と、線材コイル11の外周側にシャワー水を噴出させる外洗シャワー管13が設けられている。
内側の内洗シャワー管17および外側の外洗シャワー管13は、シャワータンク2内で往復動できるように、機械部5側からシャワータンク2内に向かって延出されており、内洗シャワー管17および外洗シャワー管13には、シャワーポンプPからシャワーホース14を介して高圧のシャワー水が供給される。
また、機械部5には、回転可能な一対のコイル回転バー16が設けられており、一対のコイル回転バー16は台車15に設けられたモーターにより回転されるものであり、一対のコイル回転バー16は台車15を介してシャワータンク2内へその先端を移動させてゆくことができるように構成されている。なお、この一対のコイル回転バー16の下方に、前記内洗シャワー管17が一対配設されている。
【0015】
なお、固定レール6には搬送機9が吊り下げ状に設けられ、この搬送機9の上端の走行ローラー7が固定レール6に沿って転動し、搬送機9が固定レール6に沿って、本例では図示左側から右側に向かって移動されるものである。
搬送機9にはC形フック10が垂設されており、C形フック10を昇降動させるための巻き上げ機8が設けられている。
C形フック10には線材コイル11を掛止させ、酸洗槽1の位置で、C形フック10とともに線材コイル11を酸洗槽1内に浸漬させて、酸洗槽1内の酸洗処理液により線材コイル11の表面の黒皮を除去することができる。
その後に、酸洗槽1から線材コイル11を引き上げ、図示右方向に搬送機9が移動して、搬送機9は、シャワータンク2の上方の旋回レール6aで停止し、搬送機9が、旋回レール6aに連結されている搬送機旋回装置12を介して90°旋回されるように構成されている。
【0016】
搬送機9を旋回させる搬送機旋回装置12は、旋回レール6a上に連結されている外周にラックギヤ12bが形成された回転板と、ラックギヤ12bに噛合する歯車を備えた旋回モーター12aで構成されており、旋回モーター12aが回転されることでラックギヤ12bを介し回転板と旋回レール6aが旋回して、搬送機9を90°旋回させることができる。
搬送機9を90°旋回させて線材コイル11を90°旋回させ、線材コイル11の向きを変えた状態で、巻き上げ機8を介してC形フック10とともに線材コイル11をシャワータンク2内に入れ、この状態で、高圧水洗装置4の機械部5側からシャワータンク2内に内洗シャワー管17および外洗シャワー管13が挿入されて、シャワー水が線材コイル11に向かって噴出され、線材コイル11の内周および外周がシャワー水により洗浄されるものである。
【0017】
なお、台車15を介してコイル回転バー16,16をシャワータンク2内に挿入して、コイル回転バー16,16を線材コイル11の内周上端側に当接させ、この状態でコイル回転バー16,16を回転することにより、線材コイル11を順次回転させることができ、これにより、C形フック10に接触していた線材コイル11の接触面が回転移動して、シャワー水がこの接触面にも良好に当てられ、線材コイル11の全周がシャワー水により洗浄されるものである。
シャワータンク2でのシャワー洗浄が終った後には、線材コイル11は引き上げられて、下流側の水洗槽3内に浸漬され、水洗槽3内で更に水洗いされるものである。
【0018】
本例では、酸洗槽1とシャワータンク2と水洗槽3が近接して酸洗ライン上に配置されるため、線材コイル11を、酸洗槽1内に入れ、次にシャワータンク2内に入れ、次に水洗槽3内に入れて、線材コイル11の移動距離を短くして、短い時間で処理を順次連続して行えるものとなる。
【0019】
また、高圧水洗装置4の機械部5は、酸洗ラインの進行方向に対し直角方向に配置されているため、線材コイル11は機械部5上を移動せず、線材コイル11から滴り落ちる液が機械部5に当たることはないため、機械部5の上面に蓋を設けておく必要がなく、機械部5の上面および側面はオープン状態にしておくことができるため、この機械部5のメンテナンス作業時には、機械部5の上面側および側面側から作業を行うことができ、機械部5のメンテナンスが極めて容易なものとなる。
【0020】
また、機械部5が酸洗ラインの外側にあるため、従来よりも酸洗ラインを短くすることができ、酸洗装置全体の設置スペースを少なくできるものとなる。
なお、シャワータンク2から水洗槽3に移動する距離が従来よりも短く、線材コイル11の移動時間を短縮することができるため、線材コイル11の移動中の酸化の発生を極めて少なくすることができるものとなる。
【符号の説明】
【0021】
1 酸洗槽
2 シャワータンク
3 水洗槽
4 高圧水洗装置
5 機械部
6 固定レール
7 走行ローラー
8 巻き上げ機
9 搬送機
10 C形フック
11 線材コイル
12 搬送機旋回装置
12a 旋回モーター
12b ラックギヤ
13 外洗シャワー管
15 台車
16 コイル回転バー
17 内洗シャワー管
P シャワーポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸洗処理用の酸洗槽の下流にシャワー洗浄用の高圧水洗装置が並ぶ酸洗ラインを備えた酸洗装置において、
前記酸洗ラインの進行方向に対し直角方向に前記高圧水洗装置の機械部を配置した
ことを特徴とする酸洗装置。
【請求項2】
前記高圧水洗装置は、前記酸洗ライン上に配置されたシャワータンクと、該シャワータンク内へシャワー管を往復動させる前記機械部で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の酸洗装置。
【請求項3】
酸洗処理する対象物が線材コイルであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸洗装置。
【請求項4】
前記線材コイルを搬送する搬送機を旋回させる搬送機旋回装置が、前記シャワータンクの上方に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の酸洗装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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