説明

酸窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体の製造方法及び白色発光素子

【課題】600nm以上、特に600〜650nmに発光ピーク波長を有し、発光強度の高い酸窒化物蛍光体を提供すること、又、酸窒化物蛍光体の製造方法及び白色発光素子を提供する。又、本発明の他の目的は、青色LEDと緑〜黄色蛍光体を組み合わせた白色発光素子の発光色補正用に特に適した620〜650nmに発光ピーク波長を有し、発光強度の高い蛍光体を提供する。
【解決手段】本発明に係る酸窒化物蛍光体は、下記一般式(1)で表される化学組成を有し、かつ、600〜650nmのピーク発光波長を有している。
Cax-mEumAl3-2xSix3-2/3yy…(1)
(ただし、上記一般式(1)中、0.5≦x≦1.5、0<m≦0.1、0<y≦3である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、600nm〜650nm以上の長波長域に発光ピークを有し、かつ発光強度の高い酸窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体の製造方法及び白色発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、紫外線〜青色の光を吸収して、比較的長波長の黄色〜橙色の蛍光色を示す酸窒化物系の蛍光体は、白色発光素子に適した蛍光体として注目されている。白色発光素子は、GaN系などの青色系の半導体発光素子(青色LED)の発光の一部をフォトルミネセンス蛍光体により波長変換し、青色LEDの光と波長変換された光(主として黄色系の光)との混色により、LEDの光と異なる発光色、特に白色系の光を発する発光素子である。このような発光素子は、小型で電力効率が高いため、信号灯、車載照明や液晶のバックライト、駅の行き先案内板等の表示板等、各種の光源として利用されている。
青色LEDと組み合わせて白色発光素子に用いられるフォトルミネセンス蛍光体としては、現在、セリウム(Ce)で付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(以下「YAG系蛍光体」と言う。)が主流とされているが、このYAG系蛍光体に代わる白色発光素子用フォトルミネセンス蛍光体として黄色〜橙色に発光する酸窒化物蛍光体も期待されている。
一方、YAG系蛍光体が放射する光は、緑色〜黄色であり、YAG系蛍光体をフォトルミネセンス蛍光体として使用した場合、白色発光素子の発光色がやや青白い白色になるため、簡単な照明には好適とされている。しかしながら、高い演色性が要求される照明用途や、カラー液晶ディスプレイ(LCD)のバックライトとして使用する場合には、出力光が赤色成分不足となる。このため、600nm以上、特に620nm以上の発光ピーク波長を有する赤色蛍光体を用い、赤色成分を補うことが要望されている。
この目的で、YAG系蛍光体にさらに前記酸窒化物系の蛍光体を併用することが提案されている。このような酸窒化物系赤色蛍光体としては、カルシウム(Ca)−α−サイアロン系の蛍光体(特許文献1〜3参照)が挙げられる。
【特許文献1】特開2002−363554号公報
【特許文献2】特開2003−124527号公報
【特許文献3】特開2003−203504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載のCa−α−サイアロン系の蛍光体は、実際には発光ピーク波長は殆どが500〜600nmであり、特に発光ピーク波長が600nmより長波長である実用的な蛍光体はない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、600nm以上、特に600〜650nmに発光ピーク波長を有し、発光強度の高い酸窒化物蛍光体を提供すること、又、酸窒化物蛍光体の製造方法及び白色発光素子を提供することを目的としている。又、本発明の他の目的は、青色LEDと緑〜黄色蛍光体を組み合わせた白色発光素子の発光色補正用に特に適した620〜650nmに発光ピーク波長を有し、発光強度の高い蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、600〜650nmに発光ピーク波長を有し、発光強度の高い新規な酸窒化物蛍光体を見いだした。
すなわち、請求項1に記載の発明の酸窒化物蛍光体は、下記一般式(1)で表される化学組成を有することを特徴とする。
Cax-mEumAl3-2xSix3-2/3yy…(1)
(ただし、上記一般式(1)中、0.5≦x≦1.5、0<m≦0.1、0<y≦3である。)
【0005】
請求項2の記載の発明は、請求項1に記載の酸窒化物蛍光体において、
主結晶相が六方晶の構造であることを特徴とする。
【0006】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の酸窒化物蛍光体を製造する方法であって、
酸窒化物を構成する珪素以外の金属元素の化合物と、窒化珪素とを、溶融した尿素及び/又は溶融した尿素誘導体に溶解又は分散させて酸窒化物前駆体を形成し、該酸窒化物前駆体を、不活性又は還元性の雰囲気中で加熱することにより酸窒化物蛍光体を生成することを特徴とする。
【0007】
請求項4に記載の発明の白色発光素子は、青色光を放射する半導体発光素子と、前記半導体発光素子からの光の一部を吸収して緑色〜黄色の波長領域の蛍光を発光する蛍光体と、請求項1又は2に記載の酸窒化物蛍光体とを備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項5に記載の発明の白色発光素子は、紫外線〜青紫色の領域の光を放射する半導体発光素子と、前記半導体発光素子からの光を吸収して青色の蛍光を発光する蛍光体、もしくは緑色の蛍光を発光する蛍光体の少なくとも一方と、請求項1又は2に記載の酸窒化物蛍光体とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る酸窒化物蛍光体は、特に従来あまり実用的なものがなかった600〜650nmの長波長域に発光ピーク波長を有し、かつ、高い発光強度を示すものである。また、紫外線域から黄緑色光域までの広い波長領域の光、及び電子線や電場によっても励起されて発光する。したがって、通常の照明、各種の表示管や、白色LED等に使用する蛍光体として有用である。
また、本発明に係る酸窒化物蛍光体の製造方法によれば、各原料を溶融した尿素及び/又は溶融した尿素誘導体に溶解又は分散させることにより、均一組成の酸窒化物前駆体を形成することができる。そして、このような酸窒化物前駆体を不活性又は還元性の雰囲気中で加熱することにより、優れた特性で、粒子径の揃った結晶性の良好な酸窒化物蛍光体を得ることができる。さらに、原料の窒化、結晶成長を同一反応容器中で行うことができるため、簡単なプロセスで効率良く製造することができ、しかも常圧で比較的低温で製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る酸窒化物蛍光体、用途としての白色発光素子や酸窒化物蛍光体の製造方法について詳細に説明する。
(酸窒化物蛍光体)
本発明に係る酸窒化物蛍光体は、下記一般式(1)で表される化学組成を有している。
Cax-mEumAl3-2xSix3-2/3yy…(1)
(ただし、上記一般式(1)中、0.5≦x≦1.5、0<m≦0.1、0<y≦3である。)
【0011】
式中、xの範囲は0.5≦x≦1.5が好ましい。xが0.5より小さくなると、AlNが多量に混在し、かつ、ピーク波長は視感度の低い650nm以上となり、さらに発光強度も低下するためである。
yの範囲は0<y≦3が好ましく、さらに好ましくは0<y≦1.5である。yが3.0より大きくなると酸化物相が多量に混在し、発光強度が低下するためである。
mの範囲は0<m≦0.1が好ましい。mが0.1より大きくなると濃度消光により、発光強度が低下するためである。
本発明に係る酸窒化物蛍光体の結晶相は、製造条件によって六方晶から斜方晶へと連続的に変化するが、斜方晶の場合は必ずAlNが副生成物として混在するため、発光強度が低下し、ピーク波長も短波長側にシフトする傾向にある。したがって、620nm以上の長波長で、高発光強度であるためには、六方晶の結晶構造に近い蛍光体であることが望ましい。
【0012】
本発明の酸窒化物蛍光体には、発光強度や残光性、その他の蛍光特性を調整するために、希土類金属元素等の共付活剤として作用する元素、例えばセリウム(Ce)、テルビウム(Tb)、ジスプロジウム(Dy)、サマリウム(Sm)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、マンガン(Mn)などを適宜ドープしても良い。
【0013】
このような酸窒化物蛍光体の用途としては、従来あまり実用的なものがなかった長波長赤色蛍光体として、ランプ等の照明用蛍光体として使用したり、冷陰極管、CRT、PDP、FED、無機EL等の表示管用赤色蛍光体として使用することができる。
【0014】
また、紫外線、及び紫色〜黄緑色の波長領域の可視光で励起され、これらの光をより長波長の光に変換することが可能なため、白色発光素子の作成に非常に有効である。
具体的には、青色LEDに、このLEDからの青色光の一部を吸収し、波長変換して緑色〜黄色に発光する第1の蛍光体と、第2の蛍光体として本発明の酸窒化物蛍光体とを組み合わせることにより、色バランスの優れた白色発光素子を得ることができる。
例えば、発光ピーク波長が400nm〜460nmであるGaN系やInGaN系などの青色LEDと、青色光により励起されて黄緑〜黄色に発光するYAG系蛍光体とを備えた白色発光素子に、発光色の赤色成分補色用として、本発明の酸窒化物蛍光体を添加することにより、演色性、色感度を向上させることができる。
また、青色LEDと、その青色光により緑色に発光する第1の蛍光体と、本発明の赤色発光酸窒化物蛍光体とを組み合わせることにより、青、緑、赤の光の三原色の混色による白色発光素子を得ることもできる。本発明の酸窒化物蛍光体は、紫外光〜黄緑色光の広い波長領域の光で励起可能であるため、青色LEDからの光だけでなく第1の蛍光体が放射する光によっても発光するので、効率が高い。
また、青色LEDの代わりに、例えばピーク波長が360nm〜400nmの紫外〜青紫色の領域の光を発光する半導体素子(紫外線LED)を用い、その発光を吸収して赤、緑、又は青の蛍光を発するフォトルミネセンス蛍光体を組み合わせて、これら三原色の混色により白色系の光を発する発光素子も知られているが、本発明の酸窒化物蛍光体はこのような白色発光素子の赤色成分として用いることもできる。
さらに、紫外線LEDや青色LED、又は青緑〜緑色に発光するLEDに組み合わせる蛍光体として、本発明の酸窒化物蛍光体を単独で用い、白色光や、紫、赤紫、ピンク、赤など様々な色の光を発する発光素子を得ることもできる。
【0015】
(酸窒化物蛍光体の製造方法)
次に、本発明に係る酸窒化物蛍光体の製造方法について説明する。
本発明に係る酸窒化物蛍光体の製造方法は、公知の固相反応法、噴霧熱分解法、液相反応法、その他の方法を適用することができるが、以下に示す尿素−前駆体を用いた方法が均一組成で、また、粒子径の揃った結晶性の良好な酸窒化物を得やすい点で最も好ましい。さらに、この方法は原料の窒化や結晶成長を同一反応容器中で行うことができ、しかも常圧で比較的低温で製造できる点で好適である。
以下、本発明で好適に用いられる尿素−前駆体を用いた方法の一例について説明する。まず、尿素及び/又は尿素誘導体(以下、「尿素等」と称すこともある)をこれらの融点以上の温度まで加熱して溶融状態にする。ただし、加熱温度が高すぎると別の生成物が生ずる場合があるので、尿素等が溶解し、かつ、後述するCa化合物やEu化合物、Al化合物、窒化珪素を加えた後も溶融状態を所定時間保持することができる程度の温度とすることが好ましい。例えば、尿素を用いる場合、その融点は132℃であるので、それより若干高めの温度まで加熱すれば十分である。
【0016】
尿素誘導体としては、尿素中の窒素原子への各種有機基の置換体としての尿素化合物、あるいはカーバメイト化合物、尿素錯化合物、尿素付加体化合物等の各種のものを使用することができる。尿素等としては、入手のしやすさや取り扱いの容易さ等の点から尿素が好適なものとして用いられる。
【0017】
次に、最終生成物の構成成分となる、Ca化合物、Eu化合物、Al化合物を溶融した尿素等に溶解し、さらに窒化珪素を分散させて酸窒化物前駆体を形成する。また、共付活剤をドープする場合は、共付活剤として作用する金属元素の化合物を、所定量添加、溶解する。
【0018】
酸窒化物を構成する珪素以外の金属元素の化合物、すなわちCa化合物、Eu化合物、Al化合物、共付活剤元素の化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば塩化物、硝酸塩など、溶融尿素等に溶解するものが好ましく使用される。また、SiやAlの酸化物等、溶融尿素等に溶解しないものも使用しうる。また、酸素の導入には、SiO2、Al23などの酸化物が使用され、窒化珪素としては、結晶質のものでも非晶質のものでも、適宜用いることができる。例えば、反応性の点では非晶質の窒化珪素の方が好ましいと考えられるが、入手が容易であること、取り扱いがし易いこと、及び収率の点からは結晶質の窒化珪素が有利である。
【0019】
このようにして得られた酸窒化物前駆体を、例えば放冷し乾燥させて固体状にする。この固体状のものを、必要に応じて機械的に粉砕し、加熱炉を用いて加熱し、酸窒化物を生成する。加熱炉としては、バッチ炉、ベルト炉、管状炉、ロータリーキルン等、公知のものを使用することができる。
ただし、加熱は不活性雰囲気又は還元性雰囲気のもとで行う必要がある。
また、不活性雰囲気あるいは還元性雰囲気中、一段の加熱(焼成)で目的の生成物を形成しても良いし、複数段に分けて加熱(焼成)することにより目的とする酸窒化物を得ても良い。加熱温度、加熱時間等の諸条件は目的とする生成物の種類及び要求されている特性に応じて適宜設定すれば良いが、例えば、1段加熱の場合には、1200〜1700℃の範囲内の温度で合計0.5〜24時間の範囲から条件を設定すれば良い。また、2段加熱の場合には、第2段目の加熱温度を第1段目の加熱温度よりも高く設定することが望ましく、例えば、第1段目の加熱を、最大約200〜1000℃の温度で合計0.5〜6時間行い、第2段目の加熱を、約1200〜1700℃の範囲内の温度で約0.5〜24時間行うことが望ましい。複数段の加熱は、より均一な組成の生成物を再現性良く得ることができる点で有利である。
【0020】
また、その他の加熱手段として、機械的に粉砕した前駆体粉末を、望ましくは粒度調整した後、気相中に分散させた状態で加熱することにより、微細かつ粒子径の揃った、結晶性の高い酸窒化物粉末を得ることができる。
【0021】
さらに、他の加熱手段として、噴霧熱分解法を利用しても良い。この噴霧熱分解法は、液体状の前駆体を超音波式、二流体ノズル方式等の噴霧器や他の霧化手段を用いて、微細な液滴とし、これを不活性雰囲気又は還元性雰囲気条件下で加熱し、前駆体を分解、反応させて、微細かつ粒径の揃った酸窒化物粉末を得ることができる。
また、上述の製造例においては、溶融状態にした尿素等に各化合物等を溶解又は分散させる方法を述べたが、予め尿素等と化合物等とを混合してから加熱して尿素等を溶融しても構わない。
【実施例】
【0022】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれに限定されるものではない。
下記の方法にしたがって、実施例1〜19、比較例1〜4を作製した後、以下に示す測定を行い評価した。
[実施例1]
尿素を134℃で溶融し、溶融尿素を得た。この溶融尿素300g中に、CaCl28.8g、EuCl3・6H2O0.39gを添加し、溶解させた。更に、Si3N4粉末3.7g(宇部興産製SN−E45)、SiO2粉末(日本アエロジル製AEROSIL200)0.096gを添加、攪拌し、均一に分散させた。これを攪拌しながら空冷して、元素のモル比がCa:Eu:Si=1.48:0.02:1.5の固体の酸窒化物前駆体を生成した。得られた前駆体を、蓋付きアルミナボートに載置し、4%のH2を含むN2雰囲気中800℃で1時間、焼成(1次焼成)を行った後粉砕した。これを、BNボートに載置し、4%のH2/N2雰囲気中1500℃で6時間、焼成(2次焼成)を行い、酸窒化物蛍光体を作製し、実施例1とした。
【0023】
[実施例2〜6]
実施例1と同様の方法で、AlCl3・6H2Oを添加し、表1に示す化学組成の実施例2〜6を得た。これらの代表的なX線回折パターンとして実施例4の場合を図1に示す。この結晶相は六方晶であり、後述する実施例15と比較例1以外は全てこの六方晶である。なお、X線回折パターンについては後述の方法に従って測定した。
[比較例1]
原料のモル比を変えて、実施例2〜6と同様の方法で、表1に示す化学組成の比較例1を得た。ここで得られる物質は一般にα−サイアロンと呼ばれるものである。表1に示すように、実施例2〜6はいずれもα−サイアロン(比較例1)と比較してピーク波長が長波長である。なお、ピーク波長については後述の方法に従って測定した。
[実施例7〜14、比較例2、3]
実施例2〜6と同様の方法で、Si34粉末とSiO2粉末の配合を変化させて、表2に示す化学組成の実施例7〜14及び比較例2、3を得た。表2の結果より、上記一般式(1)中のyの値によって発光強度が変化し、y=0.4のとき強度が最大となった。
[実施例15]
実施例4と同じ組成で、酸窒化物前駆体を生成し、上記と同様に1次焼成した後、1600℃で12時間の条件で2次焼成を行った。図2に、実施例15のX線回折パターンを示す。この実施例15はAlNの混在する斜方晶であり、ピーク波長は605nmであった。発光強度は実施例4と比べて4割ほど低下した。
[実施例16〜19、比較例4]
上記一般式(1)中、mの値を適宜変えて、実施例2〜6と同様の方法で、表3に示す化学組成の実施例16〜19及び比較例4を得た。表3の結果より、mの値がおよそ0.1を越える(比較例4)と濃度消光による発光強度の著しい低下が見られた。
【0024】
《X線回折パターン》
上記得られた蛍光体粉末について、(株)リガク製粉末X線回折計を用い、Cu−Kα線をX線源としてX線回折パターンを測定した。図1、図2に代表的なものとしてそれぞれ実施例4、実施例15のX線回折パターンを示す。
【0025】
《蛍光特性》
各蛍光体粉末について、日本分光(株)製分光蛍光光度計(FP−6600型)を用いて460nmの単色光を励起光源とし、500nmから800nmの範囲で蛍光スペクトルを測定した。各蛍光体粉末の発光ピーク波長と発光強度(ピーク高さ)についての測定結果(測定値)を表1〜表3に示す。なお、表1には発光強度の値を省略した。
表2、3中の発光強度は、比較例1の発光ピーク波長578nmにおける発光強度を100としたときの相対強度である。
また、図3に代表的な実施例4について発光ピーク波長における励起スペクトルを250nm〜650nmの範囲で測定した結果を示す。
なお、励起スペクトルの補正にはローダミンBを、蛍光スペクトルの補正にはキセノンランプとタングステンランプを用いた。
【0026】
【表1】

【表2】

【表3】

表1〜3の結果から明らかなように、上記一般式(1)で表される酸窒化物蛍光体において、x、y、mの各パラメータが本発明の範囲内にある実施例1〜19は、600〜650nmの長波長域に発光ピークが見られ、発光強度も比較的高いものであった。
一方、本発明の範囲外である比較例1は、発光強度は比較的高いが発光ピーク波長が600nmより短波長域に見られた。また、比較例2〜4は、発光ピーク波長が600nm以上であるものの発光強度が低いことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例4のX線回折パターンである。
【図2】実施例15のX線回折パターンである。
【図3】実施例4の励起スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化学組成を有し、かつ、600〜650nmのピーク発光波長を有することを特徴とする酸窒化物蛍光体。
Cax-mEumAl3-2xSix3-2/3yy…(1)
(ただし、上記一般式(1)中、0.5≦x≦1.5、0<m≦0.1、0<y≦3である。)
【請求項2】
請求項1に記載の酸窒化物蛍光体において、
主結晶相が六方晶の構造であることを特徴とする酸窒化物蛍光体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の酸窒化物蛍光体を製造する方法であって、
酸窒化物を構成する珪素以外の金属元素の化合物と、窒化珪素とを、溶融した尿素及び/又は溶融した尿素誘導体に溶解又は分散させて酸窒化物前駆体を形成し、該酸窒化物前駆体を、不活性又は還元性の雰囲気中で加熱することにより酸窒化物蛍光体を生成することを特徴とする酸窒化物蛍光体の製造方法。
【請求項4】
青色光を放射する半導体発光素子と、前記半導体発光素子からの光の一部を吸収して緑色〜黄色の波長領域の蛍光を発光する蛍光体と、請求項1又は2に記載の酸窒化物蛍光体とを備えていることを特徴とする白色発光素子。
【請求項5】
紫外線〜青紫色の領域の光を放射する半導体発光素子と、前記半導体発光素子からの光を吸収して青色の蛍光を発光する蛍光体、もしくは緑色の蛍光を発光する蛍光体の少なくとも一方と、請求項1又は2に記載の酸窒化物蛍光体とを備えていることを特徴とする白色発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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