説明

酸素インジケーター及び包装体

基質が酸素の存在下に酵素の触媒作用を介して光吸収波長変化反応を用いた酸素インジケーターであって、発色性基質と、酸化還元酵素と、酸化された発色性基質を還元する還元剤とを少なくとも含む酸素感応性溶液を含んでなる酸素インジケーター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、酵素を用いた酸素インジケーター及び該酸素インジケーターを具備した包装体に関する。
【背景技術】
スーパーマーケットなどで食材を購入し、各家庭でその購入した食材を調理して食べるという従来の食生活の形態に加え、最近では共働きのため調理の時間がない、自分の趣味の時間を多く取りたい等の理由により、家事を簡便に行いたいという意向から、調理に関してはスーパーマーケット等のバックヤードやセントラルキッチンなどで調理された調理済み食品等を購入し、家庭で食すという形態が増えてきている。
一方、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの調理済食品においては、調理済食品の利便性を売りに個々の食品の味、量等、消費者の好みに合わせた商品開発が活発になされ、多種類の食品が市場に投入されている。また、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の惣菜販売者は、消費者の強いニーズである素材そのもののおいしさの提供及び安心・安全・健康志向に応えるため、食品保存料等を削減した惣菜等の提供を模索している。しかし、食品保存料を削減すると食品の腐敗開始が早くなるため、食品の安全対策が必須となっている。また、食品の腐敗に関する研究から、空気中の酸素の影響が重要であることが広く知られている。そのため、包装体内を無酸素状態で包装する種々の方法が検討されている。食品の腐敗を防止する目的で、包装体内を無酸素状態に保つ方法として、包装体内を真空状態で包装する真空包装、包装体内に酸素吸収剤を用いる無酸素包装、包装体内を所望のガスにて密封するガス置換包装が挙げられる。
例えば、真空包装の場合、包装体内を真空状態にするため酸素による食品の酸化等の腐敗を防止することができ、また、包装体内が真空に保たれているかどうかは、包装体内に空気の流入があるかどうかを目視確認することで比較的容易に判別することができる。また、真空包装は、保管、陳列スペースの点において有利であり、比較的長期の保存が必要な場合に多用されている。しかしながら、包装体内を真空にするため、大気圧によって食品がフィルム等に密着した包装形態になり、ボリューム感を与えることができない、食品の形態がいびつになってしまう等、美粧性の観点で問題が残る。
一方、包装体内に酸素吸収剤を用いたり、酸素吸収層を有する包装材で包装する方法や包装体内を所望のガスで密封するガス置換包装の方法は、食品を大気圧によって押しつぶすことなく、食品を作ったままの形状でディスプレイすることができる。そのため、これらの方法は、商品をおいしく見せられるという、いわゆるディスプレイ効果による、商品の差別化が図れる点で優れている。そのため、賞味期限が数日から1ヶ月以内の比較的短期間の商品については酸素吸収による無酸素包装やガス置換包装の検討が主として行われている。
しかしながら、酸素吸収によって無酸素包装したり、包装体内を所望のガスで密封する方法(ガス置換包装)では、包装体内のガス環境を目視して包装体内が適したガス雰囲気下で保存されているかどうかの判断をすることは難しい。そのため、包装体内のガス雰囲気が適性であるかどうかを判別する方法が模索されている。特に食品腐敗に大きな影響を与える酸素の有無を検知する酸素インジケーターの開発が望まれている。
このような酸素インジケーターとしては、例えば特開昭54−138489号公報(特許文献1)には、メチレンブルー、糖類、アルカリ性物質、水分及びアスコルビン酸からなり、酸素がある場合は酸素インジケーター内における水分に溶解した酸素によりメチレンブルーが酸化され青色を示し、酸素がない場合はアルカリ性糖溶液によりメチレンブルーが還元され無色を示す脱酸素インジケーターが開示されている。また、例えば特表2001−503358号公報(特許文献2)には、酸化還元着色指標部材が酵素など適切に選択された触媒を媒介して酸素に反応し変色する酸素インジケーターが開示されている。これら酸素インジケーターは、包装容器内に同封したり、一部分が酸素ガス透過性部位からなる包装容器の当該部位に容器外側から貼り付けた構造として、包装容器内部の酸素の有無を、メチレンブルーやその他酸化還元着色指標部材の変色により目視で確認することができる点で優れている。
しかしながら、特許文献1で代表されるメチレンブルー、糖類、アルカリ性物質及び水分からなる酸素インジケーターは、包装体内に二酸化炭素が存在する場合、例えば、食品保存の観点から不活性である窒素及び静菌作用のある二酸化炭素の混合ガスを用いて包装するガス置換包装の場合、水への溶解性が酸素より高い二酸化炭素が酸素インジケーター内の水分に溶解してpH変化を生じてしまうため、メチレンブルーを還元する作用がなくなり色彩変化が明確でなくなる問題がある。また、場合によっては、無酸素状態であっても二酸化炭素の影響によりメチレンブルーが青色を示して酸素があるという誤判断をしたりする問題も残されている。更に、静菌・殺菌効果の観点からガス置換包装においてアルコールを使用する場合、このアルコールの存在の影響により酸素を検知する能力が低下する問題も残されている。このようなメチレンブルーを用いた酸素インジケーターは、二酸化炭素やアルコールが存在しないか、又はその濃度がごく低い場合のみしか使用することができず、様々な制約を余儀なくされる。更に、酸素の有無の判断は、メチレンブルー自体の酸化還元に依存するため、感度が鋭敏過ぎてしまい、変色する酸素濃度の閾値の設定や変色速度等を所望の設定にすることが困難となる問題がある。また、メチレンブルー以外の色素は、安定性や耐候性の観点から使用しにくい等の問題も残されている。また、アルカリ性物質を含有するため、誤食誤飲した場合、人体に危険を及ぼすという問題もあった。
酵素反応を利用した特許文献2に記載の酸素インジケーターは、包装体内に二酸化炭素が存在するガス置換包装の場合でも、緩衝液の存在によりpH変動を緩衝して酸素検知に対する影響を低減することが可能である。しかし、酸素検知の感度が鈍かったり、酵素自体の安定性が乏しいことから、時間が経過するに従って、色彩変化が明確でなくなり、酸素検知能が低下したり、場合によっては酸素が侵入してきていても無酸素状態であると誤判断する問題があった。
特に、近年、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の惣菜販売者は素材そのもののおいしさを提供すべく、食品保存料等を削減した健康志向の惣菜等の提供を模索している。しかし、食品保存料を削減すると食品の腐敗開始が早くなり、食品の安全対策が必須となるため、食品保存料等の添加物を使用せずに食品の保存性を高める手段としてガス置換包装が検討されている。ガス置換包装とは、不活性気体である窒素、アルゴン等で包装体内を密封して食品の酸素による酸化劣化を抑制する手法である。食品の微生物学的な汚染防止の観点から、このガス置換技術に加え、微生物等の繁殖抑制・殺菌を目的として他の気体を不活性気体に混合することがよく知られている。微生物等の繁殖抑制に使用される気体や殺菌に使用される気体の例として、低コスト・食品安全の観点から、二酸化炭素やアルコール等が挙げられる。二酸化炭素は主として微生物の繁殖を抑制する静菌作用を有し、アルコールは主として微生物の殺菌作用を有している。近年のガス置換包装には不活性気体、二酸化炭素等の微生物繁殖抑制気体、アルコール等の微生物殺菌気体を混合したガス組成を用いることが食品の安全性の観点から多用されている。そのため、このような不活性気体、二酸化炭素等の微生物繁殖抑制気体、アルコール等の微生物殺菌気体の混合組成でも使用することができる酸素インジケーターが望まれている。
【特許文献1】:特開昭54−138489号公報
【特許文献2】:特表2001−503358号公報
【発明の開示】
本発明の課題は、二酸化炭素やアルコールの存在する環境においても酸素の有無を明確に、且つ長期的に安定して高感度に検知することができる酸素インジケーターを提供することである。また本発明の課題は、容器内又は袋内のガス組成がコントロールされ、二酸化炭素やアルコールが存在する環境においても酸素の有無を明確に検知することができる酵素を用いた酸素インジケーターを具備した包装体を提供することである。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1) 基質が酸素の存在下に酵素の触媒作用を介して光吸収波長変化反応を用いた酸素インジケーターであって、発色性基質と、酸化還元酵素と、酸化された発色性基質を還元する還元剤とを少なくとも含む酸素感応性溶液を含んでなる酸素インジケーター。
(2) 基質が酸素の存在下に酵素の触媒作用を介して光吸収波長変化反応を用いた酸素インジケーターであって、発色性基質と、酸化還元酵素と、酵素安定化剤とを少なくとも含む酸素感応性溶液を含んでなる酸素インジケーター。
(3) 基質が酸素の存在下に酵素の触媒作用を介して光吸収波長変化反応を用いた酸素インジケーターであって、発色性基質と、酸化還元酵素と、酵素安定化剤と、酸化された発色性基質を還元する還元剤とを少なくとも含む酸素感応性溶液を含んでなる酸素インジケーター。
(4) 前記還元剤が、酸化されるとジスルフィド基を生成するメルカプト基含有化合物である上記(1)又は(3)に記載の酸素インジケーター。
(5) 前記酵素安定化剤が、0.2wt%水溶液の表面張力が0.06N/m以下である非イオン性化合物である上記(2)又は(3)に記載の酸素インジケーター。
(6) 前記非イオン性化合物が水溶性ポリマーである上記(5)に記載の酸素インジケーター。
(7) 前記水溶性ポリマーが、水溶性ポリビニルアルコール類、水溶性ポリグリセリン類、又は水溶性セルロース誘導体である上記(6)に記載の酸素インジケーター。
(8) 酸化還元酵素がアスコルビン酸オキシダーゼ又はビリルビンオキシダーゼである上記(5)〜(7)のいずれか一項に記載の酸素インジケーター。
(9) 前記酸素感応性溶液が緩衝剤を含む上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の酸素インジケーター。
(10) 前記酸素感応性溶液が、前記光吸収波長変化反応と競合して酸素と反応する化合物、又は酸素を吸着する化合物を更に含有する上記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の酸素インジケーター。
(11)容器又は袋を含んでなる包装体であって、上記(1)〜(10)のいずれか一項に記載の酸素インジケーターを該容器内又は袋内に含むことにより、或いは上記(1)〜(10)のいずれか一項に記載の酸素インジケーターが該容器又は袋の開孔部を塞ぐように装着されることにより、該容器内又は袋内の酸素濃度を検知することができる上記包装体。
(12)真空包装されている上記(11)に記載の包装体。
(13)前記容器又は袋内に酸素を含まないガスが充填されているガス置換包装されている上記(11)に記載の包装体。
本発明の酸素インジケーターは、ガス置換包装による二酸化炭素やアルコールが存在する環境においても、酸素の有無を明確に且つ長期的に、安定して高感度に、色彩などの変化により検知することができ、及び容器内又は袋内のガス組成がコントロールされ、二酸化炭素やアルコールが存在する環境においても包装体内の酸素の有無を明確に検知することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の酸素インジケーターの製造例を示す概念斜視図とそのA−A’断面図である。
図2は本発明の酸素インジケーターの製造例を示す概念斜視図とそのB−B’断面図である。
図3は本発明の酸素インジケーターの製造例を示す概念斜視図とそのC−C’断面図である。
図4は本発明の酸素インジケーターの製造例を示す概念斜視図とそのD−D’断面図である。
図5は本発明の酸素インジケーターの製造例を示す概念斜視図とそのE−E’断面図である。
図6は図5に例示した本発明の酸素インジケーターの使用例を示す概念斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明について、特にその好ましい形態を中心に、以下具体的に説明する。
本発明の酸素インジケーターは、発色性基質と酸化還元酵素と特定の還元剤とを含む酸素感応性溶液、又は発色性基質と酸化還元酵素と酵素安定化剤とを含む酸素感応性溶液、又は発色性基質と酸化還元酵素と酵素安定化剤と還元剤とを含む酸素感応性溶液からなる。本発明の酸素インジケーターは、これらの成分の組み合わせにより、所望の酸素濃度を閾値として酸素の有無を判別するものであり、詳しくは、無酸素状態又は低酸素状態から酸素が増加したことを色彩変化などにより検知するものである。なお、本発明でいう酸素感応性溶液とは、溶解している発色性基質が酵素の触媒作用を介して雰囲気中に存在する酸素により酸化されて光吸収波長が変化することで色彩などの変化が起こる溶液をいう。
本発明が特許文献1の従来技術と最も相違するところは、包装体内に二酸化炭素が存在する場合でも酸素検知に影響がないことである。即ち、特許文献1の酸素インジケーターは、メチレンブルーと糖類とアルカリ性物質を含み、発色性色素であるメチレンブルーが溶液に溶解した酸素によって酸化型(発色状態)となることを、糖類とアルカリ性物質がその還元作用により防止し、メチレンブルーを無色の還元型にする。そのため、水に溶解すると酸性を示す二酸化炭素が存在すると、この還元作用が弱まり、酸素検知に影響が及ぼされる。
これに対し、本発明は、溶液に溶解した酸素によって、酸化還元酵素の触媒作用を利用して発色性基質が酸化され、光吸収波長が変化することを特徴としている。そのため、溶液に二酸化炭素が溶解している場合であっても、酸素の有無を判断する酵素反応や還元剤により酸化された発色性基質を還元する反応に影響が及ぼされることがない。
本発明が特許文献1の従来技術と相違する他の点は、本発明では、使用する酸化還元酵素及び発色性基質の組合せを種々に選択することによって、所望の光吸収波長変化で酸素の有無を検知することができることである。その上、酵素反応は基質選択性が高いため、用いる酵素と基質の組合せによっては数種類の酵素及び基質を混在状態で用いることも可能である。例えば1種類の酵素に対して、酵素反応における反応に必要な酸素濃度、反応速度及び反応時の色彩の全く異なる基質を数種混合して用いると、ある酸素濃度では黄色、より酸素濃度が高い場合は青色など、酸素濃度によって色を段階的に変化させることも可能である。また、酸素の暴露時間が少ない場合は茶色、酸素の暴露時間が長い場合は赤色など、酸素暴露時間によって色を段階的に変化させることも可能である。
更に、本発明が特許文献1の従来技術と相違するもう一つの点は、酸化された発色性基質を還元する還元剤を共存させる場合には、その濃度を調節することによって、又は発色性基質や酸化還元酵素の濃度を調整することによって、検知する酸素濃度の閾値や光吸収波長の変化速度等を所望の設定にすることができるということである。
本発明が特許文献2の従来技術と最も相違するところは、該従来技術は酵素自体の安定性に関しては全く考慮されておらず、時間の経過と共に酸素検知性能が低下し易いものであるのに対し、本発明は酵素自体を安定化せしめるために、特定の還元剤を共存させること、又は酵素安定化剤を共存させることを特徴とし、その効果は酵素が早急に失活することなく、長期的に安定した発色性基質の光吸収波長変化反応を起こさせて酸素を検知することができることにある。ここでいう特定の還元剤とは、酸化によりジスルフィド基を生成するメルカプト基含有化合物を指す。該化合物は、後述する一般的な還元剤のなかでも、特に酵素の安定化剤や、酵素によっては活性化剤として作用し、本発明では酸素インジケーターとして長期的に安定した酸素検知能力を持続させるために利用するものである。
本発明で用いられる酸化還元酵素とは、EC1群の中から選ばれ、酸素分子の存在下に酸素とは別の基質を化学的変化させる反応に対して触媒作用を示すものであったり、酵素的又は非酵素的な反応による生成物と発色性基質との反応において触媒作用を示すもの等である。
前者の酸化還元酵素としては、酸素とは別の基質として用いられる発色性基質が酸化される反応系や、そのような発色性基質は用いずに酸素を過酸化水素などの生成物に化学的に変化させる反応系において、触媒作用を示す酵素が使用される。
前者の酸化還元酵素を例示すると、オキシダーゼ系、フラビンモノオキシゲナーゼ系、銅ヒドロモノオキシゲナーゼ系、鉄モノオキシゲナーゼ系、リブロース二リン酸オキシゲナーゼ系、ジオキシゲナーゼ系等が挙げられ、カテコールオキシダーゼ(EC1.10.3.1)、ラッカーゼ(EC1.10.3.2)、ビリルビンオキシダーゼ(EC1.3.3.5)、アスコルビン酸オキシダーゼ(EC1.10.3.3)、3−ヒドロキシアントラニル酸オキシダーゼ(EC1.10.3.5)、アルコールオキシダーゼ(EC1.1.3.13)、コレステロールオキシダーゼ(EC1.1.3.6)、グルコースオキシダーゼ(EC1.1.3.4)などが好ましい具体例として挙げられる。
後者の酸化還元酵素としては、例えばペルオキシダーゼ系などが挙げられる。この場合の反応を具体的に例示すると、酵素的又は非酵素的な反応により生成した過酸化水素を用いて、ペルオキシダーゼ(EC1.11.1.7)の触媒作用によって、発色性基質を呈色反応させたり、発色性基質として水素供与体と色原体を組合せて用いてカップリングして呈色反応させるなど等が挙げられる。なお、これら呈色反応は、特に限定されるものではなく、例えば「高阪著、酵素的測定法、p.49〜55、医学書院(1982)」に記載のペルオキシダーゼ共役呈色反応が用いられる。
本発明では、使用する発色性基質などとの組み合わせによって、これら酸化還元酵素の中から適宜選択したものを単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。上記酸化還元酵素のうち、汎用性やコスト的な観点からビリルビンオキシダーゼ(EC1.3.3.5)やアスコルビン酸オキシダーゼ(EC1.10.3.3)がより好ましく、酵素安定性の観点からアクレモニウム属(Acremonium species)由来のアスコルビン酸オキシダーゼが最も好ましい。
酸素感応性溶液中の酸化還元酵素の濃度は、単独で使用する場合や複数組み合わせて使用する場合に関わらず、0.01μg/ml〜100mg/mlの範囲が好ましい。一般に酸化還元酵素は水に溶解させると希薄溶液ほど酵素活性が低下し易く、また他原料と比較して高価である。従って、本発明では該濃度がこの範囲にあれば、使用する酸化還元酵素にもよるが、比較的安定した保存安定性を確保することができるとともに、コスト的な負担が問題にならない。該濃度は、使用する酸化還元酵素の種類や性質、使用する発色性基質など他の原料の濃度との組み合わせ、原料として使用する酸化還元酵素の活性、又は酸素インジケーターとしたときの検知する酸素濃度閾値や検知に要する時間などを調整する目的で上記範囲から適宜選定される。酵素自体の保存安定性やコスト的な観点から、該濃度は1〜1000μg/mlの範囲がより好ましい。
本発明でいう発色性基質とは、酵素の触媒作用を受ける基質のうち、酸素とは別の基質として該酵素の反応によって光吸収波長が変化し酸素の検知に用いられる化合物を指す。
本発明でいう発色とは、物質の光吸収波長の変化を指し、酸化還元酵素の触媒作用により発色性基質が酸化されて化学構造や性質が変化することに起因して、光学的な波長吸収領域が変化することをいう。利用することができる光吸収波長の波長域は、変化した波長を測定又は検出することができればどの領域の波長でも利用することができる。例えばUV領域に変化域があればUV測定装置などを用いて光吸収波長の変化を検出すればよく、可視光域(400nm〜600nm)であれば波長を測定する機械を用いることなく色彩の変化を目視で識別することができる。
本発明でいう光吸収波長変化反応とは、発色性基質が酸素の存在下に酸化還元酵素の触媒作用を介して、光吸収波長が変化する反応をいう。
光吸収波長が変化する発色性基質の化学構造や性質の変化としては、具体的に例示すると、水酸基やアミノ基等からの水素の引き抜き、二重結合の形成、基質同士の会合やカップリング、電子移動に伴う電荷の非局在化など様々な変化が挙げられる。本発明では使用する発色性基質を種々選択することによって所望の色で酸素の有無を検知することができる。このような発色性基質としては、水酸基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基等の活性の比較的高い官能基を有する化合物、酸化還元指示薬、酸化還元試薬であるフェノール誘導体、アニリン誘導体、トルイジン誘導体、安息香酸誘導体等がよい。具体的に例示すると、ヒドロキノン、ポリフェノール、p−フェニレンジアミン、シアニン色素、アミノフェノール、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、2,4−ジクロロフェノール、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(DAOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメチルアニリン(MAPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン(MAOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン(TOOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−m−アニシジン(ADPS)、N−エチル−N−スルホプロピルアニリン(ALPS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン(DAPS)、N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン(HDAPS)、N−エチル−N−スルホプロピル−m−トルイジン(TOPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−アニシジン(ADOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アニリン(ALOS)、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(HDAOS)、N−スルホプロピル−アニリン(HALPS)、o−ジアニシジン、o−トリジン、3,3−ジアミノベンジジン、3,3,5,5−テトラメチルベンジジン、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4−ビス(ジメチルアミノ)ビフェニルアミン(DA64)、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン(DA67)、3,5−ジニトロ安息香酸、5−アミノサリチル酸、3−ヒドロキシアントラニル酸、3,5−ジアミノ安息香酸等、4−アミノアンチピリン、o−フェニレンジアミン、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、2−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン、2−アミノ−フェノール−4−スルホン酸、2,6−ジブロモ−4−アミノフェノール、2,2’−アジノール(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニウム塩、2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウム塩(ABTS)、2,6−ジクロロインドフェノール、カテコール、タンニン、エピカテキン、エピガロカテキン等が挙げられる。なお、更に蛍光的に観察したい場合には、酸化によって蛍光を発する化合物、例えばホモバニリン酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、チラミン、パラクレゾール、ジアセチルフルオレスシン誘導体等、化学発光的に観察したい場合には、ピロガロール等も挙げられる。ここに示した物質は一例に過ぎず、酵素の触媒作用により蛍光を発する反応が顕著に促進される物質は全てこれに含まれる。また、複数の化合物をカップリングして光吸収波長が変化するものでもよい。例えば、4−アミノアンチピリン、2,6−ジブロム−4−アミノフェノール、ABTSなどと、フェノール誘導体、アニリン誘導体、4−ヒドロキシ安息香酸誘導体などとの組合せが挙げられる。
本発明では、使用する酸化還元酵素などとの組み合わせによって、これら発色性基質の中から適宜選択したものを単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。上記発色性基質のうち、汎用性、発色性基質自体の安定性、コスト的な観点などから、安息香酸誘導体、2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウム塩(ABTS)、1,2−ジオキシベンゼン誘導体、ヒドロキノン誘導体、1,4−ジアミノベンゼン誘導体、3−ヒドロキシアントラニル酸誘導体が好ましく、水への溶解性など取り扱いの観点から、2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウム塩(ABTS)が最も好ましい。
酸素感応性溶液中の発色性基質の濃度は、単独で使用する場合や複数組み合わせて使用する場合に関わらず、合計で0.01〜1000mg/mlの範囲が好ましい。本発明では、該濃度がこの範囲にあれば、使用する発色性基質にもよるが、明確に光吸収波長の変化を認識することができるとともに、コスト的な負担が問題にならない。該濃度は、使用する発色性基質の種類や性質、使用する酸化還元酵素など他の原料の濃度との組み合わせ、原料として使用する酸化還元酵素の吸光度係数、又は酸素インジケーターとしたときの検知する酸素濃度閾値や検知に要する時間、検知する際の色彩など色差変化などを調整する目的で、上記範囲から適宜選定される。酸素インジケーターとした場合の酸素検知の認識のし易さやコスト的な観点から、該濃度は0.1〜50mg/mlの範囲がより好ましい。
一般に生化学の分野において、酵素は熱やpHなどの影響により反応活性が低下し易いという認識があり、酵素の種類にもよるが、酵素を長期保管する場合には溶液状態ではなく乾燥状態のまま冷凍保管しているのが通常である。ところが、酵素を酸素インジケーターとして利用する場合には、上記の酸素検知反応を行うにあたって溶液状態の酸素感応性溶液にする必要がある。
本発明では、酸化された発色性基質を還元する還元剤として、特に、酸化によりジスルフィド基を生成するメルカプト基含有化合物を用いることによって、溶液状態でも酵素の反応活性が著しく劣化することなく、製品として長期的に安定して酸素検知を行うことができるようになる。該化合物は、一般的な還元剤の中でも、特に酵素の安定化剤や、酵素によっては活性化剤として作用する性質を有するものである。或いは、本発明では、酸素感応性溶液に酵素安定化剤を添加することによって、溶液状態でも酵素の反応活性が著しく劣化することなく、製品として長期的に安定して酸素検知を行うことができるようになる。酵素安定化剤を使用することは、上記特定の還元剤に限らず、一般的な還元剤を使用することも可能となるのでより好ましい。
本発明で用いられる特定の還元剤は、酸化によりジスルフィド基を生成するメルカプト基含有化合物である。該化合物のメルカプト基(−SH基)が酸化されてジスルフィド基(−S−S−基)に変わることにより酵素の活性部位が酸化劣化されるのを防ぐ目的で使用される。また、該化合物の酸素感応性溶液中における濃度を調整することにより、所望の酸素濃度を閾値として酸素の有無を判別することができる。該化合物を具体的に例示すると、グルタチオン、システイン、N−アセチルシステインなどのシステイン誘導体、メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、チオグリセロールなどが挙げられる。本発明では、使用する酸化還元酵素などとの組み合わせによって、これら特定の還元剤の中から適宜選択したものを単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。上記還元剤のうち、汎用性やコスト的な観点などからグルタチオン、システイン塩酸塩、N−アセチルシステイン、チオグリセロールが好ましい。酸素感応性溶液中の該化合物の濃度は、特に限定されるものではない。該化合物とは別の酵素安定化剤を使用する場合には、該化合物は使用せず、その他一般的な還元剤を使用しても、酵素の保存安定性には支障がない。該化合物の濃度は、所望の酸素濃度を閾値として酸素の有無を判別するために使用する酸化還元酵素や発色性基質の濃度に応じて調整した濃度とすればよいが、溶解性やコスト的な観点から該化合物の濃度は150mM以下が好ましく、酸素感応性溶液のpH調整など溶液調製の容易さの観点から80mM以下がより好ましい。
また、上記特定の還元剤とは別の一般的な還元剤としては、例えば、アルカリ性物質と還元糖類、フェロシアン化カリウム、亜ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、アスコルビン酸、エリソルビン酸、シュウ酸、マロン酸、及びこれら有機酸の金属塩、その他特許文献2や他の文献に記載の還元剤等が挙げられる。本発明では、使用する酸化還元酵素などとの組み合わせによって、これら一般的な還元剤の中から適宜選択したものを単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。該還元剤のうち、汎用性やコスト的な観点などからアスコルビン酸、エリソルビン酸、シュウ酸、マロン酸、及びこれら有機酸の金属塩が好ましく、安全衛生性の観点からアスコルビン酸やエリソルビン酸、及びこれらの金属塩がより好ましい。酸素感応性溶液中の上記の一般的な還元剤の濃度は、特に限定されるものではなく、還元剤として上記特定の還元剤を使用する場合には、上記の一般的な還元剤は使用しなくてもよい。上記一般的な還元剤の濃度は、所望の酸素濃度を閾値として酸素の有無を判別するために使用する酸化還元酵素や発色性基質の濃度に応じて調整した濃度とすればよいが、溶解性やコスト的な観点から該一般的な還元剤の濃度は500mM以下が好ましい。なお、上記一般的な還元剤は、上記特定の還元剤と適宜組み合わせて使用することも可能である。このような組み合せは、上記特定の還元剤の持つ酵素活性を劣化させない作用と、一般的な還元剤のコスト優位性との組み合せとなるので更に好ましい。
本発明で用いられる酵素安定化剤としては、用いる酵素によって適切なものを選択することが好ましい。具体的に例示すると、アスコルビン酸オキシダーゼの場合には、マンニトール等の糖類、ゼラチンや牛血清アルブミン等のタンパク類などが挙げられる。ビリルビンオキシダーゼの場合には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)やアスパラギン酸などが挙げられる。酵素安定化剤は適宜選択したものを単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよく、酸素感応性溶液中の該剤の濃度は、単独で使用する場合や複数組み合わせて使用する場合に関わらず、酵素安定化作用を効果的に発揮するためには0.1mM以上であることが好ましい。酵素安定化剤の濃度の上限は、特に限定されるものではないが、酵素によっては大量に使用しても酵素安定化作用がほとんど変わらない場合もあり、コスト的な観点から当該濃度は50mM以下が好ましい。
本発明者らは、特に0.2wt%水溶液の表面張力が0.06N/m以下である非イオン性化合物を酵素安定化剤として添加することによって、他の酵素安定化剤よりも反応活性保持能力が高く、且つ酸素検知能力を著しく高められることを新規に見出した。これにより、酸素インジケーターの製品として、酸素検知能力を長期的に、また効果的に安定化することができ、且つより高精度に酸素を検知することが可能になった。該表面張力の値が0.06N/m以下である場合には、その理由は定かではないが、該非イオン性化合物を含む酸素感応性溶液の酸素感応性が著しく高められる。表面張力は、酸素検知能力をより高めるためには0.05N/m以下がより好ましい。一方、表面張力の下限は、本発明者らが鋭意検討した結果から表面張力がより低い化合物を溶解すると酸素感応性溶液の酸素感応性がより高められることが判っているので、特に限定されない。なお、本発明における表面張力は、測定サンプルとして非イオン性化合物の0.2wt%水溶液を用いDuNouy表面張力計(吊環法)にて23℃で測定した値である。また、非イオン性化合物の代わりに、例えばドデシル硫酸ナトリウムなどのイオン性化合物を用いると、酵素が失活する場合があり酸素インジケーターとして機能しなくなる。
本発明で用いられる非イオン性化合物とは、水中においてイオン解離しない化合物を指す。具体的に例示すると非イオン性の水溶性ポリマー、非イオン性の界面活性剤などが挙げられる。
非イオン性の界面活性剤としては、例えばグリセリン誘導体、ショ糖、ソルビトールなどの脂肪酸エステル類やアルコール付加物などが挙げられる。本発明では、これら非イオン性化合物のうち、酵素安定化作用の観点から非イオン性の水溶性ポリマーがより好ましい。
本発明で用いられる非イオン性の水溶性ポリマーとしては、具体的に例示すると、ビニルアルコールコポリマーや部分ケン化ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、ポリグリセリン誘導体、メチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロースやカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体などのうち水溶性であり、且つ0.2wt%水溶液の表面張力が0.06N/m以下であるものが挙げられる。これら水溶性ポリマーのうち、溶解などの取り扱い易さやコスト的な観点から、部分ケン化ポリビニルアルコールやヒドロキシプロピルメチルセルロースが特に好ましい。これら水溶性ポリマーを添加することによる本発明の酸素インジケーター機能の向上は、酸化還元酵素としてアスコルビン酸オキシダーゼ、発色性基質としてABTSを用いた場合に、特に顕著であった。
本発明で酵素安定化剤として使用される非イオン性化合物は、これらから適宜選択したものを単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。酸素感応性溶液中の該化合物の濃度は、単独で使用する場合や複数組み合わせて使用する場合に関わらず、0.01wt%以上であることが好ましい。該化合物の濃度が0.01wt%以上であれば酸素感応性溶液の酸素感応性を効果的に高められることができる。酵素安定化作用をより効果的に発揮させるためには、該化合物の濃度は0.03wt%以上がより好ましい。該化合物の濃度の上限は、特に限定されるものではないが、該化合物を大量に使用しても酸素感応性向上作用がほとんど変わらないので、コスト的な観点から該剤の濃度は2%以下が好ましい。
なお、本発明においては、上述の還元剤及び酸素安定化剤はいずれか一方のみを用いてもよく、両方を共に用いてもよい。
本発明では、更に酸素感応性溶液がpH緩衝剤を含むことによって、該溶液の著しいpH変化を抑制して酵素活性の変動を防ぎ、より長期的に安定して酸素検知を行うことができるようになる。pH緩衝剤としては、例えば、酢酸バッファー、クエン酸バッファー、リンゴ酸バッファー、リン酸バッファーなど、一般にpH緩衝剤として使用されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、使用する酸化還元酵素などに適したものを適宜選択すればよい。pH緩衝剤は適宜選択したものを単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。酸素感応性溶液中のpH緩衝剤の濃度は、酸素感応性溶液中の他物質の濃度に応じて適宜設定すればよいが、具体的には、単独で使用する場合や複数組み合わせて使用する場合に関わらず、酸素感応性溶液の緩衝作用を効果的に発揮するためには少なくとも10mM以上であることが好ましい。pH緩衝剤の濃度の上限は、溶解性やコスト的な観点から1M以下が好ましい。
更に、本発明では、酸素インジケーターに酸素吸収剤としての性能を兼備させる目的で、酸素インジケーターの酸素検知を遅延させるなど検知時間の調整をする目的で、酵素による光吸収波長変化反応を酸素濃度のある閾値からドラスチックに変化させる目的で、又は酸素インジケーターとして酸素検知感度を調整する目的で、発色性基質が酸素の存在下に酸化還元酵素の触媒作用を介して光吸収波長が変化する反応と競合して酸素と反応する化合物、又は酸素を吸着する化合物を、酸素感応性溶液に含有させてもよい。このような競合化合物としては、酵素的反応であれば、用いる酵素が高い基質選択性を示す化合物、例えばアスコルビン酸オキシダーゼにおけるアスコルビン酸、ビリルビンオキシダーゼにおけるビリルビンなどが挙げられ、非酵素的反応であれば、一酸化窒素などが挙げられる。一方、吸着化合物としては、ヘモグロビン、コバルト2価錯体、サレン錯体、フルオロカーボン化合物などが挙げられる。該化合物は、これらに限定されるものではなく、目的に応じて適したものを適宜選択すれば、単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。酸素感応性溶液中の該化合物の濃度は、酸素感応性溶液中の他物質の濃度に応じて適宜設定すればよい。
本発明では、上記目的のために酸素インジケーターの酸素検知性能を調整するために、上記化合物の他に、酵素の阻害剤、基質アナローグ、包接化合物などを共存させることにより、光吸収波長変化反応を遅くするか、あるいは感度を低下させることができる。阻害剤としては例えばアザイド、ジエチルジチオカルバミン酸、チオ硫酸塩、フッ化物、シアン化物、PCMB、EDTA、2価や3価の金属類など、基質アナローグとしては使用する酵素により適宜選定される化合物、包接化合物としてはシクロデキストリンなどが挙げられる。ここに挙げたものは一例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、使用する酵素や基質を勘案し目的に応じて種類や濃度を適宜組み合わせて使用すればよい。
本発明でいう酵素を利用した光吸収波長変化反応は、通常溶媒中で進行する溶液反応であり、溶液中に溶解した酸素と発色性基質が酵素の存在下において酸化還元反応を起こすものである。溶媒としては、上記反応を阻害せず、かつ、酸素が溶存する溶媒であればどのような溶媒を使用してもよい。食品包装の酸素インジケーターとして用いる場合には、水、又は水を主体(50wt%超過)とした水とエタノールの混合液が取り扱いや食品衛生上の観点から好ましい。
本発明の酸素インジケーターは、その製造時や、酸素モニタリングをする前の保管時において、酸素感応性溶液を酸素と接触させない構造、即ち酵素と発色性基質が酸素と隔離された構造とする必要がある。具体的には、酸素濃度0.05%未満の低酸素状態、好ましくは無酸素状態において、酸素感応性溶液を酸素ガスバリア性フィルムにて包装して保存し、使用時に酸素ガスバリア性フィルムを除去又は破袋することによって雰囲気酸素と接触させて酸素を検知する方法が挙げられる。或いは、酵素溶液と発色性基質溶液の各々を酸素と隔離された状態で、各々酸素ガスバリア性フィルムにて包装して保存し、使用時に酸素ガスバリア性フィルムを除去又は破袋することによって、酵素溶液と発色性基質溶液が混合されると共に、雰囲気酸素と接触して酸素を検知する方法等が挙げられる。その際、酸素感応性溶液と雰囲気酸素との間に酸素透過性フィルムを存在させる場合には、適度な酸素透過性を持つフィルムを選択することにより、酸素検知時間を制御することもできる。
本発明においては、酸素感応性溶液を液体状のまま使用するよりも、酸素感応性溶液を支持体に含浸又は含有させて使用する方がハンドリングの観点から好ましい。用いられる支持体としては、プラスチック、金属、セラミック、結晶性セルロース、無機粒子、ゲル、紙等が挙げられ、前記の光吸収波長変化反応を阻害せず、そのまま又は加工して固形状態となるものであれば何れも使用することができる。これら支持体への含浸又は含有の方法は、例えば、これらに塗布する、表面コーティングする、浸漬するなどが挙げられる。具体的には、プラスチック、金属、セラミックからなる多孔性成形品、不織布、紙、織布などに酸素感応性溶液を含浸させたもの、アビセル(商品名、旭化成(株))などの結晶性セルロース、珪藻土などの無機粒子に含有させて打錠成型したもの、ゼラチンや寒天等のゲルに包括させたものなどを、適度な酸素透過性を有するフィルムや容器で被覆する等の構造体が挙げられる。
なお、本発明においては、上記支持体及び被覆材としてプラスチックを用いる場合には、焼却時の燃焼カロリーの低さや土中分解を考慮して生分解性プラスチックを用いることが好ましい。生分解性プラスチックとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ酪酸、ポリ吉草酸、これらの共重合体などのヒドロキシカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル類、エチレングリコールとアジピン酸などの多価アルコール類と多価カルボン酸類の重縮合体からなる脂肪族ポリエステル類、及びこれらにテレフタル酸などの芳香族多価化合物を共重合させた脂肪族芳香族共重合ポリエステル類、デンプン系やセルロース系などの天然高分子類などが挙げられ、生分解性プラスチックの規格、例えば日本における生分解性プラスチック研究会が定める規格、米国におけるASTMD−6400、ドイツにおけるDIN V−54900などに適合するものが挙げられる。
本発明の酸素インジケーターは、その形状が小袋状、ラベル状、テープ状、錠剤状、キャップ状などの構造体に加工されて用いることができる。例えば、バターなど酸化劣化し易い油脂を含有する菓子などを無酸素包装する場合やハムなどの加工肉食品を真空包装する場合には、本発明の酸素感応性溶液を含浸させた吸水性紙を酸素透過性フィルムで被覆した小袋形状の構造体とし、これを本発明の酸素インジケーターとして包装体内に入れることによって、包装体内の酸素の有無を検知することができる。また、ガス置換包装された惣菜や弁当の容器において、小袋では子供や老人が間違って小袋を食べてしまう恐れがある場合には、容器の内側に粘着ラベル形状に加工した本発明の酸素インジケーターを貼り付けて用いたり、包装容器内のガス置換を行う目的で形成された該容器の開孔部を塞ぐように貼り付けて用いるのが良い。
なお、本発明でいうガス置換包装とは、Modified Atmosphere包装、ガス充填包装、Controled Atmosphere包装ともいわれる包装技術である。一般に、包装内容物に応じて適宜容器又は袋内のガス組成が調整され、通常は容器又は袋内のガス成分としては、不活性ガスである窒素やアルゴンによりガス置換がされる。菌類の繁殖を抑制する目的では、容器又は袋内の酸素のガス組成が無酸素であることが好ましく、更に静菌作用がある二酸化炭素のガス組成が3%以上であることがより好ましく、更に殺菌作用があるエタノールのガス組成が0.5%以上であることが最も好ましい。更に飲料においては天面の透明なキャップの内側に本発明の酸素インジケーターを設ける形状とすることによって、炭酸飲料など二酸化炭素が存在する場合のように従来のメチレンブルーを用いた酸素インジケーターを使用することができなかった用途においても、酸素の有無を色彩などの変化により確認することができる。
本発明の酸素インジケーターは、上記の食品包装分野以外にも、密封空間内の酸素の有無を確認する必要のあるところであれば、いずれの用途に使用してもよい。例えば、精密機械部品包装やネジ等の金属部品包装や電子基板等の電機部品包装、医薬品、化粧品等の包装への使用が挙げられる。本発明の包装体としては、例えば袋状、容器状のものなど一般に包装材として使用されている形態であれば如何なる形態のものでもよい。用いられる材質は、包装体内を真空に保つために、或いは包装体内のガス組成の変動を極力抑えるために、ガスバリア性を有しているものが好ましい。包装体の材質としては、プラスチック、金属、木材、紙、ガラスなどの単体あるいはこれらの積層材等が挙げられる。そのガスバリア性は、包装体内のガス組成の変動を、用いるガス各々に対し標準状態(23℃、50%RH)で10%未満の変動に抑えられることが好ましい。なお、ここでいう容器とは、受け容器及び蓋からなる形態を持ち、内容物を入れるための器を指し、例えば、容器と蓋の一辺がヒンジ部を介して接合されたいわゆるフードパックでもよい。
いずれの場合も、本発明の酸素インジケーターは、酸素の有無を判別するものであり、モニタリングする前(特に保管時)は、光吸収波長変化反応が起こらないように、又は極僅かしか起こらないように、酸素と隔離しておくためにガスバリア性の材質による包装でガス置換包装されていることが好ましい。例えば、金属、ガラス等の酸素ガスバリア性の高い容器を用いたり、酸素ガスバリア性フィルムによる袋包装を施しての保存が挙げられる。また、より好ましくは保存環境内の極少量の酸素及び酸素ガスバリア性保存袋を透過して侵入した酸素を捕捉するため、これら保存袋内などに脱酸素剤等の酸素捕捉剤を入れてもよい。
本発明の酸素インジケーターについて、その具体例を図を用いて説明する。
図1は、酸素感応性溶液1を、酸素ガス透過性フィルムで作製した袋2に低酸素状態を保ったまま包装し、更にその外側を酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋3にて包装した酸素インジケーターの斜視図と、そのA−A’面で切断した断面図である。
図2は、酸素感応性溶液1を、酸素ガス透過性を有するプラスチック容器4に低酸素状態を保ったまま包装し、更にその外側を酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋3にて包装した酸素インジケーターの斜視図と、そのB−B’面で切断した断面図である。
図3は、酸素感応性溶液1を、多孔性成形品、不織布のような枚様体、結晶性セルロースや無機粒子等を用いた打錠成型品、ゼラチンや寒天等のゲル、吸水性濾紙などの小片5に低酸素状態を保ったまま含浸させ、酸素ガス透過性フィルムで作製した袋2に低酸素状態を保ったまま包装し、更にその外側を酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋3にて包装した酸素インジケーターの斜視図と、そのC−C’面で切断した断面図である。
図4は、低酸素状態で濾紙5に酸素感応性溶液1を含浸させ、両面に粘着層を有する酸素ガスバリア性粘着テープ7の一方の粘着面上に含浸させた濾紙5を貼付け、その上から酸素透過性フィルム6により濾紙5を覆い、酸素ガスバリア性粘着テープ7の粘着力により貼合し、酸素透過性フィルム6の上から酸素ガスバリア性テープ7’により覆い、酸素ガスバリア性粘着テープ7の粘着力により貼合した構造の酸素インジケーターの斜視図と、そのD−D’面で切断した断面図である。
図5は、片面に粘着層を有する酸素ガスバリア性粘着ラベル8の粘着面上に、低酸素状態で濾紙5を貼付け、酸素感応性溶液1を含浸させて、その上から酸素透過性フィルム6により濾紙5を覆い、酸素ガスバリア性粘着ラベル8の粘着力により貼合し、酸素透過性フィルム6の上から酸素ガスバリア性テープ7’により覆い、酸素ガスバリア粘着ラベル8の粘着力により貼合した構造の酸素インジケーターの斜視図と、そのE−E’面で切断した断面図である。
図6は、図5に示す粘着ラベル状酸素インジケーターを、開孔部を有するフタに該開孔部を塞ぐように貼付け使用した場合を示す斜視図である。この場合、酸素ガスバリア性粘着ラベル8により該開孔部を塞いでいるので、該容器内は外界とガスバリア性素材により隔離された密閉状態であり、該容器内のガス組成の変動は抑制されたものとなっている。一方、該インジケーターは、酸素感応性溶液1を含浸させた濾紙5が酸素透過性フィルム6により覆われている構造であるので、濾紙5は酸素透過性フィルム6を介して該容器内雰囲気と接しており、該インジケーターによって該容器内の酸素濃度をモニターすることができるものとなっている。
【実施例1】
酸化還元酵素としてビリルビンオキシダーゼ(EC1.3.3.5、天野製薬社製BO−3)、発色性基質としてABTS(東京化成工業社製高品質分析試薬)を用い、溶媒として酸素濃度4ppmの50mMリン酸緩衝液(pH=6.0、和光純薬工業社製試薬特級のリン酸一カリウムとリン酸二カリウムから調製)を用いた。該酵素10μg、該基質3mgをそれぞれリン酸緩衝液100μlに溶解し、前調製酵素溶液、前調製基質溶液とした。更に、リン酸緩衝液2800μl、前調製酵素溶液100μl、前調製基質溶液100μlを混合し、そこへ還元剤としてグルタチオン(還元型、和光純薬工業社製試薬特級)を0.6mMになるように溶解して、酵素及び基質の混合溶液を調製した。図1に示すように、この酵素及び基質の混合溶液(酸素感応性溶液)1を酸素ガス透過性フィルムで作製した袋2に低酸素状態を保ったまま包装し、酸素インジケーターとした。そして更にその外側を酸素ガスバリアー性フィルムで作製した袋3にて包装し、酸素インジケーターとした。酸素検知する包装体内で外側の酸素ガスバリアーフィルムで作製した袋3のみを破袋することによって包装体内の酸素を検知したところ、無酸素状態では無色であったが、空気と接触した場合、青緑色に変色した。また、測定環境が酸素濃度1%では透明、酸素濃度2%で青緑色に着色し、鋭敏な着色を示した。酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋3にて包装した状態で該酸素インジケーターを作製後5℃10日保管したものを用いて、上記と同様に酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度1%では透明、酸素濃度2%で青緑色に着色し、該酸素インジケーターは作製直後と5℃10日保管後で酸素検知能力に差は認められず、保存安定性に優れていることが判る。
【実施例2】
酸化還元酵素としてビリルビンオキシダーゼ(EC1.3.3.5、天野製薬社製BO−3)を、酵素安定化剤としてケン化度80mol%のポリビニルアルコール(和光純薬工業社製試薬特級、0.2wt%水溶液の表面張力=0.051N/m)を用いて、これらを事前に調製しておいた200mMリン酸緩衝液(pH=6.0、和光純薬工業社製試薬特級のリン酸一カリウムとリン酸二カリウムから調製)と共に蒸留水に溶解して、ビリルビンオキシダーゼが0.35μg/ml、ポリビニルアルコールが0.01%、リン酸緩衝液が50mMの酵素溶液(A1)を調製した。発色性基質としてABTS(東京化成工業社製高品質分析試薬)を、還元剤としてグルタチオン(還元型、和光純薬工業社製試薬特級)を、酵素安定化剤として上記ポリビニルアルコールを用いて、これらを事前に調製しておいた200mMリン酸緩衝液(pH=6.0)と共に蒸留水に溶解して、ABTSが0.1mg/ml、グルタチオンが1.2mM、ポリビニルアルコールが0.01%、リン酸緩衝液が50mMの基質溶液(B1)を調製した。これらの酵素溶液(A1)と基質溶液(B1)を酸素濃度30ppmの低酸素環境下で、各々窒素バブリングして溶存酸素濃度を0.00mg/L(メトラートレード社製溶存酸素計MO128で測定)とした後、該酵素溶液(A1)と該基質溶液(B1)を各々100μlづつ計量して混合し酸素感応性溶液(C1)を調製した。続いて、該酸素感応性溶液(C1)の一部を、図3に示すように濾紙(ワットマン社製クロマトグラフィーペーパー3MMChr)に低酸素状態を保ったまま含浸させ、酸素ガス透過性フィルム(旭化成社製OPSフィルム25μm厚)で作製した袋に低酸素状態を保ったまま包装して、酸素インジケーター(D1)を作製した。更に低酸素状態を保ったまま、得られた酸素インジケーター(D1)を、酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルム(旭化成パックス社製飛竜シリーズ規格袋)で作製した袋にて包装した。次いで、測定環境内を炭酸ガス、窒素ガス及び窒素と酸素の混合ガスを用いて、炭酸ガスのガス成分50vol%とし、酸素のガス成分を所定濃度(0.5vol%、1.0vol%、2vol%、ダンセンサー社製チェックポイントで測定)に調整し、得られた酸素インジケーター(D1)を測定環境内で外側の酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋のみ破袋することによって酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度0.5%では透明、酸素濃度1%で青緑色に着色し、酸素濃度1%を閾値として酸素の存在を鋭敏に示した。酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋にて包装した状態で該酸素インジケーター(D1)を作製後5℃30日保管したものを用いて、上記と同様に酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度0.5%では透明、酸素濃度1%で青緑色に着色し、酸素濃度1%を閾値として酸素の存在を鋭敏に示し、該酸素インジケーター(D1)は作製直後と5℃30日保管後で酸素検知能力に差は認められず、長期的な保存安定性に優れていることが判る。
【実施例3】
酸化還元酵素としてビリルビンオキシダーゼ(EC1.3.3.5)を、酵素安定化剤としてメチル基置換度1.9とヒドロキシプロピルメチル基置換度0.25のヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業社製メトローズ60SH−15、0.2wt%水溶液の表面張力=0.047N/m)を用いて、これらを事前に調製しておいた200mMリン酸緩衝液(pH=6.5)と共に蒸留水に溶解して、ビリルビンオキシダーゼが2.0μg/ml、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.5%、リン酸緩衝液が50mMの酵素溶液(A2)を調製した。発色性基質としてABTSを、還元剤としてN−アセチルシステイン(和光純薬工業社製試薬特級)を、酵素安定化剤として上記ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて、これらを事前に調製しておいた200mMリン酸緩衝液(pH=6.5)と共に蒸留水に溶解して、ABTSが3.0mg/ml、N−アセチルシステインが4.0mM、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.5%、リン酸緩衝液が50mMの基質溶液(B2)を調製した。これらの酵素溶液(A2)と基質溶液(B2)を酸素濃度30ppmの低酸素環境下で、各々窒素バブリングして溶存酸素濃度を0.00mg/Lとした後、該酵素溶液(A2)と該基質溶液(B2)を各々100μlづつ計量して混合し酸素感応性溶液(C2)を調製した。続いて、該酸素感応性溶液(C2)の一部を、図3に示すように濾紙に低酸素状態を保ったまま含浸させ、酸素ガス透過性フィルムで作製した袋に低酸素状態を保ったまま包装して、酸素インジケーター(D2)を作製した。更に低酸素状態を保ったまま、得られた酸素インジケーター(D2)を、酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋にて包装した。次いで、実施例2と同様に、得られた酸素インジケーター(D2)を測定環境内で外側の酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋のみ破袋することによって酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度0.5%では透明、酸素濃度1%で青緑色に着色し、酸素濃度1%を閾値として酸素の存在を鋭敏に示した。酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋にて包装した状態で該酸素インジケーター(D2)を作製後5℃30日保管したものを用いて、上記実施例2と同様に酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度0.5%では透明、酸素濃度1%で青緑色に着色し、酸素濃度1%を閾値として酸素の存在を鋭敏に示し、該酸素インジケーター(D2)は作製直後と5℃30日保管後で酸素検知能力に差は認められず、長期的な保存安定性に優れていることが判る。
【実施例4】
酸化還元酵素としてビリルビンオキシダーゼ(EC1.3.3.5)を、酵素安定化剤として重合度10のポリグリセリンカプレート(理研ビタミン社製ポエムC−781、0.2wt%水溶液の表面張力=0.057N/m)を用いて、これらを事前に調製しておいた400mMリン酸緩衝液(pH=5.0)と共に蒸留水に溶解して、ビリルビンオキシダーゼが20μg/ml、ポリグリセリンカプレートが10%、リン酸緩衝液が100mMの酵素溶液(A3)を調製した。発色性基質としてABTSを、還元剤としてシュウ酸マンガン(和光純薬工業社製二水和物)を、酵素安定化剤として上記ポリグリセリンカプレートを用いて、これらを事前に調製しておいた400mMリン酸緩衝液(pH=5.0)と共に蒸留水に溶解して、ABTSが1.0mg/ml、シュウ酸マンガンが10mM、ポリグリセリンカプレートが10%、リン酸緩衝液が100mMの基質溶液(B3)を調製した。これらの酵素溶液(A3)と基質溶液(B3)を酸素濃度30ppmの低酸素環境下で、各々窒素バブリングして溶存酸素濃度を0.00mg/Lとした後、該酵素溶液(A3)と該基質溶液(B3)を各々100μlづつ計量して混合し酸素感応性溶液(C3)を調製した。続いて、該酸素感応性溶液(C3)の一部を、図4に示すように濾紙に低酸素状態を保ったまま含浸させ、両面に粘着層を有する酸素ガスバリア性粘着テープ(サトウシール社製PET75μm厚み)の一方の粘着面上に含浸させた濾紙を貼付け、その上から酸素透過性フィルムにより該濾紙を覆い、酸素ガスバリア性粘着テープの粘着力により貼合し、該酸素透過性フィルムの上から酸素ガスバリア性テープ(旭化成パックス社製アルミラミフィルム)により覆い、酸素ガスバリア性粘着テープの粘着力により貼合して、酸素インジケーター(D3)を作製した。更に低酸素状態を保ったまま、得られた酸素インジケーター(D3)を、酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋にて包装した。次いで、実施例2と同様に、得られた酸素インジケーター(D3)を測定環境内で外側の酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋を破袋し、酸素ガスバリア性テープを除去することによって酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度0.5%では透明、酸素濃度1%で青緑色に着色し、酸素濃度1%を閾値として酸素の存在を鋭敏に示した。酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋にて包装した状態で該酸素インジケーター(D3)を作製後5℃30日保管したものを用いて、上記実施例2と同様に酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度0.5%では透明、酸素濃度1%で青緑色に着色し、酸素濃度1%を閾値として酸素の存在を鋭敏に示し、該酸素インジケーター(D3)は作製直後と5℃30日保管後で酸素検知能力に差は認められず、長期的な保存安定性に優れていることが判る。
【実施例5】
酸化還元酵素としてアスコルビン酸オキシダーゼ(EC1.10.3.3、旭化成社製ASOM)を、酵素安定化剤としてメチル基置換度1.8のメチルセルロース(信越化学工業社製メトローズSM−15、0.2wt%水溶液の表面張力=0.054N/m)を用いて、これらを事前に調製しておいた400mMクエン酸緩衝液(pH=4.0、和光純薬工業社製試薬特級のクエン酸とクエン酸ナトリウムから調製)と共に蒸留水に溶解して、アスコルビン酸オキシダーゼが10μg/ml、メチルセルロースが2.0%、クエン酸緩衝液が50mMの酵素溶液(A4)を調製した。発色性基質としてABTSを、還元剤としてシステイン塩酸塩(和光純薬工業社製一級試薬)を、酵素安定化剤として上記メチルセルロースを用いて、これらを事前に調製しておいた400mMクエン酸緩衝液(pH=4.0)と共に蒸留水に溶解して、ABTSが8.0mg/ml、システイン塩酸塩が10mM、メチルセルロースが2.0%、クエン酸緩衝液が50mMの基質溶液(B4)を調製した。これらの酵素溶液(A4)と基質溶液(B4)を酸素濃度30ppmの低酸素環境下で、各々窒素バブリングして溶存酸素濃度を0.00mg/Lとした後、該酵素溶液(A4)と該基質溶液(B4)を各々100μlづつ計量して混合し、酸素感応性溶液(C4)を調製した。続いて、該酸素感応性溶液(C4)の一部を、図4に示すように濾紙に低酸素状態を保ったまま含浸させ、両面に粘着層を有する酸素ガスバリア性粘着テープの一方の粘着面上に含浸させた濾紙を貼付け、その上から酸素透過性フィルムにより該濾紙を覆い、酸素ガスバリア性粘着テープの粘着力により貼合し、該酸素透過性フィルムの上から酸素ガスバリア性テープにより覆い、酸素ガスバリア性粘着テープの粘着力により貼合して、酸素インジケーター(D4)を作製した。更に低酸素状態を保ったまま、得られた酸素インジケーター(D4)を、酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋にて包装した。次いで、実施例2と同様に、得られた酸素インジケーター(D4)を測定環境内で外側の酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋を破袋し、酸素ガスバリア性テープを除去することによって酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度0.5%では透明、酸素濃度1%で青緑色に着色し、酸素濃度1%を閾値として酸素の存在を鋭敏に示した。酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋にて包装した状態で該酸素インジケーター(D4)を作製後5℃30日保管したものを用いて、上記実施例2と同様に酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度0.5%では透明、酸素濃度1%で青緑色に着色し、酸素濃度1%を閾値として酸素の存在を鋭敏に示し、該酸素インジケーター(D4)は作製直後と5℃30日保管後で酸素検知能力に差は認められず、長期的な保存安定性に優れていることが判る。
【実施例6】
酸化還元酵素としてアスコルビン酸オキシダーゼ(EC1.10.3.3)を用いて、蒸留水に溶解して5mg/mlのアスコルビン酸オキシダーゼ母液を調製した。酵素安定化剤としてケン化度80mol%のポリビニルアルコール(和光純薬工業社製試薬特級、0.2wt%水溶液の表面張力=0.051N/m)を用いて、蒸留水に溶解して1重量%のポリビニルアルコール母液を調製した。これらアスコルビン酸オキシダーゼ母液とポリビニルアルコール母液を用いて、事前に調製しておいた400mM酢酸緩衝液(pH=4.5、和光純薬工業社製試薬特級の酢酸と酢酸ナトリウムから調製)と共に蒸留水に溶解して、アスコルビン酸オキシダーゼが100μg/ml、ポリビニルアルコールが0.05%、酢酸緩衝液が100mMの酵素溶液(A5)を100ml調製した。発色性基質としてABTSを用いて、蒸留水に溶解して25mg/mlのABTS母液を調製した。還元剤としてL−アスコルビン酸(和光純薬工業社製試薬特級)を用いて、蒸留水に溶解して100mMのL−アスコルビン酸母液を調製した。上記と同様に、酵素安定化剤として上記ポリビニルアルコールを用いて、蒸留水に溶解して1重量%のポリビニルアルコール母液を調製した。これらABTS母液、L−アスコルビン酸母液、ポリビニルアルコール母液を用いて、事前に調製しておいた400mM酢酸緩衝液(pH=4.5)と共に蒸留水に溶解して、ABTSが8.0mg/ml、L−アスコルビン酸が25mM、ポリビニルアルコールが0.05%、酢酸緩衝液が100mMの基質溶液(B5)を100ml調製した。これらの酵素溶液(A5)と基質溶液(B5)を、各々逆止弁付き容器内にて大気に触れない状況下で窒素バブリングして溶存酸素濃度を0.00mg/Lとした後、各々マイクロポンプにより等量ずつをミキサーに送液して、連続的に該酵素溶液(A5)と該基質溶液(B5)を混合した酸素感応性溶液(C5)を調製した。該酸素感応性溶液(C5)の一部を、酸素濃度30ppmの低酸素環境下で、図5に示すように片面に粘着層を有する酸素ガスバリア性粘着ラベル(サトウシール社製PET75μm厚)の粘着面上に貼り付けた濾紙に含浸させ、その上から酸素透過性フィルム(旭化成社製OPSフィルム25μm厚)により該濾紙を覆い、酸素ガスバリア性粘着ラベルの粘着力により貼合し、酸素透過性フィルムの上から酸素ガスバリア性テープにより覆い、酸素ガスバリア粘着ラベルの粘着力により貼合して、酸素インジケーター(D5)を作製した。更に低酸素状態を保ったまま、得られた酸素インジケーター(D5)を、酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋にて包装した。次いで、実施例2と同様に、得られた酸素インジケーター(D5)を測定環境内で外側の酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋を破袋し、酸素ガスバリア性テープを除去することによって酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度0.5%では透明、酸素濃度1%で青緑色に着色し、酸素濃度1%を閾値として酸素の存在を鋭敏に示した。酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋にて包装した状態で該酸素インジケーター5を作製後5℃30日保管したものを用いて、上記実施例2と同様に酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度0.5%では透明、酸素濃度1%で青緑色に着色し、酸素濃度1%を閾値として酸素の存在を鋭敏に示し、該酸素インジケーター(D5)は作製直後と5℃30日保管後で酸素検知能力に差は認められず、長期的な保存安定性に優れていることが判る。
【実施例7】
酸化還元酵素としてアスコルビン酸オキシダーゼ(EC1.10.3.3)を用いて、蒸留水に溶解して5mg/mlのアスコルビン酸オキシダーゼ母液を調製した。酵素安定化剤としてメチル基置換度1.9とヒドロキシプロピルメチル基置換度0.25のヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業社製メトローズ60SH−15、0.2wt%水溶液の表面張力=0.047N/m)を用いて、蒸留水に溶解して2重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース母液を調製した。これらアスコルビン酸オキシダーゼ母液とヒドロキシプロピルメチルセルロース母液を用いて、事前に調製しておいた1M酢酸緩衝液(pH=3.5)と共に蒸留水に溶解して、アスコルビン酸オキシダーゼが200μg/ml、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.1%、酢酸緩衝液が200mMの酵素溶液(A6)を100ml調製した。発色性基質としてABTSを用いて、蒸留水に溶解して25mg/mlのABTS母液を調製した。第一の還元剤としてL−アスコルビン酸ナトリウムを用いて、蒸留水に溶解して500mMのL−アスコルビン酸ナトリウム母液を調製した。第二の還元剤としてN−アセチルシステインを用いて、蒸留水に溶解して200mMのN−アセチルシステイン母液を調製した。上記と同様に、酵素安定化剤として上記ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて、蒸留水に溶解して2重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース母液を調製した。これらABTS母液、L−アスコルビン酸ナトリウム母液、N−アセチルシステイン母液、ヒドロキシプロピルメチルセルロース母液を用いて、事前に調製しておいた1M酢酸緩衝液(pH=3.5)と共に蒸留水に溶解して、ABTSが4.0mg/ml、L−アスコルビン酸ナトリウムが200mM、N−アセチルシステインが80mM、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.1%、酢酸緩衝液が200mMの基質溶液(B6)を100ml調製した。これらの酵素溶液(A6)と基質溶液(B6)を、各々逆止弁付き容器内にて大気に触れない状況下で窒素バブリングして溶存酸素濃度を0.00mg/Lとした後、各々マイクロポンプにより等量ずつをミキサーに送液して、連続的に該酵素溶液(A6)と該基質溶液(B6)を混合した酸素感応性溶液(C6)を調製した。該酸素感応性溶液(C6)の一部を、酸素濃度30ppmの低酸素環境下で、図5に示すように片面に粘着層を有する酸素ガスバリア性粘着ラベルの粘着面上に貼り付けた濾紙に含浸させ、その上から酸素透過性フィルムにより該濾紙を覆い、酸素ガスバリア性粘着ラベルの粘着力により貼合し、酸素透過性フィルムの上から酸素ガスバリア性テープにより覆い、酸素ガスバリア粘着ラベルの粘着力により貼合して、酸素インジケーター(D6)を作製した。大気中に取り出した該酸素インジケーター(D6)を、酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋にて窒素ガス置換包装した。次いで、実施例2と同様に、得られた酸素インジケーター(D6)を測定環境内で外側の酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋を破袋し、酸素ガスバリア性テープを除去することによって酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度0.5%では透明、酸素濃度1%で青緑色に着色し、酸素濃度1%を閾値として酸素の存在を鋭敏に示した。酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋にて包装した状態で該酸素インジケーター(D6)を作製後5℃30日保管したものを用いて、上記実施例2と同様に酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度0.5%では透明、酸素濃度1%で青緑色に着色し、酸素濃度1%を閾値として酸素の存在を鋭敏に示し、該酸素インジケーター(D6)は作製直後と5℃30日保管後で酸素検知能力に差は認められず、長期的な保存安定性に優れていることが判る。
【実施例8】
酸化還元酵素としてアスコルビン酸オキシダーゼ(EC1.10.3.3)を用いて、蒸留水に溶解して5mg/mlのアスコルビン酸オキシダーゼ母液を調製した。酵素安定化剤は添加せずに、アスコルビン酸オキシダーゼ母液を用いて、事前に調製しておいた400mM酢酸緩衝液(pH=4.5)と共に蒸留水に溶解して、アスコルビン酸オキシダーゼが100μg/ml、酢酸緩衝液が100mMの酵素溶液(A7)を100ml調製した。発色性基質としてABTSを用いて、蒸留水に溶解して25mg/mlのABTS母液を調製した。還元剤としてL−アスコルビン酸を用いて、蒸留水に溶解して100mMのL−アスコルビン酸母液を調製した。酵素安定化剤は添加せずに、これらABTS母液、L−アスコルビン酸母液を用いて、事前に調製しておいた400mM酢酸緩衝液(pH=4.5)と共に蒸留水に溶解して、ABTSが8.0mg/ml、L−アスコルビン酸が25mM、酢酸緩衝液が100mMの基質溶液(B7)を100ml調製した。これらの酵素溶液(A7)と基質溶液(B7)を、各々逆止弁付き容器内にて大気に触れない状況下で窒素バブリングして溶存酸素濃度を0.00mg/Lとした後、各々マイクロポンプにより等量ずつをミキサーに送液して、連続的に該酵素溶液(A7)と該基質溶液(B7)を混合した酸素感応性溶液(C7)を調製した。該酸素感応性溶液(C7)の一部を、酸素濃度30ppmの低酸素環境下で、図5に示すように片面に粘着層を有する酸素ガスバリア性粘着ラベル(サトウシール社製PET75μm厚)の粘着面上に貼り付けた濾紙に含浸させ、その上から酸素透過性フィルム(旭化成社製OPSフィルム25μm厚)により該濾紙を覆い、酸素ガスバリア性粘着ラベルの粘着力により貼合し、酸素透過性フィルムの上から酸素ガスバリア性テープにより覆い、酸素ガスバリア粘着ラベルの粘着力により貼合して、酸素インジケーター(D7)を作製した。更に低酸素状態を保ったまま、得られた酸素インジケーター(D7)を、酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋にて包装した。次いで、実施例2と同様に、得られた酸素インジケーター(D7)を測定環境内で外側の酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋を破袋し、酸素ガスバリア性テープを除去することによって酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度0.5%と1%では透明、酸素濃度2%で青緑色に着色し、酸素濃度2%を閾値として酸素の存在を示した。酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋にて包装した状態で該酸素インジケーター(D7)を作製後5℃10日保管したものを用いて、上記実施例2と同様に酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度0.5%と1%では透明、酸素濃度2%でもわずかに青緑色に着色する程度にとどまり、該酸素インジケーター(D7)は作製直後と5℃10日保管後で酸素検知能力に明確な差が認められた。
【実施例9】
酸化還元酵素としてアスコルピン酸オキシダーゼ(EC1.10.3.3)を用いて、蒸留水に溶解して5mg/mlのアスコルピン酸オキシダーゼ母液を調製した。酵素安定化剤としてケン化度80mol%のポリピニルアルコール(和光純薬工業社製試薬特級、0.2wt%水溶液の表面張力=0.051N/m)を用いて、蒸留水に溶解して1重量%のポリビニルアルコール母液を調製した。これらアスコルピン酸オキシダーゼ母液とポリピニルアルコール母液を用いて、事前に調製しておいた400mM酢酸緩衝液(pH=4.5、和光純薬工業社製試薬特級の酢酸と酢酸ナトリウムから調製)と共に蒸留水に溶解して、アスコルビン酢オキシダーゼ100μg/ml、ポリビニルアルコールが0.05%、酢酸緩衝液が100mMの酵素溶液(A8)を100ml調製した。発色性基質としてABTSを用いて、蒸留水に溶解して25mg/mlのABTS母液を調製した。上記と同様に、酵素安定化剤として上記ポリビニルアルコールを用いて、蒸留水に溶解して1重量%のポリビニルアルコール母液を調製した。還元剤は添加せずに、これらABTS母液、ポリビニルアルコール母液を用いて、事前に調製しておいた400mM酢酸緩衝液(pH=4.5)と共に蒸留水に溶解して、ABTSが8.0mg/ml、ポリビニルアルコールが0.05%、酢酸緩衝液が100mMの基質溶液(B8)を100ml調製した。これらの酵素溶液(A8)と基質溶液(B8)を、各々逆止弁付き容器内にて大気に触れない状況下で窒素バブリングして溶存酸素濃度を0.00mg/Lとした後、各々マイクロポンプにより等量ずつをミキサーに送液して、連続的に該酵素溶液(A8)と該基質溶液(B8)を混合した酸素感応性溶液(C8)を調製した。該酸素感応性溶液(C8)の一部を、酸素濃度30ppmの低酸素環境下で、図5に示すように片面に粘着層を有する酸素ガスバリア性粘着ラベル(サトウシール社製PET75μm厚)の粘着面上に貼り付けた濾紙に含浸させ、その上から酸素透過性フィルム(旭化成社製OPSフィルム25μm厚)により該濾紙を覆い、酸素ガスバリア性粘着ラベルの粘着力により貼合し、酸素透過性フィルムの上から酸素ガスバリア性テープにより覆い、酸素ガスバリア粘着ラベルの粘着力により貼合して、酸素インジケーター(D8)を作製した。更に低酸素状態を保ったまま、得られた酸素インジケーター(D8)を、酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋にて包装した。次いで、測定環境内の酸素ガス成分を濃度0.0vol%、0.2vol%、0.5vol%(ダンセンサー社製チェックポイントで測定)に調整することの他は実施例2と同様にして、得られた酸素インジケーター(D8)を測定環境内で外側の酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋を破袋し、酸素ガスバリア性テープを除去することによって酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度0.0%では透明、酸素濃度0.2%で青緑色に着色し、酸素濃度0.2%を閾値として酸素の存在を鋭敏に示した。酸素吸収剤と共に酸素ガスバリア性フィルムで作製した袋にて包装した状態で該酸素インジケーター(D8)を作製後5℃30日保管したものを用いて、上記と同様に酸素の有無を検知したところ、測定環境が酸素濃度0.0%では透明、酸素濃度0.2%で青緑色に着色し、酸素濃度0.2%を閾値として酸素の存在を鋭敏に示し、該酸素インジケーター(D8)は作製直後と5℃30日保管後で酸素検知能力に差は認められず、長期的な保存安定性に優れていることが判った。
【産業上の利用可能性】
本発明の酸素インジケーターは、酸素の存在を忌避するガス置換包装の分野で好適に利用することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質が酸素の存在下に酵素の触媒作用を介して光吸収波長変化反応を用いた酸素インジケーターであって、発色性基質と、酸化還元酵素と、酸化された発色性基質を還元する還元剤とを少なくとも含む酸素感応性溶液を含んでなる酸素インジケーター。
【請求項2】
基質が酸素の存在下に酵素の触媒作用を介して光吸収波長変化反応を用いた酸素インジケーターであって、発色性基質と、酸化還元酵素と、酵素安定化剤とを少なくとも含む酸素感応性溶液を含んでなる酸素インジケーター。
【請求項3】
基質が酸素の存在下に酵素の触媒作用を介して光吸収波長変化反応を用いた酸素インジケーターであって、発色性基質と、酸化還元酵素と、酵素安定化剤と、酸化された発色性基質を還元する還元剤とを少なくとも含む酸素感応性溶液を含んでなる酸素インジケーター。
【請求項4】
前記還元剤が、酸化されるとジスルフィド基を生成するメルカプト基含有化合物である請求項1又は3に記載の酸素インジケーター。
【請求項5】
前記酵素安定化剤が、0.2wt%水溶液の表面張力が0.06N/m以下である非イオン性化合物である請求項2又は3に記載の酸素インジケーター。
【請求項6】
前記非イオン性化合物が水溶性ポリマーである請求項5に記載の酸素インジケーター。
【請求項7】
前記水溶性ポリマーが、水溶性ポリビニルアルコール類、水溶性ポリグリセリン類、又は水溶性セルロース誘導体である請求項6に記載の酸素インジケーター。
【請求項8】
酸化還元酵素がアスコルビン酸オキシダーゼ又はビリルビンオキシダーゼである請求項5〜7のいずれか一項に記載の酸素インジケーター。
【請求項9】
前記酸素感応性溶液が緩衝剤を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の酸素インジケーター。
【請求項10】
前記酸素感応性溶液が、前記光吸収波長変化反応と競合して酸素と反応する化合物、又は酸素を吸着する化合物を更に含有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の酸素インジケーター。
【請求項11】
容器又は袋を含んでなる包装体であって、請求項1〜10のいずれか一項に記載の酸素インジケーターを該容器内又は袋内に含むことにより、或いは請求項1〜10のいずれか一項に記載の酸素インジケーターが該容器又は袋の開孔部を塞ぐように装着されることにより、該容器内又は袋内の酸素濃度を検知することができる上記包装体。
【請求項12】
真空包装されている請求項11に記載の包装体。
【請求項13】
前記容器又は袋内に酸素を含まないガスが充填されているガス置換包装されている請求項11に記載の包装体。

【国際公開番号】WO2004/083360
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【発行日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503738(P2005−503738)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003643
【国際出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(303046266)旭化成ライフ&リビング株式会社 (64)
【Fターム(参考)】