説明

酸素インジケーター

【課題】光及び熱に対して安定であり、十分な酸素検知応答速度を有し、かつ、シーラントが基材からはがれることのない、基材上に設けた酸素検知部を被覆してシーラント層を設けた酸素インジケーターを提供する。
【解決手段】基材1に層状珪酸塩を含むインキ組成物層からなる酸素検知機能部2を設け、前記酸素検知機能部2の周囲の基材領域3に接着剤4を塗布し、この接着剤4を介して前記基材1上にシーラント材5をラミネートすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体内の酸素吸収剤による脱酸素状態を判定するための酸素インジケーターに関する。
【背景技術】
【0002】
酸素は、食品や医療品を酸化し、劣化をひき起こすことが知られている。多くの食品は、医療品は、それらと共に包装体内に脱酸素剤を収納することによつて劣化を防止しているが、その際に、脱酸素剤の能力や包装体のピンホール、シール不良などによる包装体内部への酸素の浸入を検知するために、包装体内に脱酸素剤と共に酸素インジケーターが挿入されている。
【0003】
現在、酸化還元色素、還元剤、バインダー等の組み合わせを変えた何種類かの酸素インジケーターが上市されており、その場合、多くの酸素インジケーターは、酸素還元色素とその色素を還元させ得る還元剤を同じ溶液中に混在させ、プラスチックフィルム基材や繊紙等の繊維質基材に印刷、コーティングあるいは含浸させて作られている。また、酸素インジケーター用のインキ組成物に関して特許出願もされている(例えば特許文献1,2参照)。
また、基材上に設けた酸素検知部を被覆してシーラント層を設けることも行われている。
【特許文献1】特開昭56−84772号公報
【特許文献2】特開2001−192592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の酸素インジケーターを印刷により形成したものは、酸素検知層が薄く、薬剤を安定的に長時間保持することが困難であった。この為、酸素インジケーターの寿命が著しく短く、保管条件も限定され、従来の酸素インジケーターはいまだ十分な実用レベルに達していない。
また、従来の酸素検知剤は、耐光性及び耐熱性が不十分で、例えば、光照射下では退色したり変色機能が低下することがあり、鮮明な色彩を長時間維持するために遮光下で且つ低温下で保存しなければならない欠点があった。
また、基材上に設けた酸素検知部を被覆してシーラント層を設けた酸素インジケーターにおいてはシーラント層と酸素検知部の層の間に接着剤が介在するため酸素インジケーターの酸素検知応答速度が遅いという欠点があった。酸素検知応答速度を速くするために接着剤の厚みを薄くするとシーラント層が基材からはがれ易くなるという欠点があった。
また、酸化還元色素、還元剤、バインダー等の組み合わせを変えた何種類かの酸素インジケーターにおいては、印刷工程中、溶液中の還元剤が酸素還元色素を徐々に還元色に戻す為、時間の経過と共に色調が変化する問題があった。
更に同じ溶液中に酸化還元色素と還元剤を混在させる酸素インジケーターの場合、溶液中で還元される色素の量や空気酸化される還元剤の量を考慮して配合しなければならないため、通常より過剰に色素や還元剤を加えなければならなかった。
本発明の課題は、光及び熱に対して安定であり、十分な酸素検知応答速度を有し、シーラントが基材からはがれることのない、基材上に設けた酸素検知部を被覆してシーラント層を設けた酸素インジケーターを提供することである。第二の課題は、酸素インジケーターの製造時において、酸化還元色素及び還元剤を含む溶液の経時色調変化を防止した前記酸素インジケーターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、上記の課題を解決するもので、基材に層状珪酸塩を含むインキ組成物層からなる酸素検知機能部を設け、前記酸素検知機能部の周囲の基材領域に接着剤を塗布し、この接着剤を介して前記基材上にシーラント層をラミネートしたことを特徴とする酸素インジケーターを要旨とする。
【0006】
請求項1に記載の発明において、インキ組成物層としては、層状珪酸塩のほかにカチオン界面活性剤、酸化還元色素、還元剤、塩基性物質を含み、これらを適当な溶媒にバインダー及び必要に応じて添加剤を加えて溶解乃至分散させてインキ化したものを用い印刷してなるものが好ましい。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、酸素検知機能部が層状珪酸塩を含むインキ組成物からなるので、耐光性を有し、また酸素検知機能部の周囲の基材領域に接着剤を塗布し、この接着剤を介して前記基材上にシーラント層をラミネートしたので酸素検知機能部の本来持っている検知応答速度で酸素検知がなされる。また接着剤の厚さを十分に取ることができるのでシーラント層が基材から剥離することのない酸素インジケーターを提供することができる。
【0008】
更に本発明において、インキ組成物層からなる酸素検知機能部に代えて、酸化還元色素を含む層と、層状珪酸塩を含む酸素検知剤組成物と還元剤を含む層を積層してなるものを適用することができ、請求項3乃至6の発明は酸素検知機能部を多層を形成した態様を示すものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、基材上に、少なくとも酸化還元色素を含む層と、層状珪酸塩を含む酸素検知剤組成物と還元剤を含む層を含む酸素検知剤組成物層と、還元剤を含む層を積層してなる酸素検知機能部を設け、前記酸素検知機能部の周囲の基材領域に接着剤を塗布し、この接着剤を介して前記基材上にシーラント層をラミネートしたことを特徴とする酸素インジケーターを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、酸素検知機能部が層状珪酸塩を含むインキ組成物からなる層を含むので、耐光性を有し、また酸素検知機能部の周囲の基材領域に接着剤を塗布し、この接着剤を介して前記基材上にシーラント層をラミネートしたので酸素検知機能部の本来持っている検知応答速度で酸素検知がなされる。また接着剤の厚さを十分に取ることができるのでシーラント層が基材から剥離することのない酸素インジケーターを提供することができる。また、酸素検知機能部を酸化還元色素と還元剤を別々の層として積層して形成しているので、酸素インジケーターの製造時において、酸化還元色素と還元剤を含む印刷或いはコーティング溶液の色調変化を防止することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、基材上に、少なくとも酸化還元色素を含む層と、層状珪酸塩を含む酸素検知剤組成物と還元剤を含む層と、少なくとも還元剤を含む層と、少なくとも酸化還元色素を含む層を順次積層してなる酸素検知機能部を設け、前記酸素検知機能部の周囲の基材領域に接着剤を塗布し、この接着剤を介して前記基材上にシーラント層をラミネートしたことを特徴とする酸素インジケーターを要旨とする。
【0012】
請求項4の発明によれば、酸素検知機能部が層状珪酸塩を含むインキ組成物からなる層を含むので、耐光性を有し、また酸素検知機能部の周囲の基材領域に接着剤を塗布し、この接着剤を介して前記基材上にシーラント層をラミネートしたので酸素検知機能部の本来持っている検知応答速度で酸素検知がなされる。また接着剤の厚さを十分に取ることができるのでシーラント層が基材から剥離することのない酸素インジケーターを提供することができる。また、酸素検知機能部を酸化還元色素と還元剤を別々の層として積層して形成しているので、酸素インジケーターの製造時において、酸化還元色素と還元剤を含む印刷或いはコーティング溶液の色調変化を防止することができる。
【0013】
請求項5の発明は、少なくとも酸化還元色素を含む層と、層状珪酸塩を含む酸素検知剤組成物と還元剤を含む層と、少なくとも還元剤を含む層と、少なくとも酸化還元色素を含む層を順次積層してなる酸素検知機能部を設け、前記酸素検知機能部の周囲の基材領域に接着剤を塗布し、この接着剤を介して前記基材上にシーラント層をラミネートしたことを特徴とする酸素インジケーターを要旨とする。
【0014】
請求項5の発明によれば、酸素検知機能部が層状珪酸塩を含むインキ組成物からなる層を含むので、耐光性を有し、また酸素検知機能部の周囲の基材領域に接着剤を塗布し、この接着剤を介して前記基材上にシーラント層をラミネートしたので酸素検知機能部の本来持っている検知応答速度で酸素検知がなされる。また接着剤の厚さを十分に取ることができるのでシーラント層が基材から剥離することのない酸素インジケーターを提供することができる。また、酸素検知機能部を酸化還元色素と還元剤を別々の層として積層して形成しているので、酸素インジケーターの製造時において、酸化還元色素と還元剤を含む印刷或いはコーティング溶液の色調変化を防止することができる。
【0015】
本発明において、還元剤を含む層に酸化還元により変色しない色素が含ませても良い。
【0016】
本発明においては、酸素検知部の一部を被覆して接着剤を設け、前記酸素検知部の周囲の基材領域に塗布した接着剤及び前記インキ組成物層の一部を被覆して塗布した接着剤を介して前記酸素検知機能部を設けた基材上にシーラント層をラミネートしても良い。
【0017】
酸素検知剤の一部を被覆して設ける接着剤は格子状、網点状のパターンに設けることができる。
【0018】
本発明において層状珪酸塩として、スメクタイト族から選ばれた層状珪酸塩を用いる個とが好ましい。
【0019】
本発明において、酸素インジケーターを包装体を形成する外装材料を基材として用いて形成することができる。このようにして製造した酸素インジケーターを用いて、酸素インジケーター付き包装袋を作ることができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、酸素検知機能部が層状珪酸塩を含むインキ組成物層からなる層を含むので、耐光性を有し、また酸素検知機能部の周囲の基材領域に接着剤を塗布し、この接着剤を介して前記基材上にシーラント層をラミネートしたので酸素検知機能部の本来持っている検知応答速度で酸素検知がなされる。また接着剤の厚さを十分に取ることができるのでシーラント層が基材から剥離することのない酸素インジケーターを提供することができる。また、酸素検知機能部を酸化還元色素と還元剤を別々の層として積層して形成した構成の酸素インジケーターにおいては、酸素インジケーターの製造時において、酸化還元色素と還元剤を含む印刷或いはコーティング溶液の色調変化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に図面を参照して本発明につき詳細に説明する。
【0022】
図1及び図2は本発明の酸素インジケーターを示し、図1は断面図、図2は平面図である。
【0023】
図1及びに示すように、本発明の酸素インジケーターは、基材1に層状珪酸塩を含むインキ組成物層からなる酸素検知機能部2を設け、酸素検知機能部2の周囲の基材領域3に接着剤4を塗布し、この接着剤4を介して基材1上にシーラント材5をラミネートしたものである。
【0024】
図1の発明の実施の形態において、酸素検知機能部2として層状珪酸塩のほかに少なくとも酸化還元色素、還元剤、バインダー樹脂及び溶媒を含んだインキ組成物の層からなるものを用いることができる。
【0025】
基材1としては、合成紙、不織布または合成樹脂フィルム等を用いることができる。また酸素バリア性を有する透明フィルム、シリカ蒸着フィルム等を好適に利用することができる。
【0026】
シーラント材としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1などを用いることができる。
【0027】
本発明に用いることができる層状珪酸塩としては、スメクタイト族に族するものが好ましく、例えば、モンモリロナイト、及びバイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト等の天然のスメクタイト族に属する層状珪酸塩(天然スメクタイト)が挙げられる。このほかに、無機化合物を出発原料として水熱合成された、スメクタイト族に属する珪酸塩(合成スメクタイト)を使用することができる。中でも好ましい層状珪酸塩は、合成スメクタイトである。
【0028】
また、酸化還元色素としては、メチレンブルー、ニューメチレンブルー、ニュートラルレッド、インジゴカルミン、アシッドレッド、サフラニンT、フェノサフラニン、カプリブルー、ナイルブルー、ジフェニルアミン、キシレンシアノール、ニトロジフェニルアミン、フェロイン、N−フェニルアントラニル酸等を用いることができる。特にメチレンブルーを好適に利用できる。
【0029】
還元剤としては、アスコルビン酸、エリソルビン酸やその塩、アスコルビン酸塩、D−アラビノース、D−フラクトース、D−ラクトース等の還元糖、第一錫塩、第一鉄塩等の金属塩等を利用できる。
【0030】
バインダー樹脂は、酸化還元色素、還元剤、着色剤、吸収性粉末、保湿剤を基材上に固着するために用いられるもので、親水基と疎水基を合わせ持つ樹脂が好ましい。具体的にはポリビニルアセタール樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、親水基を導入したポリエステル樹脂等が挙げられるが、特にポリビニルアセタール樹脂が好ましい。
【0031】
溶媒としては、先に示した試薬類、特に結合剤を均一に且つ安定に溶解または分散できるものが望ましい。具体的には芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル類、アルコール類、水等を用いることができる。
【0032】
上記薬剤のほか、変色をより明確にする着色剤や水分を保持する保湿剤、吸収性粉末、印刷適性を向上させるレベリング剤、消泡剤等を添加できる。
【0033】
上記した様なインキ組成物を支持袋に塗布して酸素インジケーターを作製する。塗布にあたっては、印刷法、コーティング法が用いられる。印刷法は、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法等を利用することができ、また、コーティング法としては、ロールコーティング、ディップコーティング、ベタコーティング等が用いられる。
【0034】
本発明の酸素インジケーターにおいては、酸素検知機能部が層状珪酸塩を含むインキ組成物層からなる層を含むので、耐光性を有し、また酸素検知機能部の周囲の基材領域に接着剤を塗布し、この接着剤を介して前記基材上にシーラント層をラミネートしたので酸素検知機能部の本来持っている検知応答速度で酸素検知がなされる。また接着剤の厚さを十分に取ることができるのでシーラント層が基材から剥離することのない酸素インジケーターを提供することができる。
【0035】
本発明において、請求項2に記載のようにインキ組成物層内に酸化還元色素と還元剤を含ませることに代えて酸化還元色素と還元剤を別々の層として積層することができる。
【0036】
更に本発明において、上記したインキ組成物層からなる酸素検知機能部に代えて、酸素検知機能部2として少なくとも酸化還元色素を含む層と、層状珪酸塩を含む酸素検知剤組成物と少なくとも還元剤を含む層を含む酸素検知剤組成物層と、還元剤を含む層を積層してなる酸素検知機能部を用いることができる。
【0037】
更に本発明において、上記したインキ組成物層からなる酸素検知機能部に代えて、酸素検知機能として少なくとも酸化還元色素を含む層と、層状珪酸塩を含む酸素検知剤組成物と還元剤を含む層と、少なくとも還元剤を含む層と、少なくとも酸化還元色素を含む層を積層してなる酸素検知機能部を用いることができる。
【0038】
更に本発明において、上記したインキ組成物層からなる酸素検知機能部に代えて、少なくとも酸化還元色素を含む層と、層状珪酸塩を含む酸素検知剤組成物と還元剤を含む層と、少なくとも還元剤を含む層と、少なくとも酸化還元色素を含む層を積層してなる酸素検知機能部を用いることができる。
【0039】
本発明において、酸化還元色素と還元剤を別々の層として積層することにより、酸素インジケーターの製造時において酸化還元色素、還元剤を含む溶液の印刷またはコーティング用溶液の経時色調変化を防止することができる。
【0040】
一般に還元剤や、一部の酸化還元色素は酸素の存在下に無色を呈するため、本発明においては、還元剤入りの溶液に有色の染料や顔料などを溶解あるいは分散させて用いることによって、印刷時の位置精度の修正や、インジケーター部分の有無を確認することができるようにすることが好ましい。
【0041】
還元剤を含む層と層状珪酸塩と酸化還元色素を含む層は直接互いに接触していることが必要である。また、基材への積層順序は任意である。基材上に還元剤を含む層を形成した後、スメクタイト族に族する層状珪酸塩と酸化還元色素を含む層を形成するか、或いはスメクタイト族に属する層状珪酸塩と酸化還元色素を含む層を形成した後還元剤を含む層を形成しても良い。さらに、必要に応じてこれらの層を複数設けても良く、また、単に酸化還元色素を含む層を含めても良い。例えば、スメクタイト族に属する層状珪酸塩と酸化還元色素を含む層/スメクタイト族に属する層状珪酸塩と酸化還元色素を含む層、あるいは還元剤を含む層/スメクタイト族に属する層状珪酸塩と酸化還元色素を含む層/還元剤を含む層、スメクタイト族に族する層状珪酸塩と酸化還元色素を含む層/還元剤を含む層/酸化還元色素を含む層という構成とすることができる。
【0042】
本発明の酸素インジケーターを、包装体を形成する外装材料を基材として用いて形成することができる。このようにして製造した酸素インジケーターを用いて、酸素インジケーター付き包装袋を作ることができる。
【0043】
次に実施例を挙げて本発明につき具体的に説明する。
【実施例1】
【0044】
合成スメクタイト(商品名:スメクトンSA、クニミネ工業(株)製、以下「スメクタイト」と略称する)の0.5g/l水分散液20mlに、メチレンブルー0.01g、D−(+)−グルコース1.0g及びセチルトリメチルアンモニウムブロミド0.36gが溶解している水溶液5mLを混合し、0.1NのNaOHを滴下してPH11.0に調整し、バインダー樹脂51g、グリセリン7.5g、合成シリカ0.6g、アシッドレッド0.8g、水87g、プロパノール42gを添加し、ペイントコンディショナーを用いて微細分散させることにより、酸素検知インキ組成物を作製した。このインキ組成物をシリカ蒸着ポリエステルフィルムにグラビア印刷法により直径1cmのパターンに塗布し、インキ塗布層を形成し、酸素インジケーター印刷物を得た。
【0045】
上記のようにして得た酸素インジケーター印刷物のインキ塗布部の周囲にウレタン樹脂よりなる接着剤を塗布した後、酸素インジケーター印刷物に低密度ポリエチレンを貼り合わせた。
【実施例2】
【0046】
実施例1と同様にして、但しインキ塗布部の上に格子状にウレタン樹脂よりなる接着剤を塗布し、インキ塗布部の周囲に塗布した接着剤とインキ塗布部の上に格子状に塗布した接着剤を介して酸素インジケーター印刷物に低密度ポリエチレンを塗布した。尚、インキ塗布部上の接着剤領域はインキ塗布部の面積の50%とした。
【0047】
(比較例1)
実施例1と同様にして酸素インジケーター印刷物を形成した。そして酸素インジケーターの全面にウレタン樹脂よりなる接着剤を塗布し、接着剤を介してシーラント層として低密度ポリエチレンを貼り合わせた。
【0048】
(実験1)
実施例1,2及び比較例1について、無酸素状態から大気下に放置したときの色調の変化、並びに無酸素状態から大気下に放置した場合の変色に要した時間及び大気下から包装袋内に無酸素状態で密封包装した場合の変色に要した時間を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【実施例3】
【0050】
合成スメクタイトの0.5g/l水分散液20mlに、メチレンブルー0.01g、D−(+)−グルコース1.0g及びセチルトリメチルアンモニウムブロミド0.36gが溶解している水溶液5mLを混合し、0.1NのNaOHを滴下してPH11.0に調整し、バインダー樹脂51g、グリセリン7.5g、合成シリカ0.6g、アシッドレッド0.8g、水87g、プロパノール42gを添加し、ペイントコンディショナーを用いて微細分散させることにより、酸素検知インキ組成物を作製した。このインキ組成物をシリカ蒸着ポリエステルフィルムにグラビア印刷法により直径1cmのパターンに塗布し、インキ塗布層を形成し、酸素インジケーター印刷物を得た。
【0051】
上記のようにして得た酸素インジケーター印刷物のインキ塗布部の周囲にウレタン樹脂よりなる接着剤を塗布した後、酸素インジケーター印刷物に低密度ポリエチレンを貼り合わせて酸素インジケーターを有する、包装材料を得た。
上記のようにして得た包装材料を用いて約10cm×10cmの大きさの袋に製袋し、袋内に、餡入り饅頭と大日本印刷(株)製鮮度保持剤Cを入れて袋の口部をシールして密封包装物を得た。
【実施例4】
【0052】
実施例3と同様にして、但しインキ塗布部の上に格子状にウレタン樹脂よりなる接着剤を塗布し、インキ塗布部の周囲に塗布した接着剤とインキ塗布部の上に格子状に塗布した接着剤を介して酸素インジケーター印刷物に低密度ポリエチレンを貼り合わせて、酸素インジケーターを有する包装材料を得た。尚、インキ塗布部上の接着剤領域はインキ塗布部の面積の50%とした。
上記のようにして得た包装材料を用いて約10cm×10cmの大きさの袋に製袋し、袋内に、餡入り饅頭と大日本印刷(株)製鮮度保持剤Cを入れて袋の口部をシールして密封包装物を得た。
【0053】
(比較例2)
実施例4で得た酸素インジケーターを有する包装材料を得た。そして前記包装材料の全面にウレタン樹脂よりなる接着剤を塗布し、接着剤を介してシーラント層として低密度ポリエチレンを貼り合わせた。
上記のようにして得た包装材料を用いて約10cm×10cmの大きさの袋に製袋し、袋内に、餡入り饅頭と大日本印刷(株)製鮮度保持剤Cを入れて袋の口部をシールして密封包装物を得た。
【0054】
(実験2)
実施例3、4及び比較例2の密封包装物を、それぞれ50個宛段ボールの外箱に入れて往復約1000kmの輸送試験を実施した。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
実施例1から明らかなように、インキ塗布部の上の領域に接着剤を塗布しないことにより、酸素検知速度が向上した。また実施例2のようにインキ塗布部の上に部分的に接着剤を設ける場合も酸素検知速度が向上した。また、無酸素状態から大気下に放置したとき鮮明な発色が見られた。
また、往復約100kmの輸送試験の結果、酸素インジケーターの剥がれは見られなかった。
【実施例5】
【0057】
実施例1と同様にして、但しインキ塗布部を層状珪酸塩と酸化還元色素を含む層と還元剤を含む二層で構成した。
層状珪酸塩と酸化還元色素を含む層は、下記の1液を用いて印刷により形成し、その上に還元剤を含む層を下記の2液を用いて印刷により形成した。
【0058】
1液:合成スメクタイトの0.5g/l水分散液20mlに、メチレンブルー0.01 g及びセチルトリメチルアンモニウムブロミド0.36gが溶解している水溶液 5mlを混合し、0.1NのNaOHを滴下してPH11.0に調整し、バイン ダー樹脂51g、グリセリン7.5g、合成シリカ0.6g、水87g、プロパ ノール42を添加してなるインキ組成物。
2液:D−(+)−グルコース1.0g、水87g、プロパノール42g、バインダー 樹脂51g、グリセリン7.5g、合成シリカ0.6g、アシッドレッド0.8 gを含むインキ組成物。
【0059】
上記のようにして酸素インジケーター印刷物を作製し低密度ポリエチレンをラミネートしたものを25℃の脱酸素の雰囲気下で4日間置いた後の酸素検知機能部の色調はピンク色であった。また、無酸素の雰囲気下の色を確認後25℃の大気雰囲気下において3日放置した後の色調は青色であった。この大気雰囲気下における色調は実施例1と場合と同様に鮮明であった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の酸素インジケーターは包装袋内に内容物と共に封入し脱酸素剤の能力や包装体のピンホールやシール不良などによりひき起こされる包装体内部への酸素の浸入を検知するために使用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の酸素インジケーターの断面図である。
【図2】本発明の酸素インジケーターの平面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 基材
2 酸素検知機能部
3 酸素検知機能部の周囲の基材領域
4 接着剤
5 シーラント材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に層状珪酸塩を含むインキ組成物層からなる酸素検知機能部を設け、前記酸素検知機能部の周囲の基材領域に接着剤を塗布し、この接着剤を介して前記基材上にシーラント層をラミネートしたことを特徴とする酸素インジケーター。
【請求項2】
インキ組成物層が層状珪酸塩のほかに少なくとも酸化還元色素、還元剤、バインダー樹脂及び溶媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の酸素インジケーター。
【請求項3】
基材上に、少なくとも酸化還元色素を含む層と、層状珪酸塩を含む酸素検知剤組成物と少なくとも還元剤を含む層を含む酸素検知剤組成物層と、還元剤を含む層を積層してなる酸素検知機能部を設け、前記酸素検知機能部の周囲の基材領域に接着剤を塗布し、この接着剤を介して前記基材上にシーラント層をラミネートしたことを特徴とする酸素インジケーター。
【請求項4】
基材上に、少なくとも酸化還元色素を含む層と、層状珪酸塩を含む酸素検知剤組成物と還元剤を含む層と、少なくとも還元剤を含む層と、少なくとも酸化還元色素を含む層を順次積層してなる酸素検知機能部を設け、前記酸素検知機能部の周囲の基材領域に接着剤を塗布し、この接着剤を介して前記基材上にシーラント層をラミネートしたことを特徴とする酸素インジケーター。
【請求項5】
基材上に、少なくとも還元剤を含む層と、少なくとも酸化還元色素を含む層と、層状珪酸塩を含む酸素検知剤組成物と還元剤を含む層を含む層を順次積層してなる酸素検知機能部を設け、前記酸素検知機能部の周囲の基材領域に接着剤を塗布し、この接着剤を介して前記基材上にシーラント層をラミネートしたことを特徴とする酸素インジケーター。
【請求項6】
還元剤を含む層に酸化還元により変色しない色素が含まれていることを特徴とする請求項2乃至5に記載の酸素インジケーター。
【請求項7】
更に前記酸素検知部の一部を被覆して接着剤を設け、前記酸素検知部の周囲の基材領域に塗布した接着剤及び前記インキ組成物層の一部を被覆して塗布した接着剤を介して前記酸素検知機能部を設けた基材上にシーラント層をラミネートしたことを特徴とする請求項1乃至6に記載の酸素インジケーター。
【請求項8】
層状珪酸塩が、スメクタイト族から選ばれた層状珪酸塩である請求項1乃至7の何れか一項に記載の酸素インジケーター。
【請求項9】
包装体を形成する外装材料を基材として用いたことを特徴とする請求項1乃至8に記載の酸素インジケーター。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−258523(P2006−258523A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74394(P2005−74394)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】