説明

酸素供給装置および河川水質改善システム

【課題】 少ないエネルギー消費で河川の水質を改善できるようにする。
【解決手段】
酸素供給装置5が、感潮河川の上流側から下流側へと間隔をおいて複数配置される。各酸素供給装置5のダクト10が河幅方向に延びるようにして河底1に敷設され、河川の一方の岸2側にダクト10の空気導入端10aが配置され、他方の岸側に空気排出端10bが配置される。ダクト10の内部空間が送風路として提供され、ダクト10の空気導入端10aまたは空気排出端10bに送風ファン25(気体移送手段)が接続され、大気を空気導入端10aから導入し送風路に通し空気排出端10bから排出する。ダクト10は送風路の流通断面積を維持するのに十分な剛性を有し、少なくとも上部が水を透過せず気体の透過が可能な気体透過部として提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に酸素を供給する装置およびこの装置を用いて河川の水質を改善するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
都市河川は水質が悪く、河底に溜まったヘドロが水質をさらに悪化させる。ヘドロが分解する時に溶存酸素を消費するため、水中が還元状態になり、硫化物が還元されて硫化水素等が生成されるからである。これら生成物がガスとなって空中に散じられ、悪臭の原因となる。
【0003】
そこで、河川水の溶存酸素濃度を高めるために種々の方法が講じられている。例えば、河底に圧縮空気を送り込み、気泡が上昇する過程で気泡中の酸素を水に溶解させる方法がある。しかし、この方法ではエネルギー効率が悪かった。また、水質の悪い河底の水を撹拌して河面に導いてしまい、悪臭の原因となる。
また、河底の水を陸上に汲み上げて大気に触れさせ、酸素を溶解させた後で河底へ戻す方法もあるが、この方法もエネルギー効率が悪かった。
【0004】
特許文献1では、気体透過膜からなるチューブを水中に配置し、このチューブ内に新鮮な空気を送る装置を提案している。この気体透過膜は水を透過せず気体だけを透過する。チューブ内に送られた新鮮な空気中の酸素は気体透過膜を透過し、チューブの外側、すなわち酸素濃度の低い水に自然拡散によって供給される。これにより少ないエネルギー消費で水中の溶存酸素濃度を上昇させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−43882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の方法ではチューブが水中を浮遊しており、最も酸素濃度が低く酸素の供給を必要としている河底に、酸素を集中して供給することができなかった。また、浮遊状態では水流の影響を受けやすく、装置を安定した設置状態に維持するのが困難であった。
特許文献1の装置を河底においても、酸素供給機能を発揮することができない。水圧によってチューブが潰れてしまうからである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、水中に酸素を供給する装置であって、内部空間が送風路として提供され、一端が空気導入端、他端が空気排出端として提供されるダクトと、上記ダクトの上記空気導入端または上記空気排出端に接続され、大気を上記空気導入端から導入し上記送風路に通し上記空気排出端から排出する気体移送手段と、を備え、上記ダクトが、上記送風路の流通断面積を維持するのに十分な剛性を有し、少なくとも上部が水を透過せず気体の透過が可能な気体透過部として提供されることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、ダクトが剛性を有していて送風路の流通断面積を確保できるので、ダクトを水圧が高い河底等に敷設しても新鮮な空気を送風路に通すことができる。
また、送風路における大気中の酸素は気体透過部を介して水中に自然拡散するだけであり、気体移送手段は送風路に新鮮な空気を供給すれば足り、圧縮空気を水圧に抗して水中に供給する必要がないので、エネルギー効率が高く、気体移送手段も小形で済む。
【0009】
好ましくは、上記ダクトは、上方が解放されるとともにダクト長手方向に延びる溝を有するダクト本体と、ダクト長手方向に延びるとともに上記溝を覆うようにして配置され両側縁が上記ダクト本体の両側縁部に固定された多数の孔を有するサポートと、ダクト長手方向に延びるとともに上記メッシュの上に被さるようにして配置され両側縁がダクト本体の両側縁部に固定された気体透過膜と、を備え、上記気体透過部が、上記サポートと上記気体透過膜を含む。
上記構成によれば、気体透過膜を用いることにより、送風路から水中への酸素供給を安定して良好に行うことができる。この気体透過膜は、多数の孔を有する剛性のサポートにより水圧に抗して支持することができる。
【0010】
好ましくは、上記サポートがメッシュにより構成されている。
この構成によれば、サポート全域での空気の流通断面積を最大限に確保することができる。
【0011】
好ましくは、ダクト本体の断面形状が扁平をなし、上記サポートの断面形状が上に凸の曲線をなしている。
この構成によれば、ダクトを河底に敷設しても水流の抵抗が少なく、水圧に対する強度も高めることができる。
【0012】
好ましくは、さらに気体透過部は多数の孔を有するカバーを備え、このカバーは、ダクト長手方向に延びるとともに上記気体透過膜の上に被さるようにようにして配置され両側縁が上記ダクト本体の両側縁部に固定されている。
この構成によれば、流れてくるゴミ等から気体透過膜を守り、その破損を防止することができる。
【0013】
好ましくは、上記ダクト本体の溝の底面は、ダクト長手方向に勾配を有し、最も低い箇所に、水抜きポンプの吸い込み口が接続されている。
この構成によれば、気体透過膜から送風路に水が漏れてきた場合でも、この水を溝の勾配により集め、水抜きポンプにより送風路外へ排出することができ、空気の通り道を確保でき、使用寿命を延ばすことができる。
【0014】
好ましくは、上記ダクト本体の溝の底面は、ダクト幅方向にも勾配を有する。
これによれば、送風路に漏れてきた水をより一層効率良く集めることができる。
【0015】
本発明の他の態様では、上記ダクトは、全周にわたって多数の孔を有する閉断面形状のダクト本体と、このダクト本体の外周を覆う気体透過膜からなるチューブと、を備えている。上記ダクト本体は素焼きのセラミックパイプからなる。これによれば、構造を簡単にすることができる。
本発明のさらに他の態様では、上記ダクトがダクト本体だけで構成され、このダクト本体は、水が透過しないほどに微細な孔径を有する素焼きの多孔質セラミックパイプからなる。これによれば、より一層構造を簡単にすることができる。
【0016】
好ましくは、上記ダクトの比重が水より大であるとともに、ダクトの重力が水中においてダクトに付与される浮力より大きい。
これによれば、ダクトを河底等に安定して敷設することができる。
【0017】
好ましくは、さらに、上記ダクトを河底に固定するためのアンカー手段を備えている。
これによれば、ダクトを河底に安定して敷設することができる。
【0018】
本発明のさらに他の態様は河川水質改善システムにおいて、上記酸素供給装置が河川の上流側から下流側へと間隔をおいて複数配置され、各酸素供給装置の上記ダクトが河幅方向に延びるようにして河底に敷設され、河川の一方の岸側に上記ダクトの上記空気導入端が配置され、他方の岸側に空気排出端が配置されることを特徴とする。
この構成によれば、貧酸素状態にある河底に集中して酸素を供給し、しかも河幅方向に延びるダクトからの酸素を満遍なく供給するので、河底の水質を効率よく改善することができる。
【0019】
好ましくは、上記酸素供給装置が配置される河川が感潮河川である。
感潮河川では、潮位変化による大きな流れのため河底において海水の乱流が生じているので、溶存酸素を乱流拡散することができ、局所的に酸素濃度が高くなってヘドロの分解を促進し徒に酸素を消耗するようなことがなく、比較的少ない酸素供給量で水質の悪化を防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高いエネルギー効率で酸素を供給することにより、水質特に河底の水質を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係わる河川水質改善システムの概略断面図である。
【図2】同システムで用いられる第1実施形態の酸素供給装置を、図1中II-II方向から見た正面図である。
【図3】図2中III-III線に沿う上記酸素供給装置のダクトの断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係わる酸素供給装置のダクトの断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係わる酸素供給装置のダクトの断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係わる酸素供給装置のダクトの断面図である。
【図7】同第4実施形態の酸素供給装置の図2相当正面図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係わる酸素供給装置のダクトの断面図である。
【図9】本発明の第6実施形態に係わる酸素供給装置のダクトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の河川水質改善システムについて図面を参照しながら説明する。図1〜図3に示す例では、本システムが都市の感潮河川に適用されている。なお、感潮河川とは潮の満ち干が影響する河川をいう。図2において、感潮河川の河底を符号1で示し、両岸を符号2,3で示す。図1では河底1の勾配を誇張して示している。また、本例図2では、両岸2,3がコンクリートで構築されている。
【0023】
図1に示すように、感潮河川の上流から下流に向かって等間隔をおいて、多数(複数)の酸素供給装置5が配置されている。
図2に示すように、この酸素供給装置5はダクト10を備えている。このダクト10は河底1に敷設され、河幅方向に直線的に延びており、その一端10a(空気導入端)が一方の岸2の近傍に達し、他端10b(空気排出端)が他方の岸3の近傍に達している。
【0024】
さらに酸素供給装置5は、ダクト10の一端10aにアタッチメント21を介して接続された垂直の空気導入パイプ22と、ダクト10の他端10bにアタッチメント23を介して接続された垂直の空気排出パイプ24と、上記パイプ22,24のいずれか一方(本実施形態では空気導入パイプ22)の上端に接続された送風ファン25(送風機、気体移送手段)と、この送風ファン25の電力源となる太陽電池26とを備えている。本実施形態では、送風ファン25は、アタッチメント21とパイプ22を介してダクト10の一端10aに接続されている。
なお、岸2の上端には台20が河川に向かって張り出すように設けられており、この台20に上記送風ファン25および太陽電池26が設置されている。都市河川でよく見かけるように両側が道路になっている場合に、このような配置は交通の妨げにならないという意味で有効である。
【0025】
図3に示すように、上記ダクト10は、それぞれダクト10の長手方向(図3の紙面と直交する方向)に延びるダクト本体11とメッシュ12(サポート)と気体透過膜13とを備えている。
上記ダクト本体11は、水より比重が大きくその断面形状を維持するのに十分な剛性を有する材料、例えば塩化ビニル樹脂からなる。
【0026】
本実施形態では、上記ダクト本体11は、長手方向に沿って同一の扁平な断面形状を有しており、河底1に載るベース部11aとその両側縁部から上方に突出した一対の凸部11bとを有し、これらベース部11aと一対の凸部11bにより浅い溝11xが形成されている。この溝11xはダクト10の長手方向に延びている。
【0027】
上記メッシュ12は、断面形状を維持できるのに十分な剛性を有する材料、例えばステンレス(金属)からなり、例えば、2mm角の目(多数の孔)を有している。
上記メッシュ12の幅方向両側縁が上記ダクト本体11の一対の凸部11bの上面に固定されている。
上記メッシュ12の断面形状は凸円弧(凸曲線)をなしており、この凸円弧の曲率半径はダクト本体11の溝11xの幅より遥かに大きく、その高さは溝12xの深さ以下とするのが好ましい。
【0028】
上記気体透過膜13はPTFE等の疎水性の膜(アドバンテック社またはドナルドソン社製)からなり、液体を透過せず、気体だけを透過する。
上記気体透過膜13は、メッシュ12の上に被さり、その幅方向の両側縁が接着剤等でダクト本体11の一対の凸部11bの上面に固定されている。図3では、理解を容易にするために気体透過膜13とメッシュ12を少し離して図示しているが、実際には気体透過膜13はメッシュ12に接している。
【0029】
上記気体透過膜13に加わる水圧を上記メッシュ12で受け止めるので、気体透過膜13は柔軟であるが、水圧によって潰れることなくメッシュ12に沿った断面凸円弧形状を維持されている。これらメッシュ12および気体透過膜13により、特許請求の範囲の気体透過部10cが構成されている。
【0030】
上記ダクト本体11と気体透過部10cにより、河川の水から隔離された送風路15が形成される。この送風路15の流通断面積は、上記ダクト本体11およびメッシュ12の剛性により、一定に維持される。
【0031】
ダクト10が扁平な形状をなしているので、水流の大きな抵抗とならず、安定した敷設状態を維持できる。上記メッシュ12が凸円弧形状をなしているので、送風路15の流通断面積を溝11xの断面積より増大させることができ、水圧に対する強度を高めることができる。
【0032】
ダクト10の重力は浮力より大きく、河底1に沈下させることができるので、ダクト10の河底1への敷設状態を安定して維持することができる。
【0033】
上記構成において、各酸素供給装置5において、送風ファン25が駆動されると、大気中の新鮮な空気が、空気導入パイプ22からダクト10の送風路15に入り、この送風路15を通って空気排出パイプ24から大気へと排出される。
【0034】
送風路15内の新鮮な大気中の酸素は、気体透過膜13を通って酸素濃度が低い水中へと自然拡散し、水中の還元状態を解消ないしは抑制する。送風ファン25は単に新鮮な大気を送風路15に送るだけでよいので、消費電力は少なくて済む。
【0035】
都市河川では河底1にヘドロが溜まっており、このヘドロが分解する際に水中の溶存酸素を消費する。ダクト10が河底1に敷設されているので、最も酸素を消費する河底1近傍において酸素を集中的に供給することができ、しかも、ダクト10が河幅方向に延びて満遍なく酸素を供給するので、最も効果的に水中の還元状態を解消することができる。その結果、硫化物の還元による硫化水素等の生成を抑制でき、悪臭が河面から発せられるのを回避することができる。
【0036】
酸素供給装置5は、感潮河川において最も効果的に機能する。以下、その理由を詳述する。感潮河川は上部に淡水が流れ、下部に海水が流れる。海水は天候によらず比較的早い流速が期待される。そのために、河川のレイノルズ数(流速×水深×動摩擦係数)は100,000を超え、乱流となる。よって溶存酸素の拡散は乱流拡散となり、その拡散係数は静水の酸素拡散係数の10〜10倍にもなる。そのために、溶存した酸素は海水領域(上部の淡水領域より下部の領域)全体に拡散し、河底1付近の酸素濃度分布は均一化される。そのために、局所的に酸素濃度が高くなってヘドロの分解速度を高め溶存酸素の消費を増大させることがなく、比較的少ない酸素供給量で水質の悪化を防止できる。
【0037】
なお、感潮河川以外の深い河川に酸素供給装置5を設置する場合には、感潮河川に設置する場合より多くの酸素供給装置5を敷設する必要がある。レイノルズ数が低く層流に近いため、本装置5で溶存した酸素は河底に留まる。しかも流速が遅いことも相まって、本装置5付近に留まる。そのため、河底領域において溶存酸素の濃度差が生じ、本装置5近傍の高濃度領域において溶存酸素がヘドロの分解を速め、遠方では貧酸素状態となり水質が悪化する。つまり、本装置5の有効範囲が狭いために、より多く敷設しなければならないのである。
【0038】
上記第1実施形態をより具体的に説明する。感潮河川の川幅W(図2参照)を25m、感潮部の長さL(図1参照)を5Km、河口部の平均水深D1を5m、感潮部の始まり(河口より5Km上流)での平均水深D2を1.5mとし、3000m/dayの水が流れているものとする。
【0039】
酸素供給装置5は100m間隔に敷設する。酸素供給装置5のダクト10の溝11xの幅(水の流れ方向の寸法)を200mmとし、深さを10mmとする。また、メッシュ12の高さを10mm以下とする。送風ファン25は直径300mmの小型のものを用い、送風量は10m/hとする。
【0040】
概略的なシミュレーションによると、河底1にヘドロが蓄積されていて溶存酸素濃度1mg/L当たり3.5g/day m2の割合で酸素を消費すると仮定した場合でも、上記条件で本装置5を感潮河川に設置すれば、満潮干潮にかかわりなく河全域で溶存酸素を20mg/L以上にすることができる。
【0041】
本酸素供給装置5では太陽電池26を用いるので、自立運転が可能である。送風ファン25の消費電力は少なくて済むので、1m程度の太陽電池26で運転可能である。夏場の晴れた日には水質の悪化が生じ易いが、このような運転必要時に太陽電池26から確実に電力を供給することができる。
【0042】
次に、本発明の他の実施形態について図を参照しながら説明する。各実施形態において先行して説明した実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0043】
図4に示す第2実施形態では、ダクト10のベース本体11の少なくとも一部が河底1に埋まった状態で、アンカー手段30によって河底1に固定されている。このアンカー手段30は、例えば河底1がコンクリートの場合には、河底1に立設されたボルト31とナットと32からなる。酸素供給装置5のダクト本体11の両側縁部の凸部11bには一対の垂直な貫通穴11yが形成されており、この貫通穴11yにボルト31が貫通され、このボルト31の上端部に螺合されたナット32を締め付けることにより、ダクト本体11が河底1に固定される。河底1がコンクリートでない場合、アンカー手段30は例えばネジにより構成し、このネジを貫通穴11yに貫通して河底1にねじ込む。ネジ材質はセラミックなどの腐食しないものがより好ましい。
【0044】
図5に示す第3実施形態では、ダクト10の長手方向に延び気体透過膜13の上側を覆うようにしてメッシュ16(多数の孔を有するカバー)が配置されている。このメッシュ16はメッシュ12と同様の構成を有しており、その両側縁がダクト本体11の一対の凸部11bの上面に固定されている。このメッシュ16は気体透過膜13から僅かに離れており、水中のゴミ等から気体透過膜13を守り、気体透過膜13が破損するのを防止する。この実施形態では、メッシュ12,16と気体透過膜13とで、気体透過部10cが構成されている。
【0045】
図6、図7に示す第4実施形態では、気体通過膜13から水が浸透してダクト本体11の溝11xに溜まった場合に、この水を抜く手段を備えている。詳述すると、溝11xは、図6に示すように幅方向両側縁から中央に向かって深くなるような勾配を有している。これにより水Mは、幅方向中央に集まるようになっている。また、溝11xは、図7に示すように、ダクト本体11の長手方向に勾配を有している。本実施形態では岸3から岸2に向かって徐々に低くなる勾配である。これにより、溝11xの幅方向中央に集まった水Mは岸2に向かって流れ、ここに集まる。
台20には水抜きポンプ40が設置されている。この水抜きポンプ40の吸い込み口はパイプ41を介してアタッチメント21に接続されている。パイプ41の下端開口(水抜きポンプ40の吸い込み口に連なる口)は、溝11xにおいて岸2側の最も低い箇所の近傍に配置されている。水抜きポンプ40は、上記のようにして集められた水Mを、パイプ41を介して吸い込んで、通風路15外、すなわち河川へ放出することができる。
【0046】
図8に示す第5実施形態では、ダクト50が、素焼きのセラミックパイプからなるダクト本体51と、その外周を覆う気体透過膜のチューブ52とを備えている。このセラミックパイプ51は平均孔径が1〜2mmと粗い孔を多数有している。ダクト本体51の内部空間が通風路55として提供される。
【0047】
上記送風路55に供給された空気中の酸素は、ダクト本体51の多数の孔を通り、チューブ52の気体透過膜を通って水中に拡散される。
本実施形態ではダクト50の全周が気体透過部となるが、下部が河底1に埋め込まれるため、水中露出部が実質的な気体透過部となる。
【0048】
より具体的には、セラミックパイプの直径は100mm、肉厚5mmであり、水中露出部分の周長が200mmである。
なお、上記ダクト本体51には、セラミックパイプの代わりにパンチングメタルで作ったパイプを用いてもよい。
【0049】
図9に示す第6実施形態では、ダクト60がダクト本体61だけで構成されている。このダクト本体61は、素焼きの多孔質セラミックパイプからなり、例えば第5実施形態のダクト本体51と同寸法であるが、平均孔径はダクト本体51より遥かに微細であり、10ミクロン以下、例えば5ミクロンであり、気体を透過するが水を透過しない。
ダクト本体61の内部空間は通風路65となり、この通風路65内の空気中の酸素は、ダクト本体61の微細な孔を通って水中に拡散する。
【0050】
本発明は、上記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の形態を採用可能である。例えば、本発明の酸素供給装置は、沼等に設置してもよい。メッシュ12は平面形状であってもよい。
気体移送手段として、ダイアフラムポンプを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、河川、特に感潮河川の水質改善に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 ダクト
10a 空気導入端
10b 空気排出端
10c 気体透過部
11 ダクト本体
11x 溝
12 メッシュ(サポート)
13 気体透過膜
15 送風路
16 メッシュ(カバー)
25 送風ファン(気体移送手段)
40 水抜きポンプ
50 ダクト
51 ダクト本体
52 チューブ
55 送風路
60 ダクト
61 ダクト本体
65 送風路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に酸素を供給する装置であって、
内部空間が送風路として提供され、一端が空気導入端、他端が空気排出端として提供されるダクトと、
上記ダクトの上記空気導入端または上記空気排出端に接続され、大気を上記空気導入端から導入し上記送風路に通し上記空気排出端から排出する気体移送手段と、
を備え、
上記ダクトが、上記送風路の流通断面積を維持するのに十分な剛性を有し、少なくとも上部が水を透過せず気体の透過が可能な気体透過部として提供されることを特徴とする酸素供給装置。
【請求項2】
上記ダクトは、
上方が解放されるとともにダクト長手方向に延びる溝を有するダクト本体と、
ダクト長手方向に延びるとともに上記溝を覆うようにして配置され両側縁が上記ダクト本体の両側縁部に固定された多数の孔を有するサポートと、
ダクト長手方向に延びるとともに上記メッシュの上に被さるようにして配置され両側縁がダクト本体の両側縁部に固定された気体透過膜と、
を備え、
上記気体透過部が、上記サポートと上記気体透過膜を含むことを特徴とする請求項1に記載の酸素供給装置。
【請求項3】
上記サポートがメッシュにより構成されていることを特徴とする請求項2に記載の酸素供給装置。
【請求項4】
上記ダクト本体の断面形状が扁平をなし、上記サポートの断面形状が上に凸の曲線をなしていることを特徴とする請求項2または3に記載の酸素供給装置。
【請求項5】
さらに気体透過部は多数の孔を有するカバーを備え、このカバーは、ダクト長手方向に延びるとともに上記気体透過膜の上に被さるようにようにして配置され両側縁が上記ダクト本体の両側縁部に固定されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の酸素供給装置。
【請求項6】
上記ダクト本体の溝の底面は、ダクト長手方向に勾配を有し、最も低い箇所に、水抜きポンプの吸い込み口が接続されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の酸素供給装置。
【請求項7】
上記ダクト本体の溝の底面は、ダクト幅方向にも勾配を有することを特徴とする請求項6に記載の酸素供給装置。
【請求項8】
上記ダクトは、全周にわたって多数の孔を有する閉断面形状のダクト本体と、このダクト本体の外周を覆う気体透過膜からなるチューブと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の酸素供給装置。
【請求項9】
上記ダクト本体が素焼きのセラミックパイプからなることを特徴とする請求項8に記載の酸素供給装置。
【請求項10】
上記ダクトがダクト本体だけで構成され、このダクト本体は、水が透過しないほどに微細な孔径を有する素焼きの多孔質セラミックパイプからなることを特徴とする請求項1に記載の酸素供給装置。
【請求項11】
上記ダクトの比重が水より大であるとともに、ダクトの重力が水中においてダクトに付与される浮力より大きいことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の酸素供給装置。
【請求項12】
さらに、上記ダクトを河底に固定するためのアンカー手段を備えたことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の酸素供給装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の酸素供給装置が河川の上流側から下流側へと間隔をおいて複数配置され、各酸素供給装置の上記ダクトが河幅方向に延びるようにして河底に敷設され、河川の一方の岸側に上記ダクトの上記空気導入端が配置され、他方の岸側に空気排出端が配置されることを特徴とする河川水質改善システム。
【請求項14】
上記酸素供給装置が配置される河川が感潮河川であることを特徴とする請求項13に記載の河川水質改善システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−200663(P2012−200663A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67015(P2011−67015)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】