説明

酸素吸収性フィルムの包装体

【課題】安定的に流通し、かつ保管することができる酸素吸収性フィルムの包装体を提供する。
【解決手段】酸素吸収性フィルムの包装体10は中空管2と、中空管2外周に巻付けられた酸素吸収性フィルム1とを含むフィルム巻取体1Aと、フィルム巻取体1Aを収納して密封する外装袋5とを備えている。中空管2内の空間に、空間内を埋める埋込体3が設けられている。酸素吸収性フィルム1が酸素を吸収して外装袋5内が減圧された場合でも、外装袋5は埋込体3によって中空管2内への移動が規制される。このため外装袋5が、中空管2の端部2aにより破断することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温で酸素を吸収する酸素吸収性フィルムからなるフィルム巻取体と、このフィルム巻取体を収納し密封する外装袋とを有する酸素吸収性フィルムの包装体に係り、とりわけ安定的に流通し、かつ保管することができる酸素吸収性フィルムの包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
袋体に収納する内容物の酸化、変質、カビの発生等を防止するため、酸素バリア性を有する包材で製造した袋体に、内容物と共に脱酸素剤を封入し脱酸素包装する方法が広く知られている。脱酸素剤は、還元鉄や有機物の還元剤等を主成分とし、それらが酸化することで包材内の酸素を吸収する働きを利用したものである。また、最近では、フィルム自体に脱酸素能を付与した酸素吸収性フィルムが開発されている。このような酸素吸収性フィルムは酸素を吸収する酸素吸収性樹脂層と、この酸素吸収性樹脂層に積層された基材層およびヒートシール層とを有するものが知られている(特許文献1)。
【0003】
酸素吸収性フィルムの酸素吸収性樹脂層は、自らが酸素と反応することによって酸素を消費し、そのことが結果的に酸素を吸収することに繋がっているものであり、可逆反応ではないため、一旦酸素と反応した成分は、その酸素吸収能力を失ってしまう。しかし、酸素吸収性樹脂層は製造直後から酸素を吸収し始めるので、一般的には製造、加工、流通の段階における酸素吸収量をできるだけ少なくするために、酸素バリア性を有する外装袋で包装し、場合によっては脱酸素剤も封入して保管している。
【0004】
酸素吸収性フィルムは、紙管等の中空管に巻き取られてフィルム巻取体を構成し、このフィルム巻取体を酸素バリア性をもつ外装袋内に収納することにより酸素吸収性フィルムの包装体が保たれる。このような酸素吸収性フィルムの包装体は、重量が重いので、保管中や輸送中に何かとぶつかったり、擦れたりして前記酸素バリア性を有する外装袋にピンホールが発生し、気付かぬうちに酸素吸収性フィルムの酸素吸収性樹脂層が大量に酸素を吸収しまうことが有り得る。
このような問題を解決する手段として、例えば、積層フィルムからなり、易酸化物質含有積層フィルム巻取体を包装するための外装袋(特許文献2)が提案されている。フィルムを巻取る場合、枷巻き等特殊な場合を除き、加工の際にシャフトを挿入する必要があり、紙管、プラスチック管、金属管等の中空管を巻芯として用いている。この際、巻芯内の空気中の酸素が酸素吸収性樹脂層または脱酸素剤に吸収されると、外装袋内が高度の減圧状態となって外装袋が巻取体にぴったり貼りついたり、巻芯の両端では外装袋が巻き芯の中空側に強烈に引っ張られて外装袋が伸びた状況になってしまうことがある。この場合は外装袋が伸びてしまい、外装袋の酸素バリア性が低下する恐れがある。特にバリア層の物理的強度が低い蒸着フィルムを外装袋の酸素バリア層として用いた場合は、確実に蒸着膜にクラックが入り、外装袋の酸素バリア性が顕著に低下する。更に、巻芯の端部が巻いた酸素吸収性フィルムの側面より突出していると、巻芯の角によって容易に外装袋の包材が切れてしまう。他方、巻芯の端部が巻いた酸素吸収性フィルムの端面より引っ込んでいると、外装袋が変形するにつれて巻芯近傍の酸素吸収性フィルムの部分が巻芯側に折れ曲がってしまい使い物にならなくなってしまう。通常、巻芯の長さを巻き取る酸素吸収性フィルムの幅より少し長めにして、巻芯の両端が巻いた酸素吸収性フィルムの外に出るようにし、このことにより巻芯近傍の酸素吸収性フィルムが巻芯側に折れ曲がるのを防止している。
【0005】
また、フィルム巻取体の端面に円盤状シートを設置することで、フィルム巻取体の端面と酸素吸収性フィルム表面との境界(端面エッジ部分)に外装体内面が直接接触しないようにした易酸化物質含有フィルム巻取体の脱酸素包装方法(特許文献3)も提案されてる。この方法では外装袋が巻芯中空部に入り込むことができないため、外装袋内の減圧度は非常に高くなってしまう。このため、巻き取った酸素吸収性フィルムの角が外装袋によって潰されたり、フィルム巻取体を外装袋が締め付ける力が非常に強くなるため、巻芯がつぶれ易くなったり、外装袋が強く折り曲げられることによってピンホールが発生し易くなったりしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3864709号公報
【特許文献2】特開2009−234623号公報
【特許文献3】特開2009−234624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、酸素吸収性フィルムが酸素を吸収し、外装袋内が減圧された場合であっても、流通過程においてあるいは保管中に酸素バリア性を有する外装袋が巻芯によって破損したりすることがない酸素吸収性フィルムの包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、中空管からなる巻芯と、巻芯外周に巻付けられた酸素吸収性フィルムとを含むフィルム巻取体と、フィルム巻取体を収納し密封するとともに酸素バリア性を有する外装袋と、巻芯内の空間に配置され、当該空間を埋める埋込体と、を備え、外装袋内に存在する、酸素吸収性フィルムが吸収可能な酸素の量を減少させ、外装袋内が減圧されにくくなることを特徴とする酸素吸収性フィルムの包装体である。
本発明は、外装袋内に脱酸素剤が配置されていることを特徴とする酸素吸収性フィルムの包装体である。
本発明は、埋込体はガスバリア性の袋体と、袋体内に充てんされた空気とからなることを特徴とする酸素吸収性フィルムの包装体である。
本発明は、袋体はアルミニウム箔を含む積層体からなることを特徴とする酸素吸収性フィルムの包装体である。
本発明は、埋込体は非通気性の袋体と、袋体内に充てんされた不活性ガスとからなることを特徴とする酸素吸収性フィルムの包装体である。
本発明は、不活性ガスは窒素ガス、二酸化炭素ガス、またはこれらの混合気体からなることを特徴とする酸素吸収性フィルムの包装体である。
本発明は、外装袋はアルミニウム箔を含む積層体からなることを特徴とする酸素吸収性フィルムの包装体である。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、巻芯内の空間に空間内を埋める埋込体を配置したので、外装袋内に存在する、酸素吸収性フィルムが吸収可能な酸素の量を減少させ、外装袋内が減圧されにくくなる。このため外装袋内の吸収可能な酸素が全て吸収されても、外装袋が巻芯内へ移動することはない。このため、外装袋が巻芯の端部によって破断することはほとんどない。
【0010】
また、埋込体がガスバリア性の袋体と、袋体内に充てんされた大気とからなり、ガスバリア性を有する袋体が、アルミニウム箔を積層した包装材料からなるので、袋体のガス透過度がほぼゼロになる。このため袋体内に酸素を含む大気が充てんされても、袋体内の酸素は殆ど吸収されることがなく、長期に亘って外装袋内の体積が減少しにくくなって、酸素吸収性フィルムを巻き付けたフィルム巻取体を、長期に亘って保管することができる。
【0011】
また、埋込体が非通気性の袋体と、袋体内に充てんされた不活性ガスとからなる場合、袋体がガスバリア性を有するか否かを問わず、袋体内の不活性ガスによって外装袋内の体積が減少しにくくなる。
【0012】
また、前記不活性ガスが、窒素ガス、二酸化炭素、またはこれらの混合気体であることにより、埋込体を低コストで得ることができる。
【0013】
また、前記の外装袋をアルミニウム箔を含む積層体から構成することによって、外装袋内への外部からのガスの侵入を防ぐことができる。このため、外装袋内の酸素が吸収し尽くされた後も、長期に亘って酸素吸収性フィルムが酸素を吸収し続けることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は酸素吸収性フィルムを巻芯に巻付けてなるフィルム巻取体を示す概略斜視図。
【図2】図2は酸素吸収性フィルムを巻芯に巻付けてなるフィルム巻取体を示す断面図。
【図3】図3はフィルム巻取体を外装袋内に収納して密封してなる本発明による酸素吸収性フィルムの包装体を示す断面図。
【図4】図4はフィルム巻取体を外装袋内に収納して密封してなる比較例としての酸素吸収性フィルムの包装体を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図3は本発明による酸素吸収性フィルムの包装体の一実施の形態を示す図である。
図1乃至図3に示すように、酸素吸収性フィルムの包装体10は、巻芯(中空管)2と、巻芯2の外周に巻付けられた酸素吸収性フィルム1とを含むフィルム巻取体1Aと、フィルム巻取体1Aを収納し密封するとともに酸素バリア性を有する外装袋5と、巻芯2内の空間に配置され、この空間を埋める埋込体3とを備えている。
このうち、酸素吸収性フィルム1は、酸素を吸収する酸素吸収性樹脂層と、この酸素吸収性樹脂層に積層された基材層およびヒートシール層とを有しているが、酸素吸収性樹脂層のみから構成してもよい。
また埋込体3は巻芯(中空管)2内に埋込まれ、外装袋5内に存在する、酸素吸収性フィルム1や脱酸素材6が吸収可能な酸素の量を減少させる機能を有している。
ところで、フィルム巻取体1Aは、シャフト、コーン等の回転軸(図示せず)が挿入された中空管2に酸素吸収性フィルム1の端部を貼り付けて回転させることにより形成される。中空管2の材質としては、紙、金属、プラスチック等が用いられ、フィルム巻取体1Aの重量、フィルム巻取体1Aに要求されるクリーン度等によりその材質が使い分けられる。
中空管2に回転軸を挿入するため、内径は予め定められており、酸素吸収性フィルム1の巻き取りに用いられる中空管2の内径は、通常76mm(3インチ)〜150mm(6インチ)となっており、場合によっては254mm(10インチ)、またはそれ以上となっている。特に、厚みが大きい酸素吸収性フィルム1や、巻きぐせが付くと困る酸素吸収性フィルム1には大きい内径の中空管2を用いる。
中空管2の材質を変更せず、厚みを増やして強度を向上させる場合、内径は固定したままで肉厚を増加させる。例えば紙製中空管2としては、通常内径76mm、肉厚6mm、外径88mmの紙管が使用される。巻き長さを長くしたり、通常より固く巻いたりするときや、海外へ輸送するため紙管潰れが懸念されるときには、肉厚8mm、外径92mmの紙製中空管2、肉厚10mm、外径96mmの紙製中空管2、または肉厚12mm、外径100mmの紙製中空管2が用いられる。
紙製中空管2は、再生紙や未晒紙をスパイラル巻きして製造されるが、表面平滑性を向上させるため、研磨したり、ニスを塗ったりすることもある。また、紙製中空管2として切断面から紙粉が飛散しないように樹脂を含浸させたものもある。
プラスチック製中空管2としては、排水管として用いられている塩ビ製のものがコスト的に優れているため最も多く用いられている。しかしながら、塩素含有樹脂を嫌う用途では、ポリエチレン、ポリスチレン、ベークライト、FRPあるいはABS樹脂等の中空管2を用いることもある。
金属製中空管2としては、鉄管が最も多く用いられているが、鉄錆を嫌う用途においてはアルミ中空管、またはステンレス中空管が使用される。
いずれにせよ、中空管2の材質は上記のいずれであってもよい。
【0016】
また、図2に示すように、中空管2内に、中空管2内の空間を埋める埋込体3が配置されている。この埋込体3は袋体3aと、この袋体3a内に充てんされたガス3bとからなる。なお、袋体3aは中空管2内に収まっており、袋体3aの長さは中空管2の長さよりわずかに短くなっている。このように袋体3aの外部形状を中空管2の内部形状より小さくして、外装袋5内を軽い減圧にすることにより、外装袋5の減圧状態から、外装袋5の密封性が維持されているか否かを確認することもできる。また、中空管5の内容積より大きな体積のガスを収納できる袋体3aを使用し、中空管2内に収まる量だけのガスを袋体3a内に詰めて中空管2内に袋体3aを収納しても良い。しかしながら、この場合、外装袋5内の減圧度合いによっては袋体3aが中空管2の外部にはみ出す恐れがあるため注意が必要である。
袋体3a内のガス3bが、大気等、酸素を含むガスの場合は、袋体3aを構成するフィルムとしては、ガスバリア性を有する材質を用いる。袋体3aを構成するフィルムがガスバリア性をもたないと、袋体3a内の酸素が酸素吸収性フィルム1に吸収されてしまい、袋体3aを中空管2内に収納する意味が無くなってしまう。ガスバリア性を有するフィルムとしては、アルミニウム箔、金属酸化物蒸着フィルム、金属蒸着フィルム、塩化ビニリデンコーティングフィルム等、各種コーティングタイプガスバリア性フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール等、通常ガスバリア性フィルムとして用いられているフィルムと、必要に応じて設けられた他の基材フィルムと、ヒートシール性層とを有する積層体を用いることができる。また、ヒートシール性を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムや、ガスバリア性を有する共押出しフィルムを袋体3aとして単体で使用しても構わない。
なお、酸素吸収性フィルム1およびフィルム巻取体1Aを長期に亘って外装袋5内に保管する場合、アルミニウム箔を含む積層体を袋体3aとして用いれば、袋体3a内の酸素が殆ど吸収されないで済む。
袋体3aを構成するフィルムの積層方法は、接着剤を用いるドライラミネーション、溶融押出し樹脂を用いる押出しラミネーションが一般的だが、特に限定する必要は無い。
また、袋体3a内のガス3bが窒素ガス、二酸化炭素等、酸素を含まない不活性ガスの場合、袋体3aを構成するフィルムのガスバリア性が乏しくても、保管中に袋体3aの体積が減少することがない。このためガスバリア性に関係なく、袋体3aを構成するフィルムを選定することができる。ただし袋体3a内に不活性ガス3bを充てんする場合、袋体3aは、少なくとも非通気性をもつ必要がある。
【0017】
また、フィルム巻取体1Aを収納し密封する酸素バリア性の外装袋5としては、フィルム巻取体1Aの保管中に外部から酸素が大量に侵入するのを防止するため、ガスバリア性の材料が用いられる。特に、短期間の保管であっても、フィルム巻取体1Aの酸素吸収速度が、外部からの酸素侵入速度より大きい場合、外装袋5の内部は酸素が無い状態で推移することがある。この場合、外装袋5がガスバリア性をもたないと、外装袋5の外方からフィルム巻取体1Aが酸素を吸収し続けていることを判断できず、知らないうちに酸素吸収性フィルム1が酸素を大量に吸収してしまうことを認識できないことがあり、危険である。
このような外装袋5としては、アルミニウム箔を含む積層体を用いることができる。
【0018】
図1乃至図3において、中空管2内の空間に、袋体3aと袋体3a内に充てんされたガス3bとからなる埋込体3を配置したので、外装袋5内に存在する、酸素吸収性フィルム1が吸収可能な酸素の量が減少し、外装袋5内の酸素が吸収されても外装袋内5内が減圧されにくくなる。また外装袋5内が多少減圧されても埋込体3によって外装袋5が中空管2内に進入することを規制することができる。このため外装袋5が中空管2内に進入する際、中空管2の端部2aによって外装袋5が破断することを未然に防止することができる。
なお酸素吸収性フィルム1を保管している間に酸素吸収性フィルム1が吸収する酸素の量をより少なくするため、中空管2内に埋込体3と共に脱酸素剤6を封入してもよい。また本発明では、従来と比較して外装袋内の酸素の量をかなり少なくすることができるため、特に脱酸素剤6を用いなくても良い。
ここで図4に中空管2内に埋込体が配置されていない比較例としての酸素吸収性フィルムの包装体10を示す。
図4に示すように外装袋5内が減圧されると、外装袋5が中空管2内に強く引き込まれてしまい、輸送中に中空管2の端部2aで外装袋5が破断したり、外装袋5がフィルム巻取体1Aの角部をつぶしてしまったりする可能性が高く、危険である。また、外装袋5のガスバリア層が伸びてガスバリア性が低下してしまい、外部から外装袋5内に酸素が侵入し続けることがあり、この状態が包装体5の外観から判別できないという問題も有する。
これに対して本発明によれば、外装袋5内が減圧された場合であっても、埋込体3によって外装袋5が中空管2内に進入することを未然に防止することができる。
【実施例1】
【0019】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(埋込体3の製造)
埋込体3はガスバリア性を有する袋体3aと、袋体3a内に充てんされたガス3bとからなる。
ガスバリア性を有する袋体3aを構成する包装材を作製するため、外側から順に、厚み12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレイトフィルムと、厚み15μmの2軸延伸ポリアミドフィルムと、厚み9μmのアルミニウム箔と、厚み40μmの未延伸ポリエチレンフィルムとを接着剤(2液硬化型のウレタン系接着剤層)を介して積層して、2軸延伸ポリエチレンテレフタレイトフィルム(12μm)/接着剤層/2軸延伸ポリアミドフィルム(15μm)/接着剤層/アルミニウム箔(9μm)/接着剤層/未延伸ポリエチレンフィルム(40μm)からなる積層フィルム(積層体)を得た。
上記で得られた袋体3aを構成する積層フィルム2枚(縦380mm×横140mm)をカットした。
次いで、積層フィルムを2枚重ね合わせて、未延伸ポリエチレンフィルムが内面となるように対向させ、シール幅10mmの側部シール部と、底シール部をそれぞれヒートシールし、袋体3aを作製した。
(フィルム巻取体1Aの製造)
7種7層の上吹き空冷インフレーション共押出し製膜機を用いて、表面側からエチレン−α・オレフィン共重合体樹脂層10μm、接着性ポリオレフィン樹脂層5μm、エチレン/メチルアクリレート/メチルシクロヘキセンメチルアクリレートのコポリマーに遷移金属触媒とラジカル系光重合開始剤を添加した樹脂層(酸素吸収性樹脂層)10μm、接着性ポリオレフィン樹脂層5μm、エチレン−α・オレフィン共重合体樹脂層15μm、高密度ポリエチレン樹脂層5μmの層構成からなる総厚50μmの共押出しフィルム(酸素吸収性フィルム)1を製造した。次にこの酸素吸収性フィルム1を幅300mmにスリットしつつ、内径76mm、肉厚8mmの紙製中空管2に1000m巻き取って、フィルム巻取体1Aを作製した。
(外装袋5の製造)
前記のガスバリア性を有する袋体3aを構成する包装材を用いて、縦800mm、横480mm、側部および底部のヒートシール幅10mmの外装袋5を製造した。
(酸素吸収性フィルムの包装体10の製造)
フィルム巻取体1Aを外装袋5内に収納し、大気約1リットルを詰めて密封した袋体3aを含む埋込体3を中空管2内に収納し、更に中空管2内の埋込体3上に使い捨てカイロ(脱酸素剤)6を1つ載せ、可能な限り脱気して外装袋5の開口部をヒートシール幅5mmのインパルスシーラーを用いて密封し、本発明による酸素吸収性フィルム包装体10を製造した。
【実施例2】
【0020】
(埋込体3の製造)
ガスバリア性を有する袋体3aを構成する包装材を作製するため、外側から順に、厚み12μmのアルミナ蒸着2軸延伸ポリエチレンテレフタレイトフィルムと、厚み15μmの2軸延伸ポリアミドフィルムと、厚み40μmの未延伸ポリエチレンフィルムとを接着剤(2液硬化型のウレタン系接着剤層)を介して積層して、2軸延伸ポリエチレンテレフタレイトフィルム(12μm)/接着剤層/2軸延伸ポリアミドフィルム(15μm)/接着剤層/未延伸ポリエチレンフィルム(40μm)からなる積層フィルム(積層体)を得た。
上記で得られた袋体3aを構成する積層フィルム2枚(縦380mm×横140mm)をカットした。
次いで、積層フィルムを2枚重ね合わせて、未延伸ポリエチレンフィルムが内面となるように対向させ、シール幅10mmの側部シール部と、底シール部をそれぞれヒートシールし、袋体3aを作製した。
(フィルム巻取体1Aの製造)
実施例1と同様にしてフィルム巻取体1Aを製造した。
(外装袋5の製造)
実施例1と同様にして外装袋5を製造した。
(酸素吸収性フィルムの包装体10の製造)
フィルム巻取体1Aを外装袋5内に収納し、大気約1リットルを詰めて密封した袋体3aを含む埋込体3を中空管2内に収納し、更に中空管2内の埋込体3上に使い捨てカイロ(脱酸素剤)6を1つ載せ、可能な限り脱気して外装袋5の開口部をヒートシール幅5mmのインパルスシーラーを用いて密封し、本発明による酸素吸収性フィルム包装体10を製造した。
【実施例3】
【0021】
(埋込体3の製造)
ガスバリア性が乏しい袋体3aを構成する包装材として、未延伸ポリエチレンフィルム(60μm)からなるフィルム2枚(縦370mm×横130mm)を用い、このフィルム2枚をカットした。
次いで、当該フィルムを2枚重ね合わせて、シール幅5mmの側部シール部と、底シール部をそれぞれインパルスシーラーでヒートシールし、袋体3aを作製した。
(フィルム巻取体1Aの製造)
実施例1と同様にしてフィルム巻取体1Aを製造した。
(外装袋5の製造)
実施例1と同様にして外装袋5を製造した。
(酸素吸収性フィルムの包装体10の製造)
フィルム巻取体1Aを外装袋5内に収納し、窒素ガス約1リットルを詰めて密封した袋体3aを含む埋込体3を中空管2内に収納し、更に中空管2内の埋込体3上に使い捨てカイロ(脱酸素剤)6を1つ載せ、可能な限り脱気して外装袋5の開口部をヒートシール幅5mmのインパルスシーラーを用いて密封し、本発明による酸素吸収性フィルム包装体10を製造した。
【比較例】
【0022】
実施例1と同じ酸素吸収性フィルム巻取体1Aを、実施例1で用いた外装袋5と同じ袋に収納し、中空管2内に使い捨てカイロを1つ入れた後、可能な限り脱気して外装袋5の開口部をヒートシール幅5mmのインパルスシーラーを用いて密封し、比較例としての酸素吸収性フィルム包装体10を製造した。比較例による酸素吸収性フィルム包装体10において、中空管2内に埋込体3は配置されていない。
【0023】
〔保存試験〕
前記実施例1〜3、および、比較例の包装体を室温で1週間保存した後、各酸素吸収性フィルムの包装体10の外観の目視確認を実施した。
その結果、実施例1〜3の酸素吸収性フィルムの包装体はほんの少し減圧になっている程度で、外装袋5には弛みが認められた。
一方、比較例の酸素吸収性フィルムの包装体10は外装袋5が強烈に中空管2内に引き込まれ、外装袋5がフィルム巻取体1Aにぴったり密着しており、些細な衝撃や摩擦で、風船が破裂するように破袋することが容易に想像できた。更に、比較例では、外装袋5が巻取体1Aの角の部分が丸まってしまうほど、巻取体1Aを固く締め付けているため、気温が高い季節には容易にブロッキングしてしまうことも想像できる。
前記実施例1−3、および比較例において、短期間で発明の効果を確認するため、酸素吸収樹脂より酸素吸収速度が大きい脱酸素剤として使い捨てカイロを使用したが、脱酸素剤を用いなくても結果は同様である。
上記のように、本発明によれば酸素吸収性フィルムの包装体10において、外装袋5に加えられる負荷を顕著に軽減させることができる。
なお、本発明による酸素吸収性フィルムの包装体10は、例えば、飲食品、化粧品、医薬品、化学品、その他等の種々の物品の包装に用いるための酸素吸収性フィルムを提供することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 酸素吸収性フィルム
1A フィルム巻取体
2 中空管
3 埋込体
3a 袋体
3b ガス
5 外装袋
6 脱酸素剤
10 酸素吸収性フィルムの包装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空管からなる巻芯と、巻芯外周に巻付けられた酸素吸収性フィルムとを含むフィルム巻取体と、
フィルム巻取体を収納し密封するとともに酸素バリア性を有する外装袋と、
巻芯内の空間に配置され、当該空間を埋める埋込体と、を備え、外装袋内に存在する、酸素吸収性フィルムが吸収可能な酸素の量を減少させ、外装袋内が減圧されにくくなることを特徴とする酸素吸収性フィルムの包装体。
【請求項2】
外装袋内に脱酸素剤が配置されていることを特徴とする請求項1記載の酸素吸収性フィルムの包装体。
【請求項3】
埋込体はガスバリア性の袋体と、袋体内に充てんされた空気とからなることを特徴とする請求項1記載の酸素吸収性フィルムの包装体。
【請求項4】
袋体はアルミニウム箔を含む積層体からなることを特徴とする請求項3記載の酸素吸収性フィルムの包装体。
【請求項5】
埋込体は非通気性の袋体と、袋体内に充てんされた不活性ガスとからなることを特徴とする請求項1記載の酸素吸収性フィルムの包装体。
【請求項6】
不活性ガスは窒素ガス、二酸化炭素ガス、またはこれらの混合気体からなることを特徴とする請求項5記載の酸素吸収性フィルムの包装体。
【請求項7】
外装袋はアルミニウム箔を含む積層体からなることを特徴とする請求項1記載の酸素吸収性フィルムの包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−235915(P2011−235915A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107085(P2010−107085)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】