説明

酸素濃縮装置

【課題】減圧ポンプを使わずに、効率よく濃縮酸素の供給量得ることのできる酸素濃縮装置を提供することを目的とする。
【解決手段】酸素イオン導電性を持つ固体電解質からなる酸素ポンプ素子1を直方体の酸素濃縮用の筐体2の相対する2面に配置し、それら酸素ポンプ素子1の中心部にヒータ3を配置したものである。その結果、酸素ポンプ素子1を有効に加熱しながら、直流電圧を印加して酸素を発生させることができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の酸素を濃縮して高濃度酸素を供給する酸素濃縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気から酸素を分離する手段として、酸素透過膜を用いて物理的に振るい分ける方法があった(例えば特許文献1参照)。また、電気化学的に酸素イオンのみを移動させて分離する方法もあり、前記方法ではイオン導電性と電子導電性を併せ持つ混合導電体を用いていた(例えば特許文献2参照)。
【0003】
混合導電体は、外部回路がなくても酸素分圧差を駆動力として酸素を透過させるものである。また、混合導電体の温度を上昇させるために、電極膜間に電圧を印可する方式のものもあった(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平2−136631号公報
【特許文献2】特許第2813596号公報
【特許文献3】特許第3295306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、酸素透過膜を用いた方法では減圧ポンプが必要であり、その騒音と重量、全体の容積が大きくなる点で使い勝手が悪いものであった。さらに分離できる酸素濃度は30〜40%と限界があった。
【0005】
一方、混合導電体を用いた電気化学的な方法では、静音でコンパクトな構成が可能であり、さらに発生する酸素濃度が100%であるという利点はあるものの、装置使用時の高濃度酸素の供給量は少量で効率的でないという課題があった。
【0006】
本発明は、電気化学的に酸素イオンのみを移動させて分離する方法における従来の課題を解決するもので、高濃度酸素を効率よく供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の酸素濃縮装置は、酸素イオン導電性を有する固体電解質から形成された酸素ポンプ素子と、前記酸素ポンプ素子を加熱するヒータとを備え、前記酸素ポンプ素子を筐体の相対する2面に配置し、それら酸素ポンプの間に前記ヒータを対向して位置させたものである。
【0008】
これにより、ヒータの熱で効率的に酸素ポンプ素子を加熱でき、その分、コンパクトな構成で大量の高濃度酸素を発生することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の酸素濃縮装置によれば、酸素ポンプ素子の電解質がヒータを介して高密度加熱されるところから、コンパクトな構成で大量の高濃度酸素を発生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の酸素濃縮装置は、酸素イオン導電性を有する固体電解質から形成された酸素ポンプ素子と、前記酸素ポンプ素子を加熱するヒータとを備え、前記酸素ポンプ素子を筐体の相対する2面に配置し、それら酸素ポンプの間に前記ヒータを対向して位置させたもの
であり、ヒータの熱で効率的に酸素ポンプ素子を加熱できる。
【0011】
ヒータは酸素ポンプ素子よりも大きくし、加えて、その中央部分より周囲の面積あたりの発熱量を高く設定し、均一に酸素ポンプ素子が加熱されるようにしておく。
【0012】
酸素取出しは筐体の一部位に形成した孔からなされるものである。
【0013】
好ましくは、温められた酸素が対流により効率的に出て行くように垂直方向に配置されたヒータの最上端より上部に孔を位置させ、また、熱に弱いヒータの電力供給用リード線を保護するために、ヒータへの電力供給用リード線を同ヒータのより下部より導出するのが望ましい。
【0014】
また、筐体の外側にさらに外殻筐体を設けて、それらの間に空流動空間を形成し、この空流動空間を流動する空気中から酸素ポンプ素子を介して酸素を濃縮取出し、前記筐体内部へ送り込むようにした。したがって、筐体は外側筐体で断熱される形となり、より均一で効率的な加熱を行うことができる。
【0015】
この場合、外殻筐体の下部と上部に吸気口と排気口を設けるとともに、排気口はヒータの最上端より高い位置に、吸気口はヒータの最下端より低い位置にそれぞれ配置するのが望ましい。
【0016】
こうすることによって、空流動空間には対流作用によって多くの新鮮な空気が流れることとなり、酸素ポンプ素子への空気供給も増加することとなり、スペースの効率的活用がなされる。
【0017】
そして、空流動空間に臨む放熱体を筐体より形成しておけば、空流動空間に放出される熱を合理的に回収して空流動空間を流動する空気を予熱し、酸素ポンプ素子の活性度を一層高めることができる。
【0018】
また、外殻筐体内を壁で仕切ることで、外側空気室と酸素ポンプ素子と接する内側空気室とを構成するとともに、それら内、外空気室は相互に連通させた。この相互に連通はそれらの上部で相互に連通しており、前記内側空気室の下部に吸気口を、外側空気室の下部に排気口をそれぞれ形成した形とする。その結果、内、外空気室を新鮮空気が蛇行するようになって、これらを仕切る壁を通して熱が移動するので、予熱もしくは熱回収が確実になされ、加えて、内側空気室の吸気口を外側空気室の排気口よりも低い位置に配置しておけば、対流による空気流動が確実になされる。
【0019】
前記の内側空気室の吸気口をヒータへの電力供給用リード線が筐体より導出される部位近傍に形成しておくことでこのリード線の過熱が防げることとなる。
【0020】
外殻筐体内を壁で仕切って外側空気室と内側空気室とを構成したものでも、内側空気室に臨む放熱体を筐体と壁より形成しておくことで、より一層熱回収効果をたかめることができる。
【0021】
放熱体は板状のもの、ピン状のものなど放熱面積を拡大するものであれば、構成的に限定を受けないのは云うまでもない。
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1において、酸素ポンプ素子1は、イオン導電性の固体電解質の両面に電極膜を形成させて構成されている。
【0024】
固体電解質は、酸素イオン導電性を有する金属酸化物であり、イットリア安定化ジルコニア等の汎用的な固体電解質でも良いが、ランタンとガリウムを組成に持つランタンガレート系のペロブスカイト型酸化物がより好ましい。特に輸率がほぼ1.0となるよう他の金属を添加したものが好ましい。
【0025】
本実施の形態ではストロンチウムとマグネシウムを添加して焼結させたランタンガレートを、直径30mm、厚み0.2mmに加工して用いる。
【0026】
図示していない両面の電極膜には、白金や銀などの貴金属、サマリウムとコバルトから成る金属酸化物などを用いる。これら電極膜は、スクリーン印刷による塗布や蒸着、スパッタリングによって形成する。
【0027】
この酸素ポンプ素子1を600℃以上に加熱し、両電極膜間に直流電圧を印加するとカソード側の空気から酸素分子が酸素イオンとして固体電解質に取り込まれ、アノード側の電極膜へ移動する。アノ−ド側の電極膜に到達した酸素イオンは酸素分子となり、アノ−ド電極側の内部空間に排出され、酸素分子が濃縮されるしくみである。
【0028】
前記酸素ポンプ素子1は、略直方体の酸素濃縮用の筐体2の相対する2面に配置され、図示していない両電極膜の、カソード側を筐体2の外側、アノード側を筐体2の内側として直流電圧を印加すると、上述のように外側の空気から酸素だけが矢印Aのように内部へ移動して酸素濃縮がおこなわれる。
【0029】
そして、酸素ポンプ素子1を加熱するのが加熱ヒータ3であり、電源より電力供給用リード線4を通って電力が供給され、酸素ポンプ素子1を加熱する。
【0030】
加熱ヒータ3は略直方体の筐体2の略中心、すなわち、一対の酸素ポンプ素子1の間に位置しており、電力供給用リード線4は筐体2の下部より外部に出ている構成である。
【0031】
筐体4の上部には酸素取出し孔5があり、ここより濃縮された酸素が矢印Bのように排気される。
【0032】
筐体2の外側を取り囲み、間に空気流動空間6を構成するように外殻筐体7が設けられ、その下部に吸気口8が、上部に排気口9が形成してある。したがって、この空気流動空間6を流動する新鮮な空気が酸素ポンプ素子1表面に巡る構成となっている。
【0033】
また、筐体2からは前記空気流動空間6に臨む熱交換用のフィン状放熱体10が設けられ、筐体2で発生する熱を空気流動空間6を流れる空気に伝えるようになっている。
【0034】
以上のように構成された酸素濃縮装置の動作、作用を説明する。ヒータ3の作動により酸素ポンプ素子1を600℃以上に加熱する。
【0035】
また、図示していない直流電源によって、酸素ポンプ素子1の表面の電極膜(カソード側が縮筐体2の外側、アノード側が筐体2の内側)に直流電圧を印加する。すると、カソ−ド電極側の外部空間、つまり、空気流動空間6を流れる空気中の酸素分子は、カソ−ド電極膜から酸素イオンとして固体電解質に取り込まれて、アノ−ド電極膜まで移動する。アノ−ド電極に到達した酸素イオンは酸素分子となり、筐体2の内側に矢印Aのように移
動する。この動作が続くと、筐体2内部の酸素は酸素取出し孔5よりその濃度を上げながら矢印Bのように排気されていく。
【0036】
本実施の形態のように、酸素ポンプ素子1が略直方体の筐体2の相対する2面に配置され、その中心にヒータ3があることによって、そのヒータ3の熱が効率的に酸素ポンプ素子1に伝えられるので、小さなスペースでも酸素ポンプ素子1を600℃以上に、かつ均一に加熱することが可能となる。
【0037】
特に、均一加熱は重要であり、厚み0.2mmの固体電解質からなる酸素ポンプ素子1に熱膨張ストレスを最小限にすることができるのである。
【0038】
また、ヒータ3の加熱部分より内側に酸素ポンプ素子1を設ける、換言すれば、酸素ポンプ素子1よりもヒータ3を大きく設定しておけば、酸素ポンプ素子1をより均一に加熱することができる。
【0039】
望ましくは、ヒータ3の発熱量を中央部より周囲を大きくして、酸素ポンプ素子1の熱分布を均一化するのが好ましい。
【0040】
筐体2は酸素取出し孔5を除いて密閉構造であるので、その内部の熱分布が均一になりやすい。さらに、この酸素取出し孔5はヒータ3の上端より高い位置にあるので、対流効果によって酸素分子が排出されやすい構造となっている。一方でその対流によって相対的に熱が伝わり難いヒータ3の下部に位置したところに電力供給用リード線4が存在するので、過熱防止のためのスペースを小さくでき、これにより全体的にコンパクト化できるものである。
【0041】
本実施の形態では、筐体2の外側には外殻筐体7を配置したので、それらの間の空気流動空間6に断熱作用が期待できる。しかも、外殻筐体7の上部と下部にそれぞれ吸気口8と排気口9があって、対流作用で新鮮空気の流動が促進されるところから、酸素濃縮作用も活発になされることになる。
【0042】
筐体2から外側へ向けて配置された放熱体19は、この筐体2で発生する熱を空気流動空間6を流れる空気に伝えてこれを予熱するのに役立ち、熱ロスを可及的に小さくしている。
【0043】
以上のような構成をすることによって、ポンプなどで空気を送ることなく、熱の対流によって自然に空気を流しているので、コストのかからないコンパクトな酸素濃縮装置を実現することが可能となる。
【0044】
(実施の形態2)
図2は本発明の実施の形態2を示し、先の実施の形態1と重複する部分については、同一符号を付し、その具体的説明は実施の形態1のものを援用する。
【0045】
図2において、空気流動空間6を壁11を介して内側空気室6aと外側空気室6bに区画したものである。壁11の上端は外殻筐体7の頂壁より下方にある。
【0046】
吸気口8は内側空気室6aの下部に、排気口9は外側空気室6bの下部に設けてあり、新鮮な空気が吸気口8より内側空気室6aに入って酸素ポンプ素子1表面を流動した後、上部でUターンするように蛇行して外側空気室6bに流れ、排気口6bから排出される。つまり、矢印Eから矢印Fへと流れる。前記Uターンする蛇行状流れが確実に生起されるように、排気口6bは吸気口8よりも高所に形成されている。
【0047】
また、筐体2と壁11とには内側空気室6aに共に臨むフィン状の放熱体10aと10bがそれぞれ設けてあり、筐体2で発生する熱、および外側空気室6bを流れる空気が保有する熱を内側空気室6aを流れる空気に伝えるようにしている。
【0048】
図2のように、吸気口8が排気口9に比べて電力供給用リード線4に近い位置にあるのは意味がある。
【0049】
一般に熱に強くない部材からなる電力供給用リード線4を高熱から守るには、相対的に低い温度となる吸気口8の近くに配置したほうがよいからである。ただし、その場合吸気口8からすぐに酸素ポンプ素子1に達する構成となるので、短い距離の間に温度を上げる必要がある。
【0050】
したがって、吸気口8を電力供給用リード線4から遠い位置の外側空気室6bに設けても良い。つまり、外側空気室6bから内側空気室6aへ空気が流れる構成でも熱ロスの少ない構成が得られるが、反対に電力供給用リード線4近傍が高温になるので耐熱を施す必要が発生するのである。
【0051】
以上のように、酸素ポンプ素子1において酸素濃縮に必要な熱が流れる空気によって放熱してしまわないよう効率的に熱を回収するので、エネルギーロスの少ない、コンパクトな酸素濃縮装置を実現することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明にかかる酸素濃縮装置は、効率よく高濃度酸素を供給することができるため、吸入用高濃度酸素の応用製品として利用できる。このような電化製品として、例えばエアコン、空器清浄器、送風機、酸素吸入器、またはそれらが機能の一部として組み込まれた製品があげられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態1における酸素濃縮装置の断面図
【図2】本発明の実施の形態2における酸素濃縮装置の断面図
【符号の説明】
【0054】
1 酸素ポンプ素子
2 筐体
3 ヒータ
4 電力供給用リード線
5 酸素取出し口
6 空気流動空間
6a 内側空気室
6b 外側空気室
7 外殻筐体
8 吸気口
9 排気口
10,10a,10b 放熱体
11 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素イオン導電性を有する固体電解質から形成された酸素ポンプ素子と、前記酸素ポンプ素子を加熱するヒータとを備え、前記酸素ポンプ素子を筐体の相対する2面に配置し、それら酸素ポンプの間に前記ヒータを対向して位置させた酸素濃縮装置。
【請求項2】
酸素ポンプ素子よりもヒータを大きく設定した請求項1記載の酸素濃縮装置。
【請求項3】
ヒータの中央部分より周囲の面積あたりの発熱量を高く設定した請求項1記載の酸素濃縮装置。
【請求項4】
筐体の一部位に酸素取出し用の孔を形成した請求項1記載の酸素濃縮装置。
【請求項5】
垂直方向に配置されたヒータの最上端より上部に孔を位置させた請求項4記載の酸素濃縮装置。
【請求項6】
ヒータへの電力供給用リード線を同ヒータのより下部より導出した請求項1記載の酸素濃縮装置。
【請求項7】
筐体の外側にさらに外殻筐体を設けて、それらの間に空流動空間を形成し、この空流動空間を流動する空気中から酸素ポンプ素子を介して酸素を濃縮取出し、前記筐体内部へ送り込むようにした請求項1記載の酸素濃縮装置。
【請求項8】
外殻筐体の下部と上部に吸気口と排気口を設けた請求項7記載の酸素濃縮装置。
【請求項9】
排気口はヒータの最上端より高い位置に設けた請求項8記載の酸素濃縮装置。
【請求項10】
排気口はヒータの最下端より低い位置に設けた請求項8記載の酸素濃縮装置。
【請求項11】
空流動空間に臨む放熱体を筐体より形成した請求項7記載の酸素濃縮装置。
【請求項12】
外殻筐体内を壁で仕切ることで、外側空気室と酸素ポンプ素子と接する内側空気室とを構成するとともに、それら内、外空気室は相互に連通させた請求項7記載の酸素濃縮装置。
【請求項13】
内、外空気室はそれらの上部で相互に連通しており、前記内側空気室の下部に吸気口を、外側空気室の下部に排気口をそれぞれ形成した請求項12記載の酸素濃縮装置。
【請求項14】
内側空気室の吸気口を外側空気室の排気口よりも低い位置に配置した請求項13記載の酸素濃縮装置。
【請求項15】
内側空気室の吸気口は、ヒータへの電力供給用リード線が筐体より導出される部位近傍に配置した請求項13記載の酸素濃縮装置。
【請求項16】
内側空気室に臨む放熱体を筐体より形成した請求項12記載の酸素濃縮装置。
【請求項17】
内側空気室に臨む放熱体を壁より形成した請求項12記載の酸素濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−204347(P2007−204347A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28060(P2006−28060)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】