説明

里芋分離装置

【課題】小芋の分離性能を向上することができる里芋分離装置を提供することにある。
【解決手段】里芋分離装置1は、里芋塊Wを一方向に高速移動させる移動手段12と、該移動手段12により移動する里芋塊Wを設定位置で移動阻止する移動阻止手段23sとを設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親芋を中心に多数の小芋が密生した里芋塊から小芋を分離する里芋分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には里芋塊を載置台に載置して親芋を打撃することで小芋を分離する構成が記載されている。
この装置は、静止している里芋塊の親芋に打撃を与え、その衝撃により親芋の周りに付いている小芋を親芋から分離するものである。
【特許文献1】特開平11−168933号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記装置は、静止している里芋塊の親芋に打撃を与えその衝撃により小芋を分離する構成なので小芋の分離性能があまり良くない。
本発明は小芋の分離性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明に係る里芋分離装置は、里芋塊を一方向に高速移動させる移動手段と、該移動手段により移動する里芋塊を設定位置で移動阻止する移動阻止手段とを設けて構成する。
【0005】
里芋塊は上記移動手段によって高速で移動され、その高速移動が移動阻止手段によって阻止される。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の里芋分離装置において、前記移動手段は、里芋塊を保持する保持手段と、該保持手段が保持した里芋塊を一方向に高速移動させる駆動手段とで構成し、前記移動阻止手段は、高速移動する里芋塊と直接衝突し或は前記保持部材と衝突する固定部材で構成したことを特徴とする。上記保持手段により里芋塊が保持されて一方向に高速移動され、次いで里芋塊は、固定部材或いは前記保持部材と衝突する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2の里芋分離装置において、前記駆動手段は、弾発部材と、弾発力を蓄積する状態に前記弾発部材を変位させる第一の操作手段と、該操作手段による弾発部材の変位操作を解除する解除手段とを備えたことを特徴とする。上記弾発部材により里芋が高速移動される。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1記載の発明は、里芋塊を移動手段で高速で移動させ、移動阻止手段でその高速移動を阻止し、そのときの衝撃と慣性によって小芋を良好に分離できる。
【0009】
請求項2記載の発明は、保持手段が保持した里芋塊を一方向に高速移動させ、固定部材で里芋塊、或いは前記保持部材と衝突する構成なので、簡単な構成で小芋を良好に分離できる。
【0010】
請求項3記載の発明は、弾発部材を利用して里芋を高速移動させて小芋を分離する構成のため、簡単な構成で小芋を良好に分離できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態について以下に図面に基づいて詳細に説明する。
第一の構成例による里芋分離装置1は、里芋塊Wの茎部側Tを茎部支持体で、根部側Bを根部支持体でそれぞれ上下方向から支持し、根部支持体の初期位置には根部支持体の上昇を阻止するストッパを設け、根部支持体が初期位置から設定位置まで里芋塊Wを移動させると、茎部支持体が根部支持体を初期位置まで押し戻してストッパに衝突させることで小芋を里芋塊から分離する構成としたものである。
【0012】
第一の構成例の主要な部分を説明すると、その側面図を図1に、正面から見た作業状態を示す図を図2に、平面図を図3に示すように、里芋塊Wを倒立載置するための弾性支持体2、その上から里芋塊Wを押さえる押圧部3、押圧操作するためのハンドルリンク部4、略L状に立ち上がるフレーム5等から構成される。
【0013】
個々の部材を詳細に説明すると、弾性支持体2は、フレーム5の基部のベースフレーム5b上にコイルスプリング(移動手段、弾発部材、駆動手段)12を立設し、その上端にリング状の受座(保持手段)13を取付けて構成する。コイルスプリング12の圧縮ストロークは、押圧部3の動作特性と対応して決定される。受座13の内径寸法は、倒立姿勢の里芋塊Wの茎部Tが入る程度に形成する。
【0014】
押圧部3は、里芋塊Wの根部Bと当接する押圧板21と、その上面から直上に延びる支持軸22と、この支持軸22をその長手方向に所定ストローク範囲Sでスライド可能に案内するガイド部材23gと、このガイド部材23gを保持するガイドホルダ23と、このガイドホルダ23に対して押圧板21の高さ位置を規制するカム(解除手段)24とから構成する。押圧板21の上面にはカム24を受けるアーム(操作手段)25を突設する。
【0015】
ガイド部材23gの下端には支持軸22のストローク範囲Sの上端位置を規制するストッパ(移動阻止手段、固定部材)23sを設けるとともに、支持軸22の基部にストローク調節部22aを設けることにより、所定のストローク範囲Sで押圧板21を遊動支持する遊動機構を構成する。また、カム24はモータ24dで回転する構成とし、その回転角度位置を電動制御する。カム24の回転に応じてアーム25は押圧板21を次第に下降させ、その後、ストッパ位置まで高速上昇する構成とする。これら遊動機構とカム24は、上昇方向の早戻り動作による慣性衝撃手段を構成する。
【0016】
ハンドルリンク部4は、フレーム5の頂部に設けた支持部材31と、この支持部材31にその左右で軸支するとともに上記ガイドホルダ23と連結する上下のアーム32、33と、左右間を連結するハンドル34とから構成する。上側のアーム32は支持部材31の軸支部32sおよびガイドホルダ23の軸支部32tで軸支し、下側のアーム33は支持部材31の軸支部33sおよびガイドホルダ23の軸支部33tで連結し、これら上下のアーム32、33で平行リンクを左右両側に形成する。
【0017】
ハンドル34は、ガイドホルダ23の前方まで上側のアーム32を左右とも延出してその先端を左右に連結する。このハンドル34は、オペレータが上下方向に操作をすることにより、ガイドホルダ23を同一姿勢で上下に動作可能とするものである。さらに、上下のアーム32、33側の自重と対抗してハンドル34を所定の高さに保持するためのワンウェイクラッチ35を上側のアーム32の軸支部32s等に設ける。また、35rはワイヤー35wを介してワンウェイクラッチ35を解除するクラッチレバーである。
【0018】
フレーム5の下部には、弾性支持体2の撓み動作を検出するセンサ(不図示)を取付ける。このセンサは、例えば、弾性支持体2の受座13の一部と干渉する範囲に取付ける。このセンサの信号により、弾性支持体2が所定位置まで撓んだ時にモータ24dを介してカム24を早戻りの角度位置に回動するべく制御する。
【0019】
上述の構成による里芋分離装置1を用いて里芋塊Wから小芋を分離する場合は、ハンドル34がワンウェイクラッチ35により上位に保持されている状態で弾性支持体2に里芋塊Wを倒立姿勢で載せ、その後、ハンドル34を下降操作することによって里芋塊Wが押圧板21により下方に押圧される。この時、里芋塊Wの押圧力により弾性支持体2が圧縮され、受座13が所定位置まで撓むとセンサの検出信号によりカム24が早戻りの角度位置に回動される。このカム24の回動によって押圧板21の規制が解放され、押圧板21および里芋塊Wは、弾性支持体2の撓み反力によって急速に上昇動作する。押圧板21が上昇してストローク調節部22aが遊動上限のストッパ23sに衝突すると、押圧板21によって親芋が押さえられるとともに里芋塊Wの外周部に密生した小芋に慣性力が衝撃的に作用し、この慣性力によって小芋が親芋から分離される。したがって、里芋分離装置1は、押圧板21によって里芋塊Wを押さえて安定保持しつつ親芋Xから小芋Yを効率良く分離することができる。
【0020】
小芋Yを分離すると、作業者はクラッチレバー35rを操作してワンウェイクラッチ35を解除して、ハンドル34を初期位置まで戻す。そして、親芋Xを弾性支持体2から取り出し、次の里芋塊Wを載置してハンドル34を下降操作する。ワンウエイクラッチ35の構成によりいろいろな大きさの里芋塊に対しても適切な押圧力を与えることができる。
【0021】
次に、里芋分離装置の第二の構成例について説明する。以下において、前記同様の部材はその符号を付すことによって説明を省略する。
第二の構成例による里芋分離装置41は、その側面図を図4に示すように、ガイド部材23gと嵌合する螺旋溝を形成した支持軸42によって押圧板21を支持する。この押圧板21が遊動範囲を上昇する際は、支持軸42の螺旋溝によって回動動作することから、上昇と回動方向の慣性力によって小芋を効率よく分離することができる。
【0022】
次に、里芋分離装置の第三の構成例について説明する。
第三の構成例による里芋分離装置51は、里芋塊Wの茎部側Tを保持手段で保持し、その保持手段の下側に突起体を形成し、保持手段を高速で下降させることで里芋塊の根部を突起体に衝突させることで小芋を分離する構成である。
そしてその構成を詳述すると、その側面図を図5(a)に示すように、上下方向に伸縮動作するエアシリンダ(駆動手段)52のピストンロッド52rの下端に里芋塊Wの茎部Tを保持するためのホルダ(保持手段)53を設け、その下方に受部材54を配置して構成する。ホルダ53は、そのB−B線断面図を図5(b)に示すように、その下端が里芋塊Wの茎側を挿入しうるリング状に形成するとともに、同里芋塊Wを保持するための複数のテーパ状の突部53tをリング内周に形成する。受部材54は、周壁54wをガイド状に形成し、その中心に突部(移動阻止手段、固定部材)54tを設ける。この突部54tは、ホルダ53に保持した里芋塊Wが下降した時に衝突する高さ範囲で周壁54wより低く形成する。
【0023】
このように構成した里芋分離装置51は、バルブ操作によるエアシリンダ52の伸張動作により、ホルダ53に保持した里芋塊Wが高速に下降動作して受部材54の突部54tと里芋塊Wの根部Bとが衝突し、里芋塊Wの外周部に密生した小芋に慣性力が衝撃的に作用し、この慣性力によって小芋が親芋から分離される。そのとき小芋は外方に飛散することなく周壁54w内に収容される。この場合において、受部材54は突部54tと周壁54wとを一体的に形成することにより簡単に構成することができ、また、軽量化することにより、移送用のコンテナを兼ねることができる。
【0024】
そして、里芋塊Wを横向きに保持可能に構成することにより、茎部が霜枯れしていても使用することができ、かつ、装置構成を軽量コンパクト化することができる。また、ホルダ53の挟持力を可変に構成することにより、里芋塊Wの大きさに関係なく幅広く対応することができる。
【0025】
次に、第四の構成例による里芋分離装置61は、図6の側面図に示すように、カム24によって下降方向に早戻り動作可能なガイドホルダ23による慣性衝撃手段を里芋塊Wの下方に配置して構成することにより、前記同様の効果を得ることができる。さらに、第五の構成例による里芋分離装置71は、図7の側面図に示すように、里芋塊Wの反対側に弾性体を配置した場合についても前記同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】里芋分離装置の第一の構成例の側面図である。
【図2】里芋分離装置の第一の構成例の正面図である。
【図3】里芋分離装置の第一の構成例の平面図である。
【図4】里芋分離装置の第二の構成例の側面図である。
【図5】里芋分離装置の第三の構成例の側面図(a)およびそのB−B線断面図(b)である。
【図6】里芋分離装置の第四の構成例の側面図である。
【図7】里芋分離装置の第五の構成例の側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 里芋分離装置(第一の構成例)
2 弾性支持体
3 押圧部
12 コイルスプリング(移動手段、弾発部材、駆動手段)
13 受座(保持手段)
21 押圧板
22 支持軸
23 ガイドホルダ
23s ストッパ(移動阻止手段、固定部材)
24 カム(解除手段)
25 アーム(操作手段)
41 里芋分離装置(第二の構成例)
42 支持軸
51 里芋分離装置(第三の構成例)
52 エアシリンダ(駆動手段)
53 ホルダ(保持手段)
54t 突部(移動阻止手段、固定部材)
61 里芋分離装置(第四の構成例)
71 里芋分離装置(第五の構成例)
B 根部
S ストローク範囲
T 茎部
W 里芋塊
X 親芋
Y 小芋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
里芋塊を一方向に高速移動させる移動手段と、該移動手段により移動する里芋塊を設定位置で移動阻止する移動阻止手段とを設けた里芋分離装置。
【請求項2】
前記移動手段は、里芋塊を保持する保持手段と、該保持手段が保持した里芋塊を一方向に高速移動させる駆動手段とで構成し、前記移動阻止手段は、高速移動する里芋塊と直接衝突し或は前記保持部材と衝突する固定部材で構成したことを特徴とする請求項1記載の里芋分離装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、弾発部材と、弾発力を蓄積する状態に前記弾発部材を変位させる第一の操作手段と、該操作手段による弾発部材の変位操作を解除する解除手段とを備えたことを特徴とする請求項2記載の里芋分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−166800(P2006−166800A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364207(P2004−364207)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】