重ね着用の衣服、重ね着用の衣服に用いられるアウターウェアおよび内層ウェア
【課題】従来よりもベンチレーション機能を高めた重ね着用の衣服、当該重ね着用の衣服のアウターウェアおよび内層ウェアを提供することを目的とする。
【解決手段】アウターウェアと、当該アウターウェアより内層に着衣される1着または1着以上の内層ウェアとを有する重ね着用の衣服であって、前記アウターウェアおよび少なくとも1着の内層ウェアが、開閉可能な通気部を備える。開閉可能な通気部を備えるアウターウェアと肌との間に着衣される内層ウェアであって、前記内層ウェアは、開閉可能な通気部を備える。
【解決手段】アウターウェアと、当該アウターウェアより内層に着衣される1着または1着以上の内層ウェアとを有する重ね着用の衣服であって、前記アウターウェアおよび少なくとも1着の内層ウェアが、開閉可能な通気部を備える。開閉可能な通気部を備えるアウターウェアと肌との間に着衣される内層ウェアであって、前記内層ウェアは、開閉可能な通気部を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウターウェアと、当該アウターウェアより内層に着衣される1着または1着以上の内層ウェアとを有する重ね着用の衣服、当該重ね着用の衣服に用いられるアウターウェアおよび内層ウェアに関する。より詳細には、例えば、ハイキング、登山、ジョギング等の運動時におけるベンチレーション機能を向上させることができる重ね着用の衣服、当該重ね着用の衣服に用いられるアウターウェアおよび内層ウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、脇下から側腹部分にかけて、または胸部分に、開閉自在の通気部を備えたアウターウェアが知られている。この通気部は、アウターウェアを着衣している者の温度調整や湿度調整のためのベンチレーションとして機能している。
【0003】
また、後身頃の襟みつ近傍に通気孔が形成さられたベンチレーション機能付き衣服が知られている(例えば、特許文献1)。この特許文献1では、ジャンパーやブルゾン、コート、ウインドブレカー等のいわゆる、アウターウェア内部における蒸れを改善するために、このアウターウェアの後身頃の襟みつ近傍に通気孔を形成しているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−163227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のように、アウターウェアの通気部の開閉で、急激な体温変化や衣服内部の湿度変化を素早く改善することが困難な場合もあった。例えば、ハイキングや登山等では、山の環境変化に対応可能なように、複数種類の服を重ね着している。例えば、肌側のベースウェア、中間着のミドルウェア、アウターウェア等を重ね着しているのが通常である。このように重ね着している場合に、高くなった体温を下降させたり、汗を乾燥させたい時に、従来のようにアウターウェアの通気部のみでは、迅速に体温下降や汗の乾燥を行えず、結果的に、体力を消耗させてしまうことになるという不具合も生じていた。
【0006】
また、アウターウェアの通気部の開閉で上記温度や上記湿度の改善が困難であれば、通常はアウターウェアを脱ぐことで対処していた。しかし、アウターウェアを脱ぐという対処方法の場合、脱ぐという動作一つをとっても手間なことである。さらにいえば、ハイキングや登山等でアウターウェアを脱ぐためには、歩くのを停止しザック等を置くための動作と、アウターウェアを脱ぐ動作と、脱いだアウターウェアをザック等に入れる動作、ザック等を再び担ぐ動作等とが必要であり、時間も手間も必要で大変無駄なものだった。さらに、崖や岩場の危険なルートでは、脱ぐ動作自体が危ないために、アウターウェアを脱ぐことができない。また、悪天候時には、アウターウェアを脱ぐこと自体ができないこともある。また、岩登りでは、ハーネスを着用しているため、アウターウェアを脱ぎ難い。
【0007】
また、ジョギング等の運動時でもアウターウェアを脱ぐという動作は、ジョギング等の運動を停止して行われるため無駄な動作であった。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、従来よりもベンチレーション機能を高めた重ね着用の衣服、当該重ね着用の衣服に用いられるアウターウェアおよび内層ウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、アウターウェアと、当該アウターウェアより内層に着衣される1着または1着以上の内層ウェアとを有する重ね着用の衣服であって、前記アウターウェアおよび少なくとも1着の内層ウェアが、開閉可能な通気部を備える。
【0010】
この構成によれば、アウターウェアと内層ウェアとに開閉可能な通気部が備えられており、それら通気部を開かせることで、体温を素早く下降(冷却)させることができ、また、素早く汗を乾燥させることができる(衣服内部の相対湿度を下降させることができる)。よって、従来のアウターウェアにのみ通気部が備わっていたものよりも、飛躍的にベンチレーション機能の効果を高めた重ね着用の衣類を提供することができる。
【0011】
また、上記発明の一実施形態として、通気部を備えるアウターウェアと通気部を備える内層ウェアとが連続に着衣(重ね着)されることが好ましい。また、上記発明の一実施形態として、通気部を備えるアウターウェアと通気部を備える内層ウェアとの間に、通気性有する生地のウェアが着衣される構成もできる。
【0012】
上記発明において、前記アウターウェアの前記通気部の位置と、前記前記アウターウェアの下に着衣される少なくとも1着の内層ウェアの前記通気部の位置とが、着衣状態において同じ位置または近傍位置にあることが好ましい。「近傍位置にある」は、実質的に同じ位置であることを含み、ベンチレーション機能を発揮できるような位置関係であって、通気部同士の相対的位置関係が、部分的に重なっているだけでもよい。また、それぞれの通気部が、同じ形状、同じサイズである必要はない。また、それぞれの通気部を開口した状態の開口形状、開口サイズのそれぞれが同じである必要はない。また、着衣状態において、それぞれの通気部の開口部分が同じ位置、近傍位置、それぞれの開口部分の重なり具合が大きくなるような位置等に設定してある方が、開閉のし易さ、温度調整、湿度調整のし易さの観点から好ましい。また、着衣状態で通気部同士が平行になるように設定してある方が、開閉動作がし易く、それらを開いた際には開口部分同士が重なるためベンチレーション機能が高いものとなる。また、通気部同士は、平行以外にクロス状に重なるように設定されていてもよい。
【0013】
また、上記発明において、前記アウターウェアの前記通気部が当該アウターウェアのフロント部に位置し、当該アウターウェアの通気部の位置に対応するように、前記内層ウェアの前記通気部が当該内層ウェアのフロント部に位置することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、それぞれの通気部をフロント部に設けていることで、前からの空気流や風を受けやすく、より素早く体温の降下や汗の乾燥を行える。フロント部に少なくとも一つの通気部を設け、さらにウェア側部に通気部を設けてもよく、フロント部から側部に伸びるように通気部を設けることもできる。
【0015】
また、それぞれの通気部をフロント部に設ける場合に、肩から脇にかけての部分を除いたフロント部に通気部を設けることがより好ましい。肩から脇にかけての部分、腰周囲およびバック部にザックやリュック等を背負っている場合には、この部分に通気部を設けてもベンチレーションの効果が低いと推察されるからである。
【0016】
また、上記発明の一実施形態において、前記内層ウェアが1着であり、前記アウターウェアの下に着衣される当該内層ウェアに前記通気部が設けられ、前記第内層ウェアの下に着衣され着衣される1着または2着のベースウェアには前記通気部が設けられていない。肌から発生した汗を1着または2着のベースウェアで吸い上げ、アウターウェアおよび内層ウェアの通気部によってベースウェアの水分を素早く乾燥させることができる。
【0017】
また、上記発明の一実施形態において、前記内層ウェアが2着であり、前記アウターウェアの下に着衣される第1内層ウェアに前記通気部が設けられ、前記第1内層ウェアの下に着衣される第2内層ウェアに前記通気部が設けられ、前記第2内層ウェアの下に着衣される1着または2着のベースウェアには前記通気部が設けられていない。肌から発生した汗を1着または2着のベースウェアおよび第2内層ウェアで吸い上げ、アウターウェアおよび第1、第2内層ウェアの通気部によってベースウェアおよび第2内層ウェアの水分を素早く乾燥させることができる。2着のベースウェアとしては、例えば、肌面に直接触れる第1ベースウェアを撥水性生地で構成し、この上に着衣される第2ベースウェアと第2内層ウェアとを保温性、吸汗拡散性、調湿性等の生地で構成することができる。1着のベースウェアとしては、例えば、肌面に直接触れる生地側を撥水性層とし、内層ウェア側を吸汗拡散性層とした生地で構成することができる。
【0018】
また、他の本発明は、上記の重ね着用の衣服に用いられる、開閉可能な通気部を備えるアウターウェアである。
【0019】
また、他の本発明は、上記の重ね着用の衣服に用いられる、開閉可能な通気部を備える内層ウェアである。
【0020】
また、他の本発明は、開閉可能な通気部を備えるアウターウェアと肌との間に着衣される内層ウェアであって、
前記内層ウェアは、開閉可能な通気部を備える。
【0021】
この構成によれば、内層ウェアおよびアウターウェアに通気部が備えられていることで、体温を素早く下降(冷却)させることができ、また、素早く汗を乾燥させることができる(衣服内部の相対湿度を下降させることができる)。よって、従来のアウターウェアにのみ通気部が備わっていたものよりも、飛躍的にベンチレーション機能の効果を高めることができる。
【0022】
また、上記発明において、前記内層ウェアの前記通気部の位置と、前記アウターウェアの前記通気部の位置とが、着衣状態において同じ位置または近傍位置にあることが好ましい。また、前記アウターウェアの通気部を開口させて、前記内層ウェアの通気部の開閉が可能なように、当該内層ウェアの通気部の位置を設定することが好ましい。この構成によれば、着衣者がアウターウェアの通気部を開口させて、当該開口に手を入れて、内層ウェアの通気部を開口させることができるため、内層ウェアの通気部の開閉動作を、アウターウェアを脱衣することなく簡単に素早く行える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】通気部の形状および位置の例を示す図である。
【図2】通気部の形状および位置の例を示す図である。
【図3】通気部の形状および位置の例を示す図である。
【図4】通気部の形状および位置の例を示す図である。
【図5】通気部の形状および位置の例を示す図である。
【図6】通気部の形状および位置の例を示す図である。
【図7】通気部の形状および位置の例を示す図である。
【図8】通気部の開口状態の例を示す図である。
【図9】通気部の開口状態の例を示す図である。
【図10】通気部の開口状態の例を示す図である。
【図11】通気部の開口状態の例を示す図である。
【図12】通気部の開口状態の例を示す図である。
【図13】通気部の開口状態の例を示す図である。
【図14】重ね着した状態の例を示す図である。
【図15】重ね着した状態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(アウターウェアおよび内層ウェア)
アウターウェアは、その機能が特に制限されるものではないが、例えば、防寒性、防風性、防水性、耐雨性等を有していることが好ましい。また、内層ウェアは、肌側のベースウェアとアウターウェアとの間に着衣されるミドルウェアで構成される。ベースウェアおよびミドルウェアは、その機能から複数種の機能性を有するウェアで構成されていてもよく、必要に応じて複数のウェアを着衣して構成されていてもよい。ベースウェアの機能としては、例えば、撥水性、保温性、吸汗拡散性、調湿性等が挙げられ、ベースウェアとして、例えば、撥水性を有する第1ベースウェアと、保温性、吸汗拡散性および調湿性を備える第2ベースウェア等を重ね着あるいは単独で着衣することができる。また、ミドルウェアの機能としては、例えば、保温性、吸汗拡散性、防風性、透湿性、防水性等が挙げられ、ミドルウェアとして、例えば、保温性および吸汗拡散性を有する第1ミドルウェアと、防風性、保温性および防水透湿性を有する第2ミドルウェア等を重ね着または単独で着衣することができる。なお、ベースウェアおよびミドルウェアは、上記の機能を有するものに制限されず、使用目的に応じて機能を省略、別機能を追加可能である。
【0025】
また、アウターウェアおよび内層ウェアは、上半身用の衣服に限定されず、下半身用の衣服、例えば、タイツ、ズボン、あるいは全身用の衣服でもよい。下半身用の場合、例えば、アウターウェアとして防寒性、防風性、防水性等を有するズボンや、内層ウェアとして、例えば、タイツ、レギンス、ハーフパンツ等が挙げられる。
【0026】
また、衣服を構成するアウターウェア、内層ウェア(ミドルウェア)、ベースウェアの糸材料、縫製方法は特に制限されず、また、各種加工処理(例えば、撥水加工、UVカット加工等)も適宜施されていてもよい。
【0027】
(通気部)
通気部は、アウターウェアおよび内層ウェアのベンチレーション機能を発揮するために設けられる。通気部を設ける位置は、特に制限されず、上半身用の衣服の場合、例えば、フロント部(前面あるいは前身頃)、バック部(背面あるいは後身頃)、サイド部(側腹部や脇部)、上腕部等が挙げられる。好ましい実施形態として、前方からの空気流や風を受けやすく、より素早く体温の降下や汗の乾燥を行える観点から、アウターウェアの通気部が当該アウターウェアのフロント部に位置し、当該アウターウェアの通気部の位置に対応するように、内層ウェアの通気部が当該内層ウェアのフロント部に位置することが好ましい。また、下半身用の衣服の場合、例えば、大腿部や下腿部のフロント部(前面)、サイド部(側面)、バック部(後面)が挙げられる。
【0028】
また、それぞれの通気部をフロント部に設ける場合に、肩から脇にかけての部分を除いたフロント部に通気部を設けることがより好ましい。肩から脇にかけての部分にザックやリュック等を背負っている場合には、この部分に通気部を設けても開口面積が小さくなってベンチレーションの効果が低くなり、通気部の開閉動作もし難いからである。
【0029】
通気部の形状は、特に限定されず、例えば、直線、曲線、多角形、円、楕円、異形等でもよい。また、通気部が開口した状態の開口形状は、特に制限されず、楕円、円、多角形、異形等でもよい。ウェアごとの通気部の数は、一つか2つが好ましいが、それ以上でもよく、複数種類の形状の通気部を組み合わせてもよい。重ね着される通気部同士の形状は同じでもよく、異なる形状でもよい。
【0030】
図1〜7に通気部の位置の例を示す。図1は、フロント部の胸部下から脇腹に向かって伸びるハの字状通気部11、12である。図2は、胸部の逆さL字状通気部13である。図3は、胸部の上円弧状通気部14である。図4は、側面の線状通気部15である。図5は、上腕下部の線状通気部16である。図6は、上腕下部から脇を通って側面に伸びる線状通気部17である。図7は、胸部の線状通気部18と側面の線状通気部19である。なお、通気部の形状および位置は、図1〜7の形状、サイズおよび位置に限定されない。
【0031】
図8〜13に、図1〜7の通気部の開口状態の例を示す。図8〜10は、ハの字状通気部11、12の開口状態111、121の一例を示し、図8は正面図、図9および図10は側面図である。図10は、中央部を留めた状態にして二つの開口部を形成している状態である。図11は、胸部の逆さL字状通気部13の開口状態131の一例である。図12は、上円弧状通気部14の開口状態141の一例を示す。図13は、側面の線状通気部15の全開の開口状態151の一例を示す。なお、通気部の開口状態は、図8〜13の開口状態に限定されない。
【0032】
また、アウターウェアと内層ウェアの通気部同士、複数の内層ウェアの通気部同士が異なる形状の通気部の組み合わせであってもよい。例えば、アウターウェアの通気部としてハの字状通気部を採用し、ミドルウェアの通気部として、アウターウェアのハの字状通気部よりもサイズが小さいハの字状通気部を採用してもよく、胸部の線状通気部や側面の線状通気部を採用してもよい。アウターウェアのハの字状通気部と、ミドルウェアの胸部の線状通気部および側面の線状通気部とは、近傍位置に設定され、あるいはアウターウェアとミドルウェアの通気部の開口部分同士が重なるように設定されることが好ましい。
【0033】
通気部を開閉可能にするために、開閉自在の留め具を用いることが好ましい。このような留め具としては、例えば、通常のボタン、点ファスナー(例えば、スナップボタン)、線ファスナー(例えば、ジッパー、チャック)または面ファスナー(例えば、マジックテープ(登録商標))が挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上を適宜組み合わせて用いることもできる。通気部の開きは、全て開くことに限定されず、部分的に開いたり、留め具で一部分を閉じている状態でもよい。また、通気部の開閉部分を、ウェア生地の摩擦性または形状加工を利用して開閉自在に構成でき、例えば、開閉部分の生地同士が重なるようにして留める構成や、一方の生地にベロを設け他方の生地スリットを設け、ベロをスリットに挿入して折り返えして留める構成等が挙げられる。
【0034】
また、通気部は、メッシュ状または通気性を有する袋体(ポケット)または生地が、裏地または裏当てとして着脱自在に設けられていてもよく、縫い付け等で固定されていてもよい。通気部を開いた状態で、当該袋体または生地を通じてベンチレーション機能を発揮する。また、通気部がポケット機能を兼用していてもよい。
【0035】
また、着衣状態において、アウターウェアの通気部の位置と、少なくとも1着の内層ウェアの通気部の位置とが同じ位置または近傍位置にあることが好ましい。それぞれの通気部の位置が同じ位置または近傍位置に位置していれば、それぞれの通気部を開口した状態でのベンチレーション機能を効果的に発揮できる。それぞれの通気部の位置関係に関係なく、それぞれの通気部の形状、サイズ等が同じである必要はなく、通気部を開口した状態の形状、サイズ等も同じである必要はない。着衣者が望む着衣状態の湿度、温度環境を維持、あるいは素早く改善できるように、それぞれの通気部の開口状態を選択できるように開閉可能に構成することが好ましい。
【0036】
図14、15は、最上部にアウターウェア1、中間部にミドルウェア2、肌と直接接する部分にベースウェア3を重ね着する一例を示す。図14に示すように、アウターウェア1には、ハの字状通気部12(図14ではハの字の一方のみを示す)が設けられ、ミドルウェア2にも同様に、ハの字状通気部22(図14ではハの字の一方のみを示す)が設けられている。それぞれの通気部の留め具は線ファスナー(チャック)である。図15は、上記3種類を重ね着した状態で、アウターウェア1の通気部12を開口させた状態と、ミドルウェア2の通気部22を開口させた状態を示す。
【0037】
また、アウターウェアの通気部の直ぐ下に通気部を備えた内層ウェアが着衣されることがベンチレーション機能を向上の観点から好ましい。また、通気部は、防水性、防風性、低透湿性または低通気性の生地を有するウェアに設けられることが好ましい。また、通気部を備えたアウターウェアと通気部を備えた内層ウェアとの間に、透湿性および/または通気性を有するウェア(内層ウェア)を着衣させることもできる。また、肌に直に触れるベースウェアには開閉可能な通気部を備えさせず、透湿性および/または通気性の生地でベースウェアを構成しておくこともできる。
【0038】
また、着衣状態において、アウターウェアの通気部を開口させて、内層ウェアの通気部の開閉が可能なように、当該内層ウェアの通気部の位置を設定することが好ましい。すなわち、着衣者がアウターウェアの通気部を開口させて、当該開口に手を入れ、内層ウェアの通気部を開口させることができ、内層ウェアの通気部の開閉動作を、アウターウェアの脱衣動作をすることなく簡単に素早く行える。
【0039】
(実施例)
2種類のベースウェアと2種類のミドルウェアとアウターウェアの合計5種類のウェアを重ね着し、2種類のミドルウェアおよびアウターウェアの通気部をすべて全開にした条件(実施例1)と、アウターウェアの通気部のみを全開にした条件(比較例1)と、通気部を全閉にした条件(比較例2)とのそれぞれにおけるベンチレーション機能として温度および湿度の両方で評価した。
【0040】
ベースウェアとして、肌側に撥水加工された第1ベースウェア(株式会社finetrack「ドライレイヤー(DRY LAYER(登録商標))」:ポリエステル100%)をサーマルマネキンに着衣し、この第1ベースウェアの上に、吸汗拡散性、保温性、調湿性の第2ベースウェア(株式会社finetrack「ベースレイヤー」:ウール17%、ポリエステル83%)を重ね着した。ミドルウェアとして、吸汗拡散性、保温性の第1ミドルウェア(株式会社finetrack「ミドルレイヤー」:ポリエステル100%)を上記ベースウェアの上に重ね着し、その上に、防風性、保温性、透湿性の第2ミドルウェア(株式会社finetrack「ミッドシェル(mid shell(登録商標))」:表地:ポリエステル100%、裏地:ポリエステル100%生地に防水透湿性フィルムをラミネート)を重ね着した。さらに、アウターウェアとして、防寒性、防風性、防水性のウェア(株式会社finetrack「アウターシェル」:表地:ナイロン100%、裏地:ポリエステル100%生地に防水透湿性フィルムをラミネート)をミドルウェアの上に重ね着した。それぞれの通気部は、図1に示すように、胸下から側腹に向かうハの字状通気部であり、留め具にチャックを用い、それぞれの開口サイズは同じになるように設定した。
【0041】
(測定条件)
サーマルマネキンの表面温度を36℃に設定し、そのマネキンの周囲の環境温度を10℃にし、マネキンのフロント部に向かう風の風速を2m/secとした。第2ベースウェアの水分率を100%に調整した(ウェア全体で吸収できる最大の水分量を示している)。
【0042】
(湿度(ムレ)の軽減効果の比較)
第1ベースウェアと第2ベースウェアの間に湿度計をおき、測定値がほぼ定常となったタイミング(約15分後)で湿度を測定した。すべての通気部を全開にした実施例1は、63.0%RH、アウターウェアの通気部のみ全開にした比較例1は、77.0%RH、通気部を全て閉じていた比較例2は、88.3%RHであった。実施例1の湿度は、比較例1のそれより14%も湿度が低下しており、このことから、実施例1は、比較例1よりもムレを素早く解消して快適な衣服内部環境を実現したことを確認できた。
【0043】
(温度の低下効果の比較)
第2ベースウェアと第1ミドルウェアの間に温度計をおき、測定値がほぼ定常となったタイミング(約15分後)で温度を測定した。すべての通気部を全開にした実施例1は、19.1℃、アウターウェアの通気部のみ全開にした比較例1は、23.7℃、通気部を全て閉じていた比較例2は、27.0℃であった。実施例1の温度は、比較例1のそれより4.6℃も温度が低下しており、このことから、実施例1は、比較例1よりも、暑さを感じる温度から運動時に快適と感じる温度まで素早く低下できたことを確認できた。
【符号の説明】
【0044】
1 アウターウェア
2 ミドルウェア
3 ベースウェア
11、12 ハの字状通気部
111、121 ハの字状通気部の開口状態
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウターウェアと、当該アウターウェアより内層に着衣される1着または1着以上の内層ウェアとを有する重ね着用の衣服、当該重ね着用の衣服に用いられるアウターウェアおよび内層ウェアに関する。より詳細には、例えば、ハイキング、登山、ジョギング等の運動時におけるベンチレーション機能を向上させることができる重ね着用の衣服、当該重ね着用の衣服に用いられるアウターウェアおよび内層ウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、脇下から側腹部分にかけて、または胸部分に、開閉自在の通気部を備えたアウターウェアが知られている。この通気部は、アウターウェアを着衣している者の温度調整や湿度調整のためのベンチレーションとして機能している。
【0003】
また、後身頃の襟みつ近傍に通気孔が形成さられたベンチレーション機能付き衣服が知られている(例えば、特許文献1)。この特許文献1では、ジャンパーやブルゾン、コート、ウインドブレカー等のいわゆる、アウターウェア内部における蒸れを改善するために、このアウターウェアの後身頃の襟みつ近傍に通気孔を形成しているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−163227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のように、アウターウェアの通気部の開閉で、急激な体温変化や衣服内部の湿度変化を素早く改善することが困難な場合もあった。例えば、ハイキングや登山等では、山の環境変化に対応可能なように、複数種類の服を重ね着している。例えば、肌側のベースウェア、中間着のミドルウェア、アウターウェア等を重ね着しているのが通常である。このように重ね着している場合に、高くなった体温を下降させたり、汗を乾燥させたい時に、従来のようにアウターウェアの通気部のみでは、迅速に体温下降や汗の乾燥を行えず、結果的に、体力を消耗させてしまうことになるという不具合も生じていた。
【0006】
また、アウターウェアの通気部の開閉で上記温度や上記湿度の改善が困難であれば、通常はアウターウェアを脱ぐことで対処していた。しかし、アウターウェアを脱ぐという対処方法の場合、脱ぐという動作一つをとっても手間なことである。さらにいえば、ハイキングや登山等でアウターウェアを脱ぐためには、歩くのを停止しザック等を置くための動作と、アウターウェアを脱ぐ動作と、脱いだアウターウェアをザック等に入れる動作、ザック等を再び担ぐ動作等とが必要であり、時間も手間も必要で大変無駄なものだった。さらに、崖や岩場の危険なルートでは、脱ぐ動作自体が危ないために、アウターウェアを脱ぐことができない。また、悪天候時には、アウターウェアを脱ぐこと自体ができないこともある。また、岩登りでは、ハーネスを着用しているため、アウターウェアを脱ぎ難い。
【0007】
また、ジョギング等の運動時でもアウターウェアを脱ぐという動作は、ジョギング等の運動を停止して行われるため無駄な動作であった。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、従来よりもベンチレーション機能を高めた重ね着用の衣服、当該重ね着用の衣服に用いられるアウターウェアおよび内層ウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、アウターウェアと、当該アウターウェアより内層に着衣される1着または1着以上の内層ウェアとを有する重ね着用の衣服であって、前記アウターウェアおよび少なくとも1着の内層ウェアが、開閉可能な通気部を備える。
【0010】
この構成によれば、アウターウェアと内層ウェアとに開閉可能な通気部が備えられており、それら通気部を開かせることで、体温を素早く下降(冷却)させることができ、また、素早く汗を乾燥させることができる(衣服内部の相対湿度を下降させることができる)。よって、従来のアウターウェアにのみ通気部が備わっていたものよりも、飛躍的にベンチレーション機能の効果を高めた重ね着用の衣類を提供することができる。
【0011】
また、上記発明の一実施形態として、通気部を備えるアウターウェアと通気部を備える内層ウェアとが連続に着衣(重ね着)されることが好ましい。また、上記発明の一実施形態として、通気部を備えるアウターウェアと通気部を備える内層ウェアとの間に、通気性有する生地のウェアが着衣される構成もできる。
【0012】
上記発明において、前記アウターウェアの前記通気部の位置と、前記前記アウターウェアの下に着衣される少なくとも1着の内層ウェアの前記通気部の位置とが、着衣状態において同じ位置または近傍位置にあることが好ましい。「近傍位置にある」は、実質的に同じ位置であることを含み、ベンチレーション機能を発揮できるような位置関係であって、通気部同士の相対的位置関係が、部分的に重なっているだけでもよい。また、それぞれの通気部が、同じ形状、同じサイズである必要はない。また、それぞれの通気部を開口した状態の開口形状、開口サイズのそれぞれが同じである必要はない。また、着衣状態において、それぞれの通気部の開口部分が同じ位置、近傍位置、それぞれの開口部分の重なり具合が大きくなるような位置等に設定してある方が、開閉のし易さ、温度調整、湿度調整のし易さの観点から好ましい。また、着衣状態で通気部同士が平行になるように設定してある方が、開閉動作がし易く、それらを開いた際には開口部分同士が重なるためベンチレーション機能が高いものとなる。また、通気部同士は、平行以外にクロス状に重なるように設定されていてもよい。
【0013】
また、上記発明において、前記アウターウェアの前記通気部が当該アウターウェアのフロント部に位置し、当該アウターウェアの通気部の位置に対応するように、前記内層ウェアの前記通気部が当該内層ウェアのフロント部に位置することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、それぞれの通気部をフロント部に設けていることで、前からの空気流や風を受けやすく、より素早く体温の降下や汗の乾燥を行える。フロント部に少なくとも一つの通気部を設け、さらにウェア側部に通気部を設けてもよく、フロント部から側部に伸びるように通気部を設けることもできる。
【0015】
また、それぞれの通気部をフロント部に設ける場合に、肩から脇にかけての部分を除いたフロント部に通気部を設けることがより好ましい。肩から脇にかけての部分、腰周囲およびバック部にザックやリュック等を背負っている場合には、この部分に通気部を設けてもベンチレーションの効果が低いと推察されるからである。
【0016】
また、上記発明の一実施形態において、前記内層ウェアが1着であり、前記アウターウェアの下に着衣される当該内層ウェアに前記通気部が設けられ、前記第内層ウェアの下に着衣され着衣される1着または2着のベースウェアには前記通気部が設けられていない。肌から発生した汗を1着または2着のベースウェアで吸い上げ、アウターウェアおよび内層ウェアの通気部によってベースウェアの水分を素早く乾燥させることができる。
【0017】
また、上記発明の一実施形態において、前記内層ウェアが2着であり、前記アウターウェアの下に着衣される第1内層ウェアに前記通気部が設けられ、前記第1内層ウェアの下に着衣される第2内層ウェアに前記通気部が設けられ、前記第2内層ウェアの下に着衣される1着または2着のベースウェアには前記通気部が設けられていない。肌から発生した汗を1着または2着のベースウェアおよび第2内層ウェアで吸い上げ、アウターウェアおよび第1、第2内層ウェアの通気部によってベースウェアおよび第2内層ウェアの水分を素早く乾燥させることができる。2着のベースウェアとしては、例えば、肌面に直接触れる第1ベースウェアを撥水性生地で構成し、この上に着衣される第2ベースウェアと第2内層ウェアとを保温性、吸汗拡散性、調湿性等の生地で構成することができる。1着のベースウェアとしては、例えば、肌面に直接触れる生地側を撥水性層とし、内層ウェア側を吸汗拡散性層とした生地で構成することができる。
【0018】
また、他の本発明は、上記の重ね着用の衣服に用いられる、開閉可能な通気部を備えるアウターウェアである。
【0019】
また、他の本発明は、上記の重ね着用の衣服に用いられる、開閉可能な通気部を備える内層ウェアである。
【0020】
また、他の本発明は、開閉可能な通気部を備えるアウターウェアと肌との間に着衣される内層ウェアであって、
前記内層ウェアは、開閉可能な通気部を備える。
【0021】
この構成によれば、内層ウェアおよびアウターウェアに通気部が備えられていることで、体温を素早く下降(冷却)させることができ、また、素早く汗を乾燥させることができる(衣服内部の相対湿度を下降させることができる)。よって、従来のアウターウェアにのみ通気部が備わっていたものよりも、飛躍的にベンチレーション機能の効果を高めることができる。
【0022】
また、上記発明において、前記内層ウェアの前記通気部の位置と、前記アウターウェアの前記通気部の位置とが、着衣状態において同じ位置または近傍位置にあることが好ましい。また、前記アウターウェアの通気部を開口させて、前記内層ウェアの通気部の開閉が可能なように、当該内層ウェアの通気部の位置を設定することが好ましい。この構成によれば、着衣者がアウターウェアの通気部を開口させて、当該開口に手を入れて、内層ウェアの通気部を開口させることができるため、内層ウェアの通気部の開閉動作を、アウターウェアを脱衣することなく簡単に素早く行える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】通気部の形状および位置の例を示す図である。
【図2】通気部の形状および位置の例を示す図である。
【図3】通気部の形状および位置の例を示す図である。
【図4】通気部の形状および位置の例を示す図である。
【図5】通気部の形状および位置の例を示す図である。
【図6】通気部の形状および位置の例を示す図である。
【図7】通気部の形状および位置の例を示す図である。
【図8】通気部の開口状態の例を示す図である。
【図9】通気部の開口状態の例を示す図である。
【図10】通気部の開口状態の例を示す図である。
【図11】通気部の開口状態の例を示す図である。
【図12】通気部の開口状態の例を示す図である。
【図13】通気部の開口状態の例を示す図である。
【図14】重ね着した状態の例を示す図である。
【図15】重ね着した状態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(アウターウェアおよび内層ウェア)
アウターウェアは、その機能が特に制限されるものではないが、例えば、防寒性、防風性、防水性、耐雨性等を有していることが好ましい。また、内層ウェアは、肌側のベースウェアとアウターウェアとの間に着衣されるミドルウェアで構成される。ベースウェアおよびミドルウェアは、その機能から複数種の機能性を有するウェアで構成されていてもよく、必要に応じて複数のウェアを着衣して構成されていてもよい。ベースウェアの機能としては、例えば、撥水性、保温性、吸汗拡散性、調湿性等が挙げられ、ベースウェアとして、例えば、撥水性を有する第1ベースウェアと、保温性、吸汗拡散性および調湿性を備える第2ベースウェア等を重ね着あるいは単独で着衣することができる。また、ミドルウェアの機能としては、例えば、保温性、吸汗拡散性、防風性、透湿性、防水性等が挙げられ、ミドルウェアとして、例えば、保温性および吸汗拡散性を有する第1ミドルウェアと、防風性、保温性および防水透湿性を有する第2ミドルウェア等を重ね着または単独で着衣することができる。なお、ベースウェアおよびミドルウェアは、上記の機能を有するものに制限されず、使用目的に応じて機能を省略、別機能を追加可能である。
【0025】
また、アウターウェアおよび内層ウェアは、上半身用の衣服に限定されず、下半身用の衣服、例えば、タイツ、ズボン、あるいは全身用の衣服でもよい。下半身用の場合、例えば、アウターウェアとして防寒性、防風性、防水性等を有するズボンや、内層ウェアとして、例えば、タイツ、レギンス、ハーフパンツ等が挙げられる。
【0026】
また、衣服を構成するアウターウェア、内層ウェア(ミドルウェア)、ベースウェアの糸材料、縫製方法は特に制限されず、また、各種加工処理(例えば、撥水加工、UVカット加工等)も適宜施されていてもよい。
【0027】
(通気部)
通気部は、アウターウェアおよび内層ウェアのベンチレーション機能を発揮するために設けられる。通気部を設ける位置は、特に制限されず、上半身用の衣服の場合、例えば、フロント部(前面あるいは前身頃)、バック部(背面あるいは後身頃)、サイド部(側腹部や脇部)、上腕部等が挙げられる。好ましい実施形態として、前方からの空気流や風を受けやすく、より素早く体温の降下や汗の乾燥を行える観点から、アウターウェアの通気部が当該アウターウェアのフロント部に位置し、当該アウターウェアの通気部の位置に対応するように、内層ウェアの通気部が当該内層ウェアのフロント部に位置することが好ましい。また、下半身用の衣服の場合、例えば、大腿部や下腿部のフロント部(前面)、サイド部(側面)、バック部(後面)が挙げられる。
【0028】
また、それぞれの通気部をフロント部に設ける場合に、肩から脇にかけての部分を除いたフロント部に通気部を設けることがより好ましい。肩から脇にかけての部分にザックやリュック等を背負っている場合には、この部分に通気部を設けても開口面積が小さくなってベンチレーションの効果が低くなり、通気部の開閉動作もし難いからである。
【0029】
通気部の形状は、特に限定されず、例えば、直線、曲線、多角形、円、楕円、異形等でもよい。また、通気部が開口した状態の開口形状は、特に制限されず、楕円、円、多角形、異形等でもよい。ウェアごとの通気部の数は、一つか2つが好ましいが、それ以上でもよく、複数種類の形状の通気部を組み合わせてもよい。重ね着される通気部同士の形状は同じでもよく、異なる形状でもよい。
【0030】
図1〜7に通気部の位置の例を示す。図1は、フロント部の胸部下から脇腹に向かって伸びるハの字状通気部11、12である。図2は、胸部の逆さL字状通気部13である。図3は、胸部の上円弧状通気部14である。図4は、側面の線状通気部15である。図5は、上腕下部の線状通気部16である。図6は、上腕下部から脇を通って側面に伸びる線状通気部17である。図7は、胸部の線状通気部18と側面の線状通気部19である。なお、通気部の形状および位置は、図1〜7の形状、サイズおよび位置に限定されない。
【0031】
図8〜13に、図1〜7の通気部の開口状態の例を示す。図8〜10は、ハの字状通気部11、12の開口状態111、121の一例を示し、図8は正面図、図9および図10は側面図である。図10は、中央部を留めた状態にして二つの開口部を形成している状態である。図11は、胸部の逆さL字状通気部13の開口状態131の一例である。図12は、上円弧状通気部14の開口状態141の一例を示す。図13は、側面の線状通気部15の全開の開口状態151の一例を示す。なお、通気部の開口状態は、図8〜13の開口状態に限定されない。
【0032】
また、アウターウェアと内層ウェアの通気部同士、複数の内層ウェアの通気部同士が異なる形状の通気部の組み合わせであってもよい。例えば、アウターウェアの通気部としてハの字状通気部を採用し、ミドルウェアの通気部として、アウターウェアのハの字状通気部よりもサイズが小さいハの字状通気部を採用してもよく、胸部の線状通気部や側面の線状通気部を採用してもよい。アウターウェアのハの字状通気部と、ミドルウェアの胸部の線状通気部および側面の線状通気部とは、近傍位置に設定され、あるいはアウターウェアとミドルウェアの通気部の開口部分同士が重なるように設定されることが好ましい。
【0033】
通気部を開閉可能にするために、開閉自在の留め具を用いることが好ましい。このような留め具としては、例えば、通常のボタン、点ファスナー(例えば、スナップボタン)、線ファスナー(例えば、ジッパー、チャック)または面ファスナー(例えば、マジックテープ(登録商標))が挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上を適宜組み合わせて用いることもできる。通気部の開きは、全て開くことに限定されず、部分的に開いたり、留め具で一部分を閉じている状態でもよい。また、通気部の開閉部分を、ウェア生地の摩擦性または形状加工を利用して開閉自在に構成でき、例えば、開閉部分の生地同士が重なるようにして留める構成や、一方の生地にベロを設け他方の生地スリットを設け、ベロをスリットに挿入して折り返えして留める構成等が挙げられる。
【0034】
また、通気部は、メッシュ状または通気性を有する袋体(ポケット)または生地が、裏地または裏当てとして着脱自在に設けられていてもよく、縫い付け等で固定されていてもよい。通気部を開いた状態で、当該袋体または生地を通じてベンチレーション機能を発揮する。また、通気部がポケット機能を兼用していてもよい。
【0035】
また、着衣状態において、アウターウェアの通気部の位置と、少なくとも1着の内層ウェアの通気部の位置とが同じ位置または近傍位置にあることが好ましい。それぞれの通気部の位置が同じ位置または近傍位置に位置していれば、それぞれの通気部を開口した状態でのベンチレーション機能を効果的に発揮できる。それぞれの通気部の位置関係に関係なく、それぞれの通気部の形状、サイズ等が同じである必要はなく、通気部を開口した状態の形状、サイズ等も同じである必要はない。着衣者が望む着衣状態の湿度、温度環境を維持、あるいは素早く改善できるように、それぞれの通気部の開口状態を選択できるように開閉可能に構成することが好ましい。
【0036】
図14、15は、最上部にアウターウェア1、中間部にミドルウェア2、肌と直接接する部分にベースウェア3を重ね着する一例を示す。図14に示すように、アウターウェア1には、ハの字状通気部12(図14ではハの字の一方のみを示す)が設けられ、ミドルウェア2にも同様に、ハの字状通気部22(図14ではハの字の一方のみを示す)が設けられている。それぞれの通気部の留め具は線ファスナー(チャック)である。図15は、上記3種類を重ね着した状態で、アウターウェア1の通気部12を開口させた状態と、ミドルウェア2の通気部22を開口させた状態を示す。
【0037】
また、アウターウェアの通気部の直ぐ下に通気部を備えた内層ウェアが着衣されることがベンチレーション機能を向上の観点から好ましい。また、通気部は、防水性、防風性、低透湿性または低通気性の生地を有するウェアに設けられることが好ましい。また、通気部を備えたアウターウェアと通気部を備えた内層ウェアとの間に、透湿性および/または通気性を有するウェア(内層ウェア)を着衣させることもできる。また、肌に直に触れるベースウェアには開閉可能な通気部を備えさせず、透湿性および/または通気性の生地でベースウェアを構成しておくこともできる。
【0038】
また、着衣状態において、アウターウェアの通気部を開口させて、内層ウェアの通気部の開閉が可能なように、当該内層ウェアの通気部の位置を設定することが好ましい。すなわち、着衣者がアウターウェアの通気部を開口させて、当該開口に手を入れ、内層ウェアの通気部を開口させることができ、内層ウェアの通気部の開閉動作を、アウターウェアの脱衣動作をすることなく簡単に素早く行える。
【0039】
(実施例)
2種類のベースウェアと2種類のミドルウェアとアウターウェアの合計5種類のウェアを重ね着し、2種類のミドルウェアおよびアウターウェアの通気部をすべて全開にした条件(実施例1)と、アウターウェアの通気部のみを全開にした条件(比較例1)と、通気部を全閉にした条件(比較例2)とのそれぞれにおけるベンチレーション機能として温度および湿度の両方で評価した。
【0040】
ベースウェアとして、肌側に撥水加工された第1ベースウェア(株式会社finetrack「ドライレイヤー(DRY LAYER(登録商標))」:ポリエステル100%)をサーマルマネキンに着衣し、この第1ベースウェアの上に、吸汗拡散性、保温性、調湿性の第2ベースウェア(株式会社finetrack「ベースレイヤー」:ウール17%、ポリエステル83%)を重ね着した。ミドルウェアとして、吸汗拡散性、保温性の第1ミドルウェア(株式会社finetrack「ミドルレイヤー」:ポリエステル100%)を上記ベースウェアの上に重ね着し、その上に、防風性、保温性、透湿性の第2ミドルウェア(株式会社finetrack「ミッドシェル(mid shell(登録商標))」:表地:ポリエステル100%、裏地:ポリエステル100%生地に防水透湿性フィルムをラミネート)を重ね着した。さらに、アウターウェアとして、防寒性、防風性、防水性のウェア(株式会社finetrack「アウターシェル」:表地:ナイロン100%、裏地:ポリエステル100%生地に防水透湿性フィルムをラミネート)をミドルウェアの上に重ね着した。それぞれの通気部は、図1に示すように、胸下から側腹に向かうハの字状通気部であり、留め具にチャックを用い、それぞれの開口サイズは同じになるように設定した。
【0041】
(測定条件)
サーマルマネキンの表面温度を36℃に設定し、そのマネキンの周囲の環境温度を10℃にし、マネキンのフロント部に向かう風の風速を2m/secとした。第2ベースウェアの水分率を100%に調整した(ウェア全体で吸収できる最大の水分量を示している)。
【0042】
(湿度(ムレ)の軽減効果の比較)
第1ベースウェアと第2ベースウェアの間に湿度計をおき、測定値がほぼ定常となったタイミング(約15分後)で湿度を測定した。すべての通気部を全開にした実施例1は、63.0%RH、アウターウェアの通気部のみ全開にした比較例1は、77.0%RH、通気部を全て閉じていた比較例2は、88.3%RHであった。実施例1の湿度は、比較例1のそれより14%も湿度が低下しており、このことから、実施例1は、比較例1よりもムレを素早く解消して快適な衣服内部環境を実現したことを確認できた。
【0043】
(温度の低下効果の比較)
第2ベースウェアと第1ミドルウェアの間に温度計をおき、測定値がほぼ定常となったタイミング(約15分後)で温度を測定した。すべての通気部を全開にした実施例1は、19.1℃、アウターウェアの通気部のみ全開にした比較例1は、23.7℃、通気部を全て閉じていた比較例2は、27.0℃であった。実施例1の温度は、比較例1のそれより4.6℃も温度が低下しており、このことから、実施例1は、比較例1よりも、暑さを感じる温度から運動時に快適と感じる温度まで素早く低下できたことを確認できた。
【符号の説明】
【0044】
1 アウターウェア
2 ミドルウェア
3 ベースウェア
11、12 ハの字状通気部
111、121 ハの字状通気部の開口状態
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターウェアと、当該アウターウェアより内層に着衣される1着または1着以上の内層ウェアとを有する重ね着用の衣服であって、
前記アウターウェアおよび少なくとも1着の内層ウェアが、開閉可能な通気部を備える重ね着用の衣服。
【請求項2】
前記アウターウェアの前記通気部の位置と、前記前記アウターウェアの下に着衣される少なくとも1着の内層ウェアの前記通気部の位置とが、着衣状態において同じ位置または近傍位置にある、請求項1に記載の重ね着用の衣服。
【請求項3】
前記アウターウェアの前記通気部が当該アウターウェアのフロント部に位置し、当該アウターウェアの通気部の位置に対応するように、前記内層ウェアの前記通気部が当該内層ウェアのフロント部に位置する、請求項1または2に記載の重ね着用の衣服。
【請求項4】
前記内層ウェアが1着であり、前記アウターウェアの下に着衣される当該内層ウェアに前記通気部が設けられ、前記第内層ウェアの下に着衣され着衣される1着または2着のベースウェアには前記通気部が設けられていない、請求項1〜3のいずれ1項に記載の重ね着用衣服。
【請求項5】
前記内層ウェアが2着であり、前記アウターウェアの下に着衣される第1内層ウェアに前記通気部が設けられ、前記第1内層ウェアの下に着衣される第2内層ウェアに前記通気部が設けられ、前記第2内層ウェアの下に着衣される1着または2着のベースウェアには前記通気部が設けられていない、請求項1〜3のいずれ1項に記載の重ね着用衣服。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の重ね着用の衣服に用いられる、開閉可能な通気部を備えるアウターウェア。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の重ね着用の衣服に用いられる、開閉可能な通気部を備える内層ウェア。
【請求項8】
開閉可能な通気部を備えるアウターウェアと肌との間に着衣される内層ウェアであって、
前記内層ウェアは、開閉可能な通気部を備える、内層ウェア。
【請求項9】
前記内層ウェアの前記通気部の位置と、前記アウターウェアの前記通気部の位置とが、着衣状態において同じ位置または近傍位置にある請求項8に記載の内層ウェア。
【請求項1】
アウターウェアと、当該アウターウェアより内層に着衣される1着または1着以上の内層ウェアとを有する重ね着用の衣服であって、
前記アウターウェアおよび少なくとも1着の内層ウェアが、開閉可能な通気部を備える重ね着用の衣服。
【請求項2】
前記アウターウェアの前記通気部の位置と、前記前記アウターウェアの下に着衣される少なくとも1着の内層ウェアの前記通気部の位置とが、着衣状態において同じ位置または近傍位置にある、請求項1に記載の重ね着用の衣服。
【請求項3】
前記アウターウェアの前記通気部が当該アウターウェアのフロント部に位置し、当該アウターウェアの通気部の位置に対応するように、前記内層ウェアの前記通気部が当該内層ウェアのフロント部に位置する、請求項1または2に記載の重ね着用の衣服。
【請求項4】
前記内層ウェアが1着であり、前記アウターウェアの下に着衣される当該内層ウェアに前記通気部が設けられ、前記第内層ウェアの下に着衣され着衣される1着または2着のベースウェアには前記通気部が設けられていない、請求項1〜3のいずれ1項に記載の重ね着用衣服。
【請求項5】
前記内層ウェアが2着であり、前記アウターウェアの下に着衣される第1内層ウェアに前記通気部が設けられ、前記第1内層ウェアの下に着衣される第2内層ウェアに前記通気部が設けられ、前記第2内層ウェアの下に着衣される1着または2着のベースウェアには前記通気部が設けられていない、請求項1〜3のいずれ1項に記載の重ね着用衣服。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の重ね着用の衣服に用いられる、開閉可能な通気部を備えるアウターウェア。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の重ね着用の衣服に用いられる、開閉可能な通気部を備える内層ウェア。
【請求項8】
開閉可能な通気部を備えるアウターウェアと肌との間に着衣される内層ウェアであって、
前記内層ウェアは、開閉可能な通気部を備える、内層ウェア。
【請求項9】
前記内層ウェアの前記通気部の位置と、前記アウターウェアの前記通気部の位置とが、着衣状態において同じ位置または近傍位置にある請求項8に記載の内層ウェア。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−46859(P2012−46859A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138589(P2011−138589)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(504113190)株式会社finetrack (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(504113190)株式会社finetrack (5)
【Fターム(参考)】
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