説明

重合トナーの製造方法

【課題】懸濁重合法によるトナーの製造方法における重合工程において、重合容器内壁、撹拌手段表面、邪魔板表面への重合体付着物の生成を抑制することのできる重合法トナーの製造方法を提供する。
【解決手段】重合工程の開始時に該水系媒体中に炭素数4以下かつ沸点が85℃以上であるアルコールを添加し、重合体付着物の起因物質である水系媒体中で乳化安定化した重合性単量体を解乳化させることにより、重合体付着物の生成を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法等に用いられる、静電荷像を現像するための重合トナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法に用いられるトナー粒子の製造方法として、重合性単量体を液滴状に分散させ、重合を行なうことによりトナー粒子を得る懸濁重合法が提案されている。懸濁重合法において、溶解工程では重合性単量体、着色剤、離型剤、更に必要に応じて架橋剤、荷電制御剤及びその他の添加剤を均一に溶解又は分散せしめて重合性単量体組成物を調製する。さらに、分散安定剤を含有する水系媒体中に適当な撹拌機または分散機を用いて重合性単量体組成物を分散せしめる造粒工程、重合反応を行なわせる重合工程を経て、所望の粒径を有する重合トナー粒子の懸濁液を得る。
【0003】
重合工程においては、重合容器内壁、撹拌機表面などへ重合性単量体が付着し、これがそのまま重合した重合体付着物が課題となっている。この付着物を放置した場合、その量は重合工程回数を重ねる度に増大し、著しい場合には重合容器の伝熱性能を低下させ重合反応の安定性に悪影響を与える。また、この重合体付着物が剥離して脱落し製品であるトナーに混入すると、トナー性能に悪影響を及ぼす。
【0004】
近年、黒色トナーの着色剤として磁性体を用いて懸濁重合法で製造した重合トナーが提案されている(特許文献1)。このトナーに使用される磁性体は、トナー中の分散性改良のために表面に疎水化処理が施されている。この磁性体を用いて重合トナーを製造しようとすると、前記した重合体付着物が著しく発生することがあった。
【0005】
重合性単量体が付着する原因のひとつとして、着色剤として表面に疎水化処理を施した磁性体を用いていることが考えられる。疎水化処理剤は磁性酸化鉄表面に化学結合されているが、磁性酸化鉄表面に対して過剰量の疎水化処理剤があると、それらは化学結合せずに磁性酸化鉄表面に物理的に付着して存在するようになる。化学結合せず表面に付着しているだけの疎水化処理剤は、溶解工程や造粒工程において撹拌機または分散機の剪断力により磁性酸化鉄表面から剥離し水系媒体中に溶出する。溶出した疎水化処理剤には乳化剤としての性質があり、重合性単量体組成物の粒子から遊離した重合性単量体を水系媒体中で乳化安定化させる。すると、乳化安定化した重合性単量体がやがて重合容器内壁等に付着し、これがその場で重合し、重合体付着物となる。重合体付着物は重合工程終了後も重合容器内に残留する。
【0006】
重合体付着物の発生を抑制する手法としては、水系媒体中で乳化安定化した重合性単量体をアルコールによって解乳化する方法がある。水系媒体中にアルコールを含有させる技術として特許文献2がある。しかしながら、疎水化処理が施された磁性体を用いる重合トナー製法において、特許文献2に記載された技術では、重合初期での水系媒体中のアルコール量が重合体付着物の発生の抑制には不十分であった。
【0007】
また、同様の技術として特許文献3がある。しかしながら特許文献3に記載されている技術では水系媒体中のアルコール濃度が高く、アルコールが分散安定剤に吸着するために水系媒体中でのトナー粒子の分散安定性が損なわれる。このため、トナー粒子の粒度分布のブロード化を引き起こし、トナー性能を満たすものとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−235897号公報
【特許文献2】特WO05/093521
【特許文献3】特開2000−355639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、着色剤として表面に疎水化処理が施された磁性体を含有する重合トナーの製造における重合工程にて、重合容器内に重合体付着物の生成を抑制させる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、以下の方法を見出した。
(1)i)重合性単量体と表面に疎水化処理が施された磁性体とを少なくとも含有する重合性単量体組成物を水系媒体に加え、造粒して、該重合性単量体組成物の粒子を形成する造粒工程と、
ii)該粒子に含まれる該重合性単量体を重合する重合工程とを有する重合トナーの製造方法であって、
該重合工程の開始時、該水系媒体中に、炭素数1以上4以下であり、沸点が85℃以上であるアルコールを添加することを特徴とする重合トナーの製造方法。
(2)該水系媒体中における炭素数1以上4以下かつ沸点85℃以上のアルコール濃度をAとした時、該重合性単量体の重合転化率30%時において2100ppm≦A≦6000ppmの範囲内であることを特徴とする、(1)に記載の重合トナーの製造方法。
(3)該重合性単量体の重合転化率が80%に達するまでの間、該水系媒体中に炭素数1以上4以下かつ沸点85℃以上アルコールを添加することにより、水系媒体中の炭素数1以上4以下かつ沸点85℃以上のアルコール濃度が2100ppm以上6000ppm以下であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の重合トナーの製造方法。
(4)重合が行なわれる重合装置は、少なくとも重合容器を有し、該重合容器内では、該重合性単量体組成物の粒子を有する該水系媒体の液相部と、気相部とが形成され、
該重合容器には該気相部を排気するためのベント配管およびキャリアガスの導入口が設けられ、
該重合性単量体の重合転化率が80%に達するまでの間、該気相部に40℃以上120℃以下である温度のキャリアガスを導入しながら、該気相部で発生した揮発成分を該ベント配管から排気することを特徴とする、(1)乃至(3)の何れかに記載の重合トナーの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば重合トナー粒子製造時の重合工程において、重合容器内に生成する重合体付着物の発生を抑制することができる。これにより重合体付着物による熱伝導の阻害、重合体付着物の脱落による配管の閉塞などを防ぎ、重合体付着物の除去作業が減り生産性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の方法における具体的な重合トナー粒子の製造方法を以下に記載するが、本発明は該記載に限定されることはない。
【0013】
(溶解工程)
重合性単量体中に少なくとも表面に疎水化処理が施された磁性体を混合・撹拌し、重合性単量体組成物を調製する。
【0014】
(造粒工程)
溶解工程の後、重合性単量体組成物を造粒容器へ移送する。ここで通常の撹拌機または分散機を用いて、分散安定剤を含有する水系媒体中に重合性単量体組成物を分散し、重合性単量体組成物分散液を得る。
【0015】
重合開始剤の添加は造粒工程以降であれば任意の時期と所要時間で行なうことができるが、重合性単量体の重合転化率が90%に達する前に終了することが開始剤効率の点で望ましい。
【0016】
(重合工程)
造粒工程の後、重合性単量体組成物分散液を重合容器へ移送し重合を行なう。重合工程では重合性単量体組成物分散液を所定の温度に保ちながら撹拌し、重合体微粒子分散液を得る。重合容器には造粒容器に用いるものと同様の撹拌手段を使用することができる。重合温度は40℃以上、好ましくは50乃至90℃で行なわれる。
【0017】
先の溶解工程と造粒工程において、撹拌機或いは分散機の剪断力により、磁性酸化鉄表面に化学結合せずに付着している疎水化処理剤が剥離し水系媒体中に溶出してしまう。溶出した疎水化処理剤は乳化剤としてはたらき、重合性単量体組成物の粒子から水系媒体中に遊離した重合性単量体や、蒸気中から水系媒体中に還流した重合性単量体を水系媒体中で乳化安定化させる。乳化安定化した重合性単量体を放置しておくと、重合容器内壁や撹拌機表面などへ付着し、やがてその場で重合を開始する。このようにして重合容器内は重合体付着物が多く発生する。重合性単量体の乳化を抑制するためには、重合容器へ重合性単量体組成物分散液を移送が終了した時点(このときを重合開始時とする)で、アルコールを重合容器内へ添加することが効果的である。添加されたアルコールは、乳化安定化した重合性単量体を解乳化する作用をもつ。解乳化された重合性単量体は水系媒体中で不安定となるため、重合性単量体組成物の粒子に戻るか、蒸発して液相から気相部へと移動する。
【0018】
添加するアルコールは炭素数が1以上4以下で親水性が高く水系媒体中に溶解するものがよい。炭素数が5以上であると、水への溶解度が低下し水系媒体中に均一に分散されず、乳化されたアルコールを効率的に解乳化することができない。炭素数4以下のアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、アリルアルコールなどが挙げられる。
【0019】
さらに、沸点が85℃以上のアルコールは、重合工程中において蒸発しにくく水系媒体中に滞留するため、乳化された重合性単量体を効率的に解乳化することができる。沸点が85℃以上のアルコールとしては、例えば、アリルアルコール(97℃)、n−プロピルアルコール(97℃)、n−ブチルアルコール(沸点117℃)、iso−ブチルアルコール(沸点108℃)、sec−ブチルアルコール(沸点100℃)、n−ペンタノール(137.5℃)などが挙げられる。
【0020】
よって、炭素数1以上4以下と沸点85℃以上の両者を満足するアルコールとしては、アリルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコールなどが挙げられる。
【0021】
また、重合開始時に添加するアルコール量は、重合性単量体の重合転化率が30%に達した時点で水系媒体中に2100ppm以上6000ppm以下の範囲で含有されていると、乳化した重合性単量体の解乳化が十分に進行されるため好ましい。水系媒体中のアルコール濃度が2100ppmを下回ると、アルコール量が少ないために乳化した重合性単量体の一部が解乳化されず、乳化安定化した重合性単量体が重合容器内壁などに付着し、重合体付着物となる。また、水系媒体中のアルコール濃度が6000ppmを超えると、トナー粒子の粒度分布がブロード化し、収率が低下する。これは、水系媒体中のアルコール濃度が高くなると、アルコールが分散安定剤に吸着するために水系媒体中でのトナー粒子の分散安定性が損なわれることが原因と考えられる。
【0022】
重合性単量体の転化率が30%を超えても、転化率80%に達するまでは水系媒体中に未反応の重合性単量体が多く存在するため、アルコール濃度が2100ppm以上6000ppm以下の範囲内になるよう、アルコールを追加するなどして調製する。転化率が80%に達するまでは、上記濃度範囲で水系媒体中にアルコールを含有させておくとさらに重合体付着物の抑制に効果的である。2100ppm未満では水系媒体中のアルコール量が乳化安定化した重合性単量体を解乳化するのに十分ではなく、6000ppm超であるとトナー粒子の粒度分布がブロード化する。
【0023】
重合工程中の重合容器気相部は内圧の上昇を防ぐためベント配管を設け、大気開放にするのが普通である。しかし、重合性単量体を含む蒸気をそのまま外部に放出したのでは収率が低下するため、ベント配管に凝縮器を設け、蒸気を凝縮させ重合容器に戻すことが一般的には行なわれている。
【0024】
液相部に還流した重合性単量体は、一部は重合性単量体組成物の粒子に戻り、他の一部は再度蒸発して蒸気となる。しかし中には前述したように、水系媒体中へ溶出した疎水化処理剤によって水系媒体中で乳化安定化し、やがて重合容器の内壁や撹拌翼表面、邪魔板表面に移動し、その場で重合反応して強固な付着物となる。したがって、重合体付着物の発生をさらに効果的に抑制するためには、重合容器気相部での蒸気の凝縮および還流を抑制する必要がある。
【0025】
収率の低下を防ぐことと、蒸気の凝縮及び還流を抑制することの両立を目指すためには、重合性単量体の重合転化率が少なくとも80%に達するまでの間、重合容器に設けられたキャリアガスの導入口から気相部に温度が40℃以上120℃以下のキャリアガスを導入することが好ましい。重合転化率が80%に達するまでは未反応の重合性単量体が多く存在するため、蒸気の凝縮を防ぐ対策が必須である。キャリアガスの温度が40℃より小さいと重合温度より小さくなるため、蒸気の凝縮を防ぐことができない。また120℃より大きいと重合温度に対して大きすぎるため、重合温度のコントロールに対して悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0026】
ここで用いるキャリアガスは空気、窒素、水蒸気から選ばれる気体のうちの1種、または2種以上の混合気体である。いずれの気体も安価、安全であり、また重合阻害性も少ないため好適である。重合阻害性が大きいと重合性単量体の重合転化率が小さくなり、トナー粒子中に残留する未反応の重合性単量体が多くなる。このトナー粒子をトナーとして使用すると臭気として感じる可能性があるため好ましくない。
【0027】
キャリアガスに同伴されて重合容器外に取り出された重合性単量体蒸気は、ベント配管途中の凝縮器で凝縮され重合容器に戻らないように回収される。回収された重合性単量体は収率向上のために次回のトナー製造用の原料として使うこともできる。
【0028】
(蒸留工程)
未反応の重合性単量体や副生成物等の揮発成分(揮発性不純物)を除去するために、重合工程終了後蒸留工程を設けそれらを留去しても良い。蒸留工程は常圧もしくは減圧下で行なうことができる。
【0029】
重合体微粒子表面に付着した分散安定剤を除去する目的で、重合体微粒子分散液を酸またはアルカリで処理することもできる。その後、公知の固液分離法により、重合体微粒子は液相と分離されるが、酸またはアルカリ及びそれに溶解した分散安定剤を完全に取り除くため、再度水を添加して重合体微粒子を洗浄する。この工程を何度か繰り返し、十分な洗浄が行なわれた後に、再び固液分離してトナー粒子を得る。得られたトナー粒子は、公知の乾燥手段により乾燥され、必要であれば分級により所定外の粒径を有する粒子群を分離する。このとき分離された所定外の粒径を有する粒子群は最終的な収率の向上のために再利用しても良い。
【0030】
本発明により得られるトナーは、上述した重合法により得られる重合トナー粒子のみ、又は必要に応じて他の添加剤をトナー粒子に外添して得られる一成分現像剤であっても良い。
【0031】
本発明に好適に用いられる重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレンの如きスチレン誘導体類や、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体類が好適に用いられる。その他、メチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体類や、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルの如きビニルエステル類等が挙げられる。本発明では、上記した重合性単量体を単独で、あるいは二種以上組み合わせて使用する。上述の単量体の中でも、スチレン又はスチレン誘導体を単独もしくは混合して、又はそれらとほかの単量体と混合して使用することが、トナーの現像特性及び耐久性等の観点から好ましい。
【0032】
前記重合性単量体を重合させるために、重合開始剤を用いることができる。本発明においては重合性単量体組成物への取り込みが容易であることから、油溶性の重合開始剤が好適に用いられる。本発明に用いることができる重合開始剤としては、有機過酸化物系開始剤がある。さらに重合開始剤は10時間半減期温度が40℃以上60℃未満である重合開始剤が好ましい。10時間半減期温度が40℃未満では、重合反応を制御するのが困難になる可能性があり、粗大粒子が増えるなどトナー粒子の粒度分布がブロードとなる傾向にある。また、10時間半減期温度が60℃以上では重合反応の進行が遅くなる傾向にあり、長時間残存したモノマーが微粒子となる傾向にあり、結果としてトナー粒子の粒度分布はブロードとなりやすい。
【0033】
本発明で使用される重合開始剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシピバレート、スクシニックパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、及びジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネートといった有機過酸化物が挙げられる。さらに本発明においては、過酸化物系開始剤の中でも特に分解物としてアルコールを生成するものが、重合体付着物の発生を抑制できるため好適に用いられる。なかでもジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネートは、分解物として生成されるsec−ブチルアルコールが、水系媒体中で乳化安定化された重合性単量体を解乳化し、重合体付着物の発生を抑制できるため好ましい。
【0034】
本発明で用いられる磁性体は、着色剤の役割を兼ねる。本発明において重合トナー粒子中に含まれる磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄、鉄、コバルト、ニッケルのような金属、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0035】
これらの磁性体は平均粒径が2μm以下、好ましくは0.1乃至0.5μm程度のものが良い。上記磁性体のトナー粒子中への含有量は、重合性単量体100質量部に対して20乃至200質量部、特に好ましくは重合性単量体100質量部に対して40乃至150質量部が良い。
【0036】
これらの磁性体のトナー粒子中での分散性を向上させるために、本発明においては磁性酸化鉄の表面を疎水化処理する。疎水化処理には、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等のカップリング剤類が用いられるが、中でもシランカップリング剤が好ましく用いられる。シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0037】
本発明で用いられる離型剤としては、室温で固体状態のワックスがトナーの耐ブロッキング性、多数枚耐久性、低温定着性、耐オフセット性の点で好ましい。OHPに定着した画像の透光性を向上させるためには、特に直鎖状エステルワックスが好適に用いられる。
【0038】
本発明により製造されるトナーは、荷電制御剤を含有しても良い。荷電制御剤は、トナー粒子に対して外添することも可能であるが、重合性単量体組成物中への分散等により、トナー粒子の内部に添加することも可能である。
【0039】
また、例えば重合性単量体を重合させる場合に、各種架橋剤を用いることもできる。架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、4,4’−ジビニルビフェニル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等の多官能性化合物が挙げられる。
【0040】
重合性単量体組成物を水系媒体中に良好に分散させるための分散安定剤としては、一般に保護コロイド層を形成して立体障害による反発力を発現させる水溶性高分子と、静電気的な反発力を発現させて分散安定化を図る難水溶性無機化合物とに大別される。難水溶性無機化合物の微粒子は、酸やアルカリにより溶解するため、重合後に酸やアルカリで洗浄することにより溶解させて容易に除去することができるため、本発明において好適に用いられる。難水溶性無機化合物の中でも燐酸アルミニウム、燐酸マグネシウム、燐酸カルシウム、燐酸バリウム、燐酸亜鉛等の燐酸金属塩が好適に用いられる。さらに、燐酸カルシウム等の燐酸アルカリ土類金属塩が好ましい。例えばリン酸三カルシウムの場合、十分な撹拌下にリン酸三ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を投入混合することで懸濁重合法に好適な分散安定剤を得ることができる。
【0041】
懸濁重合のように水系媒体を用いる重合法の場合には、重合性単量体組成物に極性樹脂を添加することにより、離型剤の内包化の促進を図ることができる。水系媒体に懸濁した重合性単量体組成物中に極性樹脂が存在する場合、水に対する親和性の違いから、極性樹脂が水系媒体と重合性単量体組成物との界面付近に移行しやすいため、トナー粒子の表面に極性樹脂が偏在することになる。その結果トナー粒子はコア−シェル構造を有し、多量の離型剤を含有する場合でも離型剤の内包性が良好になる。
【0042】
また、シェルに用いる極性樹脂に溶融温度の高いものを選択すれば、低温定着を目的としてバインダー樹脂をより低温で溶融するような設計とした場合でも、保存中にブロッキング等の弊害の発生を抑制することができる。このような極性樹脂としては、トナー粒子の表面に偏在してシェルを形成した際に極性樹脂自身のもつ流動性が期待できることから、特に飽和又は不飽和のポリエステル系樹脂が好ましい。
【0043】
本発明の製造方法では、トナーへの各種特性付与を目的として外添剤を使用することができる。外添剤はトナーに添加した時の耐久性の点から、トナー粒子の平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。外添剤としては、例えば酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物、窒化ケイ素等の窒化物、炭化ケイ素等の炭化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機金属塩、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、カーボンブラック、シリカ等が用いられる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。以下に各測定および評価方法を示す。
【0045】
(1)重合性単量体の重合転化率
重合性単量体の重合転化率は、トナー粒子中の未反応スチレンの定量を、ガスクロマトグラフィー(GC)により、以下のようにして測定し、算出する。
【0046】
重合工程において重合性単量体組成物の分散液をサンプリングし、約0.4gを精秤しサンプルビンに入れる。これに精秤した約15gのアセトンを加えてフタをした後、よく混合し、発振周波数42kHz、電気的出力125Wの卓上型超音波洗浄器(例えば、商品名「B2510J−MTH」、ブランソン社製)にて超音波を30分間照射する。その後、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)を用いてろ過を行い、濾液2μlをガスクロマトグラフィーで分析する。そして、予めスチレンを用いて作成した検量線により未反応スチレンの量を算出し、アセトンで抽出した総スチレン量との比により、重合転化率を測定する。
【0047】
測定装置及び測定条件は、下記の通りである。
GC:HP社 6890GC
カラム:HP社 INNOWax(200μm×0.40μm×25m)
キャリアーガス : He(コンスタントプレッシャーモード:20psi)
オーブン:(1)50℃で10分ホールド、(2)10℃/分で200℃まで昇温、(3)200℃で5分ホールド
注入口:200℃、パルスドスプリットレスモード(20→40psi、until0.5分)
スプリット比:5.0:1.0
検出器:250℃(FID)
【0048】
(2)水系媒体中のアルコール濃度
水系媒体中のアルコールの定量は、上記(1)と同様のガスクロマトグラフィー(GC)によって測定する。
【0049】
重合工程において重合性単量体組成物の分散液をサンプリングし、減圧ろ過により固液分離を行なう。ろ液約2.0gを精秤しサンプルビンに入れる。これに精秤した約15gのアセトンを加えてフタをした後、よく混合し、(1)と同様の超音波洗浄器にて超音波を30分間照射する。その後、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)を用いてろ過を行い、濾液2μlをガスクロマトグラフィーで分析する。そして、予めターゲットのアルコールを用いて作成した検量線によりアルコールの定量を行なう。
【0050】
測定装置及び測定条件は、(1)と同様である。
【0051】
(3)重合体付着物量の測定
重合体付着物を定量するために、重合容器内壁に容器内壁と同素材のテストピースを設置する。テストピースはグラスライニング製で、大きさは縦約10cm×約横5cm×厚さ約1mmである。重合容器内にこのテストピースを5個設置し、トナー粒子製造(3バッチ)後に重合容器から取り外して水中に浸して軽く水洗浄したあとに乾燥させ、重さを測定する。トナー粒子製造前のテストピースの重さとの差をとり、テストピース5個の重さ変化量の合計を重合体付着物量とする。
A:非常に良好なレベル(重合体付着物量が0.2g未満)
B:良好なレベル(重合体付着物量が0.2g以上0.7g未満)
C:問題ないレベル(重合体付着物量が0.7g以上1.5g未満)
D:許容レベル(重合体付着物量が1.5g以上3.5g未満)
E:悪いレベル(重合体付着物量が3.5g以上)
【0052】
(4)粒度分布のシャープさの評価
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
【0053】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0054】
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行なった。
【0055】
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
【0056】
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0057】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic DispensionSystem Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)および体積および個数基準メジアン径を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、「中位径」が体積基準メジアン径(Dv50)である。また、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「中位径」が個数基準メジアン径(Dn50)である。
(8)算出された各メジアン径を用い、下記式により粒度分布のシャープさを求めた。
粒度分布のシャープさ=体積基準メジアン径(Dv50)÷個数基準メジアン径(Dn50)
【0058】
上式の値が1に近いほど粒度分布がシャープであることを意味する。
A:非常に良好なレベル(Dv50/Dn50値が1.12未満)
B:良好なレベル(Dv50/Dn50値が1.12以上1.16未満)
C:問題ないレベル(Dv50/Dn50値が1.16以上1.20未満)
D:許容レベル(Dv50/Dn50値が1.20以上1.24未満)
E:悪いレベル(Dv50/Dn50値が1.24以上)
【0059】
(4)高温オフセット
オフセット温度の決定は、記録材先端中央部に5cm×5cm面積のベタ画像(トナー量1.05乃至1.15mg/cm2)を作像したものを通紙した。このとき記録材の通紙方向後端部に、ホットオフセット現象(定着画像の一部が定着器の部材表面に付着し、更に、次周回で記録材上に定着する現象)が生じた時点の定着加熱部表面の温度を測定した。上記の温度をホットオフセット現象発生温度とし、以下の評価基準に基づいて評価した。
A:非常に良好なレベル(190℃以上)
B:良好なレベル(185℃以上190℃未満)
C:問題ないレベル(180℃以上185℃未満)
D:許容レベル(175℃以上180℃未満)
E:悪いレベル(175℃未満)
【0060】
<実施例1>
イオン交換水709質量部に0.1mol/リットル−Na3PO4水溶液451質量部を投入し60℃に加温した後、1.0mol/リットル−CaCl2水溶液67.7質量部を徐々に添加してCa3(PO42を含む水系媒体を造粒容器内で調製した。
【0061】
(溶解工程)
下記の処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合した。
・スチレン 74質量部
・n−ブチルアクリレート 26質量部
・飽和ポリエステル樹脂(1) 3質量部
(モノマー構成;ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物/テレフタル酸/イソフタル酸、酸価;7mgKOH/g、Tg(ガラス転移温度)=69℃、Mn(数平均分子量)=4200、Mw(重量平均分子量)=9000)
・負荷電性制御剤 2質量部
(T−77;モノアゾ染料系のFe化合物(保土谷化学工業社製))
・磁性体 90質量部
(シランカップリング剤n−C817Si(OC253を磁性酸化鉄100質量部に対し1.2質量部添加して調製。個数平均粒径;0.28μm、磁場79.6kA/m(1000エルステッド)における飽和磁化及び残留磁化;67.6Am2/kg(emu/g)、3.9Am2/kg(emu/g))
上記の分散液を60℃に加温し、そこに日本精蝋社製;HNP−9(ポリエチレンワックス、DSC吸熱メインピーク=78℃)18質量部を混合溶解して重合性単量体組成物を得た。
【0062】
(造粒工程)
前記水系媒体中に重合性単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてクレアミックス(エム・テクニック社製)にて7,000rpmで15分間分散し造粒を行い、重合性単量体組成物分散液を得た。また、重合開始剤としてジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート7部を、造粒を開始してから5分後に造粒容器中へ投入した。
【0063】
(重合工程)
重合性単量体組成物分散液を造粒容器から重合容器へ移送し、移送が終わった時点(重合工程開始時する)でsec−ブチルアルコールを水系媒体中の水の量に対して2600ppm添加した。重合容器内壁には予め重合体付着物量の測定の為のテストピースを設置した。重合性単量体組成物分散液の温度を70℃に調製し、フルゾーン翼(神鋼パンテック社製)で5時間撹拌を行い重合させた。
【0064】
重合性単量体組成物の重合転化率30%時に水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度を測定したところ、3000ppmであった。この濃度は、重合開始剤の分解物として生成されるsec−ブチルアルコールと、重合工程開始時に添加したsec−ブチルアルコールとを合算した濃度であると考えられる。また、重合転化率50%時にsec−ブチルアルコールを追加添加し、重合転化率が80%のときに水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度が3200ppmとなるよう調製した。さらに重合容器内気相部には重合性単量体の重合転化率が80%となるまでの間、70℃に調節した窒素ガスを導入した。これにより、重合容器内の蒸気は窒素に同伴されベント配管より重合容器外に排気された。排気された蒸気はベント配管途中の凝縮器により凝縮され、重合容器に戻らないように回収した。
【0065】
(粒子洗浄/固液分離/乾燥)
得られた重合体微粒子分散液に塩酸を添加して撹拌し、重合体微粒子を覆ったリン酸三カルシウムを溶解した後に、加圧ろ過器で固液分離し、重合体微粒子を得た。これを水中に投入して撹拌し、再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。重合体微粒子の水への再分散と固液分離とを、リン酸三カルシウムが十分に除去されるまで繰り返し行なった後に、最終的に固液分離した重合体微粒子を、気流式乾燥機によって十分に乾燥してトナー粒子を得た。得られたトナー粒子の粒度分布を測定した。その測定値の評価結果を表1に示す。
【0066】
さらに得られたトナー粒子に疎水系シリカ微粉体を外添してトナー(一成分現像剤)とした。このトナーを用いて高温オフセット評価を行なった。評価結果を同様に表1に示す。
【0067】
(重合体付着物量の測定)
上記のトナー粒子の製造後に、同じ重合容器を用いてさらに2度、同様のトナー粒子製造を行なった。合計3度、重合工程を経た後に重合容器内に設置したテストピースを取り外し、その重さを計った。テストピースの重さの変化量から、重合容器内の重合体付着の状態を評価した。評価結果を表1に示す。
【0068】
<実施例2>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0069】
重合工程において、重合開始時にn−プロピルアルコールを水系媒体中の水の量に対して2600ppmを添加した。その後、重合性単量体の重合転化率30%時に水系媒体中のアルコール濃度(n−プロピルアルコールとsec−ブチルアルコールを合算した濃度)を測定したところ3000ppmであった。さらに、重合転化率50%時にsec−ブチルアルコールを追加添加し、重合転化率が80%のときに水系媒体中のアルコール濃度が3200ppmとなるよう調製した。得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0070】
<実施例3>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0071】
重合工程において、重合開始時にn−ブチルアルコールを水系媒体中の水の量に対して2600ppm添加した。その後、重合性単量体の重合転化率30%時に水系媒体中のアルコール濃度(n−ブチルアルコールとsec−ブチルアルコールを合算した濃度)を測定したところ3000ppmであった。さらに、重合転化率50%時にsec−ブチルアルコールを追加添加し、重合転化率が80%のときに水系媒体中のアルコール濃度が3200ppmとなるよう調製した。得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0072】
<実施例4>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0073】
重合工程において、重合容器内気相部に重合性単量体の重合転化率が80%となるまでの間、120℃に調節した窒素ガスを導入した。
【0074】
得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0075】
<実施例5>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0076】
重合工程において、重合容器内の気相部に重合性単量体の重合転化率が80%となるまでの間、40℃に調節した窒素ガスを導入した。
【0077】
得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0078】
<実施例6>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0079】
重合工程において、重合容器内の気相部に重合性単量体の重合転化率が80%となるまでの間、130℃に調節した窒素ガスを導入した。
【0080】
得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0081】
<実施例7>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0082】
重合工程において、重合容器内の気相部に重合性単量体の重合転化率が80%となるまでの間、35℃に調節した窒素ガスを導入した。
【0083】
得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0084】
<実施例8>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0085】
重合工程において、重合容器内の気相部に重合性単量体の重合転化率が70%となるまでの間、70℃に調節した窒素ガスを導入した。
【0086】
得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0087】
<実施例9>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0088】
重合工程において、重合開始時にsec−ブチルアルコールを水系媒体中の水の量に対して5650ppm添加した。その後、重合性単量体の重合転化率30%時に水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度を測定したところ6000ppmであった。重合転化率80%時に同様に水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度を測定したころ、5600ppmであった。重合開始時以外に、アルコールの添加は行なわなかった。
【0089】
得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0090】
<実施例10>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0091】
重合工程において、重合開始時にsec−ブチルアルコールを水系媒体中の水の量に対して5600ppm添加した。その後、重合性単量体の重合転化率30%時に水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度を測定したところ6000ppmであった。さらに、重合転化率50%時にsec−ブチルアルコールを追加添加し、重合転化率が80%のときに水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度が6000ppmとなるよう調製した。得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0092】
<実施例11>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0093】
重合工程において、重合開始時にsec−ブチルアルコールを水系媒体中の水の量に対して5600ppm添加した。その後、重合性単量体の重合転化率30%時に水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度を測定したところ6000ppmであった。さらに、重合転化率50%時にsec−ブチルアルコールを追加添加し、重合転化率が80%のときに水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度が6100ppmとなるよう調製した。
【0094】
得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0095】
<実施例12>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0096】
重合工程において、重合開始時にsec−ブチルアルコールを水系媒体中の水の量に対して1700ppm添加した。その後、重合性単量体の重合転化率30%時に水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度を測定したところ2100ppmであった。さらに、重合転化率50%時にsec−ブチルアルコールを追加添加し、重合転化率が80%のときに水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度が3200ppmとなるよう調製した。
【0097】
得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0098】
<実施例13>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0099】
重合工程において、重合開始時にsec−ブチルアルコールを水系媒体中の水の量に対して1700ppm添加した。その後、重合性単量体の重合転化率30%時に水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度を測定したところ2100ppmであった。さらに、重合転化率50%時にsec−ブチルアルコールを追加添加し、重合転化率が80%のときに水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度が2100ppmとなるよう調製した。
【0100】
得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0101】
<実施例14>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0102】
重合工程において、重合開始時にsec−ブチルアルコールを水系媒体中の水の量に対して1700ppm添加した。その後、重合性単量体の重合転化率30%時に水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度を測定したところ2100ppmであった。さらに重合転化率50%時にsec−ブチルアルコールを追加添加し、重合転化率が80%のときに水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度が2000ppmとなるよう調製した。
【0103】
得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0104】
<実施例15>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0105】
重合工程において、重合開始時にsec−ブチルアルコールを水系媒体中の水の量に対して1600ppm添加した。その後、重合性単量体の重合転化率30%時に水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度を測定したところ2000ppmであった。さらに、重合転化率50%時にsec−ブチルアルコールを追加添加し、重合転化率が80%のときに水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度が3200ppmとなるよう調製した。
【0106】
得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0107】
<実施例16>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0108】
重合工程において、重合開始時にsec−ブチルアルコールを水系媒体中の水の量に対して5800ppm添加した。その後、重合性単量体の重合転化率30%時に水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度を測定したところ6100ppmであった。重合転化率80%時に、同様に水系媒体中のアルコール濃度を測定したころ、5700ppmであった。重合開始時以外に、アルコールの添加は行なわなかった。
【0109】
得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0110】
<比較例1>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0111】
重合工程において、重合開始時にアルコールを添加しなかった。重合性単量体の重合転化率30%時に水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度を測定したところ400ppmであった。さらに重合転化率80%時に、同様に水系媒体中のアルコール濃度を測定したころ、300ppmであった。
【0112】
得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0113】
<比較例2>
造粒工程および重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0114】
造粒工程において、重合開始剤としてジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート20部を、造粒を開始してから5分後に造粒容器中へ投入した。
【0115】
また、重合工程において、重合開始時にアルコールを添加しなかった。その後、重合性単量体の重合転化率30%時に水系媒体中のsec−ブチルアルコール濃度を測定したところ1400ppmであった。さらに重合転化率80%時に、同様に水系媒体中のアルコール濃度を測定したころ、1100ppmであった。
【0116】
得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0117】
<比較例3>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0118】
重合工程において、重合開始時にtert−ブチルアルコールを水系媒体中の水の量に対して2600ppm添加した。その後、重合性単量体の重合転化率30%時に水系媒体中のアルコール濃度(tert−ブチルアルコールとsec−ブチルアルコールを合算した濃度)を測定したところ3000ppmであった。さらに、重合転化率50%時にtert−ブチルアルコールを追加添加し、重合転化率が80%のときに水系媒体中のアルコール濃度が3200ppmとなるよう調製した。
【0119】
得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0120】
<比較例4>
重合工程を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子を製造した。
【0121】
重合工程において、重合開始時にn−ペンチルアルコールを水系媒体中の水の量に対して2600ppm添加した。その後、重合性単量体の重合転化率30%時に水系媒体中のアルコール濃度(n−ペンチルアルコールとsec−ブチルアルコールを合算した濃度)を測定したところ3000ppmであった。さらに、重合転化率50%時にでn−ペンチルアルコールを追加添加し、重合転化率が80%のときに水系媒体中のアルコール濃度が3200ppmとなるよう調製した。
【0122】
得られたトナー粒子の評価結果と、重合容器内の重合体付着状態の評価結果を表1に示す。
【0123】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)重合性単量体と表面に疎水化処理が施された磁性体とを少なくとも含有する重合性単量体組成物を水系媒体に加え、造粒して、該重合性単量体組成物の粒子を形成する造粒工程と、
ii)該粒子に含まれる該重合性単量体を重合する重合工程とを有する重合トナーの製造方法であって、
該重合工程の開始時、該水系媒体中に、炭素数が1以上4以下であり、沸点が85℃以上であるアルコールを添加することを特徴とする重合トナーの製造方法。
【請求項2】
該水系媒体中における炭素数1以上4以下かつ沸点85℃以上のアルコール濃度が、該重合性単量体の重合転化率30%時において、2100ppm以上6000ppm以下の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の重合トナーの製造方法。
【請求項3】
該重合性単量体の重合転化率が80%に達するまでの間、該水系媒体中に炭素数1以上4以下かつ沸点85℃以上のアルコールを添加することにより、水系媒体中の炭素数1以上4以下かつ沸点85℃以上のアルコール濃度が2100ppm以上6000ppm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の重合トナーの製造方法。
【請求項4】
重合が行なわれる重合装置は、少なくとも重合容器を有し、該重合容器内では、該重合性単量体組成物の粒子を有する該水系媒体の液相部と、気相部とが形成され、
該重合容器には該気相部を排気するためのベント配管およびキャリアガスの導入口が設けられ、
該重合性単量体の重合転化率が80%に達するまでの間、該気相部に40℃以上120℃以下である温度のキャリアガスを導入しながら、該気相部で発生した揮発成分を該ベント配管から排気することを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の重合トナーの製造方法。