説明

重合体組成物およびその製造方法

【課題】洗剤用途に用いられた場合に従来より一層改善された再汚染防止能を有する重合体組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
(メタ)アクリル酸系単量体およびジカルボン酸系単量体を必須とする単量体をポリアルキレングリコール構造を有する化合物の存在下で重合させる重合体組成物の製造方法であって、重合開始時の水の量が上記ポリアルキレングリコール構造を有する化合物の使用量100質量部に対し0〜120質量部であり、重合開始時のジカルボン酸系単量体の量が上記ポリアルキレングリコール構造を有する化合物の使用量100質量部に対し30〜800質量部であり、(メタ)アクリル酸系単量体の添加終了時における反応溶液に含まれる水の量が、上記ポリアルキレングリコール構造を有する化合物の使用量100質量部に対し100〜100,000質量部である、重合体組成物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体組成物およびその製造方法に関する。より詳しくは、ポリアルキレングリコール構造、(メタ)アクリル酸系単量体由来の構造、ジカルボン酸系単量体由来の構造を含む重合体を含有する重合体組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸系単量体から形成される重合体や、ポリアルキレングリコール構造を有する化合物を洗剤に配合することによって、再汚染防止率や洗浄力が向上することが知られている。
【0003】
しかし、(メタ)アクリル酸系単量体から形成される重合体(以下、「(メタ)アクリル酸系重合体」とも記載)と、ポリアルキレングリコール構造を有する化合物(以下、「PAG化合物」とも記載)とは、均一に混じり合わない。このため、(メタ)アクリル酸系重合体およびPAG化合物を有する洗剤を製造する際には、別々のタンクに保存しておき、製造時にそれぞれを取り出す必要がある。しかし、かような手法は、設備コストの増加を招く。更に洗剤が液状の場合、経時的に層分離する問題が生じることがある。
【0004】
そこで、(メタ)アクリル酸系重合体およびPAG化合物の双方を含む組成物の均一化およびその保存安定性を向上させる手段が所望されている。例えば、PAG化合物および(メタ)アクリル酸系重合体の双方を含む組成物を、原料製造工場から1つのタンクで洗剤製造工場へ搬送できれば、搬送コストが低くなる。また、洗剤製造工場においても、2種以上のタンクを備える必要がない。さらに、洗剤原料の供給システムも、簡素化されうる。更に洗剤が液状の場合であっても、経時的に層分離する問題が生じなくなる。
【0005】
かような要望に対する解決手段としては、(メタ)アクリル酸系重合体およびPAG化合物のグラフト重合体が考えられる。例えば、ポリエーテル化合物への、(メタ)アクリル酸および共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体のグラフト重合方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の方法によれば、実質的に溶媒を含まない重合反応系において、グラフト効率が高い均一なグラフト重合体が製造されうる。しかし、高分子量化および増粘してしまうことから、PAG化合物に対する(メタ)アクリル酸単量体の組成比を高くできない、生成物の色調が悪いという問題があった。このため、洗剤ビルダーとしては改良の余地があった。
【0006】
さらに、ポリアルキレンオキシドなどの幹に、アクリル酸などの単量体をグラフト重合させて、生分解性の水溶性グラフト重合体を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の方法により、実際にPAG化合物に(メタ)アクリル酸系単量体を水溶液中でグラフト重合させると、グラフト化していないPAG化合物、(メタ)アクリル酸系ポリマー、およびグラフト重合体の混合水溶液が生成するが、これらの混合水溶液は、放置しておくと、PAG化合物と(メタ)アクリル酸系ポリマーとが分離して、水溶液が不均一になってしまう。つまり、特許文献2に記載の方法によって製造されたグラフト重合体を含む重合体混合物は、均一性に関する保存安定性が悪かった。
【0007】
さらに、特許文献3には、(メタ)アクリル酸系単量体を、ポリアルキレングリコール構造を有する化合物存在下で重合させる、重合体混合物の製造方法であって、初期仕込み水の量が、ポリアルキレングリコール構造を有する化合物100質量部に対して90質量部未満であり、かつ、(メタ)アクリル酸系単量体の添加終了時における水の量が、ポリアルキレングリコール構造を有する化合物100質量部に対して、1〜100,000質量部である、重合体混合物の製造方法が開示されている。
上記方法によれば、得られる重合体混合物は、再汚染防止能に優れ、保存安定性に優れることから、製造される洗剤の品質が安定する。さらに、保存安定性の向上によって、洗剤製造の自由度が向上し、製造コストも削減されることが開示されている。
しかし、特許文献3の記載の方法によって製造された重合体混合物は、例えば液体洗剤等により多く配合できるように、界面活性剤との相溶性を改良する余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−53645号公報
【特許文献2】特開平3−177406号公報
【特許文献3】特開2004−331839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来、種々の重合体(組成物)が報告されてはいるものの、上述した現在の消費者ニーズに適応した重合体(組成物)が求められている。
そこで、本発明は、保存安定性(層分離等をおこし難い)に優れ、例えば洗剤用途に用いられた場合に従来より一層改善された再汚染防止能を有し、界面活性剤との相溶性に優れることから液体洗剤にも配合可能な重合体組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、本発明者らは特定の製造条件でポリアルキレングリコール構造を有する化合物(PAG化合物)の存在下でジカルボン酸系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体とを重合させると、得られた重合体組成物の経時安定性が良好でかつ再汚染防止能、界面活性剤との相溶性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリル酸系単量体とジカルボン酸系単量体を必須とする単量体(単量体成分)をポリアルキレングリコール構造を有する化合物の存在下で重合させる工程を含む重合体組成物の製造方法であって、重合開始時の水の量が上記ポリアルキレングリコール構造を有する化合物の使用量100質量部に対し0〜120質量部であり、重合開始時のジカルボン酸系単量体の量が上記ポリアルキレングリコール構造を有する化合物の使用量100質量部に対し30〜800質量部であり、(メタ)アクリル酸系単量体の添加終了時における反応溶液に含まれる水の量が、上記ポリアルキレングリコール構造を有する化合物の使用量100質量部に対し100〜100,000質量部である、重合体組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の重合体組成物は、保存安定性(層分離等をおこし難い)に優れ、かつ優れた再汚染防止能および界面活性剤との相溶性を有する。したがって、本発明の重合体組成物を洗剤組成物の原料として使用すれば、洗濯時における繊維への汚れの再付着を抑制する。よって、本発明の重合体組成物は、洗剤添加物として好ましく使用することができる。また、本発明の重合体組成物を液状薬剤組成物に配合した場合、良好な液状薬剤組成物の保存安定性を発現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<重合時の水分量>
本発明の製造方法は、(メタ)アクリル酸系単量体およびジカルボン酸系単量体を必須とする単量体(単量体成分)をポリアルキレングリコール構造を有する化合物の存在下で重合させる工程(重合工程)を含む重合体組成物の製造方法であって、重合開始時の水の量(但し重合開始時にジカルボン酸系単量体の無水物が存在する場合には、水と化学両論的に反応する為、存在するジカルボン酸系単量体の無水物のモル数を超えない範囲の水は「重合開始時の水の量」から除くこととする。)が上記ポリアルキレングリコール構造を有する化合物の使用量100質量部に対し0〜120質量部であり、(メタ)アクリル酸系単量体の添加終了時における反応溶液に含まれる水の量が、上記ポリアルキレングリコール構造を有する化合物の使用量100質量部に対し100〜100,000質量部である、重合体組成物の製造方法である。
【0014】
PAG化合物の存在下で(メタ)アクリル酸系単量体等を重合させる場合には、実質的に水が存在しない条件下、または多量の水が存在する条件下において、重合することが一般的である。これに対し、本発明の製造方法においては、重合体組成物の製造時に添加される水の量を制御することによって、製造される重合体組成物を含む溶液の保存安定性や再汚染防止能が向上する。なお、本願において、「保存安定性」とは、製造された重合体を含む重合体混合物を含む溶液が、保存時に安定して存在し、分離や変質が生じにくい程度を意味する。「再汚染防止能」とは、液体中の汚れ成分が再付着することを妨げる性能を意味する。例えば、本発明の重合体組成物が洗剤に配合される場合には、再汚染防止能は、洗剤の品質に大きな影響を与える重要な要素である。
【0015】
本発明において「重合開始時」とは、実質的に(メタ)アクリル酸系単量体の重合が開始する時であり、具体的には重合に使用する(メタ)アクリル酸系単量体の一部または全部、および重合に使用する重合開始剤の一部または全部の両方が反応容器(重合容器、重合釜)に添加された時である。また、本発明において「(メタ)アクリル酸系単量体の添加終了時」とは、重合に使用する(メタ)アクリル酸系単量体の全量が反応容器(重合容器、重合釜)に添加された時である。
【0016】
「重合開始時の水の量」とは、重合開始時に反応容器内(言い換えれば重合反応溶液中)に存在する水の量を表す(上記の通り、重合開始時にジカルボン酸系単量体の無水物が存在する場合には、水と化学両論的に反応する為、存在するジカルボン酸系単量体の無水物のモル数を超えない範囲の水は「重合開始時の水の量」から除くこととする。)。重合開始時の水の量は、PAG化合物100質量部に対して、120質量部以下である。重合開始時の水の量の下限値については、特に制限されない。重合開始時の水の量を少なくすることによって、得られる重合体組成物の再汚染防止能を向上させうる。また、重合開始時の水の量を少なくすることによって、保存安定性を向上させうる。重合開始時の水の量は、PAG化合物100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部であり、より好ましくは10〜90質量部であり、特に好ましくは10〜80質量部である。重合開始時の水の量がこの程度であると、製造される重合体組成物中に含まれる重合体の重量平均分子量を低下させうる。洗剤、スケール防止剤、分散剤、洗浄剤用ビルダーとして用いられる重合体は、分子量が小さくなるほど性能が向上する傾向がある。したがって、重合開始時の水の量がこの程度であると、性能を高める上で効果的である。また、重合開始前に昇温する際のジカルボン酸が昇華して反応容器に付着することを抑制できる。一方、重合開始時の水の量が多すぎると、保存安定性や界面活性剤との相溶性が低下する傾向にあるため、注意すべきである。
【0017】
本発明の製造方法においては、(メタ)アクリル酸系単量体の添加終了時における反応溶液に含まれる水の量が規定される。(メタ)アクリル酸系単量体の添加終了時における反応溶液に含まれる水の量とは、(メタ)アクリル酸系単量体の添加が終了した時点において、重合釜中(重合反応液中)に存在する水の量を意味する。
【0018】
(メタ)アクリル酸系単量体の添加終了時における反応溶液に含まれる水の量(以下、「添加終了時の水の量」とも言う)は、PAG化合物100質量部に対して、100〜100,000質量部である。但し、「添加終了時の水の量」は、「重合開始時の水の量」より増加させることが、重合体組成物を洗剤組成物に配合した場合の洗浄力が向上することから好ましい。添加終了時の水の量がこの範囲であると、製造される重合体組成物の再汚染防止能が向上しうる。また、添加終了時の水の量がこの範囲であると、保存安定性が向上する。添加終了時の水の量は、PAG化合物100質量部に対して、好ましくは100〜1,000質量部であり、より好ましくは150〜500質量部である。但し、ジカルボン酸系単量体としてジカルボン酸系単量体の無水物を使用するする場合には、水と化学両論的に反応する為、存在するジカルボン酸系単量体の無水物のモル数を超えない範囲の水は「滴下終了時の水の量」から除くこととする。
【0019】
上記の通り反応液に含まれる水の量を制御することにより、水の少ない条件下(例えば重合初期)にはPAG化合物と単量体とのグラフト重合(PAG化合物が幹、単量体が枝を構成する)が主として進行し、水の多い条件下(例えば重合後半)には単量体同士の重合が進行することとなる。中間的な構造の重合体も製造されることから、その存在により得られた重合体組成物が経時的に層分離することを抑制し、保存安定性が大きく向上することとなる。ジカルボン酸系単量体が所定量含まれると保存安定性や界面活性剤との相溶性がより良好となる。
【0020】
<ジカルボン酸系単量体>
本発明の製造方法は、重合開始時のジカルボン酸系単量体の量が上記ポリアルキレングリコール構造を有する化合物の使用量100質量部に対し30〜800質量部であることを特徴としている。本発明において「重合開始時のジカルボン酸系単量体の量」とは、重合開始時に反応容器内(言い換えれば重合反応溶液中)に存在するジカルボン酸系単量体の量を表す。重合開始時のジカルボン酸系単量体の量は、PAG化合物100質量部に対して、30質量部以上800質量部以下である。上記範囲であることによって、得られる重合体組成物の再汚染防止能を向上する傾向にある。また、上記範囲であることによって、保存安定性が良好となる傾向にある。重合開始時のジカルボン酸系単量体の量は、PAG化合物100質量部に対して、好ましくは40〜700質量部であり、より好ましくは60〜650質量部である。
なお、PAG化合物100質量部に対するジカルボン酸系単量体の量を計算する場合には、ジカルボン酸系単量体は対応する酸型換算で計算する。対応する酸型換算で計算するとは、例えばジカルボン酸系単量体がマレイン酸二ナトリウムである場合には、マレイン酸として質量を計算することを言い、ジカルボン酸系単量体がマレイン酸無水物である場合には、マレイン酸として計算することを言う。
本発明において使用可能なジカルボン酸系単量体とは、エチレン(CH=CH)の水素原子を置換する置換基の有するカルボキシル基の合計が2である単量体を意味する。二つのカルボキシル基は無水物を形成していても良い。ジカルボン酸系単量体としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、メチレングルタル酸、およびこれらの塩が例示される。塩としては、アンモニウム塩、有機アミン塩、金属塩が例示される。
【0021】
本発明の製造方法は、重合開始時のジカルボン酸系単量体の有するカルボキシル基の0〜50モル%が塩型構造であることが、重合時の高粘度化を抑制する観点から好ましい。カルボキシル基が塩型構造とは、例えばカルボキシル基のナトリウム塩型構造であれば、−COONa、で表される構造である。例えばマレイン酸モノナトリウム塩であれば、マレイン酸の有するカルボキシル基の50モル%が塩型構造である(すなわち2つのカルボキシル基の内の1つが塩型構造である)ということができる。
【0022】
重合開始時のジカルボン酸系単量体の有するカルボキシル基の0〜50モル%を塩型構造とするためには、(i)酸型のジカルボン酸系単量体、一塩型(ハーフ塩型)のジカルボン酸系単量体、二塩型のジカルボン酸系単量体を所望の中和度になるように組み合わせて、または単独で反応容器に添加する方法、(ii)酸型のジカルボン酸系単量体および/または一塩型(ハーフ塩型)のジカルボン酸系単量体と、カルボキシル基と中和可能なアルカリ性物質を別々に反応容器に添加する方法等が行なわれる。
上記アルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、モノエタノールアミン、メチルアミン等のアミン類、アンモニアが挙げられる。上記アルカリ性物質は水溶液として反応容器に添加しても良いが、分離安定性の良好な重合体組成物を製造するためには、可能なものはペレットまたは粉体として添加して重合開始時の水の量を低減することが好ましい。上記(ii)の方法によれば、中和反応で水が生成することになるが、重合開始時の水の量を低減する目的で、加熱および/または減圧条件で重合開始前に水を留去させても良い。
【0023】
本発明の製造方法において、ジカルボン酸系単量体は、全量重合開始以前に反応釜に添加することが好ましいが、一部を重合開始後に添加しても良い。本発明の製造方法におけるジカルボン酸系単量体の使用量は、PAG化合物と単量体(ジカルボン酸系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、その他の単量体)の合計の使用量100質量%に対し、14〜85質量%とすることが重合体組成物の再汚染防止能や界面活性剤との相溶性が向上する傾向にあることから好ましく、17〜80質量%とすることがより好ましく、20〜68質量%とすることがさらに好ましい。なお、上記使用量を計算する場合には単量体が酸基を有する場合には酸型換算で計算し、アミノ基を有する場合には対応するアミン換算で計算する。
【0024】
すなわち、本発明の重合体組成物に含まれる重合体は、ジカルボン酸系単量体に由来する構造単位をPAG化合物に由来する構造単位と単量体由来の構造単位の合計100質量%に対し、14〜85質量%有することが好ましく、17〜80質量%とすることがより好ましく、20〜68質量%とすることがさらに好ましく、25〜55質量%とすることが特に好ましい。本発明において「単量体由来の構造単位」とは、ジカルボン酸系単量体に由来する構造単位、(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構造単位、その他の単量体に由来する構造単位をいう。
なお、ジカルボン酸系単量体に由来する構造単位とは、ジカルボン酸系単量体が重合して生成する構造であり、例えばマレイン酸に由来する構造単位であれば、−CH(COOH)CH(COOH)−、で表すことができる。ジカルボン酸系単量体自体の構造単位、すなわち、例えばマレイン酸の場合において、CH(COOH)=CH(COOH)表される構造単位自体は(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構造単位に含まないものとする。
【0025】
<ポリアルキレングリコール構造を有する化合物(PAG化合物)>
本発明の重合体組成物は、重合反応系において、PAG化合物存在下で、(メタ)アクリル酸系単量体およびジカルボン酸系単量体を必須として重合させることによって、合成される。本願において重合体組成物中に含有される主として重合前半に形成されるグラフト重合体は、PAG化合物が幹ポリマーであり、(メタ)アクリル酸系単量体およびジカルボン酸系単量体等から形成されるポリマーが枝ポリマーである。
【0026】
PAG化合物は、ポリアルキレングリコール構造を有するのであれば、特に限定されない。ポリアルキレングリコール構造とは、下記一般式(1)で表される構造を意味する。
−(O−R)− 一般式(1)
(式中、Rはアルキレン基を表し、nは繰り返し数を表す)
アルキレン基としては、特に限定されないが、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、シクロへキシレン基などが挙げられる。好ましくは炭素数2〜6のアルキレン基である。nは、通常は5〜300程度、好ましくは5〜100、より好ましくは7〜90、特に好ましくは10〜80である。ただし、nは、この範囲に限定されない。
PAG化合物の例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールモノアリールエーテル等のポリアルキレングリコールのエーテル化合物などが挙げられる。ポリアルキレングリコール構造でない成分が、PAG化合物中に多く含まれていてもよい。例えば、活性水素を有する化合物の活性水素に、ポリアルキレングリコールを付加したものが挙げられる。つまり、例えばポリエチレンイミン等の活性水素を複数有する化合物の活性水素がポリアルキレングリコール構造で置換された化合物を、PAG化合物として用いてもよい。他にも、ポリアルキレングリコールのエステル化合物、イソプレノールやアリルアルコールなどの不飽和二重結合を有する化合物のポリアルキレングリコール付加体などがPAG化合物として用いられうる。
【0027】
好ましいPAG化合物の別の例として、下記一般式(2)で表される化合物が例示される。PAG化合物が下記一般式(2)で表される化合物であれば、重合体組成物の再汚染防止能が向上する傾向にある。
【0028】
【化1】

【0029】

上記一般式(2)において、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基を表し、Rは炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nは5〜300の数を表す。
上記一般式(2)において、R、Rが炭素数1〜20のアルキル基である場合の具体例としてはメチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等が例示され、炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基等が例示される。
上記一般式(2)において、Rとしては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等が例示され、エチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基が好ましい。
【0030】
PAG化合物は、得られている知見に基づいて合成されてもよいし、市販されている化合物を用いてもよい。例えば、ポリエチレンイミンの活性水素がポリアルキレングリコール構造で置換された化合物を合成するには、所定のポリエチレンイミンに対して、アルキレンオキサイドを所定量重合させればよい。また、場合によっては、2種以上のPAG化合物が用いられてもよい。
【0031】
PAG化合物の分子量は、特に限定されない。PAG化合物の構造や重合体混合物に求める特性に応じて、PAG化合物を選択すればよい。洗剤やスケール防止剤としての用途を考慮すると、重量平均分子量が、好ましくは500〜20,000、より好ましくは700〜15,000、さらに好ましくは800〜12,000、特に好ましくは1,000〜10,000のPAG化合物が用いられる。
【0032】
本発明の製造方法において、PAG化合物は、全量重合開始以前に反応釜に添加することが好ましいが、一部を重合開始後に添加しても良い。
【0033】
本発明の製造方法におけるPAG化合物の使用量は、PAG化合物と単量体(ジカルボン酸系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、その他の単量体)の合計の使用量100質量%に対し、4〜50質量%とすることが重合体組成物の再汚染防止能が向上する傾向にあることから好ましく、5〜40質量%とすることがより好ましく、7〜30質量%とすることがさらに好ましい。なお、上記使用量を計算する場合には単量体が酸基を有する場合には酸型換算で計算し、アミノ基を有する場合には対応するアミン換算で計算する。対応する酸型換算で計算するとは上記の通りであり、アミン換算で計算するとは例えば単量体がビニルアミン塩酸塩である場合には、ビニルアミンとして質量を計算することを言う。
【0034】
すなわち、本発明の重合体組成物に含まれる重合体は、PAG化合物に由来する構造単位をPAG化合物由来の構造単位と単量体由来の構造単位の合計100質量%に対し、4〜50質量%有することが好ましく、5〜40質量%とすることがより好ましく、7〜30質量%とすることがさらに好ましい。
なお、ポリアルキレングリコール構造を有する化合物に由来する構造単位とは、ポリアルキレングリコール構造を有する化合物がそのままで、またはポリアルキレングリコール構造を有する化合物に単量体等が付加した場合の単量体等に由来する構造を除いた部分の構造単位を表す。
すなわち、ポリアルキレングリコール構造を有する化合物に由来する構造単位には、ポリアルキレングリコール構造を有する化合物自体の構造単位を含み、重合体や副生成物に含まれる構造部分も含まれる。
【0035】
<(メタ)アクリル酸系単量体>
本発明の製造方法に使用される「(メタ)アクリル酸系単量体」とは、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの塩を意味する。(メタ)アクリル酸系単量体は1種または2種以上で使用される。アクリル酸またはメタクリル酸の塩としては、アクリル酸またはメタクリル酸を水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ成分で中和した塩;アクリル酸またはメタクリル酸をアンモニア、またはモノエタノールアミンやトリエタノールアミンなどの有機アミン類により中和した塩が挙げられる。
【0036】
本発明の製造方法において、(メタ)アクリル酸系単量体は、全量重合開始以後に反応釜に添加することが好ましいが、一部を重合開始以前に添加しても良い。
【0037】
本発明の製造方法における(メタ)アクリル酸系単量体の使用量は、PAG化合物と単量体(ジカルボン酸系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、その他の単量体)の合計の使用量100質量%に対し、4〜80質量%とすることが重合体組成物の再汚染防止能が向上する傾向にあることから好ましく、5〜75質量%とすることがより好ましく、20〜60質量%とすることがさらに好ましい。なお、上記使用量を計算する場合には単量体が酸基を有する場合には酸型換算で計算し、アミノ基を有する場合には対応するアミン換算で計算する。
【0038】
すなわち、本発明の重合体組成物に含まれる重合体は、(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構造単位をPAG化合物に由来する構造単位と単量体由来の構造単位の合計100質量%に対し、4〜80質量%有することが好ましく、5〜75質量%とすることがより好ましく、20〜60質量%とすることがさらに好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構造単位とは、(メタ)アクリル酸系単量体が重合して生成する構造であり、例えばアクリル酸に由来する構造単位であれば、−CHCH(COOH)−、で表すことができる。(メタ)アクリル酸系単量体自体の構造単位、すなわち、例えばアクリル酸の場合において、CH=CH(COOH)で表される構造単位自体は(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構造単位に含まないものとする。
【0039】
<その他の単量体>
本発明の製造方法に使用される単量体としては、上記ジカルボン酸系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体の他に、これらと重合可能なその他の単量体を使用しても構わない。その他の単量体としては、例えば2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシ−1−プロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−ブテンスルホン酸などのスルホン酸基を有する単量体;ビニルホスホン酸、(メタ)アリルホスホン酸などのホスホン酸基を有する単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜18のアルコールとのエステル化により得られるアルキル(メタ)アクリレート類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはその4級化物等のアミノ基含有アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド等のアミド基含有単量体類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;スチレン、スチレンスルホン酸等の芳香族ビニル系単量体類;マレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体類;(メタ)アクロレイン等のアルデヒド基含有ビニル系単量体類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;アリルアルコールやイソプレノール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを付加した構造の単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルピロリドン等が挙げられる。これらの他の単量体についても、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
本発明の製造方法における任意成分であるその他の単量体の使用量は、PAG化合物と単量体(ジカルボン酸系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、その他の単量体)の合計の使用量100質量%に対し、0〜30質量%とすることが重合体組成物の再汚染防止能が向上する傾向にあることから好ましい。
すなわち、本発明の重合体組成物に含まれる重合体は、任意成分であるその他の単量体に由来する構造単位をPAG化合物由来の構造単位と単量体由来の構造単位の合計100質量%に対し、0〜30質量%有することが好ましい。
【0041】
<重合開始剤>
本発明の製造方法は、ポリアルキレングリコール構造を有する化合物と重合開始剤の存在下でジカルボン酸系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体とを重合する工程を含むことが好ましい。
本発明の製造方法で使用できる重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が例示される。これらの重合開始剤のうちでも、ジカルボン酸の重合の進行が良好であることから、過硫酸塩、過酸化水素を使用することが好ましい。
【0042】
開始剤の使用量は、特に制限されないが、以下に特に記載する場合を除き、使用する単量体の全量(全単量体とも言う)1モルに対して、0.1g以上20g以下、より好ましくは1〜15gであることが好ましい。
【0043】
本発明の製造方法は、必要に応じ、重合に悪影響を及ぼさない範囲内で、重合体の分子量調整剤として連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン際、3−メルカプトプロピオン際、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等の、チオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等の、ハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、重亜硫酸、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びその塩(重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の重亜硫酸(塩)類、等の低級酸化物およびその塩などが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
連鎖移動剤を使用すると、製造される重合体が必要以上に高分子量化することを抑制し、低分子量の重合体を効率よく製造することができるという利点がある。
【0044】
本発明の製造方法において、連鎖移動剤の添加量は、特に制限されないが、以下に特に記載する場合を除き、好ましくは全単量体1モルに対して、1〜20g、より好ましくは2〜15gである。
【0045】
本発明の製造方法において、重合反応系中には、重金属イオンが配合されてもよい。重合反応系中に重金属イオンを配合することによって、開始剤や連鎖移動剤の配合量が低減されうる。開始剤や連鎖移動剤は、不純物の原因となり、性能低下の要因になり得るため配合量は低減することが好ましい。
【0046】
重金属とは、比重が4g/cm以上の金属を意味する。具体的な重金属としては、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどが挙げられる。2種以上の重金属が用いられてもよい。重合反応系は、これらのイオンを含む。好ましくは、重合反応系は、鉄イオンを含む。重金属イオンのイオン価については特に限定しない。例えば、重金属として鉄が用いられる場合には、重合反応系中に溶解している鉄イオンは、Fe2+であっても、Fe3+であってよい。これらが組み合わされていても良い。
重金属イオンは、重金属化合物を溶解してなる溶液を用いて添加されうる。その際に用いられる重金属化合物は、重合反応系中に含有されることを所望する重金属イオンに応じて決定される。溶媒として水が用いられる場合には、水溶性の重金属塩が好ましい。水溶性の重金属塩としては、モール塩(Fe(NH(SO・6HO)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化マンガンなどが挙げられる。重金属イオンの添加方法としては、初期添加または逐次添加、好ましくは初期添加が用いられる。ただし、重金属イオンの添加方法がこれらに限定されるわけではない。なお、初期添加とは、重金属イオンの全量を重合反応系中に予め添加する方法をいい、逐次添加とは、重金属イオンを重合反応の進行と共に、徐々に添加していく方法をいう。
【0047】
重金属イオンの含有量は、特に限定されないが、重合反応完結時における重合反応系の全質量に対して好ましくは0.1〜20ppm、より好ましくは0.2〜10ppm、さらに好ましくは0.3〜7ppm、特に好ましくは0.4〜6ppm、最も好ましくは0.5〜5ppmである。本発明の効果を得るために加えられる重金属イオンはこの程度の量でよいため、重金属イオン由来の不純物は殆ど発生しない。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であればよい。なお、重合反応完結時とは、重合反応系中において重合反応が実質的に完了した時点を意味する。
【0048】
重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が十分に発現しない虞がある。一方、重金属イオンの含有量が20ppmを超えると、色調が悪化する虞がある。また、洗剤ビルダーやスケール防止剤として重合体混合物が用いられた場合には、汚れの増加やスケールの増加を招く虞がある。
【0049】
好ましい重合開始剤あるいは重合開始剤と連鎖移動剤等の組み合わせ(開始剤系とも言う)としては、過硫酸塩と重亜硫酸(塩)類の組み合わせ、若しくは過硫酸塩と過酸化水素の組み合わせ、またはこれらとの重金属イオンの組み合わせが例示される。
【0050】
重合開始剤として過硫酸塩を使用する場合、過硫酸塩の添加量は、単量体1モルに対して1.0〜5.0gであることが好ましく、2.0〜4.0gであることがより好ましい。過硫酸塩の添加量がこれより少なくなると、得られる重合体の分子量が高くなる傾向がある。一方、添加量が多すぎると、過硫酸塩の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、更に、得られる重合体の純度が低下する傾向にある。
【0051】
重合開始剤として過酸化水素を使用する場合、過酸化水素の添加量は、単量体1モルに対して1.0〜15.0gであることが好ましく、2.0〜10.0gであることがより好ましい。過酸化水素の添加量が2.0g未満であると、得られる共重合体の重合平均分子量が高くなる傾向にある。一方、添加量が15.0gを超えると過酸化水素の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、さらに残存する過酸化水素量が多くなる傾向にある。
【0052】
開始剤系として過酸化水素と過硫酸塩を併用する場合、過酸化水素および過硫酸塩の添加比率は、重量比で過酸化水素の重量が1としたときに、過硫酸塩の重量が0.1〜5.0であることが好ましく、0.2〜4.0であることがより好ましい。
【0053】
開始剤系として過硫酸塩と重亜硫酸(塩)類を併用する場合、過硫酸塩1質量部に対して、重亜硫酸(塩)類0.5〜5質量部を用いることが好ましい。より好ましくは、過硫酸塩1質量部に対して、重亜硫酸(塩)類の下限は、1質量部であり、最も好ましくは2質量部である。また、重亜硫酸(塩)類のより好ましい上限は、過硫酸塩1質量部に対して、より好ましくは4質量部であり、最も好ましくは3質量部である。
【0054】
<その他の添加剤>
本発明の製造方法は、上記の通り水の使用量が制御されることとなる。単量体の溶解性を向上させるために、有機溶剤を使用してもよい。使用可能な有機溶剤としては、メタノール、エタノールなどの低級アルコール;ジメチルホルムアルデヒドなどのアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類などが挙げられる。
【0055】
上記の通り、本発明の製造方法は、重合開始前にアルカリ性物質を添加しても良いが、重合中の中和度を制御する目的で重合中にアルカリ性物質を添加しても構わない。もちろん重合後にアルカリ性物質を添加しても良い。
【0056】
<その他の重合条件>
重合中に滴下する各成分の滴下時間は、通常は40分〜420分であり、好ましくは60分〜360分である。各成分によって、滴下時間が異なっていてもよい。
【0057】
各成分の滴下速度は特に限定されるものではない。例えば、滴下の開始から終了を通じて、滴下速度は一定であってもよく、必要に応じて、滴下速度を変化させてもよい。重合体混合物の製造効率を高めるためには、滴下終了後の重合反応系における固形成分の濃度、すなわち単量体の重合によって生じる固形分の濃度が40質量%以上になるように、各成分を滴下させることが好ましい。
【0058】
重合開始剤として過酸化水素を使用する場合、反応容器(反応液)への単量体(初期仕込みする単量体を除く)の添加開始後、遅らせて添加開始することが好ましい。
過酸化水素の反応容器(反応液)への添加終了時間は、(メタ)アクリル酸系単量体の添加終了時より以前に終了することが好ましい。過酸化水素の添加終了時間が(メタ)アクリル酸系単量体の添加終了時より後になると、過酸化水素が多量に残存する傾向にある。
【0059】
重合開始剤として過硫酸塩を使用する場合、反応容器(反応液)への添加時間は特に限定はされないが、(メタ)アクリル酸系単量体の添加終了時以後まで滴下することが好ましく、(メタ)アクリル酸系単量体の添加終了時から30分以内に終了することがより好ましく、(メタ)アクリル酸系単量体の添加終了時後5分〜20分以内に終了することが特に好ましい。これにより、製造した重合体(組成物)における単量体の残量が低減する傾向にある。
【0060】
重合温度は、好ましくは25〜200℃、より好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは、80〜120℃である。重合温度が低すぎると、得られる重合体混合物中に含まれる重合体の重量平均分子量が上昇するおそれ、および、不純物の生成量が増加するおそれがある。また、重合時間が長くなるため、重合体組成物の生産性が低下する。重合温度が高すぎると、不純物の生成量が増加する虞がある。
【0061】
重合時の圧力は、特に限定されるものではなく、常圧下、減圧下、加圧下の何れの圧力下であってもよい。
【0062】
本発明の製造方法は、上記重合工程に加え、重合工程で製造された重合体組成物に含まれる重合体が酸型または部分中和型の場合等には必要に応じて中和工程を含んでいても良い。また、必要に応じて、重合工程で製造された重合体組成物に他の成分を添加する混合工程、成分の一部を除去したり低減させる精製工程、重合体組成物の溶媒量を増減する希釈工程や濃縮・乾燥工程が含まれていても良い。
【0063】
<本発明の重合体組成物>
本発明の重合体組成物は、上記の製造方法により製造される。
【0064】
本発明の重合体組成物に含まれる重合体の重量平均分子量は、再汚染防止能が向上する傾向にあることから、1,000〜100,000であることが好ましく、1,500〜50,000であることがさらに好ましく、2,000〜30,000であることが特に好ましく、2,000〜20,000であることがさらに特に好ましく、4,000〜15,000であることが最も好ましい。
【0065】
本発明の重合体(組成物)は、良好な再汚染防止能を有する。好ましくは、後述する再汚染防止能の評価方法において、59%以上である。
本発明の重合体組成物は、良好な保存安定性を有する。
【0066】
<本発明の水溶液>
本発明の水溶液は、(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構造単位を有する化合物(化合物A)、ジカルボン酸系単量体に由来する構造単位を有する化合物(化合物B)、およびポリアルキレングリコール構造を有する化合物に由来する構造単位を有する化合物(化合物C)を含むことを特徴としている。
化合物A、B、Cは、重複していても良い。すなわち、例えば化合物Aは、(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構造単位の他に、ジカルボン酸系単量体に由来する構造単位および/またはポリアルキレングリコール構造を有する化合物に由来する構造単位を有していても良い。
【0067】
「(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構造単位」、「ジカルボン酸系単量体に由来する構造単位」、「ポリアルキレングリコール構造を有する化合物に由来する構造単位」とは、上記の通りである。
化合物A、B、Cは、任意であるが、その他の単量体に由来する構造単位等を有していても構わない。その他の単量体に由来する構造単位を有する場合、化合物A、B、Cの合計の質量100質量%に対して0〜30質量%であることが好ましい。
【0068】
上記水溶液は、上記水溶液に含まれる(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構造単位の合計の質量が、化合物A、B、Cの合計の質量100質量%に対して4〜80質量%であり、好ましくは5〜75質量%であり、さらに好ましくは20〜60質量%である。
また、上記水溶液に含まれるジカルボン酸系単量体に由来する構造単位の合計の質量が、化合物A、B、Cの合計の質量100質量%に対して14〜85質量%であり、好ましくは17〜80質量%であり、さらに好ましくは20〜68質量%である。
また、上記水溶液に含まれるポリアルキレングリコール構造を有する化合物に由来する構造単位に由来する構造単位の合計の質量が、化合物A、B、Cの合計の質量100質量%に対して4〜50質量%であり、好ましくは5〜40質量%であり、さらに好ましくは7〜30質量%である。
それぞれの構造単位の合計の質量の範囲が、上記範囲であれば、水溶液の再汚染防止能が向上する効果が顕著であることから好ましい。
上記構造単位の質量%を計算する場合には、酸型換算で計算するものとする。
上記構造単位の範囲は、NMR法等によって測定できる(モル比から換算する)。
本発明の水溶液の好ましい製造方法は、適用可能な範囲で本発明の重合体組成物の製造方法と同様である。
本発明の水溶液の好ましい水分量は、20〜80質量%である。本発明の水溶液の好ましい固形分濃度は20〜80質量%であり、好ましくは30〜70質量%であり、さらに好ましくは40〜65質量%である。
【0069】
<重合体組成物の用途>
本発明の重合体組成物は、水処理剤、繊維処理剤、分散剤、洗剤ビルダー(または洗剤組成物)等として用いられうる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、及び自動車用など、様々な用途の洗剤に添加されて使用されうる。
【0070】
<水処理剤>
本発明の重合体組成物は、水処理剤に用いることができる。該水処理剤には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いても良い。
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
【0071】
<繊維処理剤>
本発明の重合体組成物は、繊維処理剤に用いることができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明の重合体組成物を含む。
上記繊維処理剤における本発明の重合体組成物の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0072】
以下に、より実施形態に近い、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
【0073】
本発明の重合体組成物と、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明の重合体組成物1重量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
【0074】
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品が挙げられる。
【0075】
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明の重合体組成物と、アルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明の重合体組成物と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
<無機顔料分散剤>
本発明の重合体組成物は、無機顔料分散剤に用いることができる。該無機顔料分散剤には、必要に応じて、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0076】
上記無機顔料分散剤中における、本発明の重合体組成物の含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0077】
上記無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイの無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0078】
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05〜2.0重量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【0079】
<洗剤組成物>
本発明の重合体組成物は、洗剤組成物にも添加しうる。
本発明の重合体組成物は、上述した重合体を含むが、優れたビルダー性能を発揮しうるという観点からは、当該重合体の含有量は、洗剤組成物の全量に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
【0080】
洗剤用途で用いられる洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。これらの界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗剤分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
【0081】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
【0082】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステルまたはその塩、アルケニルリン酸エステルまたはその塩等が好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0083】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0084】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0085】
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して10〜80質量%であり、好ましくは15〜70質量%であり、さらに好ましくは20〜60質量%であり、特に好ましくは25〜40質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、十分な洗浄力を発揮できなくなる虞があり、界面活性剤の配合割合が多すぎると、経済性が低下する虞がある。
【0086】
添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
【0087】
上記洗剤組成物は、本発明の重合体組成物に加えて、他の洗剤ビルダーを含んでもよい。他の洗剤ビルダーとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩などのアルカリビルダーや、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、(メタ)アクリル酸の共重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体、フマル酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシル誘導体等が挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニウム、アミン等が挙げられる。
【0088】
上記添加剤と他の洗剤用ビルダーの合計の配合割合は、通常、洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.2〜40質量%であり、さらに好ましくは0.3〜35質量%であり、特に好ましくは0.4〜30質量%であり、最も好ましくは0.5〜20質量%以下である。添加剤/他の洗剤ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなる虞があり、50質量%を超えると経済性が低下する虞がある。
【0089】
なお、上記洗剤組成物の概念には、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含まれる。
【0090】
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物の全量に対して0.1〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜70質量%であり、さらに好ましくは0.5〜65質量%であり、さらにより好ましくは0.7〜60質量%であり、特に好ましくは1〜55質量%であり、最も好ましくは1.5〜50質量%である。
【0091】
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、当該洗剤組成物は、カオリン濁度が200mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは150mg/L以下であり、さらに好ましくは120mg/L以下であり、特に好ましくは100mg/L以下であり、最も好ましくは50mg/L以下である。
【0092】
また、本発明の重合体組成物を洗剤ビルダーとして液体洗剤組成物に添加する場合としない場合とでのカオリン濁度の変化(差)は、500mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは400mg/L以下であり、さらに好ましくは300mg/L以下であり、特に好ましくは200mg/L以下であり、最も好ましくは100mg/L以下である。カオリン濁度の値としては、以下の手法により測定される値を採用するものとする。
【0093】
<カオリン濁度の測定方法>
厚さ10mmの50mm角セルに均一に攪拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色株式会社製NDH2000(商品名、濁度計)を用いて25℃でのTubidity(カオリン濁度:mg/L)を測定する。
【0094】
上記洗浄剤組成物に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。
【0095】
上記酵素の添加量は、洗浄剤組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
【0096】
本発明の洗剤組成物は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの濃度が高い硬水(例えば、100mg/L以上)の地域中で使用しても、塩の析出が少なく、優れた洗浄効果を有する。この効果は、洗剤組成物が、LASのようなアニオン界面活性剤を含む場合に特に顕著である。
【実施例】
【0097】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0098】
また、本発明のグラフト重合体の重量平均分子量、数平均分子量、再汚染防止能、保存安定性、重合体組成物および重合体水溶液の固形分量、原料の分析は、下記の方法に従って測定した。
<重量平均分子量、及び、残存モノマーの測定条件(GPC)>
装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:RI(重量平均分子量)、UV(残存モノマー)
カラム:昭和電工株式会社製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ,GF−710−HQ,GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5mL/min
検量線:創和科学株式会社製 POLYACRYLATE STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)
<再汚染防止能の評価>
(1)洗濯科学協会より入手したJIS−L0803綿布を切断し、5cm×5cmの白布を作成した。この白布を、あらかじめ、日本電色工業社製の測色色差計SE2000型を用いて、白色度を反射率にて測定した。
(2)2.29gの塩化カルシウム2水和物に純水を加えて13kgとし、硬水を調製した。硬水とすすぎ用の水道水を25℃の恒温槽で保持しておいた。
(3)ターゴットメーターを25℃にセットし、硬水500mlとクレー1gとをポットにいれ、100rpmで1分間撹拌した。その後、固形分濃度を0.6質量%に調整した重合体水溶液2.5gをポットに入れ、100rpmで10分間撹拌した。
(4)6%アルキルポリオキシエチレン硫酸塩水溶液2.5g、1%硼酸ナトリウム水溶液2.5g、1%クエン酸ナトリウム水溶液2.5g、および白布15枚をポットにいれ、100rpmで1分間撹拌した。
(5)手で白布の水を切り、準備しておいた25℃の硬水500mlが入ったポットにおいて、100rpmで1分間撹拌した。
(6)白布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、上記測色色差計にて、再度、白布の白色度を反射率にて測定した。
(7)以上の測定結果から、下式により再汚染防止能を求めた。
(8)再汚染防止率(%)=[(洗浄後の白色度)/原白布の白色度)]×100。
【0099】
<保存安定性>
固形分濃度を55質量%に調整した、重合体混合物を含む水溶液5gを、恒温機内において、35℃で1時間静置した。濁りがない場合を○、やや濁っている場合を△、濁っている場合を×とした。濁りがないことは、重合体溶液が長期間に渡って均一に保たれうることを示す。
【0100】
<相溶性>
ポリオキシエチレンドデシルエーテル(ドデカノールにエチレンオキサイドを平均8モル付加したもの)25%水溶液 4gに重合体組成物0.2g(固形分)を混合し、1時間静置した。濁りがない場合を○、やや濁っている場合を△、濁っている場合を×とした。濁りがないことは、重合体組成物を添加した洗剤が長期間に渡って均一に保たれうることを示す。
【0101】
<重合体組成物の固形分測定方法>
窒素雰囲気下、130℃に加熱したオーブンで重合体組成物(重合体組成物1.0g+水3.0g)を1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
【0102】
<実施例1>
温度計、攪拌機、還流冷却器を備えたSUS製反応器に、メトキシポリエチレングリコール(メタノールにエチレンオキサイドを平均25モル付加させて得られたもの、以降PGM25と略す)85.0g、無水マレイン酸166.1g、純水61.0gを仕込み、100℃まで昇温した。次に、80%アクリル酸水溶液(80%AAと略す)356.3gを180分間、15%過硫酸ナトリウム水溶液(15%NaPSと略す)150.8gを190分間、35%過酸化水素水溶液(35%Hと略す)161.5gを180分間にわたって、別々に連続的に滴下した。80%AA滴下終了後、30分間撹拌した後に純水89.3gを加え、本発明の重合体組成物1(本発明の水溶液1とも言う)を得た。重合体組成物1に含まれる重合体の重量平均分子量は12000であった。重合体組成物1における残存マレイン酸は47000ppm、残存アクリル酸は0ppmであった。
【0103】
<実施例2>
温度計、攪拌機、還流冷却器を備えたSUS製反応器に、PGM25 170.0g、無水マレイン酸136.4g、純水50.2gを仕込み、100℃まで昇温した。次に80%AA294.0gを180分間、48%水酸化ナトリウム水溶液(48%NaOHと略す)50.4g、15%NaPS 124.2gを190分間、35%H 133.1gを180分間にわたって、別々に連続的に滴下した。80%AA滴下終了後、30分間撹拌した後に純水89.3gを加え、本発明の重合体組成物2(本発明の水溶液2とも言う)を得た。重合体組成物2に含まれる重合体の重量平均分子量は8200であった。重合体組成物2における残存マレイン酸は8900ppm、残存アクリル酸は0ppmであった。
【0104】
<実施例3>
温度計、攪拌機、還流冷却器を備えたSUS製反応器に、PGM25 85.0g、無水マレイン酸251.1g、純水46.1gを仕込み、100℃まで昇温した。次に80%AA230.6gを120分間、15%NaPS 136.6gを130分間、35%H 73.2gを90分間、純水156.0gを120分間にわたって、別々に連続的に滴下した。80%AA滴下終了後、30分間撹拌した後に純水89.0gを加え、本発明の重合体組成物3(本発明の水溶液3とも言う)を得た。重合体組成物3に含まれる重合体の重量平均分子量は5500であった。
【0105】
<実施例4>
温度計、攪拌機、還流冷却器を備えたSUS製反応器に、PGM25 85.0g、無水マレイン酸251.1g、純水46.1g、モール塩0.03gを仕込み、100℃まで昇温した。次に80%AA230.6gを120分間、15%NaPS 68.3gを80%AA滴下開始50分後から80分間、35%H 58.6gを50分間、純水221.9gを120分間にわたって、別々に連続的に滴下した。80%AA滴下終了後、30分間撹拌した後に純水87.4gを加え、本発明の重合体組成物4(本発明の水溶液4とも言う)を得た。重合体組成物4に含まれる重合体の重量平均分子量は8500であった。
【0106】
<実施例5>
温度計、攪拌機、還流冷却器を備えたSUS製反応器に、PGM25 85.0g、無水マレイン酸380.6g、純水69.9g、モール塩0.03gを仕込み、100℃まで昇温した。次に80%AA39.0gを100分間、35%H 123.3gを80分間、純水246.7gを80分間にわたって、別々に連続的に滴下した。80%AA滴下終了後、30分間撹拌した後に純水85.9gを加え、本発明の重合体組成物5(本発明の水溶液5とも言う)を得た。重合体組成物5に含まれる重合体の重量平均分子量は1000であった。
【0107】
<実施例6>
温度計、攪拌機、還流冷却器を備えたSUS製反応器に、PGM25 85.0g、無水マレイン酸143.6g、純水26.4gを仕込み、90℃まで昇温した。次に80%AA389.6gを180分間、48%NaOH 6.1gを180分間、15%NaPS 309.0gを190分間、35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液 66.2gを170分間、純水37.1gを180分間にわたって、別々に連続的に滴下した。80%AA滴下終了後、30分間撹拌した後に純水145.0gを加え、本発明の重合体組成物6(本発明の水溶液6とも言う)を得た。重合体組成物6に含まれる重合体の重量平均分子量は37000であった。重合体組成物6における残存マレイン酸は5200ppm、残存アクリル酸は0ppmであった。
【0108】
<実施例7>
温度計、攪拌機、還流冷却器を備えたSUS製反応器に、PGM25 42.5g、無水マレイン酸181.4g、純水68.4gを仕込み、100℃まで昇温した。次に80%AA 386.8gを180分間、48%NaOH 66.7gを80%AA滴下開始120分後から60分間、15%NaPS 164.0gを190分間、35%H 175.7gを180分間にわたって、別々に連続的に滴下した。80%AA滴下終了後、30分間撹拌した後に純水21.9gを加え、本発明の重合体組成物7(本発明の水溶液7とも言う)を得た。重合体組成物7に含まれる重合体の重量平均分子量は8,100であった。
【0109】
<比較例1>
温度計、攪拌機、還流冷却器を備えたSUS製反応器に、無水マレイン酸251.1g、純水100.5g、48%NaOH 363.0gを仕込み、撹拌しながら、100℃まで昇温した。次に、約100℃に保持された重合反応系中に、撹拌しながら、80%AA 230.6gを120分間、15%NaPS 68.3gをAA滴下開始後から80分間、35%H 58.6gを50分間、純水205.5gを120分間、別々の滴下ノズルより、別々に連続的に滴下した。
滴下終了後、さらに、30分間、重合反応液を100℃ で熟成して、重合を完結させた。重合完結後、重合体混合物を含む水溶液である重合反応液を放冷し、48%NaOH 181.3gを重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和して比較重合体1を得た。比較重合体1の重量平均分子量は10000であった。
【0110】
<実施例8>
上記重合体組成物1〜5、7、比較重合体1、比較重合体2としてPGM25の再汚染防止能、保存安定性、界面活性剤との相溶性の評価をおこなった結果を示す。
【0111】
【表1】

【0112】

表1に示す結果から、本発明の重合体組成物は、従来の重合体組成物と比較して、優れた再汚染防止能、保存安定性および界面活性剤との相溶性を有していることが示される。
従って、本発明の重合体組成物を洗剤ビルダーとして用いると、良好な洗浄力が得られることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸系単量体およびジカルボン酸系単量体を必須とする単量体をポリアルキレングリコール構造を有する化合物の存在下で重合させる工程を含む、重合体組成物の製造方法であって、
重合開始時の水の量が上記ポリアルキレングリコール構造を有する化合物の使用量100質量部に対し0〜120質量部であり、
重合開始時のジカルボン酸系単量体の量が上記ポリアルキレングリコール構造を有する化合物の使用量100質量部に対し30〜800質量部であり、
(メタ)アクリル酸系単量体の添加終了時における反応溶液に含まれる水の量が、上記ポリアルキレングリコール構造を有する化合物の使用量100質量部に対し100〜100,000質量部である、重合体組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法によって得られる重合体組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の重合体組成物に含まれる重合体を含む洗剤組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構造単位を有する化合物(化合物A)、ジカルボン酸系単量体に由来する構造単位を有する化合物(化合物B)、およびポリアルキレングリコール構造を有する化合物に由来する構造単位を有する化合物(化合物C)を含む水溶液であって、
上記水溶液に含まれる(メタ)アクリル酸系単量体に由来する構造単位の合計の質量が、化合物A、B、Cの合計の質量100質量%に対して4〜80質量%であり、
上記水溶液に含まれるジカルボン酸系単量体に由来する構造単位の合計の質量が、化合物A、B、Cの合計の質量100質量%に対して14〜85質量%であり、
上記水溶液に含まれるポリアルキレングリコール構造を有する化合物に由来する構造単位に由来する構造単位の合計の質量が、化合物A、B、Cの合計の質量100質量%に対して4〜50質量%である、水溶液。

【公開番号】特開2012−177007(P2012−177007A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39707(P2011−39707)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】