説明

重合性液晶またはメソゲン材料の平面配列のための配列層

【課題】高温処理やラビング処理の必要がなく、低コストで容易に形成可能な重合性液晶またはメソゲン材料の平面配列のための配列層を提供する。
【解決手段】配列層の表面上に塗布された重合性液晶またはメソゲン材料の平面配列のための配列層、であって、前記配列層が、加水分解度が98.0モル%以上であるポリビニルアルコールの水溶液を乾燥および/または硬化したものを含み、前記ポリビニルアルコールが、純粋なまたは改質されたポリビニルアルコールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その上に塗布される重合性液晶またはメソゲン材料の改善された平面配列のための配列層、そのような配列層を製造する方法、重合性液晶またはメソゲン材料をその配列層上に塗布することによって得られる平面配向したポリマーフィルム、ならびに製品、特に装飾用製品およびセキュリティー製品におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
均一に配向した重合液晶材料を含む異方性ポリマーフィルムは当技術分野で公知である。それらは通常、基板上に重合性液晶混合物の薄層をコーティングし、その混合物を均一な配向で配列させ、その混合物を重合することによって製造される。
【0003】
特定の用途のためには、液晶層中に平面配列を誘発させる、すなわち、液晶分子をその層と実質的に平行となるように配向させることが必要である。次いで、その液晶混合物をその場で重合させて、その中で配列を凍結させる。例えば、平面配列した重合ネマチック液晶材料を配向させたフィルムまたは層は、A−プレート補償板または偏光板として有用であるが、同様にして、線状または円形の偏光板のみを使用して特定することができるある種のセキュリティー用途にも有用である。別の重要な用途は、ねじれた分子構造を有する重合コレステリック液晶材料の配向フィルムまたは層である。これは通常、キラルネマチック(コレステリック)液晶材料から製造される。コレステリック材料が平面配列を有する場合、これらのフィルムは、反射色が視角に依存する光の選択的反射を示す。それらは、効果顔料の調製またはいくつかの装飾用途もしくはセキュリティー用途のための円形偏光板、カラーフィルターなどとして使用することができる。
【0004】
平面配列は、例えば、その上に液晶材料がコーティングされる基板を処理することによって具現化することができる。表面処理の最も一般的な方法は、液晶材料を塗布する前に基板表面を研磨することである。棒状の液晶分子の場合、これらは、それ自体、その長軸を研磨方向に対して平行に配列する。あるいは、例えばポリイミドの配列層をその基板上に塗布することができ、続いて基板が研磨されるか、または基板が望ましい配列を誘発することになる。他の方法は、基板の延伸などによりせん断力をかけるか、または液晶材料に表面活性化合物を添加する方法である。
【0005】
従来の配列技術の総説は、例えば、I.Sageによる“Thermotropic Crystals”、G. W. Gray編集、John Wiley & Sons、1987年、75〜77頁、およびT. Uchida and H. Sekiによる“Liquid Crystals - Applications and Uses Vol. 3”、 B. Bahadur編集、World Scientific Publishing、Singapore 1992年、1〜63頁に記載されている。配列材料および技術の総説は、J. Cognard、Mol. Cryst. Liq. Cryst. 78、Supplement 1 (1981年)、1〜77頁に記載されている。
【0006】
しかし、従来技術による方法はいくつかの欠点を有する。具体的には、装飾またはセキュリティーを目的とする場合、金属化基板または金属箔などの延伸性ポリマーフィルム以外の基板を使用しなければならず、一般に配列層が必要である。他方、延伸性フィルムを基板として用いている場合でも、所定の方向への延伸は追加的な技術的工程であり、製造コストの増大をもたらすことになる。
【0007】
通常、追加的な研磨工程が必要とされる配列層を用いる場合にもコストの増大を伴う。また、研磨は、配列層の表面をある程度劣化させて、その上に塗布される液晶層の配向を不十分とする可能性がある。
【0008】
さらに、装飾用途およびセキュリティー用途に様々な基板を適用すると、さらなる未解決の問題がもたらされる。
【0009】
通常、ディスプレー用途では、配列させるためにガラス表面に研磨したポリイミド層をコーティングする。これは、200℃を超える温度でポリアミドコーティング層をポリイミドに転換させ、次いで得られた層を研磨することによって行う。配列層の下にある大部分の一般的ポリマー基板はこれらの条件に耐えられず、溶融するかまたは変形する可能性がある。
【0010】
PETフィルムはネマチックおよびコレステリック液晶材料に良好な平面配列を付与するが、他の多くのポリマー基板、金属基板、紙およびボードは、液晶材料に良好な配列をもたらさないことが分かっている。さらに、今日ますます多く使用されているポリマー基板は、通常ベース基板への接着を向上させるように設計されたプリント受容層を有するが、これらの層は他の機能的用途も有している。残念ながら、液晶材料はプリント受容層を含むこれらの基板上では十分に配列されず、これは、光が散乱されることによって引き起こされるミルク状に着色したフィルムとして見える。したがって、中間配列層を、これらのプレコーティングされたポリマー基板上に塗布することが必要となる。
【0011】
大部分の液晶材料は通常、(有機)溶媒をベースとした混合物中で基板上にコーティングされるため、液晶層が、配列層の上に塗布された場合、配列層を再湿潤化させる可能性があるので、下の配列層中において非反応性の溶媒をベースとした樹脂を使用するのは適切ではない。実際に、配列層において使用された樹脂は液晶層中に吸収され、液晶層の光学的作用を悪化させる恐れがある。逆に、反応性溶媒ベースの樹脂系が配列層において使用された場合、それを硬化させるには熱が必要であり、これは大部分の場合、下にある基板を損傷させることになる。
【0012】
したがって、高温をかけて硬化させる必要がなく、かつ、(有機)溶媒をベースとした液晶材料をその上に塗布しても再湿潤化されることのない、配列層を製造するのに適した材料が必要であった。さらに、得られた液晶フィルムの良好な平面配列が必要である。
【0013】
配列層の製造のために、従来使用されてきた研磨した重合PVAフィルムと異なるポリビニルアルコール(PVA)などの水性材料を使用する試みがなされている。
【0014】
US5631051およびUS6726965では、配向層および光学的に異方性の層を含む光学補償シートが開示されている。光学異方性層のための材料として、基板から特定の角度、具体的には基板面に対してほぼ垂直(ホメオトロピック)に配向させることを目的としたディスコティック液晶化合物が使用される。したがって、この目的のための配向層は、研磨処理にかけられた架橋ポリマー層でできているか(US5631051)、ポリビニルアルコールまたはフッ素原子を含有する特定の変性ポリビニルアルコールでできている(US6726965)。それぞれの場合、ディスコティック液晶材料を垂直に配向させるために、架橋および/または研磨処理が必要である。
【0015】
さらに、US7515231は、フィルムの面から2°〜8°のプレチルト角で斜めになっているネマチック液晶材料の配列のための配列層をもたらすように研磨された第1表面を有する架橋ポリビニルアルコールフィルムを含む液晶ディスプレーを開示している。その架橋ポリビニルアルコール層の厚さは約10μm超、さらには約40μm超である。ここでは、架橋および研磨の必要性の他に、フィルム面からのプレチルト角も対象とされている。
【0016】
US6680767では、支持基板なしで液晶ポリマー層を形成させる方法が開示されている。重合液晶層をガラス基板から適切に離脱させるために、水溶性の離脱層が必要である。その離脱層を配列層と一緒にして、例えば水に可溶性のポリビニルアルコールの層などの単一層にすることができる。それでも、その配列層は、液晶材料をその上に塗布する前に、一方向の研磨にかけられる。液晶フィルムを硬化させた後、一緒にした離脱/配列層は流水中に溶解して、基板のない液晶箔が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】US5631051
【特許文献2】US6726965
【特許文献3】US7515231
【特許文献4】US6680767
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、様々な基板に塗布することができ、有機溶媒中に溶解されていて、その上に塗布される材料によって劣化せず、硬化させるために高温に曝す必要がなく、研磨処理に全くかけられることなく、架橋させる必要がなく、平面配列をそれに付与する重合性液晶材料で構成された非連続的なパターン化層でオーバーコートするかまたはオーバープリントすることができ、かつ、低コストで簡単に経済的な仕方で製造することができる、重合性液晶材料の平面配列のための配列層を提供することである。
【0019】
さらに、本発明の目的は、上記配列層を製造するための簡単で経済的な方法を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、平面配向した異方性ポリマーフィルムであって、重合液晶材料でできており、前記配列層の表面上に形成されたポリマーフィルムを提供することである。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、少なくとも上記配列層およびその上に塗布された平面配向重合液晶層を含む層状構造物を提供することである。
【0022】
本発明のさらに他の目的は、上記に開示した異方性ポリマーフィルムまたは層状構造物を含む製品である。
【0023】
本発明の目的は、配列層の表面上に塗布される重合性液晶またはメソゲン材料の平面配列のための配列層であって、この配列層が、加水分解度98.0モル%以上のポリビニルアルコールの水溶液を乾燥および/または硬化したものを含み、そのポリビニルアルコールが純粋なまたは改質されたポリビニルアルコールである配列層によって達成される。
【0024】
さらに、本発明の目的は、加水分解度98.0モル%以上の、固形分含量が溶液重量基準で10重量%未満のポリビニルアルコールの水溶液を基板上に塗布し、それによって湿潤フィルムを形成させるステップと、得られた湿潤フィルムを空気および/または熱に曝すことによって乾燥および/または硬化させるステップとを含む、重合性液晶またはメソゲン材料の平面配列のための配列層を製造する方法であって、そのポリビニルアルコールが純粋なまたは改質されたポリビニルアルコールであり、それによって、重合性液晶またはメソゲン材料をその上に直接塗布することができる非研磨外表面を含む配列層を得る方法によって達成される。
【0025】
さらに、本発明の目的は、平面配向した重合液晶材料を含む異方性ポリマーフィルムによって達成される。その異方性ポリマーフィルムは、上記に開示したようにして配列層上に重合性液晶またはメソゲン材料を塗布し、それによって湿潤したコーティング層が形成され、続いて重合性液晶またはメソゲン材料が重合され、それによって湿潤コーティング層が平面配向した異方性重合フィルムに転換されることによって形成される。また任意選択で、配列層からその異方性重合フィルムが取り除かれる。
【0026】
さらに、本発明の目的は、前記配列層、配列層の非研磨表面上に直接配置された平面配向した重合液晶材料、および配列層の非研磨表面の裏面上に配置された基板を含む層状構造物によって達成される。
【0027】
最終的に、本発明の目的は、上記に開示した異方性ポリマーフィルムまたは層状構造物を含む製品によっても達成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1における液晶コーティング層のUV可視スペクトルである。
【図2】実施例2における液晶コーティング層のUV可視スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明で使用する技術用語を定義する。
【0030】
本出願において用いられる「基板」という用語は、任意の下に配置された層または基板を指す。
【0031】
本出願で用いられる「フィルム」という用語には、おおむね顕著な機械的安定性と柔軟性を示す自己支持型、すなわち、自立型のフィルム、ならびに、支持基板上または2つの基板間にあるコーティング層または層が含まれる。
【0032】
「液晶またはメソゲン材料」あるいは「液晶またはメソゲン化合物」という用語は、1つもしくは複数の棒状、板状または円盤状のメソゲン基、すなわち、液晶相挙動を誘発する能力を有する基を含む材料または化合物を意味する。メソゲン基を含む化合物または材料は、それ自体必ずしも液晶相を示す必要はない。それらが、他の化合物との混合物中においてのみ、あるいは、メソゲン化合物もしくは材料またはそれらの混合物が重合されている場合のみ液晶相挙動を示すこともありうる。
【0033】
簡単にするために、以下において、「液晶材料」という用語は液晶材料とメソゲン材料の両方のために使用され、「メソゲン」という用語はその材料のメソゲン基のために使用される。
【0034】
「平面構造」または「平面配向」という用語は、液晶ディレクター、すなわち、液晶材料中のメソゲンの主分子軸の好ましい配向方向が、フィルムまたは層の面と実質的に平行であることを意味する。この定義によれば、ディレクターがフィルム全体にわたって最大で1°の平均傾斜角でフィルム面に対して若干傾斜しており、かつ、ディレクターがフィルム面に対して正確に平行である、すなわち正確にゼロ傾斜しているフィルムと同じ光学的特性を示すフィルムも含まれる。
【0035】
「傾斜構造」または「傾斜配向」という用語は、そのフィルムの液晶ディレクターが、フィルム面に対して1〜90°の角度で傾斜していることを意味する。
【0036】
「斜め(splayed)構造」または「斜め配向」という用語は、前記傾斜配向を意味し、その傾斜角はさらに、フィルム面に対して垂直な方向に0〜90°、好ましくは最小値〜最大値の範囲で単調に変化する。
【0037】
「ホメオトロピック構造」または「ホメオトロピック配向」という用語は、フィルムの液晶ディレクターが、フィルム面に対して実質的に垂直である、すなわち、フィルム法線に対して実質的に平行であることを意味する。この定義によれば、ディレクターが、フィルム法線に対して最大で2°の角度で若干傾斜しており、ディレクターがフィルム法線に対して正確に平行である、すなわち傾斜していないフィルムと同じ光学的特性を示すフィルムも含まれる。
【0038】
「らせん状にねじれた構造」という用語は、液晶材料の1つまたは複数の層を含むフィルムに関し、そのメソゲンは、その主分子軸が分子サブレイヤー内において好ましい方向に配向されており、この好ましい配向方向は、別のサブレイヤー内において、フィルム面に対して実質的に垂直、すなわち、フィルム法線に対して実質的に平行ならせん軸周りにねじれている。この定義によれば、フィルム面に対して75〜90°、好ましくは80〜90°、非常に好ましくは85〜90°、最も好ましくは88〜90°のらせん軸の配向が含まれる。そのようならせん状にねじれた構造の製造に有用な材料は、具体的にはキラルメソ相を示す液晶材料であり、そのメソゲンは、例えばキラルネマチック(コレステリック)またはキラルスメクチック相のように、その主分子軸が、らせん軸周りにねじれた状態で配向されている。コレステリック相を示す材料が好ましい。
【0039】
「ネマチック液晶」という用語は、フィルムまたは層の面に配向可能な平面である棒状の液晶材料またはメソゲンに関係する。
【0040】
本発明の配列層は、加水分解度が98.0モル%以上のポリビニルアルコールの水溶液の乾燥物で構成されている。加水分解度は少なくとも99.0モル%以上であることが好ましく、99.5〜100モル%であることが特に好ましい。加水分解度は、ポリマーの加水分解によってビニルアルコール単位に実際に転換された単位と、その加水分解によってビニルアルコール単位に転換させることができる単位との比を意味する。
【0041】
ポリビニルアルコールの加水分解度は、当技術分野で知られている方法、例えば、対応する試料のFT−IRスペクトルまたはH−NMRスペクトルを得ることによって測定することができる。このような目的に有用ないくつかの装置が一般に当業者に知られており、例えば、FT−IRスペクトルについてはFT/IR410(日本分光製)があり、H−NMR−スペクトルについてはJNM−AL400(日本電子製)またはGX−400(日本電子製)がある。US2004/0024120A1の5頁、ならびにUS5134036の図1、欄1および7の対応する開示に記載されている加水分解度(鹸化度)の測定方法を参照されたい。その内容を参照により本出願に組み込む。一般に、市販のポリビニルアルコールの加水分解度はそのメーカーによって表示されている。
【0042】
加水分解度の他に、ポリビニルアルコールが高い重合度を示すことも有利である。したがって、ポリビニルアルコールの重量平均分子量は、少なくとも132,000、特に少なくとも140,000であることが好ましい。
【0043】
ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルなどのビニルエステルポリマーを、通常、強い無機酸または塩基である触媒の存在下で加水分解することによって製造することができる。水酸化ナトリウムなどの塩基が好ましい。本発明で用いられるような高い加水分解度を有する純粋な非改質ポリビニルアルコールは、それ自体知られている方法、例えば、US3884892、US4954567、US5753753およびUS2007/0100080A1に開示されている方法で製造することができる。その内容は参照により本発明に組み込まれる。さらに、これは、例えばMowiol(登録商標)28−99という商品名でクラレ社から市販されている。
【0044】
ポリビニルアルコール(PVA)は純粋であってもまた改質されていてもよい。改質されている場合、炭素基が4個未満のα−オレフィンによる改質が好ましい。具体的には、エチレンまたはプロピレンを用いて改質が実施される。エチレンによる改質が特に好ましい。改質PVAの加水分解度および重量平均分子量は、上記した純粋なPVAの加水分解度および重量平均分子量と同じ範囲内である。
【0045】
エチレン改質ポリビニルアルコール(EVOH)は通常、エチレン酢酸ビニル共重合体を加水分解して製造される。その製造プロセスはそれ自体公知である。本発明で使用されるような高い重合度と高い加水分解度を示すEVOHは、例えば、US7015266のカラム2〜4およびUS7071250(これらは参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている方法で製造することができる。さらに、本発明で好ましく用いられるエチレン改質ポリビニルアルコールは、例えばExceval(登録商標)HR3010という商品名でクラレ社から市販されている。
【0046】
上記した純粋なまたは改質されたポリビニルアルコールは水溶性である。本発明の配列層を製造するためには、固体の結晶性材料である純粋なまたは改質された(好ましくはEVOH)ポリビニルアルコールを水(脱イオン水またはRO水が好ましい)に溶解し、得られた溶液を適切な基板上に塗布する。得られる溶液が高粘度であるため、通常、その溶液の固形分含量(ポリビニルアルコール)は、溶液重量を基準として10重量%未満、好ましくは5〜8重量%である。
【0047】
基板の湿潤性を改善するため、溶液重量を基準として界面活性剤を0.001%〜2.0%、好ましくは0.05%〜1.0重量%の量で加えることができる。
【0048】
界面活性剤としては、原則として、この目的のために当業者に知られているすべての化合物を使用することができる。これらの化合物は様々なものが市販されている。典型的な界面活性剤の例は、Zonyl FSN、Zonyl FSO、Byk361N、Tegowet265、Tegowet270、Tegorad2250、Tegorad2300およびSurfynol61である。
【0049】
貯蔵安定性を改善して微生物、細菌または真菌の攻撃を阻止するために、ポリビニルアルコール溶液中に殺菌剤/殺真菌剤を含めることもできる。そのような化合物の添加は利点があるので、その使用は好ましい。
【0050】
殺菌剤/殺真菌剤としては、原則として、この目的のために当業者に知られているすべての化合物、特に「缶内での保存(in can preservation)」用に設計されているものを使用することができる。これらの化合物は様々なものが市販されている。典型的な例には、Acticide SPX、Fungitrol158、Kathon CG、Kathon886、Klarix4000、Mergal K9N、Mergal K14、Nousept220CA、Neosept44、Nuosept515、Rocima521、Rocima551、Rocima620およびRocima GTが挙げられる。
【0051】
ポリビニルアルコールは、場合によって、そのOH基を架橋させることによって硬化させることができる。原則として、この目的のために当業者に知られているすべての化合物を使用することができる。これらの化合物は様々なものが市販されている。典型的な例としては、これらに限定されないが:ホウ酸、ポリアミドアミン−エピクロルヒドリン樹脂、例えばGiluton VHW、グリオキサル樹脂、例えばCartabond TSI、ジアルデヒド、例えばグリオキサルおよびグルタルアルデヒド、メラミン/ホルムアルデヒド架橋剤ならびに有機チタネート/ジルコネート、例えばOrgatix TC300、Tyzor LA、Tyzor TE、Cartabond ZLAおよびBacote20が挙げられる。
【0052】
ポリビニルアルコールの水中への溶解は、80〜100℃の範囲の任意の温度で実施することができ、95〜100℃の温度範囲で実施することが好ましい。
【0053】
製造の際には、本発明の配列層は適切な基板上に配置される。
【0054】
基板としては、特に装飾用およびセキュリティー用の材料の製造において一般的である様々な基板を使用することができるが、非線形光学、光学式記録または情報記憶における、反射偏光子、位相差フィルム、補償板、カラーフィルターまたはホログラフィック素子などの光学素子にも使用することができる。
【0055】
したがって、本発明の配列層の塗布のために使用できる有用な基板は、例えば、プレコーティングしたPET、着色もしくは染色PETフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、セルロースフィルム、三酢酸セルロースフィルム、またはそれらのコポリマーでできたフィルムなどのポリマーフィルムである。これらはすべて、任意選択で剥剤コーティングを含むことができ、また、金属化基板、アルミニウム箔などの金属箔、紙、カード紙、壁紙、紙幣用紙等(これらは任意選択でプレコーティングまたはプレプリンティングされていてよい)も含むことができる。基板は、各層中に種々のポリマーを含むことができる層状フィルム、例えば、ポリマーと紙またはカード紙等との組合せのホットスタンピングホイルでできていてもよい。
【0056】
ポリビニルアルコール含有水溶液は、後でより詳細に説明される一般的なコーティング法またはプリンティング法によって基板上に塗布される。
【0057】
湿潤ポリビニルアルコールを含むコーティング層の厚さは通常約2μm〜20μmであり、これによって、厚さがおおよそ約0.1μm〜2μmの乾燥配列層が得られる。好ましくは、コーティング層の湿潤厚さは2〜8μmであり、その乾燥厚さは0.1〜0.7μmである。
【0058】
ポリビニルアルコール含有溶液を基板上に塗布した後、溶液は乾燥させられる。乾燥は、温度25℃〜150℃、好ましくは75℃〜100℃で約1〜150秒間実施される。
【0059】
ある場合には、ポリビニルアルコール溶液は硬化させることが好ましい。これは当業者に知られている多くの方法で実施することができる。硬化を行うためには、乾燥と比べてかなり長い時間を必要とし、その時間は数時間の範囲に及ぶ。硬化時間は使用される硬化剤に依存する。その温度は一般に90℃を超えるが、プリントされる基板のTgによって限定される。
【0060】
この方法で得られる固体配列層は、平滑な表面および高い結晶化度を有する。この高い結晶化度は、非常に高い加水分解度に起因すると考えられる。得られた配列層は、研磨または他の機械的処理にかけることなく、その後、基板/配列層および得られる液晶層の面の中でそれぞれ配向される重合性液晶またはメソゲン材料の塗布に準備される。
【0061】
重合性液晶材料は、好ましくは厚さ0.2〜50μmの薄層として、本発明に係る配列層の非研磨表面上にコーティングまたはプリントされることが好ましい。
【0062】
液晶材料は、例えば、スピンコーティング、グラビアコーティングまたはプリンティング、フレキソ印刷コーティングまたはプリンティング、オフセットコーティングまたはプリンティング、マイヤー(Meyer)バーコーティング、スクリーンプリンティングまたはインクジェットプリンティングのような、コーティングされる配列層上に重合性液晶材料を薄く塗ることができる、当技術分野において公知の任意の適切な表面コーティング法またはプリンティング法によって塗布することができる。
【0063】
重合性液晶材料が溶媒、好ましくは有機溶媒に溶解される場合、その溶液も、例えば上記に開示したような、例えばスピンコーティング法または他の公知のコーティング法もしくはプリンティング法で配列層上にコーティングまたはプリントされ、その溶媒が蒸発除去される。大抵の場合、溶媒の蒸発を容易にするためにその混合物を加熱することが望ましい。理想的には、LCの透明点(LCが等方性液体となる温度)より低い温度、好ましくは透明点より5〜10℃低い温度で加熱される。
【0064】
適用されるコーティング法またはプリンティング法によって、液晶材料は、本発明に係る配列層の非研磨表面を完全にまたは部分的に覆うことができる。液晶(LC)層が、小さなコーティング領域のみで構成されたパターン化した層および/または非連続の層として塗布された場合でも、重合LC層中のLC材料は、配列層に機械処理を追加しなくても、重合前に平面配向状態で配列されている。
【0065】
重合性液晶材料は、ネマチック、キラルネマチック(コレステリック)またはキラルスメクチック材料であることが好ましい。ネマチック材料およびコレステリック材料が特に好ましい。コレステリック材料の場合、好ましくは、ダークかまたは黒色の基板のような光吸収性材料を含む基板または表面が使用されるか、あるいは、それに匹敵する層が、重合コレステリック液晶層を含む層状構造物に後で塗布される。ネマチック材料については、重合ネマチック液晶層を含む層状構造物中の任意の位置で反射性基板または反射層を使用することが好ましい。
【0066】
異方性ポリマーフィルムの液晶材料は、溶媒の蒸発の際または蒸発後に、重合または架橋する重合性または架橋性の材料であることが好ましい。それは、1個の重合性官能基を有する少なくとも1つの重合性メソゲン化合物、および/または、2個以上の重合性官能基を有する少なくとも1つの重合性メソゲン化合物を含むことが好ましい。
【0067】
重合性LC材料が、1個、2個またはそれ以上の重合性官能基(単反応性もしくは多反応性または単官能性もしくは多官能性化合物)を有する重合性メソゲン化合物を含む場合、重合すると三次元ポリマーネットワークが形成される。これは、自己支持性であり、高い機械的および熱的な安定性を示し、その物理的および光学的な特性の温度依存性は低い。多官能性メソゲンまたは非メソゲン化合物の濃度を変えることによって、ポリマーフィルムの架橋密度を容易に調節することができ、それによって、ガラス転移温度などのその物理的および化学的特性(これは、重合フィルムの光学特性の温度依存性にも重要である)、熱的および機械的安定性または溶媒耐性を容易に調節することができる。
【0068】
重合性メソゲンの単反応性、二反応性もしくは多反応性化合物は、それ自体公知であり、例えば、有機化学の標準的な文献、例えばHouben-Weyl、Methoden der organischen Chemie、Thieme-Verlag、Stuttgartに記載されている方法で製造することができる。典型的な例は、例えばWO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171およびDE4405316に記載されている。しかし、これらの文献に開示されている化合物は単なる例に過ぎず、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0069】
特に有用な単反応性の重合性メソゲン化合物を代表する例を以下の化合物リストで示す。しかし、これらは単なる例に過ぎず、本発明を説明するためであって、本発明を限定するものではない:
【0070】
【化1】

【0071】
【化2】

【0072】
有用な二反応性重合性メソゲン化合物の例を以下の化合物リストで示す。しかし、これらは単なる例に過ぎず、本発明を説明するためでああって、本発明を限定するものではない。
【0073】
【化3】

【0074】
上記式において、Pは重合性基であって、好ましくはアクリル、メタクリル、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシまたはスチリル基であり、xおよびyはそれぞれ独立に1〜12であり、Aは任意選択で、Lでモノ−、ジ−もしくはトリ置換されることができる1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり、vは0または1であり、Zは−COO−、−OCO−、−CHCH−または単結合であり、Yは極性基であり、Terは、例えばメンチルのようなテルペノイド基であり、Cholはコレステリル基であり、Rは非極性アルキルまたはアルコキシ基であり、LおよびLはそれぞれ独立に、H、F、Cl、CNであるか、あるいは、任意選択でハロゲン化されることができる、C原子1〜7個のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシ基である。
【0075】
この関連において「極性基」という用語は、F、Cl、CN、NO、OH、OCH、OCN、SCN、任意選択でフッ素化されることができる、C原子が最大4個のカルボニルもしくはカルボキシル基またはC原子が1〜4個のモノ−、オリゴ−またはポリフッ素化アルキルもしくはアルコキシ基から選択される基を意味する。「非極性基」という用語は、C原子が1個もしくは複数、好ましくは1〜12個のアルキル基、またはC原子が2個以上、好ましくは2〜12個のアルコキシ基を意味する。
【0076】
コレステリック液晶(CLC)材料が使用される場合、これらは、ネマチックまたはスメクチック母材、および母材中でらせん型のねじれを誘起する1つもしくは複数のキラルドーパントを含むことが好ましい。キラルドーパントは重合性であっても重合性でなくてもよい。それらは、メソゲンまたは液晶化合物であってよいが、必ずしも液晶である必要はない。
【0077】
具体的にはWO98/00428に開示されているような、高いらせん型ねじれ力(HTP)を有するキラルドーパントが特に好ましい。さらに通常使用されるキラルドーパントは、例えば、市販されているS1011、R811またはCB15(メルクKGaA製、Darmstadt、独国)である。
【0078】
(R,S)、(S,R)、(R,R)および(S,S)鏡像異性体(表示されていない)を含む、以下の式の化合物から選択されるキラルドーパントが非常に好ましい。
【0079】
【化4】

式中、EおよびFはそれぞれ独立に上記Aの1つを意味し、vは0または1であり、Zは−COO−、−OCO−、−CHCH−または単結合であり、RはC原子が1〜12個のアルキル、アルコキシ、カルボニルまたはカルボニルオキシである。
【0080】
式IIの化合物はWO98/00428に記載されており、式IIIの化合物の合成はGB2328207に記載されている。その開示全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0081】
重合性キラル化合物は、上記式Ik〜IpおよびIIc〜IIeから選択されることが好ましい。式Ia〜Iiの化合物を使用することも可能であり、RまたはYはキラルC原子を含む。
【0082】
液晶材料中のキラルドーパントの量は、全LC材料(溶媒を含まず)の好ましくは15%未満、特に10%未満、非常に好ましくは5重量%未満である。
【0083】
有用なキラル化合物の例を上記化合物リストで示す。しかし、これらは単なる例に過ぎず、本発明を説明するためであって、本発明を限定するものではない。
【0084】
重合性液晶材料の重合は、これを熱または化学線に曝すことによって行われる。化学線は、UV光、IR光または可視光などの光の照射、X線もしくはγ線の照射、またはイオンもしくは電子などの高エネルギー粒子の照射を意味する。好ましくは、重合はUV照射によって実施される。化学線の供給源としては、例えば、単一のUVランプまたは一組のUVランプを使用することができる。高いランプ出力を用いると、その硬化時間を短縮することができる。化学線のための可能性のある別の供給源はUVレーザー、IRレーザーまたは可視レーザー等のレーザーである。
【0085】
重合は、化学線の波長で吸収する開始剤の存在下で実施される。例えば、UV光で重合させる場合、UV照射下で分解して重合反応を開始させるフリーラジカルまたはイオンを生成する光開始剤を使用することができる。重合性メソゲンをアクリレートまたはメタクリレート基で硬化させる場合、好ましくはラジカル光開始剤が使用され、重合性メソゲンをビニルおよびエポキシド基で硬化させる場合、好ましくはカチオン性光開始剤が使用される。加熱されると分解して、重合を開始させるフリーラジカルまたはイオンを生成する重合開始剤を使用することも可能である。ラジカル重合用の光開始剤として、例えば、市販されているIrgacure651(登録商標)、Irgacure184(登録商標)、Darocur1173(登録商標)またはDarocur4205(登録商標)(すべてチバガイギー社製)を使用することができ、カチオン性光重合の場合、市販されているUVI6974(登録商標)(ユニオンカーバイド社)を使用することができる。重合性LC材料は、好ましくは0.01〜10%、非常に好ましくは0.05〜7%、特に0.1〜5%の重合開始剤を含む。UV光開始剤が好ましく、特に、ラジカルを生成するUV光開始剤が好ましい。
【0086】
硬化時間は、とりわけ、重合性メソゲン材料の反応性、コーティングされた層の厚さ、重合開始剤の種類およびUVランプの出力に依存する。本発明に係る硬化時間は好ましくは5分以下、特に好ましくは2分以下、非常に特に好ましくは1分未満、例えば約30秒間である。連続生産のためには、30秒以下、非常に好ましくは10秒間以下の短い硬化時間が好ましい。
【0087】
重合性液晶材料は、例えば、触媒、感光剤、安定剤、抑制剤、共反応モノマー、表面活性化合物、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水化剤、接着剤、流動性向上剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤、反応性希釈剤、助剤、着色剤、染料または顔料などの1つまたは複数の他の適切な化合物をさらに含むことができる。
【0088】
例えば貯蔵時の重合性材料の望ましくない自然発生的重合を防止するために、特に安定剤を添加することが好ましい。安定剤としては、原則として、この目的のために当業者に知られているすべての化合物を使用することができる。これらの化合物は様々なものが市販されている。安定剤の典型的な例は4−エトキシフェノールまたはブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)である。
【0089】
得られるポリマーフィルムの物理的特性を改質するために、例えば連鎖移動剤のような他の添加剤を重合性材料に加えることもできる。例えばドデカンチオールのような単官能性チオール化合物、または例えばトリメチロールプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)のような多官能性チオール化合物などの連鎖移動剤を重合性材料に添加して、本発明のポリマーフィルム中の2つの架橋間のフリーポリマー鎖の長さおよび/またはポリマー鎖の長さを制御することができる。連鎖移動剤の量を増大させると、得られるポリマーフィルム中のポリマー鎖長は短くなる。
【0090】
ポリマーの架橋度/硬さを増大させるために、単官能性もしくは多官能性の重合性メソゲン化合物に代えるかまたはそれに加えて、最大で20%の1つまたは複数の重合性官能基を有する非メソゲン化合物を重合性材料に添加して、ポリマーの架橋を増大させることも可能である。ポリマーの硬さを増大させるために、イソボルニルアクリレートなどの単官能性環状アクリレートを使用することができる。二官能性非メソゲンモノマーの典型的な例は、C原子1〜20個のアルキル基を有するアルキルジアクリレートまたはアルキルジメタクリレートである。3つ以上の重合性基を有する非メソゲンモノマーの典型的な例は、トリメチロールプロパントリメタクリレートまたはペンタエリスリトールテトラアクリレートである。
【0091】
他の好ましい実施形態では、重合性材料の混合物は、最大で70%、好ましくは3〜50%の1個の重合性官能基を有する非メソゲン化合物を含む。単官能性非メソゲンモノマーの典型的な例は、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートである。
【0092】
例えば最大で20重量%の量の非重合性液晶化合物を添加して、得られるポリマーフィルムの光学的特性を適合させることも可能である。
【0093】
重合は、重合性材料の液晶相中で行うことが好ましい。したがって、好ましくは、低い融点と広い液晶相範囲を有する重合性メソゲン化合物または混合物が使用される。そのような材料の使用によって重合温度を低くすることが可能になり、これは重合工程をより簡単にし、特に連続生産にかなり有利である。適切な重合温度の選択は、主に重合性材料の透明点に依存し、とりわけ基板の軟化点に依存する。重合温度は、重合性メソゲン混合物の透明化温度より少なくとも30℃低いことが好ましい。120℃より低い重合温度が好ましい。90℃未満、特に60℃以下の温度が特に好ましい。
【0094】
本発明の目的は、98.0モル%以上の加水分解度を有する、固形分含量が溶液重量基準で10重量%未満のポリビニルアルコールの水溶液を基板上に塗布し、それによって湿潤フィルムを形成させるステップと、得られた湿潤フィルムを空気および/または熱に曝すことによって乾燥および/または硬化させるステップとを含む、重合性液晶またはメソゲン材料の平面配列のための配列層を製造する方法であって、そのポリビニルアルコールが純粋なまたは改質されたポリビニルアルコールであり、それによって、重合性液晶またはメソゲン材料をその上に直接塗布することができる非研磨外面を含む配列層を得る方法によっても達成される。
【0095】
上記したように、本発明に係る方法において使用できるポリビニルアルコールは、上記した加水分解度を有し、かつ、好ましくは高い重合度を有する純粋なまたは改質されたPVAである。純粋なまたは改質されたPVAとして特に有用な材料は上記に開示されている。改質されたPVAとしては、特に、前記特徴を有するEVOHを挙げておかなければならない。
【0096】
PVAの水溶液は、固形分含量が溶液重量に基づいて10重量%未満、好ましくは5〜8重量%である。「固形分」という用語は、PVA水溶液中に他の固体成分が溶解した状態で含まれているかどうかに拘わらず、ポリビニルアルコールだけを意味する。
【0097】
PVAの他に、水溶液は、同様に前述した界面活性剤および/または他の添加剤をさらに含むことができる。
【0098】
PVA水溶液は、適切な量の固体PVA粉末および任意成分として前記界面活性剤および/または他の成分を、約80〜100℃、特に95〜100℃、非常に好ましくは98〜100℃の温度で、通常混合物を撹拌しながら、水、好ましくは脱イオン水またはRO(逆浸透)水に溶解させて調製される。
【0099】
通常、PVAの水溶液は、用いようとする塗布方法に適した粘度を有していなければならない。その溶液の粘度の調節は、プリンティングおよび/またはコーティング分野で一般的であって、発明的な作業は全く必要ではない。
【0100】
これで、PVA水溶液は、次のコーティング工程で使用される準備が整う。
【0101】
PVA水溶液を塗布するためのコーティング法および/またはプリンティング法のうちでは、以下の方法、すなわち:フレキソ印刷コーティングまたはプリンティング、グラビアプリンティング、マイヤーバーコーティング、スピンコーティング、スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティングおよびスロットダイコーティングが好ましい。
【0102】
本発明の好ましい実施形態では、本発明に係る配列層を形成させるために、コーティングされる基板を、その少なくとも一方の表面においてその全体をPVA水溶液によってコーティングする。基板が全体にコーティングされたら、それに続く重合性LC材料の塗布は、生産者/消費者の自由な判断で、重合LC材料の目的とする配列(部分)領域をどこに局在化させるかによって、配列層の任意の領域で実施することができる。これによって特に、重合したときに自己支持性でないパターン化LC層の製造が可能となる。配列層全部を覆う連続LC層の製造が非常に簡単な形で可能であることは言うまでもない。
【0103】
他の実施形態によれば、もちろん、部分配列領域を基板上に形成させるために、対応する基板のみをPVA水溶液で部分的にコーティングすることも可能であり、これは、後続のステップにおいて重合性LC材料でオーバーコートすることができる。
【0104】
PVA水溶液は、任意の適切なコーティング法またはプリンティング法によって、湿潤厚さが約2μm〜20μm、好ましくは2μm〜10μm、特に4μm〜8μmとなるように塗布される。
【0105】
次いで、湿潤PVAコーティング層は、通常空気中で、約25℃〜150℃、好ましくは75℃〜100℃の温度で乾燥されて、本発明に係る配列層が得られる。乾燥は、空気以外の他の気体中でも、また真空中でも行うことができる。配列層は0.1μm〜2μm、特に0.1〜0.7μmの範囲の乾燥厚さを有する。
【0106】
配列層は高い結晶化度を示す。これは、使用される特定のPVAの高い加水分解度に起因すると考えられる。一旦乾燥されると、本発明の配列層は使用に供される準備が整う。配列層の少なくとも1つの表面上への塗布を目的とした重合性液晶またはメソゲン材料の均一な平面配列を達成するためには、研磨または任意の他の機械的処理は必要ではない。
【0107】
後続のステップで本発明に係る乾燥配列層上に塗布される重合性液晶またはメソゲン材料は、重合後に、好ましくは均一な平面配向を示すものである。
【0108】
したがって、本発明の他の目的は、平面配向した重合液晶材料を含む異方性ポリマーフィルムであって、前記配列層上に重合性液晶またはメソゲン材料を塗布し、それによって湿潤コーティング層が形成され、続いてその重合性液晶またはメソゲン材料を重合させ、それによってその湿潤コーティング層が平面配向した異方性重合フィルムに転換されることによって形成された異方性ポリマーフィルム、または、任意選択で前記配列層から取り除かれた異方性ポリマーフィルムによって達成される。
【0109】
そのような異方性ポリマーフィルムを製造するために、コーティング法またはプリンティング法によって、重合性液晶またはメソゲン材料が本発明に係る配列層上に塗布される。適切な技術は上記に開示されている。適切な場合、プリンティング法が好ましく、これはパターン化したおよび/または非連続的なLC層が製造される場合、特に好ましい。
【0110】
次いで、上記に開示したようにして湿潤LC層が重合される。重合させた後、特に、自己支持性ポリマーフィルムを形成する連続LC層が製造される場合、LC材料が平面配向した重合LCフィルムを、任意選択で、下にある配列層から取り除くことができる。この目的のために、重合LC層を機械的力で引きはがすか、または、PVA層を水で濯いで基板および配列層から重合LC層を分離させることができる。さらに、配列層と重合LC層で構成された二層系を、基板から取り除くことができる。これは通常機械的力を用いて行なわれる。そのような場合、重合LC層に隣接して残る配列層は、重合LC層を機械的に強化するための手段、ならびに保護手段として作用することができる。基板は、別個の離脱層によって配列層/重合LC層から分離することもできる。そのような離脱層は、重合LC層と一緒に配列層が前記二層系として取り除かれる場合に特に有利である。これらの離脱層用に使用できる材料は当技術分野で公知である。次いで、自己支持性重合LC層は、任意の種類の層状構造物を含む、任意の所望製品中に組み込むことができる。
【0111】
配列層および平面配向した重合LCフィルムを含む積層は、PVA層と前記重合性LC層を、それぞれを他方の上部に交互にコーティングすることによって製造することもできる。その重合LC層は、任意選択で、後に配列層から取り除くことができる。
【0112】
それでも、大部分の所望の装飾用途および/またはセキュリティー用途のためには、基板、配列層および重合LC層が層状構造物中に一緒に保持されることは有利である。その層状構造物は、必要に応じて、そのまま使用するか、1つもしくは複数の追加の層でオーバーコートするか、または適宜任意の所望の製品上もしくはその中に含めることができる。
【0113】
したがって、本発明の他の目的は、前記配列層、その配列層の非研磨表面上に直接配置された平面配向した重合液晶材料、およびその配列層の非研磨表面の裏面上に配置された基板を含む層状構造物によって達成される。
【0114】
この種の層状構造物は前記の光学的用途で使用することができるが、特に装飾用途およびセキュリティー用途で使用することができる。これらはそのままで使用しても、また、ホットスタンピングホイル、多機能性ラベル等の多層製品中に含めて使用してもよい。この目的のためには、それらを、いくつかのタイプのキャリア材料上に塗布するか、あるいはオーバーコートする、オーバープリントする、金属化するかまたは別の層で覆うことができる。
【0115】
これらの追加的な層は、平面配向した重合LC層の外面上か、配列層を担持しない基板の表面上か、場合によってはその両方の上に塗布することができる。
【0116】
前記タイプの層状構造物は、どんな種類の製品表面上(通常、その層状構造物がそこでセキュリティーデバイスとして確実に作用するようにしなければならない製品上)にも塗布することができ、任意選択で、その製品の寿命の間の任意の時間に、平面配向した重合LC層から基板を取り除き、それによって、その配列層がさらに離脱層として作用するようにすることができる。
【0117】
本発明の他の目的は、前記の異方性ポリマーフィルムまたは層状構造物を含む製品によって達成される。
【0118】
すでに述べたように、このタイプの製品は、補償板、位相差層、使用するLC材料に応じた円形ならびに線状の偏光板、カラーフィルターまたはホログラフィック素子、液晶効果顔料、異方性の機械的特性を有する合成樹脂、非線形光学素子、光学式記録または情報記憶媒体等のような光学素子などの製品であってよい。特に、本発明の製品は、装飾用途および/またはセキュリティー用途、好ましくは、紙幣またはIDカードのような価値の高い文書の製品もしくは識別用のラベルまたはセキュリティーマーキングに使用される。
【0119】
したがって、本発明による製品は、好ましくは装飾用および/またはセキュリティー用の製品である。
【0120】
本発明の装飾用および/またはセキュリティー用の製品とは、紙幣、旅券、身元確認資料、スマートカード、運転免許証、株券、証書、小切手、小切手保証カード、税金バンデロール(tax banderol)、郵便切手、切符、クレジットカード、デビットカード、テレホンカード、宝くじ券およびギフト券を意味するが、また、ポリマーおよび/または金属(化)箔をベースとした包装材料、紙もしくはカード紙、壁紙、ティッシュ材料、製品ラベル、または靴、衣類、化粧品、スポーツ用品、コンピューターハードウェアおよびソフトウェアなどの上の装飾用素子もしくはラベルをも意味する。
【0121】
この種の製品は、様々な支持材料、種々のタイプのLC材料の重合LC層、および様々な光学性能を必要とする。したがって、程度が大いに異なる材料(金属、紙系、ポリマー)でできた支持材料に塗布でき、著しく異なる光学的結果を得るための平面配列ネマチックならびにコレステリックLC材料に使用できる、本発明に係る配列層は、装飾用およびセキュリティー用の製品の製造において大きな利点をもたらす用途の広い配列層である。さらに、本発明の配列層ならびにそれから得られる製品(基板、配列層および異方性LC層を含む平面配列層状構造物を有する異方性ネマチックまたはコレステリックポリマーフィルム)は、簡単で安価な仕方で製造することができる。適切な配列層を得るのに有機溶媒も高い硬化温度も必要とせず、また、配列層が、その上に塗布された(有機)溶媒ベースのLC層によって劣化することもない。
【0122】
したがって本発明の配列層は、様々な目的のための平面配列ポリマーLC層の製造に有用な手段である。
【実施例】
【0123】
本発明を、以下の実施例ならびに図1および図2でより詳細に説明する。これらは単に例示するためであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0124】
図1は、オーシャンオプティクス社製の分光光度計を用いて測定した、PVAフィルムを製造するための試料、溶液1〜4を用いた種々のOH含量を有するPVAフィルム上、ならびに、比較試料としてPVA層を有しないPET基板上に塗布されたコレステリックLCコーティング層のUV可視スペクトルを示している。
【0125】
図2は、OH含量が99モル%以上である、溶液4および5を用いた硬化した、および硬化していないエチレン改質PVA上、ならびに、比較試料としてPVA層を有しないPET基板上に塗布されたコレステリックLCコーティング層のUV可視スペクトルを示している。
【0126】
前記および以下の実施例において、別段の指定のない限り、すべての温度は未補正の摂氏で示されており、すべての部および%は重量ベースである。
【0127】
〔実施例1〕
PVA試料中のOHのモル%を変化させることの効果、および、PVA樹脂の上部に塗布された液晶フィルムに対してこれが及ぼす効果を示すために、プリントを調製する。
【0128】
PVA溶液の調製:
PVA試料を、溶液重量に基づいて7%固形分で脱イオン水中に溶解させる。以下では、PVAはPVOHとも表される。
【0129】
4つの異なる試料を調製する。
・溶液1:96モル%を超えるが98モル%(PVOH96+%)より低い加水分解度を示すPVA(アルドリッチ社から入手、カタログ番号363111)。
・溶液2:98〜99モル%(PVOH98〜99%)の加水分解度を示すPVA(アルドリッチ社から入手、カタログ番号363154)。
・溶液3:99モル%(PVOH99+%)を超える加水分解度を示すPVA(アルドリッチ社から入手、カタログ番号363146)。
・溶液4:クラレ社から入手したExceval(登録商標)HR3010。これはエチレン改質PVA(エチレンmodPVOH99+%OH)である。
【0130】
磁気撹拌子を用いて撹拌しながら、水を98〜100℃で加熱する。約20分後、すべての試料は溶液になる。これらの溶液を、開示されていない表面コーティング層を有する独占的に保護された(proprietary)PET基板上にコーティングする。しかしながら、同様の効果は、多くの種々の基板について認められる。PVA製品のそれぞれを、6μmの湿潤コーティングを施しながらKバーNo.1を備えたKコントロールコーターを用いてコーティングする。確実に同じ条件になるように、PVOH試料はすべてサイドバイサイドに並べて塗布される。次いでそれらはホットプレート上で、70℃で2分間乾燥される。乾燥されたPVA層のそれぞれは厚さが約0.4μmである。KバーNo.2を備えたKコントロールコーターを用いて、コレステリックLC(45%固形分)をPVA層のそれぞれの上部に塗布し、12μm湿潤コーティングを行う。次いでコーティングされた基板をホットプレート上で、60℃で3分間置く。次いで得られたフィルムを、フュージョン−システムズ社製の硬化装置、600ワット/直線インチ(240ワット/cm)を用いて、100%出力、50m/分のコンベヤ速度で、この装置に1回通して硬化させる。
【0131】
前記4つの試料、ならびに、同じコレステリックLCコーティング層を有しているがPVAコーティング層を全く担持していない比較試料としての基板について、UV可視スペクトルを取る。
【0132】
図1に示された曲線は、オーシャンオプティクス社製の分光光度計モデルUSB4000に取り付けた分岐ケーブル、およびLS1照明光源を用いて測定したUV可視スペクトルである。エチレン改質PVA(エチレンmodPVOH(99+%OH))Exceval(登録商標)HR3010とPVOH99+%OHの両方は非常に類似した結果を明確に示しており、98〜99%OHでは弱いがプラス効果が認められ、96%OHでの結果はコーティング層なしの場合の効果と同様である。
【0133】
〔実施例2〕
改質PVA樹脂(エチレンmodPVOH(99+%OH))に硬化剤を添加した効果を検討するものである。
【0134】
実施例1で調製したようにして、エチレン改質PVA(エチレンmodPVOH(99+モル%OH))、樹脂溶液4を用いて、2つの溶液を調製する。
【0135】
第1の試料では、前記と同様の溶液が使用される。
【0136】
第2の試料(溶液5)のために、エチレン改質PVAの溶液に、樹脂固形分をベースにして20%のグリオキサルが加えられる(50%水溶液)。これにより、樹脂固形分に対して10%のグリオキサルが得られる。こうして、エチレン改質PVA6.9%、グリオキサル0.69%および水92.41%の配合物が得られる。
【0137】
2つの溶液のエチレン改質PVOH(99+モル%OH)(溶液4)とエチレン改質PVOH(99+モル%OH)+対樹脂固形分基準で10%グリオキサル(溶液5)をサイドバイサイドで並べて、KバーNo.1を用いてコーティングして6μm湿潤フィルム(乾燥後には0.4μの乾燥フィルムとなる)を得る。次いで、これをホットプレート上で、100℃で1時間保持して、溶液5を確実に完全に硬化させる。
【0138】
図2に示した結果は、PVA樹脂が硬化された場合、性能がわずかに悪化することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列層の表面上に塗布された重合性液晶またはメソゲン材料の平面配列のための配列層であって、前記配列層が、加水分解度が98.0モル%以上であるポリビニルアルコールの水溶液を乾燥および/または硬化したものを含み、前記ポリビニルアルコールが、純粋なまたは改質されたポリビニルアルコールである配列層。
【請求項2】
その上に重合性液晶またはメソゲン材料が塗布されている前記配列層の表面が、前記重合性液晶またはメソゲン材料を塗布される前に、研磨処理を全くかけられていない、請求項1に記載の配列層。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコールが、炭素原子が4個未満のα−オレフィンで改質されている、請求項1または2に記載の配列層。
【請求項4】
前記ポリビニルアルコールがエチレンで改質されている、請求項1〜3のいずれかの一項に記載の配列層。
【請求項5】
前記重合性液晶またはメソゲン材料が、ネマチックまたはキラルネマチック(コレステリック)液晶材料である、請求項1〜4のいずれかの一項に記載の配列層。
【請求項6】
界面活性剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれかの一項に記載の配列層。
【請求項7】
前記配列層が基板上に配置されている、請求項1〜6のいずれかの一項に記載の配列層。
【請求項8】
98.0モル%以上の加水分解度を有する、固形分含量が溶液重量基準で10重量%未満のポリビニルアルコールの水溶液を基板上に塗布し、それによって湿潤フィルムを形成させるステップと、得られた湿潤フィルムを空気および/または熱に曝すことによって乾燥および/または硬化させるステップとを含む、重合性液晶またはメソゲン材料の平面配列のための配列層を製造する方法であって、前記ポリビニルアルコールが純粋なまたは改質されたポリビニルアルコールであり、それによって、重合性液晶またはメソゲン材料をその上に直接塗布することができる非研磨外表面を含む配列層を製造する方法。
【請求項9】
前記ポリビニルアルコールが、炭素原子が4個未満のα−オレフィンで改質されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリビニルアルコールがエチレンで改質されている、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
ポリビニルアルコールの前記水溶液が、コーティング法またはプリンティング法によって基板上に塗布される、請求項8〜10のいずれかの一項に記載の方法。
【請求項12】
平面配向した重合液晶材料を含む異方性ポリマーフィルムであって、請求項1〜7のいずれかの一項に記載の配列層上に重合性液晶またはメソゲン材料を塗布し、それによって湿潤コーティング層が形成され、続いて前記重合性液晶またはメソゲン材料を重合させ、それによって前記湿潤コーティング層が平面配向した異方性重合フィルムに転換されることによって形成された異方性ポリマーフィルム、または、前記配列層から取り除かれた異方性ポリマーフィルム。
【請求項13】
前記配列層が基板上に配置されており、前記液晶またはメソゲン材料の平面配向した異方性重合フィルムへの転換に続いて、前記配列層が異方性重合フィルムと一緒に二層系の形で前記基板から取り除かれた、請求項12に記載の異方性ポリマーフィルム。
【請求項14】
前記重合性液晶またはメソゲン材料が、コーティング法またはプリンティング法によって前記配列層上に塗布された請求項12または13に記載の異方性ポリマーフィルム。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれかの一項に記載の配列層、該配列層の非研磨表面上に直接配置された平面配向した重合液晶材料、および前記配列層の非研磨表面の裏面上に配置された基板を含む層状構造物。
【請求項16】
請求項12〜14のいずれかの一項に記載の異方性ポリマーフィルムまたは請求項15に記載の層状構造物を含む製品。
【請求項17】
装飾用またはセキュリティー用の製品である、請求項16に記載の製品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−95748(P2011−95748A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−239726(P2010−239726)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】