説明

重合性組成物

【目的】 新規な重合開始システムによって重合硬化する組成物を提供する。
【構成】 重合性不飽和化合物、ホウ素系重合開始剤及び酸性化合物を含有する重合性組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な重合開始システムによって重合硬化する組成物に関する。更に詳しくは、重合性不飽和化合物の存在下、ホウ素系重合開始剤を酸性化合物との反応により分解させてラジカルを発生させ、重合させることの出来る重合性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来ラジカル重合開始剤は、熱によって分解しラジカルを発生する化合物、すなわち有機ジアゾ化合物、有機過酸化物、有機過酸及びそのエステル等、あるいは紫外線等の光照射によって分子が開裂してラジカルを発生し、重合を開始する化合物、すなわちアセトフェノン類、チオキサントン類、ベンゾフェノン類などが知られている。しかし熱ラジカル開始剤は、熱によって分解するという特徴故に、化合物自体の熱安定性に問題があるので低温保存が必要であり、また製造、保存時における安全性にも問題があり、爆発などの危険性があった。また光ラジカル重合開始剤は重合を開始させるために適当な光源が必要であり紫外線重合の場合だと高圧水銀ランプなどの高価な設備が必要であると共に、紫外線による発ガン性、オゾン発生等の危険性が指摘されている。
【0003】一方、有機ホウ素化合物をラジカル重合開始剤に用いる例としては、トリエチルホウ素等のトリアルキルホウ素化合物を酸素の存在下分解して重合性不飽和化合物をラジカル重合する例が知られている(例えば工業化学雑誌第61巻728頁 1958年発行)。しかし有機ホウ素化合物は空気中では非常に不安定で発火等の危険性があり、一般的に用いるのは困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来化合物の安定性が低く重合開始剤として工業的な使用が困難であった有機ホウ素化合物を用いて、安全性に優れた重合性組成物を提供することを目的する。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らはこの課題を解決するために、ホウ素原子に3個の置換基が付いたトリアルキルホウ素化合物よりも安定で安全性の高い、ホウ素原子にアルキル基、アリール基などの置換基が4個付いた4配位のホウ素化合物を重合開始剤として用いる方法を鋭意検討した結果、重合性不飽和化合物を含有する組成物に4配位ホウ素化合物及び酸性化合物を共存させることにより重合性組成物が得られ、重合が開始されることを見いだし、本発明を完成するに至つた。
【0006】4配位ホウ素化合物を重合に用いる例としては、光吸収性カチオン色素とのイオン対を用いて光照射により重合を開始させる方法が知られていたが(例えば特開昭62−143044号公報、特開平1−111402号公報)、4配位ホウ素化合物を酸性化合物と組み合わせて重合開始剤として用いる例は全く知られていなかった。すなわち本発明によれば、重合性不飽和化合物と一般式(1)で表わされる4配位ホウ素化合物、
【0007】一般式(1);
【化2】


【0008】(式中、R1 、R2 、R3 及びR4 はそれぞれ独立してアルキル基、アリール基、アリル基,アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基、複素環基、置換アルキル基、置換アリール基、置換アリル基、置換アラルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基または置換シリル基を示し、Z+ は4級アンモニウム陽イオン、4級ピリジニウム陽イオン、4級キノリニウム陽イオン、ホスホニウム陽イオンまたは金属陽イオンを示す)及び酸性化合物を組み合わせて組成物となすことにより本発明の重合性組成物が得られる。
【0009】本発明における重合反応の機構は必ずしも明確にはなっていないが、一般式(1)の4配位ホウ素化合物と酸性化合物が共存することで4配位ホウ素化合物の分解が起こって3配位のホウ素化合物が生成し、更に3配位ホウ素化合物が系中に存在する酸素により分解してラジカルが発生し重合が開始されると推定されている。本発明における重合開始剤は一般式(1)で表わされるが、式中に記載の陽イオン(Z+ )は一般式(2)
【0010】一般式(2);
【化3】


(式中、R5 、R6 、R7 及びR8 はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、置換アルキル基、置換アリール基、置換アリル基、置換アラルキル基、置換アルケニル基または置換アルキニル基を示す)
【0011】で表わされる4級アンモニウム陽イオンまたは4級ピリジニウム陽イオン、4級キノリニウム陽イオン、ホスホニウム陽イオン、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属イオン等の金属陽イオン等があげられ、
【0012】本発明の開始剤であるホウ素系化合物の具体的な例としては、モノアルキルトリフェニルホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、ナフチル基など)のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリメチルハイドロゲンアンモニウム塩、トリエチルハイドロゲンアンモニウム塩、テトラハイドロゲンアンモニウム塩、
【0013】メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩、モノアルキルトリアニシルホウ素(アルキル基は上記と同様)のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリメチルハイドロゲンアンモニウム塩、トリエチルハイドロゲンアンモニウム塩、テトラハイドロゲンアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩、
【0014】ジアルキルジフェニルホウ素(アルキル基は上記と同様)のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、ジアルキルジアニシルホウ素(アルキル基は上記と同様)のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、
【0015】メチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、テトラフェニルホウ素のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラアニシルホウ素のナトリウム塩、リチウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、
【0016】テトラn−ブチルホウ素のナトリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩、トリn−ブチル( トリフェニルシリル) ホウ素のテトラメチルアンモニウム塩 、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、
【0017】トリn−ブチル( ジメチルフェニルシリル) ホウ素のテトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、n−オクチルジフェニル( ジn−ブチルフェニルシリル) ホウ素のテトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、ジメチルフェニル( トリメチルシリル) ホウ素の、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩などがあげられる。これらのホウ素系化合物は単独または2種以上を混合して用いることもできる。
【0018】本発明で用いられる重合性不飽和化合物とは重合性不飽和モノマーあるいは重合性不飽和オリゴマー、ポリマーのいずれかあるいは混合物であり、例えば特開平4−362935号公報、特願平4−175767号明細書に記載されたものを挙げることが出来る。これらの重合性モノマー、オリゴマー、ポリマーなどは各々単独、或いは2種類以上混合して用いることが出来る。
【0019】重合性不飽和モノマーとしては例えば、(メタ)アクリル酸と1価アルコールとのエステル化物、スチレン、ビニルトルエン、クロルスチレンなどのビニルベンゼン類、ビニルイソブチルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド等の(メタ)アクリル化合物類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、
【0020】アリルアルコール、酢酸アリル、フタル酸ジアリル類等のアリル基を含有するモノマー等が挙げられる。さらに該モノマーとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー;ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネートなどのポリイソシアネートと上記水酸基含有モノマーとの付加物;リン酸と上記水酸基含有モノマーとの付加物;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、Nービニルアセトアミド、ビニルピリジン類などの含窒素不飽和モノマーなども使用できる。
【0021】さらに該モノマーとして、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどのジ−、トリ−またはテトラビニル化合物;前記の多価アルコールとエチレンオキシドとの付加物にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応せしめた生成物;前記の多価アルコールとプロピレンオキシドとの付加物にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応せしめた生成物;前記の多価アルコールとε−カプロラクトンとの付加物にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応せしめた生成物;含リン重合性不飽和モノマー等が包含され、
【0022】また重合性不飽和ポリマーの具体例としては、ポリエステル(メタ)アクリル酸を縮合させた樹脂、エチレン性不飽和基含有ポリウレタン樹脂、エチレン性不飽和基含有エポキシ樹脂、エチレン性不飽和基含有含リンエポキシ樹脂、エチレン性不飽和基含有アクリル樹脂、エチレン性不飽和基含有シリコン樹脂、エチレン性不飽和基含有メラミン樹脂などがあげられる。特に特開平4−28722号公報に開示されている(メタ)アクリル官能性ポリオルガノシルセスキオキサンが好適である。
【0023】また本発明の酸性化合物は水溶液中での酸解離指数(pKa値)が10以下の酸が好ましい。具体的には例えば一般の無機酸、有機酸等が挙げられ、無機酸は例えば塩酸、燐酸、硝酸、硫酸、亜硫酸等、有機酸は例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族カルボン酸類、
【0024】安息香酸、フタル酸、トリメリット酸等の芳香族カルボン酸類、クロル酢酸、ジクロル酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、パーフルオロプロピオン酸等のハロゲン置換カルボン酸類、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、フェノール、カテコール、レゾルシン、フロログルシノール、クレゾール等のフェノール類等が挙げられる。
【0025】一般に酸性度が強いほど開始剤の分解が促進され、重合が速やかに進むので、保存安定性を高めるためにはやや酸性度の低い酸性化合物を用いて材料を製造して低温保存し、使用時に加熱などの操作によって重合を促進する方法が好ましい。また重合を行う直前に酸性化合物以外の成分を混合した組成物中に酸性化合物を添加することによって重合を開始せしめることも可能である。
【0026】また、光照射によって酸性化合物を発生する化合物が一般に知られており、例えば光カチオン重合開始剤と呼ばれて広く利用されているが、これらの化合物も本発明における酸性化合物に該当する。すなわちそれらの化合物を本発明のホウ素系重合開始剤と共存させ、紫外線などの光を照射することによって光カチオン重合開始剤等の化合物を分解せしめ、発生した酸性化合物によって本発明のホウ素系重合開始剤を分解させラジカル重合を行うことも出来る。光カチオン重合開始剤の例としては、ジアゾニウム化合物、スルホニウム化合物、ヨードニウム化合物、金属錯体化合物等様々な化合物が知られており、「機能材料」1985年10月号5頁、「UV・EB硬化技術の応用と市場」シーエムシー社1989年発行78頁等に詳細な記述がある。一般に光カチオン重合開始剤のみではラジカル重合を生起させることは出来ない。重合させる際に重合速度を上げる目的で適度な加熱を行ってもよい。
【0027】なお、本発明における酸解離指数とは、酸解離定数の逆数の対数値で、例えば「化学便覧基礎編」丸善社刊1984年発行339頁に詳細な記載がある。また本発明の重合性組成物は、従来知られている他の重合システムと併用することも出来る。例えば光吸収性カチオン色素化合物を用いる重合開始システム(例えば特開昭62−143044号公報、特開平1−111402号公報)との組み合わせ、すなわち光吸収性色素、本発明の4配位ホウ素化合物、及び本発明の酸性化合物とを組み合わせ、光照射によるラジカル発生と酸性化合物によるラジカル発生を同時に起こさせ、相乗効果により短時間に温和な条件で共存する重合性不飽和化合物を重合せしめることも出来る。
【0028】本発明における重合性組成物に任意の顔料、着色染料等を添加することが出来る。具体例としては、カーボンブラック、チタンブラック等の黒色顔料、チタンホワイト、クレー等の白色顔料、アルミパウダー、アルミペースト、金粉、銀粉等のメタル系顔料をはじめとする市販の各種顔料等の他、各種文献など(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊、「最新顔料便覧」日本顔料技術協会編集、昭和51年刊)に記載されている公知のもの等が使用できる。
【0029】また本発明において、重合系組成物に任意の充填剤などを添加することが出来る。ここでいう充填剤としては、有機物、無機物、或いはそれらの複合物、混合物が挙げられる。有機の充填剤としては、例えば重合物を微細に粉砕したものが挙げられ、また無機の充填剤としては、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ、石英、ガラス、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、リン酸カルシウム等の粉末及びそれら粉末の表面を多官能(メタ)アクリレート系モノマーまたはシランカップリング剤で被覆処理したもの等が挙げられる。また複合物には上記無機充填剤をエチレン性不飽和化合物に混合し、重合硬化させた後に微細に粉砕したもの等が挙げられる。また異種の充填剤を2種以上別途に添加、或いは混合した後に添加しても何等差し支えない。
【0030】本発明における一般式(1)で表される重合開始剤は、硬化系配合物の0.001重量%以上用いることにより本発明の目的を達成することが出来る。それ以下だと重合が充分に行われず、硬化が不十分に終わるおそれがある。好ましくは、0.01〜10重量%の範囲である。大量に用いすぎることは、経済的観点上、好ましくない。また本発明の酸性化合物の量は酸の強度、重合開始剤の安定性、重合性不飽和化合物の重合性、所望の重合速度などによって最適値が異なるが、一般にはホウ素系重合開始剤の0.1〜1000モル等量添加される。
【0031】本発明の重合性組成物は無溶剤型の硬化性組成物として利用可能であり、地球環境改善に寄与することが期待される。勿論、従来の溶剤で希釈した形で用いることも出来る。その際に用い得る溶剤としては、従来の塗料用に用いられている一般の溶剤等、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル類、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のエチレングリコールのモノエーテル類等が使用可能である。これらの溶剤は1種または2種以上を混合して使用することが出来る。これらの溶剤は材料の粘度調製、組成物の相溶性、作業性向上等の機能も有するので、状況に応じて適宜適量添加することが出来る。
【0032】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明する。なお、硬化物の評価における硬化とは、硬化後の塗膜の表面及びカッターナイフで硬化塗膜を傷つけた塗膜の内面を目視観察及び手で触れ、べとつき、タックが全くない状態をいう。
【0033】(実施例1)ペンタエリスリトールトリアクリレート10g、テトラブチルアンモニウムn−ブチルトリフェニルホウ素0.1g、トリクロル酢酸(酸解離指数pKa=0.65)0.1gを充分に混合し、アルミ基板に250μmの厚さで塗布した。約3分後に重合が始まり、サンプルは硬化した。
【0034】(実施例2)トリクロル酢酸に変えて酢酸(pKa=4.76)を用いる以外は実施例1と同様にサンプルを製作した。塗布基板を80℃に加熱すると、重合が開始し、サンプルが硬化した。
【0035】(実施例3)トリクロル酢酸に変えて光カチオン重合開始剤であるトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロリン(Ph3+ ・PF6-)を用いる以外は実施例1と同様にサンプルを製作した。波長800nm〜950nmの範囲に分光分布を有する出力1500Wのハロゲンランプを5分間照射した。カチオン重合開始剤の光反応によって生成する酸がホウ素化合物を分解し、サンプルは硬化した。
【0036】(実施例4)トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロリンに変えてジフェニルヨードニウムヘキサフルオロリン(Ph2+ ・PF6-)を用いる以外は実施例3と同様にサンプル4を作成し、硬化試験を行った。実施例3と同様、ハロゲン光を照射することによりサンプルは硬化した。
【0037】(実施例5)ペンタエリスリトールトリアクリレートに変えて、トリエチレングリコールジアクリレートを用いる以外は実施例1と同様にサンプル5を作成した。塗布サンプルは約5分後に重合が開始し、サンプルが硬化した。
【0038】(実施例6)実施例1の組成物に更にアルミペースト(商品名SAP561PS 昭和アルミパウダー社製)0.5gを添加する以外は実施例1と同様にサンプル6を作成した。塗布サンプルは約3分後に重合が開始し、サンプルが硬化した。
【0039】(実施例7)実施例2の組成物に、近赤外光吸収性色素1,1,5,5−テトラキス[4−(ジエチルアミノ)フェニル]ペンタジエニリウムブチルトリフェニルボレート0.1gを添加する以外は実施例2と同様にサンプル7を作成した。塗布サンプルに波長800nm〜950nmの範囲に分光分布を有する出力1500Wのハロゲンランプを1分間照射したところ、サンプルが硬化した。
【0040】(実施例8)テトラブチルアンモニウムn−ブチルトリフェニルホウ素0.1gに変えてエチルピリジニウムn−ブチルトリフェニルホウ素を用いる以外は実施例1と同様にサンプル8を作成した。塗布サンプルは約10分後に重合開始し、サンプルが硬化した。
【0041】(実施例9)テトラブチルアンモニウムn−ブチルトリフェニルホウ素0.1gに変えてテトラブチルアンモニウムジ−n−ブチルジフェニルホウ素を用いる以外は実施例2と同様にサンプル9を合成した。塗布サンプルは約3分後に重合開始し、サンプルは硬化した。
【0042】(実施例10)実施例2と同じ組成の混合物を等量のトルエンで希釈し、鋼板上に50g/m2 付着するようスプレーコーティングした。このサンプルを80℃に加熱すると重合が開始し、硬化した。
【0043】(比較例1)テトラブチルアンモニウムn−ブチルトリフェニルホウ素を添加しない以外は実施例1と同様にサンプルaを作成した。塗布サンプルは1日以上放置しても重合は開始せず、サンプルは硬化しなかった。
【0044】(比較例2)トリクロル酢酸を添加しない以外は実施例1と同様にサンプルbを作成した。塗布サンプルは1日以上放置しても重合は開始せず、サンプルは硬化しなかった。
【0045】
【発明の効果】本発明により、従来知られていなかった4置換ホウ素アニオン構造を有する化合物と酸性化合物及び酸素との組み合わせで、共存させた重合性不飽和化合物を重合可能な組成物が提供された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 重合性不飽和化合物、一般式(1)で表わされるホウ素系重合開始剤、及び酸性化合物を含有することを特徴とする重合性組成物。一般式(1);
【化1】


(式中、R1 、R2 、R3 及びR4 はそれぞれ独立してアルキル基、アリール基、アリル基,アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基、複素環基、置換アルキル基、置換アリール基、置換アリル基、置換アラルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基または置換シリル基を示し、Z+ は4級アンモニウム陽イオン、4級ピリジニウム陽イオン、4級キノリニウム陽イオン、ホスホニウム陽イオン、または金属陽イオンを示す)
【請求項2】 酸性化合物が水溶液中での酸解離指数が10以下の酸、あるいは光照射によって酸を生成する化合物であることを特徴とする請求項1の重合性組成物。