説明

重合開始剤およびそれを用いた重合体の製造方法

【課題】簡便性に優れた重合開始剤を提供する。
【解決手段】環状エーテル構造を有する環状エーテル化合物の重合反応に用いる、下記一般式(1)で示される環状オキソアンモニウムカチオン塩からなる重合開始剤。
【化1】


[一般式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に置換または無置換のアルキル基である。Xは、炭素原子、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子から選択される環員を構成する原子であり、同一でも異なっていてもよい。ただし、Xは、ポリマーの主鎖または側鎖の一部を構成してもよい。nは、2または3の整数である。Yは、ハロゲン原子、リン化合物、ホウ素化合物、フッ素化合物、過塩素酸化合物、窒素酸化合物またはイミド化合物のいずれかである。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合開始剤およびそれを用いた重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なポリエーテル化合物の合成においては、通常、環状エーテル化合物のモノマーと、BFEtO(三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体)、EtAlCl(エチルアルミニウムジクロリド)、EtAlCl(ジエチルアルミニウムクロリド)、TiCl(四塩化チタン)などのカチオン重合開始剤と、を用いて合成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3687736号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M.Shibuya et al, Journal of the American Chemical Society, 2006, Vol.128, No.26 8412−8413
【非特許文献2】TCIメール(東京化成工業株式会社)、2010年4月、146号、2頁、4頁
【非特許文献3】C.J.Hawker et al, Journal of the American Chemical Society, 1994, Vol.116, No.24 11185−11186
【非特許文献4】J.M.Bobbitt et al, HETEROCYCLES, 1990, Vol.30, No.2 1131−1140
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のBFEtO、EtAlCl、EtAlCl、TiCl等のカチオン重合開始剤は、水分に対して非常に敏感であり、空気中の水分と接触することでさえも分解してしまう。このため、これらのカチオン開始剤を用いる場合、反応系内に水分が残っていると、重合開始剤が水と反応してしまうために、重合が全く進行しないことがある。従って、重合反応の操作においては、モノマーや溶媒中の水分量を極限まで減らす必要があった。
【0006】
そこで、本発明者が検討した結果、大気中で安定なオキソアンモニウムカチオン塩を重合開始剤に用いることで、過度の脱水工程が必要なくなるため、簡便な操作により、ポリエーテル化合物の重合反応を行うことができることが判明した。
【0007】
また、オキソアンモニウムカチオン(NO)塩とは、ニトロキシドラジカル(NO・)が1電子酸化した状態であり、非常に強力な酸化力を有する。これまでにニトロキシドラジカル(NO・)は、アルコールの酸化剤として用いられる(非特許文献1および2)。その他に、ニトロキシドラジカル(NO・)は、スチレンのラジカル重合開始剤としての報告例もある(非特許文献3)。
【0008】
しかしながら、これまでオキソアンモニウムカチオン(NO)塩がラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合の開始剤として用いたられた報告例はなく、ましてや環状エーテル化合物の重合開始剤として用いられた報告例もない。
【0009】
本発明は、簡便性に優れた重合開始剤およびそれを用いた重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、
環状エーテル構造を有する環状エーテル化合物の重合反応に用いる、下記一般式(1)で示される環状オキソアンモニウムカチオン塩からなる重合開始剤が提供される。
【化1】

[一般式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に置換または無置換のアルキル基である。Xは、炭素原子、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子から選択される環員を構成する原子であり、同一でも異なっていてもよい。ただし、Xは、ポリマーの主鎖または側鎖の一部を構成してもよい。nは、2または3の整数である。Yは、ハロゲン原子、リン化合物、ホウ素化合物、フッ素化合物、過塩素酸化合物、窒素酸化合物またはイミド化合物のいずれかである。]
【0011】
本発明によれば、
上記重合開始剤を用いて、環状エーテル構造を有する環状エーテル化合物の重合反応を行う、重合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便性に優れた重合開始剤およびそれを用いた重合体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
【0014】
本発明の重合開始剤は、環状エーテル構造を有する環状エーテル化合物の重合反応に用いるものであり、環状オキソアンモニウムカチオン塩で構成される。この環状オキソアンモニウムカチオン塩は、下記一般式(1)で示されることが好ましい。
【0015】
【化2】

一般式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に置換または無置換のアルキル基である。Xは、炭素原子、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子から選択される環員を構成する原子であり、同一でも異なっていてもよい。ただし、Xは、ポリマーの主鎖または側鎖の一部を構成してもよい。nは、2または3の整数である。Yは、ハロゲン原子、リン化合物、ホウ素化合物、フッ素化合物、過塩素酸化合物、窒素酸化合物またはイミド化合物である。
【0016】
一般式(1)において、R〜Rは、特に限定されないが、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、入手容易性の観点から、メチル基がより好ましい。アルキル基の置換基としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子またはハロゲン原子等が挙げられる。
【0017】
一般式(1)において、Xは、ポリマー側鎖の一部を構成することにより、またはポリマーの主鎖を構成すことにより、本発明に係る環状オキソアンモニウムカチオン塩はポリマーになることができる。
ここでは、一般式(1)に示す−(X)n−は、上記一般式(1)が5員環または6員環を形成するような2価の基を表す。−(X)n−基において、環員を構成する原子は、炭素、酸素、窒素、または硫黄が好ましい。−(X)n−は、例えば、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH=CH−、−CH=CHCH2−、−CH=CHCH2CH2−等が挙げられる。この中で、隣接しない−CH2−は、−O−、−NH−または−S−によって置き換えられていてもよく、−CH=は−N=によって置き換えられていてもよい。また、環を構成する原子に結合した水素原子は、アルキル基、ハロゲン原子、=O等により置換されていてもよい。
【0018】
また、一般式(1)において、重合開始剤のアニオンの構造Yは、Cl、Br、I等のハロゲン原子、ClO等の過塩素酸化合物、NO等の窒素酸化合物、PF(六フッ化リン酸)等のリン化合物、BF(四フッ化ホウ酸)等のホウ素化合物、SbF(六フッ化アンチモン酸)またはTFS(トリフルオロメタンスルホン酸)等のフッ素化合物、TFSI(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)またはBETI(ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド)等のイミド化合物、などの様々な構造が挙げられる。アニオンYは、反応性の観点から、PFアニオンが好ましい。
【0019】
本発明の重合開始剤においては、カチオン部分の構造が5員環のもの(PROXYL構造)または6員環のもの(TEMPO構造)が例示されるが、入手容易性の観点から6員環(TEMPO)構造を有するほうが好ましい。すなわち、一般式(1)において、nは2が好ましい。
【0020】
このような環状オキソアンモニウムカチオン塩は、対応するニトロキシドラジカルにHBF、HClOなどの酸を反応させる方法で合成することが出来る(例えば、非特許文献4)。例えば、ニトロキシドラジカルと酸との反応式を、下記式(4)に示す。また、これらのオキソアンモニウムカチオンの一部は、試薬メーカー等で市販されているものを使用できる(例えば、非特許文献5)。
【0021】
【化3】

【0022】
一般式(1)で表される本発明の重合開始剤の例として、下記式(5)〜(20)で表される環状オキソアンモニウムカチオン塩が挙げられる。なお、本発明の重合開始剤は、これらの例に限定されるものではなく、様々な態様が考えられることは言うまでもない。
【0023】
【化4】

【化5】

【化6】

(7)
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【0024】
また、本発明に係る環状エーテル化合物としては、環状エーテル構造を有していれば特に限定されないが、反応性の観点から3員環化合物、4員環化合物、5員環化合物または6員環化合物が好ましい。このような本発明に係る環状エーテル化合物は下記一般式(2)で表されることが好ましい。
【0025】
【化20】

一般式(2)において、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、アリール基、アルキル基のいずれかであり、これらは置換基を有してもよい。mは、1〜4の整数である。
【0026】
一般式(2)において、アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、置換または無置換のアリール基、エーテル、エステル等を有することが好ましい。ハロゲン原子は、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基等を有することが好ましい。
【0027】
一般式(2)において、置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、カルボニル基、アミノ基、イミノ基、シアノ基、アゾ基、アジ基、チオール基、スルホ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アシル基、アルデヒド基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0028】
また、上記一般式(2)で示される環状エーテル化合物は、様々な構造のものがあげられ、エチレンオキシド誘導体(3員環)、オキセタン誘導体(4員環)、テトラヒドロフラン誘導体(5員環)、テトラヒドロピラン誘導体(6員環)などの広く一般的に販売されている市販品を用いることが出来る。特に、エチレンオキシド誘導体はクロロメチルオキシラン、オキセタン誘導体はクロロメチルオキセタンを原料に、対応するナトリウムアルコキシドを反応させることで、簡便に合成することができる。上記一般式(2)で示される環状エーテル化合物の例としては、下記式(21)〜(58)で表される化合物が挙げられるが、これらの例に限定されるものではなく、様々な態様が考えられることは言うまでもない。
【0029】
【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

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【化40】

【化41】

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【化49】

【化50】

【化51】

【化52】

【化53】

【化54】

【化55】

【化56】

【化57】

【化58】

【0030】
本発明の重合体の製造方法においては、重合開始剤として上記オキソアンモニウムカチオン塩を用い、上記環状エーテル化合物を開環重合させることで、ポリエーテル化合物を得ることができる。
【0031】
本発明のポリエーテル化合物の製造方法の一例は、下記一般式(3)で示される。
【化59】

【0032】
上記一般式(3)において、R〜R、X、n、Yはそれぞれ一般式(1)と同様である。また、R〜R、mはそれぞれ一般式(2)と同様である。また、oは、繰り返し単位数を表し、特に限定されない任意の定数である。一般式(3)に示す、ポリエーテル化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、例えば1,000〜10,000,000である。
【0033】
さらに、出発原料として用いる環状エーテル化合物としては、環状エーテル構造を有する環状エーテル化合物であれば、特に限定されることはない。複数の環状エーテル化合物を用いる場合、同種のエーテル化合物を用いてもよいし、異種のエーテル化合物を用いてもよい。
【0034】
本発明の重合体の製造方法における反応温度は、特に限定されないが、室温(例えば25℃)以上モノマー分解温度以下とすることが好ましい。また、反応の簡便性から、上記反応温度は、室温(例えば25℃)以上、100℃以下がより好ましく、室温(例えば25℃)以上60℃以下がさらに好ましい。このように、本発明の重合体の製造方法によれば、0℃以下の冷却工程を含まずとも、高収率で目的とするポリエーテル化合物を得ることができる。
また、本発明の重合体の製造方法においては、各種の合成条件としては、通常実施される様々な方法から選択できる。例えば、オキソアンモニウムカチオン塩の添加量としては、上記環状エーテル化合物のモノマー100mol%に対して、0.01mol%以上5mol%以下の上記重合開始剤を使用することが好ましい。
【0035】
また、本発明の重合体の製造方法においては、反応性の観点から、溶媒を用いないほうが好ましい。溶媒を用いる場合は、重合時に用いる溶媒としては、反応条件において重合の阻害、重合開始剤の分解などを起こなさないものであればどのようなものを用いても良く、種々の有機溶媒から選択できる。例えば、出発原料である環状エーテル化合物、生成物であるポリエーテル化合物、およびオキソアンモニウムカチオン塩を充分溶解できる溶媒が好ましい。なお、精製工程においては、メタノール、アセトン、水などの各種の溶媒を用いてもよい。
【0036】
本発明の重合体の製造方法により得られたポリエーテル化合物は、例えば、リチウムイオン二次電池用のゲル電解質のホストポリマーとして使用することができる。また、ポリエーテル化合物およびその類似高分子は、アルカリ金属塩を固溶状態で、イオン伝導性をもつことが発見され、二次電池への適用が提案されている。さらに、ゲル電解質のホストポリマー(ポリマーマトリックス)としての利用も報告されており、本発明を用いることで、簡便にゲル電解質のホストポリマーであるポリエーテル化合物を合成する方法を提供することができる。
【0037】
本発明の作用効果について、従来の技術と比較しつつ説明する。
通常、環状エーテル化合物の重合反応に用いるBFEtO、EtAlCl、EtAlCl、TiCl等のカチオン重合開始剤は、水と反応して分解されやすく、取扱が困難であった。また、このようなカチオン重合開始剤は、反応性が非常に高いため、高収率、高分子量、かつ分岐の少ない重合体を得るためには、重合開始剤の高い反応性を制御する必要があった。この高い反応性を制御するには、反応系を0℃以下に冷却する必要があったため、簡便に重合反応を行うことが困難であった。とくに、これまでの反応操作においては、温度制御を厳密に行う必要があり、0℃以下の冷却工程は、氷浴による冷却を用いることが出来ないため、量産時のプラント構築にも莫大な経費が掛かっていた。
【0038】
これに対して、本発明の重合開始剤は、上記のカチオンイオン重合体と比較して、水と反応し難いので、大気中でも取り扱える。このため、それを用いた重合反応では、重合反応開始剤の分解反応が抑制できるので、簡便な操作とすることができる。
また、本発明の重合開始剤の反応性は、上記のカチオン重合開始剤の反応性より低く、適切であるため、反応系の0℃以下の冷却工程を省くことができる。このため、厳密な温度制御が不要であるので、反応操作が簡便になる上、製造コストも低減することができる。なお、反応系の冷却工程を用いずに、適切な条件を選択することで、高収率、高分子量、かつ分岐の少ない重合体を得ることができる。
以上のように、本発明によれば、冷却工程を含まずに、大気中でも取り扱える簡便な重合開始剤およびそれを用いた高分子化合物の合成方法が得られる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を示し、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの例に限定されるものではなく、様々な態様が考えられることは、言うまでもない。
【0040】
(実施例1)
まず、100mLの重合用シュレンクに、環状エーテル化合物のモノマーとして、23.1g(0.25mol)のエピクロロヒドリン(式23)を加え、さらに重合開始剤として、0.1mol%(0.25mmol)のTEMPOPF(式5)を溶解させた。得られた反応溶液を60℃で12時間加熱した後、1Lのメタノールに滴下し、再沈殿精製を行った(精製回数:3回)。得られたメタノール不溶の固形物をろ過によって分離した後、さらに60℃で真空乾燥を行うことで、収率62%で対応するポリマーを得た。その後、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により得られたポリマー(ポリエーテル化合物)の分子量を測定した。
【0041】
(実施例2〜119)
また、実施例2〜119は、エピクロロヒドリン(式23)に代えて、表1〜9に示す環状エーテル化合物のモノマーを用い、及び/又はTEMPOPF(式5)に代えて、表1〜9に示す重合開始剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリマー(ポリエーテル化合物)の合成を行った。
【0042】
(比較例1)
100mLの重合用シュレンクに、環状エーテル化合物のモノマーとして、23.1g(0.25mol)のエピクロロヒドリン(式23)を加え、さらに重合開始剤として、35mg(0.25mmol;0.1mol%)のBFEtOを溶解させた。得られた反応溶液を60℃で12時間加熱した後、1Lのメタノールに滴下し、再沈殿精製を試みた。比較列1では、メタノール不溶の固形物は得られなかった。
【0043】
(比較例2〜20)
また、比較例2〜20は、エピクロロヒドリン(式23)に代えて、表9または10に示す環状エーテル化合物のモノマーを用い、及び/又はBFEtOに代えて、表9または10に示す重合開始剤を用いた以外は、比較例1と同様の方法でポリマー(ポリエーテル化合物)の合成を行った。表9または10において、BFEtO、EtAlCl、EtAlClは、従来のカチオン開環重合に用いられる重合開始剤を示し、TEMPOやPROXYLは、オキソアンモニウム塩の一電子還元体であり、TEMPOラジカルやPROXYLラジカルを示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
【表8】

【0052】
【表9】

【0053】
【表10】

【0054】
これらの実施例と比較例を比較検討することにより、環状エーテル化合物の重合反応において、重合開始剤にこれまで用いられてきたルイスの代わりに、本発明の環状オキソアンモニウムカチオン塩を用いることで、冷却工程や脱水工程を設けなくても重合が進行することが示された。また、環状オキソアンモニウムカチオン塩の一電子還元体であるTEMPOラジカルやPROXYLラジカルを用いても、重合が進行しなかった。このことから、環状エーテル化合物の重合反応は、本発明の環状オキソアンモニウムカチオン塩に特有な反応であることが示された。
【0055】
なお、当然ながら、上述した実施の形態は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状エーテル構造を有する環状エーテル化合物の重合反応に用いる、下記一般式(1)で示される環状オキソアンモニウムカチオン塩からなる重合開始剤。
【化1】

[一般式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に置換または無置換のアルキル基である。Xは、炭素原子、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子から選択される環員を構成する原子であり、同一でも異なっていてもよい。ただし、Xは、ポリマーの主鎖または側鎖の一部を構成してもよい。nは、2または3の整数である。Yは、ハロゲン原子、リン化合物、ホウ素化合物、フッ素化合物、過塩素酸化合物、窒素酸化合物またはイミド化合物のいずれかである。]
【請求項2】
前記一般式(1)において、Yが、Cl、Br、I、ClO、NO、PF、BF、SbF、TFS、TFSIまたはBETIのいずれかである、請求項1に記載の重合開始剤。
【請求項3】
前記一般式(1)において、nが2である、請求項1または2に記載の重合開始剤。
【請求項4】
前記一般式(1)において、R〜Rが炭素数1〜4のアルキル基である、請求項1から3のいずれか1項に記載の重合開始剤。
【請求項5】
前記一般式(1)において、R〜Rがメチル基である、請求項5に記載の重合開始剤。
【請求項6】
前記環状エーテル化合物が3員環化合物、4員環化合物、5員環化合物または6員環化合物である、請求項1から5のいずれか1項に記載の重合開始剤。
【請求項7】
前記環状エーテル化合物が下記一般式(2)で表される、請求項1から6のいずれか1項に記載の重合開始剤。
【化2】

[一般式(2)において、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、アリール基、アルキル基のいずれかであり、これらは置換基を有してもよい。mは、1〜4の整数である。]
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の重合開始剤を用いて、環状エーテル構造を有する環状エーテル化合物の重合反応を行う、重合体の製造方法。
【請求項9】
前記環状エーテル化合物のモノマー100mol%に対して、0.01mol%以上5mol%以下の前記重合開始剤を使用する、請求項8に記載の重合体の製造方法。