説明

重油組成物およびその製造方法

【課題】スラッジ分散剤を含有しなくてもスラッジの発生を抑制することができる低硫黄化した重油組成物を提供する。
【解決手段】(A)硫黄分含有量0.05〜0.4質量%、残留炭素分含有量2〜6質量%、実在セジメント含有量0.01〜1質量%、アスファルテン含有量4質量%以下で、15℃における密度が0.919〜0.931g/cmである直接脱硫重油を65〜98容量%含むとともに、(B)硫黄分含有量0.3〜0.8質量%、残留炭素分含有量5.5質量%以下であるスラリーオイル1〜25容量%と、(C)50℃における動粘度が380〜1620mm/sに調整された、直接脱硫重油およびスラリーオイル以外の重油基材の混合物1〜10容量%とを含んでなることを特徴とする重油組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重油組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、重油組成物は、燃料油として各種産業分野において種々の用途に使用されており、JIS K2205において、動粘度により、1種(A重油)、2種(B重油)及び3種(C重油)の3種類に分類されている。
これらの重油組成物のうち、A重油は、一般にハウス加温栽培用暖房機やビル等の暖房機用の燃料油として用いられ、B重油及びC重油は、船舶用大型ディーゼルエンジンの燃料油や、工場、発電所、地域冷暖房などの大規模ボイラーの燃料油として用いられている。
【0003】
上述したようにC重油とA重油は粘性が相違するものであることから、基材配合も相違するものとなっている。すなわち、A重油及びC重油は、いずれも、石油精製工程で得られる重質で粘性の高い各種残渣油と比較的軽質な軽油基材とを配合してなるものであるが、A重油は、上記軽油基材に対して上記残渣油を若干割合配合してなるものであるのに対して、C重油は、上記残渣油に対して軽油基材をカッター材として若干割合配合してなるものであり、その粘性もA重油に比べて高いものとなる。
【0004】
また、上記残渣油中には石油精製時に用いた触媒が混入する場合があり、使用時において、燃料噴射ポンプ、ピストンリング、シリンダライナ等に摩耗を生じる可能性があることから、舶用燃料油国際規格ISO8217には、JIS重油3種(C重油)相当の重油組成物においては、アルミニウムとケイ素の合計量を80mg/kg(触媒微粒子総量としては約160mg/kgに相当)以下にすることが規定されており、このため、C重油を使用する場合には予め遠心式油清浄機等で触媒の分離処理が行われている。この場合、清浄機での分離処理に際して粘度を下げておく必要があることから、通常は100℃前後に加熱した状態で清浄機により処理し、触媒を除去した上でボイラー等にC重油が供給されている。
【0005】
しかし、バッチで運転するボイラーや運転開始直後のボイラー等にC重油を供給する場合、C重油が十分に加熱されるまでに時間がかかることから、C重油を加熱しながらタンクと清浄機との間で循環運転を行う場合があり、このとき加熱状態で長時間循環を続けると燃料油中の重質留分が重合してスラッジを生成する場合がある。
【0006】
スラッジの発生を抑制する重油組成物としては、例えば、スラッジ分散剤として、分子中に>C=N<結合を有する重合体と、長鎖アルキルリン酸エステルおよび/またはアルキルスルホこはく酸エステルとの混合物が添加された重油組成物が報告されている(特許文献1(特開平5−331470号公報)参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の重油組成物は、スラッジ分散剤をわざわざ添加してなるものであることから不経済であり、C重油製造上の効率面からも、スラッジ分散剤を含有しなくてもスラッジの発生を抑制し得る重油組成物が求められるようになっていた。
【0008】
一方、近年、環境負荷を低減し煙道腐食を抑制するという観点から、重油基材となる残渣油の低硫黄化が検討されており、このような低硫黄化した基材を用いた重油組成物が求められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−331470号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況下、本発明は、スラッジ分散剤を含有しなくてもスラッジの発生を抑制することができる低硫黄化した重油組成物を提供することを第1の目的とするとともに、該重油組成物を簡便に製造する方法を提供することを第2の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記技術課題を解決するために、本発明者が鋭意検討したところ、驚くべきことに、重油基材として直接脱硫重油を用いた場合にスラッジを生成し易いことを見出し、さらに、特定の直接脱硫重油を所望量含有するとともに、特定のスラリーオイルと特定の高粘度混合基材をそれぞれ所望量含有する重油組成物により、上記第1の目的を達成し得ることを見出し、上記直接脱硫重油と、スラリーオイルと、高粘度混合基材とを所定量混合して重油組成物を作製することにより、上記第2の目的を達成し得ることを見出して、これ等の知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)(A)硫黄分含有量0.05〜0.4質量%、残留炭素分含有量2〜6質量%、実在セジメント含有量0.01〜1質量%、アスファルテン含有量4質量%以下で、15℃における密度が0.919〜0.931g/cmである直接脱硫重油を65〜98容量%含むとともに、
(B)硫黄分含有量0.3〜0.8質量%、残留炭素分含有量5.5質量%以下であるスラリーオイル1〜25容量%と、
(C)50℃における動粘度が380〜1620mm/sに調整された、直接脱硫重油およびスラリーオイル以外の重油基材の混合物1〜10容量%と
を含んでなることを特徴とする重油組成物、
(2)重油組成物を製造する方法であって、
(A)硫黄分含有量0.05〜0.4質量%、残留炭素分含有量2〜6質量%、実在セジメント含有量0.01〜1質量%、アスファルテン含有量4質量%以下で、15℃における密度が0.919〜0.931g/cmである直接脱硫重油を65〜98容量%と、
(B)硫黄分含有量0.3〜0.8質量%、残留炭素分含有量5.5質量%以下であるスラリーオイルを1〜25容量%と、さらに、
(C)50℃における動粘度が380〜1620mm/sに調整された、直接脱硫重油およびスラリーオイル以外の重油基材の混合物1〜10容量%とを
混合する
ことを特徴とする重油組成物の製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スラッジ分散剤を含有しなくてもスラッジの発生を抑制することができる低硫黄化した重油組成物を提供することができるとともに、該重油組成物を簡便に製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ず、本発明の重油組成物について説明する。
本発明の重油組成物は、
(A)硫黄分含有量0.05〜0.4質量%、残留炭素分含有量2〜6質量%、実在セジメント含有量0.01〜1質量%、アスファルテン含有量4質量%以下で、15℃における密度が0.919〜0.931g/cmである直接脱硫重油を65〜98容量%含むとともに、
(B)硫黄分含有量0.3〜0.8質量%、残留炭素分含有量5.5質量%以下であるスラリーオイル1〜25容量%と、
(C)50℃における動粘度が380〜1620mm/sに調整された、直接脱硫重油およびスラリーオイル以外の重油基材の混合物1〜10容量%と
を含んでなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油は、硫黄分含有量0.05〜0.4質量%、残留炭素分含有量2〜6質量%、実在セジメント含有量0.01〜1質量%、アスファルテン含有量4質量%以下で、15℃における密度が0.919〜0.931g/cmであるものである。
【0016】
本発明の重油組成物を構成する(A)直接脱硫重油は、常圧蒸留残油、減圧蒸留残油又はこれらの混合物を水素化脱硫して得られる重質な留分である。
【0017】
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油は硫黄分を0.05〜0.4質量%含むものであり、0.05〜0.35質量%含むものであることが好ましい。
(A)直接脱硫重油中の硫黄分量が上記範囲内にあることにより、重油組成物を効率的、経済的に作製することができ、また、工業炉やボイラーなどで燃焼した際に排出されるSOx量を抑制して、環境負荷を低減し、煙道腐食の発生を抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記硫黄分は、JIS K2541に準じて測定した値を意味する。
【0018】
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油は残留炭素分を2〜6質量%含むものであり、2〜5.8質量%含むものであることが好ましく、2〜5.5質量%含むものであることがより好ましい。
(A)直接脱硫重油中の残留炭素分量が上記範囲内にあることにより、工業炉やボイラーなどで燃焼時に排出される煤煙の量を低減することができる。
なお、本出願書類において、上記残留炭素分は、JIS K2270に準じて測定した値を意味する。
【0019】
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油の灰分は0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油の残留炭素分量が上記範囲内にあるとともに灰分が上記範囲内にあることにより、工業炉やボイラーなどで燃焼時に排出される煤煙の量を一層低減することができる。
なお、本出願書類において、上記灰分は、JIS K2272に準じて測定した値を意味する。
【0020】
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油中の実在セジメント量は0.01〜1質量%であり、0.01〜0.9質量%であることが好ましく、0.01〜0.8質量%であることがより好ましく、0.01〜0.7質量%であることがさらに好ましい。
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油中の実在セジメント量が上記範囲内にあることにより、本発明の重油組成物を高温下に加熱ないしは貯蔵した際や、長期間にわたる熱履歴を有することになった場合であっても、生成するスラッジ量を抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記実在セジメントは、IP375法に準じて測定した値を意味する。
【0021】
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油中のアスファルテン量は4質量%以下であり、3.9質量%以下であることが好ましく、3.5質量%以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油中のアスファルテン量が4質量%以下であることにより、工業炉やボイラーなどで使用した際における、スラッジ堆積量を抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記アスファルテン量は、JPI−5S−22−83に準じて測定した値を意味する。
【0022】
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油中の窒素分は0.20質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油中の窒素分が上記範囲内にあることにより、工業炉やボイラー等で燃焼した際に排出されるNOx量を低減できるため、環境負荷を低減することができる。
なお、本出願書類において、上記窒素分は、JIS K2609に準じて測定した値を意味する。
【0023】
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油の水分は0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油の水分が0.5質量%以下であることにより、工業炉やボイラー等で使用した際に、燃焼の不均一性や失火等を抑制し、金属腐食や冬季におけるフィルター目詰まりを抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記水分は、JIS K2275に準じて測定した値を意味する。
【0024】
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油の15℃における密度は0.919〜0.931g/cmであり、0.919〜0.928g/cmであることが好ましい。
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油の15℃における密度が上記範囲内にあることにより重油組成物に十分な体積当たりの発熱量を与することができ、工業炉やボイラー等での使用時における燃焼の不均一性や失火等を抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記15℃における密度は、JIS K2249に準じて測定した値を意味する。
【0025】
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油の50℃における動粘度は100〜300mm/sであることが好ましく、110〜280mm/sであることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油の50℃における動粘度が上記範囲内にあることにより、工業炉やボイラー等へ重油組成物を安定して供給することが可能になり、重油使用時における燃焼の不均一や失火等を抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記50℃における動粘度は、JIS K2283に準じて測定した値を意味する。
【0026】
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油の引火点は90℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油の引火点が90℃以上であることにより、重油組成物を容易に取り扱うことができる。
なお、本出願書類において、上記引火点は、JIS K2265に準じて測定した値を意味する。
【0027】
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油の流動点は15℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油の流動点が15℃以下であることにより、冬季における重油組成物の流動性を確保し、重油組成物を安定して供給することができる。
なお、本出願書類において、上記流動点は、JIS K2269に準じて測定した値を意味する。
【0028】
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油の反応は中性であることが好ましい。
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油の反応が中性であることにより、燃料タンクや燃料配管等において優れた貯蔵安定性を発揮することができる。
なお、本出願書類において、上記反応は、JIS K2252に準じて測定した値を意味する。
【0029】
本発明の重油組成物は、(A)直接脱硫重油を65〜98容量%含み、70〜95容量%含むことが好ましい。
本発明の重油組成物において、(A)直接脱硫重油の含有割合が上記範囲内にあることにより、重油組成物中の実在セジメント量を所望範囲に抑制することができ、重油組成物中の硫黄分を所望範囲に抑制することができる。
【0030】
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルは、硫黄分含有量0.3〜0.8質量%、残留炭素分含有量5.5質量%以下であるものである。
【0031】
本発明の重油組成物を構成するスラリーオイルは、流動接触分解装置又は残油流動接触分解装置から生成する、沸点がおよそ230〜600℃の留分又は残油である。
【0032】
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの硫黄分含有量は、0.3〜0.8質量%であり、0.3〜0.7質量%であることが好ましい。
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの硫黄分含有量が上記範囲内にあることにより、重油組成物を効率的、経済的に作製することができるとともに、工業炉やボイラーなどで燃焼した際に排出されるSOx量を低減して、環境負荷を低減し、煙道腐食を抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記硫黄分は、JIS K2541に準じて測定した値を意味する。
【0033】
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの残留炭素分は、5.5質量%以下であり、5.4質量%以下であることが好ましく、5.3質量%以下であることがより好ましく、0.01〜5.3質量%であることがさらに好ましい。
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの残留炭素分が5.5質量%以下であることにより、重油組成物を工業炉やボイラーなどで燃焼した際に排出される煤煙量を低減することができる。
なお、本出願書類において、上記残留炭素分は、JIS K2270に準じて測定した値を意味する。
【0034】
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの灰分は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの残留炭素分が上記範囲内にあるとともに灰分が0.5質量%以下であることにより、重油組成物を工業炉やボイラーなどで燃焼した際に排出される煤煙の量を一層低減することができる。
なお、本出願書類において、上記灰分は、JIS K2272に準じて測定した値を意味する。
【0035】
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの実在セジメント量は0〜0.05質量%であることが好ましく、0〜0.03質量%であることがより好ましく、0〜0.01質量%であることがさらに好ましい。
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの実在セジメント量が上記範囲内にあることにより、本発明の重油組成物を高温下に加熱ないしは貯蔵した際や、長期間にわたる熱履歴を有することになった場合であっても、生成するスラッジ量を抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記実在セジメントは、IP375法に準じて測定した値を意味する。
【0036】
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルのアスファルテン量は5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイル中のアスファルテン量が5.0質量%以下であることにより、工業炉やボイラーなどで使用した際における、スラッジ堆積量を抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記アスファルテン量は、JPI−5S−22−83に準じて測定した値を意味する。
【0037】
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの窒素分は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの窒素分が0.5質量%以下であることにより、重油組成物を工業炉やボイラー等で燃焼した際に排出されるNOx量を低減することができ、環境負荷を低減することができる。
なお、本出願書類において、上記窒素分は、JIS K2609に準じて測定した値を意味する。
【0038】
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの水分は、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの水分が1質量%以下であることにより、重油組成物を工業炉やボイラー等で使用した際に、燃焼の不均一性や失火等を抑制し、金属腐食や冬季のフィルター目詰まりを抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記水分は、JIS K2275に準じて測定した値を意味する。
【0039】
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの15℃における密度は、0.98〜1.10g/cmであることが好ましく、0.98〜1.05g/cmであることがより好ましく、0.985〜1.05g/cmであることがさらに好ましい。
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの15℃における密度が上記範囲内にあることにより、重油組成物に十分な体積当たりの発熱量を付与することができ、工業炉やボイラー等での使用時における燃焼の不均一や失火等を抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記15℃における密度は、JIS K2249に準じて測定した値を意味する。
【0040】
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの50℃における動粘度は、20〜120mm/sであることが好ましく、20〜110mm/sであることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの50℃における動粘度が上記範囲内にあることにより、工業炉やボイラー等に対して重油組成物を安定して供給することが可能になり、燃焼の不均一や失火等を抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記50℃における動粘度は、JIS K2283に準じて測定した値を意味する。
【0041】
本発明の重油組成物は、(B)スラリーオイルとして、15℃における密度と50℃における動粘度が上記範囲内にあるものを含むことにより、重油組成物が所望量の芳香族分等を含むことになり、このために、重油組成物中の実在セジメント量を所望範囲に制御して、スラッジの生成を抑制することができると考えられる。
【0042】
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの引火点は、60℃以上であることが好ましく、65℃以上であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの引火点が60℃以下であることにより、重油組成物の取り扱いが容易になる。
なお、本出願書類において、上記引火点は、JIS K2265に準じて測定した値を意味する。
【0043】
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの流動点は10℃以下であることが好ましく、7.5℃以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの流動点が10℃以下であることにより、冬季における重油組成物の流動性を確保し、重油組成物を安定して供給することが可能になる。
なお、本出願書類において、上記流動点は、JIS K2269に準じて測定した値を意味する。
【0044】
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの反応は中性であることが好ましい。
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの反応が中性であることにより、燃料タンクおよび燃料配管において重油組成物が優れた貯蔵安定性を発揮することができる。
なお、本出願書類において、上記反応は、JIS K2252に準じて測定した値を意味する。
【0045】
本発明の重油組成物は、(B)スラリーオイルを1〜25容量%含み、2〜20容量%含むことが好ましい。
本発明の重油組成物において、(B)スラリーオイルの含有割合が上記範囲内にあることにより、本発明の重油組成物を高温下に加熱ないしは貯蔵した際や、長期間にわたる熱履歴を有することになった場合であっても、生成するスラッジ量を抑制することができるとともに、スラリーオイル中に含まれる残留触媒の重油組成物への持ち込み量を抑制することができる。
【0046】
本発明の重油組成物を構成する(C)重油基材の混合物は、直接脱硫重油およびスラリーオイル以外の重油基材を混合してなる、50℃における動粘度が380〜1620mm/sに調整されたものである。
【0047】
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物を構成する、直接脱硫重油およびスラリーオイル以外の重油基材としては、常圧蒸留残油、直留軽油、減圧蒸留残油、減圧軽油、溶剤抽出油、脱硫減圧軽油、接触分解軽油、直接脱硫軽油から選ばれる二種以上を挙げることができる。
【0048】
常圧蒸留残油は、原油を常圧蒸留してLPG、ナフサ、灯油および直留軽油を留出させたときの残留油である。
減圧蒸留残油は、上記常圧蒸留残油をさらに減圧蒸留して減圧軽油を留出させたときの残留油である。
また、上記減圧蒸留残油には、高粘度の潤滑油に適した重質留分とアスファルト留分とが混在しており、潤滑油に適した重質留分が溶剤抽出油である。
脱硫減圧軽油は、軽質脱硫減圧軽油と重質脱硫減圧軽油の総称であって、軽質脱硫減圧軽油は上記減圧軽油を間接脱硫処理して得られる軽油留分のうち軽質なものである。また、重質脱硫減圧軽油は上記減圧軽油を間接脱硫処理して得られる軽油留分のうち重質なものである。
接触分解軽油は、流動接触分解装置又は残油流動接触分解装置から生成する150〜380℃の留分である。
直接脱硫軽油は、上記常圧蒸留残油、減圧蒸留残油又はこれらの混合物を水素化脱硫して得られる軽質な留分である。
【0049】
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物は、硫黄分が、2.0〜5.0質量%であることが好ましく、2.0〜4.5質量%であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物の硫黄分が上記範囲内にあることにより、重油組成物を効率的、経済的に作製することができ、工業炉やボイラー等で燃焼した際に排出されるSOx量を低減して、環境負荷を低減し、煙道腐食を抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記硫黄分は、JIS K2541に準じて測定した値を意味する。
【0050】
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物は、残留炭素分が18.0質量%以下であることが好ましく、17.5質量%以下であることがより好ましく、17.0質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物の残留炭素分が18.0質量%以下であることにより、重油組成物を工業炉やボイラー等で燃焼した際に排出される煤煙量を低減することができる。
なお、本出願書類において、上記残留炭素分は、JIS K2270、灰分は、JIS K2272に準じて測定した値を意味する。
【0051】
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物は、灰分が、0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物の残留炭素分が18.0質量%以下であり、灰分が0.5質量%以下であることにより、重油組成物を工業炉やボイラー等で燃焼した際に排出される煤煙量をより一層低減することができる。
なお、本出願書類において、上記灰分は、JIS K2272に準じて測定した値を意味する。
【0052】
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物は、実在セジメントが、0.05質量%以下であることが好ましく、0.04質量%以下であることがより好ましく、0.03質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物の実在セジメントが0.05質量%以下であることにより、本発明の重油組成物を高温下に加熱ないしは貯蔵した際や、長期間にわたる熱履歴を有することになった場合であっても、生成するスラッジ量を抑制することができる。
なお、本出願書類において上記実在セジメントは、IP375法に準じて測定した値を意味する。
【0053】
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物は、アスファルテン量が、10質量%以下であることが好ましく、9質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物のアスファルテン量が10質量%以下であることにより、重油組成物を工業炉やボイラー等で使用した際におけるスラッジ堆積量を抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記アスファルテン量は、JPI−5S−22−83に準じて測定した値を意味する。
【0054】
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物は、窒素分が、0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物の窒素分が0.5質量%以下であることにより、工業炉やボイラー等で燃焼した際に排出されるNOx量を低減して、環境負荷を低減することができる。
なお、出願書類において、上記窒素分は、JIS K2609に準じて測定した値を意味する。
【0055】
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物は、水分が、0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物の水分が0.5質量%以下であることにより、重油組成物を工業炉やボイラー等で使用した際における燃焼の不均一や失火を抑制することができ、金属腐食や冬季のフィルター目詰まりを抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記水分は、JIS K2275に準じて測定した値を意味する。
【0056】
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物は、50℃における動粘度が380〜1620mm/sであり、380〜1600mm/sであることが好ましく、380〜1580mm/sであることがより好ましく、380〜1560mm/sであることがさらに好ましい。
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物の50℃における動粘度が上記範囲内にあることにより、工業炉やボイラー等に重油組成物を安定して供給することができ、燃焼の不均一や失火等を抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記50℃における動粘度は、JIS K2283に準じて測定した値を意味する。
【0057】
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物は、15℃における密度が、0.97〜1.03g/cmであることが好ましく、0.97〜1.01g/cmであることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(C)重油組成物の混合物の15℃における密度が上記範囲内にあることにより、重油組成物に対して十分な体積当たりの発熱量を付与することができ、工業炉やボイラー等で使用した際に燃焼の不均一や失火等を抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記15℃における密度は、JIS K2249に準じて測定した値を意味する。
【0058】
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物は、引火点が、75℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物の引火点が75℃以上であることにより、重油組成物を容易に取り扱うことができる。
なお、本出願書類において、上記引火点は、JIS K2265に準じて測定した値を意味する。
【0059】
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物は、流動点が、7.5℃以下であることが好ましく、5.0℃以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物の流動点が7.5℃以下であることにより、重油組成物の冬季における流動性を確保することができ、重油組成物を安定して供給することができる。
なお、本出願書類において、上記流動点は、JIS K2269に準じて測定した値を意味する。
【0060】
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物は、反応が中性であること好ましい。
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物の反応が中性であることにより、燃料タンクおよび燃料配管において重油組成物が優れた貯蔵安定性を発揮することができる。
なお、本出願書類において、上記反応は、JIS K2252に準じて測定した値を意味する。
【0061】
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物は、例えば、上記常圧蒸留残油、直留軽油、減圧蒸留残油、減圧軽油、溶剤抽出油、脱硫減圧軽油、分解軽油、直接脱硫軽油から選ばれる二種以上を、50℃における動粘度が380〜1620mm/sになるように適宜配合することにより調整することができる。
【0062】
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物を1〜10容量%含み、1.5〜10容量%含むことが好ましい。
本発明の重油組成物において、(C)重油基材の混合物の含有割合が上記範囲内にあることにより、重油組成物中の実在セジメント量を抑制することができ、重油組成物中の硫黄分の量を所望範囲内に制御して、燃焼ガス中のSOx量を低減することができ、環境負荷を低減し、煙道腐食を抑制することができる。
【0063】
本発明の重油組成物は、硫黄分が、0.05〜0.5質量%であることが好ましく、0.05〜0.45質量%であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、硫黄分が上記範囲内にあることにより、硫黄分量を効果的に制御して、工業炉やボイラー等で使用した際に排出されるSOx量を抑制し、環境負荷を低減して、煙道腐食を抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記硫黄分含有量は、JIS K2541に準じて測定した値を意味する。
【0064】
本発明の重油組成物は、残留炭素分が1〜6質量%であることが好ましく、1〜5.9質量%であることがより好ましく、1〜5.8質量%であることがさらに好ましい。
本発明の重油組成物において、残留炭素分が上記範囲内にあることにより、工業炉やボイラー等で燃焼した際に排出される煤煙量を低減することができる。
なお、本出願書類において、上記残留炭素分は、JIS K 2270に準拠した方法により測定した値を意味する。
【0065】
本発明の重油組成物は、灰分が0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、重油組成物中の残留炭素分が上記範囲内にあるとともに灰分が0.5質量%以下であることにより、重油組成物を工業炉やボイラー等で燃焼した際に排出される煤煙量を一層低減することができる。
なお、本出願書類において、上記灰分は、JIS K 2272に準拠した方法により測定した値を意味する。
【0066】
本発明の重油組成物は、実在セジメントが0.1質量%以下であることが好ましく、0.09質量%以下であることがより好ましく、0.01〜0.08質量%であることがさらに好ましく、0.01〜0.07質量%であることが特に好ましい。
本発明の重油組成物においては、実在セジメントが上記範囲内にあることにより、重油組成物が長時間の加熱された状態であったとしてもスラッジの生成を抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記実在セジメントは、IP375法に準じて測定した値を意味する。
【0067】
本発明の重油組成物は、特定の(A)直接脱硫重油、(B)スラリーオイルおよび(C)重油基材の混合物を所望量混合してなるものであることから、例えば(A)直接脱硫重油から持ち込まれる実在セジメント量が重油組成物全体の0.1質量%超であったとしても、(B)スラリーオイルを構成する芳香族分等によって溶解して、重油組成物中の実在セジメント量を所望範囲に制御することができる。
【0068】
本発明の重油組成物は、アスファルテン量が5.0質量%以下であることが好ましく、4.5質量%以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、アスファルテン量が5.0質量%以下であることにより、重油組成物を工業炉やボイラー等で使用した際におけるスラッジ堆積量を低減することができる。
なお、本出願書類において、上記アスファルテン量は、JPI−5S−22−83に準じて測定した値を意味する。
【0069】
本発明の重油組成物は、窒素分が、0.5質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、窒素分が0.5質量%以下であることにより、工業炉やボイラー等で燃焼した際に排出されるNOx量を低減し、環境負荷を低減することができる。
なお、本出願書類において、上記窒素分含有量は、JIS K2609に準じて測定した値を意味する。
【0070】
本発明の重油組成物は、水分が、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、水分が1.0質量%以下であることにより、工業炉やボイラー等で使用した際に燃焼の不均一や失火等を抑制することができ、金属腐食や冬季のフィルター目詰まりを抑制することができる。
なお、本出願書類において、上記水分含有量は、JIS K2275に準じて測定した値を意味する。
【0071】
本発明の重油組成物は、50℃における動粘度が80〜200mm/sであることが好ましく、80〜190mm/sであることがより好ましい。
本発明の重油組成物においては、50℃における動粘度が上記範囲内にあることにより、燃焼の不均一性や失火を抑制することができ、重油組成物を安定して供給することができる。
なお、本出願書類において、上記50℃における動粘度は、JIS K2283に準じて測定した値を意味する。
【0072】
本発明の重油組成物は、15℃における密度が0.90〜0.97g/cmであることが好ましく、0.91〜0.97g/cmであることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、15℃における密度が上記範囲内にあることにより、十分な体積当たりの発熱量を発揮することができ、タンク保管時の水分分離が容易になる。また、工業炉やボイラー等の失火を抑制することができ、好適な燃焼性を発揮することができる。
なお、本出願書類において、上記15℃における密度は、JIS K2249に準じて測定した値を意味する。
【0073】
本発明の重油組成物は、引火点が100〜180℃であることが好ましく、100〜170℃であることがより好ましい。
本発明の重油組成物において、引火点が上記範囲内にあることにより、重油組成物を容易に取り扱うことができる。
なお、本出願書類において、上記引火点は、JIS K2265に準じて測定した値を意味する。
【0074】
本発明の重油組成物は、流動点が、12.5℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましい。
重油組成物の流動点が12.5℃以下であることにより、冬季における重油組成物の流動性を確保し、重油組成物を安定して供給することができる。
なお、本出願書類において、上記流動点は、JIS K2269に準じて測定した値を意味する。
【0075】
本発明の重油組成物は、反応が中性であることが好ましい。
本発明の重油組成物の反応が中性であることにより、燃料タンクや燃料配管において重油組成物が優れた貯蔵安定性を発揮することができる。
なお、本出願において、上記反応は、JIS K2252に準じて測定した値を意味する。
【0076】
本発明によれば、スラッジ分散剤を含有しなくてもスラッジの発生を抑制することができる低硫黄化した重油組成物を提供することができる。
【0077】
本発明の重油組成物は、本発明の重油組成物の製造方法により製造することができる。
【0078】
本発明の重油組成物の製造方法は、重油組成物を製造する方法であって、
(A)硫黄分含有量0.05〜0.4質量%、残留炭素分含有量2〜6質量%、実在セジメント含有量0.01〜1質量%、アスファルテン含有量4質量%以下で、15℃における密度が0.919〜0.931g/cmである直接脱硫重油を65〜98容量%と、
(B)硫黄分含有量0.3〜0.8質量%、残留炭素分含有量5.5質量%以下であるスラリーオイルを1〜25容量%と、さらに、
(C)50℃における動粘度が380〜1620mm/sに調整された、直接脱硫重油およびスラリーオイル以外の重油基材の混合物1〜10容量%とを
混合する
ことを特徴とするものである。
【0079】
本発明の重油組成物の製造方法において、上記(A)直接脱硫重油、(B)スラリーオイルおよび(C)重油基材の混合物の詳細は、上述したとおりである。
【0080】
本発明の重油組成物の製造方法においては、上記(A)直接脱硫重油、(B)スラリーオイルおよび(C)重油基材の混合物を任意の方法で混合することにより調製することができる。
【0081】
本発明の重油組成物の製造方法においては、(A)直接脱硫重油を65〜98容量%混合し、70〜95容量%混合することが好ましい。本発明の重油組成物の製造方法において、(A)直接脱硫重油の混合割合を上記範囲にすることにより、得られる重油組成物中の実在セジメント量を所望範囲に抑制することができ、得られる重油組成物中の硫黄分を所望範囲に抑制することができる。
【0082】
本発明の重油組成物の製造方法においては、(B)スラリーオイルを1〜25容量%混合し、2〜20容量%混合することが好ましい。本発明の重油組成物の製造方法において、(B)スラリーオイルの混合割合を上記範囲にすることにより、得られる重油組成物が、高温下に加熱ないしは貯蔵した際や、長期間にわたる熱履歴を有することになった場合であっても、生成するスラッジ量を抑制することができるとともに、スラリーオイル中に含まれる残留触媒の重油組成物への持ち込み量を抑制することができる。
【0083】
本発明の重油組成物の製造方法においては、(C)重油基材の混合物を1〜10容量%混合し、1.5〜10容量%混合することが好ましい。本発明の重油組成物の製造方法において、(C)重油基材の混合物の混合割合を上記範囲にすることにより、得られる重油組成物中の実在セジメント量を抑制することができ、重油組成物中の硫黄分の量を所望範囲内に制御して燃焼ガス中のSOx量を低減し、環境負荷を低減するとともに、煙道腐食を抑制することができる。
【0084】
本発明の製造方法で得られる重油組成物の詳細は、上述したとおりである。
【0085】
本発明によれば、スラッジ分散剤を含有しなくてもスラッジの発生を抑制することができる低硫黄化した重油組成物を簡便に製造する方法を提供することができる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例に更に詳細に説明するが、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。
【0087】
以下の実施例および比較例において、15℃における密度はJIS K 2249、50℃における動粘度はJIS K2283、硫黄分はJIS K 541、残留炭素分はJIS K2270、引火点はJIS K2265、実在セジメント量はIP−375法、アスファルテン量はJPI−5S−22−83、流動点はJIS K2269、窒素分はJIS K2609、灰分はJIS K2272、水分はJIS K2275、反応はJIS K2252に定められている方法に準拠して測定を行った。
【0088】
また、以下の実施例および比較例においては、以下の方法により沈殿物量を求めた。
まず各重油組成物20gを採取して測定試料とし、採取した試料を遠心管中で80℃で5分間加温した後、65℃で5分間、3000rpmで遠心分離を行った。遠心分離後、試料の付着した遠心管を逆さにして80℃で30分間加温し、室温になるまで放冷した。その後付着物の量(g)を測定し以下の式によって沈殿物量を算出した。
沈殿物量(質量%)=(付着物量(g)/試料採集量(g))×100
【0089】
上記沈殿物量(質量%)が0.6質量%以下の重油組成物を、清浄機等を閉塞するスラッジを生成しないものとして「○」と評価し、上記沈殿物量が0.6質量%を超える重油組成物については上記スラッジを生じる可能性がある重油組成物として「×」と評価した。
【0090】
(実施例1〜実施例10および比較例1〜比較例5)
表1に示す性状を有する直接脱硫重油(DDSP−1〜DDSP−6)と、表2に示す性状を有するスラリーオイル(SLO−1〜SLO−4)と、減圧蒸留残油と分解軽油を配合してなる表3に示す性状を有する重油基材の混合物(CBR−H−1〜CBR−H−3)とを用いて、表4〜表6に示す割合で配合することにより、実施例1〜実施例10および比較例1〜比較例5に係る重油組成物を作製した。
得られた各重油組成物の性状を表4〜表6に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

【0095】
【表5】

【0096】
【表6】

【0097】
表4および表5より、実施例1〜実施例10で得られた本発明の重油組成物は、(A)硫黄分含有量0.05〜0.4質量%、残留炭素分含有量2〜6質量%、実在セジメント含有量0.01〜1質量%、アスファルテン含有量4質量%以下で、15℃における密度が0.919〜0.931g/cmである直接脱硫重油を65〜98容量%含むとともに、(B)硫黄分含有量0.3〜0.8質量%、残留炭素分含有量5.5質量%以下である流動接触分解装置から得られるスラリーオイル1〜25容量%と、(C)50℃における動粘度が380〜1620mm/sに調整された、直接脱硫重油およびスラリーオイル以外の重油基材の混合物1〜10容量%とを含んでなるものであることにより、スラッジ分散剤を含有しなくてもスラッジの発生を抑制することができる低硫黄化した重油組成物を提供することができることが分かる。
【0098】
また、表6より、比較例1〜比較例5で得られた重油組成物は、高粘度の重油基材の混合物を含まなかったり(比較例1)、スラリーオイルの硫黄分含有量や残留炭素分の含有量が本発明の重油組成物の範囲外のものであったり(比較例2および比較例3)、直接脱硫重油の残留炭素分およびアスファルテン分や実在セジメントの含有量が本発明の重油組成物の範囲外のものである(比較例4および比較例5)ことにより、沈殿物量が多く、スラッジの生成を抑制し得ないものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明によれば、スラッジ分散剤を含有しなくてもスラッジの発生を抑制することができる低硫黄化した重油組成物を提供することができるとともに、該重油組成物を簡便に製造する方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硫黄分含有量0.05〜0.4質量%、残留炭素分含有量2〜6質量%、実在セジメント含有量0.01〜1質量%、アスファルテン含有量4質量%以下で、15℃における密度が0.919〜0.931g/cmである直接脱硫重油を65〜98容量%含むとともに、
(B)硫黄分含有量0.3〜0.8質量%、残留炭素分含有量5.5質量%以下であるスラリーオイル1〜25容量%と、
(C)50℃における動粘度が380〜1620mm/sに調整された、直接脱硫重油およびスラリーオイル以外の重油基材の混合物1〜10容量%と
を含んでなることを特徴とする重油組成物。
【請求項2】
重油組成物を製造する方法であって、
(A)硫黄分含有量0.05〜0.4質量%、残留炭素分含有量2〜6質量%、実在セジメント含有量0.01〜1質量%、アスファルテン含有量4質量%以下で、15℃における密度が0.919〜0.931g/cmである直接脱硫重油を65〜98容量%と、
(B)硫黄分含有量0.3〜0.8質量%、残留炭素分含有量5.5質量%以下であるスラリーオイルを1〜25容量%と、さらに、
(C)50℃における動粘度が380〜1620mm/sに調整された、直接脱硫重油およびスラリーオイル以外の重油基材の混合物1〜10容量%とを
混合する
ことを特徴とする重油組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−92253(P2012−92253A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241864(P2010−241864)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)