説明

重荷重用タイヤ

【課題】肩落ち摩耗と三角摩耗との発生を抑制する。
【解決手段】ショルダブロックを具える重荷重用タイヤであって、5%内圧状態におけるトレッド輪郭線は、タイヤ赤道面に円弧中心を有する曲率半径R1の第1円弧部と、この第1円弧部に交点Qで交わる曲率半径R2の第2円弧部とからなる。第2円弧部の円弧中心は、前記交点Qを通る半径方向線上に位置する。曲率半径の比R2/R1は0.2以上かつ0.5以下である。赤道点からトレッド端までのタイヤ半径方向距離Heと、前記赤道点から、第1円弧部の延長線上の仮想トレッド端までの半径方向距離Hとの比He/Hは、0.5以上かつ1.0未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肩落ち摩耗と三角摩耗との発生を抑制した重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック・バス用等の重荷重用タイヤでは、トレッド部の表面の輪郭線(トレッド輪郭線)を、タイヤ赤道面に円弧中心を有する単一の円弧で形成した所謂シングルクラウンのものが広く採用されていた。しかし、このようなシングルクラウンのタイヤは、タイヤ赤道面側とトレッド端側とでタイヤ半径差が大きくなるため、トレッド端側のトレッド面に路面との滑りが発生し、所謂肩落ち摩耗m1(図7(A)に示す。)を生じさせるという問題がある。
【0003】
そのため下記の特許文献1、2等には、例えば図8(A)に略示するように、トレッド輪郭線aをタイヤ赤道面側のクラウン領域の輪郭線部a1と、トレッド端側のショルダ領域の輪郭線部a1とに区分し、前記クラウン領域の輪郭線部a1をタイヤ赤道面Coに円弧中心を有する曲率半径r1の第1円弧b1で形成するとともに、前記ショルダ領域の輪郭線部a2を、前記第1円弧b1よりも大な曲率半径r2の第2円弧b2又は直線b3にて形成することが提案されている。このようにショルダ領域の輪郭線部a2を、曲率半径r2が大な第2円弧b2又は直線b3にて形成したタイヤでは、タイヤ赤道面側とトレッド端側とのタイヤ半径差Δが小さくなるため、肩落ち摩耗m1は抑制される。
【0004】
しかしながら、図7(B)に示すように、前記ショルダ領域a2に配されるショルダブロックdにおいて、その接地先着側かつタイヤ軸方向外側のコーナ部pから三角形状に摩耗が進行していく所謂三角摩耗m2が新たに発生することが確認された。
【0005】
この三角摩耗m2の発生原因として、以下のことが考えられる。即ち、ショルダ領域の輪郭線部a2を、曲率半径r2が大な第2円弧b2又は直線b3にて形成した場合、例えば図8(B)に例示するように、ショルダブロックdの接地圧分布において、該ショルダブロックdのタイヤ軸方向外端部に、接地圧がピーク状に高まる接地圧上昇部kが発生する。他方、フロントタイヤは従動輪であるため、タイヤ転動時、ブロックの接地先着側で路面との滑りが発生している。ここで、摩耗量は、接地圧と滑り量との積にほぼ比例する。従って、ブロック内のうち、接地圧がピーク状に高まるタイヤ軸方向外端部かつ滑りが大きい接地先着側である前記コーナ部pが摩耗の基点となり、三角摩耗m2へと進行すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−164823号公報
【特許文献2】特開2003−182309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、タイヤ赤道面側とトレッド端側とのタイヤ半径差を減じながら、トレッド端での接地圧の上昇を抑えることができ、肩落ち摩耗と三角摩耗との双方の発生を抑制しうる重荷重用タイヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願請求項1の発明は、前記トレッド部に、最もトレッド端側に位置するショルダ周方向主溝を含む周方向主溝を設けることにより、前記ショルダ周方向主溝とトレッド端との間にショルダ陸部が形成され、
かつ前記ショルダ陸部が、タイヤ周方向に隔設されるショルダ横溝によりショルダブロックに区分された重荷重用タイヤであって、
正規リムにリム組みしかつ正規内圧の5%の内圧を充填した5%内圧状態におけるタイヤ子午断面において、
トレッド部の表面のトレッド輪郭線は、タイヤ赤道面に円弧中心を有する曲率半径R1の第1円弧部と、この第1円弧部に交点Qで交わる曲率半径R2の第2円弧部とからなり、
かつ前記第2円弧部の円弧中心は、前記交点Qを通る半径方向線上に位置するとともに、
前記トレッド輪郭線がタイヤ赤道面に交わる赤道点から、トレッド端までのタイヤ半径方向距離Heと、前記赤道点から、前記トレッド端を通る半径方向線が前記第1円弧部の延長線に交わる仮想トレッド端までの半径方向距離Hとの比He/Hは、0.5以上かつ1.0未満であり、
しかも前記曲率半径R2と曲率半径R1との比R2/R1は、0.2以上かつ0.5以下であることを特徴としている。
【0009】
また請求項2では、前記ショルダ陸部を、このショルダ陸部の巾中心線によりタイヤ軸方向外側の陸部部分と、タイヤ軸方向内側の陸部部分とに区分したとき、
正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した正規状態のタイヤに正規荷重を付加したときの接地面内において、
前記外側の陸部部分における接地圧の平均PSoと、前記内側の陸部部分における接地圧の平均PSiとの比PSo/PSiは、0.9以上かつ1.0以下であることを特徴としている。
【0010】
また請求項3では、前記ショルダブロックのブロック踏面とタイヤ軸方向外側のブロック壁面とが交わるブロック外側縁は、そのタイヤ周方向の両端点の間に、タイヤ軸方向外側に最も突出する突出部を有する凸曲線をなし、しかも前記両端点と前記突出部との間のタイヤ軸方向距離を2mm以上かつ5mm以下としたことを特徴としている。
【0011】
ここで、前記「5%内圧状態」でのタイヤ形状は、通常、加硫金型内でのタイヤ形状と略一致しており、加硫金型の金型面の形状を特定することにより、前記5%内圧状態のタイヤ形状をコントロールしうる。又本明細書では、特に断りがない限り、タイヤの各部の寸法等は、前記5%内圧状態にて特定される値とする。
【0012】
又前記「トレッド端」は、正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した正規状態のタイヤに正規荷重を付加したときに路面に接地する踏面のうち、タイヤ軸方向最外端の位置を意味する。
【0013】
なお前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"を意味する。又前記「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE"を意味する。又前記「正規荷重」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は叙上の如く、トレッド輪郭線を、タイヤ赤道面に円弧中心を有する第1円弧部と、この第1円弧部に交点Qで交わる第2円弧部とから形成するとともに、前記第2円弧部の円弧中心を、前記交点Qを通る半径方向線上に位置させている。
【0015】
従って、前記第2円弧部の曲率半径R2を、第1円弧部の曲率半径R1よりも小に設定した場合にも、タイヤ赤道面側とトレッド端側とのタイヤ半径差を充分減じることができ、肩落ち摩耗を抑制することが可能となる。又前記第2円弧部の曲率半径R2が曲率半径R1の0.2〜0.5倍と小であるため、トレッド端での接地圧のピーク状の上昇を抑えることができ、前記肩落ち摩耗と同時に三角摩耗をも抑制することが可能となる。
【0016】
なお前記曲率半径R2が、曲率半径R1の0.5倍を超えて大きくなると、トレッド端での接地圧が高まるため三角摩耗を抑制することが難しくなる。逆に前記曲率半径R2が、曲率半径R1の0.2倍より小となると、タイヤ赤道面側とトレッド端側とのタイヤ半径差が大きくなってしまい肩落ち摩耗を抑制することが難しくなる。
【0017】
同様に、赤道点からトレッド端までのタイヤ半径方向距離Heが、前記赤道点から仮想トレッド端までの半径方向距離Hの0.5倍より小となると、トレッド端での接地圧が高まるため三角摩耗を抑制することが難しくなり、逆に1.0倍以上では、タイヤ赤道面側とトレッド端側とのタイヤ半径差がシングルクラウンの場合以上となってしまうため肩落ち摩耗を抑制することができなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の空気入りタイヤの一実施例のトレッドパターンを平面に展開して示す展開図である。
【図2】空気入りタイヤのタイヤ子午断面図である。
【図3】トレッド輪郭線を示す線図である。
【図4】正規荷重を付加したときのタイヤの接地面図である。
【図5】ショルダブロックの他の実施例を拡大して示す斜視図である。
【図6】接地圧分布の一例を示すグラフである。
【図7】(A)は肩落ち摩耗を示す斜視図、(B)は三角摩耗を示す斜視図である。
【図8】(A)は従来のトレッド輪郭線を示す図面、(B)はその接地圧分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1において、本実施形態の重荷重用タイヤ1は、トレッド部2に、最もトレッド端側に位置するショルダ周方向主溝10Sを含む周方向主溝10を具え、これにより前記ショルダ周方向主溝10Sとトレッド端Teとの間に、ショルダ陸部11Sを形成している。又該ショルダ陸部11Sは、タイヤ周方向に隔設されるショルダ横溝12Sによりショルダブロック13Sに区分される。
【0020】
具体的には、本例の重荷重用タイヤ1は、冬期から夏期へと通年使用のできる所謂オールシーズンタイプのトラック・バス用タイヤであって、前記周方向主溝10として、前記ショルダ周方向主溝10Sと、その内側のミドル周方向主溝10Mと、そのさらに内側のセンタ周方向主溝10Cとの合計5本の周方向主溝10が配される場合が示される。これによりトレッド部2は、ショルダ陸部11Sと、その内側のミドル陸部11Mと、そのさらに内側のセンタ陸部11Cとに区分される。又本例では、前記ミドル陸部11Mが、タイヤ周方向に隔設されるミドル横溝12Mによりミドルブロック13Mに区分され、かつ、センタ陸部11Cが、タイヤ周方向に隔設されるセンタ横溝12Cによりセンタブロック13Cに区分されている。
【0021】
ここで前記周方向主溝10の溝巾、及び溝深さについては、特に規制されるものではなく、従来的なサイズが好適に採用しうる。例えば溝巾としては3〜20mmの範囲が一般的であり、又溝深さとしては9〜22mmの範囲が一般的である。なお前記周方向主溝10として、本例ではジグザグ溝が例示されているが、ストレート溝であっても良く、又その本数は3本、4本、5本、6本など種々選択しうる。又前記ショルダ陸部11S以外の陸部11M、11Cについても、ブロック列に限定されるものではなく、例えば周方向に連続するリブとして形成しうるなど、種々なトレッドパターンが採用しうる。
【0022】
又前記重荷重用タイヤ1は、図2に示すように、前記トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されるベルト層7とを具える周知構造をなす。
【0023】
前記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ赤道面Coに対して例えば70〜90°の角度で配列した1枚以上、本例では1枚のカーカスプライ6Aから形成される。本例のカーカスプライ6Aは、ビードコア5、5間を跨るプライ本体部6aの両端に、ビードコア5をタイヤ軸方向内側から外側に折り返されるプライ折り返し部6bを一連に具える。又前記ベルト層7は、ベルトコードをタイヤ赤道面Coに対して例えば10〜60°の角度で配列した2枚以上のベルトプライから形成される。本例では、タイヤ半径方向内側から順次配される4枚のベルトプライ7A〜7Dからなり、ベルトコードがプライ間で互いに交差する箇所を1箇所以上設けることによりベルト剛性を高め、トレッド部2のほぼ全巾をタガ効果を有して補強している。
【0024】
そして本実施形態の重荷重用タイヤ1では、タイヤを正規リムにリム組みしかつ正規内圧の5%の内圧を充填した5%内圧状態におけるタイヤ子午断面において、トレッド部2の表面の輪郭線であるトレッド輪郭線Jを以下のように規制している。
【0025】
前記トレッド輪郭線Jは、図3に示すように、タイヤ赤道面Co上に円弧中心O1を有する曲率半径R1の第1円弧部J1と、この第1円弧部J1に交点Qで交わる曲率半径R2の第2円弧部J2とから形成される。
【0026】
このとき、前記第2円弧部J2の円弧中心O2は、前記交点Qを通る半径方向線Xa上に位置している。又前記第2円弧部J2の曲率半径R2と、第1円弧部J1の曲率半径R1との比R2/R1は、0.2以上かつ0.5以下の範囲に設定されている。
【0027】
又前記トレッド輪郭線Jがタイヤ赤道面Coに交わる赤道点をQc、前記トレッド端Teを通る半径方向線Xbが前記第1円弧部J1の延長線j1に交わる仮想トレッド端をTe’としたとき、前記トレッド輪郭線Jでは、前記赤道点Qcからトレッド端Teまでのタイヤ半径方向距離Heと、前記赤道点Qcから仮想トレッド端Te’までの半径方向距離Hとの比He/Hは、0.5以上かつ1.0未満の範囲に設定されている。
【0028】
このように前記トレッド輪郭線Jを、タイヤ赤道面Co上に円弧中心O1を有する第1円弧部J1と、その交点Qを通る半径方向線Xa上に円弧中心O2を有する第2円弧部J2とにより形成している。そのため、第2円弧部J2の曲率半径R2を、第1円弧部J1の曲率半径R1よりも小に設定しつつ、この第2円弧部J2を、第1円弧部J1の延長線j1よりも半径方向外側に位置させることができる。即ち、タイヤ赤道面Co側とトレッド端側とのタイヤ半径差を減じることができ、肩落ち摩耗の抑制が可能となる。
【0029】
しかも前記第2円弧部J2と、前記赤道点Qcを通るタイヤ軸方向線Ycとの間の半径方向距離Hxは、前記曲率半径R2が小であるため、前記曲率半径R2が大な場合或いは直線である場合に比して、トレッド端Teに近づくにつれてより急激に増加する。従って、トレッド端Teでの接地圧のピーク状の上昇を抑えることができ、三角摩耗の抑制効果を発揮することができる。
【0030】
なお前記曲率半径R2が、曲率半径R1の0.5倍を超えて大きくなると、トレッド端Teでの接地圧が高まるため三角摩耗を抑制することが難しくなる。逆に、前記曲率半径R2が曲率半径R1の0.2倍より小となると、前記距離Hxの増加の度合いが過大となり、路面との滑りを招いて肩落ち摩耗を抑制することが難しくなる。
【0031】
又前記距離Heが距離Hの0.5倍より小の場合にも、トレッド端Teでの接地圧が高まるため三角摩耗を抑制することが難しくなり、逆に1.0倍以上の場合には、タイヤ赤道面Co側とトレッド端Te側とのタイヤ半径差がシングルクラウンの場合以上に大きくなってしまうため、肩落ち摩耗の悪化を招く。
【0032】
このような観点から、前記曲率半径の比R2/R1の下限は0.25以上が好ましく、又上限は0.45以下が好ましい。又前記距離の比He/Hの下限は0.55以上が好ましく、又上限は0.95以下が好ましい。
【0033】
なお前記交点Qの位置は特に規制されないが、例えばタイヤ赤道面Coから交点Qまでのタイヤ軸方向距離Lyは、タイヤ赤道面Coからトレッド端Teまでのタイヤ軸方向距離(トレッド半幅という場合がある。)TWの0.4〜0.8倍の範囲が一般的である。
【0034】
次に、前記効果を有効に発揮させるためには、前記ショルダ陸部11Sにおける接地圧が、ある程度均一であることが好ましい。具体的には、図1に示すように、まず前記ショルダ陸部11Sを、このショルダ陸部11Sの巾中心線iよりもタイヤ軸方向外側の陸部部分11Soと、タイヤ軸方向内側の陸部部分11Siとに仮想的に区分する。なお前記巾中心線iとは、前記ショルダ陸部11Sのタイヤ軸方向の陸部巾Wsの中央を通る周方向線を意味する。
【0035】
そして、正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した正規状態のタイヤに正規荷重を付加したときの接地面F(図4に示す。)において、前記外側の陸部部分11Soにおける接地圧の平均PSoと、前記内側の陸部部分11Siにおける接地圧の平均PSiとの比PSo/PSiを、0.9以上かつ1.0以下の範囲としている。前記接地圧の平均PSo、PSiは、例えば市販の圧力分布測定装置等を用いて前記接地面F内におけるショルダ陸部11S全体の接地圧分布を求め、この接地圧分布を解析することで、各陸部部分11So、11Siにおける接地圧の平均値をうることができる。
【0036】
前記比PSo/PSiが0.9を下回ると、外側の陸部部分11Soの接地圧が低すぎとなってこの陸部部分11Soの滑りが大きくなり、肩落ち摩耗が発生傾向となる。逆に、1.0を上回ると、外側の陸部部分11Soの接地圧が高すぎとなって、接地先着側かつトレッド端のコーナ部の摩耗エネルギが高くなり、三角摩耗が発生傾向となる。このような接地圧の比PSo/PSiは、前記トレッド輪郭線Jの形状に加え、ベルト層7の巾寸法、およびトレッドゴムの厚さ分布などによってコントロールすることができる。
【0037】
又、さらに肩落ち摩耗と三角摩耗とを抑制するために、図5に示すように、前記ショルダブロック13Sにおけるブロック踏面BSと、タイヤ軸方向外側のブロック壁面BWとが交わるブロック外側縁Beの形状を規制するのが好ましい。具体的には、ブロック外側縁Beを、そのタイヤ周方向の両端点be1、be1の間に、タイヤ軸方向外側に最も突出する突出部be2を具える凸曲線で形成している。本例では前記ブロック外側縁Beが円弧状曲線で形成される好ましい場合が示されるが、突出部be2と端点be1との間を直線で形成した略V字状曲線とすることもできる。なお前記突出部be2は、トレッド端Teの位置と一致している。
【0038】
このとき、前記ブロック外側縁Beの両端点be1と突出部be2との間のタイヤ軸方向距離Leは、2mm以上かつ5mm以下の範囲とするのが好ましい。このような前記ブロック外側縁Beは、例えば図6に示すように、トレッド端Teに接地圧がピーク状に高まる接地圧上昇部kが形成されるのをさらに抑えることができ、三角摩耗の抑制効果を発揮しうる。なお前記距離Leが2mm未満では、三角摩耗の抑制効果が充分発揮されず、逆に5mmを超えると、トレッド端Teでの接地圧が過度に下がって、肩落ち摩耗の発生する恐れを招く。なお図6は、接地面の接地中心t(図4に示す。)における接地圧分布である。
【0039】
なお前記ショルダブロック13Sには、ブロック外側縁Beを横切ってタイヤ軸方向にのびる複数のサイピング20を設けることができる。
【0040】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0041】
図1に示すトレッドパターンを基本パターンとし、かつ図4に示すトレッド輪郭線Jを有するタイヤサイズ275/80R22.5の重荷重用タイヤ1を試作するとともに、各試供タイヤの耐肩落ち摩耗性、および耐三角摩耗性についてテストし比較した。各タイヤとも、曲率半径R1は同一であり、曲率半径R2および交点Qの位置(距離Ly)を変更することで、比R2/R1、比He/Hを変化させている。なお表1に記載以外は、実質的に同仕様である。
テスト方法は、以下の通りである。
【0042】
(1)耐三角摩耗性、および耐肩落ち摩耗性:
表1−1、表1−2のタイヤについては、試供タイヤを、リム(22.5×7.50)、内圧(900kPa)の条件にて、車両(2−D4GVW25トントラック)の前輪に装着し、高速道路使用率80%以上の使用条件にて6ヶ月間走行した。そして走行後にタイヤの外見を目視検査し、三角摩耗、および肩落ち摩耗の発生状況を下記の3段階にて評価した。
1−−−偏摩耗(肩落ち摩耗、又は三角摩耗)の発生あり。
2−−−偏摩耗(肩落ち摩耗、又は三角摩耗)がやや発生している。
3−−−偏摩耗(肩落ち摩耗、又は三角摩耗)の発生なし。
【0043】
又、表1−3のタイヤに関しては、高速道路使用率80%以上の使用条件にて10ヶ月間走行した。そして走行後にタイヤの外見を目視検査し、肩落ち摩耗、および三角摩耗の発生状況を下記の3段階にて評価した。
1−−−偏摩耗(肩落ち摩耗、又は三角摩耗)の発生あり。
2−−−偏摩耗(肩落ち摩耗、又は三角摩耗)がやや発生している。
3−−−偏摩耗(肩落ち摩耗、又は三角摩耗)の発生なし。
【表1】



【0044】
表1−1、表1−2に示すように、実施例のタイヤは、三角摩耗と肩落ち摩耗との抑制に効果があることが確認できた。又表1−3に示すように、ショルダブロックのタイヤ軸方向外側を凸曲線とし、かつ距離Leを2〜5mmとすることで、三角摩耗と肩落ち摩耗との抑制効果をさらに高めうるのが確認できた。
【符号の説明】
【0045】
1 重荷重用タイヤ
2 トレッド部
10 周方向主溝
10S ショルダ周方向主溝
11S ショルダ陸部
11So 外側の陸部部分
11Si 内側の陸部部分
12S ショルダ横溝
13S ショルダブロック
Be ブロック外側縁
be1 端点
be2 突出部
BS ブロック踏面
BW ブロック壁面
Co タイヤ赤道面
O1、O2 円弧中心
i 巾中心線
J トレッド輪郭線
J1 第1円弧部
j1 延長線
J2 第2円弧部
Te トレッド端
Te’ 仮想トレッド端
Qc 赤道点
Xa 半径方向線
Xb 半径方向線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記トレッド部に、最もトレッド端側に位置するショルダ周方向主溝を含む周方向主溝を設けることにより、前記ショルダ周方向主溝とトレッド端との間にショルダ陸部が形成され、
かつ前記ショルダ陸部が、タイヤ周方向に隔設されるショルダ横溝によりショルダブロックに区分された重荷重用タイヤであって、
正規リムにリム組みしかつ正規内圧の5%の内圧を充填した5%内圧状態におけるタイヤ子午断面において、
トレッド部の表面のトレッド輪郭線は、タイヤ赤道面に円弧中心を有する曲率半径R1の第1円弧部と、この第1円弧部に交点Qで交わる曲率半径R2の第2円弧部とからなり、
かつ前記第2円弧部の円弧中心は、前記交点Qを通る半径方向線上に位置するとともに、
前記トレッド輪郭線がタイヤ赤道面に交わる赤道点から、トレッド端までのタイヤ半径方向距離Heと、前記赤道点から、前記トレッド端を通る半径方向線が前記第1円弧部の延長線に交わる仮想トレッド端までの半径方向距離Hとの比He/Hは、0.5以上かつ1.0未満であり、
しかも前記曲率半径R2と曲率半径R1との比R2/R1は、0.2以上かつ0.5以下であることを特徴とする重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記ショルダ陸部を、このショルダ陸部の巾中心線によりタイヤ軸方向外側の陸部部分と、タイヤ軸方向内側の陸部部分とに区分したとき、
正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した正規状態のタイヤに正規荷重を付加したときの接地面内において、
前記外側の陸部部分における接地圧の平均PSoと、前記内側の陸部部分における接地圧の平均PSiとの比PSo/PSiは、0.9以上かつ1.0以下であることを特徴とする請求項1記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記ショルダブロックのブロック踏面とタイヤ軸方向外側のブロック壁面とが交わるブロック外側縁は、そのタイヤ周方向の両端点の間に、タイヤ軸方向外側に最も突出する突出部を有する凸曲線をなし、しかも前記両端点と前記突出部との間のタイヤ軸方向距離を2mm以上かつ5mm以下としたことを特徴とする請求項1又は2記載の重荷重用タイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−112218(P2013−112218A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260915(P2011−260915)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)