説明

重袋用包装用紙

【課題】 本発明は、原紙の抄造段階あるいは製袋段階において原紙表面に防滑剤を塗布しなくても、粉体製品を充填した後に積み重ねても滑りにくい重袋を製造することができる重袋用包装用紙を提供する。
【解決手段】パルプ原料がリグノセルロース物質を蒸解した後のカッパー価が20〜80である未晒パルプを主成分とし、該パルプ原料100質量部に対して、硫酸バンドを0.1〜2.0質量部添加して抄紙し、平均粒子径が100nm以下のコロイダルシリカを用紙中に0.05〜2.0質量%、好ましくは0.2〜2.0質量%含有させ、静摩擦係数が0.55〜0.70の範囲にした重袋用包装用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製袋工場等で重袋に加工されて使用される重袋用包装用紙に関し、さらに詳しく述べるならば、印刷及び製袋加工後に内容物を充填された袋を積載する際、あるいは搬送する際に発生する所謂、重袋滑りトラブルを生じ難い重袋用包装用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製粉業、製糖業、化学品製造業などの粉体製品を製造する産業においては、重袋用包装用紙から製造された重袋内に粉体製品を充填し、これを何層にも積み重ねて貯蔵したり、あるいはパレットの上に積み重ねて積載して、フォークリフトで搬送し、トラックに積み込んで出荷している。このように粉体製品を充填した重袋を積み重ねた場合に、袋の表面が滑り易いと、積み重ねた袋が滑り落ち、搬送作業の大幅な能率低下となる。また、落下の衝撃により、破袋が起これば、重袋に充填された粉体製品が飛散し回収できずに大きな損失となる。該重袋の滑り落下はフォークリフトあるいはトラックが、カーブまたは急停止する時に起こりやすく、落下場所に人がいれば人身事故となる場合も考えられる。こうした重袋の滑り問題は生産性の低下だけでなく、重袋のユーザーのみならず製袋メーカーや製紙メーカーにとっても大きな事故につながる非常に大きな問題である。したがって、製袋作業性及び製袋後の品質を維持し、かつ滑らない重袋用に加工されて使用される重袋用包装用紙の開発が強く要望されている。
【0003】
しかしながら、重袋用原紙として使用される重袋用包装用紙は、印刷、製袋、搬送工程で物理的な表面摩擦や化学的成分付着により滑りやすくなる機会が非常に多い。例えば、重袋用包装用紙の巻取から重袋を製造する製袋工場においては、原紙はその表面に商品名等を印刷された後、製袋機に送られて折込、糊付け、切断、底紙貼付け、ミシン掛け等の加工工程を経て重袋とされるが、印刷や加工工程では巻取りから繰り出された原紙の走行方向を変えるために多くのロールが配置され、その結果、原紙の表面が摩擦されて滑りやすくなる。また、通常の印刷インキには乾燥後の印刷面を滑らかにして印刷面を保護する目的でポリエチレン等が配合されているため、さらに油性インキの場合はビヒクルが紙に浸透するため、原紙表面は滑りやすい状態となる。重袋の搬送工程においても、ローラーコンベア等の搬出コンベアやパレタイザーの普及により搬送作業が自動化された結果、連続的な重袋の流れとなり、袋の表面が擦られる機会が増大している。
【0004】
重袋用に使用される原紙(重袋用包装用紙)の表面を滑りにくくするために、従来から製紙業界では原紙製造段階の乾燥工程中にサイズプレスや噴霧ノズルなどを用い原紙表面に防滑剤を塗布あるいは噴霧する方法が種々試みられている。防滑剤としては、コロイダルシリカ系無機物(特許文献1)やスチレン−アクリル系共重合体の糊(特許文献2)等が主に使用されている。また、特定の粒子径分布を有する水和珪酸塩を填料として含有する未晒クラフト紙が提案されている(特許文献3)。さらに、製袋業界においても、主に多色印刷機でインキ1色分を防滑剤塗布用に使用している例が多い。また、製袋後の袋表面に防滑剤を塗布することも行われている。
【0005】
しかしながら、原紙製造段階の乾燥工程で原紙表面に防滑剤を塗布または噴霧する方法は、ドライヤー部での汚れが著しく、製紙用カンバスやドライヤーシリンダーに付着蓄積して熱により変質した汚れが原紙に転移すると、原紙の商品価値がなくなってしまうという欠点がある。また、抄紙機によっては多くの品種の紙を抄造するため、重袋原紙抄造時に発生した防滑剤汚れが、テープ用原紙や食品用途の紙のように品質が厳しい品種に混入すると、製紙メーカーとしては信用失墜となる。粒径の大きなものは脱落する可能性があり、内容物に影響を与える恐れがある。さらに、原紙の片面に防滑剤を塗布した製品においては、製袋メーカーで防滑剤塗布面を袋の内側にして製造するとまったく無意味となってしまうという問題もある。
【0006】
また、原紙に印刷するに際して印刷機で防滑剤を塗布する方法は、インキ転写前後の極めて短い時間に防滑剤の塗布が行われるため、最も滑りやすい印刷面への塗布ができず、絵柄印刷部の外側や袋の裏側にしか塗布する事ができない。さらに、製袋後の袋表面に防滑剤を塗布する方法は、袋1枚毎の作業となるため効率が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−105403号公報
【特許文献2】特開2005−206976号公報
【特許文献3】特開平5−321198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、重袋用原紙の抄紙段階、あるいは製袋段階において、重袋用包装用紙の表面に防滑剤を塗布しなくても、粉体製品を充填した後に積み重ねても滑りにくい重袋を製造することができる包装用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)パルプ原料がリグノセルロース物質を蒸解した後のカッパー価が20〜80である未晒パルプを主成分とし、該パルプ原料100質量部に対して、硫酸バンドを0.1〜2.0質量部添加して抄紙し、コロイダルシリカを用紙中に0.05〜2.0質量%含有せしめた重袋用包装用紙。
【0010】
(2)前記コロイダルシリカの含有量が0.2〜1.0質量%である(1)に記載の重袋用包装用紙。
【0011】
(3)前記コロイダルシリカの平均粒子径が100nm以下である(1)または(2)に記載の重袋用包装用紙。
【0012】
(4)静摩擦係数が0.55〜0.70の範囲にある(1)〜(3)のいずれか1項に記載の重袋用包装用紙。
【発明の効果】
【0013】
本発明者らは、上述した従来技術の問題を化学的観点から鋭意研究した結果、コロイダルシリカおよび硫酸バンドの特定量を未晒パルプに内添して抄紙した包装用紙から製造した重袋は、これに粉体製品を充填して積み重ねたときに滑りにくくなることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の重袋用包装用紙には、引張強さ、破裂強度、引裂強度の点から、リグノセルロース物資と蒸解しただけで、漂白を行なわない未晒しパルプを主に原料として用いる。
パルプ原料となるリグノセルロース物質は広葉樹材、針葉樹材のいずれの材でもよく、また非木材でもよく、特に限定されるものではないが、針葉樹材は上記強度の点から特に好ましく、未晒し針葉樹パルプは原料パルプ中に80質量%以上含有させる事が好ましい。
その他のパルプ原料としては各種のパルプが利用可であがるが、古紙パルプは古紙原料に、強度の高い茶模造紙から製造される古紙パルプが好ましい。
【0015】
本発明において、蒸解工程におけるパルプ化法としては、特に限定されるものではないが、好適にはクラフト蒸解、ポリサルファイド蒸解、ソーダ蒸解、アルカリサルファイト蒸解等の公知の化学パルプ化法が用いられる。特に、パルプ品質(強度等)、未晒パルプ収率、蒸解廃液から熱量や蒸解薬品としてアルカリ分を回収できる方法として確立されていること等、また広範な原料木材などのリグノセルロース物質に適用でき、連続蒸解による迅速化を可能にするなどの利点を考慮すると、クラフト蒸解法が好適に用いられる。例えば、木材をクラフト蒸解する場合、クラフト蒸解白液の硫化度は5〜75%、好ましくは20〜35%、有効アルカリ添加率は、木材絶乾質量に対して5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%である。
【0016】
蒸解温度は140〜170℃、滞留時間50〜300分、液比2.5〜10が好ましい。蒸解温度が140℃未満ではパルプ化が進行せず、170℃を超えるとパルプ収率が極端に低下するため好ましくない。
滞留時間が50分未満ではパルプ化が進行せず、300分を超えるとパルプ生産効率が悪化するために好ましくない。
液比2.5未満では木材チップが蒸解白液に漬かりきれずに未蒸解カスが増加し、液比10を超えると生産効率が低下するため好ましくない。
【0017】
蒸解方式は、連続蒸解法あるいはバッチ蒸解法のどちらでもよく、連続蒸解釜を用いる場合は、蒸解白液を分割で添加する蒸解法でもよく、その方式は特に問わない。バッチ蒸解法による蒸解ブロー時には、蒸解圧力でブローを行う蒸気ブロー方式と蒸解黒液の供給圧力でブローを行うコールドブロー方式がある。
【0018】
本発明において、蒸解補助剤として公知のポリサルファイドや環状ケト化合物、例えばベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、アントロン、フェナントロキノン及び前記キノン系化合物のアルキル、アミノ等の核置換体、あるいは前記キノン系化合物の還元型であるアントラヒドロキノンのようなヒドロキノン系化合物、さらにはディールスアルダー法によるアントラキノン合成法の中間体として得られる安定な化合物である9,10−ジケトヒドロアントラセン化合物等から選ばれた1種あるいは2種以上が添加されてもよく、その添加率は通常の添加率であり、例えば、木材チップの絶乾質量に対して0.001〜1.5質量%である。また、その他の使用できる蒸解助剤としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)等のキレート剤等が挙げられ、特に限定されるものではない。これらの蒸解助剤は、蒸解液と同様に分割添加することが可能であり、添加場所も限定されるものではない。
【0019】
本発明において、蒸解パルプは洗浄、粗選及び精選工程を経て、必要に応じて公知のアルカリ酸素法により脱リグニンすることもできる。本発明において使用可能なアルカリ酸素法は公知の中濃度法あるいは高濃度法がそのまま適用できるが、現在、汎用的に用いられているパルプ濃度が8〜15質量%で行われる中濃度法が好ましい。アルカリ酸素法におけるアルカリとしては、苛性ソーダあるいは酸化されたクラフト蒸解白液を使用することができ、酸素ガスとしては深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。
【0020】
前記酸素ガスとアルカリは中濃度ミキサーにおいて中濃度のパルプスラリーに添加され、混合が十分に行われた後、加圧下でパルプ、酸素及びアルカリの混合物を一定時間保持できる反応塔へ送られ、脱リグニンされる。
酸素ガスの添加率はパルプ絶乾質量に対して0.5〜3質量%、アルカリ添加率は0.5〜4質量%、反応温度は80〜120℃、反応時間は15〜100分、パルプ濃度は8〜15質量%であり、その他の条件は公知のものが適用できる。本発明においてはアルカリ酸素処理による脱リグニン工程において、上記アルカリ酸素処理を連続して複数回行ってもよい。
【0021】
アルカリ酸素処理が施されたパルプは次いで洗浄工程に送られ、洗浄処理される。この段階において、滑りに影響を及ぼす未晒パルプ中のステロールのエステル化合物の含有量が0.1質量%未満であることが好ましい。
【0022】
上記のように本発明においては薬液濃度、アルカリ相当量、蒸解釜中の温度、圧力、時間を適宜調節してカッパー価(Kα)を20〜80となるように制御する。カッパー価が80を超えると未蒸解物が増え、チリが多くなるため、好ましくない。逆にカッパー価が20未満であると得られた包装用紙の引裂き強度が低下し過ぎ、好ましくない。
【0023】
上記、カッパー価(Kα)が20〜80に調製した未晒しパルプを含有する原料パルプは、レファイナーでフリーネスを400〜600mlCSF(カナダ標準フリーネス)に調製する。
400ml未満では透気度が高くなり、破袋が発生する恐れがある。また、600mlを超えると引張強度が低下する恐れがあるので好ましくない。
【0024】
本発明では、重袋の滑りを防止するために、重袋用包装用紙中にコロイダルシリカを0.05〜2.0質量%、好ましくは0.2〜1.0質量%含有させる。コロイダルシリカを効率的に用紙中に含有させるために、原料パルプ100質量部に対して、硫酸バンドを0.1〜2.0質量部の範囲で添加する。コロイダルシリカの含有量が0.05質量%未満であると、粉体製品を充填した後に積み重ねると粉体製品が滑り易くなる。含有量が2.0質量%を超えると地合が悪化するほか高コストとなる。硫酸バンドの添加量が0.1質量部未満であるとコロイダルシリカのパルプ繊維への定着が悪くなり、滑りが発生するほかチリ等の欠点も増加する。添加量が2.0質量部を超えると抄紙機系内のpHが低くなり過ぎ、抄紙機を錆びさせてしまう等の問題を発生する。
【0025】
本発明において用いられるコロイダルシリカは、SiO・xHOで表せられ、粒子形状は球状または球状に近い一次粒子が連結せずに独立して存在している一般的なコロイダルシリカ以外にも、粒子が連結した鎖状粒子、三次元網目構造を有するもの、非球状コロイダルシリカを使用することも出来る。
【0026】
本発明において用いられるコロイダルシリカは粒子径100nm以下のものを用い、好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下である。コロイダルシリカの粒子径は1μm以下で製造されるが、100nmを超えると粒子の比表面積が小さくなり滑り抑制効果が不十分となるだけでなく、脱落する可能性もでてくるため好ましくない。なおコロイダルシリカの粒子径は一次粒子の大きさである。
【0027】
上記のように調製した紙料は抄紙機により抄紙され、本発明の重袋用包装用紙が得られる。その際使用される抄紙機としては、例えば、長網式、円網式、短網式、ツインワイヤー式抄紙機などが挙げられる。紙料中には、必要に応じて、各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の各種抄紙用内添助剤、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤を適宜添加することができる。
【0028】
かくして得られた重袋用包装用紙は、前記未晒パルプ100質量部に対して、硫酸バンドを0.1〜2.0質量部添加して抄紙することによって、用紙中にコロイダルシリカを0.05〜2.0質量%含有させ、JIS P 8147−1994による滑り傾斜角を26度以上に保持することが可能となる。
【0029】
印刷及び製袋加工後の滑り傾斜角については、印刷面積、インキの種類、加工機の種類、加工機保守状態など様々な影響を受けるが、滑り傾斜角が20度以下となると滑りトラブルが発生することが経験的に判明しており、滑り傾斜角を26度以上に保つことができれば滑りトラブルは発生しない。
【0030】
また、本発明において重袋用包装用紙の静摩擦係数は0.55〜0.70の範囲にあることが好ましい。静摩擦係数が0.55未満では、滑り傾斜角が26度以下になり、滑りトラブルの発生が多くなる。静摩擦係数が0.70を超える場合、製袋加工時の紙送りがスムーズに行われ難くなり、加工適性が低下する。
【0031】
本発明の重袋用包装用紙の滑り傾斜角、静摩擦係数が向上するメカニズムについては、界面化学的な考察が必要となるが、重袋用包装用紙は、パルプ繊維中に脂肪酸やステロール化合物などの樹脂分を多く含有しており、そのなかの摩擦係数を低下させる成分が経時にて表面にブリードして滑りを発生させると考えられる本発明では、コロイダルシリカと硫酸バンドを共存させることによりパルプ繊維に効率的に定着させることで、表面へのブリードを抑えていると考えられる。
【0032】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の部及び%は特に断らない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
【0033】
1.カッパー価の測定
JIS P 8211:1998に準じて測定した。
【0034】
2.静摩擦係数の測定
ISO15359:1999に準じて水平式摩擦係数試験機(MU Measurement社製、商品名:「Amontons II」)を用いて、23℃・50%RHの条件で24時間調湿した試料のW面とW面を重ね合わせ、MD方向について測定した。
【0035】
3.滑り傾斜角の測定
JIS P 8147−1994に準じて測定した。この傾斜方法により、23℃・50%RHの条件で24時間調湿した試料のW面とW面を重ね合わせて、同一試料で10回連続して測定し、10回目の値を滑り傾斜角とした。滑り傾斜角が26度以上であれば滑りトラブルは発生しない。
【0036】
4.パルプ中の滑り成分の定量
パルプ中の脂肪酸、脂肪族アルコール及びステロール類のエステル化合物は、サンプル管中に2mlのクロロホルムとパルプ試料0.2gを入れて蓋をし、10分間超音波照射してクロロホルム抽出を行い、液体クロマトグラフィー−荷電化粒子検出器で、液体クロマトグラフィーは日本ウォーターズ社製(2695型)、荷電化粒子検出器は米国ESA社製(商品名:「Corona CAD」)を用いて定量した。
【0037】
5.重袋用包装用紙中のコロイダルシリカ量の測定
JIS P 8251に基づき525℃で灰化した。
【0038】
6.コロイダルシリカの粒径
ナノトラック粒度分布測定装置 UPA−EX150(日機装製)で測定した。
【0039】
7.欠点の評価
製造した重袋用包装用紙についてチリ等の欠点を下記の基準で目視判定した。
A:チリ等の欠点なし
B:チリ等の欠点がわずかに存在するが、実用上問題ないレベル
C:チリ等の欠点が多く、実用上問題となるレベル
【0040】
<実施例1>
木材チップとしてダグラスファーを用い、液比4、硫化度28%、有効アルカリ17質量%(Na2Oとして)となるように調製した蒸解白液を用いて蒸解温度165℃にて2時間クラフト蒸解を行なった。クラフト蒸解終了後、黒液を分離し、得られたチップを高濃度離解機によって解繊後、濾布で遠心脱水と水洗浄を3回繰り返し、次いでスクリーンにより、未蒸解物を除き、遠心脱水してカッパー価31.7、ステロール類のエステル化合物の含有量が絶乾パルプ質量に対して0.072質量%である蒸解未晒パルプを得た。この未晒パルプについてリファイナーを用いてフリーネスが580(CSF)となるように叩解した。叩解後のパルプスラリーの濃度は3.6質量%であった。
上記叩解後のパルプスラリー2777.8部(固形分換算100部)に、硫酸バンド1.0部(対パルプ、固形分換算)、カチオン化澱粉0.3部(対パルプ、固形分換算)添加し、日産化学工業社製コロイダルシリカ(商品名:「スノーテックス20」、粒子径15nm)の含有量が0.8質量%になるように、ツインワイヤフォーマにて抄紙し、米坪84g/m2 の重袋用包装用紙を得た。原料パルプのステロール類のエステル化合物の含有量、重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0041】
<実施例2>
コロイダルシリカとして日産化学工業社製(商品名:「スノーテックス20L」、粒子径45nm)を用いた以外は実施例1と同様にして重袋用包装用紙を得た。得られた重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0042】
<実施例3>
コロイダルシリカとして日産化学工業社製(商品名:「スノーテックスXL」、粒子径50nm)を用いた以外は実施例1と同様にして重袋用包装用紙を得た。得られた重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0043】
<実施例4>
コロイダルシリカとして日産化学工業社製(商品名:「スノーテックスYL」、粒子径60nm)を用いた以外は実施例1と同様にして重袋用包装用紙を得た。得られた重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0044】
<実施例5>
コロイダルシリカとして日産化学工業社製(商品名:「スノーテックスZL」、粒子径80nm)を用いた以外は実施例1と同様にして重袋用包装用紙を得た。得られた重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0045】
<実施例6>
コロイダルシリカとしてエカケミカルス社製(商品名:「NP882」、粒子径3nm)を用いた以外は実施例1と同様にして重袋用包装用紙を得た。得られた重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0046】
<実施例7>
叩解後のパルプスラリーに、硫酸バンド1.5部(対パルプ、固形分換算)、カチオン化澱粉0.3部(対パルプ、固形分換算)で、日産化学工業社製コロイダルシリカ(商品名:「スノーテックス20」、粒子径15nm)を1.8質量%になるようにした以外は実施例1と同様にして重袋用包装用紙を得た。原料パルプのステロール類のエステル化合物の含有量、重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0047】
<実施例8>
叩解後のパルプスラリーに、硫酸バンド0.2部(対パルプ、固形分換算)、カチオン化澱粉0.3部(対パルプ、固形分換算)で、日産化学工業社製コロイダルシリカ(商品名:「スノーテックス20」、粒子径15nm)を0.8質量%になるようにした以外は実施例1と同様にして重袋用包装用紙を得た。原料パルプのステロール類のエステル化合物の含有量、重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0048】
<実施例9>
叩解後のパルプスラリーに、硫酸バンド0.6部(対パルプ、固形分換算)、カチオン化澱粉0.3部(対パルプ、固形分換算)で、日産化学工業社製コロイダルシリカ(商品名:「スノーテックス20」、粒子径15nm)を0.1質量%となるようにした以外は実施例1と同様にして重袋用包装用紙を得た。原料パルプのステロール類のエステル化合物の含有量、重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0049】
<実施例10>
叩解後のパルプスラリーに、硫酸バンド1.0部(対パルプ、固形分換算)、カチオン化澱粉0.3部(対パルプ、固形分換算)で、日産化学工業社製コロイダルシリカ(商品名:「スノーテックス20」、粒子径15nm)を「0.5質量%となるようにした以外は実施例1と同様にして重袋用包装用紙を得た。原料パルプのステロール類のエステル化合物の含有量、重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0050】
<実施例11>
実施例6の同じコロイダルシリカ、エカケミカルス社製(商品名:「NP882」、粒子径3nm)を用い、含有量を0.3質量%となるようした以外は実施例1と同様にして重袋用包装用紙を得た。得られた重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0051】
<実施例12>
(パルプの製造)
木材チップとしてダグラスファーを用い、液比4、硫化度28%、有効アルカリ12.5質量%(Na2Oとして)となるように調製した蒸解白液を用いて、蒸解温度165℃にて2時間クラフト蒸解を行なった。クラフト蒸解終了後、黒液を分離し、得られたチップを高濃度離解機によって解繊後、濾布で遠心脱水と水洗浄を3回繰り返し、次いでスクリーンにより、未蒸解物を除き、遠心脱水してカッパー価70、ステロール類のエステル化合物の含有量が絶乾パルプ質量に対して0.089質量%である蒸解未晒パルプを原料パルプとした以外は実施例1と同様にして重袋用包装用紙を得た。原料パルプのステロール類のエステル化合物の含有量、重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0052】
<比較例1>
(パルプの製造)
木材チップとしてダグラスファーを用い、液比4、硫化度28%、有効アルカリ11質量%(Na2Oとして)となるように調製した蒸解白液を用いて、蒸解温度165℃にて2時間クラフト蒸解を行なった。クラフト蒸解終了後、黒液を分離し、得られたチップを高濃度離解機によって解繊後、濾布で遠心脱水と水洗浄を3回繰り返し、次いでスクリーンにより、未蒸解物を除き、遠心脱水してカッパー価85、ステロール類のエステル化合物の含有量が絶乾パルプ質量に対して0.097質量%である蒸解未晒パルプを原料パルプとした以外は実施例1と同様にして重袋用包装用紙を得た。原料パルプのステロール類のエステル化合物の含有量、重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0053】
<比較例2>
叩解後のパルプスラリーに、硫酸バンド1.0部(対パルプ、固形分換算)、カチオン化澱粉0.3部(対パルプ、固形分換算)を添加し、日産化学工業社製コロイダルシリカ(商品名:「スノーテックス20」、粒子径15nm)の含有量を0.03質量%となるようにした以外は実施例1と同様にして重袋用包装用紙を得た。原料パルプのステロール類のエステル化合物の含有量、重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0054】
<比較例3>
叩解後のパルプスラリーに、硫酸バンド1.0部(対パルプ、固形分換算)、カチオン化澱粉0.3部(対パルプ、固形分換算)を添加し、日産化学工業社製コロイダルシリカ(商品名:「スノーテックス20」、粒子径15nm)の含有量が2.5質量%となるようにした以外は実施例1と同様にして重袋用包装用紙を得た。原料パルプのステロール類のエステル化合物の含有量、重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0055】
<比較例4>
叩解後のパルプスラリーに、硫酸バンド0.05部(対パルプ、固形分換算)、カチオン化澱粉0.3部(対パルプ、固形分換算)を添加し、日産化学工業社製コロイダルシリカ(商品名:「スノーテックス20」、粒子径15nm)の含有量が0.8質量%になるようにした以外は実施例1と同様にして重袋用包装用紙を得た。原料パルプのステロール類のエステル化合物の含有量、重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0056】
<比較例5>
叩解後のパルプスラリーに、硫酸バンド2.5部(対パルプ、固形分換算)、カチオン化澱粉0.3部(対パルプ、固形分換算)を添加し、日産化学工業社製コロイダルシリカ(商品名:「スノーテックス20」、粒子径15nm)の含有量が0.8質量%となるようにした以外は実施例1と同様にして重袋用包装用紙を得た。原料パルプのステロール類のエステル化合物の含有量、重袋用包装用紙の静摩擦係数および滑り傾斜角の結果を表1に示した。
【0057】
【表1】

【0058】
表1から明らかなように、本発明により得られた重袋用包装用紙は抄紙段階あるいは製袋段階において重袋用包装用紙の表面に防滑剤を塗布することなく滑り難いものが得られることがわかる。
【0059】
本発明により、硫酸バンドの特定量を未晒パルプに内添して、特定のコロイダルシリカを用紙内に含有させる事により、重袋に、粉体製品を充填して積み重ねた場合にも滑りトラブルは発生しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ原料がリグノセルロース物質を蒸解した後のカッパー価が20〜80である未晒パルプを主成分とし、該パルプ原料100質量部に対して、硫酸バンドを0.1〜2.0質量部添加して抄紙し、コロイダルシリカを用紙中に0.05〜2.0質量%含有せしめた事を特徴とする重袋用包装用紙。
【請求項2】
前記コロイダルシリカの含有量が0.2〜1.0質量%であることを特徴とする請求項1記載の重袋用包装用紙。
【請求項3】
前記コロイダルシリカの平均粒子径が100nm以下である請求項1または2に記載の重袋用包装用紙。
【請求項4】
静摩擦係数が0.55〜0.70の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の重袋用包装用紙。

【公開番号】特開2011−252248(P2011−252248A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125931(P2010−125931)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】