説明

重量物吊上げ装置

【課題】重量物吊上げ装置に関し、特に、集合住宅のパイプシャフトへの給湯器等の設置に好適な重量物吊上げ装置を提供する。
【解決手段】リフター4の爪部4bを給湯器7の内側に差し込んだ状態でリフター4が水平となるように、負荷鎖3b長さを調節する。この段階では、連結ワイヤー5dには張力が掛かっておらず、弛んだ状態にある。次に、荷締器5aを締め込むことにより連結ワイヤー5dの長さを調節し、リフター4が水平の状態で連結ワイヤー5dに張力が掛かり、給湯器7を吊り上げた状態とする。チェーンブロック3の操作鎖3dを操作して負荷鎖3bを上方に巻き上げ、リフター4と一体の給湯器7を吊り上げる。この場合、負荷鎖3bの巻き上げ長さ(Δd1)と無負荷鎖3cの巻き下げ長さ(Δd2)は等しいので、リフター4は水平を維持したまま吊り上げられる。PSの扉設置高さまで吊り上げて、巻き上げを停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重量物吊上げ装置に関し、特に、集合住宅のパイプシャフトへの給湯器等の設置に好適な重量物吊上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯器(給湯暖房機、追焚給湯器、暖房専用機等を含む)を集合住宅のパイプシャフト(以下、PSと略称することがある)に設置する場合、図5(a)に示すように給湯器101の外側に扉内ボックス102を装着し、同図(b)に示すように、一体としてPS扉枠103の上部及び側面取付金具103a、103bにビス固定することが一般的である。
この作業を単独作業で行う場合、図6に示すように三脚に取り付けたチェーンブロック105を使って、給湯器101を吊り上げることは可能である。しかしながら、給湯器周囲に吊り下げ用帯104を巻き、フック105aに引っ掛けて巻き上げなければならないため、PS扉枠103内に入れる際に帯104が邪魔となり、非常に困難な作業となる。
なお、三脚に取り付けたチェーンブロックを使って重量物を移動可能とする技術として、側溝の蓋を人力で吊り上げ可能とし、作業性の向上を図る技術が開示(例えば特許文献1)されているが、上記問題には対応できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実案第3036634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらに、フォークリフトを用いて給湯器を持ち上げる方法も考えられるが、通常、給湯器にはフォークリフトの先端爪部を挿入可能とする隙間はなく、現実的ではない。専用治具の開発により持ち上げること自体は可能とはなるものの、一般にPSは集合住宅の共用廊下に設けられることが多く、この場合、スペースが狭いためフォークリフトの取り回しは困難、かつ、危険を伴う。
これらの理由から、給湯器のPS設置に関しては、簡易かつ安全に重量物を吊り上げ、移動可能とする適当な手段がなく、2人作業で給湯器を抱えて取り付けざるを得ないというのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためのものであって、以下の内容を要旨とする。すなわち、本発明に係る重量物吊上げ装置は、
(1)重量物を、水平を維持しつつ吊上げて移動可能とする重量物吊上げ装置であって、底部に移動用キャスターを備えた基盤部と、天枠部と、基盤部に固定され天枠部を支持する支柱枠体と、を備えた装置本体と、天枠部に配設されるチェーンブロックと、重量物を担持した状態で、チェーンブロックにより吊り上げられる重量物担持手段と、重量物担持手段を、荷重が掛かった状態で水平位置に維持可能とする水平維持手段と、 を備えて成り、重量物担持手段は、一端側に重量物を担持する担持部と、他端側に連結ワイヤー接続部と、中央部にチェーンブロックの負荷鎖により吊り上げ可能とする吊上げ部と、を備え、水平維持手段は、重量物担持手段の連結ワイヤー接続部に取り付けられるワイヤー長さ調整手段と、基盤部に配設される1以上の滑車と、チェーンブロックの無負荷鎖とワイヤー長さ調整手段とを該滑車を介して連結する連結ワイヤーと、を備え、該ワイヤー長さ調整手段は、担持部に荷重が掛かった状態で、重量物担持手段を水平位置に調整可能に構成した、ことを特徴とする。
【0006】
本発明の作用は以下の通りである。図4(a)を参照して、重量物を地上面に置いた状態で重量物担持手段の担持部に担持させ、次いでワイヤー長さ調整手段により連結ワイヤー長さを調整することにより、重量物担持手段を水平位置にする。次いで同図(b)を参照して、チェーンブロックを操作して負荷鎖を上方に巻き上げ、重量物担持手段と一体の重量物を吊り上げる。この場合、負荷鎖の巻き上げ長さ(Δd1=d1−d1’)と無負荷鎖の巻き下げ長さ(Δd2=d2’−
d2)は等しいので、重量物担持手段は水平を維持したまま吊り上げられる。このため、重量物を地上面に置かれた状態のまま吊り上げることができ、移動用キャスターにより水平移動させれば、例えば高い位置での取り付け等、目的作業を容易に行うことができる。
【0007】
(2)上記発明において、前記基盤部は、重量物を担持する側の反対側に、カウンターウエイトを、さらに備えて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一人作業により重量物を容易に吊り上げ、かつ、水平移動も可能となる。
また、パイプシャフト等、三脚では事実上不可能な場所への設置についても、一人作業が可能となるという効果がある。
また、基盤部の後端側にカウンターウエイトを備えた発明にあっては、水平を保つためのカウンターウエイト(バランス用錘)を別途用意する必要がないため、作業性及び安全性が向上するという効果がある。なお、錘の重量は、重量物の重さ、重量物担持手段の長さ等を勘案して、適宜定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1(a)】本発明の一実施形態に係る給湯器リフト装置1の全体構成を示す図である。
【図1(b)】給湯器リフト装置1の側面構成を示す図である。
【図2】リフター4の詳細構成を示す図である。
【図3(a)】給湯器リフト装置1を用いた給湯器7のPS扉枠8bへの設置工程(a)(給湯器7担持)を示す図である。
【図3(b)】同設置工程(b)(荷締器5a締め込み)を示す図である。
【図3(c)】同設置工程(c)(給湯器7吊り上げ)を示す図である。
【図3(d)】同設置工程(d)(PS扉枠への設置)を示す図である。
【図4】本発明の作用を示す図である。
【図5】従来の給湯器パイプシャフト設置の方法を示す図である。
【図6】従来の三脚とチェーンブロックを用いた給湯器吊り上げ方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る給湯器リフト装置(請求項の重量物吊上げ装置に該当)について、図1乃至4を参照してさらに詳細に説明する。重複説明を回避するため、各図において同一構成には同一符号を用いて示している。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
図1(a)、1(b)を参照して、給湯器リフト装置1は装置本体2と、本体天枠部2cに吊り下げられるチェーンブロック3と、チェーンブロック3により重量物と一体に吊り上げられるリフター4(請求項の重量物担持手段に該当)と、リフター4を水平位置に設定可能とする水平維持手段5と、を主要構成として備えている。
【0011】
装置本体2は、底部に移動手段であるキャスター2eを備えた基盤部2aと、チェーンブロック3を吊り下げ支持する梁2fを備えた天枠部2cと、基盤部2aに固定され天枠部2cを支持する3本の支柱枠体2bと、により三角柱形状に構成されている。基盤部2aの底部には、バランス用錘2gが取り付けられている。
チェーンブロック3は、ギア群、ブレーキ等(いずれも不図示)を内蔵する本体3aと、下端部のフック3eに重量物を掛けて吊り上げる負荷鎖3bと、下端部にシャックル3fを備えた無負荷鎖3cと、負荷鎖3bの巻き上げ、巻き下げを行う操作鎖3d(適宜、図示を省略)と、を備えている。なお、後述するように、本発明においては無負荷鎖3cにも負荷が掛かることになるが、便宜上、無負荷鎖と称する。
【0012】
図2をも参照して、リフター4は、両側に並べた一対のリフターユニット4aを支持ロッド4fで接続固定して、そり形状に構成されている。各ユニットの先端側には、給湯器7を担持するための爪部4b(請求項の担持部に該当)、後端側にはワイヤー接続部4cが設けられている。爪部4bの上端には給湯器7を水平に支持するための支持部4dが取り付けられている。また、中央にはリフター4全体を負荷鎖3bに掛けて吊り上げるための、ワイヤー4eが取り付けられている。
【0013】
水平維持手段5は、リフター4の後端側4cに固定される荷締器5a(請求項のワイヤー長さ調整手段に該当)と、基盤部2aに配設される2連の滑車5b、5cと、荷締器5aと無負荷鎖3cとを滑車5b、5cを介して連結する連結ワイヤー5dと、により構成されている。荷締器5aは内部にラチェット機構を備えており、連結ワイヤー5dを所望の長さに調整するように締め込み、その長さに保持する機能を備えている。滑車5b、5cはそれぞれ、無負荷鎖3c及び荷締器5aの直下に配設されており、無負荷鎖3cを介して連結ワイヤー5dに対して垂直上方に掛かる張力を、リフター4の後端側4cに対して垂直下方に方向変更して掛けるように構成されている。
【0014】
給湯器リフト装置は以上のように構成されており、次に、図3(a)乃至3(d) を参照して、給湯器リフト装置1による給湯器7の吊り上げ、及び、PSへの設置の態様について説明する。
(a)給湯器7の担持
図3(a)を参照して、扉内ボックス8aと一体の給湯器7を、前面カバーを外した状態で、予め床面GLに立てて置く。リフター4の爪部4bを給湯器7の内側に差し込んだ状態でリフター4が水平となるように、負荷鎖3b長さを調節する。この段階では、連結ワイヤー5dには張力が掛かっておらず、弛んだ状態にある。
【0015】
(b)荷締器5aの締め込み
図3(b)を参照して、次に、荷締器5aを締め込むことにより連結ワイヤー5dの長さを調節し、リフター4が水平の状態で連結ワイヤー5dに張力が掛かり、給湯器7を吊り上げた状態とする。
【0016】
(c)給湯器7の吊り上げ
図3(c)を参照して、チェーンブロック3の操作鎖3dを操作して負荷鎖3bを上方に巻き上げ、リフター4と一体の給湯器7を吊り上げる。この場合、図4(b)を参照して、上述のように、負荷鎖3bの巻き上げ長さ(Δd1)と無負荷鎖3cの巻き下げ長さ(Δd2)は等しいので、リフター4は水平を維持したまま吊り上げられる。PSの扉設置高さまで吊り上げて、巻き上げを停止する。
【0017】
(d)パイプシャフトへの設置
図3(d)を参照して、給湯器リフト装置1をパイプシャフト8の扉枠8b前面に移動させる。取り付け高さの調整を行った後、図5(b)と同様の方法で給湯器7を扉枠8bに取り付ける。取付完了後に、給湯器7の前面カバー(図示せず)を取り付けて、作業が完了する。
【0018】
なお、本実施形態では、装置本体が三角柱形状の例を示したが、これに限らず、重量物を吊り上げてバランスを維持できる形状とすることができる。
また、荷締器5aと無負荷鎖3c間を2個の滑車を介して連結ワイヤーにより連結する例を示したが、単一の滑車を用いる形態とすることもできる。
また、本実施形態では、重量物担持手段として一対のユニットにより構成されるリフターを用いる例を示したが、これに限らず単一のリフターを用いる形態とすることもできる。さらに、担持方法として先端の爪部を給湯器内側に差し込む形態としたが、例えば先端部に吊り下げる形態とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明はガス給湯器のみならず、吊上げ装置の担持部に担持可能な重量物の吊上げ装置として広く適用可能である。
【符号の説明】
【0020】
1・・・・給湯器リフト装置
2・・・・装置本体
2a・・・基盤部
2b・・・支柱枠体
2c・・・天枠部
2e・・・キャスター
2f・・・梁
2g・・・バランス用錘
3・・・・チェーンブロック
3b・・・負荷鎖
3c・・・無負荷鎖
4・・・・リフター
4b・・・爪部
4c・・・ワイヤー接続部
5・・・・水平維持手段
5a・・・荷締器
5b、5c・・・滑車
5d・・・連結ワイヤー
7・・・・給湯器
8a・・・扉内ボックス
8b・・・扉枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物を、水平を維持しつつ吊上げて移動可能とする重量物吊上げ装置であって、
底部に移動用キャスターを備えた基盤部と、天枠部と、基盤部に固定され天枠部を支持する支柱枠体と、を備えた装置本体と、
天枠部に配設されるチェーンブロックと、
重量物を担持した状態で、チェーンブロックにより吊り上げられる重量物担持手段と、
重量物担持手段を、荷重が掛かった状態で水平位置に維持可能とする水平維持手段と、 を備えて成り、
重量物担持手段は、一端側に重量物を担持する担持部と、他端側に連結ワイヤー接続部と、中央部にチェーンブロックの負荷鎖により吊り上げ可能とする吊上げ部と、を備え、
水平維持手段は、重量物担持手段の連結ワイヤー接続部に取り付けられるワイヤー長さ調整手段と、基盤部に配設される1以上の滑車と、チェーンブロックの無負荷鎖とワイヤー長さ調整手段とを該滑車を介して連結する連結ワイヤーと、を備え、
該ワイヤー長さ調整手段は、担持部に荷重が掛かった状態で、重量物担持手段を水平位置に調整可能に構成した、
ことを特徴とする重量物吊上げ装置。
【請求項2】
前記基盤部は、重量物を担持する側の反対側に、カウンターウエイトを、さらに備えて成ることを特徴とする請求項1に記載の重量物吊上げ装置。

【図1(a)】
image rotate

【図1(b)】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3(a)】
image rotate

【図3(b)】
image rotate

【図3(c)】
image rotate

【図3(d)】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate