説明

重量物昇降装置及び重量物昇降システム

【課題】長ストロークを安全・確実に昇降させる重量物昇降装置及び重量物昇降システムを提供すること。
【解決手段】設置面をなすロアフレーム3と上方に重量物を載置可能なアッパーフレーム2が、その中央に設けられた中空の伸縮ガイドポスト4と、その周りに配置された複数の昇降用シリンダ5,6,7,8によって連結されたものであり、伸縮ガイドポスト4は、複数の筒体11,12,13が水平荷重を支持可能なように摺動可能に重ね合わされ、昇降用シリンダ6,8には、異常が発生した場合に重量物の荷重を受けて落下を防止するロック機構が設けられていることを特徴とする重量物昇降装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁等の重量物を昇降する重量物昇降装置及び重量物昇降システムに関し、特に長ストロークを安全に昇降させる重量物昇降装置及び重量物昇降システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、橋梁架設工事では、送出し工法によって橋脚間に橋桁のかけ渡しが行われるが、その際、先ずベント上で橋桁となる架設桁の送出しが行われ、所定位置まで移動されたところで橋脚に下ろすための降下作業が行われる。それには、複数組の鋼製サンドルおよび板材と低ストロークの鉛直ジャッキが用いられ、橋脚に対する架設桁の設置作業が行われる。すなわち、板材または鋼製サンドルを1組ずつ抜きながら、その厚さ分だけ鉛直ジャッキによって架設桁を徐々に降下させる。これは、安全を考慮した作業であるが、作業時間のかかりすぎや作業負担が大きい問題があった。この点、特開2006−56698号公報には、数百トンの重量物を長ストローク上げ下げでき、且つその昇降動作中及び動作停止中に水平力が作用しても安全に昇降動作することが出来る昇降装置が提案された。
【0003】
ここで、図10は、当該公報に記載された重量物昇降装置を示した側面図である。この重量物昇降装置100は、複数段に伸縮可能な油圧式のテレスコシリンダ101がロアフレーム102とアッパーフレーム103との間に4本取り付けられている。テレスコシリンダ101は、径の大きい基部側がロアフレーム102と連結され、径の細くなった作動部相互がアッパーフレーム103に連結されている。矩形のロアフレーム102とアッパーフレーム103には、その隅部にテレスコシリンダ101を構成する多段伸長ジャッキが固定されている。重量物昇降装置100は、4本のテレスコシリンダ101が同期して伸縮することにより、重量物を載せたアッパーフレーム103が水平状態を維持したまま昇降するように構成されている。
【0004】
架設桁を降下させる場合、重量物昇降装置100は架設桁の長手方向端部を支持するため、垂直方向の力だけでなく水平方向にかかる力も考慮する必要がある。この点重量物昇降装置100は、昇降動作に追従して伸縮する可動式ブレースが設けられている。可動式ブレースは、回転ナット式ブレース105と油圧シリンダ式ブレース106が対になって側部の4面にX形に交差させ、何れの方向の水平力に対しても対応できるように配置されている。油圧シリンダ式ブレース106は、一般的な油圧シリンダで構成され、回転ナット式ブレース105の側近に略平行に並べてロアフレーム102とアッパーフレーム103との間に斜めに連結されている。そして、テレスコシリンダ101の伸縮に連動して伸縮するようになっている。
【0005】
油圧シリンダ式ブレース106は、回転ナット式ブレース105に作用する水平方向の負荷を軽減して安定した作動を確保するために設けられている。可動式ブレースを構成する回転ナット式ブレース105と油圧シリンダ式ブレース106は、それぞれ組をなす他方のブレースを補うように作用する。
こうした重量物昇降装置100は、アッパーフレーム103の上に重量物を載置し、4本のテレスコシリンダ101を同期して作動させ重量物を所定高さへ持ち上げ、アッパーフレーム103の上昇に追従して可動式ブレースである回転ナット式ブレース105と油圧シリンダ式ブレース106が伸長し、水平力に対抗して昇降装置が転倒するのを防止する。一方、降下させる場合には4本のテレスコシリンダ101を同期して収縮させ、同時に可動式ブレースが収縮する。
【特許文献1】特開2006−56698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした重量物昇降装置100は、水平力に対する転倒防止手段として回転ナット式ブレース105と油圧シリンダ式ブレース106らなる可動式ブレースを設け、重量物の昇降動作に対する安全を確保した構成になっている。しかし、4本のテレスコシリンダ101が配置され、それぞれの間にクロスした回転ナット式ブレース105と油圧シリンダ式ブレース106を設ける構成は複雑であり、それ故に装置自体が大型化し、更に故障しやすく信頼性に乏しいうえに、価格の高いものとなってしまう。
【0007】
また、重量物昇降装置100は、テレスコシリンダ101の同期した伸縮動作の他、互いを補うように回転ナット式ブレース105と油圧シリンダ式ブレース106との伸縮動作を行わせるのは制御が煩雑になる問題もあった。
更に、重量物昇降装置100は、重量物の垂直荷重を4本のテレスコシリンダ101によって支持しているが、例えばそのうちの1本でも油圧が抜けるような異常が生じた場合、バランスが崩れてしまい、百トン以上もの重量物を支持するものとして安全上十分ではない。
【0008】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、長ストロークを安全・確実に昇降させる重量物昇降装置及び重量物昇降システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る重量物昇降装置は、設置面をなすロアフレームと上方に重量物を載置可能なアッパーフレームが、その中央に設けられた中空の伸縮ガイドポストと、その周りに配置された複数の昇降用シリンダによって連結されたものであり、前記伸縮ガイドポストは、複数の筒体が水平荷重を支持可能なように摺動可能に重ね合わされ、前記昇降用シリンダには、異常が発生した場合に重量物の荷重を受けて落下を防止するロック機構が設けられたものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る重量物昇降装置は、設置面をなすロアフレームと上方に重量物を載置可能なアッパーフレームが、その中央に設けられた水平荷重を支持可能な中空の伸縮ガイドポストと、その周りに配置された複数の昇降用シリンダによって連結されたものであり、前記伸縮ガイドポストは、複数の筒体が摺動可能に重ね合わされ、前記複数の昇降用シリンダは、重量物の荷重を受けて常時駆動する二以上の主昇降用シリンダと、その主昇降用シリンダに異常が発生した場合に重量物の荷重を受けて駆動する二以上の補助昇降用シリンダとに区別され、その補助昇降用シリンダにロック機構が設けられたものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る重量物昇降装置は、前記伸縮ガイドポストと昇降用シリンダは2段以上の多段シリンダであることが好ましい。
また、本発明に係る重量物昇降装置は、前記伸縮ガイドポストが、断面が円形又は矩形の筒体が重ね合わされたものであることが好ましい。
また、本発明に係る重量物昇降装置は、前記主昇降用シリンダが、油圧によって伸縮する多段のテレスコシリンダであり、前記補助昇降用シリンダが、油圧または電動モータによって回転ナットを回転させてネジロッドを伸縮させ、荷重が作用しても落ちないセルフロック式のネジ機構付油圧シリンダであることが好ましい。
また、本発明に係る重量物昇降装置は、前記昇降用シリンダが、前記伸縮ガイドポストの周りに4本設けられ、前記伸縮ガイドポストを中心に対角線上に位置するように、前記主昇降用シリンダと補助昇降用シリンダとがそれぞれ配置されたものであることが好ましい。
【0012】
本発明に係る重量物昇降システムは、設置面をなすロアフレームと上方に重量物を載置可能なアッパーフレームが、その中央に設けられた水平荷重を支持可能な中空の伸縮ガイドポストと、その周りに配置された二以上の主昇降用シリンダ及びロック機構を備えた二以上の補助昇降用シリンダによって連結されてなる重量物昇降装置と、前記主昇降用シリンダ及び補助昇降用シリンダに対する作動油の供給及び排出を行う油圧回路装置と、その油圧回路装置を構成する油圧ポンプやバルブなどの流体機器の制御を行う制御装置とを備えたものであって、前記制御装置は、前記主昇降用シリンダが重量物の荷重を受けて前記重量物昇降装置が伸縮作動し、前記主昇降用シリンダに異常が発生した場合には、補助昇降用シリンダが重量物の荷重を受けて伸縮作動するように、前記油圧回路装置を制御するようにしたものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る重量物昇降システムは、前記主昇降用シリンダが、油圧によって伸縮する多段のテレスコシリンダであり、前記補助昇降用シリンダが、油圧または電動モータによって回転ナットを回転させてネジロッドを伸縮させるネジ機構付油圧シリンダであることが好ましい。
また、本発明に係る重量物昇降システムは、前記油圧回路装置が、複数ある前記主昇降用シリンダ及び補助昇降用シリンダについて、各シリンダ毎に少なくとも1つの油圧ポンプを有し、前記制御装置が前記主昇降用シリンダ及び補助昇降用シリンダを同調制御するようにしたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
よって、本発明によれば、昇降用シリンダによって装置全体を伸縮させ、中央に設けた伸縮ガイドポストによって水平力に対抗するように構成したので、鉛直性を保ってアッパーフレーム上の重量物をスムーズに昇降させることができる。そして、例えば補助用にネジ機構付油圧シリンダなどを設けた構成にすることによって、メインの主駆動油圧シリンダの油圧回路に破損などが生じた場合でも、ネジによって落下を防止することができ、長ストロークを安全・確実に昇降させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る重量物昇降装置について、その一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。先ず、重量物昇降装置の使用の一例として、橋梁架設工法における使用について簡単に説明する。
【0016】
図1は、橋梁架設の送出し工法を示した図である。図1(a)に示すように、架設設備107の上に架設桁120は、台車111,112が前後して設けられた工事桁110に連結され、その工事桁110の後端にはウエイト115が載せられる。そして、台車111,112の駆動により、架設桁120の両端が橋脚102,103に載るような図1(b)に示す位置まで送り出される。ベント104,105上には重量物昇降装置1が配置されている。そこで、片持ち支持された架設桁120が工事桁110の前方で撓んだ状態になっているので、重量物昇降装置1が伸ばされ、架設桁120が工事桁110の延長上で水平になるようにジャッキアップされる。
【0017】
架設桁120の両端部がベント104,105上の重量物昇降装置1によって支えられると、架設桁120は架設設備107上の工事桁110と切り離なされ、図1(c)に示すように、重量物昇降装置1の収縮動作によってジャッキダウンが行われ、その端部を橋脚102,103上に載せる据え付け作業が行われる。重量物昇降装置1は、ベント104,105にそれぞれ2台ずつ配置されており、架設桁120を支える合計4台の重量物昇降装置1が同時に駆動制御される。すなわち、4台の重量物昇降装置1の伸縮を同期させ、架設桁120の水平な姿勢を保った降下が行われる。
【0018】
次に、図2は、重量物昇降装置1を示した外観斜視図である。また、図3は、重量物昇降装置1の伸長状態の側面図であり、図4は、収縮状態の側面図である。更に、図5は、重量物昇降装置1を構成する伸縮ガイドポストの断面を示した図である。
重量物昇降装置1は、アッパーフレーム2とロアフレーム3とを上下に有し、その間には中央に伸縮ガイドポスト4が設けられ、その周りには4本の昇降用シリンダ5,6,7,8が配置されている。アッパーフレーム2とロアフレーム3は、板材に対して格子状にリブが形成され剛性が高められている。そして、複数の重量物昇降装置1を重ねて使用する場合、アッパーフレーム2とロアフレーム3を締結できるようにボルト孔(図示せず)が複数形成されている。
【0019】
伸縮ガイドポスト4は、円筒状のガイドが嵌め合わされ、アッパーフレーム2側からロアフレーム3側にかけて各ガイドの径が小さくなるように形成されている。すなわち、伸縮ガイドポスト4は、径の大きいアッパーガイド11がアッパーフレーム2に固定され、径の最も小さいロアガイド13はロアフレーム3に固定されている。そして、中間のミドルガイド12は、上端部がアッパーガイド11内に挿入され、その下方からロアガイド13が挿入されている。伸縮ガイドポスト4は、こうして下から順に径の小さいロアガイド13、ミドルガイド12及びアッパーガイド11が嵌め合わされている。
【0020】
中央に設けられた伸縮ガイドポスト4は、重量物昇降装置1に作用する水平方向の荷重を支持可能なように構成されたものである。水平方向に対する剛性を高めるため、ロアガイド13及びミドルガイド12は、上端に蓋材13a,12aが固定され、ミドルガイド12とアッパーガイド11は、下端に外側に広がったフランジ12b,11bが形成されている。伸縮ガイドポスト4は、強度および耐摩耗性が高い黄銅合金によって形成され、ロアガイド13及びミドルガイド12の上部には複数のスライドプレート15が貼設されている。
【0021】
スライドプレート15は、ロアガイド13及びミドルガイド12に対してそれぞれ上下2段にあって、円周方向には例えば90度間隔で配置され、挿入されたミドルガイド12及びアッパーガイド11の内側面に摺接している。このスライドプレート15も黄銅合金によって形成されており、摺接面には潤滑剤が付され、伸縮動作がスムーズに行われるよう常に潤滑状態が保たれるようになっている。また、ミドルガイド12がアッパーガイド11に従って上昇するように、両者には突起16とストッパ17とがそれぞれ形成されている。ミドルガイド12とロアガイド13にも同じように、図5に示す伸長状態を超えないための突起16とストッパ17がそれぞれ形成されている。
【0022】
次に、昇降用シリンダ5,6,7,8は、伸縮ガイドポスト4を中心にアッパーフレーム2とロアフレーム3の四隅に配置されている。そして、昇降用シリンダ5,6,7,8は、ロッド先端やシリンダチューブ先端には球面のジャーナルが形成され、それがアッパーフレーム2やロアフレーム3に形成された球面座に嵌合し、シリンダ自身の傾きは許容できるようになっている。4本ある昇降用シリンダ5,6,7,8は、伸縮ガイドポスト4を中心に対角線上に位置するもの同士が組みになり、昇降用シリンダ5,7と昇降用シリンダ6,8の2組に分けられている。
【0023】
重量物昇降装置1は、4本ある昇降用シリンダ5,6,7,8のうち、2本の昇降用シリンダ5,7によって荷重を受け、アッパーフレーム2上に載った対象物を昇降させ、残る2本の昇降用シリンダ6,8は、メインの昇降用シリンダ5,7の異常時などに、代わって荷重を受けて昇降を行うよう構成されている。メインの昇降用シリンダ5,7は、油圧によって伸縮する2段式のテレスコシリンダであり、上方のアッパーフレーム2側に伸びるように取り付けられている。以下、この昇降用シリンダ5,7を主駆動油圧シリンダ5,7とする。一方、補助用の昇降シリンダ6,8は、回転ナットの回転によってロッドを伸縮させ、また、伸長時にはロッドが油圧を受けるように構成された、ネジ機構付の単動シリンダである。以下、この昇降用シリンダ6,8をネジ機構付油圧シリンダ6,8とする。
【0024】
重量物昇降装置1は、こうした4本の昇降用シリンダ5,6,7,8が設けられているが、本実施形態では、各々のシリンダに対して油圧ポンプが少なくとも1台が割り当てられ、それぞれの伸縮駆動制御が独立して行われるよう構成されている。ここで、図6は、主駆動油圧シリンダ5,7側の油圧回路を示した図であり、図7は、ネジ機構付油圧シリンダ6,8側の油圧回路を示した図である。
【0025】
先ず、主駆動油圧シリンダ5,7には、それぞれに図6に示す油圧回路が構成され、そこには電動機21によって駆動する油圧ポンプ22が1台ずつ設けられている。油圧ポンプ22は、手動でも切換可能な電磁式の方向切換弁23に接続され、作動油の供給が伸長側と収縮側とに切り換えられるようになっている。また、油圧ポンプ22は、タンク60への戻り流路側に安全弁24を介して接続され、設定圧力を超える場合には吹き出した作動油がタンク60へと戻されるようになっている。方向切換弁23から主駆動油圧シリンダ5,7に接続された伸長側流路26にはパイロットチェックバルブ28が接続されている。このパイロットチェックバルブ28は、収縮側流路27へ作動油が供給された場合、その油圧がパイロット圧としてバネの付勢力に抗して開弁するようになっている。
【0026】
伸長側流路26には、更にカウンタバランスバルブ29が接続されている。これは、主駆動油圧シリンダ5,7にかかる荷重によって生じる背圧を保持するようにした圧力制御弁である。このカウンタバランスバルブ29も、収縮側流路27へ作動油が供給された場合、その油圧がパイロット圧としてバネの付勢力に抗して開弁するようになっている。
そして、伸長側流路26と収縮側流路27は、それぞれ2つに分かれた流路が大径シリンダと小径シリンダとに接続され、各流路には手動でも切換可能な電磁式のオン・オフ切換弁31,32,33,34が接続されている。
【0027】
次に、ネジ機構付油圧シリンダ6,8には、それぞれに図7に示す油圧回路が構成され、そこには電動機41,43によって駆動する油圧ポンプ42,44が2台ずつ設けられている。ネジ機構付油圧シリンダ6,8は、伸長時に作動油による油圧が作用する単動シリンダであり、油圧ポンプ42がロッドに働く作動油を供給するものである。そして、油圧ポンプ44は、回転ナットを回転させるための油圧モータ45,46を駆動させるための作動油を供給するものである。
油圧ポンプ42は、手動でも切換可能な電磁式の方向切換弁47に接続され、作動油の供給が伸長側と収縮側とに切り換えられるようになっている。また、油圧ポンプ42は、タンク60への戻り流路側に安全弁48を介して接続され、設定圧力を超える場合には吹き出した作動油がタンク60へと戻されるようになっている。
【0028】
方向切換弁47からネジ機構付油圧シリンダ6,8に接続された流路にはパイロットチェックバルブ49が接続されている。このパイロットチェックバルブ49は、収縮時にパイロット流路50へ作動油が供給され、その油圧がパイロット圧としてバネの付勢力に抗して開弁するようになっている。そして、更に流量調節弁51を介して供給側と排出側との2つに分かれた流路に手動でも切換可能な電磁式のオン・オフ切換弁53,54が接続されている。
【0029】
一方、油圧ポンプ44は、下から1段目の回転ナットに対する油圧モータ45と、同じく2段目の回転ナットに対する油圧モータ46に作動油を供給するものであり、油圧モータ45には方向切換弁55を介して接続され、油圧モータ46には方向切換方向弁55,56を介して接続されている。そして、方向切換弁56がタンク60へ直接接続されている。方向切換弁55,56は、手動でも切換可能な電磁弁である。また、油圧ポンプ42は、タンク60への戻り流路側に安全弁57を介して接続され、設定圧力を超える場合には吹き出した作動油がタンク60へと戻されるようになっている。
【0030】
ここで、図8は、重量物昇降装置1を駆動させる重量物昇降システムを概念的に示した図である。図6や図7に示す油圧ポンプや電磁弁などを備えた油圧回路によって、重量物昇降装置1を駆動させる油圧ポンプユニット51が構成されている。図1に示した橋梁架設の送出し工法では、ベント104,105にそれぞれ2台ずつ合計4台の重量物昇降装置1が使用されるが、1台ずつ油圧ポンプユニット51が接続され、更に4台の油圧ポンプユニット51に対してこれらをコントロールする制御装置52が接続されている。従って、図1に示す施工現場では、こうした重量物昇降装置1、油圧ポンプユニット51及び制御装置52によって重量物昇降システムが構成されている。
【0031】
本実施形態の重量物昇降装置1及び油圧ポンプユニット51や制御装置52を含む重量物昇降システムは、前述したように重量物昇降装置1がベント104,105にそれぞれ2台ずつ設置され、図1(b)に示すように送出しされた架設桁120を水平になるようにジャッキアップし、その後、図1(c)に示すように、架設桁120の水平な姿勢を保ちながらジャッキダウンして橋脚102,103上に載せる据え付け作業が行われる。
【0032】
重量物昇降装置1のジャッキアップは、主駆動油圧シリンダ5,7が架設桁120の荷重を受けながら伸長作動する。一方、ネジ機構付油圧シリンダ6,8は、主駆動油圧シリンダ5,7のストロークに同調するように伸長作動を行い、中央の伸縮ガイドポスト4は、アッパーフレーム2の上昇に伴って引き上げられるようにして伸びる。なお、2段の主駆動油圧シリンダ5,7とネジ機構付油圧シリンダ6,8は、先ず大径ロッド側が伸び、続いて小径ロッド側が伸びるように制御が行われる。
【0033】
先ず、図6に示す主駆動油圧シリンダ5,7側では、油圧ポンプ22によって送り出された作動油が、Bポートブロックに切り換えられた方向切換弁23によって伸長側流路26へ送られ、パイロットチェックバルブ28及びカウンタバランスバルブ29を通って流れる。そして、オン・オフ切換弁31,32の切り換えによりシリンダ内に作動油が供給され、その油圧によって小径ロッドに続いて大径ロッドがの伸長作動が行われる。一方、シリンダ内から排出された作動油は、オン・オフ切換弁31,32の切り換えによって収縮側流路27から方向切換弁23を通ってタンク60へと戻される。
【0034】
また、このとき図7に示すネジ機構付油圧シリンダ6,8側では、油圧ポンプ44からも作動油が送り出され、方向切換方向弁55,56を介して油圧モータ45,46へ供給され、更にタンク60へと戻る。はじめは、方向切換方向弁56がAポートブロックに切り換えられ、作動油が供給された油圧モータ46に正回転が与えられる。その後、方向切換方向弁56が図示するノーマルポジションに戻り、代わって方向切換弁55がAポートブロックに切り換えられ、作動油が供給された油圧モータ45に正回転が与えられる。油圧モータ45,46の回転はギヤを介して回転ナットに伝達され、油圧力によってロッドが軸方向へ伸びる。
【0035】
更に、このとき油圧ポンプ42からも作動油が送り出され、それがAポートブロックに切り換えられた方向切換弁47から、パイロットチェックバルブ49や流量調節弁51を通って流れる。そして、オン・オフ切換弁53,54の切り換えによってシリンダ内に作動油が供給され、その油圧によって小径ロッドや大径ロッドに対し下方から加圧作動油が供給されてシリンダが伸びる。
【0036】
次に、重量物昇降装置1のジャッキダウンは、やはり主駆動油圧シリンダ5,7が架設桁120の荷重を受けながら収縮作動し、ネジ機構付油圧シリンダ6,8は、主駆動油圧シリンダ5,7のストロークに同調するように収縮する。そして、中央の伸縮ガイドポスト4は、アッパーフレーム2の下降に伴いガイド11,12,13が重ねられて収縮する。なお、2段の主駆動油圧シリンダ5,7とネジ機構付油圧シリンダ6,8は、収縮時は先ず小径ロッド側が収縮し、続いて大径ロッド側が収縮するように制御が行われる。
【0037】
図6に示す主駆動油圧シリンダ5,7側では、油圧ポンプ22によって送り出された作動油が、Bポートブロックに切り換えられた方向切換弁23によって収縮側流路27へ送られ、オン・オフ切換弁33,34の切り換えによりシリンダ内に作動油が供給される。収縮側流路27を流れる作動油は、その油圧がパイロット圧としてパイロットチェックバルブ28及びカウンタバランスバルブ29に作用する。従って、油圧がパイロット圧に達すると、パイロットチェックバルブ28は弁が開き、カウンタバランスバルブ29が伸長側流路26を連通させる。こうして、収縮側流路27内の油圧をパイロット圧と同等に維持した状態で主駆動油圧シリンダ5,7に作動油が供給され、収縮作動によって押し出された作動油は、カウンタバランスバルブ29、パイロットチェックバルブ28及び方向切換弁23を通ってタンク60へ戻される。
【0038】
また、このとき図7に示すネジ機構付油圧シリンダ6,8側では、はじめ方向切換方向弁56がBポートブロックに切り換えられ、作動油が供給された油圧モータ46に逆回転が与えられる。その後、方向切換方向弁56が図示するノーマルポジションに戻り、代わって方向切換弁55がBポートブロックに切り換えられ、作動油が供給された油圧モータ45に逆回転が与えられる。油圧モータ45,46の回転はギヤを介して回転ナットに伝達される。そして、重量物の自重によりロッドが軸方向に縮む。
更に、このとき油圧ポンプ42から送り出された作動油は、Bポートブロックに切り換えられた方向切換弁47を通ってパイロット流路50を流れ、パイロットチェックバルブ49を開弁させる。そして、オン・オフ切換弁53,54が切り換えられ、ネジ機構付油圧シリンダ6,8の収縮によって排出された作動油が流量調節弁51やパイロットチェックバルブ49を通り、方向切換弁47からタンク60へと戻される。
【0039】
本実施形態の重量物昇降システムでは、以上のようにして重量物昇降装置1を伸縮させるが、例えば、図1に示した橋梁架設の送出し工法のジャッキダウン時には、安全を考慮して次のような制御が行われる。ここで図9は、図1(c)の据え付け工程を実行する重量物昇降装置1の制御フローを示した図である。
【0040】
重量物昇降装置1は、2本の主駆動油圧シリンダ5,7がメインシリンダとなって荷重を支えながら収縮し、残る2本のネジ機構付油圧シリンダ6,8がバックアップ用として同時に収縮する。重量物昇降装置1は、その伸縮状態を計測するストロークセンサや、主駆動油圧シリンダ5,7及びネジ機構付油圧シリンダ6,8にかかる作動油の圧力を計測する圧力センサが設けられ、その計測値に基づき、制御装置52によって油圧ポンプユニット51が制御される。特に、架設桁120が傾かないように各々の重量物昇降装置1についてストローク調整が行われる。
【0041】
図1(c)の据え付け工程では、荷重を受ける主駆動油圧シリンダ5,7から作動油が徐々に排出され、ストロークを短くしたジャッキダウンが行われる。このとき補助のネジ機構付油圧シリンダ6,8は、回転ナットの逆回転により主駆動油圧シリンダ5,7に追従して収縮し、中央では伸縮ガイドポスト4も同じように収縮する。重量物昇降装置1が架設桁120を降下させる場合、荷重を受けているメインの主駆動油圧シリンダ5,7について油圧を計測し、油漏れの異常が発生していないかの確認が作業中常に行われている(S11)。
【0042】
そして、ジャッキダウンの過程で異常が発見されない場合には(S11:NO)、そのまま前述したように主駆動油圧シリンダ5,7の収縮によるジャッキダウンが継続される(S12)。このとき、重量物昇降装置1のストロークが検出され、ジャッキダウンが完了したか否かが確認される(S13)。そのため、降下作業中はS11〜S13が繰り返され、その後、重量物昇降装置1のストロークによってジャッキダウンの完了が確認され(S13:YES)、架設桁120が橋脚102,103上に設置される。
【0043】
一方、油漏れによって異常が発生したような場合には(S11:YES)、圧力が低下して圧力センサの値が低下して異常が発見される。そうした場合、重量物昇降装置1の収縮動作がメインの主駆動油圧シリンダ5,7から補助のネジ機構付油圧シリンダ6,8に切り替えられる(S14)。すなわち、主駆動油圧シリンダ5,7の作動油がタンクへと抜けるように油圧回路が切り換えられ、ネジ機構付油圧シリンダ6,8にアッパーフレーム2に載せられた重量物の荷重がかかるようになる。この時、ネジ機構付油圧シリンダ6,8の回転ナットに回転が与えられ、ネジロッドが徐々にシリンダ内へ入り込み、ストロークが短く収縮してジャッキダウンが継続される(S15)。そして、重量物昇降装置1のストロークが検出され、ジャッキダウンが完了したか否かが確認され(S16)、下降中はS15,S16が繰り返され、重量物昇降装置1が収縮して架設桁101が橋脚102,103に設置されてジャッキダウンが完了する(S16:YES)。
【0044】
よって、本実施形態の重量物昇降装置1によれば、昇降用シリンダ5,6,7,8によって装置全体を伸縮させ、中央に設けた伸縮ガイドポスト4によって水平力に対抗するように構成したので、鉛直性を保ってアッパーフレーム2上の重量物をスムーズに昇降させることができる。
また、本実施形態の重量物昇降装置1は、4本ある昇降用シリンダ5,6,7,8を2組に分け、そのうちの2本を補助用のネジ機構付油圧シリンダ6,8としたので、メインの主駆動油圧シリンダ5,7の油圧回路に破損などが生じた場合でも、ネジ機構によって機械的に荷重を受けて落下を防止し、ネジ機構付油圧シリンダ6,8を駆動させて安全・確実に昇降させることができる。
また、伸びた状態の主駆動油圧シリンダ5,7で重量物を長時間支えるような場合、大きな荷重によってシリンダや油圧回路上の弁などで作動油の漏れが生じてしまい、シリンダが収縮して下降してしまうことがある。しかし、本実施形態の重量物昇降装置1では、ネジ機構付油圧シリンダ6,8がネジによって機械的に支えるため、高さを変えることなく長時間同じ状態を維持することができる。
【0045】
以上、重量物昇降装置及び重量物昇降システムの一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、重量物昇降装置1の伸縮ガイドポスト4を円筒形のガイド11,12,13によって構成したが、これを角形の筒体としてもよい。角形の筒体とすることにより、実施形態と同様に水平方向の力を支持するとともに、捩れを防いで昇降における安全性を高めることができる。
また、前記実施形態では、橋梁架設に使用する場合を例に挙げて説明したが、重量物昇降装置1はその他の分野にも応用が可能であり、例えば大規模ステージの昇降機、鉄骨ビルディングのボトムアップ架設用ジャッキ、更に航空機の整備架台として使用することができる。
【0046】
また、補助昇降用シリンダには、メカニカルロック機構を設けた昇降用シリンダとして金属の弾性変形を利用したメカニカルロック機構のシリンダを用いるようにしてもよい。
また、前記実施形態では、ネジ機構付油圧シリンダ6,8の回転ナットを油圧モータ45,46で回転させるようにしたが、電動モータを使用して回転ナットを回転させるようにしてもよい。
更に、ネジ機構が2倍の荷重に対して十分な強度を有するならば、4本の昇降シリンダを同時に使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】橋梁架設の送出し工法を示した図である。
【図2】重量物昇降装置の実施形態を示した外観斜視図である。
【図3】重量物昇降装置の伸長状態の側面図である。
【図4】重量物昇降装置の収縮状態の側面図である。
【図5】重量物昇降装置を構成する伸縮ガイドポストの断面を示した図である。
【図6】主駆動油圧シリンダ側の油圧回路を示した図である。
【図7】ネジ機構付油圧シリンダ側の油圧回路を示した図である。
【図8】重量物昇降装置を駆動させる重量物昇降システムを概念的に示した図である。
【図9】図1(c)の据え付け工程を実行する重量物昇降装置の制御フローを示した図である。
【図10】従来の重量物昇降装置を示した側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 重量物昇降装置
2 アッパーフレーム
3 ロアフレーム
4 伸縮ガイドポスト
5,7 昇降用シリンダ(主駆動油圧シリンダ)
6,8 昇降用シリンダ(ネジ機構付油圧シリンダ)
11 アッパーガイド
12 ミドルガイド
13 ロアガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面をなすロアフレームと上方に重量物を載置可能なアッパーフレームが、その中央に設けられた中空の伸縮ガイドポストと、その周りに配置された複数の昇降用シリンダによって連結されたものであり、
前記伸縮ガイドポストは、複数の筒体が水平荷重を支持可能なように摺動可能に重ね合わされ、前記昇降用シリンダには、異常が発生した場合に重量物の荷重を受けて落下を防止するロック機構が設けられていることを特徴とする重量物昇降装置。
【請求項2】
設置面をなすロアフレームと上方に重量物を載置可能なアッパーフレームが、その中央に設けられた水平荷重を支持可能な中空の伸縮ガイドポストと、その周りに配置された複数の昇降用シリンダによって連結されたものであり、
前記伸縮ガイドポストは、複数の筒体が摺動可能に重ね合わされ、
前記複数の昇降用シリンダは、重量物の荷重を受けて常時駆動する二以上の主昇降用シリンダと、その主昇降用シリンダに異常が発生した場合に重量物の荷重を受けて駆動する二以上の補助昇降用シリンダとに区別され、その補助昇降用シリンダにロック機構が設けられたものであることを特徴とする重量物昇降装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する重量物昇降装置において、
前記伸縮ガイドポストと昇降用シリンダは2段以上の多段シリンダであることを特徴とする重量物昇降装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する重量物昇降装置において、
前記伸縮ガイドポストは、断面が円形又は矩形の筒体が重ね合わされたものであることを特徴とする重量物昇降装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれかに記載する重量物昇降装置において、
前記主昇降用シリンダは、油圧によって伸縮する多段のテレスコシリンダであり、前記補助昇降用シリンダは、油圧または電動モータによって回転ナットを回転させてネジロッドを伸縮させ、荷重が作用しても落ちないセルフロック式のネジ機構付油圧シリンダであることを特徴とする重量物昇降装置。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれかに記載する重量物昇降装置において、
前記昇降用シリンダは、前記伸縮ガイドポストの周りに4本設けられ、前記伸縮ガイドポストを中心に対角線上に位置するように、前記主昇降用シリンダと補助昇降用シリンダとがそれぞれ配置されたものであることを特徴とする重量物昇降装置。
【請求項7】
設置面をなすロアフレームと上方に重量物を載置可能なアッパーフレームが、その中央に設けられた水平荷重を支持可能な中空の伸縮ガイドポストと、その周りに配置された二以上の主昇降用シリンダ及びロック機構を備えた二以上の補助昇降用シリンダによって連結されてなる重量物昇降装置と、
前記主昇降用シリンダ及び補助昇降用シリンダに対する作動油の供給及び排出を行う油圧回路装置と、
その油圧回路装置を構成する油圧ポンプやバルブなどの流体機器の制御を行う制御装置とを備えたものであって、
前記制御装置は、前記主昇降用シリンダが重量物の荷重を受けて前記重量物昇降装置が伸縮作動し、前記主昇降用シリンダに異常が発生した場合には、補助昇降用シリンダが重量物の荷重を受けて伸縮作動するように、前記油圧回路装置を制御するようにしたものであることを特徴とする重量物昇降システム。
【請求項8】
請求項7に記載する重量物昇降システムにおいて、
前記主昇降用シリンダは、油圧によって伸縮する多段のテレスコシリンダであり、前記補助昇降用シリンダは、油圧または電動モータによって回転ナットを回転させてネジロッドを伸縮させるネジ機構付油圧シリンダであることを特徴とする重量物昇降システム。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載する重量物昇降システムにおいて、
前記油圧回路装置は、複数ある前記主昇降用シリンダ及び補助昇降用シリンダについて、各シリンダ毎に少なくとも1つの油圧ポンプを有し、前記制御装置が前記主昇降用シリンダ及び補助昇降用シリンダを同調制御するようにしたものであることを特徴とする重量物昇降システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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