説明

重量秤の故障検出システム

【課題】既存のチェックアウト装置に容易に取付け可能な重量秤の故障検知システムを提供する。
【解決手段】通常の清算処理時に重量秤で計量する複数の商品に関して重量データを取得し、前記清算処理時に前記複数の商品の重量を前記重量秤で個別に測定し、前記複数の商品の各重量値をその商品の前記重量データと比較して誤差を算出し、各重量値の誤差に応じて累積誤差を決定し、前記累積誤差が閾値を超えた場合に前記重量秤の故障を知らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に小売店のチェックアウト装置、とりわけセルフサービス式チェックアウト装置に関するものである。より詳しくは、本発明はセルフサービス式の清算方法のセキュリティを向上し、且つ顧客指標に基づいてセキュリティ機能を個別化するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小売の食料雑貨店やスーパーマーケット業界において、人件費削減の試みは専ら、客が購入した商品の取り扱いや処理に要する時間を削減、もしくは無くすことに向けられている。このため、レジ係を実質的に不要とするセルフサービス式チェックアウト装置が数多く開発されてきた。ここで、一般的なセルフサービス式清算機は、レジ係の補助無しに客自身によって操作される。このシステムでは、客が購入する個々の商品をスキャナでスキャンした後、スキャン済み商品を買い物袋に入れる。客はその後、セルフサービス式チェックアウト装置自体、もしくは店舗のレジ係が配置された支払いセンタで購入物に対して支払いを行う。
【0003】
初めてセルフサービス式チェックアウト装置を使おうとする客が清算機の操作訓練を受けていることはまず普通はあり得ない。セルフサービス式清算機の使用について客が不慣れであったり、また悪意を抱いている場合もあるため、清算機には何らかのセキュリティシステムを取付ける必要がある。こうしたセキュリティシステムは、不注意であれ故意であれ、客が商品をスキャンせず、値段が最終的な勘定に加わらないまま商品が買い物袋に入ってしまうことを防止するものである。
【0004】
このように一般的なセルフサービス式清算機は、チェックアウト装置の動作および客の動きをモニタするセキュリティシステムを有する。例えば、チェックアウト装置には重量秤が取付けられ、客がチェックアウト装置に持ち込んだ商品の総重量と買い物袋に入れられた商品の総重量をモニタする。このようなセキュリティシステムでは、チェックアウト装置と連動し重量秤ならびにチェックアウト装置の他のユーザーインターフェースからの出力信号を分析するコンピュータもしくはプロセッサがソフトウエアルーチンを実行する。一般的なソフトウエアルーチンは、スキャンされた各商品の重量を、予想重量値のデータベースと比較する。相違があればエラーメッセージが発せられ、客が商品の再スキャンなどの適切な修正動作をとるまで清算ルーチンは休止する。
【0005】
スーパーマーケットで使用されている公知のセルフ清算機10を図1に示す。清算機10は、量り売り用の商品重量秤12と、この秤に関連するスキャナ14を有する。スキャナの隣には袋詰め秤20が設けられており、客が新たにスキャンした各商品を投入する買い物袋40を支持している。清算機10は満載状態の買い物カート21を支持可能なカート秤18と、商品で一杯の買い物かご23を支持可能なかご秤19を有する。各秤12、18、19、20は、圧力センサやロードセルセンサなど、少なくとも1つの重量検出器を有し、これは秤に置かれた商品の重量に応じて信号を発生するものである。キオスク24は、表示部32、データ入力装置34、支払い装置30を有する。清算機内部にはコンピュータもしくはプロセッサ26が置かれ、セルフ清算処理に関連した様々なソフトウエアルーチンを実行する。
【0006】
こうしたルーチンの1つが、秤18、19、20から重量信号を受け取る。例えば重量確認ルーチンでは、スーパーマーケットで販売されている各商品1−nの平均重量Mが、各商品の重量標準偏差SDと共にデータベースに記憶されている。商品がスキャナ14でスキャンされ秤18、19、あるいは20に置かれると、秤18、19、あるいは20で計測された重量が、その商品に関しデータベースから引き出された平均重量および標準偏差データから算出された重量範囲と比較される。重量が算出範囲M±標準偏差SD(さらに要すれば任意定数Aを乗じる)に収まれば、入力は受け入れられる。重量がその範囲外であれば、入力は拒絶され、商品を再スキャンや再計量するよう客に指示する。さらにチェックアウト装置によっては、重量エラーが、チェックアウト装置のセキュリティ対策の一環として店の従業員に伝えられる。このルーチンは、各商品の測定重量が新たに受け入れられるたびに商品の平均重量および標準偏差値を継続的に更新する。
【0007】
セルフ清算処理においては秤が決定的な役割を果たすため、秤が厳密に作動することが絶対的に必要である。しかしながら、流出が起き易いため、あるいは秤の可動部品にくずが溜まりこれが最終的に秤の正常な動作を阻害するため、重量秤こそがチェックアウト装置にエラーや故障が発生する主要原因となっている。例えば、秤の上皿と隣接するキャビネタリの間に異物が挟まったときによく故障が起きる。異物が秤の動きを阻害する場合、故障は容易に見つかり、秤は使用不能となる。だが最悪のケースは、異物が単に秤の動きに対する抵抗を増すだけの場合で、これは通常、低重量誤差を生じる。この手の故障が起きると、購入商品の重量確認能力が落ち、客と店の従業員はセキュリティメッセージの頻出とその対応に悩まされることになる。こうした事態はとりわけ、セルフチェックアウト装置を使い慣れ、その適正使用を心がける正直な客にとって煩わしいものである。
【0008】
こうした故障モードは検知が困難であり、完全に故障するまでその弊害が見過ごされることもしばしばである。よくあるケースでは、重量秤の動作が時を経るにつれ悪化し、完全故障の閾値に達するまで徐々に、右肩上がりにシステムへと悪影響を及ぼす。秤の潜在的故障を見つけ出す方法の1つは、店舗の各セルフチェックアウト装置において商品重量秤の較正試験を行うというものである。だが当然ながらこのやり方は非常に面倒で、時間が掛かり、人手を要する。
【0009】
このように、チェックアウト装置を使用可能状態に留め、且つテストにおいて人手を要することなく、セルフサービス式清算機の商品重量秤を一日中連続的にそして自動的にテスト可能なシステムおよび方法が求められている。このシステムおよび方法は、客にはほぼトランスペアレントな状態で、すなわち客がチェックアウト装置で清算処理を済ますのに必要な時間にさほど影響を及ぼさぬよう機能できなくてはならない。
【発明の開示】
【0010】
この要望に応えるため、本発明は、既存のチェックアウト装置システムに容易に取付け可能な重量秤の故障検知システムおよび方法を目的とする。その方法は、通常の清算処理時に重量秤で計量する複数の商品に関して重量データを取得するステップを有する。これらの商品は重量秤で個別に計量され、各商品について重量値が得られる。この重量値はその商品に関して取得した重量データと比較され、それに応じて誤差が算出される。
【0011】
本発明の1つの特徴として、各商品についての各重量値の誤差に応じて累積誤差が算出される。ある実施の形態においては、累積誤差は個々の重量値誤差のすべてを合計したものである。累積誤差が閾値を超えた場合に重量秤の故障を知らせる。ある実施の形態においては、故障の危険を知らせるものとして第1の閾値が設けられる。そして第2の閾値は、重量秤が完全に故障したことを知らせるため設けられる。
【0012】
本発明の好適な実施の形態において、重量データは、複数の商品1−nのそれぞれについて平均重量Mと標準偏差SDを含む。この重量データは集中データベースに保持されており、システムの全チェックアウト装置から得られた商品重量の記録に基づく。本発明においては、エラー状態とならぬ限り、現在の清算処理で取り扱われた各商品の重量値は集中データベースに追加され、新たな平均重量と標準偏差を算出するのに用いられる。
【0013】
本発明の特徴の1つとして、各商品の誤差Eは、その商品の平均重量と標準偏差に依存する。よってその誤差を算出するのに以下の式
=(W−M)/SD
が適用され、ここでWは商品nの測定重量である。よって累積誤差は、通常のチェックアウト処理時に処理された商品に関する誤差Eのすべてを算術的に合計したものである。さらに、またあるいは、誤差Eそれぞれの絶対値あるいは大きさの平均を算出することもできる。そして累積誤差と平均誤差は対応する閾値と比較される。いずれかの誤差の計算値がその閾値を超えると、その重量秤は故障しているものされる。
【0014】
本発明の他の一面においては、故障を判定するステップが各チェックアウト装置のプロセッサに取付けられている。すなわち各チェックアウト装置のプロセッサは、清算処理時にチェックアウト装置でスキャンされた複数の商品のそれぞれについて重量データを得る第1のルーチンと、各商品の測定重量の誤差をその商品の重量データと比較し算出する第2のルーチンと、計量された商品それぞれの誤差に応じて累積誤差を決定する第3のルーチンを含む。プロセッサはさらに、累積誤差が閾値を超えた場合に重量秤の故障を知らせる故障表示器を含む。
【0015】
各チェックアウト装置は、集中重量データベースが保持される中央プロセッサと通信し、ネットワークの一部を形成することが好ましい。各チェックアウト装置は、各清算処理時に得られた重量データを中央プロセッサに伝え、重量データベースに取り込ませる。また各チェックアウト装置は重量秤の状態を、とりわけ故障が検知された場合に中央プロセッサに伝える。あるいは故障検出ルーチンが中央プロセッサにあってもよい。
【0016】
本発明の目的の1つは、チェックアウト装置の重量秤の状態を評価するためのシステムおよび方法を提供するものである。とりわけこの状態を、チェックアウト装置での各清算処理時にインタラクティブ且つトランスペアレントに評価することが目的の1つである。
【0017】
すなわち本発明の利点の1つは、重量秤の状態を客あるいは店舗従業員の介在なしに、チェックアウト装置作動中に連続的に評価するシステムを提供できるということである。他の利点は、本システムがソフトウエアベースなため、チェックアウト装置の通常動作の邪魔になることがなく、別個のテスト操作も必要ないということである。本発明の他の目的および利点は、以下の説明および添付図面を踏まえることで明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の原理を理解しやすいものとするため、この先、図面および以下の明細書に記載の実施例を参照することとする。これが本発明の範囲を限定する意図を持たぬことを理解されたし。また本発明は、本発明の属する技術分野の当業者が容易に想到し得る図示の実施例に対するあらゆる変更および改造、そして本発明の原理のさらなる利用を包含するものである。
【0019】
本発明は、小売店舗の設備におけるすべてのセルフサービス式チェックアウト装置をインタラクティブにテストするためのシステムおよび方法を提供するものである。一実施例において、この設備は、図2に示すようにチェックアウト装置10a〜10dを有し、そのすべてがデータ回線52を介して中央プロセッサもしくはコンピュータ50にリンクされている。中央コンピュータ50は集中重量データベースを保持し、これに各チェックアウト装置10a〜10dがアクセスする。このように、各チェックアウト装置のプロセッサ26に重量データベースを保持する代わりに、各チェックアウト装置は集中データベースにアクセスするが、重量確認ルーチンは各チェックアウト装置に常駐するものとできる。中央コンピュータ50は、各チェックアウト装置10a〜10dで測定された商品重量に基づき平均重量Mと標準偏差SDのデータを更新することが好ましい。
【0020】
本発明の一面においては、集中重量データおよび重量変動データが、任意のチェックアウト装置10a〜10dにおける測定バイアスの検出に用いられる。本発明は、システムの全チェックアウト装置における重量および偏差の記録に照らして1つのチェックアウト装置における異常動作を検出する手段を提供するものである。さらに、集中重量データベースが幾つもの重量秤から長期間にわたり蓄積されたデータポイントに基づくものであるため、重量および変動データはより正確であり、よって複数の商品重量秤における短期故障も容易に検出できる。
【0021】
本発明の原理を、図3(a)〜(d)および図4(a)〜(d)の重量分布図を参照して説明する。図3(a)〜(d)の図は4種類の商品の仮想重量分布を示すものであり、それぞれ平均重量値Mを中心とした典型的な釣鐘状分布曲線で示されている。言うまでもなく、標準偏差SDはこの平均値からの変動の指標であり、対象商品の許容重量範囲を定めるのに使用される。新たな重量サンプルWのおよそ3分の2は、平均値を中心とした偏差1σ内に収まることがわかっている。また、重量データベースに加えられるサンプル重量が増えるにつれ分布曲線が“整う”こともわかっている。
【0022】
これらの例では、秤で測定された各商品の重量値Wが、重量分布曲線の包絡線内に収まる。測定情報の幾つか、例えば図3(a)、図3(b)に示される重量W、Wは、平均重量Mの近傍に集まっており、一方、図3(c)、図3(d)に示される残り2つの情報W、Wはもっと大きく外れているが、それでもまだ分布曲線内に収まっている。
【0023】
だが、重量値が分布曲線内、あるいは平均値を中心とした許容標準偏差範囲内に収まるからといって、その重量秤に全く問題がないとは言えない。正常に動作する、すなわち正確な秤であれば、その秤で測定された商品の平均重量は平均重量Mに近づく。本発明の一実施例では、小売システムの各秤の動作、すなわち正確さを継続的に測定するように誤差関数が定められる。この実施例では誤差関数は
=(W−M)/SD
であり、ここで
は、各商品nを計量する秤の誤差、
は、商品nの平均重量、
は、その秤による商品nの新たな重量値、
SDは、商品nの重量値すべての標準偏差、である。
【0024】
秤は清算処理ごとに、その秤で計量した全商品の誤差値に応じた累積誤差ΣEを生成する。正常に機能する秤が様々な商品を多数計量した場合、各重量値は各商品nの総平均重量Wに徐々に接近するものであるため、この累積誤差ΣEは時を経るにつれゼロへと収束する。しかし秤が正しく機能しない場合、累積誤差ΣEは時を経るにつれ発散、すなわち増加する。
【0025】
例えば、図4(a)〜(d)の図は、図3(a)〜(d)の重量サンプルを得るのに用いたのと同じ秤によって得られた重量サンプルを示している。しかし図から明らかなように、今回の重量サンプルは重量分布曲線の低重量側に大きく偏っている。図4(a)〜(d)に示された清算処理での累積誤差ΣE′は、図3(a)〜(d)に示された清算処理での累積誤差よりも著しく大きい。しかも、累積誤差ΣE′がより大きいのが今回の清算処理の方であるだけでなく、サンプルとされたどの商品においても測定値のずれる方向が低重量側である。これに対して図3(a)〜(d)の清算処理での重量値は、平均重量Mの両側に散らばっており、重量値W、Wはそれぞれの平均値よりも小さく、重量W、Wは平均値よりも大きい。一方、重量値W′〜W′はすべて、分布曲線の低重量側へとずれている。
【0026】
図4(a)〜(d)に示された第2の清算処理の重量サンプルからは、2つの点で、重量秤に故障があることを導き出せる。まず、累積誤差は先の清算処理(図3(a)〜(d))より今回の清算処理(図4(a)〜(d))で大きくなっている。次に、今回の重量サンプルW′〜W′はすべて平均重量の一方の側に偏っており、計量中の商品の重さで重量秤が押し下げられるのを異物が邪魔していることを示している。
【0027】
図3(a)〜(d)および図4(a)〜(d)の例では、それぞれの商品に関して、重量サンプルはすべて重量分布曲線内に収まる。累積誤差ΣE′は先の累積誤差ΣEより大きいため、第2のサンプル(図4(a)〜(d))で発生した故障は容易に発見可能である。しかし図5(a)〜(d)に示される重量サンプルW″〜W″は、累積誤差のみを用いるだけでは簡単には発見できない故障を表している。図5(a)〜(d)の重量誤差は重量分布曲線、より詳しく言えば平均重量Mを中心とした3σ帯の外にあり、この重量秤には何か著しい問題があることがわかる。だが重量サンプルにおける大きなブレが平均値のいずれの側でも実質的に相殺されているため、この清算処理の累積誤差ΣE″は非常に小さい。すなわち、図5(a)の極度に小さな重量W″(大きな負の誤差値E″を生じる)は、図5(d)の極度に大きな重量W″(等しく大きな正の誤差値E″を生じる)によって実質的に相殺されている。同様の相殺は、図5(b)の正の誤差E″と図5(c)の同程度の負の誤差E″の間にも見られる。結果得られる累積誤差ΣE″は、図3(a)〜(d)の第1の清算処理における累積誤差の範囲内となる。
【0028】
このように、清算処理間で累積誤差の変化を単純に評価するだけでは重量秤の故障を見抜くには十分とはいえない。この場合、秤が深刻な状態にあることは重量値誤差の絶対値の平均から明白となる。図5(a)〜(d)の清算処理では、重量誤差E″〜E″は互いを相殺せず、代わりに一緒になって、極度に大きく非常に顕著な平均誤差E″aveを生じる。
【0029】
図6の表は、複数セルフチェックアウト装置システムで起こり得る様々な重量値状態を示すものである。表は、異なる5つの状態で測定を受ける同一の4種類の商品を示している。なお、本発明を一般に実施する場合、計量される商品の数は1つ〜数十と様々である。また、本発明の誤差検知機能は、同じ商品が連続する複数の清算処理にわたって決まったチェックアウト装置でスキャンを受けたり、システムの複数のチェックアウト装置10a〜10d(図2)でスキャンを受けたりしなくとも発揮できる。
【0030】
図6の例に戻ると、第1のデータ表は、各販売商品に対して行われる初期較正測定に相当する。各商品は任意の十分な数だけ計量し、統計的に有意な平均重量Mと標準偏差SDを得るものとする。標準偏差値は平均値を中心とした帯域を定めるのに用いられ、これはチェックアウト装置でスキャンが行われる際の許容商品重量に相当する。図示の実施例では3σ帯が適用され、重量分布曲線内の重量の97%を包含する。各商品の標準偏差値SDおよび3σ帯は、すべての商品の計量処理に適用される。
【0031】
第1の表に示されるように、標準偏差値は商品の実際の重量に左右されるものではない。すなわち、比較的軽い2つの商品1、4の3σ範囲は、平均重量の約60%に相当する。比較的重い商品2、3の3σ範囲は、それぞれ24%、8%である。重量分布曲線に関して言えば、比較的軽い商品1、4は平坦、すなわち幅広な分布曲線を有し、これは図3(a)、図3(d)の曲線に相当する。残りの2つの商品はもっと幅の狭い分布曲線を有し、これは図3(b)、図3(c)の曲線に似ている。これらの標準偏差および3σ値は、消費財を計量する際の現実を反映したものであり、例えば、ある商品は嵩ではなく重さで売られ、比較的安定した重量を持つ。一方、房売りのバナナなど、その許容重量の幅が一般にかなり大きい商品もある。後者の場合、3σ帯を比較的幅広とすることで、そうした商品を実際に秤を用いて測定する際の比較的大きな変動を許容する。
【0032】
図6の第2の表は、商品重量秤が正常に機能する場合の典型的データを示している。各誤差値Eは1.0より大きいが、誤差は各商品の平均重量Mの両側にあるため、累積誤差ΣEは1.0未満である。また平均誤差値Eaveは、各“重量超過”および“重量不足”誤差値が大きくないため、最小限である。
【0033】
第3、第4の表は、複数商品に対する比較的小さな測定値誤差の影響を示す。第3の表におけるずれは、ちょうど標準偏差分の誤差に相当し、他方の第4の表は、累積重量値における−0.1ポイント(例えば、単位はポンド)の誤差の影響を示す。第3の表の平均誤差は、第2の表の機能が正常な秤の平均誤差と同一であった。しかし累積誤差ΣE′は著しく大きい。同様に第4の表でも、累積重量誤差は−0.1ポイントと軽度であるが、さらに大きな累積誤差ΣE″を生じている。累積誤差のこうした増加から、秤のエラーや故障が読み取れる。
【0034】
図6の最後の表は、4つの商品の測定重量にランダムな誤差が生じた場合を示している。この場合の累積誤差ΣE′′′は先の2つのものより小さく、また機能が正常な秤の累積誤差よりさほど大きいわけでもない。だが、平均誤差Eave′′′は他のいずれの平均誤差よりも著しく大きい。この故障は、図5(a)〜(d)の重量値に見られる大きな正負のブレに相当するものである。
【0035】
本発明は、使用中の各秤を継続的にモニタすることを意図するものである。キオスク24のプロセッサ26(図1)内のソフトウエアルーチンは、図7のフローチャートに示すステップを実行可能である。客がスキャナ14に商品を通し、まず第1のステップ61としてその商品をスキャン・識別する。次にステップ63で、スキャン情報に基づき、その商品の平均重量Mと標準偏差SDを含む重量データを集中データベース50(図2)から引き出す。次にステップ65で秤18、19、あるいは20が重さを計り、その商品の重量値Wを得る。この測定重量値は秤の状態が確認されるまで一時記憶装置に保持される。既に述べたように、セルフサービス式清算設備では、チェックアウト装置を使用し実際に購入した商品の測定重量によって集中重量データベースが常に更新される。ただし、現在の商品の重量値Wは正しいと確認されるまで、その値はデータベースに加えられない。
【0036】
キオスク24のプロセッサ26は、ステップ67でスキャンされた商品nの誤差Eを算出し、その後ステップ69で客が商品をスキャンし終えたかどうか判断する。一般的なセルフサービス式チェックアウト装置では、プロンプトが表示部32に現れ、清算処理を終了する場合、客は装置34にその旨を入力する。そうした指示がなければ、プロセッサ26はステップ61に戻り、新たにスキャンされた商品1−nのそれぞれについてステップ61〜67を繰り返す。
【0037】
商品をスキャンし終わると、プロセッサはステップ71において、チェックアウト装置10でスキャンされ計量されたすべての商品1−nに関して累積誤差ΣEと平均誤差Eaveを算出する。次のステップ73では、算出値ΣE、Eaveのいずれかが所定の閾値を超えていないか判断が行われる。好ましくは、中央プロセッサ50に適当な閾値が保持され、すべてのチェックアウト装置10a〜10dおよびそれと関連する重量秤18、19、20に一定の性能を保証する。閾値は、設備要求に応えたり、各商品の標準偏差データに応じるなどして定めることができる。図6の表に示す例では、累積誤差ΣEの閾値は±2.0、平均誤差Eaveの閾値は3.0とすることができる。閾値をこのように定めることで、図6の最後の3つのサンプルは、それぞれエラーを生じる。閾値が高いと、重量秤の著しい故障のみがエラーとなる。反対に閾値が低い場合は、少しでも故障の気配があるとエラーになる。
【0038】
あるいは、各エラーパラメータΣE、Eaveに複数の閾値を与えてもよい。第1の閾値は、早い機会に秤を検査すべきであると警告を発するものとできる。第2の閾値は、直ちにエラーを発生させ、現在の清算処理を無効化するものとできる。いずれの場合も、エラーパラメータΣE、Eaveいずれかの閾値を超えると、プロセッサ26や中央プロセッサ50がステップ77でエラーメッセージを出す。このエラーメッセージはそのまま中央プロセッサ50に記録されたり、現場の係員に通知される。エラー閾値を超えることがなかった場合には、プロセッサは一時的に保存されていた重量値Wをステップ75で集中データベースに送信し、チェックアウト処理を継続させる。
【0039】
上述のように、閾値は商品ごとに定められ、集中データベースに保持されていることが好ましい。閾値は各商品の標準偏差SDに依存するものであり、偏差の小さい商品(よって3σ重量範囲が狭いもの)は理論上、閾値も低い。重量標準偏差値は商品重量の変動を考慮に入れるが、閾値は重量秤の能力の変動を考慮に入れる。当たり前のことだが、いかなる重量秤も商品重量を常に正しく計れるわけではない。よって閾値にはある程度の許容誤差係数が取り込まれており、これは各商品の標準偏差値とされる商品の許容重量範囲に上積みされる。標準偏差と無関係に単純に重量誤差値をあてがっても、商品の予想通常重量範囲に向上や変化は見られない。本発明においては、誤差値Eを計算する際に、重量標準偏差のいかなる変化もオペレータの介在なしに自動的に考慮されるものである。
【0040】
なお、これらのステップは各チェックアウト装置とそれに関連した重量秤を使用するごとに実行される。本方法のステップはキオスク24のプロセッサ26内でソフトウエア処理されるため、重量秤の動作に大した遅れが生じることはない。各チェックアウト装置10a〜10dと中央プロセッサ50の間のデータ通信は、例えばローカルネットワークを介するなど、どのように行われるものであってもよい。もし要すれば、中央プロセッサをオフサイトとし、データ回線55を無線通信としてもよい。すなわち集中データベースは、ある一店舗のチェックアウト装置10a〜10dから入力される重量データのためだけに維持されるのではなく、数店舗から重量データを受け取るものであってもよい。このようにすればより多くのデータサンプルが得られるため、時が経るにつれ各商品nの標準偏差SDは減少する。また、関連商品の製造者から得た平均重量および標準偏差のデータを集中データベースに入れることも考えられる。
【0041】
以上、本発明を図面および上記記載に基づいて詳述したが、これはあくまで説明のためであって、本発明の範囲を限定するものではない。ここに示されたものはただ好適な実施例に過ぎず、本発明の精神に基づくあらゆる変更、改造、そして更なる用途が保護範囲に含まれる。
【0042】
例えば、図示の実施例においては、累積誤差は各商品の各重量誤差を数学的に合計したものである。だが代わりに、累積誤差を得るにあたって特定の重量誤差に重みを加えたり、無視したりしてもよい。例えば、商品の中には非常に軽いものもあり、そのような軽さにチェックアウト装置用の重量秤が正確に反応できず、大きな重量誤差値を生じることがある。こうした特殊な重量誤差は、累積誤差を得るにあたって無視してもよい。さらに、ある商品の重量誤差が、清算処理時にそれ以外の商品を計量して得られた誤差範囲から大きく外れる場合がある。この誤差は、例えば客のミスに起因する異常として無視してよい。このように図7のステップ71を変更し、先とは異なる累積誤差ΣEと平均誤差Eaveを算出することもできる。
【0043】
さらなる代替案としては、閾値自体を各清算処理ごとに求めてもよい。説明した実施例では、故障の発生を検知するためのエラー閾値は集中データベースに保持され、各チェックアウト装置によってアクセスを受ける。この代替案での閾値は、チェックアウト処理で計量された商品すべて、あるいはさらに集中データベースに保持された全商品の標準偏差や平均重量に応じて算出するものとできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のシステムおよび方法を導入するよう改変可能な種類のセルフサービス式チェックアウト装置の斜視図である。
【図2】中央プロセッサおよび集中データベースと通信する複数のチェックアウト装置からなるシステムのブロック図である。
【図3】(a)〜(d)は正常に機能している重量秤の重量分布曲線である。
【図4】(a)〜(d)はスキャンした商品に対して常に小さい重量をはじき出す重量秤の重量分布曲線である。
【図5】(a)〜(d)はランダムな重量誤差を生じる重量秤の重量分布曲線である。
【図6】正常な秤の動作および秤の計量誤差の種々の状況に関する重量および誤差データを示す一連の表である。
【図7】本発明の1つの方法における、重量データを評価して秤のエラーあるいは故障を判定するためのステップを示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常の清算処理時に重量秤で計量する複数の商品に関して重量データを取得し、
前記清算処理時に前記複数の商品の重量を前記重量秤で個別に測定し、
前記複数の商品の各重量値をその商品の前記重量データと比較して誤差を算出し、
各重量値の誤差に応じて累積誤差を決定し、
前記累積誤差が閾値を超えた場合に前記重量秤の故障を知らせることを特徴とする重量秤の故障検出方法。
【請求項2】
前記重量データは、複数の商品1−nについて平均重量Mと標準偏差SDを含み、各商品の誤差Eを算出するステップが、その商品の前記平均重量と前記標準偏差に依存する請求項1に記載の重量秤の故障検出方法。
【請求項3】
誤差を算出するステップが以下の式
=(W−M)/SD
に従うものであり、ここでWは商品nの測定重量である請求項2に記載の重量秤の故障検出方法。
【請求項4】
累積誤差を決定するステップが、前記通常の清算処理時のすべての商品に関する前記誤差Eすべてを合計することを含む請求項3に記載の重量秤の故障検出方法。
【請求項5】
累積誤差を決定するステップが、前記通常の清算処理時のすべての商品に関する前記誤差Eそれぞれの絶対値あるいは大きさについて平均値Eaveを算出することをさらに含み、故障を知らせるステップが、前記累積誤差を第1の閾値と比較し、前記平均値Eaveを第2の閾値と比較することを含む請求項4に記載の重量秤の故障検出方法。
【請求項6】
前記累積誤差および平均値Eaveの一方または両方がそれぞれの閾値を超えた場合に故障を知らせるステップが発生する請求項5に記載の重量秤の故障検出方法。
【請求項7】
累積誤差を決定するステップが、前記通常の清算処理時のすべての商品に関する前記誤差Eそれぞれの絶対値あるいは大きさについて平均値Eaveを算出することを含む請求項3に記載の重量秤の故障検出方法。
【請求項8】
累積誤差を決定するステップが、各重量値の前記誤差を合計することを含む請求項1に記載の重量秤の故障検出方法。
【請求項9】
故障を知らせるステップが、前記累積誤差が第1の閾値を超えた場合に故障の危険を知らせ、前記累積誤差が第2の閾値を超えた場合に重量秤の故障を知らせることを含む請求項1に記載の重量秤の故障検出方法。
【請求項10】
重量データを取得するステップが、重量データの集中データベースから各商品に関する前記重量データを引き出すことを含む請求項1に記載の重量秤の故障検出方法。
【請求項11】
重量データを取得するステップが、前記商品を識別するためにまず前記商品をスキャンし、その後前記識別に基づいて前記重量データを引き出すことを含む請求項10に記載の重量秤の故障検出方法。
【請求項12】
通常の清算処理時にチェックアウト装置でスキャンされた複数の商品1−nのそれぞれについて重量値Wを得る前記チェックアウト装置のプロセッサと、
前記清算処理時に前記チェックアウト装置でスキャンされた前記複数の商品のそれぞれについて重量データを得る前記プロセッサ内の第1のルーチンと、
各商品の測定重量の誤差をその商品の前記重量データと比較し算出する前記プロセッサ内の第2のルーチンと、
計量された前記商品それぞれの前記誤差に応じて累積誤差を決定する前記プロセッサ内の第3のルーチンと、
前記累積誤差が閾値を超えた場合に前記重量秤の故障を知らせる故障表示器とからなることを特徴とする処理を受ける商品を識別するためのスキャナと前記商品の重量を測定するための重量秤を有するチェックアウト装置に設けられる重量秤の故障検出システム。
【請求項13】
前記第1のルーチンは、商品重量の集中データベースと通信し前記重量データを得る請求項12に記載の重量秤の故障検出システム。
【請求項14】
前記重量データは、前記清算処理時に前記チェックアウト装置でスキャンされた前記複数の商品1−nそれぞれについて平均重量Mと標準偏差SDを含み、前記第2のルーチンは、前記平均重量と標準偏差に応じて誤差Eを算出するものである請求項12に記載の重量秤の故障検出システム。
【請求項15】
前記第2のルーチンは、E=(W−M)/SDの式を適用するものであり、ここでWは各商品1−nの前記測定重量である請求項14に記載の重量秤の故障検出システム。
【請求項16】
前記第3のルーチンは、計量された前記商品すべてについて前記誤差Eのすべてを合計し前記累積誤差を決定する請求項15に記載の重量秤の故障検出システム。
【請求項17】
前記第3のルーチンがさらに、前記清算処理時に前記チェックアウト装置でスキャンされた全商品nに関し、前記誤差Eの絶対値あるいは大きさについて平均値Eaveを算出し、第4のルーチンが、前記累積誤差を第1の閾値と比較し、前記平均値Eaveを第2の閾値と比較する請求項16に記載の重量秤の故障検出システム。
【請求項18】
前記累積誤差および平均値Eaveの一方または両方がそれぞれの閾値を超えた場合に前記第4のルーチンが故障を知らせる請求項17に記載の重量秤の故障検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−151783(P2008−151783A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319405(P2007−319405)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(391007161)エヌ・シー・アール・コーポレイション (85)
【氏名又は名称原語表記】NCR CORPORATION