説明

重量計測素子及び重量計

【課題】安価で高精度な重量計を実現できる重量計測素子及び重量計を提供する。
【解決手段】コアおよびコアの外周に設けられたクラッドを備え、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にする光透過部材を有する光ファイバ(20a,20b)の入射端に光が入射されて出射端から光透過部材(SP)を通過した光が出射され、少なくとも光透過部材の部分及びその近傍部分を載せるように光ファイバの下方に第1基板が1配置され、開口部3aが設けられた第2基板3が、光透過部材の部分が開口部の領域内に位置するように光ファイバの上方に配置され、開口部に第1基板及び第2基板より高硬度の材料からなる押圧部材4が嵌入され、第2基板及び押圧部材上に荷重均一化基板5が設けられた構成とし、押圧部材の光ファイバの光透過部材の部分を押圧する部分が、押圧部材に荷重が印加されたときに光ファイバの光透過部材の近傍部分に曲げを発生させる形状とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量を計測するための重量計測素子及びそれを用いた重量計に関し、特に光ファイバセンサを用いた重量計測素子及びそれを用いた重量計に関する。
【背景技術】
【0002】
被計量物の重量を計測する重量計は、例えば、台座などに重量が作用したときに圧縮バネが変形するようにして計測する方法が広く用いられている。
通常は、圧縮バネの変形の大きさに応じて指示針を回動あるいは移動させ、指示針が被計量物の重量に対応する重量数値を指し示すように構成されている。
【0003】
また、圧縮バネの変形量を電気的な信号に変換し、重量を電気的に計測する重量素子が広く一般的に用いられている。
この場合、例えば、被計量物の重さを電気信号に変換し、電気信号の変化量などから重量を計測する重量計なども知られている。
【0004】
一方で、特許文献1及び2に開示されているように、ヘテロコア型の光ファイバセンサが開発されている。
また、特許文献3及び4には、光ファイバを用いた重量計が開示されている。
【特許文献1】国際公開97/48994号パンフレット
【特許文献2】特開2003−214906号公報
【特許文献3】特開2002−188952号公報
【特許文献4】特開2002−168677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の重量計では重量計測の精度を高めることが難しく、高精度を実現しようとすると構造が複雑となり、製造コストが高価となっていた。
さらに、従来の電気信号を用いた重量計などにおいては、電気的センサを用いているので、少量の水がかかっただけで容易に漏電するおそれがあり、防水対策を万全に講じる必要があった。さらに、電気的に感知して電気信号を授受することから、防爆施設などにおいては使用することができなかった。
【0006】
解決しようとする問題点は、安価で高精度な重量計を実現することが困難であるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の重量計測素子は、コアおよびコアの外周に設けられたクラッドを備え、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にする光透過部材を有し、入射端に光が入射されて出射端から前記光透過部材を通過した光を出射する光ファイバと、少なくとも前記光透過部材の部分及びその近傍部分を載せるように前記光ファイバの下方に配置される第1基板と、開口部が設けられ、少なくとも前記光透過部材の部分が前記開口部の領域内に位置するように前記光ファイバの上方に配置された第2基板と、前記開口部に嵌入され、前記第1基板及び前記第2基板より高硬度の材料からなる押圧部材と、前記第2基板及び前記押圧部材上に設けられた荷重均一化基板とを有し、前記押圧部材の前記光ファイバの前記光透過部材の部分を押圧する部分が、前記押圧部材に荷重が印加されたときに前記光ファイバの前記光透過部材の近傍部分に曲げを発生させる形状であり、前記荷重均一化基板に荷重が印加されたときに前記光ファイバを伝送する光に対して前記荷重に応じた損失を発生させる構成である。
【0008】
上記の本発明の重量計測素子は、コアおよびコアの外周に設けられたクラッドを備え、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にする光透過部材を有する光ファイバの入射端に光が入射されて出射端から光透過部材を通過した光が出射され、少なくとも光透過部材の部分及びその近傍部分を載せるように光ファイバの下方に第1基板が配置され、開口部が設けられた第2基板が、少なくとも光透過部材の部分が開口部の領域内に位置するように光ファイバの上方に配置され、開口部に第1基板及び第2基板より高硬度の材料からなる押圧部材が嵌入され、第2基板及び押圧部材上に荷重均一化基板が設けられている。
ここで、押圧部材の光ファイバの光透過部材の部分を押圧する部分が、押圧部材に荷重が印加されたときに光ファイバの光透過部材の近傍部分に曲げを発生させる形状であり、荷重均一化基板に荷重が印加されたときに光ファイバを伝送する光に対して荷重に応じた損失を発生させる構成である。
【0009】
上記の本発明の重量計測素子は、好適には、前記第2基板及び前記押圧部材と前記光ファイバの間に前記光ファイバを保護する保護シートが設けられている
【0010】
上記の本発明の重量計測素子は、好適には、前記開口部の前記光透過部材の部分の近傍において、前記光ファイバが配置されている方向と直交する方向の側壁部分に前記開口部に連通する切り込み部が形成されている。
【0011】
上記の本発明の重量計測素子は、好適には、前記押圧部材の高さが前記第2基板の厚さと実質的に同等である。
【0012】
上記の本発明の重量計測素子は、好適には、前記押圧部材の前記光ファイバの前記光透過部材の部分を押圧する部分が丸められたあるいは尖った形状となっている。
【0013】
上記の本発明の重量計測素子は、好適には、前記押圧部材が金属あるいはシリコーンゴムからなり、前記第1基板及び前記第2基板がシリコーンゴムからなる。
【0014】
上記の本発明の重量計測素子は、好適には、前記光透過部材は、前記光ファイバのコア径と異なるコア径を有するヘテロコア部である。あるいは、好適には、前記光透過部材は、前記光ファイバのコアの屈折率あるいはクラッドの屈折率と同等の屈折率を持つ光透過部材である。
【0015】
また、本発明の重量計は、光ファイバを含んで構成された重力計測素子と、前記光ファイバの入射端に設けられた光源と、前記光ファイバの出射端に設けられた受光部とを有し、前記重量計測素子は、コアおよびコアの外周に設けられたクラッドを備え、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にする光透過部材を有し、入射端に光が入射されて出射端から前記光透過部材を通過した光を出射する光ファイバと、少なくとも前記光透過部材の部分及びその近傍部分を載せるように前記光ファイバの下方に配置される第1基板と、開口部が設けられ、少なくとも前記光透過部材の部分が前記開口部の領域内に位置するように前記光ファイバの上方に配置された第2基板と、前記開口部に嵌入され、前記第1基板及び前記第2基板より高硬度の材料からなる押圧部材と、前記第2基板及び前記押圧部材上に設けられた荷重均一化基板とを有し、前記押圧部材の前記光ファイバの前記光透過部材の部分を押圧する部分が、前記押圧部材に荷重が印加されたときに前記光ファイバの前記光透過部材の近傍部分に曲げを発生させる形状であり、前記荷重均一化基板に荷重が印加されたときに前記光ファイバを伝送する光に対して前記荷重に応じた損失を発生させる構成である。
【0016】
上記の本発明の重量計は、光ファイバを含んで構成された重力計測素子に対して光ファイバの入射端に光源が設けられ、出射端に受光部が設けられており、上記の重量計測素子は、コアおよびコアの外周に設けられたクラッドを備えた光ファイバの中途部に、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にする光透過部材が設けられており、少なくとも光透過部材の部分及びその近傍部分を載せるように光ファイバの下方に第1基板が配置され、開口部が設けられた第2基板が、少なくとも光透過部材の部分が開口部の領域内に位置するように光ファイバの上方に配置され、開口部に第1基板及び第2基板より高硬度の材料からなる押圧部材が嵌入され、第2基板及び押圧部材上に荷重均一化基板が設けられている。
ここで、重量計測素子において、押圧部材の光ファイバの光透過部材の部分を押圧する部分が、押圧部材に荷重が印加されたときに光ファイバの光透過部材の部分に曲げを発生させる形状であり、荷重均一化基板に荷重が印加されたときに光ファイバを伝送する光に対して荷重に応じた損失を発生させる構成である。
【0017】
上記の本発明の重量計は、好適には、前記光源が半導体発光ダイオード、半導体レーザあるいは白色光である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の重量計測素子は、荷重均一化基板に印加される荷重に応じて光ファイバを伝送する光に対して損失を発生させる構成となっており、安価で高精度な重量計を実現することができる。
【0019】
また、本発明の重量計は、荷重均一化基板に印加される荷重に応じて光ファイバを伝送する光に対して損失を発生させる構成となっており、安価で高精度な重量計である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の重量計測素子及びそれを用いた重量計の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
第1実施形態
図1は本実施形態に係る重量計の模式構成図である。
例えば、光ファイバ(20a,20b)の中途部に重量計測素子WMが設けられている。
また、例えば、光ファイバ20aの光入射端に、センサ光を出射する半導体発光ダイオードまたは半導体レーザなどの光源11が設けられ、光ファイバ20bの光出射端に光出射端から出射されるセンサ光を検出する光マルチメータなどの受光部12が設けられている。
本実施形態に係る重量計は、上記のように構成されている。
【0022】
図2は、本実施形態に係る重量計を構成する本実施形態の重量計測素子の斜視図であり、図3は図2に示す重量計測素子の構成を説明する構成説明図である。
また、図4(a)は重量計測素子の平面図であり、図4(b)は図4(a)中のX−X’における断面図であり、図4(c)は図4(a)中のY−Y’における断面図である。
【0023】
例えば、厚みが2〜4mm程度のシリコーンゴムなどからなる第1基板1上にセンサファイバが戴置されている。
センサファイバは、例えば、コアおよびコアの外周に設けられたクラッドを備えた光ファイバ(20a,20b)の中途部に、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にする光透過部材からなるセンサ部SPを有する構成であり、上記の少なくともセンサ部SP(光透過部材の部分)及びその近傍部分が第1基板1上に載るように配置されている。
センサファイバを構成する光ファイバ(20a,20b)において、上記のように光ファイバ20aの光入射端に光源11が設けられ、光ファイバ20bの光出射端に受光部12が設けられている。
【0024】
また、例えば、上記のセンサファイバ上に、0.5mmの厚みのウレタンシートなどからなるセンサファイバを保護するための保護シート2が配置されており、その上層に、2〜4mm程度のシリコーンゴムなどからなる第2基板3が配置されている。
上記の第2基板3には、例えば、一辺(a)が2〜4mm程度、他辺(b)が10mm程度(図4(a)参照)の長方形の開口部3aが設けられている。
上記の開口部3aの領域内にセンサファイバのセンサ部SPが位置するように、センサファイバ及び第2基板3が配置される。
【0025】
さらに、例えば、底面が直径2〜4mm程度の円であり、高さが10mm程度である円柱形状であり、第1基板1及び第2基板3より高硬度の材料である金属あるいはシリコーンゴムなどからなる押圧部材4が、円柱形状の曲面である側面が保護シート2に接するように、開口部3aに嵌入されている。即ち、開口部3aは円柱形上の押圧部材4が丁度嵌入するような形状となっている。また、後述のように、押圧部材4は、押圧部材4に荷重が与えられたときにセンサファイバのセンサ部SP近傍に曲げを発生させる形状となっている。
【0026】
また、例えば、ファイバセンサのセンサ部SPの近傍において、第2基板3の開口部3aのファイバセンサが配置されている方向と直交する方向の側壁部分に、開口部3aに連通する切り込み部3bが形成されている。例えば、切り込み部3bは、長さs=2〜4mm程度、幅t=2〜4mm程度(図4(a)参照)の大きさで形成されている。
【0027】
また、例えば、第2基板3及び押圧部材4上に、厚みが2〜4mm程度のアクリル板などからなる荷重均一化基板5が設けられている。
【0028】
例えば、押圧部材4のファイバセンサのセンサ部SPの部分を押圧する部分が、押圧部材4に荷重が印加されたときにファイバセンサのセンサ部SPの近傍部分に曲げを発生させる形状となっている。本実施形態においては、円柱形状の押圧部材4の曲面である側面が保護シート2を介してファイバセンサのセンサ部SPの部分にあたるように配置されている。
上記のようにして、重量計測素子WMが構成されている。
【0029】
図5(a)は、本実施形態に係る重量計測素子を構成するファイバセンサのセンサ部SP近傍の斜視図であり、図5(b)はセンサ部SP近傍の長手方向の断面図である。
例えば、本実施形態の測定装置に用いられる光ファイバセンサは、コア径50μmのマルチモードファイバである一方の光ファイバ20aと他方の光ファイバ20bの間に、センサ部SPが設けられた構成である。
センサ部SPは、例えば、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にする光透過部材であるヘテロコア部30からなる。
【0030】
例えば、光ファイバ(20a,20b)は、コア21と、その外周部に設けられたクラッド22とを有し、ヘテロコア部30は、光ファイバ(20a,20b)のコア径と異なるコア径を有するコア31と、その外周部に設けられたクラッド32とを有する。
また、例えば、ヘテロコア部30におけるコア31の径blは、光ファイバ(20a,20b)のコア21の径alより小さく、例えばal=9μm、bl=5μmである。また、ヘテロコア部30の長さclは、例えば1〜2mm程度である。
センサ部SPを構成するヘテロコア部30と光ファイバ(20a,20b)は、例えば、長手方向に直交する界面40でコア同士が接合するようにほぼ同軸に、例えば汎用化されている放電による融着などにより、接合されている。
【0031】
光ファイバ(20a,20b)およびヘテロコア部30としては、例えば、シングルモード光ファイバおよびマルチモード光ファイバのいずれをも使用可能であり、これらを組み合わせて使用してもよい。
【0032】
上記の光ファイバ(20a,20b)の中途部にヘテロコア型のセンサ部SPが接合されてなる構成において、ヘテロコア部30におけるコア31の径blと光ファイバ(20a,20b)のコア21の径alとが界面40で異なっており、このコア径の差に起因して、図5(a)に示すように、光の一部のヘテロコア部30のクラッド32へのリークWが発生する。
【0033】
リークWが小さくなるようにコア21とコア31の径の組み合わせを設定すると、大部分の光は再びコア21に入射し、伝送される。コア21とコア31の径の組み合わせによっては、リークWが大きくなり、伝送するセンサ光のロスも大きくなる。リークWが小さくなれば、ロスも小さくなる。
ヘテロコア型のセンサ部において、リークWの大きさ、即ちセンサ光のロス量は、センサ部近傍の光ファイバの屈曲の変化により鋭敏に変化する。
【0034】
次に、重量計測素子WMの動作について説明する。
例えば、上記の重量計測素子WMにおいて、荷重均一化基板5に計測対象物が載せられると、計測対象物の重量に応じた荷重が荷重均一化基板5に印加される。これにより、荷重が荷重均一化基板5に配置された押圧部材4と第2基板3へと伝達される。このとき、荷重均一化基板5の上面に印加される荷重が不均一であったとしても、下部へ伝達される荷重はより均一化されて、押圧部材4と第2基板3へ均等に伝達される。
【0035】
押圧部材4は、第2基板3より高硬度な材料から構成されており、第2基板3は荷重を受けると押圧部材4より押しつぶされる程度が大きく、押圧部材4はより押しつぶされないことになる。また、第2基板3の下層には保護シート2を介して第2基板3と同様に押圧部材4より低硬度な材料から構成された第1基板1が配置されている。従って、荷重均一化基板5の上面に荷重が印加されると、押圧部材4が第2基板3より深く沈み込んでファイバセンサのセンサ部SPの部分を押圧し、センサ部SP近傍に曲げを発生させる。
上記のファイバセンサのセンサ部SP近傍に発生する曲げに起因して、ファイバセンサに伝送されるセンサ光に損失が発生する。即ち、荷重均一化基板5に荷重が印加されたときに、ファイバセンサを伝送する光に対して損失を発生させる構成となっている。
【0036】
上記において、ある重量範囲において、荷重の大きさに応じて、ファイバセンサのセンサ部SP部分の曲げの大きさが変化するように設定することで、荷重の大きさに応じてセンサ光の損失が変化するように構成することができる。
従って、上記のようにして重量計測素子を構成し、荷重の大きさとセンサ光の損失の大きさの関係を予め調べておくことで、重量計測対象物を戴置したときに発生するセンサ光の損失の大きさから、重量計測対象物の重量を算出することができる。
荷重の大きさとセンサ光の損失の大きさの関係を示すデータと測定時のセンサ光の損失データからの重量計測対象物の重量の算出は、例えば、損失データを重量値に換算する所定のプログラムを組み込んだコンピュータなどにより実現できる。
【0037】
上記の本実施形態の重量計測素子と、それを用いて構成された重量計は、荷重均一化基板5に印加される荷重に応じてファイバセンサを伝送する光に対して損失を発生させる構成となっており、安価で高精度な重量計を実現することができる。
上記の重量計は、電気的に測定しているものではないので、例えば防爆施設などにおいて用いられる重量計に適用可能である。
【0038】
上記の本実施形態の重量計測素子は、上記のように、第2基板3及び押圧部材4とファイバセンサの間にファイバセンサを保護する保護シート2が設けられていることが好ましく、これによりファイバセンサが押圧部材4に押圧されたときに破損あるいは破壊されるのを防止することができる。
【0039】
また、上記の本実施形態の重量計測素子は、第2基板3の開口部3aのセンサ部SPの近傍において、ファイバセンサが配置されている方向と直交する方向の側壁部分に、開口部3aに連通する切り込み部3bが形成されていることが好ましい。これにより、重量が軽いときに得られる損失の値のバラツキを抑制することができる。
図4における切り込み部3bの端部から端部までの距離であるa+2sは、例えばa=2〜4mm程度のときに10mm程度としており、この大きさを小さくする、即ち、長さsを短くすると、切り込み部を設けた効果が薄れ、例えばa+2sを6mm以上にすることで重量が軽いときに得られる損失の値のバラツキの抑制効果を十分に得ることができる。
【0040】
また、上記の本実施形態の重量計測素子は、押圧部材4の高さが第2基板3の厚さと実質的に同等であることが好ましい。同等であると重量が軽いときからセンサ光の損失を感知することができる。
押圧部材4の高さが第2基板3の厚さより低いと、押圧部材4が実際にファイバセンサのセンサ部SP近傍を押圧するまで沈み込むまでの間の重量では、センサ光の損失が感知されない。
また、押圧部材4の高さが第2基板3の厚さより高いと、重量ゼロの時点で既に損失が発生していることになり、重量計測のダイナミックレンジを狭くするおそれがある。
【0041】
また、上記の本実施形態の重量計測素子は、押圧部材4が金属からなり、第1基板1及び第2基板3がシリコーンゴムからなることが好ましい。上記のように、高度に差を有する材料から構成することで、荷重が印加されたときの押圧部材4の沈み込みを実現し、センサファイバのセンサ部近傍に安定な曲げを発生させることができる。
【0042】
第2実施形態
図6及び図7は本実施形態に係る重量計を構成する重量計測素子の断面図であり、第1実施形態の図4(b)に相当する断面図である。
本実施形態に係る重量計測素子は、押圧部材の形状が第1実施形態に係る押圧部材4と異なる。上記以外は、実質的に第1実施形態と同様である。
【0043】
図6に示す形態においては、第1実施形態と同様に、押圧部材4aのファイバセンサのセンサ部SPの部分を押圧する部分の形状が丸められた形状となっている。
一方、図7に示す形態においては、押圧部材4bのファイバセンサのセンサ部SPの部分を押圧する部分の形状が尖った形状となっている。
【0044】
上記のほか、押圧部材4のファイバセンサのセンサ部SPの部分を押圧する部分の形状は、押圧部材4に荷重が与えられたときにセンサファイバのセンサ部SP近傍に曲げを発生させる形状となっていればよく、特に限定されるものではない。
【0045】
上記の本実施形態の重量計測素子と、それを用いて構成された重量計は、荷重均一化基板5に印加される荷重に応じてファイバセンサを伝送する光に対して損失を発生させる構成となっており、安価で高精度な重量計を実現することができる。
【0046】
第3実施形態
図8は本実施形態に係る重量計を構成する重量計測素子の断面図であり、第1実施形態の図4(c)に相当する断面図である。
本実施形態に係る重量計測素子は、押圧部材4の上方における開口部3aの空間が、シリコーン樹脂などによるシーラント6により埋め込まれていることが第1実施形態と異なる。上記以外は、実質的に第1実施形態と同様である。
【0047】
上記のように、押圧部材4の上方における開口部3aの空間がシーラント6で埋め込まれていることにより、例えば押圧部材4が円柱形状である場合などにおいて押圧部材4に伝達される荷重がより均一化されるなど、動作をより安定化させることが可能となる。
【0048】
上記の本実施形態の重量計測素子と、それを用いて構成された重量計は、荷重均一化基板5に印加される荷重に応じてファイバセンサを伝送する光に対して損失を発生させる構成となっており、安価で高精度な重量計を実現することができる。
【0049】
第4実施形態
センサ部SPとしては、第1実施形態に記載の構成以外の構成を採用することも可能である。
図9(a)及び(b)は、本実施形態に係る重量計測素子のセンサ部SP近傍の長手方向の断面図である。
図9(a)では、センサ部SPを構成する光透過部材であるヘテロコア部30のコア31の径blが、光ファイバ(20a,20b)のコア21の径alよりも大きな構成となっている。
図9(b)では、センサ部SPとして、光ファイバ(20a,20b)のコア21の屈折率あるいはクラッド22の屈折率と同等の屈折率を持つ材料からなる、ヘテロコア部ではない光透過部材30aが光ファイバ(20a,20b)の中途部に接合されてなる構成となっている。
【0050】
上記以外の構成は、実質的に第1実施形態と同様である。また、上記の各実施形態に適用可能である。
上記の本実施形態の重量計測素子と、それを用いて構成された重量計は、荷重均一化基板に印加される荷重に応じてファイバセンサを伝送する光に対して損失を発生させる構成となっており、安価で高精度な重量計を実現することができる。
【0051】
第5実施形態
図10は、本実施形態に係る重量計の構成を示す模式構成図である。
例えば、光ファイバ(20a,20b)の中途部に重量計測素子WMが設けられている。
光ファイバ20aには、光カプラ16において光ファイバ20cを分岐する構成であり、光ファイバ20bの端部には銀を蒸着して形成された反射部(鏡)15が設けられ、光ファイバ20a端部が光入射端、光ファイバ20c端部が光出射端となる。
光ファイバ20aの光入射端にセンサ光を出射する半導体発光ダイオードまたは半導体レーザなどの光源11が設けられ、光ファイバ20cの光出射端に光出射端から出射されるセンサ光を検出する光マルチメータなどの受光部12が設けられている。
【0052】
上記以外の構成は、実質的に第1実施形態と同様である。また、上記の各実施形態に適用可能である。
上記の本実施形態の重量計測素子と、それを用いて構成された重量計は、荷重均一化基板に印加される荷重に応じてファイバセンサを伝送する光に対して損失を発生させる構成となっており、安価で高精度な重量計を実現することができる。
【0053】
特に、反射部15で反射したセンサ光は、再びセンサ部SPを通過するため、一方向に通過させただけの光と比較してより多くの相互干渉の情報を含んだ光が測定され、より高感度に重量計測を行うことができる。
【0054】
第6実施形態
図11は、本実施形態に係る重量計の構成を示す模式構成図である。
例えば、光ファイバ(20a,20b)の中途部に重量計測素子WMが設けられている。
光ファイバ20aには、OTDR(Optical time-domain reflectometer)装置70が接続されている。OTDR装置70から入射されたセンサ光の後方へのレイリー散乱光をOTDR装置70自身が検出する。
【0055】
上記以外の構成は、実質的に第1実施形態と同様である。また、上記の各実施形態に適用可能である。
上記の本実施形態の重量計測素子と、それを用いて構成された重量計は、荷重均一化基板に印加される荷重に応じてファイバセンサを伝送する光に対して損失を発生させる構成となっており、安価で高精度な重量計を実現することができる。
【0056】
第7実施形態
図12は、本実施形態に係る重量計の構成を示す模式構成図である。
例えば、光ファイバ(20a,20b)の中途部に第1重量計測素子WMが設けられ、光ファイバ(20b,20c)の中途部に第2重量計測素子WMが設けられ、さらに光ファイバ(20c,20d)の中途部に第3重量計測素子WMが設けられている。即ち、複数個の重量計測素子(WM〜WM)が1本の光ファイバ上に直列に接続された構成となっている。
光ファイバ20aには、OTDR装置70が接続されている。OTDR装置70からセンサ光が入射されると、複数個の重量計測素子(WM〜WM)のそれぞれにおいて後方へのレイリー散乱光が発生し、これをOTDR装置70が検出する。
【0057】
上記以外の構成は、実質的に第1実施形態と同様であり、重量計測素子(WM〜WM)はそれぞれ第1実施形態と同様の構成とすることができる。また、上記の各実施形態に適用可能である。
上記の本実施形態の重量計測素子と、それを用いて構成された重量計は、荷重均一化基板に印加される荷重に応じてファイバセンサを伝送する光に対して損失を発生させる構成となっており、安価で高精度な重量計を実現することができる。
特に、複数個の重量計測素子(WM〜WM)で同時に重量を測定することが可能である。
【0058】
第8実施形態
図13は、本実施形態に係る重量計の構成を示す模式構成図である。
例えば、光ファイバ(20a,20b)の中途部に重量計測素子WMが設けられている。
光ファイバ20aの光入射端に、白色光などのセンサ光を出射する光源11aが設けられ、光ファイバ20bの光出射端に光出射端から出射されるセンサ光を検出する光マルチメータなどの受光部12が設けられている。
センサ光としては、半導体発光ダイオードまたは半導体レーザの発光する単一波長あるいは狭い波長領域の光のほかに、白色光などを用いることができる。
【0059】
上記以外の構成は、実質的に第1実施形態と同様である。また、上記の各実施形態に適用可能である。
上記の本実施形態の重量計測素子と、それを用いて構成された重量計は、荷重均一化基板に印加される荷重に応じてファイバセンサを伝送する光に対して損失を発生させる構成となっており、安価で高精度な重量計を実現することができる。
【0060】
<実施例>
上記の第1実施形態に係る重量計を作成し、荷重均一化基板に印加される荷重とセンサ光に生じる損失の関係を測定した。
結果を図14に示す。図中、横軸は荷重(kg)、縦軸は損失(dB)である。
図14に示すように、荷重が大きくなるにつれて損失が大きくなるように変化するように構成することができる。
従って、荷重均一化基板に測定対象物を載せたときに、センサ光の損失のデータを得れば、図14から荷重の値を算出することができる。
【0061】
本発明は上記の説明に限定されない。
例えば、用いる光源や受光部などは、上述のものに限らず、種々のものを使用できる。
光ファイバはマルチモードファイバでもシングルモードファイバでも使用できる。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の重量計測素子及びそれを用いた重量計は、例えば防爆施設などにおいて用いられる重量計などに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は本発明の第1実施形態に係る重量計の模式構成図である。
【図2】図2は本発明の第1実施形態に係る重量計を構成する本実施形態の重量計測素子の斜視図である。
【図3】図3は図2に示す重量計測素子の構成を説明する構成説明図である。
【図4】図4(a)は重量計測素子の平面図であり、図4(b)は図4(a)中のX−X’における断面図であり、図4(c)は図4(a)中のY−Y’における断面図である。
【図5】図5(a)は本発明の第1実施形態に係る重量計測素子を構成するファイバセンサのセンサ部SP近傍の斜視図であり、図5(b)はセンサ部SP近傍の長手方向の断面図である。
【図6】図6は本発明の第2実施形態に係る重量計を構成する重量計測素子の断面図である。
【図7】図7は本発明の第2実施形態に係る重量計を構成する重量計測素子の断面図である。
【図8】図8は本発明の第3実施形態に係る重量計を構成する重量計測素子の断面図である。
【図9】図9(a)及び(b)は本発明の第4実施形態に係る重量計測素子のセンサ部SP近傍の長手方向の断面図である。
【図10】図10は本発明の第5実施形態に係る重量計の構成を示す模式構成図である。
【図11】図11は本発明の第6実施形態に係る重量計の構成を示す模式構成図である。
【図12】図12は本発明の第7実施形態に係る重量計の構成を示す模式構成図である。
【図13】図13は本発明の第8実施形態に係る重量計の構成を示す模式構成図である。
【図14】図14は実施例に係る荷重均一化基板に印加される荷重とセンサ光に生じる損失の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1…第1基板
2…保護シート
3…第2基板
3a…開口部
3b…切り込み部
4…押圧部材
5…荷重均一化基板
6…シーラント
11,11a…光源
12,12a…受光部
15…反射部
16…光カプラ
20a,20b,20c,20d…光ファイバ
21,31…コア
22,32…クラッド
30…ヘテロコア部
30a…光透過部材
40…界面
70…OTDR装置
SP…センサ部
W…リーク
WM,WM,WM,WM…重量計測素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアおよびコアの外周に設けられたクラッドを備え、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にする光透過部材を有し、入射端に光が入射されて出射端から前記光透過部材を通過した光を出射する光ファイバと、
少なくとも前記光透過部材の部分及びその近傍部分を載せるように前記光ファイバの下方に配置される第1基板と、
開口部が設けられ、少なくとも前記光透過部材の部分が前記開口部の領域内に位置するように前記光ファイバの上方に配置された第2基板と、
前記開口部に嵌入され、前記第1基板及び前記第2基板より高硬度の材料からなる押圧部材と、
前記第2基板及び前記押圧部材上に設けられた荷重均一化基板と
を有し、
前記押圧部材の前記光ファイバの前記光透過部材の部分を押圧する部分が、前記押圧部材に荷重が印加されたときに前記光ファイバの前記光透過部材の近傍部分に曲げを発生させる形状であり、前記荷重均一化基板に荷重が印加されたときに前記光ファイバを伝送する光に対して前記荷重に応じた損失を発生させる構成である
重量計測素子。
【請求項2】
前記第2基板及び前記押圧部材と前記光ファイバの間に前記光ファイバを保護する保護シートが設けられている
請求項1に記載の重量計測素子。
【請求項3】
前記開口部の前記光透過部材の部分の近傍において、前記光ファイバが配置されている方向と直交する方向の側壁部分に前記開口部に連通する切り込み部が形成されている
請求項1または2に記載の重量計測素子。
【請求項4】
前記押圧部材の高さが前記第2基板の厚さと実質的に同等である
請求項1〜3のいずれかに記載の重量計測素子。
【請求項5】
前記押圧部材の前記光ファイバの前記光透過部材の部分を押圧する部分が丸められたあるいは尖った形状となっている
請求項1〜4のいずれかに記載の重量計測素子。
【請求項6】
前記押圧部材が金属あるいはシリコーンゴムからなり、前記第1基板及び前記第2基板がシリコーンゴムからなる
請求項1〜5のいずれかに記載の重量計測素子。
【請求項7】
前記光透過部材は、前記光ファイバのコア径と異なるコア径を有するヘテロコア部である
請求項1〜6のいずれかに記載の重量計測素子。
【請求項8】
前記光透過部材は、前記光ファイバのコアの屈折率あるいはクラッドの屈折率と同等の屈折率を持つ光透過部材である
請求項1〜6のいずれかに記載の重量計測素子。
【請求項9】
光ファイバを含んで構成された重力計測素子と、
前記光ファイバの入射端に設けられた光源と、
前記光ファイバの出射端に設けられた受光部と
を有し、
前記重量計測素子は、
コアおよびコアの外周に設けられたクラッドを備え、伝送する光の一部の外界との相互作用を可能にする光透過部材を有し、入射端に光が入射されて出射端から前記光透過部材を通過した光を出射する光ファイバと、
少なくとも前記光透過部材の部分及びその近傍部分を載せるように前記光ファイバの下方に配置される第1基板と、
開口部が設けられ、少なくとも前記光透過部材の部分が前記開口部の領域内に位置するように前記光ファイバの上方に配置された第2基板と、
前記開口部に嵌入され、前記第1基板及び前記第2基板より高硬度の材料からなる押圧部材と、
前記第2基板及び前記押圧部材上に設けられた荷重均一化基板と
を有し、
前記押圧部材の前記光ファイバの前記光透過部材の部分を押圧する部分が、前記押圧部材に荷重が印加されたときに前記光ファイバの前記光透過部材の近傍部分に曲げを発生させる形状であり、前記荷重均一化基板に荷重が印加されたときに前記光ファイバを伝送する光に対して前記荷重に応じた損失を発生させる構成である
重量計。
【請求項10】
前記光源が半導体発光ダイオード、半導体レーザあるいは白色光である
請求項9に記載の重量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−102695(P2011−102695A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49615(P2008−49615)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(593103179)日本電線工業株式会社 (3)
【出願人】(598123138)学校法人 創価大学 (49)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)