説明

野地パネル

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、木造家屋の屋根を形成するための野地パネル、特に工場で予め形成される、つまりプレカットされる野地パネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】木造家屋においては、図5に示すように、瓦を使用して屋根を形成することが行われているが、この瓦を支持するのが母屋上に配置固定される野地板である。この野地板の一般的なものは、単なる板材であったが、それだと強度がなく断熱性もないので、出願人は図4にも示すような所謂プレカットによる野地パネル10aを既に提案してきている。
【0003】この野地パネル10aは、複数の垂木11の上下両面に面材とも呼ばれる上側面材12及び下側面材13を一体化し、これらの間に形成された空間内に、通気空間15を形成した状態で断熱材14を設けたものである。これにより、木造家屋20の母屋21上に垂木を固定してから野地板を配置固定するのに比較して、当該野地パネル10a自体が垂木11を有していることから垂木の固定作業が不要となるとともに剛性が高いものと成っているのであり、また断熱材14及び通気空間15による断熱効果に優れ、しかも通気空間15を図6または図7に示すように連続させることによって当該野地パネル10a自体の結露防止を図ることができるといった種々な特性を有したものである。なお、図7に示した野地パネル10aにおいては、その断熱材14及び下側面材13に部屋側の空気の流通を通気空間15を介して行うようにしたものである。
【0004】以上のような利点を有する野地パネル10aではあるが、これを採用して屋根を完成した場合には、図6または図7からも理解できるように、屋根裏側には下側面材13のみが露出するものとなるのである。近年の木造家屋20においては、この屋根裏にも「趣味の部屋」等の部屋を積極的に形成することが行われてきているが、この言わば屋根裏部屋の天井は、上述した野地パネル10aの下側面材13がそのまま露出することになる。特に、近年においては、木等の自然物の材質がそのまま現れることが好まれており、しかも自然物は豪華な雰囲気を醸し出すこともできるものであるから、単なる合板や石膏ボード等からなる下側面材13が天井の全体を占めることは好ましくないのである。
【0005】そこで、本発明者等は、この種の野地パネルが屋根裏部屋の天井をそのまま構成するものであり、しかもこの野地パネルそのものが垂木11という天然材を使用していることを考慮して、この野地パネルを天井板としても十分利用できるようにするにはどうしたらよいかについて種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上のような経緯に基づいてなされたもので、その解決しようとする課題は、従来の野地パネルを天井板としたときの、豪華さの不足である。
【0007】そして、本発明の目的とするところは、出願人が既に提案してきている野地パネルのメリットを十分生かすことができて、さらに天井板として使用するにふさわしい豪華さを醸し出すことのできる野地パネルを簡単な構成によって提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するために、まず請求項1に係る発明の採った手段は、実施例において使用する符号を付して説明すると、「木造家屋20の母屋21上に配置固定されて、屋根瓦を支持するための野地パネル10において、この野地パネル10を、複数の垂木11と、上下面材とこれら上下両面材12・13間に形成される空間と、この空間内に収納される断熱材14とを備えたものとして構成するとともに、下側面材12を、垂木11の下部に形成した段部11係合させて支持することにより、各垂木11の下面を各下側面材12から露出させたことを特徴とする野地パネル10」である。
【0009】また、請求項2に係る発明の採った手段は、同様に、「木造家屋20の母屋21上に配置固定されて、屋根瓦を支持するための野地パネル10において、この野地パネル10を、複数の垂木11と、上下面材とこれら上下両面材12・13間に形成される空間と、この空間内に収納される断熱材14と、各垂木11の下面に一体的に固定される装飾支持材16とにより構成するとともに、これら各装飾支持材16に、その側方から突出する支持部16aを一体的に形成して、この支持部16aの下面に下側面材13を固定し、かつ支持部16aの上面に断熱材14を配置して、下側面材13と断熱材14との間に配線空間17を形成しながら、各装飾支持材16の下面を各下側面材13から露出させたことを特徴とする野地パネル10」である。
【0010】
【発明の作用】以上のように構成した各請求項の発明に係る野地パネル10の作用について、項を分けて以下に説明するが、その前に両請求項の野地パネル10に共通の作用について説明する。
【0011】まず、この野地パネル10は、工場において予め形成されて、一定の厚さと大きさを有したものとなっている。そして、この野地パネル10は、図5に示したような木造家屋20を形成するために、所定の形状と大きさに予め加工、つまりプレカットされて施工現場に運ばれるものである。
【0012】施工現場においては、これらの野地パネル10は、木造家屋20の母屋21上に配置固定されるのであり、その上に瓦を配列することによって、図5に示したような屋根を形成するのである。
【0013】各野地パネル10は、図1または図3に示すように、複数の垂木11の上下両面に上側面材12及び下側面材13を固定して、これら上側面材12及び下側面材13間に形成した空間内に通気空間15を形成した状態で断熱材14を設けたので、・木造家屋20の母屋21上に垂木を別途設ける必要がない。
・複数の垂木11によって、屋根を構成するのに必要な十分な剛性を有したものとなっている。
・上側面材12と下側面材13間に位置する断熱材14及び通気空間15によって十分な断熱効果を有している。
・各野地パネル10の通気空間15を互いに連続した状態で母屋21上に配置固定することによって、結露が生じない等の十分な通気性を有している。といった作用を有しているものである。
【0014】・請求項1に係る野地パネル10についてこの野地パネル10は、以上の作用の他に、図1及び図2R>2に示したように、各垂木11の天然材としての意匠的効果を十分発揮するものとなっている。
【0015】つまり、この野地パネル10においては、各垂木11の下部に形成した段部11aに、各垂木11の一部が外方に露出するように下側面材13を取付けたのであるから、垂木11の素材の美しさが発揮されているのである。従って、この野地パネル10を使用して形成した屋根裏に部屋を形成した場合には、その天井がこの野地パネル10によって形成されることになるため、この野地パネル10の下面に露出している各垂木11によって、当該屋根裏部屋は豪華な雰囲気を有したものとなるのである。
【0016】・請求項2に係る野地パネル10についてこの野地パネル10においては、各垂木11の下面に取付けた装飾支持材16が、各下側面材13間から露出することになるので、この野地パネル10が天井となる屋根裏部屋が豪華なものとなるのである。この場合には、請求項1の野地パネル10とは異なって、各垂木11が露出することにはならないのであるが、各垂木11とは異なった材質の装飾支持材16を露出させることができるため、装飾支持材16の材質を選択することによって各垂木11の場合よりも豪華な雰囲気にできるだけでなく、各垂木11としてはそれ程良質材を使用する必要もなくなるものである。
【0017】また、この請求項2の野地パネル10においては、各装飾支持材16によって下側面材13と断熱材14との間に配線空間17が積極的に形成されるから、この配線空間17を利用して電灯線等の配線を下側面材13によって覆うことが可能となり、これにより屋根裏部屋の天井をスッキリしたものとし得るのである。
【0018】
【実施例】次に、各請求項に係る野地パネル10を、図面に示した各実施例に従って、さらに詳細に説明する。
【0019】(実施例1)
図1及び図2には、請求項1に係る野地パネル10の実施例が示してあり、この野地パネル10は、複数の垂木11と、上下面材とこれら上下両面材12・13間に形成される空間と、この空間内に収納される断熱材14とを備えたものとして構成してある。そして、各垂木11の下部には、図1に示したように、下側面材13を収納して固定するための段部11aが形成してある。
【0020】なお、この野地パネル10を形成するのは、各垂木11を図示しない枠材等によって固定しておくとともに、この垂木11の段部11aに下側面材13(通常は石膏ボード)を嵌合固定しておき、この状態で、各下側面材13とその上に配置した規定板とによって形成した空間内に断熱材14となるべき発泡性樹脂材料を注入するのである。これにより、断熱材14が形成されるから、最後に上側面材12を各垂木11上に固定すれば、内部に断熱材14と通気空間15とを有した野地パネル10となるのである。
【0021】換言すれば、この野地パネル10は、下側面材12を、垂木11の下部に形成した段部11aの下側に係合させて支持することにより、各垂木11の下面を各下側面材12から露出させたものである。勿論、各垂木11の下面は、カンナがけする等して、図2に示したように、その素材の美しさを十分発揮し得るものとしてあるのである。
【0022】(実施例2)
図3には、請求項2に係る野地パネル10が示してあり、この野地パネル10の請求項1に係るそれと異なる点は、各垂木11の下面に固定される装飾支持材16をそれぞれ有していることである。なお、この野地パネル10の、請求項1に係る野地パネル10と共通する部材については、それぞれ同一符号を図3中に付して、その説明は省略する。
【0023】各装飾支持材16は、垂木11とは全く別部材として形成したものであり、その材質は各垂木11の材質とは無関係に選択されるものである。そして、各装飾支持材16は、その下部にこれから側方に突出する支持部16aを有していて、この支持部16aは配線空間17を形成するのに十分な厚さを有したものとしてある。
【0024】これら各装飾支持材16に対しては、図3に示したように、その各支持部16aを挟み込むような状態で、各支持部16aの上側に断熱材14がまた下側に下側面材13がそれぞれ配置固定してあるのである。
【0025】以上のいずれの野地パネル10においても、各垂木11の段部11aあるいは各装飾支持材16の支持部16aに対する下側面材13の配置固定はどのような方法によって行ってもよいが、特に請求項2に係る野地パネル10においては、その配線空間17を有効に利用するために、下側面材13の各装飾支持材16に対する固定をネジ止めによって行なうのが有効である。必要に応じて下側面材13を取外すことができるからである。
【0026】
【発明の効果】以上詳述した通り、請求項1に係る野地パネル10においては、上記実施例にて例示した如く、「木造家屋20の母屋21上に配置固定されて、屋根瓦を支持するための野地パネル10において、この野地パネル10を、複数の垂木11と、上下面材とこれら上下両面材12・13間に形成される空間と、この空間内に収納される断熱材14とを備えたものとして構成するとともに、下側面材12を、垂木11の下部に形成した段部11aに係合させて支持することにより、各垂木11の下面を各下側面材12から露出させた」ことにその構成上の特徴があり、これにより、出願人が既に提案してきている野地パネルのメリットを十分生かすことができて、さらに天井板として使用するにふさわしい豪華さを醸し出すことのできる野地パネルを簡単な構成によって提供することができるのである。
【0027】また、請求項2に係る野地パネル10によれば、請求項1に係る野地パネル10と同様な効果を有している他に、この野地パネル10内に配線空間17を積極的に形成することができて、有効に利用できるものとすることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1に係る野地パネルの部分斜視図である。
【図2】図1の野地パネルの底面図である。
【図3】請求項2に係る野地パネルの部分斜視図である。
【図4】従来の野地パネルの斜視図である。
【図5】野地パネルを使用した屋根を示す木造家屋の部分斜視図である。
【図6】図5の野地パネルの部分拡大断面図である。
【図7】他の野地パネルを使用した場合の図6に対応する部分拡大断面図である。
【符号の説明】
10 野地パネル
11 垂木
11a 段部
12 上側面材
13 下側面材
14 断熱材
15 通気空間
16 装飾支持材
16a 支持部
17 配線空間
20 木造家屋
21 母屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】 木造家屋の母屋上に配置固定されて、屋根瓦を支持するための野地パネルにおいて、この野地パネルを、複数の垂木と、上下面材とこれら上下両面材間に形成される空間と、この空間内に収納される断熱材とを備えたものとして構成するとともに、前記下側面材を、前記垂木の下部に形成した段部に係合させて支持することにより、前記各垂木の下面を前記各下側面材から露出させたことを特徴とする野地パネル。
【請求項2】 木造家屋の母屋上に配置固定されて、屋根瓦を支持するための野地パネルにおいて、この野地パネルを、複数の垂木と、上下面材とこれら上下両面材間に形成される空間と、この空間内に収納される断熱材と、前記各垂木の下面に一体的に固定される装飾支持材とにより構成するとともに、これら各装飾支持材に、その側方から突出する支持部を一体的に形成して、この支持部の下面に前記下側面材を固定し、かつ前記支持部の上面に前記断熱材を配置して、前記下側面材と前記断熱材との間に配線空間を形成しながら、前記各装飾支持材の下面を前記各下側面材から露出させたことを特徴とする野地パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【特許番号】特許第3148866号(P3148866)
【登録日】平成13年1月19日(2001.1.19)
【発行日】平成13年3月26日(2001.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−29499
【出願日】平成4年2月17日(1992.2.17)
【公開番号】特開平5−230953
【公開日】平成5年9月7日(1993.9.7)
【審査請求日】平成10年12月24日(1998.12.24)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)