説明

野菜片入り液体調味料、乾燥野菜片の液体浸透方法

【課題】乾燥野菜片に液体が均一にかつ十分に浸透しているため食感や比重等のばらつきが少なく、品質安定性及び食味に優れた野菜片入り液体調味料を提供すること。
【解決手段】本発明の液体調味料は、0.5mm以上の大きさの乾燥野菜片を固形具材として用いてなる野菜片入り液体調味料である。この野菜片入り液体調味料は、甘味を有する糖類と、ゲル化能を有する増粘多糖類とを含有する。また、この野菜片入り液体調味料は、粘度が3000mPa・s以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥野菜片を固形具材として用いてなる野菜片入り液体調味料、乾燥野菜片の液体浸透方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドレッシング、たれなどの液体調味料には、消費者の好みに応じて各種の固形具材(野菜類など)を含有させたものがある。この種の液体調味料における固形具材としては、水分を含んだ状態でカット等の加工を施した野菜が一般的によく用いられるが、しばしば乾燥した野菜が用いられる場合もある(例えば、特許文献1参照)。これは、水分を含む野菜を用いた場合とは異なり、乾燥野菜を用いた場合には液中に旨味を濃縮する効果を奏するため、液体調味料にコクを付与できるからである。
【0003】
ここで、野菜が入った液体調味料を製造する際には、調味料主原料である液体部分に固形具材である乾燥野菜を添加することにより、この液体に乾燥野菜を接触させる必要がある。すると、製品の製造段階、保管段階、流通段階を経て時間が経過するのに従って、野菜乾燥の内部に液体が次第に浸透していくこととなる。
【0004】
ところが、乾燥野菜の種類や大きさが相違していたり、あるいは、乾燥野菜を液体に接触させる時間が不足していたりすると、乾燥野菜への液体の浸透具合にばらつきが生ずることがある。つまり、浸透具合が良いと固形具材が軟らかくなるが、浸透具合が悪いと固形具材が軟らかくならないため、結果として食感のばらつきが引き起こされるからである。そればかりでなく、浸透具合のばらつきは、比重のばらつきや容器充填性のばらつきを引き起こす原因にもなり、ひいては製品における野菜分と液体部分との比率をばらつかせる。ゆえに、安定した品質の製品が得にくくなってしまう。
【0005】
このような事情のもと、比較的早期のうちに乾燥野菜に十分に液体を浸透させることが可能な方法が従来提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法は、液体調味料製造の具材混合前の段階で、減圧下において乾燥野菜に水又は水性液を加えて浸透させることを、その特徴としている。
【特許文献1】特開平1−181764号公報
【特許文献2】特開昭59−140858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、減圧下において乾燥野菜に浸水させる上記従来方法では、通常の製造設備の他に脱圧のための設備が必要となり、設備費用やスペースが余分に必要となる。さらに、脱圧工程の操作も必要となり、作業性や製品の品質安定性の観点からも、できることなら脱圧工程を経ずに乾燥野菜に液体を浸透させることが好ましい。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、乾燥野菜片に液体が均一にかつ十分に浸透しているため食感や比重等のばらつきが少なく、品質安定性及び食味に優れた野菜片入り液体調味料を提供することにある。
【0008】
また、本発明の第2の目的は、余分な設備などが不要であるにもかかわらず、固形具材である乾燥野菜片に早期にかつ十分に液体を浸透させることが可能な乾燥野菜片の液体浸透方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に鑑みて本発明者らは鋭意検討を重ねた。まず、乾燥野菜片に液体を早期にかつ十分に浸透させる方法を検討した結果、重合度が低くて低分子量の糖類、即ち甘味を有する糖類を液体に所定量以上含有させることで好結果が得られることを見出した。通常、糖類の添加は液体の粘度を増加させる方向に働くため、液体の浸透性の観点からするとマイナスに作用するものと従来考えられていた。しかし、甘味を有する糖類を液体に所定量含有させておくと、意外にもその液体の浸透性が向上する(即ちプラスに作用する)ことを見出した。その一方で、甘味を有する糖類を所定量以上含有させると、液体調味料に対して本来適さない甘味を付与してしまう場合がある。それゆえ、本発明者らはさらに鋭意検討を重ねた末、所定量の糖類のみならず、ゲル化能を有する増粘多糖類を所定量含有させることを思い付き、これにより糖類がもたらす甘味をマスキングでき、液体調味料に程良い食味を付与できることを新規に知見した。そして、この新規な知見に基づいて、本発明者らは下記の優れた発明を完成させるに至ったのである。
【0010】
即ち、請求項1に記載の発明は、0.5mm以上の大きさの乾燥野菜片を固形具材として用いてなる液体調味料であって、甘味を有する糖類と、ゲル化能を有する増粘多糖類とを含有し、粘度が3000mPa・s以下であることを特徴とする野菜片入り液体調味料をその要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記糖類の総量が調味液総量の10重量%〜25重量%であり、前記増粘多糖類の総量が調味液総量の0.01重量%以上であることをその要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記糖類が単糖及び二糖のうちの少なくともいずれかであることをその要旨とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、甘味を有する糖類と、ゲル化能を有する増粘多糖類とを含有させた液体に、固形具材である0.5mm以上の大きさの乾燥野菜片を接触させることにより、その乾燥野菜片の内部に前記液体を浸透させることを特徴とした乾燥野菜片の液体浸透方法をその要旨とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4において、前記糖類の総量が液総量の10重量%〜25重量%であり、前記増粘多糖類の総量が液総量の0.01重量%以上であることをその要旨とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5において、前記糖類が単糖及び二糖のうちの少なくともいずれかであることをその要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
以上詳述したように、請求項1〜3に記載の発明によると、乾燥野菜片に液体が均一にかつ十分に浸透しているため食感や比重等のばらつきが少なく、品質安定性及び食味に優れた野菜片入り液体調味料を提供することができる。また、請求項4〜6に記載の発明によると、余分な設備などが不要であるにもかかわらず、固形具材である乾燥野菜片に早期にかつ十分に液体を浸透させることが可能な乾燥野菜片の液体浸透方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
一般的に調味料とは料理や食品素材の美味しさを引き立たせるために用いられるものを指すが、本発明はそのなかでも液体調味料、即ち少なくとも流動性を有する低粘度の調味料について適用される。液体調味料の代表例としてはドレッシングが挙げられる他、各種つゆ類、各種たれ類、各種ソース類、味醂、ポン酢等が挙げられる。この場合、固形具材として乾燥野菜片を含有させることが可能なものであれば、基本的にどのようなものでもよい。なお、ここに列挙した液体調味料の中でも、特に野菜やシーフード等に直接かけて食べるのに適した液体調味料(即ちドレッシング等)であれば、食べる際に野菜等の風味を直接感じることができるため、本発明を適用する意義が相対的に大きいといえる。
【0019】
また、本発明の野菜片入り液体調味料は、ノンオイル品、低オイル品、油水分離品、乳化品のいずれでもよいが、ノンオイル品や低オイル品は油脂を全く含まないかまたは少ししか含まないため、コクの風味が不足する傾向にある。その点、乾燥野菜片を用いてなる本発明の液体調味料によれば、乾燥野菜片の添加により旨味濃縮効果が奏されることから、不足するコクの風味をある程度補うことができる。なお、低オイル品とは脂質の総量が10重量%以下の液体調味料を指し、ノンオイル品とは原料として食用植物油脂を使用しておらず脂質量が3重量%未満の液体調味料を指す。
【0020】
例えば、本発明の野菜片入り液体調味料が低オイルタイプのドレッシングである場合には、一般的に、水、食用油、食酢やクエン酸等の食用酸、食塩等の塩分などを混合してなる液体が、その液体調味料の主原料となる。また、本発明の野菜片入り液体調味料がノンオイルタイプのドレッシングである場合には、一般的に、水、食酢やクエン酸等の食用酸、食塩等の塩分などを混合してなる液体が、その液体調味料の主原料となる。
【0021】
本発明の野菜片入り液体調味料は、比較的低粘度であること、具体的には粘度が3000mPa・s以下であることが必要とされる。即ち、比較的粘度が高い液体調味料においては、概して多くの固形分や脂肪分が既に含有されており、コクの不足といった課題がそもそも起こりにくいからである。また、粘度が高くなると、乾燥野菜への液体の浸透が阻害されやすくなるからである。本発明の野菜入り液体調味料のより好ましい粘度は2600mPa・s以下、さらに好ましい粘度は10mPa・s〜1500mPa・sである。ここで、粘度の測定方法は本来限定されるべきではないが、本発明ではB型粘度計により30rpm、20秒の条件で測定する方法を採用している。
【0022】
本発明の野菜片入り液体調味料に用いる固形具材は、上述したごとく乾燥野菜である。ここで乾燥野菜片とは、水分が15重量%(w/w%)以下のものを指す。液体調味料における乾燥野菜片の含有量は特に限定されず、好みに応じて適宜調整することができる。ただし、乾燥野菜片の含有量が少なすぎると、添加による効果(例えば食味・食感向上効果等)が得にくくなり、含有量が多すぎると、液体調味料の流動性が損なわれる等してかえって食感を損なう場合もありうる。選択する野菜の種類や乾燥時の水分含有量などによっても異なるが、上記の事情を考慮すると、乾燥野菜片の含有量としては0.1重量%〜20重量%が好ましく、1重量%〜10重量%がより好ましい。
【0023】
本発明において固形具材として用いる乾燥野菜は、ある程度の大きさを有している必要があり、具体的には0.5mm以上の大きさを有する乾燥野菜片である必要がある。従って、胡椒や唐辛子等のようなスパイス類は、大きさが通常0.1mmよりも小さい粉末状であるため、本発明における乾燥野菜片には該当しない。また、粉末はそもそも小さいので比較的液体が浸透しやすく、液体浸透具合のばらつきが生じないのに対し、乾燥野菜片が0.5mm以上になると液体が内部に浸透しにくくなり、本願発明特有の課題が生じやすくなるからである。ただし、本発明の野菜片入り液体調味料においては、スパイス類の添加を許容しないわけではなく、少量であれば補助的に添加しても構わない。なお、乾燥野菜片の大きさは0.5mm〜7mmであることがよく、特には0.8mm〜5mmであることがよい。
【0024】
乾燥野菜片の大きさの測定は、従来周知の任意の方法により行うことができるが、例えば所定サイズのメッシュ用いそれを通過できるか否かでその大きさを測る方法を採用してもよい。
【0025】
ここで、乾燥野菜片として用いる野菜は、食べることが可能なものであればどのようなものでもよく、例えば、タマネギ、ニンニク、ネギ、ショウガ、ニンジン、ゴボウなどを用いることができる。特に、比較的固い組織を有するタマネギ、ニンニクは、通常の方法では液体が浸透しにくいため、本発明を適用するのにより適している。つまり、本発明では乾燥野菜片として根菜などを選択することがよい。
【0026】
野菜を乾燥する手段としては、食品の乾燥法として知られる従来周知のあらゆる方法が適用でき、例えば、凍結乾燥や加熱乾燥などを用いることができる。この場合、野菜にダメージを与えやすく液体が浸漬しやすくなるため、加熱乾燥のほうが好ましい。なお、乾燥野菜として市販されているもの、例えば、乾燥タマネギ片(日本スタンゲ株式会社製、商品名「ミンスドオニオン#00190」)、乾燥ニンニク片(ファインフーズ株式会社製、商品名「FRガーリックミンスMZ」)などを、本発明の乾燥野菜片として用いることができる。
【0027】
本発明の野菜片入り液体調味料における糖類としては、上記のごとく甘味を有する糖類、言い換えると重合度が低くて低分子量の糖類(例えば、重合度1〜10、好ましくは重合度1〜5)を用いる必要があり、この要件を満たすものであれば任意に選択することができる。使用可能な糖類の具体例を挙げると、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、オリゴ糖、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、などがある。勿論、これらを単独で使用してもよいほか、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。この場合、単糖(グルコース、フラクトース等)及び二糖(スクロース、ラクトース、マルトース等)のうちの少なくともいずれかの使用がより好適であり、単糖の使用が最も好適である。その理由は、これらの糖類はとりわけ液体の浸透度が高いからである。なお、甘味を有する糖類は重合度が低く、液体の浸透を促進する効果があるが、重合度が高くて甘味を有しない糖類は液体の浸透を促進する効果が殆どないため、本発明では甘味を有する糖類を用いる。なお、甘味を有する糖類とは、構造にもよるが、ここでは甘味度が0.3以上のものを指す。ただし、糖類の甘味度の値は高すぎないほうがよく、その好適値は0.3〜1.5程度である。
【0028】
甘味を有する糖類を入れるときの総量は、液体調味料の場合には調味料総量に対して、または乾燥野菜片に液体を接触させる場合にはその液体の総量に対して、10重量%〜25重量%が好ましく、さらには15重量%〜25重量%が好ましい。糖類の総量が所定量より少ないと、液体浸透効果が十分に得られないからである。また、糖類の総量が所定量より多いと、液体の粘性が高くなりかえって液体が浸透しにくくなると同時に、甘味が強くなり液体調味料として好ましくない風味となるからである。
【0029】
本発明の野菜片入り液体調味料における増粘多糖類は、ゲル化能を有するものである必要があり、このようなものであれば特に制限なく用いることができる。その具体例を挙げると、例えば、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン等があり、これらは単独でもゲル化能を発揮する。また、単独ではゲル化能を発揮しないが複数混ぜることでゲル化能を発揮するもの、例えばキサンタンガムとガラクトマンナンとを組み合わせて使用してもよい。ゲル化能を有する増粘多糖類を所定量含有させることにより、液体調味料に適さない甘味をマスキングできるからである。なお、この種の増粘多糖類によるマスキング効果は、増粘多糖類がゲル化して液体調味料を抱き込むことに起因して得られるものと考えられる。
【0030】
ゲル化能を有する増粘多糖類を入れるときの総量は、液体調味料の場合には調味料総量に対して0.01重量%以上、または乾燥野菜片に液体を接触させる場合にはその液体の総量に対して0.01重量%以上であることが好ましい。ゲル化能を有する増粘多糖類の総量が所定量よりも少ないと、十分なマスキング効果が得られないからである。ただし、ゲル化能を有する増粘多糖類の過度の添加は、液体調味料の粘度を増加させ、乾燥野菜片への液体の浸透を阻害する方向に作用することから、好適粘度である3000mPa・sを超えないように上限値を設定することがよい。この場合、選択する増粘多糖類の種類にもよるが、例えば増粘多糖類の総量を液総量の0.6重量%以下にすることがよい。つまり、ゲル化能を有する増粘多糖類の総量は、甘味を有する糖類の総量よりも少ないことが好適である。
【0031】
なお、先に列挙した増粘多糖類のなかでもペクチンが好ましく、特にLMタイプのペクチン(エステル化度50重量%以下のペクチン)が最もマスキング効果が高くて好ましい。ゲル化能を有する増粘多糖類は、ゲル化可能な条件下で使用されることが望ましく、具体的にはゲル化に適したpH、温度、塩類添加量などの条件を設定して使用されることがよい。また、殺菌の必要がある場合には、必要に応じて加温殺菌することもできる。
【0032】
本発明の野菜片入り液体調味料の製造においては、従来周知の一般的な条件を用いることができる。製造設備に関しても、一般的な混合タンクや殺菌装置などを用いることができる。乾燥野菜片、糖類、増粘多糖類を入れる順序は特に限定されないが、糖類や増粘多糖類を含ませた液体に乾燥野菜片を投入し混合してもよいし、糖類などを含有させる前の液体に乾燥野菜片を投入し混合してもよい。
【0033】
また、本発明の野菜片入り液体調味料には、上記のような主原料のほかにも、本発明の目的に反しなければ、香辛料、香料、色素、タンパク質、でんぷん類、糖アルコール、乳化剤、安定剤、酸化防止剤などの副原料が少量含まれていても構わない。
【0034】
以下、本発明を具体化した実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明は勿論これらに限定されるわけではない。以下、特に記載がない限り、「%」は「重量%」を示すものとする。
【実施例1】
【0035】
<評価試験1>
【0036】
本評価試験1は、甘味を有する糖類の適切な含有量の検討を目的として行った。
【0037】
(1)サンプルの作製
【0038】
表1の割合(%)で合計1000gとなる原料を用意し、混合用タンクに、水、砂糖、乾燥タマネギ(日本スタンゲ株式会社製、商品名「ミンスドオニオン#00190」)、その他の原料(食酢、食塩、醤油)の順序で投入した。全原料を投入後、約30分攪拌して均一になった後、85℃の到達温度で殺菌し、冷却したものをサンプルa,b,c,d,eとした。
【0039】
(2)評価方法
【0040】
作製した5種類のサンプルをそれぞれレタスサラダに適量かけて、5名の官能検査員により風味(甘すぎないか)、硬さ(液体浸透が十分か)の評価、及び総合的な評価を行った。なお、評価は下記の4段階で行った。表1において、×は「極めて好ましくない」、△は「好ましくない」、○は「好ましい」、◎は「極めて好ましい」、ということを意味している。上記官能評価の結果を表1に示す。
【0041】
(3)結果
【0042】
表1にその結果を示すように、本官能評価においては、サンプルb,c,dで好ましい結果が得られ、サンプルc,dで特に好ましい結果が得られた。即ち、甘味を有する糖類(砂糖)の好適な含有量は液総量の10%〜25%であり、より好ましくは液総量の15%〜25%であることがわかった。
【表1】

【0043】
<評価試験2>
【0044】
本評価試験2は、甘味を有する糖類の種類の検討を目的として行った。
【0045】
(1)サンプルの作製
【0046】
表2の割合(%)で合計1000gとなる原料を用意し、混合用タンクに、水、各種糖類、乾燥タマネギ(日本スタンゲ株式会社製、商品名「ミンスドオニオン#00190」)、その他の原料(食酢、食塩、醤油)の順序で投入した。全原料を投入後、約30分攪拌して均一になった後、85℃の到達温度で殺菌し、冷却したものをサンプルf,g,h,iとした。ここでは、いずれも甘味を有する糖類、具体的には二糖である砂糖(甘味度1.0)、単糖であるぶどう糖(甘味度0.7)、大豆オリゴ糖(甘味度0.7)、ラフィノース(甘味度0.2)を選択した。なお、糖類の添加量は一律に13%とした。
【0047】
(2)評価方法
【0048】
上記評価試験1と同様の方法で評価を行った。その結果を表2に示す。
【0049】
(3)結果
【0050】
表2にその結果を示すように、本官能評価においては、サンプルf,gで好ましい結果が得られ、サンプルgで特に好ましい結果が得られた。即ち、甘味を有する糖類としては単糖または二糖が適しており、とりわけ単糖が適していることがわかった。
【表2】

【0051】
<評価試験3>
【0052】
本評価試験3は、ゲル化能を有する増粘多糖類による甘味マスキング効果の検討を目的として行った。
【0053】
(1)サンプルの作製
【0054】
表3の割合(%)で合計1000gとなる原料を用意し、混合用タンクに、水、増粘多糖類、砂糖、乾燥タマネギ(日本スタンゲ株式会社製、商品名「ミンスドオニオン#00190」)、その他の原料(食酢、食塩、醤油)の順序で投入した。全原料を投入後、約30分攪拌して均一になった後、85℃の到達温度で殺菌し、冷却したものをサンプルj,k,l,mとした。ここでは、増粘多糖類として、キサンタンガム、LMペクチン、ジェランガム、グアガムをそれぞれ用いることとした。これらのうち、LMペクチン及びジェランガムは単独でもゲル化能を発揮するが、キサンタンガム及びグアガムは単独ではゲル化能を発揮しないが互いに混ぜ合わせることでゲル化能を発揮する。なお、増粘多糖類を全く添加しない区を設定し、これをコントロールとした。
【0055】
(2)評価方法
【0056】
作製した4種類のサンプルをそれぞれレタスサラダに適量かけて、5名の官能検査員により風味(甘すぎないか、コクがあるか)の評価を、コントロール品との比較において行った。なお、評価は下記の4段階で行った。表3において、×は「好ましくない」、△は「変わらない」、○は「少し好ましい」、△は「極めて好ましい」ということを意味している。上記官能評価の結果を表3に示す。
【0057】
(3)結果
【0058】
表3にその結果を示すように、本官能評価においては、サンプルk,l,mで好ましい結果が得られ、特にLMペクチンを用いたサンプルkでとりわけ好ましい結果が得られた。つまり、ゲル化能を有する増粘多糖類を使用することで、甘味マスキング効果が奏され風味の改善が認められた。また、ゲル化能を有する増粘多糖類は、調味料総量あたりで0.01%以上あれば、所望の効果を奏することがわかった。
【表3】

【0059】
<評価試験4>
【0060】
本評価試験4は、粘度による液体浸透性の検討を目的として行った。
【0061】
(1)サンプルの作製
【0062】
表4の割合(%)で合計1000gとなる原料を用意し、混合用タンクに、水、LMペクチン、砂糖、乾燥タマネギ(日本スタンゲ株式会社製、商品名「ミンスドオニオン#00190」)、その他の原料(食酢、食塩、醤油)の順序で投入した。全原料を投入後、約30分攪拌して均一になった後、85℃の到達温度で殺菌し、冷却したものをサンプルn,r,s,t,uとした。ここでは、LMペクチンの総量を5段階に設定(調味料総量の0.01%、1%、3%、3.5%、4%に設定)した。また、これら5種類のサンプルの粘度をB型粘度計により30rpm、20秒の条件で測定したところ、LMペクチン総量の少ない順に、20mPa・s、700mPa・s、2600mPa・s、3000mPa・s、3400mPa・sであった。
【0063】
(2)評価方法
【0064】
作製した5種類のサンプルをそれぞれレタスサラダに適量かけて、5名の官能検査員により風味(甘すぎないか)、硬さ(液体浸透が十分か)の評価、及び総合的な評価を行った。なお、評価は下記の4段階で行った。表4において、×は「極めて好ましくない」、△は「好ましくない」、○は「好ましい」、◎は「極めて好ましい」ということを意味している。上記官能評価の結果を表4に示す。また、浸透具合のばらつきがある場合、例えば、好ましいものと好ましくないものとが混ざり合っている場合には、悪いほうの評価を採用し好ましくないものと評価した。
【0065】
(3)結果
【0066】
表4にその結果を示すように、本官能評価においては、サンプルn,o,p,qで好ましい結果が得られ、特にLMペクチンの量を少なく(調味料総量の0.01%〜3%に)設定したサンプルn,o,pでより好ましい結果が得られた。これを粘度に着目してみると、20mPa・s〜2600mPa・sの範囲では液体浸透性に申し分がなく好結果が得られた一方で、3000mPa・s以上になると液体浸透性に問題があり好結果が得られなかった。
【表4】

【0067】
以上の結果を総合すると、本発明によると下記の作用効果を奏することができる。即ち、上記実施例に記載した液体浸透方法では、甘味を有する糖類と、ゲル化能を有する増粘多糖類とを含有させた調味液主原料(液体)に、固形具材である0.5mm以上の大きさの乾燥タマネギ片(乾燥野菜片)を接触させるようにしている。そしてこれにより、乾燥タマネギ片の内部に調味料主原料を、十分にかつ約30分という短時間のうちに浸透させることができる。しかも、この液体浸透方法によれば、常圧環境下で実施すれば足りるので、脱圧のための余分な設備などを特に必要としないというメリットがある。
【0068】
また、このような方法を経て製造された野菜片入りノンオイルドレッシング(野菜片入り液体調味料)の場合、乾燥タマネギ片に調味液主原料が均一にかつ十分に浸透している。そのため、食感や比重等のばらつきが少なく、品質安定性及び食味に優れた野菜片入りノンオイルドレッシングを実現することができる。
【0069】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0070】
(1)0.5mm以上の大きさの乾燥野菜片を固形具材として用いてなる液体調味料であって、甘味を有する糖類と、総量が前記糖類よりも少なくかつゲル化能を有する増粘多糖類とを含有し、粘度が3000mPa・s以下であることを特徴とする野菜片入り液体調味料。
【0071】
(2)0.5mm以上の大きさの乾燥野菜片を固形具材として用いてなる液体調味料であって、甘味度が0.3〜1.5である糖類と、総量が前記糖類よりも少なくかつゲル化能を有する増粘多糖類とを含有し、粘度が3000mPa・s以下であることを特徴とする野菜片入り液体調味料。
【0072】
(3)0.5mm以上の大きさの乾燥野菜片を固形具材として用いてなる液体調味料であって、総量が調味液総量の10重量%〜25重量%であり、甘味を有する糖類と、総量が調味液総量の0.01重量%〜3重量%であり、ゲル化能を有する増粘多糖類とを含有し、粘度が2600mPa・s以下であることを特徴とする野菜片入り液体調味料。
【0073】
(4)0.5mm以上の大きさの乾燥野菜片を固形具材として用いてなる液体調味料であって、総量が調味液総量の10重量%〜25重量%であり、甘味を有する糖類と、総量が調味液総量の0.01重量%〜1重量%であり、ゲル化能を有する増粘多糖類とを含有し、粘度が700mPa・s以下であることを特徴とする野菜片入り液体調味料。
【0074】
(5)0.5mm以上の大きさの乾燥野菜片を固形具材として用いてなるノンオイル又は低オイルドレッシングであって、総量が調味液総量の10重量%〜25重量%であり、甘味度が0.3〜1.5である糖類と、総量が調味液総量の0.01重量%〜1重量%であり、ゲル化能を有する増粘多糖類とを含有し、B型粘度計を用いて30rpm、20秒で測定したときの粘度が700mPa・s以下であることを特徴とする野菜片入りノンオイル又は低オイルドレッシング。
【0075】
(6)甘味を有する糖類と、総量が前記糖類よりも少なくかつゲル化能を有する増粘多糖類とを含有させた液状の調味料主原料に、固形具材である0.5mm以上の大きさの乾燥野菜片を接触させることにより、その乾燥野菜片の内部に前記調味料主原料を浸透させることを特徴とした乾燥野菜片の液体浸透方法。
【0076】
(7)甘味を有する糖類と、総量が前記糖類よりも少なくかつゲル化能を有する増粘多糖類とを含有させた液状の調味料主原料に、固形具材である0.5mm以上の大きさの加熱乾燥野菜片を常圧下で接触させることにより、その加熱乾燥野菜片の内部に前記調味料主原料を浸透させることを特徴とした乾燥野菜片の液体浸透方法。
【0077】
(8)甘味を有する糖類と、総量が前記糖類よりも少なくかつゲル化能を有する増粘多糖類とを含有させた液状のドレッシング主原料に、固形具材である0.5mm以上の大きさの乾燥野菜片を接触させることにより、その乾燥野菜片の内部に前記調味料主原料を浸透させる工程を含むことを特徴とした乾燥野菜片入りのノンオイル又は低オイルドレッシングの製造方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5mm以上の大きさの乾燥野菜片を固形具材として用いてなる液体調味料であって、甘味を有する糖類と、ゲル化能を有する増粘多糖類とを含有し、粘度が3000mPa・s以下であることを特徴とする野菜片入り液体調味料。
【請求項2】
前記糖類の総量が調味液総量の10重量%〜25重量%であり、前記増粘多糖類の総量が調味液総量の0.01重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の野菜片入り液体調味料。
【請求項3】
前記糖類が単糖及び二糖のうちの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の野菜片入り液体調味料。
【請求項4】
甘味を有する糖類と、ゲル化能を有する増粘多糖類とを含有させた液体に、固形具材である0.5mm以上の大きさの乾燥野菜片を接触させることにより、その乾燥野菜片の内部に前記液体を浸透させることを特徴とした乾燥野菜片の液体浸透方法。
【請求項5】
前記糖類の総量が液総量の10重量%〜25重量%であり、前記増粘多糖類の総量が液総量の0.01重量%以上であることを特徴とする請求項4に記載の乾燥野菜片の液体浸透方法。
【請求項6】
前記糖類が単糖及び二糖のうちの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項4または5に記載の乾燥野菜片の液体浸透方法。

【公開番号】特開2007−236213(P2007−236213A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−58950(P2006−58950)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(398065531)株式会社ミツカングループ本社 (157)
【出願人】(301058344)株式会社ミツカンナカノス (28)
【Fターム(参考)】