説明

金型、光学シート、バックライト・ユニット、及び表示装置

【課題】外観不具合の無い光学シート、その金型、バックライト・ユニット及び表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置に用いられ、入射した光を集光させたり拡散させたりする光学シート31において、少なくとも一方向に連続する第1の線状パターン33が平行に複数本並んだ第1の配列と、第1の配列の少なくとも一カ所に設けられ且つ第1の線状パターンとは深さ・形状・表面粗さの少なくとも1つが異なる第2のパターン32からなる第2の配列と、を備える。第2のパターン32からなる第2の配列によって、成型時、樹脂内に内包された泡が閉じ込められ、排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素単位での透過/非透過、あるいは透明状態/散乱状態に応じて表示画像が規定される画像表示素子が配置された液晶パネルを、背面側から照明する光学シート、その金型、バックライト・ユニット、ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT型液晶パネルやSTN型液晶パネル、IPS型液晶パネルを使用した液晶表示装置は、主としてOA分野のPC(パーソナルコンピュータ)やテレビジョン(以下、TV)用の液晶ディスプレイを中心に商品化されている。
このような液晶表示装置においては、液晶パネルの裏面側(観察者と反対側)に光源を配置し、この光源からの光で液晶パネルを裏面側から照明する方式、いわゆる、バックライト方式が採用されている。
【0003】
この種のバックライト方式に採用されているバックライト・ユニットとしては、大別して冷陰極管(CCFL、LED)等の光源ランプを、光透過性に優れたアクリル樹脂等からなる平板状の導光板内で多重反射させる「導光板ライトガイド方式」(いわゆる、エッジライト方式)と、導光板を用いない「直下型方式」とがある。
導光板ライトガイド方式のバックライト・ユニットが搭載された液晶表示装置としては、例えば、図8に示すものが一般に知られている。
【0004】
これは、上部に偏光板71,73に挟まれた液晶パネル72が設けられ、その下面側に、略長方形板状のPMMA(ポリメチルメタクリレート)やアクリル等の透明な基材からなる導光板79が設置されており、該導光板の上面(光射出側)に拡散フィルム(拡散層)78が設けられている。
さらに、この導光板79の下面に、導光板79に導入された光を効率よく上記液晶パネル72方向に均一となるように散乱して反射されるための散乱反射パターン部が印刷などによって設けられる(図示せず)と共に、散乱反射パターン部下方に反射フィルム(反射層)77が設けられている。
【0005】
また、前記導光板79には、側端部に光源ランプ76が取り付けられており、さらに、光源ランプ76の光を効率よく導光板79中に入射させるべく、光源ランプ76の背面側を覆うようにして高反射率のランプリフレクター81が設けられている。前記散乱反射パターン部は、白色である二酸化チタン(TiO2)粉末を透明な接着剤等の溶液に混合した混合物を、所定パターン、例えばドットパターンにて印刷し乾燥、形成したものであり、導光板79内に入射した光に指向性を付与し、光射出面側へと導くようになっており、高輝度化を図るための工夫である。
【0006】
さらに、最近では、光利用効率をアップして高輝度化を図るべく、図9に示すように、拡散フィルム78と液晶パネル72との間に、光集光機能を備えたプリズムフィルム(プリズム層)74,75を設けることが提案されている。このプリズムフィルム74,75は導光板79の光射出面から射出され、拡散フィルム78で拡散された光を、高効率で液晶パネル72の有効表示エリアに集光させるものである。
【0007】
しかしながら、図8に例示した装置では、視野角の制御は、拡散フィルム78の拡散性のみに委ねられており、その制御は難しく、ディスプレイの正面方向の中心部は明るく、周辺部に行くほど暗くなる特性は避けられない。そのため、液晶画面を横から見たときの輝度の低下が大きく、光の利用効率の低下を招いていた。
また、図9に例示したプリズムフィルムを用いる装置では、プリズムフィルムの枚数が2枚必要であるため、フィルムの吸収による光量の低下が大きいだけでなく、部材数の増加によりコストが上昇する原因にもなっていた。
【0008】
一方、直下型方式は、導光板の利用が困難な大型の液晶TVなどの表示装置が用いられている。
直下型方式の液晶表示装置としては、図10に例示する装置が一般的に知られている。これにおいては、上部に偏光板71、73に挟まれた液晶パネル72が設けられ、その下面側に、蛍光管等からなる光源51から光が射出され、拡散フィルム82のような光学シートで拡散された光を、高効率で液晶パネル72の有効表示エリアに集光させるものである。また、光源51からの光を効率よく照明光として利用するために、光源51の背面には、リフレクター52が配置されている。
【0009】
しかしながら、図10に例示する装置でも、視野角の制御は、拡散フィルム82の拡散性のみに委ねられており、その制御は難しく、ディスプレイの正面方向の中心部は明るく、周辺部に行くほど暗くなる特性は避けられない。そのため、液晶画面を横から見たときの輝度の低下が大きく、光の利用効率の低下を招いていた。さらに、プリズムフィルムを用いるものでは、プリズムフィルムの枚数が2枚必要であるため、フィルムの吸収による光量の低下が大きいだけでなく、部材数の増加によりコストが上昇する原因にもなっていた。
【0010】
また光源51間の間隔が広すぎると、画面上に輝度ムラが生じやすく、光源51の数を減らせず、消費電力の増加及びコストの増加を招く原因となっていた。
ところで、このような液晶表示装置では、軽量、低消費電力、高輝度、薄型であることが市場ニーズとして強く要請されており、それに伴い、液晶表示装置に搭載されるバックライト・ユニットも、軽量、低消費電力、高輝度であることが要求されている。
【0011】
特に、最近、目覚しい発展をみるカラー液晶表示装置においては、液晶パネルのパネル透過率がモノクロ対応の液晶パネルに比べ格段に低く、そのため、バックライト・ユニットの輝度向上を図ることが、装置自体の低消費電力を得るために必須となっている。
しかしながら、前述したように従来の装置では、高輝度、低消費電力の要請に充分に応えられているとは言いがたく、ユーザからは、低価格、高輝度、高表示品位で、かつ低消費電力の液晶表示装置を実現できるバックライト・ユニットの開発が待ち望まれている。また、液晶表示装置の大型化も進んでいる。
【0012】
このような中、光学シートの性能向上を目的として、従来使用されてきたプリズム、レンチキュラーレンズ、マイクロレンズ、多角錘の他にも下記特許文献1〜5に示すような様々な光学パターンの提案があり、今後も新たな形状が増えていくと考えられる。
これらの光学シートは金型の形状を押出成形、紫外線硬化樹脂をもちいた成形(UV成形)など金型を用い金型形状をシートに転写する方法で作成される。高度化するユーザの要望に答えるため、金型作製についても新しい試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−203776号公報
【特許文献2】特表2008−515026号公報
【特許文献3】特開2007−3571号公報
【特許文献4】特開2007−304565号公報
【特許文献5】特開2008−102497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
表示装置のバックライトに用いる光学シートは、光学性能によって表示装置の外観、すなわち商品価値に大きな影響を与える。光学性能はもちろんのこと、目に見える欠陥のない光学シートが要求される。一方、光学シート製造メーカーとしては、ユーザの要望に答えるため、これまでにない光学シートの製造方法を開発している。そのひとつとして、光学シートを押出成形、UV成形する際に、シートが搬送されていく流れ方向と略垂直方向に線状パターンの入った金型を用いる方法がある。この方法を選択する理由としては光学性能向上、大型化対応、コストダウンなど様々なものがある。しかしながら、シートが搬送されていく流れ方向と略垂直方向に線状パターンの入った金型を用いる場合、成形時に樹脂内に泡が内包されやすく、外観を損ねる要因となる。
【0015】
本発明は、成型時に樹脂内に泡が内包されることがなく、目に見える欠陥のない光学シート、その金型、バックライト・ユニット、表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の金型は、入射した光を集光させたり拡散させたりする光学シートのパターン成形に使用する金型であって、少なくとも一方向に連続する第1の線状パターンが平行に複数本並んだ第1の配列と、前記第1の配列の少なくとも一カ所に設けられ且つ前記第1の線状パターンとは深さ・形状・表面粗さの少なくとも1つが異なる第2のパターンからなる第2の配列と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、前記第2のパターンは、前記第1の線状パターンと平行でない線状パターン又は点状パターンを含むことを特徴とする。
また、本発明の光学シートは、表示装置に用いられ、入射した光を集光させたり拡散させたりする光学シートであって、少なくとも一方向に連続する第1の線状パターンが平行に複数本並んだ第1の配列と、前記第1の配列の少なくとも一カ所に設けられ且つ前記第1の線状パターンとは深さ・形状・表面粗さの少なくとも1つが異なる第2のパターンからなる第2の配列と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、前記第2のパターンは、前記第1の線状パターンと平行でない線状パターン又は点状パターンを含むことを特徴とする。
また、本発明のバックライト・ユニットは、表示画像を規定する画像表示素子の光入射側に配設されるバックライト・ユニットであって、光源と、前記光源から射出された光を入射して拡散させ、拡散光として射出する拡散板と、前記拡散板から射出された拡散光を入射する前記光学シートと、を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、表示画像を規定する画像表示素子の光入射側に配設されるバックライト・ユニットであって、光源と、前記光源から射出された光を入射して導光させ、射出する導光板と、前記導光板から射出される光を入射する前記光学シートと、を備えたことを特徴とする。
また、本発明の表示装置は、表示画像を規定する画像表示素子と、前記画像表示素子の光入射側に配設された前記バックライト・ユニットと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明を利用すれば、成形時に樹脂内に内包される泡をなくすことで、外観の良好な光学シートを得ることができる。成形時に樹脂内に内包される泡は、成形はじめの部分に空気が入ってしまい、一度入ってしまうと樹脂中に留まり排出されないために残留し続け、成形の精度を落とし、最終的には外観や性能に影響を及ぼす。泡が残留し続けるのは金型の線状パターンが成形の流れ方向と略垂直の場合に生じる。これを改善するためには、いったん成形を止め、空気が入らないように成形をはじめ、偶然うまくいったときを見計らって連続して成形する他ない。
【0021】
これに対し、本発明によれば、第1の線状パターンからなる第1の配列中に、深さ・形状・表面粗さの少なくとも1つが異なる第2のパターンからなる第2の配列が存在することで、第2の配列中に、成型時、樹脂内に内包した泡を閉じこめ、これを全て排出することができるため、成形を止めることなく、確実に泡のない外観良好な光学シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の光学シートを使用したバックライト・ユニットの一例の断面図である。
【図2】本発明の光学シートを使用したバックライト・ユニットの他の例の断面図である。
【図3】本発明の光学シートの成形方法の説明図である。
【図4】本発明の光学シートのパターン形状の説明図である。
【図5】本発明の光学シートの成型時搬送方向からみた金型の断面図である。
【図6】本発明の金型及び光学シートの外観説明図である。
【図7】成型時の樹脂内への泡の入り方と抜け方の説明図である。
【図8】従来の液晶表示装置の構成説明図である。
【図9】従来の液晶表示装置の構成説明図である。
【図10】従来の液晶表示装置の構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の光学シート、その金型、バックライト・ユニット、表示装置の実施形態について、図を参照して説明する。
図1、図2は本実施形態の光学シートを使用したバックライト構成例の断面を示している。以降、図1および図2の上側を上、下側を下と表現し、上側に相対している面を表面、下側に相対している面を裏面、と表現する。図1は前述したエッジライト型のバックライト構成例を示している。偏光板21に挟まれた液晶層19の下には反射型偏光分離シート2が配設され、その下には光学シート1が配設され、その下には拡散シート3が配設され、その下には導光板5が配設され、導光板5の両側に光源15が配設されている。光源15からの光Kは、導光板5に入射する。その後、導光板5の射出面から拡散シート3、光学シート1、反射型偏光分離シート2を透過する。最終的に射出光Lは反射型偏光分離シート2の射出面から射出される。射出光Lは偏光板21に挟まれた液晶層19に到達する。ここを透過した射出光Sは観察者に視認される。なお、構成例にあげたもののみではなく、適宜光学シートを増減しても良い。
【0024】
図2は直下型のバックライト構成例を示している。偏光板21に挟まれた液晶層19の下には光学シート1が配設され、その下には拡散板6が配設され、その下には複数の光源15が配設され、その下には反射板17が配設されている。光源15からの光Kは、拡散板6に入射する。その後、拡散板6の射出面から本実施形態の光学シート1へ到達し、最終的に射出光Lは光学シート1の射出面から射出される。射出光Lは偏光板21に挟まれた液晶層19に到達する。ここを透過した射出光Sは観察者に視認される。なお、構成例にあげたもののみではなく、適宜光学シートを増減しても良い。
【0025】
光学シート1の光学素子が配置された片面の反対面は、通常入射面としての機能が必要とされる。すなわち、単なる鏡面では光学シートの性能にほとんど寄与しない。入射面は略平面であればブラスト加工や研磨、ビーズの塗布、ヘアラインなどで粗面化されていても良い。または密着防止や帯電防止、隠蔽性向上のため、凹凸やドット、光学素子を具備するものでも良い。これらの形状は適宜組み合わせて使用しても良い。
【0026】
光学シート1の主となる材質としては、例えば、ポリカーボネートもしくはアクリル−スチレン共重合体もしくはポリスチレンもしくはスチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体もしくはシクロオレフィンポリマーを使用しても良い。また、主となる材質の中に分散された透明粒子を具備していてもよく、これら主となる材質の屈折率と透明粒子の屈折率が異なるものである。主となる材質の屈折率と透明粒子の屈折率の差は0.01以上であることが望ましい。屈折率の差がこれより小さいと十分な光散乱性能が得られない。また、その屈折率差は0.5以下で十分である。0.5より高いと予期せぬ迷光で光学シートの集光機能が低下するおそれがある。前記透明粒子の平均粒径は0.5〜30.0μmであることが望ましい。
【0027】
透明粒子としては、無機酸化物からなる透明粒子又は樹脂からなる透明粒子が使用できる。例えば、無機酸化物からなる透明粒子としてはシリカやアルミナ等からなる粒子を挙げることができる。また、樹脂からなる透明粒子としては、アクリル粒子、スチレン粒子、スチレンアクリル粒子及びその架橋体;メラミン−ホルマリン縮合物の粒子、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシ樹脂)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PVDF(ポリフルオロビニリデン)、及びETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)等の含フッ素ポリマー粒子、シリコーン樹脂粒子等を挙げることができる。これら透明粒子は、2種類以上を混合して使用してもよい。または、板状の部材は主となる材質中に空気を含む微細な空洞を有した構造をしており、主となる材質と空気の屈折率差で拡散性能を得ても良い。
【0028】
光学シート1の、特に基材31は単層構造でも複層構造でもよく、透明層や不透明層を含んでいても良い。
後述するUV硬化法で作成される場合、基材上にUV硬化性の樹脂を塗布し、所望の形状の金型を押し当て、UV照射し光学層を得る。基材としては、当該分野でよく知られたPET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、アクリル、ポリプロピレンのフィルムなどが使用できる。
【0029】
拡散板や導光板は光学シートと同様の主となる材質使用することができ、同様に前述した透明粒子を具備して構成されていてもよい。これら主となる材質の屈折率と透明粒子の屈折率が異なるものである必要がある。主となる材質の屈折率と透明粒子の屈折率の差は0.01以上であることが望ましい。屈折率の差がこれより小さいと十分な光散乱性能が得られない。また、その屈折率差は0.5以下でよい。また光学層に入射した光を散乱させながら透過させる必要があるため、前記透明粒子の平均粒径は0.5〜30.0μmであることが望ましい。または、主となる材質中に空気を含む微細な空洞を有した構造をしており、主となる材質と空気の屈折率差で拡散性能を得ても良い。また、表面に反射パターンや幾何学構造が付与されていても良い。
【0030】
本実施形態の光学シートとあわせて使用する光源側の光学シートは、当業界でよく知られた反射型偏光分離シート、拡散シート、プリズムシートなどを適宜使用する。
図3は光学シートの成形方法を示している。図3(a)は押出成形、(b)はUV成形を示しており、いずれも未硬化の樹脂に金型42を押し当てた後、樹脂を硬化する。図中の矢印は光学シート(樹脂)の搬送方向(流れ方向(を示している。また、図中の符号41は未硬化樹脂吐出部(ダイ)、符号43はUV露光装置、符号44は基材送り出し部、符号45は製品巻取り部である。後述する図6(a)は本実施形態の金型、ハードモールドの場合の例を示している。金型42も金属からなるハードモールド、樹脂シートからなるソフトモールドがある。金型は複数の中間版をとり段階を経て使用する場合がある。金型から直接複製する場合は元となる金型には光学シートの逆形状が、さらに複数の中間版を経由する場合には逆形状か同形状が元となる金型表面に形成される。本実施形態の指す金型は押出成形、UV成形のように未硬化の樹脂に押し当てて使用するもので、元となる金型、中間型いずれも含まれる。金型は平版でも作成は可能だが、円筒形状や、ソフトモールドであれば輪形状の方が連続成形に好ましい。金属金型表面の加工方法としては当業界でよく知られた彫刻、腐食が挙げられる。
【0031】
本実施形態の金型は成形の流れ方向と垂直に第1の線状パターンを有する。第1の線状パターンはプリズムやレンズ、これらを組み合わせた形状が適している。通常、光学シートに使用することを考慮すれば、第1の線状パターンは金型上の全ての表面においてなるべく均一である事が望ましい。しかし、このような金型は成形の際に泡が入ってしまい、効率的に光学シートを作成する事ができない。そこで本発明者は発想を転換し、金型にわざと不均一な部分をつくることで泡を排除する方法を見出した。ただし、不均一な部分が最終的な表示装置で見えてしまうと問題になるため、問題にならない範囲で不均一にする必要がある。不均一とは、深さ・形状・表面粗さの異なる第2のパターンが存在する箇所を設ける。このような部分は、マクロ的には目立つ線や、異なる質の面の境界線として認識される(以降、つなぎ目と呼ぶ)。成型時に入った泡は、成型の流れ方向に平行な白っぽい帯として視認される。一旦、泡が抜ければその後は安定して成形することが出来る。
【0032】
図4は本実施形態の金型の樹脂流れ方向から見た断面の拡大図を示す。図の下側が金型、上側が未硬化樹脂の入るスペースとなっている。(a)から(e)までの4つのつなぎ目の例を示している。各図は連続して並んだ第1の線状パターン4つ分の断面を示しており、分かりやすくするために左右2つずつの線状パターンで、深さ・形状・表面粗さの何れかで異なっており、中央部分がつなぎ目46となっている。即ち、この例の場合、例えば各図の左側2つの線状パターンを、本発明の第1の線状パターンが平行に複数本並んだ第1の配列とすると、各図の右側2つの線状パターンは、本発明の第2のパターンからなる第2の配列となる。これらを逆にとらえることもでき、各図の右側2つの線状パターンを、本発明の第1の線状パターンが平行に複数本並んだ第1の配列とすると、各図の左側2つの線状パターンは、本発明の第2のパターンからなる第2の配列となる。
【0033】
泡を除去するための方法の1つは、通常よりも体積の大きい線状パターンのつなぎ目46を作製し、この線状パターン中に泡を閉じ込め排出する方法がある。図4(a)から(c)が該当し、これらは連続する線状パターンの深さ、もしくは形状(傾き、幅)をつなぎ目46前後でわずかに変えることで、通常よりも体積の大きい線状パターンを中央部分にもうけている。最終的な表示装置で見えないようにするためには、図中のΔd(金型の頂点の最大高さ差)を5μm以内にする必要がある。
【0034】
この体積の大きい線状パターンが未硬化樹脂を取り入れる際に、泡を効率的に閉じ込め排出することが出来る。通常1回では排出し切れないが、2〜3回で完全に泡が排出できる。1つの金型中に2〜3箇所のつなぎ目46を作製してもよいし、1箇所のみ作製し、連続成形することでも同様の効果が発揮できる。
もう一つの方法として、金型に作製された形状の面を荒らす方法がある。この場合、面の荒れた部分が泡を保持し、系外に除去する。ただし面を荒らした部分は最終製品の特性を下げるため、金型全体を荒らすことは望ましくない。また、泡を除去する目的であれば線状パターン全体を荒らす必要はなく、引っかかりになる様な部分を1箇所以上設ければよく、特性の損失も少ない。図4(d)、(e)が該当し、引っかかり(切欠き)部分のサイズΔx、Δyは2μm以内でなければならない。こちらも通常1回では排出し切れな
いが、2〜3回で完全に泡が排出できる。1つの金型中に2〜3箇所のつなぎ目46を作製してもよいし、1箇所のみ作製し、連続成形することでも同様の硬化が発揮できる。
【0035】
金型には前述の第1の線状パターンとは別に、これと平行でない第2の線状パターンや、点状パターンがあっても良い。図5(a)(b)にそのような金型から作成した光学シートの例を示す。図5(a)のプリズム33、図5(b)の光学素子34がそれぞれ本発明の、第1の線状パターンに相当する。図5(a)のマイクロレンズ32は点状パターン、図5(b)のプリズム33が第2の線状パターンに相当する。
【0036】
本実施形態には前述した金型42から作成した光学シートも含まれる。本実施形態の光学シートは金型42の転写物であるため、つなぎ目も転写されている。図6(a)では、金型42につなぎ目46が存在する。本実施形態の範囲内でつなぎ目46が作製されていれば、光学シート1を注意深く観察した場合、図6(b)に示すようにその箇所が特定できる。ただし、この光学シート1を用いて作製した表示装置ではその箇所を見分ける事はできない。
【0037】
図7(a)は泡の入った光学シートを示している。成形時に入った泡は、成形の流れ方向に平行な白っぽい帯として視認される。図7(b)は本実施形態により中途から泡の抜けた光学シートを示している。一旦泡が抜ければその後は安定して成形することが出来る。
【実施例】
【0038】
(光学シートの製造方法1)
まず、様々な線状パターンに彫刻されている金型を準備した。詳細を下記表1に記載した。表中の文言は、前述の図4、図5を参照されたい。
前述した図3(a)のように、金型42を未硬化樹脂吐出部41に近接して配置した。その状態で熱可塑性ポリカーボネート樹脂シートを溶融し、押出し機により成形し、当該シートが冷却、硬化する前に前記金型42によって成形して、表面に形状を有する押出シートを得た。
熱可塑性ポリカーボネートは帝人化成株式会社のM1201(商品名)を使用した。厚みは320μmに調整した。
【0039】
(光学シートの製造方法2)
まず、様々な線状パターンに彫刻されている金型を準備した。詳細を下記表1に記載した。表中の文言は、前述の図4、図5を参照されたい。
前述した図3(b)のように、吐出したUV樹脂を金型42によって成形し、UV露光装置43で硬化した。基材は厚さ180μmの市販のPETフィルムを使用した。
【0040】
(光学シートの評価方法)
光学シートはまず泡がないことを目視確認し、つなぎ目が見えるかどうかも確認した。次に415mm×730mmの真四角に切り取り、市販の拡散板とともにTVに組み込み、つなぎ目が見えるかどうか確認した。
【0041】
【表1】

【0042】
比較例1から実施例3までは図4(a)の形状でΔdを変化させた。全てにおいて泡の入っていない光学
シートを作成することが出来た。また、つなぎ目は光学シートそのものをみると全て視認出来る。一方、TVに組み込み評価した場合、比較例1のみつなぎ目が視認され、外観NGであった。これは単純にΔdが大きすぎ、TVパネルを通しても目立つためと考えられる。
【0043】
比較例2から実施例5までは図4(d)の形状でΔx、Δyを変化させた。全てにおいて泡の入っていない光学シートを作成することが出来た。また、つなぎ目は光学シートそのものをみると全て視認出来る。一方、TVに組み込み評価した場合、比較例2のみつなぎ目が視認され、外観NGであった。これは単純にΔx、Δyが大きすぎ、TVパネルを通しても目立つためと考えられる。
【0044】
実施例6および7は図4(a)の形状でパターンを変化させた。第2の線状パターンや点状パターンを有していても、本発明の効果を発揮することが出来る。
【符号の説明】
【0045】
1・・・光学シート
2・・・反射型偏光分離シート
3・・・拡散シート
5・・・導光板
6・・・拡散板
10・・・保護フィルム
15・・・光源
17・・・反射板
19・・・液晶層
21・・・偏光板
31・・・光学シート
32・・・マイクロレンズ
33・・・プリズム
34・・・光学素子
35・・・光学シート裏面
41・・・未硬化樹脂吐出部(ダイ)
42・・・金型
43・・・UV露光装置
44・・・基材送り出し部
45・・・製品巻取り部
46・・・つなぎ目
47・・・泡の入った部分
K・・・光源からの光
L・・・光学部材からの射出光
S・・・液晶パネルからの射出光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光を集光させたり拡散させたりする光学シートのパターン成形に使用する金型であって、
少なくとも一方向に連続する第1の線状パターンが平行に複数本並んだ第1の配列と、
前記第1の配列の少なくとも一カ所に設けられ且つ前記第1の線状パターンとは深さ・形状・表面粗さの少なくとも1つが異なる第2のパターンからなる第2の配列と、
を備えたことを特徴とする金型。
【請求項2】
前記第2のパターンは、前記第1の線状パターンと平行でない線状パターン又は点状パターンを含むことを特徴とする請求項1に記載の金型。
【請求項3】
表示装置に用いられ、入射した光を集光させたり拡散させたりする光学シートであって、
少なくとも一方向に連続する第1の線状パターンが平行に複数本並んだ第1の配列と、
前記第1の配列の少なくとも一カ所に設けられ且つ前記第1の線状パターンとは深さ・形状・表面粗さの少なくとも1つが異なる第2のパターンからなる第2の配列と、
を備えたことを特徴とする光学シート。
【請求項4】
前記第2のパターンは、前記第1の線状パターンと平行でない線状パターン又は点状パターンを含むことを特徴とする請求項3に記載の光学シート。
【請求項5】
表示画像を規定する画像表示素子の光入射側に配設されるバックライト・ユニットであって、
光源と、
前記光源から射出された光を入射して拡散させ、拡散光として射出する拡散板と、
前記拡散板から射出された拡散光を入射する請求項3又は4に記載の光学シートと、
を備えたことを特徴とするバックライト・ユニット。
【請求項6】
表示画像を規定する画像表示素子の光入射側に配設されるバックライト・ユニットであって、
光源と、
前記光源から射出された光を入射して導光させ、射出する導光板と、
前記導光板から射出される光を入射する請求項3又は4に記載の光学シートと、
を備えたことを特徴とするバックライト・ユニット。
【請求項7】
表示画像を規定する画像表示素子と、
前記画像表示素子の光入射側に配設された請求項5又は6に記載のバックライト・ユニットと、
を備えたことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−88364(P2012−88364A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232399(P2010−232399)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】