説明

金型装置

【課題】
ホルダに対して、複数の金型が重ね合わされた状態で互いに隣接した金型の一方が摺動する際に、重ね合わせ方向の中央に位置する金型間の摺動抵抗を軽減できる金型装置を提供する。
【解決手段】
下金型装置100及び上金型装置200は、ホルダ10に保持された複数の第1金型12に対して複数の第2金型14が交互に重ね合わされて、プレス成形動作のために摺動自在にされている。複数の第2金型14のうち、重ね合わせ方向の中央の位置に位置する第2金型14を含めて、全ての第2金型14に対して、プレス成形動作のために摺動の動作を付与する上下可動ピン18に振動子22が設けられる。振動子22により上下可動ピン18を介して重ね合わせ方向の中央に位置する第2金型14を含めた全ての第2金型14に対し振動を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型装置において、図5(a)、(b)に示すようにホルダ10に対して固定された複数の第1金型12と複数の第2金型14とが交互に重ね合わされて配置され、第2金型14を第1金型12に対して、上下方向に摺動自在に設けられたものがある(以下、従来技術1という)。図6(a)に示すように前記ホルダ10の互いに180度反対側の両側面には、超音波振動する振動子16が設けられている。そして、図示しないワークをプレス成形するために、第2金型14を第1金型12に対して摺動させる際、前記振動子16の超音波振動により、前記第2金型14と第1金型12間の摺動抵抗を軽減するようにしている。又、図5(a)、(b)、及び図6(a)に示すように、例えば第2金型14と第1金型12とが平板となっている場合等のように、互いに相対する接触面積が大きいほど摺動抵抗が大きくなるが、前記超音波振動を付与すると、前記摺動抵抗を軽減できる利点がある。図6(b)は、振動付与前の第1金型12、及び第2金型14の重ね合わせ面付近の状態を示しており、同図に示すように第1金型12、第2金型14間にはクリアランスが形成されていない。
【0003】
そして、超音波付与振動が付与されたときには、重ね合わせ方向の非中央に位置する第1金型12、第2金型14の重ね合わせ面間には微細なクリアランス(図6(c)参照)が形成される。図6(c)において、ハッチング部分は形成されたクリアランスを示している。しかし、図6(c)に示すように重ね合わせ方向において中央に位置する第1金型12と第2金型14間には超音波が伝わらずに、クリアランスが形成されていない場合がある。
【0004】
又、特許文献1(以下、従来技術2という)では、ダイスの側部に対して超音波振動子を取付けし、前記ダイスに対して超音波振動を付与して、パンチとの協働により絞り又はしごき加工する振動プレス金型装置が開示されている。この構成により、絞り抵抗、しごき抵抗を抑制することができる。
【0005】
又、振動付与手段が設けられた金型装置は、特許文献2が公知である。特許文献2では、下型(金型)には水平振動を付与する水平振動装置が設けられている。又、上型(金型)には、上下振動を付与する上下振動装置が設けられている。特許文献2は、プレス加工時に、下型に対して前記水平振動装置により付与された水平振動と、上型に対して上下振動装置により付与された上下振動との合成振動を、工作物の加圧成型時に印加する(以下、従来技術3という)。
【0006】
又、特許文献3では、振動付与手段を備えた深ぼり加工装置が公知である。前記装置では、振動付与手段である振動子の振動がコーンを介してダイスに伝達され、前記ダイスとしわ押さえ間に配置した素板がポンチで深しぼり加工される(以下、従来技術4という)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−300423号公報
【特許文献2】特公昭51−2144号公報
【特許文献3】特開昭62−21427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来技術1においては、振動子16がホルダ10の側部に設けられているため、図6(a)に示すように、振動子16をホルダ10の互いに180度反対側に位置する両側面にそれぞれ振動子16を設けたとしても、複数の第2金型14のうち、特に、ホルダ10の中央に位置する第2金型14には振動が良好に付与できない問題がある。
【0009】
なお、従来技術2〜従来技術4は、単一の金型に対して振動を付与している構成であり、図5(a)に示すような複数の金型に対して良好に振動を付与する構成は開示されていない。すなわち、従来技術2〜従来技術4では、本願発明における複数の金型を重ね合わせて、互いに隣接する金型の一方が他方に対して摺動する際に、重ね合わせ方向の中央に位置する金型間の摺動抵抗を軽減できるための構成は提案されていない。
【0010】
本発明の目的は、ホルダに対して、複数の金型が重ね合わされた状態で互いに隣接した金型の一方が摺動する際に、重ね合わせ方向の中央に位置する金型間の摺動抵抗を軽減できる金型装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ホルダに保持された複数の第1金型に対して複数の第2金型が交互に重ね合わされて、プレス成形動作のために摺動自在に配置された金型装置において、前記複数の第2金型のうち、少なくとも前記重ね合わせ方向の中央に位置する第2金型に対して、前記プレス成形動作のために摺動の動作を付与する駆動部材に振動子を設け、前記振動子により、前記駆動部材を介して少なくとも前記重ね合わせ方向の中央に位置する第2金型に対して、振動を付与することを特徴とする金型装置を要旨としている。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1において、前記駆動部材は、前記複数の第2金型の各々に対して連結されて前記摺動の動作を付与するものであることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1おいて、前記複数の第2金型のうちで、前記重ね合わせ方向の中央に位置する第2金型に対して、前記摺動の動作を付与する駆動部材を第1駆動部材としたとき、第1駆動部材とは別に、非中央に位置する第2金型に対して、前記プレス成形動作のために摺動の動作を付与する第2駆動部材を設け、前記第1駆動部材に設けた前記振動子を第1振動子としたとき、前記ホルダに対して、前記非中央に位置する第2金型に対して振動を付与する第2振動子を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、ホルダに対して、複数の金型が重ね合わされた状態で互いに隣接した金型の一方が摺動する際に、重ね合わせ方向の中央に位置する第2金型と第1金型間の摺動抵抗を軽減できる。
【0014】
請求項2の発明によれば、駆動部材が、複数の第2金型の各々に対して連結されていることから、全部の第2金型において、第1金型との摺動抵抗を軽減できる。
請求項3の発明によれば、第2振動子が、ホルダに設けられている場合においても、重ね合わせ方向の中央に位置する第2金型と第1金型間の摺動抵抗を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態の下金型装置の断面図。
【図2】(a)、(b)は、各金型装置の作用の説明図。
【図3】(a)、(b)は、各金型装置の作用の説明図。
【図4】(a)、(b)は、各金型装置の作用の説明図。
【図5】(a)は従来の金型装置の斜視図、(b)は要部拡大断面図。
【図6】(a)は、従来の金型装置の平面図、(b)は超音波を印加する前の要部拡大図、(c)は超音波を印加したときの要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態の金型装置を図1〜4を参照して説明する。
本実施形態では、金型装置は、図1に示すように、下金型装置100及び上金型装置200にそれぞれ具体化して設けられている。両金型装置において、従来例で示す図5(a)、(b)と同一構成については同一符号を付す。
【0017】
まず、下金型装置100について説明する。
図1に示すように、下金型装置100のホルダ10は、ベース板110上に固定された基台112に固定されている。ホルダ10は、図5に示す従来例と同様に外形が四角筒状に形成されている。ホルダ10の形状は、四角筒状に限定するものではなく、第1金型12及び第2金型14を収納できる形状であればよい。例えば、四角筒状の代わりに外形横断面が円形、楕円形でもよく、筒状の代わりに有底箱状であってもよい。
【0018】
複数の第1金型12は、前記ホルダ10に対して固定されて、互いに所定間隔を隔てて平行に離間配置されている。本実施形態では、第1金型12は平板状に形成されているが、第1金型12の形状は限定するものではない。第1金型12の基台112側の基端部は、基台112に対して固定されている。第1金型12のプレス側の端部は、ホルダ10から上方に突出している。
【0019】
複数の第2金型14は、ホルダ10の内側面と第1金型12間のスペース、及び第1金型12間のスペース間に上下方向へ摺動自在にそれぞれ挿入されるとともに、第1金型12と重ね合わせて配置されている。又、各第2金型14の基端は、第1金型12と第2金型14との重ね合わせ方向に延びる駆動部材としての上下可動ピン18に連結、すなわち固定手段により固定されている。ここで、固定手段としては、限定するものではなく、例えば圧入固定したり、溶接、キー連結による固定、スプライン嵌合による連結固定等の手段、或いは接着剤による固定等を挙げることができる。
【0020】
前記上下可動ピン18は、図1では、1つのみ図示されているが、第2金型14の長さ方向(図1において、紙面に直交する方向)に応じて複数本平行に設けても良い。
上下可動ピン18は、各第1金型12及びホルダ10の重ね合わせ方向に位置する両側壁にそれぞれに設けられた貫通孔12a,10aに対して、上下動自在に貫通されている。上下可動ピン18の上下動により、第2金型14の先端(上端)は、第1金型12のプレス側の端面よりも高い位置と、低い位置に移動可能である。
【0021】
又、下金型装置100の上下可動ピン18は貫通孔12a,10aに対して、下動した際に、上下可動ピン18とともに一体に下動する第2金型14が基台112と干渉しないように、第2金型14の基端面は、基台112に対して離間して配置されている。
【0022】
又、下金型装置100の上下可動ピン18が貫通孔12a,10aに対して、下動した際に、第1金型12のプレス側の端部は、ホルダ10から上方に突出している。
上下可動ピン18の両端は、図1に示すようにホルダ10の両側壁から突出している。貫通孔12a,10aは、図1、図2(a)に示すように、第2金型14の高さが第1金型12の高さよりも高い状態と、図3(b)に示すように、第2金型14の高さが第1金型12の高さよりも低い状態とに遷移可能に、すなわち、上下可動ピン18を移動可能な大きさに設定されている。貫通孔12a,10aの形状は、長孔でもよく、或いは円形孔であってもよい。
【0023】
上下可動ピン18の前記両端には、それぞれ振動子22が固定されている。振動子22は、超音波振動子であって、例えば、電界を加えると固有の振動周波数で振動する圧電素子等からなる。なお、振動子22は圧電素子に限定するものではなく、他の振動子でもよい。振動子22は、振動子駆動回路24により、所望の周波数の超音波振動が得られる。この超音波振動により、全ての第2金型14は、隣接する第1金型12、及びホルダ10間には数マイクロメータ程度の微細なクリアランスが得られる。
【0024】
図1に示すように上下可動ピン18の両端は、スプリング32及び連結軸34を介してベース板110に対してそれぞれ連結されている。
プレス成形開始前では、図1、図2(a)に示すように、第2金型14の高さは、スプリング32により、上下可動ピン18を介して第1金型12の高さよりも高くされている。
【0025】
又、ベース板110上には、図1に示すように、スプリング42及び支持軸44を介してワーク教示部材50が支持されて、ホルダ10の高さよりも高く配置されている。ワーク教示部材50は、ホルダ10及び第1金型12、第2金型14の上方を開放するように、例えば枠状に形成されている。なお、ワーク教示部材50の形状は、限定するものではない。例えば、ワーク教示部材50の形状としては、円形枠、四角枠等を挙げることができる。又、ワーク教示部材50の形状は枠状に限定するものではなく、ワークWを安定して載置できる形状であればよい。
【0026】
上下可動ピン18の両端部には、図1に示すように、ピン作動部材19が固定されている。ピン作動部材19は、上方へ延出されてプレス成形開始前においては、ワーク教示部材50の下面から離間して下方に位置する。又、後述する上金型装置200が下方へ移動して、上金型装置200と下金型装置100のワーク教示部材50とが共にワークWを挟持した後、さらに下金型装置100のワーク教示部材50が下方へ移動した際に、ピン作動部材19は、ワーク教示部材50と当接可能である。
【0027】
次に、上金型装置200について説明する。
上金型装置200の基本構成は、下金型装置100と同じであるため、下金型装置100を構成する各部材に付した符号を、上金型装置200の同一構成に付して、詳細な説明を省略する。
【0028】
上金型装置200のホルダ10は、下金型装置100に対して対抗するように、すなわち、図1に示すように、上下反転するようにして配置されている。
具体的には、図1に示すように、下金型装置100の上方には、油圧機構等を備えるプレス装置(図示しない)に支持された吊り台210が配置されている。そして、上金型装置200のホルダ10は、前記吊り台210下面に固定された基台212に固定されている。上金型装置200の第1金型12及び第2金型14は、それぞれ下金型装置100の第1金型12及び第2金型14と対抗して配置されている。
【0029】
前記上金型装置200は、前記図示しないプレス装置により、吊り台210及び基台212を介して図2(a)の上死点と図3(b)の下死点間において、上下動可能である。
上金型装置200の第2金型14は、上金型装置200が上死点から下死点迄移動する間、上金型装置200のホルダ10、基台212、及び上金型装置200の第1金型12が一体に下動した際に、第2金型14が相対的に基台212側へ移動した際、基台212と干渉しないように、基台212に対して離間して配置されている。
【0030】
次に、上金型装置200の周辺に配置した部材は、下金型装置100の周辺に配置した部材と同等の機能を有するため、同一符号にAを付加して詳細な説明を省略する。
(実施形態の作用)
さて、上記のように構成された下金型装置100、及び上金型装置200の作用を図2〜図4を参照して説明する。
【0031】
図2(a)に示すように、上金型装置200が下金型装置100に対して上方に位置して離間した状態(上死点)で、金属製のワークWを下金型装置100のワーク教示部材50に載置する。この状態で、図2(b)に示すように、上金型装置200をプレス装置(図示しない)により、下方へ移動し、ワーク教示部材50Aと、ワーク教示部材50とによりワークWを挟み込む。
【0032】
この後、図3(a)に示すように、さらに上金型装置200をプレス装置(図示しない)により下方へ移動し、上金型装置200の第2金型14と、下金型装置100の第2金型14とにより、ワークWを挟み込む。図2(b)から、図3(a)の状態になるとき、下金型装置100のスプリング42及び上金型装置200のスプリング42Aの付勢力に抗して両スプリング42,42Aが圧縮される。
【0033】
又、図3(a)の状態になると同時に、上金型装置200のピン作動部材19Aと下金型装置100のピン作動部材19とはそれぞれワーク教示部材50Aと、ワーク教示部材50Aとに当接する。
【0034】
図3(a)の状態から、プレス装置(図示しない)により下死点まで上金型装置200を下方へ移動させる(図3(b)参照)。このとき同時に、振動子駆動回路24により、下金型装置100、及び上金型装置200の振動子22を超音波振動させる。このため、下金型装置100の振動子22及び上金型装置200の振動子22の超音波振動は、下金型装置100の全部の第2金型14及び上金型装置200の全部の第2金型14に付与される。すなわち、重ね合わせ方向の中央に位置する第2金型14を含めて全部の第2金型14に上下可動ピン18を介して振動子22の超音波振動が付与される。
【0035】
この超音波振動が付与された状態で、上金型装置200が下死点まで移動すると、下金型装置100及び上金型装置200の各第1金型12間に、ワークWが当接されて、ワークWは第1金型12によりプレス成形される。このとき、下金型装置100、及び上金型装置200の第1金型12と第2金型14とは、それぞれ相対的に摺動するが、全ての第2金型14には超音波振動が各上下可動ピン18を介して振動子22から付与されているため、摺動抵抗が抑制されて円滑に移動する。
【0036】
又、このとき、下金型装置100側のスプリング42は、ワーク教示部材50、支持軸44を介して圧縮されるとともに、下金型装置100側のスプリング32は、ワーク教示部材50、ピン作動部材19、上下可動ピン18、連結軸34を介して圧縮される。一方、上金型装置200の側のスプリング42Aは、ワーク教示部材50A、支持軸44Aを介して圧縮されるとともに、上金型装置200側のスプリング32Aは、ワーク教示部材50A、ピン作動部材19A、上下可動ピン18、連結軸34Aを介して圧縮される。
【0037】
次に、プレス装置(図示しない)により、図4(a)に示す位置まで、上金型装置200を上方へ移動するとともに、振動子22の超音波振動の付与を保持する。
この超音波振動が付与された状態で、図4(a)に示す位置まで移動する間、下金型装置100、及び上金型装置200の第1金型12と第2金型14とは、図3(a)から図3(b)の状態になるときとは、逆方向にそれぞれ相対的に摺動するが、全ての第2金型14には超音波振動が各上下可動ピン18を介して振動子22から付与されている。このため、第1金型12と第2金型14間の摺動抵抗が抑制されて円滑に第2金型14は移動する。
【0038】
なお、図4(a)に示す位置は、図3(a)で示す上金型装置200位置と同じである。この図4(a)に示す位置まで、図3(b)から図4(a)に示す位置まで上金型装置200が移動する間は、下金型装置100と上金型装置200の第2金型14同士が、ワークWを狭着保持した状態である。又、図3(b)から、図4(a)の状態に遷移する間、スプリング32,32A,42,42Aは、バネ力により伸張する。
【0039】
次に、図4(b)に示す上死点までプレス装置(図示しない)により、上金型装置200を上方へ移動するとともに、振動子駆動回路24による振動子22の超音波振動の付与を解除する。このとき、図4(a)から、図4(b)の状態に遷移する間、スプリング42,42Aは、バネ力により伸張する。
【0040】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 本実施形態の下金型装置100及び上金型装置200は、ホルダ10に保持された複数の第1金型12に対して複数の第2金型14が交互に重ね合わされて、プレス成形動作のために摺動自在に配置されている。前記複数の第2金型14のうち、重ね合わせ方向の中央の位置に位置する第2金型14を含めて、全ての第2金型14に対して、プレス成形動作のために摺動の動作を付与する上下可動ピン18(駆動部材)に振動子22が設けられている。そして、前記振動子22により、上下可動ピン18を介して重ね合わせ方向の中央に位置する第2金型14を含めた全ての第2金型14に対して、振動を付与する。
【0041】
この結果、本実施形態の下金型装置100及び上金型装置200は、ホルダ10に対して、複数の第1金型12,第2金型14が重ね合わされた状態で互いに隣接した金型の一方が摺動する際に、重ね合わせ方向の中央に位置する第2金型14と第1金型12間の摺動抵抗、及び非中央位置に位置する他の第2金型14と第1金型12間の摺動抵抗を同時に軽減できる。
【0042】
すなわち、本実施形態では、上下可動ピン18が、複数の第2金型14の各々に対して連結されていることから、全部の第2金型14において、第1金型12との摺動抵抗を軽減できる。
【0043】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 前記実施形態では、上下可動ピン18を全ての第2金型14に連結し、かつ、上下可動ピン18に振動子22を設けた。
【0044】
この代わりに、1又は複数の平行に配置した上下可動ピン18を重ね合わせ方向の中央に位置する第2金型14に連結し、この上下可動ピン18に振動子22を前記実施形態と同様に設けてもよい。なお、中央に位置するとは、ピンポイントに位置する意味だけではなく、例えば、重ね合わせ方向において、ホルダ10を3等分割した際に、真ん中の分割領域に位置することを含む趣旨である。
【0045】
そして、前記中央に位置する第2金型14以外の残りの第2金型14に対しては、貫通孔を設けて、該貫通孔に対して、振動子22の振動が付与されないように上下可動ピン18を遊貫させる。
【0046】
そして、この上下可動ピン18(以下、第1駆動部材としての第1可動ピンという)と平行に、さらに、上下可動ピン(以下、第2駆動部材としての第2可動ピンという)を設ける。この第2可動ピンは、前記中央に位置する第2金型14以外の残りの第2金型14に対して一体に連結する。又、第2可動ピンは、前記中央に位置する第2金型14に対しては、貫通孔を設けて遊貫させる。そして、従来と同様に図6(a)に示すように前記ホルダ10の互いに180度反対側の両側面に、超音波振動する振動子16を設ける。
【0047】
このように構成した場合、中央に位置する第2金型14に対しては、第1駆動部材としての第1可動ピンに設けられた振動子22により超音波振動を付与できる。又、中央に位置する第2金型14以外の残りの第2金型14に対しては、振動子16により超音波振動を付与できる。このようにしても、ホルダ10に対して、複数の金型が重ね合わされた状態で互いに隣接した金型の一方が摺動する際に、重ね合わせ方向の中央に位置する第2金型14と第1金型12間の摺動抵抗を軽減できる。
【0048】
・ 前記実施形態では、下金型装置100の第1金型12、上金型装置200の第1金型12のプレス面の形状は、特に限定はしていないが、ワークWに対して所望の形状にプレス成形できるものであればよい。
【符号の説明】
【0049】
10…ホルダ、12…第1金型、14…第2金型、
18…上下可動ピン(駆動部材)、22…振動子、
100…下金型装置、200…上金型装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダに保持された複数の第1金型に対して複数の第2金型が交互に重ね合わされて、プレス成形動作のために摺動自在に配置された金型装置において、
前記複数の第2金型のうち、少なくとも重ね合わせ方向の中央に位置する第2金型に対して、前記プレス成形動作のために摺動の動作を付与する駆動部材に振動子を設け、
前記振動子により、前記駆動部材を介して少なくとも前記重ね合わせ方向の中央に位置する第2金型に対して、振動を付与することを特徴とする金型装置。
【請求項2】
前記駆動部材は、前記複数の第2金型の各々に対して連結されて前記摺動の動作を付与するものであることを特徴とする請求項1に記載の金型装置。
【請求項3】
前記複数の第2金型のうちで、前記重ね合わせ方向の中央に位置する第2金型に対して、前記摺動の動作を付与する駆動部材を第1駆動部材としたとき、第1駆動部材とは別に、非中央に位置する第2金型に対して、前記プレス成形動作のために摺動の動作を付与する第2駆動部材を設け、
前記第1駆動部材に設けた前記振動子を第1振動子としたとき、前記ホルダに対して、前記非中央に位置する第2金型に対して振動を付与する第2振動子を設けたことを特徴とする請求項1に記載の金型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−6032(P2012−6032A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143041(P2010−143041)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)