説明

金属シートの搬送方法

【課題】一定枚数のシート体を搬送する時間を短縮させることができ、生産性が優れる金属シートの搬送方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、ブランキングプレス10で切断した金属シート2を、ランアウトコンベア20により搬送し、パイラーコンベア30の複数の電磁マグネットMが連続的に配設された磁着ベルト4に磁着させることにより引き渡し、その後、パイラーコンベア30により搬送し、積載部50の真上のパイリング位置3にて電磁マグネットMの磁力を失わせることにより落下させ、積載部50に順次積載させる金属シート2の搬送方法であって、ランアウトコンベア20及びパイラーコンベア30が間欠運動しており、隣合う前側の電磁マグネットM2と後側の電磁マグネットM1との境界に金属シート2が位置し、前側の電磁マグネットM2の磁力が失われた場合、該金属シート2の磁着可能な磁着面Rのうちの一部が後側の電磁マグネットM1に磁着されている金属シート2の搬送方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属シートの搬送方法に関し、更に詳しくは、一定枚数のシート体を搬送する時間を短縮させることができ、生産性が優れる金属シートの搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス加工の分野には、帯状のシート体を所望のサイズに切断し、それらを積み重ねて、いわゆるスタックとするブランキングラインと、複数台数のプレスで構成され、スタックからシートを1枚ずつプレスに供給し、所望の形状に順次プレス加工するタンデムプレスライン、又は、スタックからシートを1枚ずつ搬送し、所望の形状に順次プレス加工するトランスファプレスラインとがある。
【0003】
ところで、ブランキングプレスラインにおいては、前工程の機器から供給される磁性体からなるシート体を複数の電磁マグネットによりベルトに吸着させながら積層部まで順次搬送して、積層部上に落下させるマグネット吸着式コンベアが知られている(例えば、特許文献1参照)。
かかるマグネット吸着式コンベアにおいては、シート体の長さの情報、前工程の機器からシート体が搬入される位置に関する情報、少なくともコンベア上におけるシート体の搬送サイクルを示すコンベア送り長さ、及び、コンベア上におけるシート体の枚数を示すシート体枚数、を含む運転条件データ、に基づいて運転を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−179031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1記載のマグネット吸着式コンベアの制御では、複数の電磁マグネットの位置に対応させてシート体間の距離を決定するので、シート体間の距離が大きくなる欠点がある。そうすると、一定枚数のシート体を搬送するのに時間がかかるので、生産性が劣る。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、一定枚数のシート体を搬送する時間を短縮させることができ、生産性が優れる金属シートの搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、金属シートの磁着可能な磁着面のうちの一部が後側の電磁マグネットに磁着されていれば、磁着ベルトが金属シートを保持できることを見出し、敢えて、その状態を設けることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)ブランキングプレスで切断した金属シートを、ランアウトコンベアにより搬送し、パイラーコンベアの複数の電磁マグネットが連続的に配設された磁着ベルトに磁着させることにより引き渡し、その後、パイラーコンベアにより搬送し、積載部の真上のパイリング位置にて電磁マグネットの磁力を失わせることにより落下させ、積載部に順次積載させる金属シートの搬送方法であって、ランアウトコンベア及びパイラーコンベアが間欠運動しており、隣合う前側の電磁マグネットと後側の電磁マグネットとの境界に金属シートが位置し、前側の電磁マグネットの磁力を失わせた場合、該金属シートの磁着可能な磁着面のうちの一部が後側の電磁マグネットに磁着されている金属シートの搬送方法に存する。
【0009】
本発明は、(2)金属シートの磁着可能な磁着面のうちの70%以上が後側の電磁マグネットに磁着されている上記(1)記載の金属シートの搬送方法に存する。
【0010】
本発明は、(3)電磁マグネットが隣合う金属シートの両方を同時に磁着している上記(1)又は(2)に記載の金属シートの搬送方法に存する。
【0011】
本発明は、(4)金属シートの長さが電磁マグネットの1つの長さよりも大きい上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の金属シートの搬送方法に存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属シートの搬送方法においては、ランアウトコンベア及びパイラーコンベアを間欠運動させるので、パイラーコンベアを停止させた状態で金属シートを落下させることができる。このため、金属シートが放物線を描くように落下しエンドストッパーに激突するということが抑制される。
また、パイラーコンベアにおいて、金属シートの磁着可能な磁着面のうちの一部が後側の電磁マグネットに磁着されている場合、前側の電磁マグネットに磁着されているか否かに関わらず、磁着ベルトが金属シートを十分に保持するようにすることで、隣合う金属シート同士を近づけて配置させることが可能となる。これにより、一定枚数の金属シートを搬送する時間を短縮させることができる。
したがって、上記金属シートの搬送方法は、生産性が極めて優れるといえる。なお、金属シートの長さが電磁マグネットの1つの長さよりも大きい場合、より効果的である。
【0013】
本発明の金属シートの搬送方法においては、電磁マグネットが隣合う金属シートの両方を同時に磁着している場合、金属シートを十分に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施形態に係る金属シートの搬送方法が行われる搬送装置の一例を模式的に示す概略図である。
【図2】図2の(a)は、本実施形態に係る金属シートの搬送方法における磁着ベルトと、金属シートとの関係を説明するための模式的な側面図であり、(b)はその下面図である。
【図3】図3の(a)は、本実施形態に係る金属シートの搬送方法における積載部を示す側面図であり、(b)は、ストッパーの位置を説明するための積載部の概略下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る金属シートの搬送方法が行われる搬送装置の一例を模式的に示す概略図である。
図1に示すように、金属シートの搬送装置100は、ブランキングプレス10と、該ブランキングプレス10で切断された金属シート2を搬送するランアウトコンベア20と、金属シート2を磁着ベルト4に磁着させて搬送するパイラーコンベア30と、パイラーコンベア30のパイリング位置3で落下させた金属シート2をパレット5に順次積載させる積載部50と、を備える。
ここで、本発明において金属シート2は、磁性体からなる磁着ベルト4に磁着する性質を有するものである。また、金属シート2の形状は特に限定されない。
【0017】
本実施形態に係る金属シートの搬送方法は、上述した金属シート2の搬送装置100を用いて行われる。すなわち、ブランキングプレス10で切断した金属シート2をランアウトコンベア20により搬送し、磁着ベルト4に磁着させることにより引き渡し、その後、パイラーコンベア30により搬送し、積載部50の真上のパイリング位置3にて電磁マグネットの磁力を失わせることにより落下させ、積載部50に順次積載させる。
【0018】
以下、本実施形態に係る金属シートの搬送方法について更に詳細に説明する。
ブランキングプレス10は、固定された下刃12と、該下刃12に対応する形状の上刃11と、を備える。そして、上刃11が昇降移動することにより、帯状の金属1が順次切断される。
ブランキングプレス10の下刃12には、ランアウトコンベア20が隣接されており、ブランキングプレス10において切断された金属シート2が、押し出されてランアウトコンベア20の上に載せられるようになっている。
【0019】
ランアウトコンベア20は、両端の駆動軸と該駆動軸を介してエンドレス状になったベルトとを有し、ブランキングプレス10で切断された金属シート2をベルト上に載せて、パイラーコンベア30まで搬送するものである。
ここで、ランアウトコンベア20は、ブランキングプレス10による切断のタイミングに合わせて、間欠運動している。このため、切断された金属シート2が衝突したり、配置された隣合う金属シート2間の距離が長くなったり短くなったりすることを抑制できる。
【0020】
パイラーコンベア30は、ランアウトコンベア20の末端部20aの上方に、一部が重なるように配置されている。
パイラーコンベア30は、両端の駆動軸と該駆動軸を介してエンドレス状になった磁着ベルト4とを有し、ランアウトコンベア20から引き渡された金属シート2を磁着ベルト4の下に磁着させて搬送するものである。
ここで、パイラーコンベア30は、ランアウトコンベア20と同様に、間欠運動している。このため、パイラーコンベア30を停止させた状態で金属シート2を落下させることができる。これにより、金属シート2が放物線を描くように落下しエンドストッパーに激突するという事態が生じることを抑制できる。
【0021】
図2の(a)は、本実施形態に係る金属シートの搬送方法における磁着ベルトと、金属シートとの関係を説明するための模式的な側面図であり、(b)はその下面図である。
図2の(a)に示すように、パイラーコンベア30においては、磁着ベルト4が、複数の電磁マグネットMが連続的に配設された電磁部4aと、ベルト部4bとを備え、電磁部4aがベルト部4bを介して、金属シート2を磁着するようになっている。
そして、金属シートが磁着ベルト4に磁着されると、金属シート2とベルト部4bとが一体となって移動するようになっている。なお、電磁部4aは固定されている。
ここで、本発明においては、便宜的に、電磁マグネットMを、磁力を発揮している後側の電磁マグネットM1、及び、磁力が失われた前側の電磁マグネットM2、とする。
【0022】
図2に示す状態においては、後側の電磁マグネットM1に磁着された金属シート2aは、磁着ベルト4に保持される。一方、前側の電磁マグネットM2に到達した金属シート2cは、前側の電磁マグネットM2の磁力が働かないので落下することになる。なお、落下する位置が後述するパイリング位置3となる。
このとき、後側の電磁マグネットM1と、前側の電磁マグネットM2とに跨った金属シート2bは、金属シート2bの磁着可能な磁着面Rのうちの一部が後側の電磁マグネットM1に磁着されている場合、前側の電磁マグネットM2に磁着されていなくても磁着ベルト4が金属シート2bを保持するようになっている。なお、金属シート2bの磁着可能な磁着面Rのうちの70%以上が後側の電磁マグネットM1に磁着されていることが好ましい。なお、磁着面Rとは、図2の(b)に示すように、電磁マグネットMにより金属シートが磁着される面積、具体的には、金属シート2と電磁マグネットMとが重なり合う部分の面積を意味する。
【0023】
本実施形態に係る金属シートの搬送方法においては、磁着面Rのうちの一部が後側の電磁マグネットM1に磁着されている状態を敢えて設けることにより、電磁マグネットMの位置に関わらず、隣合う金属シート2同士を近づけて配置させることが可能となる。これにより、一定枚数の金属シートを搬送する時間を短縮させることができる。
【0024】
また、このとき、1つの電磁マグネットMが隣合う金属シート2a,2bの両方を同時に磁着していることが好ましい。このような状態とすることにより、一定枚数の金属シートを搬送する時間をより短縮させることができる。
【0025】
金属シートの搬送方法において、金属シート2の進行方向の長さは、電磁マグネットMの1つの進行方向の長さよりも大きいことが好ましい。この場合、本発明の効果をより発揮させることができる。
【0026】
図1に戻り、パイラーコンベア30の搬送方法においては、金属シート2を落下させるパイリング位置3が設定されている。そして、金属シート2がパイリング位置3に到達すると、上述したように、電磁マグネットの磁力が失われ、磁着していた金属シート2が落下することになる。なお、パイラーコンベアの前方には、金属シート2が意図しない方向に落下することを防止するため、エンドストッパー60が設けられている。
【0027】
パイリング位置3の真下には、落下する金属シート2をパレット5に順次積載させる積載部50が設けられている。
図3の(a)は、本実施形態に係る金属シートの搬送方法における積載部を示す側面図であり、(b)は、ストッパーの位置を説明するための積載部の概略下面図である。
図3の(a)及び(b)に示すように、積載部50は、リフタ52と、リフタ52上に載置されたパレット5と、金属シート2の進行方向の位置を調整するためのスライド可能なフロントストッパー55及びエンドストッパー60と、金属シート2の横方向の位置を調整するためのスライド可能なサイドストッパー56と、パレット5上に載置される金属シート2を検出するための光センサー57と、を備える。
【0028】
積載部50においては、リフタ52が上昇した状態から、金属シート2がパレット5上に順次積載される。そして、所定量金属シート2が積載されると、光センサー57が最上の金属シート2を感知し、リフタ52が所定のピッチだけ下降するようになっている。このとき、金属シート2は、落下距離が少なくなるので、落下による衝撃が小さくなる。
また、リフタ52が下降した時、フロントストッパー55とエンドストッパー60とサイドストッパー56とが開閉動作し、金属シート2の位置がずれた場合であっても、金属シート2の端面位置を整列させることができる。
【0029】
本実施形態に係る金属シートの搬送方法によれば、隣合う金属シート間の距離を小さくすることで、一定枚数のシート体を搬送する時間を短縮させることができる。よって、生産性が極めて優れるものとなる。
【0030】
次に、本実施形態に係る金属シートの搬送方法における制御方法について説明する。
ランアウトコンベア20と、パイラーコンベア30とは、コイルフィーダに同調させることにより制御される。すなわち、コイルフィーダのフィード動作開始に対して先行起動し、フィード動作停止と同時に停止する。
このようにして、ランアウトコンベア20と、パイラーコンベア30とは、ピッチ送り運動(間欠運動)するようになっている。ランアウトコンベア20と、パイラーコンベア30とを先行起動させることにより、ランアウトコンベア20と、パイラーコンベア30とのピッチ送り運動での隣合う金属シート2間の距離が担保される。なお、隣合う金属シート間の距離を狭めるためには、先行起動時間を短くすればよい。
【0031】
ここで、最適な金属シート2間の距離は、金属シートの長さ、ブランキングプレス10からパイリング位置までの距離、ブランキングプレス10における切断の速度等の段取りデータに基づいて算出される。
【0032】
これらの制御は、CPUと、入出力インターフェースと、記録手段であるRAM及びROMと、外部コンピュータ等に対する通信手段と、ハードディスク等の内部記録部と、所定の外部記録媒体を用いるためのドライバとを有する制御手段によって行われる。
【0033】
上記制御方法においては、ブランキングプレスプレス10で切断された金属シート2が、ランアウトコンベア20と、パイラーコンベア30とのピッチ送り運転でパイリング位置3まで搬送され、ランアウトコンベア20と、パイラーコンベア30とが停止したときに、パイリング位置3の電磁マグネットMをOFF(磁力を失わせる)にすることでパレット5上に垂直落下するようになる。
【0034】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0035】
例えば、本実施形態に係る金属シートの搬送方法において、パイラーコンベア30の大きさは、特に限定されない。
また、パイラーコンベア30には、1箇所のパイリング位置3が設けられているが、2箇所以上設けられていてもよい。なお、パイリング位置の数に応じて積載部も複数有することになる。この場合、積載の段取り替えが容易となる。
さらに、積載部50には、パレット5と、リフタ52が用いられているが、これに限定されず、台車や輸送車両の荷台であってもよい。
【0036】
本発明において、電磁マグネットMを、磁力を発揮している後側の電磁マグネットM1、及び、磁力が失われた前側の電磁マグネットM2、としているが、電磁マグネットMは、磁力のON/OFFを切り替えることが可能となっている。すなわち、磁力をONにすることにより磁力を発揮している電磁マグネットM1として働き、磁力をOFFにすることにより磁力が失われた電磁マグネットM1として働く。
【符号の説明】
【0037】
1・・・帯状の金属
2,2a,2b,2c・・・金属シート
3・・・パイリング位置
4・・・磁着ベルト
4a・・・電磁部
4b・・・ベルト部
5・・・パレット
10・・・ブランキングプレス
11・・・上刃
12・・・下刃
20・・・ランアウトコンベア
20a・・・末端部
30・・・パイラーコンベア
50・・・積載部
52・・・リフタ
55・・・フロントストッパー
56・・・サイドストッパー
57・・・光センサー
60・・・エンドストッパー
100・・・金属シートの搬送装置
M・・・電磁マグネット
M1・・・後側の電磁マグネット(電磁マグネット)
M2・・・前側の電磁マグネット(電磁マグネット)
R・・・磁着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランキングプレスで切断した金属シートを、ランアウトコンベアにより搬送し、パイラーコンベアの複数の電磁マグネットが連続的に配設された磁着ベルトに磁着させることにより引き渡し、その後、前記パイラーコンベアにより搬送し、積載部の真上のパイリング位置にて前記電磁マグネットの磁力を失わせることにより落下させ、前記積載部に順次積載させる金属シートの搬送方法であって、
前記ランアウトコンベア及び前記パイラーコンベアが間欠運動しており、
隣合う前側の電磁マグネットと後側の電磁マグネットとの境界に前記金属シートが位置し、前側の電磁マグネットの磁力を失わせた場合、該金属シートの磁着可能な磁着面のうちの一部が前記後側の電磁マグネットに磁着されている金属シートの搬送方法。
【請求項2】
前記金属シートの磁着可能な磁着面のうちの70%以上が前記後側の電磁マグネットに磁着されている請求項1記載の金属シートの搬送方法。
【請求項3】
前記電磁マグネットが隣合う前記金属シートの両方を同時に磁着している請求項1又は2に記載の金属シートの搬送方法。
【請求項4】
前記金属シートの長さが前記電磁マグネットの1つの長さよりも大きい請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属シートの搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−56748(P2012−56748A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203767(P2010−203767)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000238946)株式会社エイチアンドエフ (57)
【Fターム(参考)】