説明

金属板の成形法

【課題】 穴あけ加工によって形成された穴の内周面において、金属とガラスライクコーティングとの境が目立たないようにプレス成形する金属板の成形法を提供する。
【解決手段】 上面側には予めガラスライクコーティング11が施された金属板を用意し、この金属板を金型装置20にセットしてフォーミングとピアス(穴あけ)加工を行って中間品を作り、この中間品を払い出して金型装置30にセットし、前記穴9の内周面9aが下を向くように曲げ加工してスカート部10を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板に打ち抜きによって穴をあけるとともに所定形状にプレス成形する成形法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板の表面にコーティングを施して、金属板表面の傷つきを防止したり、平滑性と意匠性を高めることが従来から行われている。
【0003】
特許文献1には、深絞り加工用のプレコート鋼板に加工前に塗布する下塗り用の塗料組成物として、所定のガラス転移温度と所定の分子量のポリエステル系樹脂およびエポキシ変性ポリエステル系樹脂と、アミノ樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物およびエポキシ樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の硬化剤を含む塗布液が開示されている。
【0004】
特許文献2には、深絞り加工用のプレコート鋼板に加工前に塗布する最表層の塗膜として、ガラス転移温度が5〜30℃、23℃での硬度が5mN荷重下でのユニバーサル硬度で2.5N/mm以上、23℃での破断伸び率が100%以上、最表層の塗膜の鏡面光沢度が入射角及び受光角がそれぞれ60°の条件で測定したときに60%以上のものが提案されている。
【0005】
特許文献3には、金属表面にガラス質層を形成する方法として、加水分解され得るシラン化合物或いはそれから誘導されるオリゴマーと、オルガノシラン或いはそれから誘導されるオリゴマーとを所定割合で混合した組成物と、顔料や着色性金属イオンとの混合物を金属板表面に塗布し、形成されたコーティング層を熱により高密度化して、ガラス質の層(ガラスライクコーティング)を形成することが開示されている。
【0006】
特許文献4には、金属表面にガラス質層を形成する方法として、加水分解され得るシラン化合物或いはそれから誘導されるオリゴマーと、オルガノシラン或いはそれから誘導されるオリゴマーとを所定割合で混合した組成物と、ガラスまたはセラミック形成性元素を含む1種以上の化合物の加水分解および重縮合により得られる組成物との混合物を金属板表面に塗布し、形成されたコーティング層を熱により高密度化して、ガラス質の層(ガラスライクコーティング)を形成することが開示されている。
【0007】
特許文献5には、金属表面にガラス質層を作製する方法であって、加水分解され得るシラン化合物或いはそれから誘導されるオリゴマーと、ナノスケールSiO粒子、アルカリおよびアルカリ土類金属の酸化物および水酸化物の少なくとも1種の化合物の加水分解および重縮合により得られる組成物とを混合したコーティング組成物を金属表面上に塗布し、得られたコーティング層を熱により高密度化してガラス質層を形成することが開示されている。
【0008】
非特許文献1には、SiOやAlなどのナノ粒子を有機無機コンポジットマトリックスに分散したゾルを、金属表面に塗布し、これを高温でキュアリングしてガラス化させることが開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2005−082623号公報
【特許文献2】特開2007−044922号公報
【特許文献3】特表平9−504768号公報
【特許文献4】特表平10−500072号公報
【特許文献5】特表2001−518979号公報
【非特許文献1】工業材料 2002年5月号 p105〜p109
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した特許文献1,2に開示されるコーティング膜は樹脂を主体としたものであるので、金属板にコーティング膜を形成した後に、深絞り成形しても問題はないが、温度が高くなる環境では使用できず、また頻繁に掃除などによって表面が擦られる場合には、樹脂表面層は簡単に傷ついてしまう。
【0011】
特許文献3〜5及び非特許文献1に記載されるガラス層は、このガラス層が形成される基板(金属板)の形状に追従性が高く、ガラス層を金属板の表面に形成した後に当該金属板を曲げ成形しても、クラックなどが従来に比べ生じにくい。
【0012】
しかしながら、切断などによって新たな端面が露出する場合には、この端面に
はガラス層が形成されていない。その結果、端面において、ガラス層と基板との境目を起点として、ガラス層に剥離が生じやすい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明に係る金属板の穴あけプレス成形法は、平板状金属板の一面側に、プレス成形の際にクラックが入りにくいガラスライクコーティングを施し、次いでガラスライクコーティングが施された金属板に打ち抜き加工によって穴を形成し、この後、前記穴の周囲をプレス加工によってガラスライクコーティングが施された面が外側面となるとともに打ち抜き加工によって露出した穴の内周面が下を向くように曲げ加工するようにした。
【0014】
前記プレス成形の際にクラックが入りにくいガラスライクコーティングは、特許文献3〜5に開示される材料、例えば加水分解され得るシラン化合物或いはそれから誘導されるオリゴマーと、オルガノシラン或いはそれから誘導されるオリゴマーとを所定割合で混合し、これにガラスまたはセラミック形成性元素を含む1種以上の化合物の加水分解および重縮合により得られる組成物を混合物して得られるコーティング組成物を金属板表面に塗布し、形成されたコーティング層を熱により高密度化して、ガラス質の層(ガラスライクコーティング)を得る。このガラスライクコーティングは金属板をプレス成形してもクラックや剥離が生じにくい。
【発明の効果】
【0015】
従来において、表面にガラス層が形成された金属製品を得るには、先ず金属板を所定形状に成形して、複雑な形状となった中間品の表面にガラスコートを施さなければならなかったが、本発明によれば、ガラスライクコーティングが形成された金属板に打ち抜きやプレス加工を施すようにしたので、予めガラスライクコーティングが形成された金属板を用意しておけば、表面にガラスライクコーティングが施された任意の形状の製品を、簡単に製造することができる。
【0016】
また、曲げ成形に耐え得るガラスライクコーティングを金属板に形成しておけば、後から曲げ成形してもクラックは入りにくい。しかしながら、ガラスライクコーティングが施された金属板に打ち抜き加工を行うと、打ち抜きによって形成された穴の内周面には金属の部分が露出することになり、この金属とガラスライクコーティングとの境界部が起点となって欠けが生じやすい。しかしながら、本発明のように、打ち抜き加工によって露出した穴の内周面が下を向くように曲げ加工すれば、仮に欠けが生じても目立つことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る成形法によって製造された天板を適用したガスコンロを示す図、図2は天板の成形工程を説明した図、図3は打ち抜き装置の側面図、図4はプレス成形装置の側面図、図5は成形後の製品の要部拡大図である。
【0018】
ガスコンロは天板1の上面に五徳2を設け、天板1の下側にケーシング3を取り付けている。そして、ケーシング3内に汁受け皿4を設け、この汁受け皿4の外側に内炎式のバーナ5を配置し、汁受け皿4に形成した開口6を貫通して温度検出装置7が上方に伸びている。
【0019】
前記天板1には五徳2の位置決めを行うと共に噴きこぼれの侵入を防ぐための盛上り部8が形成され、この盛上り部8の中央にバーナ5が臨む穴9を画成するスカート部10が垂下している。また、天板1の上面側には予めガラスライクコーティング11が施されている。
【0020】
前記天板1を成形する手順を以下に説明する。先ず。図2(a)に示すように天板1となる平板状の金属板を用意する。この金属板の上面側には予めガラスライクコーティング11が施されている。
【0021】
次いで、上記の金属板を図3に示す金型装置20にセットする。金型装置20は上型21、下型22及びパンチ23を備え、金属板に対しフォーミングとピアス(穴あけ)加工を行って、図2(b)に示す中間品を作る。中間品には盛り上がり部8と開口9が形成されている。
【0022】
この後、金型装置20から中間品を払い出して図4に示す金型装置30にセットする。金型装置30は上型31、下型32及びパンチ33を備え、中間品の穴9の内周部にバーリング加工によってスカート部10を一体的に成形する。このバーリング加工によって、図5に示すように前記穴9の内周面9aが下を向くように曲げ加工される。
【0023】
以上は実施の一例を示したものであり、本発明は外炎式のガスコンロにも適用され、また天板以外の金属板、例えば汁受け皿4に本願発明を適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る成形法はガスコンロの天板の成形に限らず、従来成形後にガラス層を形成していた製品の成形に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る成形法によって製造された天板を適用したガスコンロを示す図
【図2】天板の成形工程を説明した図
【図3】打ち抜き装置の側面図
【図4】プレス成形装置の側面図
【図5】成形後の製品の要部拡大図
【符号の説明】
【0026】
1…天板、2…五徳、3…ケーシング、4…汁受け皿、5…バーナ、6…開口、7…温度検出装置、8…盛上り部、9…バーナが臨む穴、9a…穴の内周面、10…スカート部、11…ガラスライクコーティング、20,30…金型装置、21,31…上型、22,32…下型、23,33…パンチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状金属板の一面側に、プレス成形の際にクラックが入りにくいガラスライクコーティングを施し、次いでガラスライクコーティングが施された金属板に打ち抜き加工によって穴を形成し、この後、前記穴の周囲を曲げ加工またはプレス加工によってガラスライクコーティングが施された面が外側面となるとともに打ち抜き加工によって露出した穴の内周面が下を向くように曲げ加工することを特徴とする金属板の成形法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属板の成形法において、前記平板状金属板はガスコンロの天板であり、前記穴はバーナが臨む穴であることを特徴とする金属板の成形法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−264794(P2008−264794A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107203(P2007−107203)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(593001565)ワールドウイング株式会社 (6)
【出願人】(501448211)株式会社ジャステックス (4)