説明

金属溶湯中の水素濃度測定方法および装置

【課題】迅速かつ簡易に金属溶湯中の水素濃度を把握できる測定方法および装置を提供する。
【解決手段】溶湯Mの採取容器1を納める蓋付き密閉容器2と、真空ポンプ5により減圧される減圧容器3とを連通路4により接続し、採取容器1を密閉容器2内に入れた後、連通路4内の開閉弁8Aを開いて、密閉容器2内を急速減圧する。すると、採取容器1内の溶湯Mから水素ガスの放出が起こり、これに伴って溶湯Mの表面から溶湯飛沫M´が上方へ飛散する。密閉容器2の開閉蓋2aの裏面には圧力センサ11が配置されており、圧力センサ11は、溶湯飛沫M´の衝突に感応して信号を出力し、その出力信号から溶湯飛沫M´の飛散量が分る。したがって、事前に良質な溶湯について溶湯飛沫の発生量を把握して適当にしきい値を設定することで、測定対象の溶湯Mからの溶湯飛沫M´の発生量がしきい値よりも低い場合に、溶湯中の水素濃度が合格水準にあると特定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属溶湯中の水素濃度を把握するための水素濃度測定方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車部品のアルミ化が進む中、アルミニウムまたはアルミニウム合金の鋳造品の使用も拡大している。ところで、鋳造欠陥の一つに、凝固時の水素ガスの放出に起因する巣の発生があり、特にアルミ系鋳造品においては、この巣の発生が不良品発生の大きな原因になっている。このため、従来一般には、溶解炉または保持炉内の溶湯からサンプルを採取して、密閉容器内で減圧しながら凝固させ、凝固後、サンプルを切断して、断面内の巣を限度見本と見比べて、溶湯中の水素濃度を定性的に評価していた。しかし、このような評価方法では、密閉容器内で凝固させてからサンプルを切断するまで結果が分らないため、生産ラインに待ちが生じ、その分、生産性が低下するという問題があった。また、限度見本との比較のため、その比較に熟練度を要し、場合によっては評価に誤りが生じて、大きな損害をもたらす虞もあった。
【0003】
なお、従来より、溶湯中に測定ヘッド(プローブ)を浸漬して、直接溶湯中の水素濃度を測定する装置が知られており(例えば、特許文献1、2参照)、これら測定装置を用いることで、上記した問題発生を解消することが可能になる。しかしながら、これら測定装置は、取扱いが面倒である上、高価なプローブが消耗品となり、操作性並びにコスト面で問題が多い。
【0004】
【特許文献1】特開平2−17441号公報
【特許文献2】特開昭59−12348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、迅速かつ簡易に金属溶湯中の水素濃度を把握できる測定方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る溶湯中の水素濃度の測定方法および装置は、採取容器に採取した溶湯から減圧下で水素ガスを放出させ、このとき生じる溶湯飛沫の発生量から溶湯中の水素濃度を特定することを特徴とする。溶湯中の水素濃度と水素ガス放出に伴う溶湯飛沫の発生量との間には相関があるので、溶湯飛沫の発生量を測定することで溶湯中の水素濃度を特定できる。
以下に、本発明の態様をいくつか例示し、それらについて項分けして説明する。
【0007】
(1)溶湯を採取した採取容器を密閉容器に入れて減圧することにより、溶湯から水素ガスを放出させ、この水素ガス放出に伴って生じる溶湯飛沫の発生量を経時的に測定して、その測定結果に基づいて水素濃度を特定することを特徴とする金属溶湯中の水素濃度測定方法。
【0008】
本(1)項に記載の水素濃度測定方法においては、溶湯を採取した採取容器を密閉容器に入れて減圧するだけなので、面倒な操作を行うことなく溶湯中の水素濃度を迅速に把握することができる。また、高価な部品を消耗することもないので、測定に要するコスト負担もわずかとなる。
【0009】
本(1)項に記載の水素濃度測定方法において、水素濃度を特定する方法は任意であり、例えば、事前に巣の発生状況が規定内にある良質な溶湯について本方法と同様の処理を行って、溶湯飛沫の発生量を把握し、適当なしきい値を設定して、測定対象の溶湯についての溶湯飛沫の発生量が該しきい値より低い場合に、溶湯中の水素濃度が合格水準にあると特定してもよい。あるいは、事前に水素濃度が既知の溶湯について本方法と同様の処理を行って、溶湯飛沫の発生量を把握し、この溶湯飛沫の発生量と実際の水素濃度との相関を求めて、測定対象の溶湯についての溶湯飛沫の発生量を前記相関に照合して溶湯中の水素濃度を特定してもよい。
【0010】
(2)溶湯飛沫の発生量を、該飛沫の衝突に感応する圧力センサの出力信号に基づいて決定することを特徴とする上記(1)項に記載の金属溶湯中の水素濃度測定方法。
【0011】
本(2)項に記載の水素濃度測定方法において、圧力センサの種類は、圧力に感応するものであれば任意であり、圧力を受けて電荷を発生する圧電素子からなるものであっても、圧力を受けて静電容量が変化する平板コンデンサからなるものであっても、あるいは圧力を受けて抵抗値が変化する導電体からなるものであってもよい。何れの圧力センサを用いる場合でも、これを溶湯飛沫の飛散範囲に配置することで、該圧力センサが溶湯飛沫の衝突に感応する。したがって、該圧力センサの出力信号の変化を解析することで、溶湯飛沫の発生量を定量的に求めることができる。この場合、圧力センサを溶湯飛沫から保護するため、その表面に予め耐熱性を有するフィルムまたはシートを接合するのが望ましい。
【0012】
(3)溶湯飛沫の発生量を、該飛沫の接近に感応する渦電流センサの出力信号基づいて決定することを特徴とする上記(1)項に記載の金属溶湯中の水素濃度測定方法。
【0013】
渦電流センサは、対象物に渦電流を発生させて磁界変化から対象物の位置を測定する機能を有しており、これを溶湯飛沫の飛散する領域の上方に配置することで、溶湯飛沫の飛散量(発生量)に応じて出力信号が変化する。したがって、該渦電流センサの出力信号の変化を解析することで溶湯飛沫の発生量を定量的に求めることができる。この場合。溶湯飛沫と非接触でその発生量を求めることができるので、特別の保護は不要となる。
【0014】
(4)溶湯飛沫の発生量を、撮像手段による画像に基づいて決定することを特徴とする上記(1)項に記載の金属溶湯中の水素濃度測定方法。
【0015】
溶湯飛沫の飛散領域を撮像手段により撮像することにより、溶湯飛沫の発生状況を画像上で確認することできる。したがって、例えば、撮像した画像をデータ解析して溶湯飛沫の数、面積率等を求めることで、溶湯飛沫の発生量を定量的に求めることができる。この場合、撮像手段としては、データ解析に有利なCCDカメラを用いるのが望ましい。
【0016】
(5)採取容器に採取した溶湯の重量を測定し、溶湯飛沫の発生量の測定結果を前記重量で平準化して水素濃度を特定することを特徴とする上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載の金属溶湯中の水素濃度測定方法。
【0017】
採取容器への溶湯の汲取り量にはバラツキがあるので、(5)項に記載のように採取容器に採取した溶湯の重量を測定して、溶湯飛沫の発生量の測定結果を前記重量で平準化することにより、測定精度を向上させることができる。
【0018】
(6)溶湯を採取した採取容器を納める蓋付き密閉容器と、該密閉容器と連通路により接続された減圧容器と、該減圧容器内を真空引きする真空引き手段と、前記連通路を連通・遮断する開閉弁と、前記密閉容器に納めた採取容器内の溶湯表面からの溶湯飛沫の発生量を検出する検出手段と、該検出手段の出力信号に基づいて溶湯中の水素濃度を特定する信号処理手段とを備えていることを特徴とする金属溶湯中の水素濃度測定装置。
【0019】
本(6)項に記載の水素濃度測定装置においては、密閉容器と減圧容器とを連通路により接続しているので、密閉容器に溶湯を採取した採取容器を納めて蓋をした後、該連通路の開閉弁を開くと、密閉容器内が急速に減圧される。これにより凝固直前の水素ガスの放出が促進され、溶湯飛沫の発生も活発となって、測定結果に有意差が生じ易くなる。また、密閉容器内の圧力は、密閉容器の容積と減圧容器の容積とに依存するので、減圧容器内の圧力を適当に設定することにより密閉容器内の減圧条件を常に一定にすることができ、水素濃度測定に対する信頼性が向上する。
【0020】
(7)密閉容器内に、採取容器内の溶湯の重量を計測する重量計を配設したことを特徴とする上記(6)項に記載の金属溶湯中の水素濃度測定装置。
【0021】
本(7)項に記載のように採取容器に採取した溶湯の重量を計測する重量計を設けた場合は、溶湯飛沫の発生量の測定結果を前記重量で平準化して、測定精度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る溶湯中の水素濃度測定方法によれば、面倒な操作を行うことなく溶湯中の水素濃度を迅速に把握することができ、しかも、測定に要するコスト負担もわずかとなり、その利用価値は大なるものがある。
【0023】
また、本発明に係る溶湯中の水素濃度測定装置によれば、常に同じ条件で測定を行うことができるので、測定精度に対する信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態としての溶湯中の水素濃度測定装置を示したものである。同図中、1は、溶湯Mを採取するための採取容器、2は、採取容器1を納める密閉容器、3は、密閉容器と連通路4により接続された減圧容器、5は、前記連通路4の途中に配管6により接続された真空ポンプ(真空引き手段)である。前記連通路5の途中には、一端が大気に開放された配管7が接続されており、この配管7と前記真空ポンプ5に接続する配管6とは、連通路5の一箇所で合流している。また、連通路4には、前記配管6、7の合流部を挟んで2つの開閉弁8A、8Bが配設されると共に、各配管6、7にも開閉弁8C、8Dが配設されている。なお、以下では、説明の便宜のため、密閉容器2側の開閉弁8Aを第1の開閉弁、減圧容器3側の開閉弁8Bを第2の開閉弁、真空ポンプ5側の開閉弁8Cを真空弁、大気側の開閉弁8Dを大気弁とそれぞれ呼ぶこととする。
【0025】
上記した配管系において、いま、第1の開閉弁8Aおよび大気弁8Dを閉弁、第2の開閉弁8Bおよび真空弁8Cを開弁状態として真空ポンプ5を起動させると、減圧容器3内が減圧され、その後、真空弁8Cを閉じると、減圧容器3内には所定の真空圧が封じ込められる。一方、この状態から第1の開閉弁8Aを開くと、減圧容器3内の真空圧が連通路4を介して密閉容器2に導入される。密閉容器2は開閉蓋2aを有しており、この開閉蓋2aを閉じた状態で、前記第1の開閉弁8Aを開くと、密閉容器2内は急速に減圧される。このとき、密閉容器2内の圧力は、該密閉容器2の容積と減圧容器3の容積とに依存するので、減圧容器2内の圧力(真空圧)を適当に設定することにより、密閉容器2内の減圧条件は常に一定となる。
【0026】
本第1の実施形態において、上記密閉容器2内には重量計10が設置されており、溶湯Mの採取容器1は、この重量計10の上に載置されるようになっている。採取容器1としては、従来の切断による評価試験で用いられていたサンプル容器、いわゆるタマゴカップと同じものが用いられており、その内容積は直径40mm、高さ40mm程度の大きさとなっている。ただし、この採取容器1の大きさは任意であり、所望により前記タマゴカップよりも大きいまたは小さいものを用いてもよい。水素濃度の測定に際しては、溶湯Mを採取した採取容器1を重量計10の上に載せた状態で、密閉容器2内を減圧し、これにより採取容器1内の溶湯Mから水素ガスの放出が起こり、これに伴って溶湯Mの表面から溶湯飛沫M´が上方へ飛散する。
【0027】
しかして、上記密閉容器2の開閉蓋2aの裏面には、圧力センサ11が接合されている。圧力センサ11としては、ここでは、圧力を受けて電荷を発生するシート状の圧電素子が用いられており、その表面は、耐熱性を有する樹脂フィルム(図示略)により覆われている。この圧力センサ11の大きさは、前記採取容器1の口径よりもわずか大きく設定されており、開閉蓋2aを閉じた状態で、採取容器1の開口に対向する位置に水平に配置される。一方、密閉容器2の開閉蓋2aは、上記溶湯飛沫M´の飛散高さよりも低くなるようにその設置高さが設定されており、これにより圧力センサ11に溶湯飛沫M´が衝突し、この衝突に圧力センサ11が感応する。したがって、圧力センサ11は、溶湯飛沫M´の発生量を検出する検出手段を構成している。
【0028】
図2に示されるように、本水素濃度測定装置は、別途信号処理装置12を備えており、この信号処理装置12には、上記圧力センサ11の出力信号および重量計10の出力信号が入力されるようになっている。信号処理装置12は、ここでは、測定対象の溶湯Mについての溶湯飛沫M´の発生量から水素濃度が合格レベルにあるか否かを判定する機構を有しており、その判定結果は、表示装置13に表示される。
【0029】
溶湯中の水素濃度の測定に際しては、予め真空ポンプ5により減圧容器3内を所定の真空度にしておく。そして、溶湯Mを採取した採取容器1を密閉容器2内の重量計10の上に載せ、その後、開閉蓋2aを閉じて上記第1の開閉弁8Aを開く。すると、密閉容器2内は急速に減圧され、採取容器1内の溶湯Mから水素ガスの放出が起こり、これに伴って溶湯Mの表面から溶湯飛沫M´が上方へ飛散し、圧力センサ11に衝突する。
【0030】
圧力センサ11は、上記した溶湯飛沫M´の衝突に感応し、その出力信号を信号処理装置12へ送出する。信号処理装置12は、前記圧力センサ11の出力信号を増幅して、その信号波形を経時的に記憶し、かつこの信号波形をデータ処理して水素濃度を特定する。図3の実線は、圧力センサ11の信号波形の一例を示したもので、同図には、巣の発生状況が規定内にある良質な溶湯についての信号波形が一点鎖線で併記されている。信号処理装置12は、たとえば、前記信号波形のピーク値、ピーク数、積分量等から溶湯飛沫M´の発生量を決定し、前記良質な溶湯について事前に把握した溶湯飛沫の発生量との関係で予め設定したしきい値よりも低い場合に、溶湯中の水素濃度が合格水準にあると特定する。この場合、採取容器1への溶湯Mの汲取り量にはバラツキがあるので、重量計10により測定した溶湯重量で溶湯飛沫M´の発生量を平準化し、これによって溶湯中の水素濃度が合格水準にあるか否かを正確に特定することができる。
【0031】
このように行う溶湯中の水素濃度測定装置、方法によれば、溶湯Mを採取した採取容器1を密閉容器2に入れて減圧するだけなので、面倒な操作を行うことなく溶湯中の水素濃度を迅速に把握することができる。本第1の実施形態においては特に、密閉容器2に減圧容器3の真空圧を導入して、密閉容器2内を急速に減圧できるようにしているので、凝固直前の水素ガスの放出が促進され、溶湯飛沫の発生も活発となって、測定結果に有意差が生じ易くなる。また、密閉容器2内の減圧条件は、密閉容器2の容積と、減圧容器3の容積と減圧容器3内の圧力とにより一義的に決まるので、常に一定の減圧条件を再現でき、水素濃度測定に対する信頼性が向上する。また、圧力センサ11についてはその表面を樹脂フィルムにて保護しているので、該樹脂フィルムを交換して再使用が可能になり、結果として高価な部品を消耗することもないので、測定に要するコスト負担もわずかとなる。なお、水素濃度の測定終了後は、減圧容器3側の第2の開閉弁8Bを閉弁する一方で、大気弁8Dを開放し、これにより密閉容器2に大気が導入され、密閉容器2からの採取容器1の取出しが可能になる。
【0032】
ここで、上記第1の実施形態においては、圧力センサ11の出力信号の波形をデータ処理してしきい値と比較し、水素濃度が所望のレベルにあるか否かを判断するようにしたが、前記データ処理の方法は任意である。たとえば、事前に水素濃度が既知の溶湯について上記方法により溶湯飛沫の発生量を把握し、この溶湯飛沫の発生量と実際の水素濃度との相関を予め求めて、測定対象の溶湯Mについての溶湯飛沫M´の発生量を前記相関に照合して、水素濃度を定量的に特定するようにしてもよい。
【0033】
図4は、本発明の第2の実施形態としての溶湯中の水素濃度測定装置を示したものである。なお、本水素濃度測定装置の全体構造は、上記第1の実施形態と同じであるので、ここでは、図1に示した部分と同一構成要素に同一符号を付し、重複する説明は省略する。本第2の実施形態の特徴とするところは,上記圧力センサ11に代えて、渦電流センサ20を密閉容器2の開閉蓋2aの裏面に固設した点にある。渦電流センサ20は、対象物に渦電流を発生させて磁界変化から対象物の位置を測定する機能を有しており、ここでは、溶湯飛沫M´と接触しない高さに設置され、溶湯飛沫M´の接近に感応するようになっている。したがって、該渦電流センサ20は、上記圧力センサ11と同様に溶湯飛沫M´の発生量を検出する検出手段を構成している。
【0034】
上記渦電流センサ20の出力信号は、第1の実施形態と同様に信号処理装置12に送出されるようになっており、信号処理装置12は、前記渦電流センサ20の出力信号を増幅して、その信号波形を経時的に記憶し、かつこの信号波形をデータ処理して水素濃度を特定する。この場合、データ処理の方法としては、上記したようにしきい値と比較する方法を採用しても、相関と照合する方法を採用してもよい。本第2の実施形態においては、渦電流センサ20の使用により、溶湯飛沫M´と非接触でその発生量を求めることができるので、特別の保護は不要となる。
【0035】
図5は、本発明の第3の実施形態としての溶湯中の水素濃度測定装置を示したものである。なお、本水素濃度測定装置の全体構造は、上記第1の実施形態と同じであるので、ここでは、図1に示した部分と同一構成要素に同一符号を付し、重複する説明は省略する。本第3の実施形態の特徴とするところは,第1の実施形態における圧力センサ11に代えて、密閉容器2の開閉蓋2aの上面にCCDカメラ(撮像手段)25を設置し、このCCDカメラ25により、前記開閉蓋2aに設けたガラス窓2bを通して採取容器1からの溶湯飛沫M´の発生状況を撮影するようにした点にある。
【0036】
上記CCDカメラ25の出力信号は、画像解析装置26を介して上記信号処理装置12に送出されるようになっている。画像解析装置26は、CCDカメラ25で撮像された画像を解析して、溶湯飛沫M´の発生量を定量的に求め、その量に応じた信号を出力する機能を有している。この場合、溶湯飛沫M´の発生量の特定方法は任意であり、たとえば、画像上で認識される溶湯飛沫Mの数、面積率等を求めるようにしてもよい。信号処理装置12は、前記画像解析装置26の出力信号を経時的に取込んで記憶し、かつこの出力信号をデータ処理して水素濃度を特定する。この場合、データ処理の方法としては、上記したようにしきい値と比較する方法を採用しても、相関と照合する方法を採用してもよい。本第3の実施形態においては、密閉容器2の外部に設けたCCDカメラ25を検出手段として用いるので、汚染の心配がなく、結果としてメンテナンスが簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態である水素濃度測定装置の要部構造を示す模式図である。
【図2】本第1の実施形態としての水素濃度測定装置における信号処理系を示すブロック図である。
【図3】本第1の実施形態としての水素濃度測定装置における圧力センサの信号波形の一例を示すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施形態である水素濃度測定装置の要部構造を示す模式図である。
【図5】本発明の第3の実施形態である水素濃度測定装置の要部構造を示す模式図である。
【図6】本第3の実施形態としての水素濃度測定装置における信号処理系を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0038】
1 採取容器
2 密閉容器
3 減圧容器
4 連通路
5 真空ポンプ(真空引き手段)
8A〜D 開閉弁
10 重量計
11 圧力センサ
12 信号処理装置
13 表示装置
20 渦電流センサ
25 CCDカメラ(撮像手段)
M 溶湯
M´ 溶湯飛沫

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯を採取した採取容器を密閉容器に入れて減圧することにより、溶湯から水素ガスを放出させ、この水素ガス放出に伴って生じる溶湯飛沫の発生量を経時的に測定して、その測定結果に基づいて水素濃度を特定することを特徴とする金属溶湯中の水素濃度測定方法。
【請求項2】
溶湯飛沫の発生量を、該飛沫の衝突に感応する圧力センサの出力信号に基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の金属溶湯中の水素濃度測定方法。
【請求項3】
溶湯飛沫の発生量を、該飛沫の接近に感応する渦電流センサの出力信号に基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の金属溶湯中の水素濃度測定方法。
【請求項4】
溶湯飛沫の発生量を、撮像手段による画像に基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の金属溶湯中の水素濃度測定方法。
【請求項5】
採取容器に採取した溶湯の重量を測定し、溶湯飛沫の発生量の測定結果を前記重量で平準化して水素濃度を特定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の金属溶湯中の水素濃度測定方法。
【請求項6】
溶湯を採取した採取容器を納める蓋付き密閉容器と、該密閉容器と連通路により接続された減圧容器と、該減圧容器内を真空引きする真空引き手段と、前記連通路を連通・遮断する開閉弁と、前記密閉容器に納めた採取容器内の溶湯表面からの溶湯飛沫の発生量を検出する検出手段と、該検出手段の出力信号に基づいて溶湯中の水素濃度を特定する信号処理手段とを備えていることを特徴とする金属溶湯中の水素濃度測定装置。
【請求項7】
密閉容器内に、採取容器内の溶湯の重量を計測する重量計を配設したことを特徴とする請求項6に記載の金属溶湯中の水素濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−180540(P2008−180540A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12737(P2007−12737)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】