金属濾過装置及びフィルタカセット
【課題】急激な温度変化を繰り返し受けてもセラミックチューブ14の固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させる。
【解決手段】ユニット容器内に一対の耐火プレート11、12を設け、一対の耐火プレート11、12の間に複数本の長尺状のセラミックチューブ14を取り付け、出湯口9側のセラミックチューブ14の一端14aを耐火セメント22で耐火プレート12に固定し、セラミックチューブ14の他端14bファイバー系モルタル21で耐火プレート11に取付け、セラミックチューブ14の固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させる。
【解決手段】ユニット容器内に一対の耐火プレート11、12を設け、一対の耐火プレート11、12の間に複数本の長尺状のセラミックチューブ14を取り付け、出湯口9側のセラミックチューブ14の一端14aを耐火セメント22で耐火プレート12に固定し、セラミックチューブ14の他端14bファイバー系モルタル21で耐火プレート11に取付け、セラミックチューブ14の固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属溶湯の濾過を行う金属濾過装置及びフィルタカセットに関し、セラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることを企図したものである。
【背景技術】
【0002】
金属、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金の溶湯を鋳型に注湯して所望の鋳造品を鋳造している。鋳造に際し鋳型に金属溶湯を注湯する前に、金属溶湯を金属濾過装置で濾過し、溶湯中に含まれている介在物(有害又は不必要な異物)を除去している。金属濾過装置は、一対の側板の間に複数のセラミックチューブを備えたフィルタカセットに金属溶湯を流通させ、セラミックチューブに金属溶湯を通すことにより介在物を除去して清浄な金属溶湯を得ている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
このような金属濾過装置にあっては、柔軟性のあるファイバー系モルタルを介して一対の側板にセラミックチューブを取り付けることが考えられる。このようなファイバー系モルタルでセラミックチューブを取り付けた金属濾過装置ではセラミックチューブが膨張により破壊される虞を低減するものの、振動によりファイバー系モルタルが破壊される虞があった。出湯側のファイバー系モルタルが破壊されると、金属溶湯が濾過されないことになり、金属溶湯の品質に重大な影響を及ぼしてしまう。
【0004】
また、従来の金属濾過装置にあっては、介在物がセラミックチューブの表層付近に堆積し長期の使用により目詰まりをおこしてしまう。このため、容器の下部から間欠的に不活性ガス等の洗浄ガスを吹き込んでセラミックチューブの目詰まりを抑制するようにしている場合がある。洗浄ガスが吹き込まれる際には金属溶湯の温度は低下し、洗浄ガスを停止させた際には金属溶湯の温度が上昇する。このため、セラミックチューブが温度変化により膨張・収縮し、側板との間に隙間が生じる虞があった。セラミックチューブと側板の間の固着強度を向上させることで側板との間の隙間の発生を抑えることはできるが、固着部におけるセラミックチューブに亀裂が生じる虞が発生する。
【0005】
【特許文献1】特許第3317507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、振動や急激な温度変化を繰り返し受けてもセラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができる金属濾過装置及びフィルタカセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、入湯口と出湯口を有する金属濾過装置であって、内部に設けられる出湯側側板及び入湯側側板と、一端が開口し他端が有底状の長尺状をなし、一端が出湯側側板に取り付けられると共に他端が入湯側側板に取り付けられるセラミックチューブとを備え、セラミックチューブの開口側の端部を出湯側耐火材により出湯側側板に取り付けると共に、セラミックチューブの有底状側の端部を入湯側耐火材により入湯側板に取り付け、出湯側耐火材の固着強度をセラミックチューブの引張強度よりも高くし、入湯側耐火材の固着強度をセラミックチューブの引張強度よりも低くしたことを特徴とする金属濾過装置にある。
【0008】
本発明の第1の態様では、出湯口側の出湯側側板にはセラミックチューブの引張強度よりも高い固着強度を有する出湯側耐火材によりセラミックチューブの開口端が取り付けられ、固着強度が維持されて温度変化による膨張・収縮が生じても隙間が生じることがなく介在物の混入が抑制され、振動や温度変化による膨張・収縮はセラミックチューブの引張強度よりも低い固着強度を有する入湯側耐火材により入湯側側板に取り付けられたセラミックチューブの有底状側の端部側で吸収される。このため、振動や急激な温度変化を繰り返し受けてもセラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができる。
【0009】
そして、本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の金属濾過装置において、出湯側耐火材は耐火セメントであり、入湯側耐火材はファイバー系モルタルであることを特徴とする金属濾過装置にある。
【0010】
本発明の第2の態様では、耐火セメント及びファイバー系モルタルを用いてセラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができる。
【0011】
また、本発明の第3の態様は、第1もしくは第2の態様に記載の金属濾過装置において、入湯側耐火材の固着強度はセラミックチューブの引張強度の2分の1から3分の1とされていることを特徴とする金属濾過装置にある。
【0012】
本発明の第3の態様では、セラミックチューブの破壊を防止しつつセラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができる。
【0013】
また、本発明の第4の態様は、第1〜第3のいずれかの態様に記載の金属濾過装置において、セラミックチューブに向けて洗浄ガスを噴出する洗浄ガス噴出手段をユニット容器の底部に備えたことを特徴とする金属濾過装置にある。
【0014】
本発明の第4の態様では、洗浄ガスの噴出による急激な温度変化を繰り返し受けてもセラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができる。
【0015】
また、本発明の第5の態様は、第1〜第4のいずれかの態様に記載の金属濾過装置において、セラミックチューブは、アルミナ質ポーラスチューブ製のセラミックチューブであることを特徴とする金属濾過装置にある。
【0016】
第5の態様では、アルミナ質ポーラスチューブ製のセラミックチューブを用いて金属溶湯の濾過を行うことができる。
【0017】
上記目的を達成するための本発明の第6の態様は、出湯側側板及び入湯側側板と、一端が開口し他端が有底状の長尺状をなし、一端が出湯側側板に取り付けられると共に他端が入湯側側板に取り付けられるセラミックチューブとを備え、セラミックチューブの開口側の端部を出湯側耐火材により出湯側側板に取り付けると共に、セラミックチューブの有底状側の端部を入湯側耐火材により入湯側板に取り付け、出湯側耐火材の固着強度をセラミックチューブの引張強度よりも高くし、入湯側耐火材の固着強度をセラミックチューブの引張強度よりも低くしたことを特徴とするフィルタカセットにある。
【0018】
第6の態様では、出湯口側の出湯側側板にはセラミックチューブの引張強度よりも高い固着強度を有する出湯側耐火材によりセラミックチューブの開口端が取り付けられ、固着強度が維持されて温度変化による膨張・収縮が生じても隙間が生じることがなく介在物の混入が抑制され、振動や温度変化による膨張・収縮はセラミックチューブの引張強度よりも低い固着強度を有する入湯側耐火材により入湯側側板に取り付けられたセラミックチューブの有底状側の端部側で吸収される。このため、振動や急激な温度変化を繰り返し受けてもセラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の金属濾過装置は、振動や急激な温度変化を繰り返し受けてもセラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができる金属濾過装置及びフィルタカセットとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1には本発明の一実施形態例に係る金属濾過装置の側断面、図2にはフィルタカセットの断面、図3には図2中の要部詳細状況、図4には施工条件の結果を示してある。また、図5には耐火材とセラミックチューブの破壊強度、図6には耐火材の物性、図7には荷重試験の説明、図8、図9には衝撃試験の説明、図10には衝撃試験の結果を示してある。
【0021】
図1に示すように、金属濾過装置1は、ユニット容器2内にフィルタカセット3が備えられ、フィルタカセット3は前内壁4と後内壁5との間にくさび6を介して保持されている。前内壁4側のユニット容器2には入湯口7が設けられ、入湯口7から金属溶湯(例えば、アルミニウム溶湯)が供給される。
【0022】
後内壁5を挟んでフィルタカセット3と反対側のユニット容器2には出湯室8が設けられ、出湯室8には出湯口9が設けられている。入湯口7から供給されたアルミニウム溶湯はフィルタカセット3を流通することで濾過され、出湯室8に送られて出湯口9から出湯され鋳型に送られる。
【0023】
また、ユニット容器2の底部にはフィルタカセット3に向けて不活性ガス(例えば、アルゴンガス)の洗浄ガスを噴出する洗浄ガス噴出手段10が設けられている。金属溶湯の濾過が行われると、異物がフィルタカセット3の後述するセラミックチューブの表層付近に堆積し、長期の使用により目詰まりをおこしてしまう。このため、洗浄ガス噴出手段10から間欠的に不活性ガス等の洗浄ガスを吹き込んでセラミックチューブの目詰まりを抑制している。
【0024】
フィルタカセット3は、一対の側板11(入湯側側板)、12(出湯側側板)を備え、前内壁4にはくさび6を介して側板11が保持され、後内壁5にはパッキンを介して側板12が保持されている。側板11、12は炭化珪素質耐火物プレートで形成されている。側板11、12の間には、1本でもよいが、通常、複数本(例えば、4段で18本)の長尺状のセラミックチューブ14が設けられ、セラミックチューブ14はアルミナ質ポーラスチューブで形成されている。セラミックチューブ14としては、アルミナ質、炭化珪素質のものが挙げられるが、熱間強度や耐アルミ反応性の観点から、アルミナ質ポーラスチューブ製のセラミックチューブが好ましい。
【0025】
図2、図3に示すように、セラミックチューブ14は、一端14aが開口し、他端14bが有底状とされている。側板11には挿入穴15が形成され、挿入穴15にはセラミックファイバー製のパッキン16を介してセラミックチューブ14の他端14bが嵌合されている。一方、側板12には出湯室8(図1参照)につながる孔17が形成され、孔17に対応してパッキン13を介してセラミックチューブ14の一端14aが嵌合されている。
【0026】
図3に示すように、直径がDmmのセラミックチューブ14の両端はパッキン13、16の厚さSの幅が軸方向の伸び代とされている。また、セラミックチューブ14の端部は隙間Rの長さが側板11、12に保持され、隙間Rの部位周囲に側板12とセラミックチューブ14を固着するための耐火材が介在される。
【0027】
そして、セラミックチューブ14の他端14bは入湯側耐火材としてのファイバー系モルタル21により側板11に取り付けられている。ファイバー系モルタル21は弾性力を有し、セラミックチューブ14の膨張・収縮を吸収できるようになっている。セラミックチューブ14の一端14a(濾過された金属溶湯の出口側)は出湯側耐火材としての耐火セメント22により側板12に固定されている。耐火セメント22は固着強度が高く、セラミックチューブ14が膨張・収縮しても隙間が生じないようになっており、振動によってもファイバー系モルタルのように破壊されない。
【0028】
図5に示すように、ファイバー系モルタル21は、接着部の破壊までの力(固着強度)が、例えば、100kgfを下回り、弱い固着力を有している。また、セラミックチューブ14の引張り破壊荷重(引張強度)は、例えば、200kgf〜300kgfであり、ファイバー系モルタル21の固着強度がセラミックチューブ14の引張り破壊荷重の2分の1から3分の1とされていることが、耐熱衝撃性を確保する観点から好ましい。
【0029】
ファイバー系モルタル21は、セラミックファイバーと無機バインダーを含有したもので、セラミックファイバーとしてアルミナ−シリカ系のセラミックファイバーである。更に、例えば、セラミックファイバーを10wt%〜20wt%含有し、図6に示すように、トータルのアルミナ(Al2O3)の含有率が80%以上であり、シリカ(SiO2)が10%以上となっている。
【0030】
また、図5に示すように、耐火セメント22は、接着部の破壊までの力(固着強度)が、例えば、800kgfであり、強い固着力を有している。耐火セメント22としては、骨材粒度が細かい耐火セメントが好ましい。更に、図6に示すように、アルミナ(Al2O3)が60%程度、シリカ(SiO2)が40%程度の耐火セメントが好ましい。
【0031】
また、図6に示すように、ファイバー系モルタル21の圧縮強度は、例えば、常温及び800℃の処理後で、共に11kgf/cm2となっている。更に、耐火セメント22の圧縮強度は、例えば、常温で100kgf/cm2であり、800℃の処理後で200kgf/cm2となっている。
【0032】
側板11(入湯側側板)の圧縮強度より、側板12(出湯側側板)の圧縮強度の方が高いことが、熱によるセラミックチューブ14の膨張・収縮に伴うセラミックチューブ14の破損、セラミックチューブ14の側板11、12からの外れを防止する観点から好ましい。即ち、側板11の圧縮強度が低いとその部分でセラミックチューブ14の熱変動による長さ方向(軸方向)の変動を吸収することができ、側板12の圧縮強度が高いと出湯側でのセラミックチューブ14の外れを防止できる。その好ましい値は、それぞれ、2〜30kgf/cm2(常温)、50〜200kgf/cm2(常温)である。
【0033】
図5に示した値の荷重試験は、図7に示した試験装置により実施した。即ち、直径がD1mm(例えば、100mm)の試験片101(セラミックチューブ)を鏡板102(側板:耐火プレート)の保持部103に保持し、試験片101の周囲を耐火材104で固着した。保持部103の直径はD2mm(例えば、104mm)であり、試験片101の保持長さはRmm(例えば、26mm)とされ、試験片101の端部には厚さSmm(例えば、4mm)のパッキン105が介在されている。この状態で、荷重を試験片101にかけて破壊までの力を測定した。
【0034】
耐火材として耐火セメント22を用いた場合の固着力は、ファイバー系モルタル21の固着力よりも強く、ファイバー系モルタル21の固着強度がセラミックチューブ14の引張り破壊荷重の2分の1から3分の1とされている。そして、耐火セメント22の固着強度はセラミックチューブ14の引張強度の2〜4倍以上とされており、耐火セメント22の固着強度はファイバー系モルタル21の固着強度の8倍以上とされている。これは、耐火セメント22とセラミックチューブ14の固着が強固であり、強い力が作用した場合に接着部が外れる前にセラミックチューブ14が破損することになる。また、ファイバー系モルタル21の固着力が弱いので、力が作用した場合にセラミックチューブ14は破損せずに接着部が破損することになる。
【0035】
ファイバー系モルタル21及び耐火セメント22は塗布量が増加すると破壊強度が高くなる。ファイバー系モルタル21の塗布量は、100kgfの破壊強度を得るためには20〜30g程度必要であり、100kgfを下回る破壊強度を得るために最大で20〜30g程度のファイバー系モルタル21が用いられる。また、耐火セメント22の塗布量は、800kgfの破壊強度を得るためには40〜50g程度必要であり、800kgfの破壊強度を得るために40〜50g程度の耐火セメント22が用いられる。
【0036】
試験片101と略同程度の寸法のセラミックチューブ14の場合の衝撃試験の結果を図8乃至図10に基づいて説明する。
【0037】
図8に示すように、長さLのアーム111の先端に木片112が取り付けられた試験アームを用い、落差H1でアーム111を回動させて木片112によりセラミックチューブ14に繰り返し打撃を与えた。図9に示すように、木片112により衝撃を与える部位は、耐火材113により保持部114にセラミックチューブ14を固着した部位から軸方向に距離H2(例えば、100mm)離れた部位とした。図10に示すように、両側の耐火材113をファイバー系モルタルとした場合、600回の打撃で著しい損耗が認められた。打撃部位に近い側(図9中左側)の耐火材113を耐火セメントとした場合、1200回の打撃で損耗は認められなかった。
【0038】
このため、セラミックチューブ14をファイバー系モルタル21により側板11に取り付けると共に、耐火セメント22により側板12に固定することにより、振動に対して損耗のない構造とすることができる。
【0039】
上述した金属濾過装置1では、入湯口7からフィルタカセット3内に供給されたアルミニウム溶湯は、複数本のセラミックチューブ14で形成された複雑な流路を通過すると共にセラミックチューブ14の外周面から筒状の内部に送られて濾過されて介在物が除去される。濾過されて清浄な状態となったアルミニウム溶湯はセラミックチューブ14の一端14aの開口から孔17を通って出湯室8に送られ、出湯口9から出湯される。
【0040】
濾過に際して除去された介在物はセラミックチューブ14の表層に堆積し、アルミニウム溶湯の濾過が繰り返されると、セラミックチューブ14の表層に堆積した介在物により所定の流量が確保できなくなる。このため、所定の期間毎にフィルタカセット3の洗浄が行われる。フィルタカセット3の洗浄に際しては、洗浄ガス噴出手段10から洗浄ガス(アルゴンガス)を所定圧力で供給する。アルゴンガスは、多数の微小な気泡となってセラミックチューブ14の表層に堆積した介在物を除去し、介在物を浮き上がらせる。
【0041】
アルゴンガスが吹き込まれた際にはアルミニウム溶湯の温度が低下し、アルゴンガスを停止させた際にはアルミニウム溶湯の温度が上昇する。このため、セラミックチューブ14が温度変化により膨張・収縮を繰り返す。
【0042】
セラミックチューブ14の他端14bは弾性力を有するファイバー系モルタル21により耐火プレート11に取り付けられているので、セラミックチューブ14の膨張・収縮が耐火プレート11の取り付き部で吸収される。このため、セラミックチューブ14が膨張・収縮しても、亀裂が生じる虞がなくなる。
【0043】
一方、セラミックチューブ14の一端14aは耐火セメント22により耐火プレート12に固定されているので、固着強度が高くセラミックチューブ14が膨張・収縮しても固定部に隙間が生じない。また、振動により耐火セメント22が破壊されることはない。このため、アルミニウム溶湯の出口側で固定部が浸食されて介在物が発生することがなくなり、セラミックチューブ14の一端14aの開口から介在物が浸入する虞がなくなる。
【0044】
従って、隙間が生じることが濾過品質を左右する出口側で、即ち、セラミックチューブ14の一端14aでセラミックチューブ14が強固に耐火プレート12に固定されて隙間が生じる虞がなくなると共に、セラミックチューブ14の膨張・収縮がファイバー系モルタル21を介して他端14bの耐火プレート11の取り付き部で吸収される。
【0045】
よって、上述した金属濾過装置1では、急激な温度変化を繰り返し受けてもセラミックチューブ14の固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができる。
【0046】
図4に示すように、セラミックチューブ14の一端14aを耐火セメント22で耐火プレート12に固定し、セラミックチューブ14の他端14bをファイバー系モルタル21で耐火プレート12に取り付けた場合、出口側での隙間の発生がなくよい結果(○)となり、耐衝撃性において亀裂の発生がなく良い結果(○)が得られた。
【0047】
また、セラミックチューブ14の両端をファイバー系モルタル21で耐火プレート11、12に取り付けた場合、出口側での隙間が大きくなって難がある結果(×)となり、衝撃性において亀裂の発生がなく良い結果(○)となった。
【0048】
更に、セラミックチューブ14の両端を耐火セメント22で耐火プレート11、12に取り付けた場合、出口側での隙間の発生がなくよい結果(○)となり、衝撃性において亀裂が発生して難がある結果(×)が得られた。
【0049】
図4の結果からも明らかなように、本実施形態例では、急激な温度変化を繰り返し受けてもセラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、金属溶湯の濾過を行う金属濾過装置の産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態例に係る金属濾過装置の側断面図である。
【図2】フィルタカセットの断面図である。
【図3】図2中の要部詳細図である。
【図4】施工条件の結果を表した表図である。
【図5】耐火材とセラミックチューブの破壊強度を表した表図である。
【図6】耐火材の物性を表した表図である。
【図7】荷重試験の説明図である。
【図8】衝撃試験の説明図である。
【図9】衝撃試験の説明図である。
【図10】衝撃試験の結果を表した表図である。
【符号の説明】
【0052】
1 金属濾過装置
2 ユニット容器
3 フィルタカセット
4 前内壁
5 後内壁
6 くさび
7 入湯口
8 出湯室
9 出湯口
10 洗浄ガス噴出手段
11 側板(入湯側側板:耐火プレート)
12 側板(出湯側側板:耐火プレート)
13 パッキン
14 セラミックチューブ
15 挿入穴
17 孔
21 ファイバー系モルタル(入湯側耐火材)
22 耐火セメント(出湯側耐火材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属溶湯の濾過を行う金属濾過装置及びフィルタカセットに関し、セラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることを企図したものである。
【背景技術】
【0002】
金属、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金の溶湯を鋳型に注湯して所望の鋳造品を鋳造している。鋳造に際し鋳型に金属溶湯を注湯する前に、金属溶湯を金属濾過装置で濾過し、溶湯中に含まれている介在物(有害又は不必要な異物)を除去している。金属濾過装置は、一対の側板の間に複数のセラミックチューブを備えたフィルタカセットに金属溶湯を流通させ、セラミックチューブに金属溶湯を通すことにより介在物を除去して清浄な金属溶湯を得ている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
このような金属濾過装置にあっては、柔軟性のあるファイバー系モルタルを介して一対の側板にセラミックチューブを取り付けることが考えられる。このようなファイバー系モルタルでセラミックチューブを取り付けた金属濾過装置ではセラミックチューブが膨張により破壊される虞を低減するものの、振動によりファイバー系モルタルが破壊される虞があった。出湯側のファイバー系モルタルが破壊されると、金属溶湯が濾過されないことになり、金属溶湯の品質に重大な影響を及ぼしてしまう。
【0004】
また、従来の金属濾過装置にあっては、介在物がセラミックチューブの表層付近に堆積し長期の使用により目詰まりをおこしてしまう。このため、容器の下部から間欠的に不活性ガス等の洗浄ガスを吹き込んでセラミックチューブの目詰まりを抑制するようにしている場合がある。洗浄ガスが吹き込まれる際には金属溶湯の温度は低下し、洗浄ガスを停止させた際には金属溶湯の温度が上昇する。このため、セラミックチューブが温度変化により膨張・収縮し、側板との間に隙間が生じる虞があった。セラミックチューブと側板の間の固着強度を向上させることで側板との間の隙間の発生を抑えることはできるが、固着部におけるセラミックチューブに亀裂が生じる虞が発生する。
【0005】
【特許文献1】特許第3317507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、振動や急激な温度変化を繰り返し受けてもセラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができる金属濾過装置及びフィルタカセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、入湯口と出湯口を有する金属濾過装置であって、内部に設けられる出湯側側板及び入湯側側板と、一端が開口し他端が有底状の長尺状をなし、一端が出湯側側板に取り付けられると共に他端が入湯側側板に取り付けられるセラミックチューブとを備え、セラミックチューブの開口側の端部を出湯側耐火材により出湯側側板に取り付けると共に、セラミックチューブの有底状側の端部を入湯側耐火材により入湯側板に取り付け、出湯側耐火材の固着強度をセラミックチューブの引張強度よりも高くし、入湯側耐火材の固着強度をセラミックチューブの引張強度よりも低くしたことを特徴とする金属濾過装置にある。
【0008】
本発明の第1の態様では、出湯口側の出湯側側板にはセラミックチューブの引張強度よりも高い固着強度を有する出湯側耐火材によりセラミックチューブの開口端が取り付けられ、固着強度が維持されて温度変化による膨張・収縮が生じても隙間が生じることがなく介在物の混入が抑制され、振動や温度変化による膨張・収縮はセラミックチューブの引張強度よりも低い固着強度を有する入湯側耐火材により入湯側側板に取り付けられたセラミックチューブの有底状側の端部側で吸収される。このため、振動や急激な温度変化を繰り返し受けてもセラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができる。
【0009】
そして、本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の金属濾過装置において、出湯側耐火材は耐火セメントであり、入湯側耐火材はファイバー系モルタルであることを特徴とする金属濾過装置にある。
【0010】
本発明の第2の態様では、耐火セメント及びファイバー系モルタルを用いてセラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができる。
【0011】
また、本発明の第3の態様は、第1もしくは第2の態様に記載の金属濾過装置において、入湯側耐火材の固着強度はセラミックチューブの引張強度の2分の1から3分の1とされていることを特徴とする金属濾過装置にある。
【0012】
本発明の第3の態様では、セラミックチューブの破壊を防止しつつセラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができる。
【0013】
また、本発明の第4の態様は、第1〜第3のいずれかの態様に記載の金属濾過装置において、セラミックチューブに向けて洗浄ガスを噴出する洗浄ガス噴出手段をユニット容器の底部に備えたことを特徴とする金属濾過装置にある。
【0014】
本発明の第4の態様では、洗浄ガスの噴出による急激な温度変化を繰り返し受けてもセラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができる。
【0015】
また、本発明の第5の態様は、第1〜第4のいずれかの態様に記載の金属濾過装置において、セラミックチューブは、アルミナ質ポーラスチューブ製のセラミックチューブであることを特徴とする金属濾過装置にある。
【0016】
第5の態様では、アルミナ質ポーラスチューブ製のセラミックチューブを用いて金属溶湯の濾過を行うことができる。
【0017】
上記目的を達成するための本発明の第6の態様は、出湯側側板及び入湯側側板と、一端が開口し他端が有底状の長尺状をなし、一端が出湯側側板に取り付けられると共に他端が入湯側側板に取り付けられるセラミックチューブとを備え、セラミックチューブの開口側の端部を出湯側耐火材により出湯側側板に取り付けると共に、セラミックチューブの有底状側の端部を入湯側耐火材により入湯側板に取り付け、出湯側耐火材の固着強度をセラミックチューブの引張強度よりも高くし、入湯側耐火材の固着強度をセラミックチューブの引張強度よりも低くしたことを特徴とするフィルタカセットにある。
【0018】
第6の態様では、出湯口側の出湯側側板にはセラミックチューブの引張強度よりも高い固着強度を有する出湯側耐火材によりセラミックチューブの開口端が取り付けられ、固着強度が維持されて温度変化による膨張・収縮が生じても隙間が生じることがなく介在物の混入が抑制され、振動や温度変化による膨張・収縮はセラミックチューブの引張強度よりも低い固着強度を有する入湯側耐火材により入湯側側板に取り付けられたセラミックチューブの有底状側の端部側で吸収される。このため、振動や急激な温度変化を繰り返し受けてもセラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の金属濾過装置は、振動や急激な温度変化を繰り返し受けてもセラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができる金属濾過装置及びフィルタカセットとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1には本発明の一実施形態例に係る金属濾過装置の側断面、図2にはフィルタカセットの断面、図3には図2中の要部詳細状況、図4には施工条件の結果を示してある。また、図5には耐火材とセラミックチューブの破壊強度、図6には耐火材の物性、図7には荷重試験の説明、図8、図9には衝撃試験の説明、図10には衝撃試験の結果を示してある。
【0021】
図1に示すように、金属濾過装置1は、ユニット容器2内にフィルタカセット3が備えられ、フィルタカセット3は前内壁4と後内壁5との間にくさび6を介して保持されている。前内壁4側のユニット容器2には入湯口7が設けられ、入湯口7から金属溶湯(例えば、アルミニウム溶湯)が供給される。
【0022】
後内壁5を挟んでフィルタカセット3と反対側のユニット容器2には出湯室8が設けられ、出湯室8には出湯口9が設けられている。入湯口7から供給されたアルミニウム溶湯はフィルタカセット3を流通することで濾過され、出湯室8に送られて出湯口9から出湯され鋳型に送られる。
【0023】
また、ユニット容器2の底部にはフィルタカセット3に向けて不活性ガス(例えば、アルゴンガス)の洗浄ガスを噴出する洗浄ガス噴出手段10が設けられている。金属溶湯の濾過が行われると、異物がフィルタカセット3の後述するセラミックチューブの表層付近に堆積し、長期の使用により目詰まりをおこしてしまう。このため、洗浄ガス噴出手段10から間欠的に不活性ガス等の洗浄ガスを吹き込んでセラミックチューブの目詰まりを抑制している。
【0024】
フィルタカセット3は、一対の側板11(入湯側側板)、12(出湯側側板)を備え、前内壁4にはくさび6を介して側板11が保持され、後内壁5にはパッキンを介して側板12が保持されている。側板11、12は炭化珪素質耐火物プレートで形成されている。側板11、12の間には、1本でもよいが、通常、複数本(例えば、4段で18本)の長尺状のセラミックチューブ14が設けられ、セラミックチューブ14はアルミナ質ポーラスチューブで形成されている。セラミックチューブ14としては、アルミナ質、炭化珪素質のものが挙げられるが、熱間強度や耐アルミ反応性の観点から、アルミナ質ポーラスチューブ製のセラミックチューブが好ましい。
【0025】
図2、図3に示すように、セラミックチューブ14は、一端14aが開口し、他端14bが有底状とされている。側板11には挿入穴15が形成され、挿入穴15にはセラミックファイバー製のパッキン16を介してセラミックチューブ14の他端14bが嵌合されている。一方、側板12には出湯室8(図1参照)につながる孔17が形成され、孔17に対応してパッキン13を介してセラミックチューブ14の一端14aが嵌合されている。
【0026】
図3に示すように、直径がDmmのセラミックチューブ14の両端はパッキン13、16の厚さSの幅が軸方向の伸び代とされている。また、セラミックチューブ14の端部は隙間Rの長さが側板11、12に保持され、隙間Rの部位周囲に側板12とセラミックチューブ14を固着するための耐火材が介在される。
【0027】
そして、セラミックチューブ14の他端14bは入湯側耐火材としてのファイバー系モルタル21により側板11に取り付けられている。ファイバー系モルタル21は弾性力を有し、セラミックチューブ14の膨張・収縮を吸収できるようになっている。セラミックチューブ14の一端14a(濾過された金属溶湯の出口側)は出湯側耐火材としての耐火セメント22により側板12に固定されている。耐火セメント22は固着強度が高く、セラミックチューブ14が膨張・収縮しても隙間が生じないようになっており、振動によってもファイバー系モルタルのように破壊されない。
【0028】
図5に示すように、ファイバー系モルタル21は、接着部の破壊までの力(固着強度)が、例えば、100kgfを下回り、弱い固着力を有している。また、セラミックチューブ14の引張り破壊荷重(引張強度)は、例えば、200kgf〜300kgfであり、ファイバー系モルタル21の固着強度がセラミックチューブ14の引張り破壊荷重の2分の1から3分の1とされていることが、耐熱衝撃性を確保する観点から好ましい。
【0029】
ファイバー系モルタル21は、セラミックファイバーと無機バインダーを含有したもので、セラミックファイバーとしてアルミナ−シリカ系のセラミックファイバーである。更に、例えば、セラミックファイバーを10wt%〜20wt%含有し、図6に示すように、トータルのアルミナ(Al2O3)の含有率が80%以上であり、シリカ(SiO2)が10%以上となっている。
【0030】
また、図5に示すように、耐火セメント22は、接着部の破壊までの力(固着強度)が、例えば、800kgfであり、強い固着力を有している。耐火セメント22としては、骨材粒度が細かい耐火セメントが好ましい。更に、図6に示すように、アルミナ(Al2O3)が60%程度、シリカ(SiO2)が40%程度の耐火セメントが好ましい。
【0031】
また、図6に示すように、ファイバー系モルタル21の圧縮強度は、例えば、常温及び800℃の処理後で、共に11kgf/cm2となっている。更に、耐火セメント22の圧縮強度は、例えば、常温で100kgf/cm2であり、800℃の処理後で200kgf/cm2となっている。
【0032】
側板11(入湯側側板)の圧縮強度より、側板12(出湯側側板)の圧縮強度の方が高いことが、熱によるセラミックチューブ14の膨張・収縮に伴うセラミックチューブ14の破損、セラミックチューブ14の側板11、12からの外れを防止する観点から好ましい。即ち、側板11の圧縮強度が低いとその部分でセラミックチューブ14の熱変動による長さ方向(軸方向)の変動を吸収することができ、側板12の圧縮強度が高いと出湯側でのセラミックチューブ14の外れを防止できる。その好ましい値は、それぞれ、2〜30kgf/cm2(常温)、50〜200kgf/cm2(常温)である。
【0033】
図5に示した値の荷重試験は、図7に示した試験装置により実施した。即ち、直径がD1mm(例えば、100mm)の試験片101(セラミックチューブ)を鏡板102(側板:耐火プレート)の保持部103に保持し、試験片101の周囲を耐火材104で固着した。保持部103の直径はD2mm(例えば、104mm)であり、試験片101の保持長さはRmm(例えば、26mm)とされ、試験片101の端部には厚さSmm(例えば、4mm)のパッキン105が介在されている。この状態で、荷重を試験片101にかけて破壊までの力を測定した。
【0034】
耐火材として耐火セメント22を用いた場合の固着力は、ファイバー系モルタル21の固着力よりも強く、ファイバー系モルタル21の固着強度がセラミックチューブ14の引張り破壊荷重の2分の1から3分の1とされている。そして、耐火セメント22の固着強度はセラミックチューブ14の引張強度の2〜4倍以上とされており、耐火セメント22の固着強度はファイバー系モルタル21の固着強度の8倍以上とされている。これは、耐火セメント22とセラミックチューブ14の固着が強固であり、強い力が作用した場合に接着部が外れる前にセラミックチューブ14が破損することになる。また、ファイバー系モルタル21の固着力が弱いので、力が作用した場合にセラミックチューブ14は破損せずに接着部が破損することになる。
【0035】
ファイバー系モルタル21及び耐火セメント22は塗布量が増加すると破壊強度が高くなる。ファイバー系モルタル21の塗布量は、100kgfの破壊強度を得るためには20〜30g程度必要であり、100kgfを下回る破壊強度を得るために最大で20〜30g程度のファイバー系モルタル21が用いられる。また、耐火セメント22の塗布量は、800kgfの破壊強度を得るためには40〜50g程度必要であり、800kgfの破壊強度を得るために40〜50g程度の耐火セメント22が用いられる。
【0036】
試験片101と略同程度の寸法のセラミックチューブ14の場合の衝撃試験の結果を図8乃至図10に基づいて説明する。
【0037】
図8に示すように、長さLのアーム111の先端に木片112が取り付けられた試験アームを用い、落差H1でアーム111を回動させて木片112によりセラミックチューブ14に繰り返し打撃を与えた。図9に示すように、木片112により衝撃を与える部位は、耐火材113により保持部114にセラミックチューブ14を固着した部位から軸方向に距離H2(例えば、100mm)離れた部位とした。図10に示すように、両側の耐火材113をファイバー系モルタルとした場合、600回の打撃で著しい損耗が認められた。打撃部位に近い側(図9中左側)の耐火材113を耐火セメントとした場合、1200回の打撃で損耗は認められなかった。
【0038】
このため、セラミックチューブ14をファイバー系モルタル21により側板11に取り付けると共に、耐火セメント22により側板12に固定することにより、振動に対して損耗のない構造とすることができる。
【0039】
上述した金属濾過装置1では、入湯口7からフィルタカセット3内に供給されたアルミニウム溶湯は、複数本のセラミックチューブ14で形成された複雑な流路を通過すると共にセラミックチューブ14の外周面から筒状の内部に送られて濾過されて介在物が除去される。濾過されて清浄な状態となったアルミニウム溶湯はセラミックチューブ14の一端14aの開口から孔17を通って出湯室8に送られ、出湯口9から出湯される。
【0040】
濾過に際して除去された介在物はセラミックチューブ14の表層に堆積し、アルミニウム溶湯の濾過が繰り返されると、セラミックチューブ14の表層に堆積した介在物により所定の流量が確保できなくなる。このため、所定の期間毎にフィルタカセット3の洗浄が行われる。フィルタカセット3の洗浄に際しては、洗浄ガス噴出手段10から洗浄ガス(アルゴンガス)を所定圧力で供給する。アルゴンガスは、多数の微小な気泡となってセラミックチューブ14の表層に堆積した介在物を除去し、介在物を浮き上がらせる。
【0041】
アルゴンガスが吹き込まれた際にはアルミニウム溶湯の温度が低下し、アルゴンガスを停止させた際にはアルミニウム溶湯の温度が上昇する。このため、セラミックチューブ14が温度変化により膨張・収縮を繰り返す。
【0042】
セラミックチューブ14の他端14bは弾性力を有するファイバー系モルタル21により耐火プレート11に取り付けられているので、セラミックチューブ14の膨張・収縮が耐火プレート11の取り付き部で吸収される。このため、セラミックチューブ14が膨張・収縮しても、亀裂が生じる虞がなくなる。
【0043】
一方、セラミックチューブ14の一端14aは耐火セメント22により耐火プレート12に固定されているので、固着強度が高くセラミックチューブ14が膨張・収縮しても固定部に隙間が生じない。また、振動により耐火セメント22が破壊されることはない。このため、アルミニウム溶湯の出口側で固定部が浸食されて介在物が発生することがなくなり、セラミックチューブ14の一端14aの開口から介在物が浸入する虞がなくなる。
【0044】
従って、隙間が生じることが濾過品質を左右する出口側で、即ち、セラミックチューブ14の一端14aでセラミックチューブ14が強固に耐火プレート12に固定されて隙間が生じる虞がなくなると共に、セラミックチューブ14の膨張・収縮がファイバー系モルタル21を介して他端14bの耐火プレート11の取り付き部で吸収される。
【0045】
よって、上述した金属濾過装置1では、急激な温度変化を繰り返し受けてもセラミックチューブ14の固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができる。
【0046】
図4に示すように、セラミックチューブ14の一端14aを耐火セメント22で耐火プレート12に固定し、セラミックチューブ14の他端14bをファイバー系モルタル21で耐火プレート12に取り付けた場合、出口側での隙間の発生がなくよい結果(○)となり、耐衝撃性において亀裂の発生がなく良い結果(○)が得られた。
【0047】
また、セラミックチューブ14の両端をファイバー系モルタル21で耐火プレート11、12に取り付けた場合、出口側での隙間が大きくなって難がある結果(×)となり、衝撃性において亀裂の発生がなく良い結果(○)となった。
【0048】
更に、セラミックチューブ14の両端を耐火セメント22で耐火プレート11、12に取り付けた場合、出口側での隙間の発生がなくよい結果(○)となり、衝撃性において亀裂が発生して難がある結果(×)が得られた。
【0049】
図4の結果からも明らかなように、本実施形態例では、急激な温度変化を繰り返し受けてもセラミックチューブの固着強度向上と耐熱衝撃性の維持とを両立させることができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、金属溶湯の濾過を行う金属濾過装置の産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態例に係る金属濾過装置の側断面図である。
【図2】フィルタカセットの断面図である。
【図3】図2中の要部詳細図である。
【図4】施工条件の結果を表した表図である。
【図5】耐火材とセラミックチューブの破壊強度を表した表図である。
【図6】耐火材の物性を表した表図である。
【図7】荷重試験の説明図である。
【図8】衝撃試験の説明図である。
【図9】衝撃試験の説明図である。
【図10】衝撃試験の結果を表した表図である。
【符号の説明】
【0052】
1 金属濾過装置
2 ユニット容器
3 フィルタカセット
4 前内壁
5 後内壁
6 くさび
7 入湯口
8 出湯室
9 出湯口
10 洗浄ガス噴出手段
11 側板(入湯側側板:耐火プレート)
12 側板(出湯側側板:耐火プレート)
13 パッキン
14 セラミックチューブ
15 挿入穴
17 孔
21 ファイバー系モルタル(入湯側耐火材)
22 耐火セメント(出湯側耐火材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入湯口と出湯口を有する金属濾過装置であって、
内部に設けられる出湯側側板及び入湯側側板と、
一端が開口し他端が有底状の長尺状をなし、一端が出湯側側板に取り付けられると共に他端が入湯側側板に取り付けられるセラミックチューブと
を備え、
セラミックチューブの開口側の端部を出湯側耐火材により出湯側側板に取り付けると共に、セラミックチューブの有底状側の端部を入湯側耐火材により入湯側側板に取り付け、
出湯側耐火材の固着強度をセラミックチューブの引張強度よりも高くし、入湯側耐火材の固着強度をセラミックチューブの引張強度よりも低くした
ことを特徴とする金属濾過装置。
【請求項2】
請求項1に記載の金属濾過装置において、
出湯側耐火材は耐火セメントであり、入湯側耐火材はファイバー系モルタルである
ことを特徴とする金属濾過装置。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の金属濾過装置において、
入湯側耐火材の固着強度はセラミックチューブの引張強度の2分の1から3分の1とされている
ことを特徴とする金属濾過装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の金属濾過装置において、
セラミックチューブに向けて洗浄ガスを噴出する洗浄ガス噴出手段をユニット容器の底部に備えたことを特徴とする金属濾過装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の金属濾過装置において、
セラミックチューブは、アルミナ質ポーラスチューブ製のセラミックチューブであることを特徴とする金属濾過装置。
【請求項6】
出湯側側板及び入湯側側板と、
一端が開口し他端が有底状の長尺状をなし、一端が出湯側側板に取り付けられると共に他端が入湯側側板に取り付けられるセラミックチューブと
を備え、
セラミックチューブの開口側の端部を出湯側耐火材により出湯側側板に取り付けると共に、セラミックチューブの有底状側の端部を入湯側耐火材により入湯側板に取り付け、
出湯側耐火材の固着強度をセラミックチューブの引張強度よりも高くし、入湯側耐火材の固着強度をセラミックチューブの引張強度よりも低くした
ことを特徴とするフィルタカセット。
【請求項1】
入湯口と出湯口を有する金属濾過装置であって、
内部に設けられる出湯側側板及び入湯側側板と、
一端が開口し他端が有底状の長尺状をなし、一端が出湯側側板に取り付けられると共に他端が入湯側側板に取り付けられるセラミックチューブと
を備え、
セラミックチューブの開口側の端部を出湯側耐火材により出湯側側板に取り付けると共に、セラミックチューブの有底状側の端部を入湯側耐火材により入湯側側板に取り付け、
出湯側耐火材の固着強度をセラミックチューブの引張強度よりも高くし、入湯側耐火材の固着強度をセラミックチューブの引張強度よりも低くした
ことを特徴とする金属濾過装置。
【請求項2】
請求項1に記載の金属濾過装置において、
出湯側耐火材は耐火セメントであり、入湯側耐火材はファイバー系モルタルである
ことを特徴とする金属濾過装置。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の金属濾過装置において、
入湯側耐火材の固着強度はセラミックチューブの引張強度の2分の1から3分の1とされている
ことを特徴とする金属濾過装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の金属濾過装置において、
セラミックチューブに向けて洗浄ガスを噴出する洗浄ガス噴出手段をユニット容器の底部に備えたことを特徴とする金属濾過装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の金属濾過装置において、
セラミックチューブは、アルミナ質ポーラスチューブ製のセラミックチューブであることを特徴とする金属濾過装置。
【請求項6】
出湯側側板及び入湯側側板と、
一端が開口し他端が有底状の長尺状をなし、一端が出湯側側板に取り付けられると共に他端が入湯側側板に取り付けられるセラミックチューブと
を備え、
セラミックチューブの開口側の端部を出湯側耐火材により出湯側側板に取り付けると共に、セラミックチューブの有底状側の端部を入湯側耐火材により入湯側板に取り付け、
出湯側耐火材の固着強度をセラミックチューブの引張強度よりも高くし、入湯側耐火材の固着強度をセラミックチューブの引張強度よりも低くした
ことを特徴とするフィルタカセット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−169709(P2007−169709A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368269(P2005−368269)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
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