説明

金属空気電池

【課題】セルの拘束力の均一化及び正極への酸素ガスの均一な供給が可能となる金属空気電池が求められている。
【解決手段】正極層、負極層、正極層及び負極層の間に配置された電解質層、正極層に隣接して電解質層とは反対側に配置された正極集電体層、並びに負極層に隣接して電解質層とは反対側に配置された負極集電体層を備えた金属空気電池であって、正極層が、正極層の側面部に酸素供給口を有し、並びに酸素供給口から連通する酸素拡散経路を含む、金属空気電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属空気電池に関係し、特に、正極の側面部に酸素供給口を有する金属空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話等の機器の普及、進歩に伴い、その電源である電池の高容量化が望まれている。このような中で、金属空気電池は、空気極において、大気中の酸素を正極活物質として利用して、当該酸素の酸化還元反応が行われ、一方、負極において、負極を構成する金属の酸化還元反応が行われることで、充電又は放電が可能であるため、エネルギー密度が高く、現在汎用されているリチウムイオン電池に優る高容量電池として注目されている(非特許文献1)。
【0003】
金属空気電池は、酸素ガスを正極に取り込むために、従来、多孔体の正極集電体及び多孔体の正極を用いた空気電池が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−96492号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)、「新しい構造の高性能リチウム空気電池を開発」、[online]、2009年2月24日報道発表、[平成23年8月19日検索]、インターネット<http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2009/pr20090224/pr20090224.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来、金属空気電池において、多孔体の正極及び正極集電体が用いられるが、酸素ガスを多孔体の集電体を通して多孔体の正極層に送るため、酸素ガス濃度が不均一になりやすいという問題点がある。
【0007】
したがって、上記問題を解決できる金属空気電池が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る金属空気電池は、正極層の側面部に酸素供給口を有し、且つ正極中に酸素供給口から連通する酸素拡散経路を含むものであり、正極集電体が多孔体でなくてもよい。
【0009】
本発明は、正極層、負極層、正極層及び負極層の間に配置された電解質層、正極層に隣接して電解質層とは反対側に配置された正極集電体層、並びに負極層に隣接して電解質層とは反対側に配置された負極集電体層を備えた金属空気電池であって、正極層が、正極層の側面部に酸素供給口を有し、並びに酸素供給口から連通する酸素拡散経路を含む、金属空気電池である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、従来の金属空気電池よりも、正極への酸素ガスのより均一な供給が可能となる金属空気電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】本発明の金属空気電池における、正極集電体層、正極層、電解質層、負極層、及び負極集電体層の第1の実施形態の構成を説明する側面模式図である。
【図1B】図1Aに示した金属空気電池における正極層のA−A断面の模式図である。
【図2A】本発明の金属空気電池における、正極集電体層、正極層、電解質層、負極層、及び負極集電体層の第2の実施形態の構成を説明する側面模式図である。
【図2B】図2Aに示した金属空気電池における正極層のB−B断面の模式図である。
【図3A】本発明の金属空気電池における、正極集電体層、正極層、電解質層、負極層、及び負極集電体層の第3の実施形態の構成を説明する側面模式図である。
【図3B】図3Aに示した金属空気電池における正極層のC−C断面の模式図である。
【図4A】本発明の金属空気電池における、正極集電体層、正極層、電解質層、負極層、及び負極集電体層の第4の実施形態の構成を説明する側面模式図である。
【図4B】図4Aに示した金属空気電池における正極層のD−D断面の模式図である。
【図5】本発明の金属空気電池における、正極集電体層、正極層、電解質層、負極層、及び負極集電体層の第5の実施形態の構成を説明する正面及び側面模式図である。
【図6】本発明の金属空気電池における、正極集電体層、正極層、電解質層、負極層、及び負極集電体層の第6の実施形態の構成を説明する正面及び側面模式図である。
【図7】本発明の金属空気電池における、正極集電体層、正極層、電解質層、負極層、及び負極集電体層の第7の実施形態の構成を説明する正面及び側面模式図である。
【図8】本発明の金属空気電池における、正極集電体層、正極層、電解質層、負極層、及び負極集電体層の第8の実施形態の構成を説明する正面及び側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る金属空気電池は、正極層、負極層、正極層及び負極層の間に配置された電解質層、正極層に隣接して電解質層とは反対側に配置された正極集電体層、並びに負極層に隣接して電解質層とは反対側に配置された負極集電体層を備えており、正極層が、正極層の側面部に酸素供給口を有し、且つ正極層中に酸素供給口から連通する酸素拡散経路を有している。
【0013】
従来、金属空気電池において、正極への酸素の供給経路についてはあまり検討されておらず、正極層の上面に配置した多孔体の正極集電体を通して、正極に酸素を送ることが行われている。
【0014】
この場合、酸素ガスの流れは、多孔体の正極集電体層表面から酸素ガスが取り込まれ、正極集電体層から正極層に向かって、正極集電体層及び正極層の積層面に垂直方向の一方向にのみ流れやすいが、酸素ガスをメッシュ等の多孔体を通して多孔体の正極層に送るため、酸素ガス濃度が不均一になりやすい。
【0015】
酸素ガス濃度が不均一になると、正極層及び/または正極集電体層に、負極金属の酸化物の析出物、例えばリチウム金属負極を用いた場合はLi22、Li2O等の析出物が不均一に形成されやすくなり、正極層中、正極集電体層中、または正極層及び正極集電体層の界面等において孔の目詰まりが発生しやすく、正極層への酸素ガスの供給が不十分になり、すぐに電池として機能しなくなる、といった問題や、負極においてデンドライトが発生しやすい等の問題があることが分かった。
【0016】
また、例えばメッシュ状の集電体を用いる場合、メッシュの片当たりによって集電体によるセルの拘束力にばらつきが生じやすく、あるいは平織りの集電体を用いても孔の部分に圧力が生じないため、セルの拘束力にばらつが生じやすく、拘束力にばらつきが生じると、セルの機械的強度の低下、充放電に伴うセルの体積変化によるサイクル特性の低下、界面抵抗のばらつきが生じやすく負極においてデンドライトが発生しやすい等、といった問題がおきやすくなることが分かった。
【0017】
これに対して、本発明に係る空気電池においては、正極層の側面部の酸素供給口から酸素ガスを取り込み、酸素供給口から連通する酸素拡散経路によって正極層中に酸素ガスを拡散させることにより、従来よりも、正極層に実質的に等方に酸素ガスを送ることが可能となる。また、本発明に係る空気電池においては、多孔体の正極集電体を用いる必要性がない。多孔体の正極集電体を使用することに制限されず、板状、箔状等の集電体を用いることができるようになり、例えば板状の正極集電体を用いることによって、セルの拘束力の均一化を図ることを可能にする。
【0018】
酸素供給口及び酸素供給口から連通する酸素拡散経路は、正極層に含まれる正極材によって構成され得る。好ましくは、正極材の少なくとも一部は柱状形状であり、柱状正極材によって形成される空間によって、酸素供給口及び酸素供給口から連通する酸素拡散経路が構成され得る。
【0019】
以下、図面を参照して本発明に係る金属空気電池を説明する。
【0020】
図1Aに、本発明に係る金属空気電池における、正極集電体層、正極層、電解質層、負極層、及び負極集電体層の第1の実施形態の構成を説明する側面模式図を示し、図1Bに、図1Aに示した金属空気電池における正極層のA−A断面の模式図を示す。
【0021】
図1Aに示すように、本発明の第1の実施形態による金属空気電池10は、正極層1、負極層2、正極層1及び負極層2の間に配置された電解質層3、正極層1に隣接して電解質層3とは反対側に配置された正極集電体層4、並びに負極層2に隣接して電解質層3とは反対側に配置された負極集電体層5を備えている。図1A及び1Bに示すように、正極層1が、複数の柱状正極材19を含むことができ、正極層1の側面部に酸素供給口17を有し、正極層1中に酸素供給口17から連通する酸素拡散経路18を有している。
【0022】
複数の柱状正極材19は、柱状正極材19の柱軸が電解質層3及び正極集電体層4の互いに対向する面に垂直になるように、電解質層3及び正極集電体層4の間に配置され得る。複数の柱状正極材19間の空間が、酸素供給口17及び酸素供給口17から連通する酸素拡散経路18を形成することができる。
【0023】
正極層1内に酸素拡散経路18が均一に形成されていることが好ましい。この場合、酸素ガスを正極材へ均一に供給しやすくなる。酸素ガスが正極材に均一に供給されると、利点の一つとして、負極金属酸化物の析出物の偏在を抑制することができる。酸素拡散経路18は正極層内において不均一に形成されていてもよい。酸素拡散経路18は、直線状及び/または曲線状の経路を有することができる。直線状の酸素拡散経路においては酸素ガスの通りが良くなるため、正極層内の少なくとも一部分において直線的な酸素拡散経路が形成されていてもよい。
【0024】
酸素ガスを正極材へ均一に供給するために、柱状正極材19は等間隔で並んでいることが好ましいが、等間隔で並んでいなくてもよい。また、複数の柱状正極材19の全てが互いに分離されていることが好ましいが、複数の柱状正極材19のいくつかが互いに接していてもよい。
【0025】
酸素ガスを正極材へ均一に供給するために、柱状正極材19は、正円柱、半円柱、若しくは1/4円柱、または楕円柱形状等の円柱形状であることが好ましいが、円柱形状に限られず、角柱形状、またはこれらの複合形状等、任意の形状の柱状正極材であることができる。また、複数の柱状正極材19は、それぞれが異なる形状の柱状正極材であってもよい。図1A及び1Bに模式的に示した金属空気電池10における正極材19は、正円柱及び半円柱を含んでいる。
【0026】
第1の実施形態による金属空気電池10によれば、正極材料と酸素との接触面積を大きくすることができるので、正極材料への酸素の溶解量が増大し、金属空気電池の出力を向上することができる。また、酸素ガスを均一に正極材料に供給することができるので、正規出物の偏析による目詰まりを抑制することができ、金属空気電池の特性が安定しやすい。また、正極層が、正極と酸素拡散層とを兼用した構造を有するため、電池体積の低減及び部品点数の低減が可能となり、エネルギー密度の向上及びコストの低減を図ることができる。
【0027】
また、第1の実施形態による金属空気電池10によれば、正極層がその側面に酸素供給口を有しているため、正極層の上面に配置する集電体として、メッシュ状などの特殊な集電体を用いなければならないという制約がない。メッシュ状集電体を用いて正極層の上面から酸素を正極内に取り込む従来構造の金属空気電池の場合、メッシュの片当たりによってセルの拘束力が不均一になりやすく、また、メッシュの孔を通じて正極層に一方向に酸素ガスを送る構造のため正極層及び正極集電体層内において酸素ガス濃度が不均一になりやすく、負極金属酸化物の析出物が正極層、正極集電体層、または正極層及び正極集電体層の界面等に偏析しやすく目詰まりしやすいといった問題がある。これに対して、第1の実施形態による金属空気電池によれば、正極層の側面部から酸素ガスを取り入れることができるため、板状、箔状等の連続体である通常の集電体を使用することができ、セルの拘束力をより均一化することができ、また、正極層内の酸素ガス濃度をより均一化することができ、正極における目詰まり抑制、負極におけるデンドライト抑制、サイクル性向上、及びコスト低減等を図ることができる。
【0028】
さらに、第1の実施形態による金属空気電池によれば、正極層が単層で構成されるため、正極層内に接触界面がなく、正極層内での優れた負極金属イオン輸送性を得やすい。
【0029】
図2Aに、本発明に係る金属空気電池における、正極集電体層、正極層、電解質層、負極層、及び負極集電体層の第2の実施形態の構成を説明する側面模式図を示し、図2Bに、図2Aに示した金属空気電池における正極層のB−B断面の模式図を示す。
【0030】
図2Aに示すように、本発明の第2の実施形態による金属空気電池20は、正極層1、負極層2、正極層1及び負極層2の間に配置された電解質層3、正極層1に隣接して電解質層3とは反対側に配置された正極集電体層4、並びに負極層2に隣接して電解質層3とは反対側に配置された負極集電体層5を備えている。図2A及び2Bに示すように、正極層1が、柱状体部分及び連続体部分を有する正極材29を含むことができ、正極層1の側面部に酸素供給口27を有し、正極層1中に酸素供給口27から連通する酸素拡散経路28を有している。そして、正極層1中における酸素供給口27及び酸素拡散経路28の密度が電解質層3側の領域よりも正極集電体層4側の領域において高くなるように、正極材29並びに酸素供給口27及び酸素拡散経路28が形成されている。
【0031】
一態様において、正極層1中における酸素供給口27及び酸素拡散経路28が、正極集電体層4に接し、且つ電解質層3には接しないように形成され得る。正極材29は、図2AのB−B線の断面においては図2Bに示すように複数の円柱形状を有して酸素拡散経路28を画定し、且つ電解質層3に接する領域では連続体構造を有することができ、正極層1と電解質層3との界面において、正極材29と電解質層3とが、界面の全面にわたって接することができる。
【0032】
正極材29は、複数の円柱部分の柱軸が電解質層3及び正極集電体層4の互いに対向する面に垂直になるように、電解質層3及び正極集電体層4の間に配置され得る。複数の円柱部分は、少なくとも一部が互いに分離されて、酸素供給口27及び酸素供給口27から連通する酸素拡散経路28を形成することができる。
【0033】
正極材29の円柱部分は、空気を均一に正極材に供給するために正円柱、半円柱、若しくは1/4円柱、または楕円柱形状等の円柱形状であることが好ましいが、円柱形状に限られず、角柱形状、またはこれらの複合形状等、任意の形状の柱状正極材であることができる。また、正極材29の複数の円柱部分は、それぞれが異なる形状の柱状正極材であってもよい。図2A及び2Bに模式的に示した金属空気電池20における正極材29は、正円柱及び半円柱を含んでいる。
【0034】
第2の実施形態による金属空気電池によれば、上述の第1の実施形態による金属空気電池による効果に加えて、正極材と電解質層との接触面積を大きくすることができることから、電解質層と正極層との間の負極金属イオン伝導性の向上及び均一化を図ることができる。
【0035】
図3Aに、本発明に係る金属空気電池における、正極集電体層、正極層、電解質層、負極層、及び負極集電体層の第3の実施形態の構成を説明する側面模式図を示し、図3Bに、図3Aに示した金属空気電池における正極層のC−C断面の模式図を示す。
【0036】
図3Aに示すように、本発明の第3の実施形態による金属空気電池30は、正極層1、負極層2、正極層1及び負極層2の間に配置された電解質層3、正極層1に隣接して電解質層3とは反対側に配置された正極集電体層4、並びに負極層2に隣接して電解質層3とは反対側に配置された負極集電体層5を備えている。図3A及び3Bに示すように、正極層1が、柱状体部分及び連続体部分を有する正極材39を含むことができ、正極層1の側面部に酸素供給口37を有し、正極層1中に酸素供給口37から連通する酸素拡散経路38を有している。そして、正極層1中における酸素供給口37及び酸素拡散経路38の密度が、正極集電体層4側の領域よりも電解質層3側の領域において高くなるように形成されている。
【0037】
一態様において、正極層1中における酸素供給口37及び酸素拡散経路38が、電解質層3に接し、且つ正極集電体層4には接しないように形成され得る。正極材39は、図3AのC−C線の断面においては、図3Bに示すように、複数の円柱形状を有して酸素拡散経路38を画定し、且つ正極集電体層4に接する領域では連続体構造を有することができる。
【0038】
正極材39は、複数の円柱部分の柱軸が電解質層3及び正極集電体層4の互いに対向する面に垂直になるように、電解質層3及び正極集電体層4の間に配置され得る。複数の円柱部分は、少なくとも一部が互いに分離されて、酸素供給口37及び酸素供給口37から連通する酸素拡散経路38を形成することができる。
【0039】
正極材39の円柱部分は、空気を均一に正極材に供給するために正円柱、半円柱、若しくは1/4円柱、または楕円柱形状等の円柱形状であることが好ましいが、円柱形状に限られず、角柱形状、またはこれらの複合形状等、任意の形状の柱状正極材であることができる。また、正極材39の複数の円柱部分は、それぞれが異なる形状の柱状正極材であってもよい。図3A及び3Bに模式的に示した金属空気電池30における正極材39は、正円柱及び半円柱を含んでいる。
【0040】
第3の実施形態による金属空気電池によれば、上述の第1の実施形態による金属空気電池による効果に加えて、正極材と集電体層との接触面積を大きくすることができることから、正極層と集電体層との間の電子伝導性の向上及び均一化を図ることができる。
【0041】
図4Aに、本発明に係る金属空気電池における、正極集電体層、正極層、電解質層、負極層、及び負極集電体層の第4の実施形態の構成を説明する側面模式図を示し、図4Bに、図4Aに示した金属空気電池における正極層のD−D断面の模式図を示す。
【0042】
図4Aに示すように、本発明の第4の実施形態による金属空気電池40は、正極層1、負極層2、正極層1及び負極層2の間に配置された電解質層3、正極層1に隣接して電解質層3とは反対側に配置された正極集電体層4、並びに負極層2に隣接して電解質層3とは反対側に配置された負極集電体層5を備えている。図4A及び4Bに示すように、正極層1が、柱状体部分及び連続体部分を有する正極材49を含むことができ、正極層1の側面部に酸素供給口47を有し、正極層1中に酸素供給口47から連通する酸素拡散経路48を有している。そして、正極層1中における酸素供給口47及び酸素拡散経路48の密度が、電解質層3側及び正極集電体層4側の領域よりも、正極層1の略中央部において高くなるように形成されている。
【0043】
一態様において、正極層1中における酸素供給口47及び酸素拡散経路48が、電解質層3及び正極集電体層4に接しないように形成され得る。正極材49は、図4AのD−D線の断面において、図4Bに示すように、複数の円柱形状を有して酸素拡散経路48を画定し、且つ電解質層3及び正極集電体層4に接する領域では連続体構造を有することができる。
【0044】
正極材49は、複数の円柱部分の柱軸が電解質層3及び正極集電体層4の互いに対向する面に垂直になるように、電解質層3及び正極集電体層4の間に配置され得る。複数の円柱部分は、少なくとも一部が互いに分離されて、酸素供給口47及び酸素供給口47から連通する酸素拡散経路48を形成することができる。
【0045】
正極材49の円柱部分は、空気を均一に正極材に供給するために正円柱、半円柱、若しくは1/4円柱、または楕円柱形状等の円柱形状であることが好ましいが、円柱形状に限られず、角柱形状、またはこれらの複合形状等、任意の形状の柱状正極材であることができる。また、正極材49の複数の円柱部分は、それぞれが異なる形状の柱状正極材であってもよい。図4A及び4Bに模式的に示した金属空気電池40における正極材49は、正円柱及び半円柱を含んでいる。
【0046】
第4の実施形態による金属空気電池によれば、上述の第1の実施形態による金属空気電池による効果に加えて、正極材と電解質層との接触面積を大きくすることができ、且つ正極材と集電体層との接触面積を大きくすることができることから、電解質層と正極層との間の負極金属イオン伝導性の向上及び均一化と、正極層と集電体層との間の電子伝導性の向上及び均一化とを図ることができる。さらに、板状または箔状の集電体を用いた場合に、セルの拘束力をより均一にかけやすい。
【0047】
第1〜4の実施形態による金属空気電池において、酸素ガスを正極材に均一に供給するために、酸素供給口は正極層の全ての側面に均一に形成されていることが好ましく、例えば電池が直方体形状の場合、4つの正極側面の全てに均一に酸素供給口が形成されていることが好ましく、電池が円柱形状の場合、曲面形状である正極側面に均一に酸素供給口が形成されていることが好ましい。ただし、酸素供給口は正極層の側面の一部のみに形成されていてもよく、例えば電池が直方体形状の場合、4つの正極側面のうち対向する2面に酸素供給口が形成されていてもよい。
【0048】
図5に、本発明に係る金属空気電池における、正極集電体層、正極層、電解質層、負極層、及び負極集電体層の第5の実施形態の構成を説明する正面及び側面模式図を示す。
【0049】
図5に示すように、本発明の第5の実施形態による金属空気電池は、正極層1、負極層2、正極層1及び負極層2の間に配置された電解質層3、正極層1に隣接して電解質層3とは反対側に配置された正極集電体層4、並びに負極層2に隣接して電解質層3とは反対側に配置された負極集電体層5を備えている。正極層1が、複数の柱状正極材59を含むことができ、正極層1の側面部に酸素供給口57を有し、正極層1中に酸素供給口57から連通する酸素拡散経路58を有している。
【0050】
正極材59は、柱状正極材59の柱軸が電解質層3及び正極集電体層4の互いに対向する面に並行になり、且つ互いの柱軸が並行になるように、電解質層3及び正極集電体層4の間に配置され得る。複数の柱状正極材59間の隙間が、酸素供給口57及び酸素供給口57から連通する酸素拡散経路58を形成することができる。
【0051】
酸素ガスを正極材へ均一に供給するために、柱状正極材59は、正円柱、半円柱、若しくは1/4円柱、または楕円柱形状等の円柱形状であることが好ましいが、円柱形状に限られず、酸素拡散経路58を形成することができるものであれば、角柱形状、またはこれらの複合形状等、任意の形状の柱状正極材であることができる。柱状正極材59は中空形状であることもできる。また、複数の柱状正極材59は、それぞれが異なる形状の柱状正極材であってもよい。図5に模式的に示した金属空気電池50における正極材59は、正円柱及び半円柱を含んでいる。
【0052】
第5の実施形態による金属空気電池によれば、上述の第1の実施形態による金属空気電池による効果と同様の効果を得ることができ、さらに、複数の柱状正極材が電解質層3及び正極集電体層4の互いに対向する面に並行に配置されているため、弾力性に優れ、充放電に伴う電池の膨張収縮を緩和することができ、電池の耐久性を向上することができる。
【0053】
図6に、本発明に係る金属空気電池における、正極集電体層、正極層、電解質層、負極層、及び負極集電体層の第6の実施形態の構成を説明する正面及び側面模式図を示す。
【0054】
図6に示すように、本発明の第6の実施形態による金属空気電池60は、正極層1、負極層2、正極層1及び負極層2の間に配置された電解質層3、正極層1に隣接して電解質層3とは反対側に配置された正極集電体層4、並びに負極層2に隣接して電解質層3とは反対側に配置された負極集電体層5を備えている。正極層1が、複数の柱状正極材69を含むことができ、正極層1の側面部に酸素供給口67を有し、正極層1中に酸素供給口67から連通する酸素拡散経路68を有している。
【0055】
図6に示すように、正極層1は複数の柱状正極材69を含み、電解質層3に接する正極材が半円柱状正極材であり、半円の平面部分が電解質層3に接している。
【0056】
正極材69は、柱状正極材69の柱軸が電解質層3及び正極集電体層4の互いに対向する面に並行になり、且つ互いの柱軸が並行になるように、電解質層3及び正極集電体層4の間に配置され得る。複数の柱状正極材69間の隙間が、酸素供給口67及び酸素供給口67から連通する酸素拡散経路68を形成することができる。
【0057】
酸素ガスを正極材へ均一に供給するために、柱状正極材69は、正円柱、半円柱、若しくは1/4円柱、または楕円柱形状等の円柱形状であることが好ましいが、円柱形状に限られず、酸素拡散経路68を形成することができるものであれば、角柱形状、またはこれらの複合形状等、任意の形状の柱状正極材であることができる。柱状正極材69は中空形状であることもできる。また、複数の柱状正極材69は、それぞれが異なる形状の柱状正極材であってもよい。図6に模式的に示した金属空気電池60における正極材69は、正円柱、半円柱、及び1/4円柱を含んでいる。
【0058】
第6の実施形態による金属空気電池によれば、上述の第5の実施形態による金属空気電池による効果に加えて、正極層と電解質層との間の接触面積が増加することから、正極層及び電解質層の間の接着性の向上及び、正極層及び電解質層の間の負極金属イオン輸送性の向上及び均一化を図ることができる。
【0059】
図7に、本発明に係る金属空気電池における、正極集電体層、正極層、電解質層、負極層、及び負極集電体層の第7の実施形態の構成を説明する正面及び側面模式図を示す。
【0060】
図7に示すように、本発明の第7の実施形態による金属空気電池70は、正極層1、負極層2、正極層1及び負極層2の間に配置された電解質層3、正極層1に隣接して電解質層3とは反対側に配置された正極集電体層4、並びに負極層2に隣接して電解質層3とは反対側に配置された負極集電体層5を備えている。正極層1が、複数の柱状正極材79を含むことができ、正極層1の側面部に酸素供給口77を有し、正極層1中に酸素供給口77から連通する酸素拡散経路78を有している。
【0061】
図7に示すように、正極層1は複数の柱状正極材79を含み、正極集電体層4に接する正極材が半円柱状正極材であり、半円の平面部分が正極集電体層4に接している。
【0062】
正極材79は、柱状正極材79の柱軸が電解質層3及び正極集電体層4の互いに対向する面に並行になり、且つ互いの柱軸が並行になるように、電解質層3及び正極集電体層4の間に配置され得る。複数の柱状正極材79間の隙間が、酸素供給口77及び酸素供給口77から連通する酸素拡散経路78を形成することができる。
【0063】
酸素ガスを正極材へ均一に供給するために、柱状正極材79は、正円柱、半円柱、若しくは1/4円柱、または楕円柱形状等の円柱形状であることが好ましいが、円柱形状に限られず、酸素拡散経路78を形成することができるものであれば、角柱形状、またはこれらの複合形状等、任意の形状の柱状正極材であることができる。柱状正極材79は中空形状であることもできる。また、複数の柱状正極材79は、それぞれが異なる形状の柱状正極材であってもよい。図7に模式的に示した金属空気電池70における正極材79は、正円柱、半円柱、及び1/4円柱を含んでいる。
【0064】
第7の実施形態による金属空気電池によれば、上述の第5の実施形態による金属空気電池による効果に加えて、正極層と正極集電体層との間の接触面積が増加することから、正極層及び正極集電体層の間の接着性の向上及び、正極層及び正極集電体層の間の電子伝導性の向上及び均一化を図ることができる。
【0065】
図8に、本発明に係る金属空気電池における、正極集電体層、正極層、電解質層、負極層、及び負極集電体層の第8の実施形態の構成を説明する正面及び側面模式図を示す。
【0066】
図8に示すように、本発明の第8の実施形態による金属空気電池80は、正極層1、負極層2、正極層1及び負極層2の間に配置された電解質層3、正極層1に隣接して電解質層3とは反対側に配置された正極集電体層4、並びに負極層2に隣接して電解質層3とは反対側に配置された負極集電体層5を備えている。正極層1が、複数の柱状正極材79を含むことができ、正極層1の側面部に酸素供給口87を有し、正極層1中に酸素供給口87から連通する酸素拡散経路88を有している。
【0067】
図8に示すように、正極層1は複数の柱状正極材89を含み、電解質層3及び正極集電体層4に接する正極材が半円柱状正極材であり、半円の平面部分が電解質層3及び正極集電体層4に接している。
【0068】
正極材89は、柱状正極材89の柱軸が電解質層3及び正極集電体層4の互いに対向する面に並行になり、且つ互いの柱軸が並行になるように、電解質層3及び正極集電体層4の間に配置され得る。複数の柱状正極材89間の隙間が、酸素供給口87及び酸素供給口87から連通する酸素拡散経路88を形成することができる。
【0069】
酸素ガスを正極材へ均一に供給するために、柱状正極材89は、正円柱、半円柱、若しくは1/4円柱、または楕円柱形状等の円柱形状であることが好ましいが、円柱形状に限られず、酸素拡散経路88を形成することができるものであれば、角柱形状、またはこれらの複合形状等、任意の形状の柱状正極材であることができる。柱状正極材89は中空形状であることもできる。また、複数の柱状正極材89は、それぞれが異なる形状の柱状正極材であってもよい。図8に模式的に示した金属空気電池80における正極材89は、正円柱、半円柱、及び1/4円柱を含んでいる。
【0070】
第8の実施形態による金属空気電池によれば、上述の第5の実施形態による金属空気電池による効果に加えて、正極層と電解質層との間の接触面積が増加することから、正極層及び電解質層の間の接着性の向上及び、正極層及び電解質層の間の負極金属イオン輸送性の向上及び均一化を図ることができ、並びに正極層と正極集電体層との間の接触面積が増加することから、正極層及び正極集電体層の間の接着性の向上及び、正極層及び正極集電体層の間の電子伝導性の向上及び均一化を図ることができる。さらに、板状または箔状の集電体を用いた場合に、セルの拘束力をより均一にかけやすい。
【0071】
本発明に係る金属空気電池に含まれる正極層は、正極層の体積を大きくすれば電池容量を増やすことができるが、概して、正極層の縦方向及び横方向の大きさは、自動車、携帯機器等の所望の用途に応じて決めることができ、正極層の厚みは容量と出力とのバランスを考慮して決めることができる。
【0072】
正極層内の酸素拡散経路と正極材との体積比は所望の電池特性に応じて決定することができる。正極材の体積を大きくすれば電池容量を増やすことができ、酸素拡散経路の体積を大きくすれば電池出力を大きくすることができる。概して、正極層内において正極材の体積が酸素拡散経路の体積よりも大きくなるように配置することが好ましく、この場合、電池の容量を確保しつつ大きな出力を得やすくなる。
【0073】
いずれの実施形態においても、酸素供給口から連通する酸素拡散経路は、直線状または非直線状であってもよい。正極材への酸素の供給を向上するという点で直線状が好ましく、酸素供給口から連通する酸素拡散経路のうちの少なくとも1つが好ましくは直線状である。
【0074】
本発明に係る金属空気電池においては、酸素供給口を正極層の側面に備えているため、正極層の上面に配置する集電体として、メッシュ状の集電体を用いる必要性がなく、板状、箔状等の集電体を用いることができる。メッシュ状等の多孔体の集電体に比べて、箔状等の集電体を用いる場合、セルの拘束力のばらつきを低減することができる。
【0075】
いずれの実施形態においても、正極層に含まれる正極材は、導電材を含むことができる。導電材としては、特に限定されないが、例えばカーボンが挙げられ、カーボンとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、メソポーラスカーボン等のカーボンブラック、活性炭、カーボン炭素繊維等が挙げられ、比表面積の大きいカーボン材料が好ましく用いられる。
【0076】
正極材は触媒を含んでもよい。触媒としては、負極金属及び酸素の酸化還元触媒として機能するものを用いることができ、特に限定されないが、例えば、二酸化マンガン、酸化コバルト、酸化セリウム等の金属酸化物、Pt、Pd等の貴金属、Co等の遷移金属、コバルトフタロシアニン等の金属フタロシアニン等が挙げられる。
【0077】
正極材は電解質を含んでもよい。電解質としては、正極層及び負極層の間で金属イオンの伝導を行うものであり、負極層の金属種に応じたイオン伝導性を示す材料であれば、液体電解質、固体電解質、ゲル状電解質、ポリマー電解質、またはそれらの組み合わせを使用することができる。
【0078】
液体電解質としては、特に限定されないが、有機電解液、イオン液体等、通常用いられる液体電解質を用いることができる。イオン液体としては、例えば酸素ラジカル耐性が高い溶媒及びリチウム塩を混合したイオン液体を用いることが好ましく、例えばN−メチル−N−プロピルピペリジニウムビストリフルオロメタンスルフォニルアミドと、リチウムビストリフルオロメタンスルフォニルアミドとを混合したイオン液体等が挙げられる。
【0079】
固体電解質としては、特に限定されないが、例えば、Li2S−SiS2、LiI−Li2S−SiS2、LiI−Li2S−P25、LiI−Li2S−B23、Li3PO4−Li2S−Si2S、Li3PO4−Li2S−SiS2、LiPO4−Li2S−SiS、LiI−Li2S−P25、LiI−Li3PO4−P25、若しくはLi2S−P25等の硫化物系固体電解質、Li2O−B23−P25、Li2O−SiO2、Li2O−B23、若しくはLi2O−B23−ZnO等の酸化物系非晶質固体電解質、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO43、Li1+x+yxTi2-xSiy3-y12(Aは、AlまたはGa、0≦x≦0.4、0<y≦0.6)、[(B1/2Li1/21-zz]TiO3(Bは、La、Pr、Nd、またはSm、CはSrまたはBa、0≦z≦0.5)、Li5La3Ta212、Li7La3Zr212、Li6BaLa2Ta212、若しくはLi3.6Si0.60.44等の結晶質酸化物、Li3PO(4-3/2w)w(w<1)等の結晶質酸窒化物、またはLiI、LiI−Al23、Li3N、若しくはLi3N−LiI−LiOH等が挙げられる。
【0080】
ポリマー電解質としては、特に限定されないが、リチウム塩を含むポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、またはポリアクリロニトリル等の半固体のポリマー電解質が挙げられる。
【0081】
正極材はバインダーを含むことができる。バインダーとしては、特に限定されないが、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等のフッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂、またはスチレンブタジエンゴム(SBR)等を用いることができる。
【0082】
本発明に係る金属空気電池の正極層と負極層との間にはセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布、ポリフェニレンスルフィド製不織布等の高分子不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等の微多孔フィルム、またはこれらの組み合わせを使用することができる。電解質として液体電解質を用いた場合、セパレータに電解液を含浸させて電解質層としてもよい。
【0083】
本発明に係る金属空気電池に含まれる負極層は、負極活物質を含有する層である。負極活物質としては、金属または合金材料を用いることができ、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム等の第13族元素、亜鉛、鉄等の遷移金属、またはこれらの金属を含有する合金材料が挙げられる。
【0084】
また、負極活物質として、リチウム元素を含む合金、酸化物、窒化物、または硫化物を用いることができる。リチウム元素を有する合金としては、例えばリチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等を挙げることができる。リチウム元素を有する金属酸化物としては、例えばリチウムチタン酸化物等を挙げることができる。また、リチウム元素を含有する金属窒化物としては、例えばリチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等を挙げることができる。
【0085】
負極層は、導電性材料及び/またはバインダーをさらに含有してもよい。例えば、負極活物質が板状または箔状である場合は、負極活物質のみを含有する負極層とすることができ、負極活物質が粉末状である場合は、負極活物質及びバインダーを有する負極層とすることができる。なお、導電性材料及びバインダーについては、上述の正極層に用いられ得る材料と同様のものを用いることができる。
【0086】
本発明に係る金属空気電池は外装材を有することができる。外装材としては、特に限定されないが、金属缶、樹脂、ラミネートパック等、金属空気電池に通常用いられる材料を用いることができる。本発明に係る金属空気電池においては、例えば、電解質として液体電解質を用いるときに外装材を有することができる。外装材においては、正極層の側面近傍の位置に酸素を取り込むための孔及び酸素透過膜を配置して、酸素供給口から酸素を取り込めるようにしてもよい。撥水膜を所望の位置に配置してもよい。外装材として金属材料を用いる場合は、正極と負極との間の絶縁のために、正極層と負極層との間に絶縁樹脂等を介在させたり、外装材と電極との間にろ紙を配置する等してもよい。
【0087】
外装材には、酸素を供給するための孔は、任意の位置に設けられ得るが、好ましくは、正極層の側面部の酸素供給口に酸素ガスを効率よく送り込める個所に設けられ得る。
【0088】
本発明に係る金属空気電池の正極層の形成は、任意の方法で作成され得る。例えば、テンプレートを用いて正極層を形成することができる。例えば、カーボン粒子及びバインダーを含む正極材を形成する場合、所定量のカーボン粒子及びバインダーに適量のエタノール等の溶媒を加えて混合し、得られた混合物を所定の形状を有するテンプレートに流し込んで乾燥及び所望により熱処理等を行って、所望の形状の正極材を得ることができる。前記工程にプレス成形を加えてもよい。別法では、押出成形等によって正極材を得ることもできる。本発明の金属空気電池に含まれる電解質層及び負極層の形成、並びに金属空気電池の形成は、従来行われている任意の方法で行うことができる。
【0089】
本発明の金属空気電池の形状は、特に限定されず、円筒型、角型、ボタン型、コイン型、または扁平型等、所望の形状をとることができる。
【0090】
本発明の金属空気電池は、二次電池として使用することができるものであるが、一次電池として使用してもよい。
【0091】
第1〜4の実施形態による金属空気電池及び第5〜8の実施形態による金属空気電池は、共通の技術的思想を有する。すなわち、第1〜8の実施形態による金属空気電池は、酸素供給口及び酸素供給口から連通する酸素拡散経路の正極層中の密度が、正極層中において実質的に均一であるか、電解質層側の領域よりも正極集電体層側の領域において高いか、または正極集電体層側の領域よりも電解質層側の領域において高いか、正極層の中央部において高い構成を有する点で共通する。また、第1〜8の実施形態による金属空気電池は、正極材が、正極層中において実質的に均一に配置されているか、電解質層との界面の全面にわたって接する部分を有するか、正極集電体層との界面の全面にわたって接する部分を有するか、または電解質層及び正極集電体層との界面の全面にわたって接している部分を有する構成を有する点で共通する。
【0092】
第1〜8の実施形態による金属空気電池は、金属空気電池に用いる正極材等の材料や電池としての所望の特性に応じて、選択され得る。例えば、高出力型の電池を得たい場合は、酸素ガスを正極層により多く取り込むために、第1または第5の実施形態を選択することができる。電池の容量を大きくしたい場合は、正極層内における正極材の体積比率を大きくできる第4または第8の実施形態による金属空気電池を選択してもよい。また、例えば、電解質層3として固体電解質を用いる場合には、電解質層と正極層との界面における負極金属イオン伝導性を向上させるために、第2、第4、第6、または第8の実施形態による金属空気電池を選択することができ、電解質層3として液体電解質を用いる場合には、電解質層と正極層との界面における負極金属イオン伝導性はさほど問題とならないため、電子伝導性の向上等を目的として第3または第7の実施形態による金属空気電池を選択してもよい。
【0093】
本発明に係る金属空気電池は、第1〜8の実施形態による金属空気電池に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0094】
1 正極層
2 負極層
3 電解質層
4 正極集電体層
5 負極集電体層
10 第1の実施形態による金属空気電池
17 酸素供給口
18 酸素拡散経路
19 正極材
20 第2の実施形態による金属空気電池
27 酸素供給口
28 酸素拡散経路
29 正極材
30 第3の実施形態による金属空気電池
37 酸素供給口
38 酸素拡散経路
39 正極材
40 第4の実施形態による金属空気電池
47 酸素供給口
48 酸素拡散経路
49 正極材
50 第5の実施形態による金属空気電池
57 酸素供給口
58 酸素拡散経路
59 正極材
60 第6の実施形態による金属空気電池
67 酸素供給口
68 酸素拡散経路
69 正極材
70 第7の実施形態による金属空気電池
77 酸素供給口
78 酸素拡散経路
79 正極材
80 第8の実施形態による金属空気電池
87 酸素供給口
88 酸素拡散経路
89 正極材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層、負極層、前記正極層及び負極層の間に配置された電解質層、前記正極層に隣接して前記電解質層とは反対側に配置された正極集電体層、並びに前記負極層に隣接して前記電解質層とは反対側に配置された負極集電体層を備えた金属空気電池であって、前記正極層が、正極材を含み、前記正極層の側面部に酸素供給口を有し、並びに前記酸素供給口から連通する酸素拡散経路を含む、金属空気電池。
【請求項2】
前記正極材が複数の柱状正極材を含む、請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項3】
前記複数の柱状正極材の柱軸が前記電解質層及び前記正極集電体層が互いに対向する面に垂直になるように、前記複数の柱状正極材が前記電解質層及び前記正極集電体層の間に配置され、前記複数の柱状正極材間の空間が、前記酸素供給口及び前記酸素供給口から連通する酸素拡散経路を形成している、請求項2に記載の金属空気電池。
【請求項4】
前記複数の柱状正極材の柱軸が前記電解質層及び前記正極集電体層が互いに対向する面に並行になり且つ互いの柱軸が並行になるように、前記複数の柱状正極材が前記電解質層及び前記正極集電体層の間に配置され、前記複数の柱状正極材間の空間が、前記酸素供給口及び前記酸素供給口から連通する酸素拡散経路を形成している、請求項2に記載の金属空気電池。
【請求項5】
前記酸素供給口及び前記酸素供給口から連通する酸素拡散経路の前記正極層中の密度が、前記電解質層側の領域よりも前記正極集電体層側の領域において高い、請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項6】
前記酸素供給口及び前記酸素供給口から連通する酸素拡散経路の前記正極層中の密度が、前記正極集電体層側の領域よりも前記電解質層側の領域において高い、請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項7】
前記酸素供給口及び前記酸素供給口から連通する酸素拡散経路の前記正極層中の密度が、前記電解質層側及び前記正極集電体層側の領域よりも、前記正極層の中央部において高い、請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項8】
前記正極層と前記正極集電体層との界面において、前記正極材と前記正極集電体層とが、前記界面の全面にわたって接している、請求項1〜4及び請求項6〜7のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項9】
前記正極層と前記電解質層との界面において、前記正極材と前記電解質層とが、前記界面の全面にわたって接している、請求項1〜5及び請求項7のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項10】
前記正極層と前記電解質層及び前記正極集電体層とのそれぞれの界面において、前記正極材と前記電解質層及び前記正極集電体層とが、前記それぞれの界面の全面にわたって接している、請求項1〜4及び請求項7のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項11】
前記柱状正極材が円柱形状を有する、請求項2に記載の金属空気電池。
【請求項12】
前記柱状正極材が角柱形状を有する、請求項2に記載の金属空気電池。
【請求項13】
前記正極集電体層が板状または箔状である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の金属空気電池。
【請求項14】
前記酸素供給口から連通する酸素拡散経路のうちの少なくとも1つが直線状である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の金属空気電池。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−58336(P2013−58336A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194982(P2011−194982)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】