説明

金属箔およびリード線の保護において耐熱性不粘着剤を使用する装置および方法

本体内に形成された1つ以上のピンチシールによって気密的にシールされているチャンバーを形成する石英またはガラス本体を有する装置において、金属箔はピンチまたはシュリンクシールを通じて電気的接続を提供する。本発明は、ピンチシールを形成する前にシリカを含む膜で箔の少なくとも一部を被覆し、膜の少なくとも一部に耐熱性不粘着剤を適用することによって、金属箔の一部を腐食から保護する方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は一部継続出願であり、2003年11月7日出願の米国特許出願番号10/702,558の分割出願であってその優先権を主張する2006年10月11日出願の同時係属米国特許出願番号11/545,469の出願日の利益を主張する。米国特許出願番号11/545,469は、2002年11月7日出願の米国仮出願番号60/424,338の出願日の利益を主張し、現在は米国特許番号7,153,179となっている。また、前記各出願の全体は、参照によって本願に組み込まれる。
【0002】
本願はまた、2008年4月28日出願の米国仮出願番号61/071,417の出願日の利益も主張し、その全体は参照によって本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本願の内容は、溶融石英または硬質ガラスなどのガラス質材料に形成された密封圧縮、ピンチ、またはシュリンクシールを通る電気経路を提供するための、電灯などの装置における電気リード線アセンブリに関する。
【0004】
特定の装置においてはしばしば、ガラス質材料に形成されたピンチまたはシュリンクシールを通る導電路を提供する必要がある。たとえば、ハロゲン白熱フィラメント電球および高輝度放電(HID)発光管などの電灯のような装置において、発光チャンバーは、チャンバーを密封する1つ以上のピンチシールを有するガラス質材料で形成される。このような電灯において、通常は、管の1つ以上の部分に電気アセンブリを配置し、管を挟んで(以下、ピンチングという)アセンブリの部分の周囲に気密シールを形成すること(以下、ピンチシールという)により、チャンバー内部からチャンバー外部への1つ以上の導電路が形成される。電気リード線アセンブリは通常、箔に対し機械的に固定されその両端から延在する導電性リード線を有する金属箔を含む。アセンブリは、気密シールを形成するため一緒にピンチングもしくは収縮処理されたガラス質材料の一部を通る導電路を、箔が形成するように配置される。
【0005】
このような電気リード線アセンブリの箔は、いかなる適切な材料も使用することができるが、高温での安定性、比較的低い熱膨張係数、良好な延性、および十分な導電性のため、主にモリブデンから形成される。しかし、摂氏約350度を越える温度で酸素に曝されると、モリブデンは急速に酸化する。電灯の電気リード線アセンブリに含まれる箔はしばしば摂氏約350度を越える温度に曝されるので、金属箔は非常に酸化しやすく、その結果、電気経路またはガスシールの完全性が破れ、電灯の故障を引き起こす。通常、反応性雰囲気に曝されるモリブデン箔は、摂氏約350度未満では目に見えて酸化することはない。摂氏約350度を越える温度では、周囲空気中の酸素とモリブデン箔との間の反応率が著しく上昇し、結果的に箔の腐食および電灯の耐用年数の相当な短縮を引き起こす。このような酸化の影響を特に受けやすい領域は、外部リード線を箔に接続するスポット溶接、および外部リード線に隣接する箔上の領域を含む。
【0006】
図1aは、高輝度放電灯向けの従来型発光管の模式図である。図1aを参照すると、発光管100は、石英などの光透過性材料で形成されている。発光管100は、末端部115、120をピンチシールすることによって形成されるチャンバー110を象る。電極アセンブリ122、124は、各末端部115、120を通ってチャンバー110の内部からチャンバーの外部までの導電路を提供するために、各末端部115、120の中にシールされている。高輝度放電発光管100用の各電極アセンブリ122、124は通常、放電電極125、130、電極リード線140、135、金属箔145、150、および外部リード線155、160を含む。電極リード線135、140および外部リード線155、160は通常、スポット溶接によって金属箔145、150に接続されている。
【0007】
図1bは、電気リード線アセンブリ122、124内の典型的な金属箔145、150の断面図である。図1bに示されるように、典型的な箔145、150は、箔の厚みがその横方向中心部で最大となり、縦方向の両端に向かって外方向に減少するような、断面形状となっている。この形状は、高温ピンチング処理およびその後の冷却の際、箔の周りに圧縮されたガラス質材料中に見られる残留歪みを、減少させるために見いだされた。電灯用の典型的な電気リード線アセンブリにおいて、箔の幅は約2〜5.5mm、中心線厚みは約20〜50μm、縁厚みは約3〜7μmである。たとえば、約2.5mmの幅を有する箔は、通常は中心線厚みが約24〜25μm、および縁厚みが約3μmとなる。
【0008】
アセンブリ122、124は、箔145、150が気密ピンチシールを形成する末端部115、120の圧縮部の間に挟まれるよう、末端部115、120に配置される。アセンブリ122、124は各末端部145、150を通る導電路を提供し、比較的薄い箔145、150は、気密的にシールされたピンチング領域に電流路を提供する。
【0009】
電極リード線アセンブリは、高温環境において酸素などの腐食剤に曝されたとき、酸化などに因る金属箔の腐食のため、前記のような電灯に障害点を発生させる。これは主に、高消費電力金属ハロゲン「スポーツ」電灯、紫外線照射電灯、HID投影光源および多数の白熱タングステンハロゲン光源など、外装のない、空気中で稼働する電灯に係る問題である。たとえば、アセンブリ122、124は、電灯稼働中における金属箔の酸素またはその他の腐食剤への曝露のため、外部リード線155、160に隣接する箔145、150の外側部分の酸化に特に弱い。酸化は、ピンチシール上にかなり大きな応力を加えながら、内部に向かって進行することがある。前記応力は、リード線がモリブデン箔に溶接される箇所におけるニュートン環もしくは空隙通路の出現によって明らかである。最終的には、電気経路の断線もしくはピンチシールの破損によって、電灯の故障を引き起こすことがある。
【0010】
前記故障の原因の1つとしては、石英などのガラス質材料を用いた気密ピンチシールまたは真空シール形成の際に、石英の比較的高い粘性のため、比較的厚い外側および内側リード線が完全に密封されなかったことが挙げられる。微細な空隙通路は、外部リード線155、160に沿って形成され得る。また、前記空隙通路は、電灯の横軸に対して直交する葉状部の外縁に沿っても形成され得る。これは、通常タングステンまたはモリブデンを素材とする耐熱性金属外部リード線と比べて、石英の熱膨張係数が大きく異なるためである。
【0011】
前記故障の別の原因としては、2つのメカニズムの結果が挙げられる。第一に、モリブデン箔、線、溶接接合部が酸化すると、当該部分の電気抵抗が増加し、更なるオーム加熱と高温および高い酸化率を招き、最終的にモリブデン材料を通して「燃焼」する。第二に、モリブデン箔、線、または溶接接合部が酸化すると、モリブデン酸化物が形成される。前記酸化物は、一般的にモリブデン金属材料よりも密度が低く、その結果発生する膨張が、石英と金属間、またはガラスと金属間の密封を剥がし、亀裂または破損を引き起こす。この第二のメカニズムもまた、モリブデン材料の更なる領域を空気に因る酸化に曝す可能性がある。ピンチシールおよびシュリンクシールにおける別の一般的な問題は、「頁岩」と呼ばれる現象である。頁岩現象が起こると、石英がモリブデン金属面に接着されていることによって、ピンチまたはシュリンク領域で不均一な応力が発生する場合があり、その結果、微細な亀裂が生じる。これらの亀裂は、ガラスを著しく弱めるため、極めて控え目な負荷によっても、前記電灯の故障を引き起こし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
過去においては、高温環境で酸素に曝される可能性のある電気アセンブリ中のモリブデン箔の酸化を防止する取り組みが為されてきた。例えば、リン化物(米国特許番号5,387,840)、アルミナイド、酸化鉛、窒化珪素、アルカリ金属珪酸塩およびクロム(米国特許番号3,793,615)などの酸化保護材料でモリブデン箔を被覆することによって酸化を抑制することが提案された。この他の従来手法としては、ピンチまたはシュリンク領域の開放端を低融点ホウ酸アンチモンガラスで充填する方法と、白金被覆で外部リード線を保護する方法とがある。前記先行技術はしかし、中程度の実用性しかなく、往々にして高価である。そして、前記先行技術のいずれも、ガラス状膜の適用を含んでいない。したがって、ガラス質材料中のピンチシールを通る導電路を提供するための電気リード線アセンブリに使用する、高温環境下での稼働に耐え得る酸化保護金属箔が必要である。本発明の要旨は、先行技術の欠点を取り除く電気リード線アセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態は、耐熱性不粘着剤を含有する被覆を、金属箔の表面またはリード線または箔とリード線の接合部に適用し、電灯のリード線アセンブリの金属箔および外部リード線を酸化から保護する手段を提供する。不粘着剤は一般的に、接着に抵抗し得る性質を有する窒化硼素などの材料であるが、これに限定されない。
【0014】
本発明の他の実施形態は、完成したリード線アセンブリ上に無公害シリカ(以下、グリーンシリカ)を溶融するためにピンチング処理の高温を利用するものであり、この方法によって、金属箔とリード線および重要な溶接接合部を、高密度なシリカの連続膜で保護する。グリーンシリカの一例は、現在は米国特許番号7,153,179となった2003年11月7日出願の米国特許出願番号10/702,558の分割出願であってその優先権を主張する、2006年10月11日出願の、原出願および同時係属出願番号11/545,469に記載されており、それぞれの出願の全体は参照によって本願に組み込まれている。
【0015】
本発明の他の実施形態は、ガラス質材料または石英がモリブデンまたはその他の金属表面に接着することによりピンチング領域に不均一な応力が発生する頁岩現象を、防止または解消する。
【0016】
本発明の他の実施形態は金属箔の一部を腐食から保護する方法を提供する。この方法は、シリカを含有する膜で箔の一部を被覆する手順と、耐熱性不粘着剤を膜の一部に適用する手順とを含み、各手順はピンチシールを形成する前に実行される。本発明の別の実施形態は、石英またはガラス本体に形成されたピンチシールまたはシュリンクシールを通る電気的接続を提供する新しい方法である。この方法は、少なくとも1つの開放端を有する石英またはガラス本体を提供する手順と、金属箔を含む電気リード線アセンブリを提供する手順とを含み得る。この方法は、また、金属箔の少なくとも一部に耐熱性不粘着剤を含む被覆を適用する手順と、本体の開放端に電気リード線アセンブリを配置する手順と、本体の石英またはガラスが電気リード線アセンブリの金属箔の周囲に密封シールを形成するように本体の開放端をピンチシールまたはシュリンクシールする手順とを含み得る。
【0017】
本発明の更なる実施形態は、電極リード線アセンブリを用意する方法を提供する。この方法は、金属箔を含む電極リード線アセンブリを提供する手順と、電極リード線アセンブリの少なくとも一部をコロイド状シリカ混合物に浸す手順とを含み得る。この方法は、また、混合物からアセンブリを取りだす手順と、アセンブリ上の感想した混合物を黒鉛または窒化硼素で被覆する手順を含み得る。
【0018】
本発明の一実施形態は、1つ以上のピンチシールまたはシュリンクシールを有しチャンバーを形成する石英またはガラス本体を有する新しい装置を提供する。また、前記ピンチシールまたはシュリンクシールの中には、耐熱性不粘着剤を含む被覆を少なくとも一部に有する金属箔が配置される。
【0019】
本発明の一実施形態は、石英またはガラス本体中のピンチシールを通じて電気的接続を提供するのに適した新しい電気リード線アセンブリを提供し、前記アセンブリは耐熱性不粘着剤を含む被覆を少なくとも一部に有する金属箔を含む。本発明の更なる実施形態は、金属箔の一部および前記金属箔に取り付けられた電極またはフィラメントピンを有する新しい電気リード線アセンブリを提供する。電気リード線は金属箔に取り付けられることがあり、耐熱性不粘着剤を有し得る被覆はアセンブリの少なくとも一部を覆うことがある。
【0020】
本発明の更なる実施形態は、金属箔を含む電気リード線アセンブリを提供する手順と、アセンブリの少なくとも一部に可溶性ガラス前駆体を含む保護層を適用する手順とを含む方法を提供する。材料の層は、保護層の少なくとも一部の上に適用され得る。前記材料は、電気リード線アセンブリが前記ガラス本体のピンチシールまたはシュリンクシール内にシールされているとき、材料またはガラス本体によって覆われた保護層の接着を防止するのに適している。
【0021】
本発明の要旨の他の方法は、金属箔を含む電気リード線アセンブリを提供する手順と、アセンブリの少なくとも一部に保護層を適用する手順とを含むことがある。保護層は、可溶性ガラス前駆体および電気リード線アセンブリが本体のピンチシールまたはシュリンクシール内にシールされているときに、保護層のガラス本体への機械的に強力な結合を防止する材料を含む。
【0022】
本発明の一実施形態における新しい電気リード線アセンブリは、1つ以上のリード線が取り付けられている金属箔と、金属箔の少なくとも一部に設けられた保護層とを含み、保護層は1つ以上の可溶性ガラス前駆体を含む。前記アセンブリは、また、保護層の少なくとも一部に重ねられた材料の層を含む。この材料は、電気リード線アセンブリがガラス本体のピンチシールまたはシュリンクシール内にシールされているときに、材料およびガラス本体を覆う保護層の接着を防止するのに適している。
【0023】
本発明は、上記およびその他の目的をもって説明されるが、本発明の原理はこれらに限定されず、本明細書に示される原理の全ての応用を含む。上記およびその他の目的は、以下の包括的な具体例に参照できる。なお、これらの具体例は、類似の要素に類似の番号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1a】高輝度放電灯用の従来型発光管の模式図である。
【0025】
【図1b】従来技術による金属箔の断面図である。
【0026】
【図2】本発明の一実施形態による発光管の模式図である。
【0027】
【図3】高輝度放電灯用の成形本体アーク灯の模式図である。
【0028】
【図4】本発明の要旨による成形本体高輝度放電灯の別の実施形態の模式図である。
【0029】
【図5】発光管の機械的支持および金属箔へのラップ/クリンプ電気的接続を示す、本発明の一実施形態による高輝度放電灯の模式図である。
【0030】
【図6】本発明の要旨の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の要旨の一実施形態において、金属箔は腐食防止のため被覆されることがあり、本発明はそのような被覆の実施方法を提供する。金属箔は、本発明の要旨の別の実施形態において、高温環境で腐食剤に曝されたときに、腐食から実質的に保護され得る。このような金属箔は、アセンブリ内に外部リード線を形成し、発光管の末端部を越えて延在することがあり、それによって比較的太い外部リード線を排除するので、電気リード線アセンブリにおいて特に都合がよい。
【0032】
本発明の要旨の別の実施形態は、シリカ膜、耐熱性不粘着剤、および/またはそれらの組み合わせで電気リード線アセンブリの金属箔を腐食から保護する方法を提供する。このような被覆は、金属箔に、高温環境における酸素またはその他の腐食剤に対する保護層を提供し、金属箔の腐食を抑制し、電灯の早期故障の主な原因を解消する。
【0033】
本発明の要旨の更に別の実施形態は、コロイド状シリカおよび/またはシリカ不粘着剤スラリー(懸濁液)の液槽に金属箔の少なくとも一部を浸し、シリカコロイドが箔に接着するように調整された速度で金属箔を液槽から引き出し、シリカ粒子の溶融を生じさせるのに十分な温度にシリカコロイドを曝し、それによって金属箔上にシリカの薄膜を形成することで、金属箔を被覆する方法を提供する。被覆の厚みを決定する際は、液槽の粘度、および液槽の湿潤特性などを含む要因が考慮される。また、金属箔が液槽から引き出される速度も制御される。いくつかの例示的な方法は、それぞれの全体が本願に組み込まれる米国特許番号7,153,179の分割出願である、原出願および同時係属出願番号11/545,469に記載されている。しかしながら、金属箔に被覆を適用するその他の方法も使用することができる。例えば、静電スプレー、浸漬、回転、ブラシ、および噴霧による被覆方法である。被覆を適用するための別の手法は、シリカ微粒子をアルゴン・プラズマ・トーチのプルームに添加し、それによって液体シリカのスプレーを生成する手順を含むこともある。
【0034】
シリカ被覆構造が石英などの溶融ガラス質材料内にシールされているとき、被覆は同じ材料であるため、ガラス質材料に接着する。冷却および熱収縮の際、保護層は金属から剥離または揮散することがあり、深刻なガラスの頁岩が発生する。シリカ被覆構造に耐熱性不粘着剤を適用することにより、溶融ガラス質材料の接着を防ぎ、保護層の完全性を保つことができる。例示的な耐熱性不粘着物質としては、窒化硼素、黒鉛、耐熱性金属(タングステン、タンタル、ハフニウム、ニオブ、レニウム、オスミウムなど)の粉末または薄片や、あるいは耐熱性酸化物(酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化トリウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウムなど)の粉末または薄片が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の実施形態における耐熱性不粘着剤の適用は、ピンチング中の金属部品への接着によって引き起こされるシリカガラスの頁岩も防止し得る。したがって本発明は、シリカ被覆の下地を備えた実施形態、または備えない実施形態において、耐熱性不粘着剤は、ガラス質材料の劣化を防止することおよび金属の酸化を抑制する(例えば、脆弱金属への空気の接触を遅らせる)ことにより、ピンチシールまたはシュリンクシールの寿命を改善し、その結果、ぞれぞれの発光管または電灯の寿命を改善する。耐熱性不粘着剤に添加された可溶性添加物によって、耐熱性不粘着剤粒子の相互結合および金属への結合が促進され、空気透過性は更に抑制される。
【0035】
電灯の電気リード線アセンブリ中の箔および外部リード線の更なる保護は、コロイド状シリカを耐熱性不粘着剤スラリーと金剛することによっても達成される。この混合物は、浸漬、スプレー、またはその他のいかなる適切な方法によって、アセンブリに適用され得る。アセンブリがピンチングされまたは収縮したとき、シリカは溶融し、液体シリカで金属を覆って耐熱性不粘着剤粒子をシリカマトリクスに閉じ込める。アセンブリを冷却すると、シリカは金属と結合したままである場合があり、シリカ不接着層内に熱によって誘導された亀裂が発生することがある。
【0036】
シリカ不粘着剤の特定の組合せ(シリカ-窒化硼素など)は、金属と化学的に反応し、非常に優れた酸化保護特性を有する物質の被覆を生成し得る。非限定的な例示により、シリカ-窒化硼素の特定の混合物がモリブデン表面の融解を引き起こし、酸化に対する耐性の高い物質の層を生成することが確認された。この例において、層は硼化モリブデンであると思われる。当然のことながら、シリカ不粘着剤のその他の組成も同様に有効であり、前記例は本明細書に添付の請求項の範囲を限定するものではない。
【0037】
図2は本発明の一実施形態におけるピンチング管の模式図である。図2を参照すると、アセンブリの外部リード線は、金属箔の長さを延伸することによって省略されている。つまり、金属箔113、150、155を延伸することによって、外部リード線をアセンブリから省略することができる。この実施形態には、外部リード線を金属箔に接着(スポット溶接、機械的取り付けなど)する必要をなくすことができるという、更なる利点がある。これらの利点の効果として、ピンチシール内の毛細管形成またはその他の類似空隙形成を回避することにより、電灯の寿命を向上できる。電灯の寿命の更なる向上は、金属箔113、150、155のいずれかの部分を、例示的耐熱性不粘着剤または上述のシリカ不粘着剤で被覆することによって、実現できる。
【0038】
図3は、本発明の別の実施形態を模式的に示すものである。図3を参照すると、発光管300は、チャンバー110およびピンチングによってシールされる末端部115、120を含み得る。リード線アセンブリは、電極リード線135、140、金属箔145、150、および外部リード線155、160を含み得る。発光管300の寿命の工場は、末端部115、120および/または電極リード線135、140、金属箔145、150および外部リード線155、160を含むアセンブリのいずれかの部分を、例示的耐熱性不粘着剤または前記シリカ不粘着剤で被覆することによって、実現できる。
【0039】
図4は、本発明の別の実施形態の模式図である。図4を参照すると、金属箔150、155のそれぞれは発光管400のそれぞれの末端部115、120を越えて延在することができ、それによって外部リード線をアセンブリから省略している。当然のことながら、発光管400の寿命の向上は、末端部115、120および/または金属箔150、155のいずれかの部分を、例示的耐熱性不粘着剤または前記シリカ不粘着剤で被覆することによって、実現できる。
【0040】
図5は、本発明の別の実施形態による高輝度放電灯の模式図であり、発光管の機械的支持および金属箔とのラップ/クリンプ電気的接続を示している。高輝度放電灯500は、電灯500の外側電灯エンベロープ508によって支持される発光管505を含む。発光管505は、管状末端部512、514に介在する球状チャンバー510を含む。発光管505は、その末端部512、514が発光管505を支持することにより、エンベロープ内に機械的に固定される。発光管の電気的アセンブリは、発光管に電気的接続を提供するために末端部512、514を越えて延在する、金属箔515、525を含む。電灯底部を金属箔に接続する電気リード線は、コイル接続部527、528によって機械的および電気的に金属箔に固定されている。金属箔515、525は従来型リード線アセンブリの外部リード線ほど機械的に硬質ではないが、金属箔の機械的変形は、末端部512、514から発光管505を支持することによって最小限に抑えられる。発光管500の寿命の向上は、金属箔515、525を含む発光管500の電気的アセンブリのいずれかの部分を、例示的耐熱性不粘着剤または前記シリカ不粘着剤で被覆することによって、実現できる。
【0041】
図6は、本発明の一実施形態を示す図である。図6を参照すると、石英またはガラス本体に形成されたピンチシールまたはシュリンクシールを通じて電気的接続を提供する方法600が示されている。手順610にて、少なくとも1つの開放端を有する石英またはガラス本体が提供され、手順620にて、金属箔を含む電気リード線アセンブリが提供される。一実施形態において、金属箔はモリブデンで形成され得るが、その例が本明細書に添付の請求項の範囲を限定するものではなく、金属箔はいかなる適切な金属または物質から形成され得る。手順630では、耐熱性不粘着剤を含む被覆が金属箔の少なくとも一部に適用され得る。例示的な耐熱性不粘着物質としては、窒化硼素、黒鉛、耐熱性金属の粉末または薄片や、あるいは耐熱性酸化物の粉末または薄片が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の別の実施形態は、耐熱性不粘着剤の適用は、コロイド状シリカを耐熱性不粘着剤スラリーと混合する手順と、金属箔の少なくとも一部に混合物を適用する手順とを含み得る。電気リード線アセンブリは、手順640でガラス本体の開放端に配置される場合がある。ガラス本体の開放端は、手順650においてガラス本体の石英またはガラスが電気リード線アセンブリの金属箔の周囲に密封シールを形成するように、ピンチシールまたはシュリンクシールされる場合がある。
【実施例1】
【0042】
2000ワットの発光管で一般的に使用されるいくつかの電極アセンブリを、水性コロイド状シリカ混合物を含有する液槽に浸漬することによって被覆した。混合物に含まれるものは以下の通りである。
ST−OUP(日産化学工業株式会社製) 9.0グラム
水 7.0グラム
濃縮アンモニア 1.0グラム
ポリビニルピロリドン1%水溶液 6.0グラム
NaBO5%水溶液 1.6グラム
【0043】
乾燥後、例示的耐熱性不粘着剤、具体的には(1)酢酸アミルで1:1に希釈された黒鉛(Fiber Materials,Inc.製のTC−2)、および(2)窒化硼素(Zyp Coatings製BN Aerosol Brushable)によって各アセンブリを上塗りした。これらの例示的アセンブリを石英灯発光管にピンチングし、その後ダイヤモンドソーでガラスから解放した。4%HCl中で陽極酸化すると、わずかな黒色化が見られ、これによってグリーン被覆がモリブデン部分に融合したことが示された。窒化硼素および黒鉛の両被覆は、良好な酸化特性を示した。
【実施例2】
【0044】
2000ワットの発光管で一般的に使用されるいくつかの電極アセンブリを、水性コロイド状シリカ混合物を含有する液漕に浸漬することによって被覆した。混合物に含まれるものは以下の通りである。
ST−OUP(日産化学工業株式会社製) 9.0グラム
水 7.0グラム
濃縮アンモニア 1.0グラム
ポリビニルピロリドン1%水溶液 6.0グラム
NaBO5%水溶液 1.6グラム
【0045】
乾燥後、例示的耐熱性不粘着剤を各アセンブリの外部リード線溶接部までのみ上塗りした。耐熱性不粘着剤は(1)酢酸アミルで1:1に希釈された黒鉛(Fiber Materials,Inc.製のTC−2)、および(2)窒化硼素(Zyp Coatings製BN Aerosol Brushable)であった。いくつかの例示的アセンブリを摂氏400度のオーブンに入れ、いくつかを組み立てて電灯を作成した。試験は、未被覆アセンブリと比較したときに、被覆金属箔/リード線アセンブリの酸化速度の顕著な低下を示し、電灯の寿命が著しく伸びた。
【実施例3】
【0046】
シリカ被覆を有していない、未被覆アセンブリのモリブデン箔および/またはリード線接合部および溶接点に、耐熱性不粘着剤被覆、すなわち窒化硼素を設けた。この実施例では、窒化硼素被覆を、電極シャンク/金属箔接合部に適用した。耐熱性不粘着剤は、内部電灯動作特性に何ら悪影響も及ぼさなかった。相対的に、未被覆金属箔/リード線アセンブリは、500時間の動作以内に典型的な故障を示した。しかしながら、窒化硼素の例示的耐熱性不粘着剤被覆を備える電灯は、500時間動作時に酸化による損傷を示さなかった。
【実施例4】
【0047】
シリカ被覆を有していない、未被覆アセンブリのモリブデン箔および/またはリード線接合部および溶接点に、耐熱性不粘着剤被覆、すなわちシリカと窒化硼素の混合物を設けた。この耐熱性不粘着剤被覆を備える電灯は、摂氏400度で数千時間動作しても、良好な酸化保護性能を示した。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態が記述されてきたが、記述された実施形態は例示のみを目的とし、同等物の全範囲と一致するときには本発明の範囲は添付請求項によってのみ定義される。当然のことながら当業者は、本明細書を精読することによって多くの変形例および修正例を想到し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内に形成された1つ以上のピンチシールまたはシュリンクシールによって気密的にシールされたチャンバーを形成する石英またはガラス本体を有する装置において、金属箔はピンチシールまたはシュリンクシールを通じて電気的接続を提供し、前記金属箔の少なくとも一部を腐食から保護する方法は、前記ピンチシールの形成に先立って実行される手順であって、
シリカを含む膜で前記箔の少なくとも一部を被覆する手順と、
前記膜の少なくとも一部に耐熱性不粘着剤を適用する手順と、を含む方法。
【請求項2】
石英またはガラス本体に形成されたピンチシールまたはシュリンクシールを通じて電気的接続を提供する方法において、前記方法は、
少なくとも1つの開放端を有する石英またはガラス本体を提供する手順と、
金属箔を含む電気リード線アセンブリを提供する手順と、
前記金属箔の少なくとも一部に耐熱性不粘着剤を含む被覆を適用する手順と、
前記本体の開放端に前記電気リード線アセンブリを配置する手順と、
前記本体の前記石英またはガラスが前記電気リード線アセンブリの前記金属箔の周囲に気密的シールを形成するように、前記本体の前記開放端をピンチシールまたはシュリンクシールする手順と、を含む方法。
【請求項3】
前記金属箔がモリブデンで形成されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記耐熱性不粘着剤が、窒化硼素、黒鉛、耐熱性金属の粉末または薄片、および耐熱性酸化物の粉末または薄片からなるグループから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記耐熱性不粘着剤が、窒化硼素、黒鉛、耐熱性金属の粉末または薄片、および耐熱性酸化物の粉末または薄片からなるグループから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記金属箔の少なくとも一部に耐熱性不粘着剤を含む被覆を適用する手順が、コロイド状シリカを耐熱性不粘着剤スラリーと混合する手順と、および前記金属箔の少なくとも一部に前記混合物を適用する手順とを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記耐熱性不粘着剤が窒化硼素を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記金属箔の少なくとも一部に耐熱性不粘着剤を含む被覆を適用する手順が、前記金属箔の金属物質を含む酸化防止膜の前記金属箔の表面への形成をもたらす、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記金属箔がモリブデンで形成され、前記被覆がシリカおよび窒化硼素を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
電極リード線アセンブリを用意する方法において、
金属箔を含む電極リード線アセンブリを提供する手順と、
前記電極リード線アセンブリの少なくとも一部をコロイド状シリカ混合物に浸漬する手順と、
前記アセンブリを前記混合物から取り出す手順と、
前記アセンブリ上の前記乾燥混合物を、黒鉛または窒化硼素で被覆する手順と、を含む方法。
【請求項11】
チャンバーを形成し、本体内に形成された1つ以上のピンチシールまたはシュリンクシールを有する、石英またはガラス本体と、
前記ピンチシールまたはシュリンクシール内に配置された金属箔であって、その少なくとも一部に耐熱性不粘着剤を含む被覆を有する金属箔と、を含む装置。
【請求項12】
前記金属箔がモリブデンで形成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記耐熱性不粘着剤が、窒化硼素、黒鉛、耐熱性金属の粉末または薄片、および耐熱性酸化物の粉末または薄片からなるグループから選択される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記耐熱性不粘着剤が、窒化硼素、黒鉛、耐熱性金属の粉末または薄片、および耐熱性酸化物の粉末または薄片からなるグループから選択される、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記被覆がコロイド状シリカを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記耐熱性不粘着剤が窒化硼素を含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記金属箔の少なくとも一部の上に膜を有し、前記膜は前記金属箔の金属物質を含有する化合物を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項18】
前記金属箔がモリブデンで形成され、前記膜がモリブデン化合物を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記モリブデン化合物が、前記被覆および前記金属箔の1つ以上の元素の間の化学反応によって形成される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
石英またはガラス本体のピンチシールを通じて電気的接続を提供するのに適した電気リード線アセンブリにおいて、耐熱性不粘着剤を含む被覆をその少なくとも一部に有する金属箔を含むアセンブリ。
【請求項21】
金属箔の部分と、
前記金属箔に取り付けられた電極またはフィラメントピンと、
前記金属箔に取り付けられた電気リード線と、を含み、
耐熱性不粘着剤を含む被覆がアセンブリの少なくとも一部を被覆する、
電気リード線アセンブリ。
【請求項22】
金属箔を含む電気リード線アセンブリを提供する手順と、
前記アセンブリの少なくとも一部に可溶性ガラス前駆体を含む保護層を適用する手順と、
前記アセンブリがガラス本体のピンチシールまたはシュリンクシール内にシールされたときに、重ねられた保護層とガラス本体との接着を防止するのに適している物質の層を前記保護層の少なくとも一部に適用する手順と、を含む方法。
【請求項23】
前記保護層が、コロイド状シリカおよび1つ以上の金属塩を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記保護層の少なくとも一部の上の前記物質が、窒化硼素または黒鉛である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
ピンチシールまたはシュリンクシール処理の際に溶融石英保護層が形成される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
金属箔を含む電気リード線アセンブリを提供する手順と、
前記電気リード線アセンブリがガラス本体のピンチシールまたはシュリンクシール内にシールされているときに、可溶性ガラス前駆体とガラス本体に対する機械的に強固な結合を防止し得る物質とを含む保護層を、前記アセンブリの一部に適用する手順と、を含む方法。
【請求項27】
前記保護層が、コロイド状の、1つ以上の金属塩、および窒化硼素を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記箔はモリブデンで形成され、前記保護層は酸化防止モリブデン化合物を形成するためにモリブデンと化学的に反応する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物が、硼素または珪素をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
1つ以上のリード線が取り付けられた金属箔と、
前記金属箔の少なくとも一部に設けられた保護層であって、1つ以上の可溶性ガラス前駆体を含む保護層と、を有し、
前記保護層の少なくとも一部に重ねられた物質の層であって、前記電気リード線アセンブリが本体のピンチシールまたはシュリンクシール内にシールされているときに、ガラス本体に対する保護層の接着を防止するのに適した物質の層が前記保護層の少なくとも一部に重ねられている、電気リード線アセンブリ。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−519138(P2011−519138A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506308(P2011−506308)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/002573
【国際公開番号】WO2009/134348
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(502345061)アドバンスド ライティング テクノロジイズ,インコーポレイティド (11)
【Fターム(参考)】