説明

金属箔電解製造装置

【課題】 給液装置より供給される電解液の流れを均一にし、かつ回転陰極ドラム表面に均等に供給できる金属箔電解製造装置を提供する。
【解決手段】 金属箔を電着させる回転陰極ドラム1と、これに対向した陽極2と、電解液を供給する給液装置5を有する金属箔電解製造装置において、給液装置5は、回転陰極ドラム1の回転軸と平行に配置され、かつ上流側及び下流側にそれぞれスリット状の開口部を有する液供給口6を備えると共に、液供給口6は給液装置5の上端に構成され、幅方向に沿って同一の間隙で連続的に開口してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔を電着させる回転陰極ドラムと、この回転陰極ドラムに対向した陽極と、回転陰極ドラムと陽極との間に電解液を連続的に供給しつつ回転陰極ドラム上に金属を電着させる金属箔電解製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の金属箔電解製造装置は、供給される電解液の流れが均一になりにくく、均一な厚さの金属箔を得ることが難しいという問題点があった。この問題点を解決するために下記の特許文献に記載の発明が提案された。
【特許文献1】特許第3150814号
【0003】
前記特許文献1記載の発明は、回転陰極ドラムと陽極との間に電解液を連続的に供給する電解液供給装置の電解液供給口が、回転円筒陰極の回転軸方向と平行にスリット状に、回転円筒陰極の下から上記間隙に開口し、かつ電解液供給口には、金属箔を電着させる幅区間にわたって複数の電解液流量調節手段を備えたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の電解液供給口は、幅区間にわたって複数の電解液流量手段で流量を調節しているため、開口部より供給される電解液の流れが不均一であり、回転円筒陰極表面に均等に供給されないという問題点があった。また、複数の電解液流量調節手段は、構成が複雑なため実用的ではなかった。
【0005】
本発明は、前記の問題点を解決するものであり、簡易な構成で、給液装置より供給される電解液の流れを均一にし、かつ回転陰極ドラム表面に均等に供給できる金属箔電解製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨とするところは、金属箔を電着させる回転陰極ドラムと、該回転陰極ドラムに対向した円弧状曲面を持つ陽極と、回転陰極ドラムと陽極との間の液流通路に電解液を供給する給液装置を配し、電解液を供給しつつ回転陰極ドラム上に金属を電着させ、該回転陰極ドラムから連続的に金属箔をはがし取る金属箔電解製造装置において、前記給液装置は、回転陰極ドラムの回転軸と平行に配置され、かつ回転方向に対して上流側及び下流側にそれぞれスリット状の開口部を有する液供給口を備えたことにある。
【0007】
また、本発明の要旨とするところは、前記液供給口は、前記給液装置の上端に構成された、給液装置の幅方向に沿って同一の間隙で連続的に開口したことにある。
【0008】
また、本発明の要旨とするところは、前記液供給口は、その開口部の間隙を調節可能にしたことにある。
【0009】
また、本発明の要旨とするところは、前記給液装置は、連続した2以上の室を有し、各室間には減圧機構を配し、電解液が給液装置の入口から順次減圧された後、液供給口から流出されることにある。
【0010】
また、本発明の要旨とするところは、前記減圧機構は、スリット板により液流路を狭めたことにある。
【0011】
また、本発明の要旨とするところは、前記減圧機構は、多孔質材料で構成したことにある。
【0012】
また、本発明の要旨とするところは、前記減圧機構は、空隙を有する充填材で構成したことにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明は前記のような構成であるから、請求項1記載の発明によれば、給液装置は、液流通路の上流側及び下流側に2個のスリット状の開口部を有する液供給口を備えているため電解液は回転陰極ドラムの表面に沿って滑らかに、且つ均等に供給される。
これにより回転陰極ドラムの周面に形成される金属箔の厚さが均一になり、良質な金属箔を簡易な構成の装置で効率よく生産することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、前記液供給口は、給液装置の幅方向に沿って同一の間隙で連続的に開口しているため、回転陰極ドラム周面の幅方向全域にわたって均等に供給されるのである。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、前記液供給口は、その開口部の間隙を調節可能にしたため、電解液の供給量を容易に調節することができると共に、それぞれの開口部からの液供給量のバランスを変えることができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、前記給液装置は、連続した2以上の室を有し、各室間には減圧機構を配したため、供給される電解液は液流入口から第1の室に流入する時に、その流速を吸収され、また減圧機構を通過する際に幅方向で均一圧力、均一流速となる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、前記減圧機構をスリット板で形成し、これによって液流路を狭めることにより、電解液を均一圧力にすると共に減圧機構の全長にわたって流速を均一化して供給することができる。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、前記減圧機構を多孔質材料で構成したため、簡易な構成で電解液を均一圧力にすると共に減圧機構の全長にわたって流速を均一化して供給することができる。
【0019】
また、請求項7記載の発明によれば、前記減圧機構を空隙を有する充填材で構成したため、簡易な構成で電解液を均一圧力にすると共に減圧機構の全長にわたって流速を均一化して供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の最良の実施形態は、金属箔を電着させる回転陰極ドラムと、これに対向した円弧状曲面を持つ陽極と、回転陰極ドラムと陽極との間の液流通路に電解液を供給する給液装置を配した金属箔電解製造装置において、前記給液装置は、回転陰極ドラムの回転軸と平行に配置され、かつ回転方向に対して上流側及び下流側にそれぞれスリット状の開口部を有する液供給口を備えると共に、前記液供給口は、前記給液装置の上部に構成された、給液装置の幅方向に沿って同一の間隙で連続的に開口したものである金属箔電解製造装置である。
【0021】
本発明の第1実施例を図に基づいて説明する。
図1は第1実施例の金属箔電解製造装置の概略断面側面図、図2は液供給装置の断面正面図、図3は図2のIII−III線断面拡大図、図4は液供給口の一部切欠斜視図である。
【0022】
図1に基づいて金属箔電解製造装置Aの概略を説明する。この装置は従来使用されているものと同様の構造であり、金属箔を電着させる回転陰極ドラム1と、回転陰極ドラム1の周面形状に沿って対向配置した陽極2とを備えている。そして回転陰極ドラム1の下端位置には、回転陰極ドラム1と陽極2の間に設けられた液流通路8に電解液を供給するための給液装置5が設けられている。
この給液装置5の内部から液流通路8に向けて電解液が供給され、この電解液は図1の矢印のように回転陰極ドラム1周面形状に沿って上昇し、電解槽13にオーバーフローしていくのである。これによって回転陰極ドラム1周面に電析した金属箔10は、ガイドロール11を介して巻き取りロール12に巻き取られる。
【0023】
本実施例の給液装置5は、電解液タンク(図示せず)と連通している液流入口4の上端に構成され、上端は液流通路8内に配置されている。
前記給液装置5は、長尺の両側板51,51と天板52とによって構成された筒状体であり、内部に2個の液室R1,R3を設けている。この給液装置5は、回転陰極ドラム1の幅と同一長さで、かつ回転陰極ドラム1の回転軸と平行に配置されている。
【0024】
前記給液装置5の両側板51,51の上端と天板52との間に間隙を形成し、電解液を液流通路8の上流側(図3の矢印X方向)と下流側(図3の矢印Y方向)へ供給するための液供給口6,6を構成する。
この液供給口6は、2枚の側板51,51の上端に、全長にわたって連続的に設けられているため回転陰極ドラム1の幅と等しく、その形状は液室R3から液流通路8に向かって水平若しくは僅かに斜め上方に開口したスリット状である。
【0025】
前記給液装置5の内部には減圧機構7を構成する。本実施例の減圧機構7は側板51の全長にわたって、両側板51,51間の空隙の両端に狭隘部71a,71aを有して取り付けた長尺の板材71からなる。この板材71によって、給液装置5内部は下側の液室R1と上側の液室R3に分割されている。
【0026】
上記のように構成した金属箔電解製造装置の作用を説明する。
電解液は、下端の液流入口4より給液装置5内の下側の液室R1に流入するが、このとき電解液は板材71に衝突することによってその流入速度は吸収される。その後、狭隘部71a,71aから液室R3に流入していくが、狭隘部71aで絞られることによって均一な圧力、均一な流速になって上側の液室R3に送り込まれる。そして液流通路8へと流出していく時にスリット状の液供給口6で更に絞られ、より均一な圧力、より均一な流速となる。
流出した電解液は、前記液供給口6の開口部によって液流通路8の上流側Xと下流側Yに分かれて、回転陰極ドラム1の幅方向に均一に供給されていくのである。
【0027】
図5は前記液供給口6の第2実施例を示す一部切欠正面図である。
本実施例では側板51の上端部の両側端部に凹部61を構成したものである。この凹部61によって、液供給口6の間隙は両側端部で広くなるため電解液が多く流出する。そのためこの凹部61近傍に位置する回転陰極ドラム1の両端付近には多量の電解液が供給されるため、他の部分に比べ箔が厚く形成されるのである。
これによって従来巻き取り時に両端部から箔が裂け易いという問題点が解消した。
【0028】
図6は前記液供給口の第3実施例を示す一部切欠斜視図である。
本実施例では液供給口6の開口部の間隙を調節可能にしている。すなわち、2枚の側板51の上端に沿って、それぞれ長尺の調節板54を複数のネジ59で固定した調節機構を構成している。この調節機構は、調節板54の端部等の適宜個所に縦方向の長孔60を穿設し、この長孔60にネジ59を螺合させ、この長孔60の範囲内で調節板54を上下動して位置決めするものである。これによって液供給口6の幅を自由に変更することが可能となる。
この調節機構の作用で、電解液の供給量を容易にかつ確実に調節することができると共に、それぞれの開口部からの液供給量のバランスを変えることが可能となる。
【0029】
図7は前記減圧機構7の第2実施例を示す一部切欠斜視図である。この減圧機構7は、表面に多数のスリット72aを穿設したスリット板72を2枚の側板51,51の全長にわたって両端を側板51,51に密着して取り付けたものである。
このスリット板72によれば、電解液はスリット72a,72a,・・によって液流路を狭められて通過して下側の液室R1より上側の液室R3へと流出するため、電解液は均一な圧力、均一な流速となって上側の液室R3に送り込まれるのである。
また、図示はしないが、前記スリット板72に代えて、遮蔽板、オリフィスなどを使用して減圧手段とすることもできる。
【0030】
図8は前記減圧機構7の第3実施例を示す断面正面図である。この減圧機構7は、多孔質材料からなる板材73を2枚の側板51,51の全長にわたって両端を側板51,51に密着して取り付けたものである。
この板材73によれば、電解液は板材73を通過して下側の液室R1より上側の液室R3へと流れていくときに、電解液は多数の孔を通過するため板材73によって均一な圧力、均一な流速となって上側の液室R3に送り込むことができる。
【0031】
図9は前記減圧機構7の第4実施例を示す断面正面図である。
この減圧機構7は、空隙を有する充填材料からなる板状部材74を2枚の側板51,51の全長にわたって両端を側板51,51に密着して取り付けたものである。
この板材74によれば、電解液は板状部材74を通過して下側の液室R1より上側の液室R3へと流れていくときに、電解液は充填材料の多数の空隙を通過するため均一な圧力、均一な流速となって上側の液室R3に送り込むことができる。
【0032】
図10は前記減圧機構7の第5実施例を示す断面正面図である。この実施例では前記実施例1の板材71を2枚平行して配置し、この2枚の板材71によって給液装置5を3分割して、下側の液室R1、中側の液室R2、上側の液室R3を構成し、液室R3を液室R2より幅を狭くしている。
この減圧機構によれば前記実施例1の減圧機構に比べて、電解液は2枚の板材71によってより効率よく均一な圧力、均一な流速にできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施例の金属箔電解製造装置の概略断面側面図
【図2】液供給装置の断面正面図
【図3】図2のIII−III線断面拡大図
【図4】液供給口の一部切欠斜視図
【図5】液供給口の第2実施例を示す一部切欠正面図
【図6】液供給口の第3実施例を示す一部切欠斜視図
【図7】減圧機構の第2実施例を示す一部切欠斜視図
【図8】減圧機構の第3実施例を示す断面正面図
【図9】減圧機構の第4実施例を示す断面正面図
【図10】減圧機構の第5実施例を示す断面正面図
【符号の説明】
【0034】
A 金属箔電解製造装置
1 回転陰極ドラム
2 陽極
4 液流入口
5 給液装置
6 液供給口
7 減圧機構
8 液流通路
51 側板
52 天板
54 調節板
59 ネジ
60 長孔
72 スリット板
72a スリット
73 板材
74 板材
R1 下側の液室
R2 中側の液室
R3 上側の液室
X 上流側
Y 下流側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔を電着させる回転陰極ドラムと、該回転陰極ドラムに対向した円弧状曲面を持つ陽極と、回転陰極ドラムと陽極との間の液流通路に電解液を供給する給液装置を配し、電解液を供給しつつ回転陰極ドラム上に金属を電着させ、該回転陰極ドラムから連続的に金属箔をはがし取る金属箔電解製造装置において、
前記給液装置は、回転陰極ドラムの回転軸と平行に配置され、かつ回転方向に対して上流側及び下流側にそれぞれスリット状の開口部を有する液供給口を備えたことを特徴とする金属箔電解製造装置。
【請求項2】
前記液供給口は、前記給液装置の上端に構成された、給液装置の幅方向に沿って同一の間隙で連続的に開口したものであることを特徴とする請求項1記載の金属箔電解製造装置。
【請求項3】
前記液供給口は、その開口部の間隙を調節可能にしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の金属箔電解製造装置。
【請求項4】
前記給液装置は、連続した2以上の室を有し、各室間には減圧機構を配し、電解液が給液装置の入口から順次減圧された後、液供給口から流出されることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の金属箔電解製造装置。
【請求項5】
前記減圧機構は、スリット板により液流路を狭めたものであることを特徴とする請求項4記載の金属箔電解製造装置。
【請求項6】
前記減圧機構は、多孔質材料で構成したことを特徴とする請求項4記載の金属箔電解製造装置。
【請求項7】
前記減圧機構は、空隙を有する充填材で構成したことを特徴とする請求項4記載の金属箔電解製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−121033(P2008−121033A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303216(P2006−303216)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(591114847)赤星工業株式会社 (6)