説明

金属結合方法

【課題】一方の金属に突起部を設ける必要がなく、2つの金属の結合前素材形状を単純化すること。
【解決手段】第1金属11と第2金属12を結合する結合方法において、金属フィラー挟持工程と、加圧工程と、通電工程と、を備える。金属フィラー挟持工程は、第1金属11と第2金属12のうち、少なくとも一方の硬度以上の硬度を持つ金属ワイヤ13を、第1金属11と第2金属12の結合面11a,12aに挟む。加圧工程は、第1金属11と第2金属12の結合部を加圧する。通電工程は、第1金属11と第2金属12との間に通電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力を加えた加圧接触部に溶接電流を流し、そこに発生する抵抗熱により第1金属と第2金属を結合する金属結合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサ電源を用いたプロジェクション溶接(以下、「CDW:Capacitor discharge weldingの略」という。)においては、結合しようとする2つの金属のうち、一方の金属に突起部を設ける。そして、突起部の頂点と他方の金属の接合部に圧力を加え、互いの加圧接触部に溶接電流を流し、そこに発生する抵抗熱により2つの金属を結合する金属結合方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−181627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の金属結合方法にあっては、2つの金属の一方に、予め突起部(プロジェクション)を設け、この突起部により抵抗熱が発生する加圧接触部を形成して抵抗溶接を行う。このため、2つの金属の加圧接触部による接合領域や接合面積を決めると、頂点の平面精度が高い突起部を、一方の金属に対する機械加工により設ける必要がある、という問題点があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、一方の金属に突起部を設ける必要がなく、2つの金属の結合前素材形状を単純化することができる金属結合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、第1金属と第2金属を結合する結合方法において、金属フィラー挟持工程と、加圧工程と、通電工程と、を備える手段とした。
前記金属フィラー挟持工程は、前記第1金属と前記第2金属のうち、少なくとも一方の硬度以上の硬度を持つ金属フィラーを、前記第1金属と前記第2金属の結合面に挟む。
前記加圧工程は、前記第1金属と前記第2金属の結合部を加圧する。
前記通電工程は、前記第1金属と前記第2金属との間に通電する。
【発明の効果】
【0007】
よって、金属フィラー挟持工程→加圧工程→通電工程を経過することで、金属フィラーが第1金属と第2金属との間で溶融し、第1金属と第2金属が結合される。
この結合方法で、金属フィラーの硬度を、第1金属と第2金属のうち、少なくとも一方の硬度以上としている。その理由は、要求される結合強度を確保するためであり、例えば、金属フィラーの硬度が第1金属と第2金属の硬度より小さい場合、加圧する際、金属フィラーが潰れてしまい、接合面積を制御することができず、要求される結合強度を確保することができないことによる。
この結合方法は、抵抗熱が発生する加圧接触部を狭い領域に限定するのに、金属の一方に設けた突起部に代えて、第1金属や第2金属とは独立した部材である金属フィラーを用いている。このため、2つの金属の結合前素材形状は、結合面をそれぞれ平面にするだけで良く、金属素材形状が単純化される。さらに、結合面に挟む金属フィラーの形状や長さを変更するだけで、金属フィラーによる接合領域や接合面積の変更への対応が容易となる。
この結果、一方の金属に突起部を設ける必要がなく、2つの金属の結合前素材形状を単純化することができる。加えて、要求される結合強度を確保することができると共に、金属フィラーによる接合領域や接合面積の変更への対応性を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の金属結合方法に適用されるコンデンサ式抵抗溶接機の一例を示す全体構成図である。
【図2】実施例1の金属結合方法のうち金属フィラー位置決め工程を示す側面図である。
【図3】実施例1の金属結合方法のうち金属フィラー位置決め工程を示す平面図である。
【図4】実施例1の金属結合方法のうち金属フィラー挟持工程を示す側面図である。
【図5】実施例1の金属結合方法のうち金属フィラー挟持工程を示す図4のA部拡大図である。
【図6】実施例1の金属結合方法のうち加圧工程を示す側面図である。
【図7】実施例1の金属結合方法のうち通電工程での電源電圧(a)とコンデンサ電圧(b)と溶接電流(c)の一例を示す波形図である。
【図8】比較例の金属結合方法を示す説明図である。
【図9】比較例の金属結合方法における図8の突起形状を示す拡大図である。
【図10】実施例2の金属結合方法のうち金属フィラー位置決め工程でのロケートピン型位置決め治具及び金属ワイヤを示す図である。
【図11】実施例3の金属結合方法のうち金属フィラー位置決め工程で第1金属と第2金属に挟まれるエキスパンドメタルを示す側面図である。
【図12】実施例3の金属結合方法のうち金属フィラー位置決め工程での円筒型位置決め治具及びエキスパンドメタルを示す図である。
【図13】実施例3の金属結合方法のうち金属フィラー位置決め工程でのロケートピン型位置決め治具及びエキスパンドメタルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の金属結合方法を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
実施例1の金属結合方法を、「コンデンサ式抵抗溶接機」、「実施例1の金属結合方法による各工程」、「比較例の金属結合方法による課題」、「実施例1の金属結合方法による作用」、「実施例1の金属結合方法による効果」に分けて説明する。
【0011】
[コンデンサ式抵抗溶接機]
図1は、実施例1の金属結合方法に適用されるコンデンサ式抵抗溶接機の一例を示す全体構成図である。以下、図1に基づき、コンデンサ式抵抗溶接機の全体構成を説明する。
【0012】
実施例1の金属結合方法に適用されるコンデンサ式抵抗溶接機は、図1に示すように、電源1と、抵抗溶接回路2と、電解コンデンサ3と、充電用ダイオード4と、放電用ダイオード5と、溶接トランス6と、上部電極7と、下部電極8と、を備えている。
【0013】
前記電源1は、単相又は三相であり、整流回路と定電圧回路と制御回路を有する抵抗溶接回路2が接続され、抵抗溶接回路2に電解コンデンサ3と充電用ダイオード4と放電用ダイオード5が接続される。
【0014】
前記抵抗溶接回路2は、充電電圧の制御(充電制御、放電制御)を、半導体(充電用ダイオード4と放電用ダイオード5)で自動的に行う。この充電電圧の自動制御により、電源1の電圧が変動しても、電解コンデンサ3への充電電圧は変わらず、一度設定されると常に一定の溶接電流で溶接することができる。
【0015】
前記電解コンデンサ3は、溶接に必要なエネルギー(電気量)を充電するもので、これを瞬時に溶接トランス6に放電して大きな溶接電流を流す。このように、コンデンサ式抵抗溶接機とすることで、例えば、交流式溶接機に比べて数十分の一という小さな電源容量で済むし、瞬間的の放電された電流は、有効に溶接エネルギーとして利用されるので、他の方式に比べて熱効率が良くなる。
【0016】
前記上部電極7と前記下部電極8は、溶接時、溶接トランス6から溶接電流が通電される。溶接対象物である第1金属11と第2金属12のうち、第1金属11は、図1の上下方向に移動可能な上部電極7に取り付けられる。そして、第2金属12は、基礎9に固定された下部電極8に取り付けられる。なお、図1において、13は金属ワイヤであり、14はロケートピン型位置決め治具である。
【0017】
[実施例1の金属結合方法による各工程]
図2〜図7は、実施例1の金属結合方法による各工程を示す図である。以下、図2〜図7に基づき、実施例1の金属結合方法による各工程を説明する。
【0018】
実施例1の金属結合方法を行うのに先行し、第1金属11と、第2金属12と、金属ワイヤ13(金属フィラー)と、ロケートピン型位置決め治具14(位置決め治具)と、を用意しておく。
【0019】
前記第1金属11は、例えば、SS400(一般構造用炭素鋼)を材料とする金属部品であり、結合面11aを平面としておくと共に、位置決め治具穴11bを形成しておく。
【0020】
前記第2金属12は、例えば、SS400(一般構造用炭素鋼)を材料とする金属部品であり、結合面12aを平面としておくと共に、位置決め治具穴12bを形成しておく。
【0021】
前記金属ワイヤ13は、例えば、S20C(機械構造用炭素鋼)を材料とし、接合面積に必要な長さを持ち、結合面11a,12aにおける位置決めを可能とする形状を持ったものとされる。この金属ワイヤ13の材料であるS20C(機械構造用炭素鋼)は、第1金属11と第2金属12の材料であるSS400(一般構造用炭素鋼)より高い硬度を持つ。
【0022】
前記ロケートピン型位置決め治具14は、位置決め治具穴11b,12bに差し込み設定することで、第1金属11と第2金属12の位置決めを行うロケートピン形状とする。
【0023】
・金属フィラー位置決め工程
金属フィラー位置決め工程は、図2及び図3に示すように、第1金属11と第2金属12の結合面11a,12aにおける金属ワイヤ13の設定位置を、ロケートピン型位置決め治具14により決める工程である。
この金属フィラー位置決め工程は、下部電極8の上面に第2金属12を取り付け、第2金属12の位置決め治具穴12bに、ロケートピン型位置決め治具14のピン底部側を差し込んで設定する。そして、ロケートピン型位置決め治具14の円筒状外周面14aに対し、金属ワイヤ13を位置決め設定することで行う。つまり、ロケートピン型位置決め治具14のピン中心軸CLを、金属ワイヤ13の中心軸に一致させる。
実施例1の金属ワイヤ13は、図3に示すように、花びら形状とし、その形状により位置決めと接合面積の制御を行う。つまり、金属ワイヤ13の位置決めは、金属ワイヤ13の中心軸を円の中心点とする複数の分割円弧面13aを、ロケートピン型位置決め治具14の円筒状外周面14aと接する位置決め部として用いることで行う。そして、金属ワイヤ13の接合面積の制御は、花びら形状の設定数を変更することにより行う。要求される接合面積が小さいときは、例えば、図3(a)に示すように花びらを3枚とする。一方、要求される接合面積が大きいときは、例えば、図3(b)に示すように花びらを4枚とするというように、花びら形状の設定数を増す。
【0024】
・金属フィラー挟持工程
金属フィラー挟持工程は、図4及び図5に示すように、金属ワイヤ13を、第1金属11と第2金属12の結合面11a,12aに僅かの間隔を介して挟む工程である。
この金属フィラー挟持工程は、上部電極7の下面に取り付けられている第1金属11を、上部電極7と共に下方に移動する。そして、第2金属12に設定されているロケートピン型位置決め治具14の先端部側を第1金属11の位置決め治具穴11bに差し込み、さらに、上部電極7と共に第1金属11を下方に移動させることで行う。
この第1金属11が下方に移動するとき、図4及び図5に示すように、振動等の外力が加わっても金属ワイヤ13の位置がずれることなく、ロケートピン型位置決め治具14に対して位置決め状態が保たれている。
【0025】
・加圧工程
加圧工程は、図6に示すように、第1金属11と第2金属12の金属ワイヤ13を介在させた結合部を加圧し、金属ワイヤ13に対して加圧接触部を形成する工程である。
この加圧工程は、ロケートピン型位置決め治具14により位置決めされている第1金属11と第2金属12と金属ワイヤ13の位置決め状態を保ったままで、上部電極7と共に第1金属11をさらに下方に移動させる。そして、第1金属11が金属ワイヤ13に接触した後も、一定の加圧力にて金属ワイヤ13を押し付けることで行う。これにより、金属ワイヤ13より低い硬度の第1金属11と第2金属12が、加圧接触力により僅かに窪み変形し、抵抗熱が発生する加圧接触部が形成される。
【0026】
・通電工程
通電工程は、図7に示すように、第1金属11と第2金属12との間に溶接電流を通電する工程である。
この通電工程は、図6に示すように、加圧工程により所定圧まで加圧してから、該所定圧を保持し、更に通電し、第1金属11と第2金属12と金属ワイヤ13の間に形成されている加圧接触部に対し溶接電流を流す。この溶接電流を流すことで、加圧接触部に抵抗熱が発生し、この抵抗熱により金属ワイヤ13を中心とする加圧接触部の金属が溶融し、溶融した金属ワイヤ13を介して第1金属11と第2金属12が結合される。
ここで、溶接電流は、図7(a)に示す電源電圧から、図7(b)に示すように、溶接に必要なエネルギー充電量によるコンデンサ電圧を作り出し、これを瞬時に溶接トランス6に放電することで、図7(c)に示すように生成される。
【0027】
[比較例の金属結合方法による課題]
2つの金属の一方に、予め突起部(プロジェクション)を設け、この突起部により抵抗熱が発生する加圧接触部を形成して抵抗溶接を行うものを比較例とする。この比較例の金属結合方法による課題を、図8及び図9に基づいて説明する。
【0028】
比較例の場合、2つの金属の加圧接触部を決めると、図8に示すように、2つの金属のうち一方の金属に対し、加圧接触部の全体にわたって、頂点の平面精度が高い突起部を機械加工により設ける必要がある。このとき、突起部の形状は、例えば、高さを1.00mmとすると、頂点の幅は0.20mm程度であり、しかも、頂点の平面度が0.1以下程度となる精度の形状による突起部を、機械加工により設ける必要がある。つまり、頂点の平面精度を低くすると、要求される結合強度を確保することができないため、頂点の平面精度が高い突起部とする必要があり、多大な加工工数を要することになる。
【0029】
また、金属の機械加工により突起部を設けるため、要求される結合強度の変更により、突起部を設ける接合領域の変更、あるいは、突起部による接合面積の変更を行う場合、その都度、金属に対する突起部機械加工の変更を要する。つまり、一方の金属に対し突起部を機械加工により設ける比較例の場合、接合領域の変更や接合面積の変更への対応性が低い。
【0030】
[実施例1の金属結合方法による作用]
実施例1の金属結合方法による作用を説明する。
実施例1の金属結合方法では、上記のように、金属フィラー位置決め工程→金属フィラー挟持工程→加圧工程→通電工程を経過することで、金属ワイヤ13が第1金属11と第2金属12との間で溶融し、第1金属11と第2金属12が結合される。
【0031】
この結合方法で、金属ワイヤ13の硬度を、第1金属11と第2金属12の硬度より高くしている。その理由は、要求される結合強度を確保するためであり、例えば、金属ワイヤの硬度が第1金属と第2金属の硬度より小さい場合、加圧する際、金属ワイヤが潰れてしまい、接合面積(=抵抗熱が発生する加圧接触部)を制御することができず、要求される結合強度を確保することができないことによる。
【0032】
実施例1の結合方法は、抵抗熱が発生する加圧接触部を狭い領域に限定するのに、金属の一方に設けた突起部に代えて、第1金属11や第2金属12とは独立した部材である金属ワイヤ13を用いている。このため、2つの金属11,12の結合前素材形状は、結合面11a,12aをそれぞれ平面にするだけで良く、金属素材形状が単純化される。さらに、結合面11a,12aに挟む金属ワイヤ13の形状や長さを変更するだけで、金属ワイヤ13による接合領域や接合面積の変更への対応が容易となる。
【0033】
したがって、一方の金属に突起部を設ける必要がなく、2つの金属11,12の結合前素材形状を単純化することができる。加えて、金属ワイヤ13の硬度を、第1金属11と第2金属12の硬度より高くしたことで、要求される結合強度を確保することができる。さらに、2つの金属11,12の加工の変更を要さず、単に金属ワイヤ13の形状や長さを変更するだけであるため、金属に突起部を設ける場合に比べ、接合領域や接合面積の変更への対応性を容易化することができる。
【0034】
[実施例1の金属結合方法による効果]
実施例1の金属結合方法にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0035】
(1) 第1金属11と第2金属12を結合する結合方法において、
前記第1金属11と前記第2金属12のうち、少なくとも一方の硬度以上の硬度を持つ金属フィラー(金属ワイヤ13)を、前記第1金属11と前記第2金属12の結合面11a,12aに挟む金属フィラー挟持工程と、
前記第1金属11と前記第2金属12の結合部を加圧する加圧工程と、
前記第1金属11と前記第2金属12との間に通電する通電工程と、
を備える。
このため、一方の金属に突起部を設ける必要がなく、2つの金属11,12の結合前素材形状を単純化することができる。加えて、要求される結合強度を確保することができると共に、金属フィラー(金属ワイヤ13)による接合領域や接合面積の変更への対応性を容易化することができる。
【0036】
(2) 前記第1金属11と前記第2金属12の結合面における前記金属フィラー(金属ワイヤ13)の設定位置を決める金属フィラー位置決め工程と、を備える。
このため、(1)の効果に加え、第1金属11と第2金属12の結合面間において金属フィラー(金属ワイヤ13)の設定位置がばらつくのを抑えることができる。
【0037】
(3) 前記金属フィラー位置決め工程は、前記金属フィラー(金属ワイヤ13)の前記第1金属11と前記第2金属12の結合面における設定位置を、位置決め治具(ロケートピン型位置決め治具14)により決める。
このため、(2)の効果に加え、第1金属11と第2金属12の位置決め精度を高めることができる。
【0038】
(4) 前記金属フィラー(金属ワイヤ13)は、花びら形状であり、前記位置決め治具(ロケートピン型位置決め治具14)と接する位置決め部(複数の分割円弧面13a)を有する。
このため、(3)の効果に加え、接合面積の制御を花びら数により容易に設定できると共に、金属フィラー(金属ワイヤ13)を外力等に対して安定して位置決めすることができる。
【0039】
(5) 前記位置決め治具(ロケートピン型位置決め治具14)は、前記金属フィラー(金属ワイヤ13)の中心で位置決めを行う。
このため、(4)の効果に加え、金属フィラー(金属ワイヤ13)の中心位置決めを確実に行うことができる。
【実施例2】
【0040】
実施例2は、金属フィラーを、螺旋形状による金属ワイヤにした例である。
【0041】
図10は、実施例2における金属フィラー位置決め工程でのロケートピン型位置決め治具及び金属ワイヤを示す図である。以下、図10に基づき、実施例2の金属結合方法について説明する。
【0042】
実施例2における金属フィラー位置決め工程は、図10に示すように、ロケートピン型位置決め治具14の円筒状外周面14aに対し、ピン中心軸CLを金属ワイヤ13の中心軸に一致させ、金属ワイヤ23を位置決め設定することで行う。
【0043】
実施例2の金属ワイヤ23は、図10に示すように、螺旋形状とし、その形状により位置決めと接合面積の制御を行う。つまり、金属ワイヤ23の位置決めは、金属ワイヤ23の中心部に最初に巻かれた螺旋最内面23aを、ロケートピン型位置決め治具14の円筒状外周面14aと接する位置決め部として用いることで行う。そして、金属ワイヤ23の接合面積の制御は、螺旋形状の螺旋巻き数を変更することにより行う。要求される接合面積が小さいときは、例えば、図10(a)に示すように螺旋巻き数を2〜3回とする。そして、要求される接合面積がより大きくなると、例えば、図10(b)に示すように約4回とする。さらに、要求される接合面積が大きくなると、例えば、図10(c)に示すように4〜5回とするというように、螺旋巻き数を増す。
なお、他の構成は、実施例1と同様であり、他の作用は、実施例1と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0044】
次に、効果を説明する。
実施例2の金属結合方法にあっては、実施例1の(1),(2),(3),(5)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0045】
(4) 前記金属フィラー(金属ワイヤ23)は、螺旋形状であり、前記位置決め治具(ロケートピン型位置決め治具14)と接する位置決め部(螺旋最内面23a)を有する。
このため、(3)の効果に加え、接合面積の制御を螺旋巻き数により容易に設定することができると共に、金属フィラー(金属ワイヤ23)を外力等に対して安定して位置決めすることができる。
【実施例3】
【0046】
実施例3は、金属フィラーを、エキスパンドメタル形状による金属板加工材とした例である。
【0047】
図11は、実施例3の金属結合方法のうち金属フィラー位置決め工程で第1金属と第2金属に挟まれる金属板加工材を示す。図12は、実施例3の金属結合方法のうち金属フィラー位置決め工程での円筒型位置決め治具及び金属板加工材を示す。図13は、実施例3の金属結合方法のうち金属フィラー位置決め工程でのロケートピン型位置決め治具及び金属板加工材を示す。以下、図11〜図13に基づき、実施例3の金属結合方法について説明する。
【0048】
前記金属板加工材33は、図11に示すように、板材を網目状や菱型状に機械加工したエキスパンドメタル形状であり、針金を編んで加工をしたものとは異なり、端部のホツレや網目のズレ・歪みがなく、接合部分が一体であるため堅牢性を発揮する。
【0049】
実施例3における金属フィラー位置決め工程は、図12に示すように、円筒型位置決め治具24の円筒状内周面24aに対し、金属板加工材33の外周面33aを接触させることで、エキスパンドメタル形状の金属板加工材33の位置決めを行う。
【0050】
実施例3における他の金属フィラー位置決め工程は、図13に示すように、ロケートピン型位置決め治具14の円筒状外周面14aに対し、金属板加工材33の内周面33bを接触させることで、エキスパンドメタル形状の金属板加工材33の位置決めを行う。
【0051】
実施例3のエキスパンドメタル形状の金属板加工材33の接合面積の制御は、板加工材の長さを変更することにより行う。要求される接合面積が大きいときは、例えば、図12に示すように、外周位置決めとして内側に金属板加工材33を充填する。そして、要求される接合面積が小さくなると、例えば、図13に示すように、中心位置決めとし、外側に必要な金属板加工材33を巻き付ける。
なお、他の構成は、実施例1と同様であり、他の作用は、実施例1と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0052】
次に、効果を説明する。
実施例3の金属結合方法にあっては、実施例1の(1),(2),(3)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0053】
(4) 前記金属フィラー(金属板加工材33)は、エキスパンドメタル形状であり、前記位置決め治具(円筒型位置決め治具24またはロケートピン型位置決め治具14)と接する位置決め部(外周面33aまたは内周面33b)を有する。
このため、(3)の効果に加え、接合面積の制御を長さにより容易に設定することができると共に、金属フィラー(金属板加工材33)を外力等に対して安定して位置決めすることができる。
【0054】
(5) 前記位置決め治具(円筒型位置決め治具24)は、前記金属フィラー(金属加工材33)の外周で位置決めを行う。
このため、(4)の効果に加え、金属フィラー(金属板加工材33)の外周位置決めを確実に行うことができる。
【0055】
以上、本発明の金属結合方法を実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0056】
実施例1〜3では、第1金属11と第2金属12の材質を、同じ材質(SS400:一般構造用炭素鋼)にした例を示した。しかし、第1金属と第2金属は、異なる材質にしてもよい。つまり、本発明の金属結合方法は、特に、第1金属と第2金属の材料を限定しない。CDWにて結合可能な材料であれば、基本的に結合可能である。
【0057】
実施例1〜3では、金属フィラー(金属ワイヤ13,23、金属板加工材33)の硬度が、第1金属11と第2金属12よりも高い硬度を持つ例を示した。しかし、金属フィラーの硬度としては、第1金属と第2金属のうち、少なくとも一方の硬度以上の硬度を持つものであれば良い。
【0058】
実施例3の図12において、金属フィラーを外周で位置決めることについて記載した。しかし、金属フィラー(金属ワイヤ13,23)を外周で位置決めることについては、実施例1,2にも適応することができる。
【0059】
実施例1では、金属フィラーとして花びら形状による金属ワイヤ13を示し、実施例2では、金属フィラーとして螺旋形状による金属ワイヤ23を示し、実施例3では、金属フィラーとしてエキスパンドメタル形状による金属板加工材33の例を示した。しかし、金属フィラーの具体的形状は、これらの形状に限られるものではなく、様々な形状を適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 電源
2 抵抗溶接回路
3 電解コンデンサ
4 充電用ダイオード
5 放電用ダイオード
6 溶接トランス
7 上部電極
8 下部電極
11 第1金属
11a 結合面
12 第2金属
12a 結合面
13 金属ワイヤ(金属フィラー)
14 ロケートピン型位置決め治具(位置決め治具)
23 金属ワイヤ(金属フィラー)
24 円筒型位置決め治具(位置決め治具)
33 金属板加工材(金属フィラー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属と第2金属を結合する結合方法において、
前記第1金属と前記第2金属のうち、少なくとも一方の硬度以上の硬度を持つ金属フィラーを、前記第1金属と前記第2金属の結合面に挟む金属フィラー挟持工程と、
前記第1金属と前記第2金属の結合部を加圧する加圧工程と、
前記第1金属と前記第2金属との間に通電する通電工程と、
を備えることを特徴とする金属結合方法。
【請求項2】
請求項1に記載された金属結合方法において、
前記第1金属と前記第2金属の結合面における前記金属フィラーの設定位置を決める金属フィラー位置決め工程と、を備える
ことを特徴とする金属結合方法。
【請求項3】
請求項2に記載された金属結合方法において、
前記金属フィラー位置決め工程は、前記金属フィラーの前記第1金属と前記第2金属の結合面における設定位置を、位置決め治具により決める
ことを特徴とする金属結合方法。
【請求項4】
請求項3に記載された金属結合方法において、
前記金属フィラーは、花びら形状と、螺旋形状と、エキスパンドメタル形状のうち、一つの形状であり、前記位置決め治具と接する位置決め部を有する
ことを特徴とする金属結合方法。
【請求項5】
請求項4に記載された金属結合方法において、
前記位置決め治具は、前記金属フィラーの中心、または、外周で位置決めを行う
ことを特徴とする金属結合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−6204(P2013−6204A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141801(P2011−141801)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】