説明

金属蒸気放電ランプおよび照明装置

【課題】接着剤の充填不良による外観不良が生じ難い金属蒸気放電ランプおよび照明装置を提供する。
【解決手段】一端側にピンチシール部201を有し内部に放電管100が配置された内管200が、口金400と外管300とで囲まれた空間に収容され、前記内管200のピンチシール部201と前記外管300とが接着剤600で接合された金属蒸気放電ランプ10であって、前記ピンチシール部201には、前記外管300の内周面形状に沿った外周形状を有する鍔状部材500が外嵌されており、前記接着剤600は、前記外管300内における鍔状部材500よりも前記口金400側において前記鍔状部材500によって堰き止められた状態で固化している構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属蒸気放電ランプおよび照明装置に関し、特に、三重管構造のメタルハライドランプにおける内管と外管とを接合する接着剤の充填技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内部に放電管が配置された内管が、口金と外管とで囲まれた空間に収容された三重管構造のメタルハライドランプ(以下、単に「ランプ」)が存在する。このようなランプでは、例えば、内管と外管との隙間にセメント等の接着剤を充填することによって内管と外管とを接合している。接着剤の充填は、例えば、仮組みしたランプを下側に口金が位置するよう保持し、口金に設けられた貫通孔から口金内部に充填機のノズルを差し込んで、そのノズルから内管のピンチシール部と外管との隙間に接着剤を注入して行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4436428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、接着剤は、固化するまでは流動性を有するため、注入された場所に必ずしもその全体が留まるとは限らず、その一部が重力等によって下方に垂れてしまって、ピンチシール部よりも放電管側にはみ出してしまうことがある。また、ノズルで注入する際のコントロールミスにより接着剤がピンチシール部よりも放電管側にはみ出してしまう場合もある。それら接着剤の充填不良は、ランプの外観を損ねることになり、店舗等の商業施設で使用されるにふさわしい美観に欠けることから、場合によっては、ランプを不良品として取り扱わざるを得ず、それが歩留まり低下の原因となっている。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、接着剤の充填不良による外観不良が生じ難い金属蒸気放電ランプおよび照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る金属蒸気放電ランプは、一端側にピンチシール部を有し内部に放電管が配置された内管が、口金と外管とで囲まれた空間に収容され、前記内管のピンチシール部と前記外管とが接着剤で接合された金属蒸気放電ランプであって、前記ピンチシール部には、前記外管の内周面形状に沿った外周形状を有する鍔状部材が外嵌されており、前記接着剤は、前記外管内における前記鍔状部材よりも前記口金側において前記鍔状部材によって堰き止められた状態で固化していることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る照明装置は、上記金属蒸気放電ランプと、当該金属蒸気放電ランプから発せられた光を所望方向に反射させる反射鏡とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る金属蒸気放電ランプおよび照明装置は、ピンチシール部に外管の内周面形状に沿った外周形状を有する鍔状部材が外嵌されており、その鍔状部材によって接着剤が堰き止められているため、接着剤がピンチシール部よりも放電管側にはみ出すことがない。したがって、接着剤の充填不良による外観不良が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一態様に係る照明装置を示す一部破断側面図
【図2】本発明の一態様に係る金属蒸気放電ランプを示す一部破断側面図
【図3】本発明の一態様に係る金属蒸気放電ランプの放電管を示す断面図
【図4】図2におけるA−A線に沿った断面を示す一部破断斜視図
【図5】本発明の一態様に係る鍔状部材を示す斜視図
【図6】変形例1に係る金属蒸気放電ランプを説明するための断面図
【図7】変形例2に係る金属蒸気放電ランプを説明するための断面図
【図8】変形例3に係る金属蒸気放電ランプを説明するための断面図
【図9】変形例4に係る金属蒸気放電ランプを説明するための断面図
【図10】変形例5に係る金属蒸気放電ランプを説明するための断面図
【図11】変形例6に係る金属蒸気放電ランプを説明するための断面図
【図12】変形例7に係る金属蒸気放電ランプを説明するための断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態に係る金属蒸気放電ランプおよび照明装置について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面における部材の縮尺は実際のものとは異なる。また、本発明において、数値範囲を示す符号「〜」は、その両端の数値を含む。
【0011】
[照明装置]
図1は、本発明の一態様に係る照明装置を示す一部破断側面図である。図1に示すように、本発明の一態様に係る照明装置1は、スポットライト照明装置であって、金属蒸気放電ランプ10(以下、単に「ランプ10」)と、当該ランプ10が内部に配置された照明器具20とを備える。なお、本発明に係る照明装置は、スポットライト照明装置に限定されず、他の用途の照明であっても良い。
【0012】
ランプ10は、放電管100、内管200、外管300、口金400および鍔状部材500を備える。ランプ10の詳細については後述する。
照明器具20は、ランプ10から発せられた光を前方に反射させる凹状の反射面21を有する反射鏡22と、当該反射鏡22内に組み込まれたランプ装着用のソケット23と、壁や天井に反射鏡22を取着するための取着具24とを備える。
【0013】
反射鏡22は、前面に設けられた光取り出し用の開口部25が、ガラス板等のカバーによって塞がれてはおらず、開放状態となっている。
ソケット23は、供給線26を介して壁や天井に埋め込まれた点灯装置(不図示)と電気的に接続されており、ソケット23にランプ10の口金400を挿着すれば点灯装置からランプ10に電力が供給可能になる。
【0014】
取着具24は、壁や天井に回動自在に取り付けられたアーム27を有し、当該アーム27の先端には反射鏡22が回動自在に軸着されている。照明装置1から放射される光の向きは、アーム27または反射鏡22を回動させることにより調節可能である。
【0015】
[金属蒸気放電ランプ]
図2は、本発明の一態様に係る金属蒸気放電ランプを示す一部破断側面図である。図2に示すように、ランプ10は、3重管構造のメタルハライドランプであって、一端側にピンチシール部201を有し内部に放電管100が配置された内管200が、口金400と外管300とで囲まれた空間に収容され、前記内管200のピンチシール部201と前記外管300とが接着剤600で接合された構成を有する。
【0016】
図3は、本発明の一態様に係る金属蒸気放電ランプの放電管を示す断面図である。図3に示すように、放電管100は、内部に気密封止された放電空間101を有する本管部102と、当該本管部102から放電管100の管軸(ランプ10の長手方向の中心軸であるランプ軸Xと一致している)方向両側に延出するように配置された細管部103,104と、本管部102と細管部103,104との隙間を埋める接合部105,106とからなる外囲器107を有している。
【0017】
外囲器107は、例えばアルミナセラミックで形成された焼き嵌め型である。なお、外囲器107は、アルミナセラミックで形成されたものに限定されず、その他の透光性セラミック(例えば、希土類アルミナガーネットセラミックなど)、石英ガラス等で形成されていても良い。また、図面では、放電管100は、本管部102、細管部103,104および接合部105,106を接合して形成した焼き嵌めタイプであるが、本管部102、細管部103,104および接合部105,106が一体的に成形された一体型でもよい。また、複数の部材を接合して本管部102を形成してもよい。
【0018】
放電空間101内には、発光物質である金属ハロゲン化物、始動補助ガスである希ガス、および、緩衝ガスである水銀がそれぞれ所定量封入されている。金属ハロゲン化物としては、例えば、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化ジスプロシウム、ヨウ化ホルミウム、ヨウ化ツリウム、ヨウ化タリウム、ヨウ化セリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化インジウム、ヨウ化スカンジウム等が用いられる。なお、金属ハロゲン化物は、発光色により適宜決定される。
【0019】
放電管100は、先端部が本管部102の放電空間101内で互いに対向し、基端部が細管部103,104に挿入された一対の電極108,109を有する。そして、それら電極108,109の先端部間の中間位置が、図2における放電管100の光中心Oとなる。
【0020】
電極108,109は、電極棒110,111と、当該電極棒110,111の先端部(放電空間101内で互いに対向する側の端部)に設けられた電極コイル112,113とを有する。電極108,109の他端部は、細管部103,104内において給電体114,115の一端部と接合されており、給電体114,115は、細管部103,104内に流し込まれたフリットからなるシール材116,117によって封着されている。
【0021】
図2に戻って、給電体114,115は、電力供給線118,119、金属箔120,121および導入線122,123を介して、口金400と電気的に接続されている。
一方の電力供給線118は、他方の電力供給線119および当該電力供給線119に接続された給電体115と対向する部分が、例えば石英ガラス等からなるスリーブ128で被覆されている。このような構成とすれば、ランプ寿命末期に放電管100でリークが生じたとしても、反対極性となる部材間で生じる放電によって想定外の大きな電流が流れ続けることを抑制する効果がある。これにより点灯装置が損傷するなどの不具合を未然に防止することができる。
【0022】
導入線122,123は、例えば、モリブデン製の第1外部リード線124,125と、ニッケル製の第2外部リード線126,127との継線であり、第1外部リード線124,125は金属箔120,121と接続され、第2外部リード線126,127は口金400と接続されている。第2外部リード線126,127に例えばニッケル等の軟らかい金属線を用いると、第2外部リード線126,127と口金400との接続や光中心位置合わせ等の作業性が向上する。なお、第1外部リード線124,125および第2外部リード線126,127の材質は、それぞれ上記に限定されず任意である。
【0023】
内管200は、例えば、口金側端部であるピンチシール部201と、口金400とは反対側の端部である先端部202と、それらピンチシール部201と先端部202の間の中間部203とからなる片封止型の気密容器であって、例えば石英ガラスで形成されている。なお、内管200は、石英ガラスで形成されたものに限定されず、アルミナセラミック等の透光性セラミックや硬質ガラス等で形成されていても良い。
【0024】
ピンチシール部201は、例えばピンチシール法による圧潰封止により形成されており、電力供給線118,119の一端部と、金属箔120,121の全体と、第1外部リード線124,125の一端部(すなわち導入線122,123の一端部)とが封止されている。
【0025】
先端部202には、内管200内を真空引きする際に用いた排気管の残部であるチップオフ部分204が存在している。内管200内を真空引きすることによって、給電体114,115や電力供給線118,119等の金属部材が高温にさらされ酸化するのを防止することができる。なお、内管200内を真空にする代わりに、前記内管200内に窒素等の不活性ガスを充満させることによっても、金属部材が酸化するのを防止することができる。
【0026】
中間部203は、例えば略円筒状であって、内部に放電管100の外囲器107が配置されている。なお、中間部203の形状は略円筒状に限定されず、多角形や楕円の筒状等円筒以外の筒状であっても良い。また、中間部203の内径および外径は必ずしも内管の管軸(ランプ軸Xと一致している)方向に沿って均一である必要はなく、例えば放電管100の本管部102に相当する位置の内径および外径が、それ以外の位置の内径および外径よりも大きくなっているような形状、すなわち一部に膨出部を有する中膨形状であっても良い。これにより、放電管100の温度が過度に上昇することを抑制することができる。
【0027】
外管300は、例えば、口金側端部である開口部(ネック部)301と、口金400とは反対側の端部である閉塞部302と、それら開口部301および閉塞部302の間の中間部303とで構成される有底筒状であって、例えば硬質ガラスで形成されている。なお、外管300は、硬質ガラスで形成されたものに限定されず、アルミナセラミック等の透光性セラミックや石英ガラス等で形成されていても良い。
【0028】
外管300は、放電管100の破裂によって内管200が破損した場合に、それら破裂や破損で生じた破片が飛散するのを防止する役割を果たす。したがって、図1に示すような開口部25がカバーで塞がれていない照明器具20に取り付けて使用しても破片が飛散しない。なお、外管300の内部は、大気状態とされていても良いし、減圧状態にされていても良いし、不活性ガスが充満されていても良い。
【0029】
閉塞部302は、略半球状、若しくは平坦形状が好ましい。中間部303は、ランプ10のコンパクト性および照明器具20への適合性を確保するために、内管200の中間部203と同じ略円筒状であることが好ましく、最大外径が20[mm]〜27[mm]、ネック径(ピンチシール部201付近の径)が20[mm]〜23[mm]、肉厚が1[mm]〜2[mm]であることが好ましい。また、外管300の中間部303において、外管300の内周面304と内管200の外周面205の隙間は、外管300の管軸(ランプ軸Xと一致している)と直交する方向において略均一であることが好ましい。組立工程において外管300を内管200に被せる際の隙間を確保するためには、前記隙間が平均で1[mm]〜3[mm]になるよう設計されていることが好ましい。
【0030】
なお、中間部303の形状は略円筒状に限定されず、多角形や楕円の筒状等円筒以外の筒状であっても良い。また、中間部303の内径および外径は必ずしも外管管軸方向に沿って均一である必要はなく、例えば放電管100の本管部102に相当する位置の内径および外径が、それ以外の位置の内径および外径よりも大きくなっているような形状、すなわち一部に膨出部を有する中膨形状であっても良い。膨出部を設けることにより放電管からの熱による外管の温度上昇を低減することで、硬質ガラスの歪点からの裕度ができて適合する照明器具20の選択の幅を広げることができる。さらに、放電管破損時の安全性も向上する。その場合、前記隙間が最大で5[mm]になるよう設計されていることが好ましい。また、外管中間部の肉厚は1[mm]〜2[mm]が好ましい。
【0031】
さらに構成として外管300の落下防止のため、開口部301付近に内側凸部を設け、口金400に例えば、溝形状の被係合部を設けても良い。その場合、セメント等の接続部材を介している場合であっても良い。また、口金400に被係合部を設けていない場合は、外管300の内側凸部を接続部材で覆うことで係合されていても良い。
【0032】
口金400は、エジソンタイプであって、シェル部401およびアイレット部402を有する。一方の第2外部リード線126は、口金400に設けられた貫通孔403を貫通して外部へと導出され、シェル部401に接合されることで口金400に固定されている。他方の第2外部リード線127は、口金400に設けられた貫通孔404を貫通してアイレット部402と接合されることで、口金400に固定されている。
【0033】
口金400の外管側端部405は、外管300の開口部301内に挿入されている。この構成であれば口金400部分においてランプ10の外径が口金400の最大外径と同等以下にすることが可能であるため、照明器具20の反射鏡22のネック部の開口径を必要以上に大きくしないで済み、反射鏡22に対する設計の自由度を高めることができる。
【0034】
口金400の外周面406には周方向に沿った円環状の膨出部407が形成されている。膨出部407は、外周面406から外管300の開口部301の厚み分だけランプ軸Xと直交する方向に膨出しており、当該膨出部407に外管300の開口部301を当接させることによって、ランプ軸X方向における口金400と外管300との位置決めを容易に行なうことができる。
【0035】
なお、口金は、シェル部やアイレット部など電気的接続するために必要な部分を構成する部品、外管を保持する部分を構成する部品、内管を支持する部分を構成する部品など2つ以上の部品からなっていても、これらの部品が接着剤などにより固着もしくは嵌合により固定されていれば良い。
【0036】
図4は、図2におけるA−A線に沿った断面が表された一部破断斜視図である。図4に示すように、内管200のピンチシール部201には鍔状部材500が外嵌されている。
外管300の開口部301は、口金400に対して外接しているため、内管と外管との隙間にセメント等の接着剤を充填する工程中に、特殊な冶具を用いることなく接着剤の充填具合を外側から確認することができる。
【0037】
鍔状部材500の口金側には接着剤600が充填されており、例えば鍔状部材500の口金側主面501は接着剤600によってランプ10の外側から見えないようになっている。一方、鍔状部材500の放電管側には接着剤600が充填されておらず、鍔状部材500の放電管側主面502はランプ10の外側から見える(図2参照)。外側から見えない口金側主面501の態様は任意であるが、外側から見える放電管側主面502は、ランプ10の外観を良好にするために平面であることが好ましい。なお、鍔状部材500の厚みは、必ずしも略均一である必要はなく不均一であっても良い。例えば、外側から見える放電管側主面502だけが平面で口金側主面501は平面でない構成であっても良い。さらに、鍔状部材500は、略板状に限定されず、膜状、ブロック状等の他の形状であっても良い。
【0038】
図5は、本発明の一態様に係る鍔状部材を示す斜視図である。図5に示すように、鍔状部材500の略中央には、ピンチシール部201の形状に合わせた孔部503が形成されている。孔部503の形状は、ピンチシール部201をランプ軸Xと直交する面で切断したときの横断面の形状と略同一であって、鍔状部材500をピンチシール部201に外嵌させた状態で、孔部503の内周面504とピンチシール部201の表面206とが内周面504の略全周に亘って接触している。
【0039】
なお、鍔状部材500の孔部503は、必ずしもピンチシール部201と略同一の形状である必要はなく、ある程度の範囲であれば、ピンチシール部201の横断面と異なる形状であっても良い。
【0040】
例えば、孔部503の形状がピンチシール部201の横断面よりも、全体的に或いは部分的にひとまわり小さい形状であっても良い。その場合は、鍔状部材500を塑性もしくは弾性を有して変形可能な材料、好ましくは更に耐熱性を有する材料で形成すれば、ピンチシール部201に外嵌可能である。このような構成であれば、孔部503内にピンチシール部201を圧入することになるため、ピンチシール部201に対して鍔状部材500が位置ずれし難い。また、孔部503の内周面504とピンチシール部201の表面206とがより密着することになるため、接着剤600が漏れるような隙間が鍔状部材500とピンチシール部201との間に生じ難い。
【0041】
また、例えば、孔部503の形状がピンチシール部201の横断面よりも、全体的に或いは部分的にひとまわり大きい形状であっても良い。その場合は、孔部503の内周面504の一部がピンチシール部201の表面206と接触していない構成、または、孔部503の内周面504がピンチシール部201の表面206と全く接触していない構成となり得る。内周面504の一部が接触していない構成の場合は、接触している部分において鍔状部材500がピンチシール部201に保持されていれば良い。但し、接触していない部分に生じる隙間は接着剤600が漏れ難い狭い幅であることが好ましく、その隙間の最大幅は1.0 [mm]以下であることが好ましい。一方、鍔状部材500とピンチシール部201とが全く接触しない構成の場合は、接着剤などで鍔状部材500をピンチシール部201に固定することが考えられる。その場合の接着剤は、ピンチシール部201と外管300とを接合する接着剤600であっても良い。
【0042】
次に、鍔状部材500は、外管300の内周面304の形状に沿った外周形状を有し、鍔状部材500の外径と外管300の内径とは略同一である。内管200を外管300内に収容した状態において、鍔状部材500の外周面604と外管300の内周面304とが外周面604の略全周に亘って接触している。
【0043】
なお、鍔状部材500の外径は、必ずしも外管300の内径と略同一である必要はなく、ある程度の範囲であれば、外管300の内径と異なる大きさであっても良い。
例えば、鍔状部材500の外径が外管300の内径より大きくても良い。鍔状部材500を塑性もしくは弾性を有して変形可能な材料、好ましくは更に耐熱性を有する材料で形成すれば、鍔状部材500を外管300内に配置可能である。その場合は、外管300内に鍔状部材500が圧入されることになるため、鍔状部材500の外周面604と外管300の内周面304とを密着させることができ、鍔状部材500と外管300との間に接着剤600が漏れるような隙間が生じ難い。
【0044】
また、例えば、鍔状部材500の外径が外管300の内径より小さく、外周面604が全周に亘って外管300の内周面304と接触していない場合であっても良い。その場合、外周面604と外管300との間に生じる隙間は、接着剤600の漏れ難い幅であることが好ましく、その隙間の最大幅は1.0[mm]以下であることが好ましい。
【0045】
さらに、鍔状部材500が、略円形板状ではなく、例えば多角形板状等である場合は、鍔状部材500の外周面604の一部のみが外管300の内周面304と接触する構成となり得る。その場合は、外周面604と外管300との間に生じる隙間は、接着剤600の漏れ難い幅であることが好ましく、その隙間の最大幅は1.5[mm]以下であることが好ましい。
【0046】
鍔状部材500は、外管300および内管200を傷つけないために、外管300および内管200よりも硬度が低いことが好ましい。また、ランプ10の点灯時にはピンチシール部201が高温になるため、鍔状部材500は耐熱温度が150[℃]以上、より好ましくは200[℃]以上、さらに好ましくは250[℃]以上であることが好ましい。さらに鍔状部材500の材料が、塑性もしくは弾性を有して変形可能であれば、鍔状部材500の外径が外管300の内径より大きくても圧入することが可能である。これら硬度、耐熱温度および変形可能性の観点から、鍔状部材500の材料としては、アルミニウム、ステンレス等の金属や、マイカ、ガラス等の鉱物などが好適である。また、鍔状部材は必ずしも板状でなくとも、接着剤600が漏れ難いものである限り、たとえば細かい網目をなす金属やガラス繊維であってもよい。
【0047】
鍔状部材500は、上記した役割を果たすだけでなく、内管200に対する外管300の姿勢を規制し、内管200の管軸と外管300の管軸とを一致させるための部材としても利用可能である。その場合は、鍔状部材500がピンチシール部201および外管300と接触することが好ましい。
【0048】
内管200のピンチシール部201と外管300とは、鍔状部材500よりも口金側に配置された接着剤600によって接合されている。また、外管300と口金400も、接着剤600により接合されている。さらに、ピンチシール部201と口金400も接着剤600により接合されていると、ランプ10を構成する各部材の保持強度が高められ、落下等の耐衝撃性が上がるため、より好ましい。
【0049】
なお、接着剤600としては、セメントなどが考えられる。また、接着剤600は、少なくともピンチシール部201と外管300とを接合していれば良く、外管300と口金400、および、ピンチシール部201と口金400は、別の接着剤や金属部材等の別の接合構造により接合されていても良いし、特に内管200は接合部材無しでピンチシール部201から延出しているリード線126,127のみで支持されていても良い。
【0050】
接着剤600は、鍔状部材500の口金側に充填されている。接着剤600の充填は、仮組みしたランプ10を上側に口金400が位置するよう保持し、口金400の貫通孔403から口金400の内部に充填機のノズル(不図示)を差し込んで、そのノズルから内管200のピンチシール部201と外管300との隙間に接着剤600を注入して行なわれる。
【0051】
接着剤600は、固化する前の流動性を有する状態において、下方に垂れる、すなわち放電管側に流れるのが、鍔状部材500よって堰き止められている。そのため、接着剤600は、外管300内における鍔状部材500よりも口金側において鍔状部材500によって堰き止められた状態で固化している。
【0052】
接着剤600は、鍔状部材500によって堰き止められているため、ピンチシール部201を超えて放電管100側へ流れることがなく、ランプ10は外観が良好である。また、接着剤600は放電管100側が鍔状部材500によってランプ軸X方向の高さレベルが揃っているため、ランプ10の外観が良好である。
【0053】
なお、本実施の形態では、鍔状部材500と接着剤600との間に隙間がないため(鍔状部材500の口金側主面501が接着剤600と接触しているため)ランプ10の外観がより好適であるが、鍔状部材500と接着剤600との間には、鍔状部材500の口金側主面501の全体に亘って或いは一部のみに隙間が存在していても良い。
【0054】
また、本実施の形態では、接着剤600は、鍔状部材500よりも放電管100側へは全く漏れていないためランプ10の外観がより好適であるが、外観上問題のない程度であれば漏れていても良い。
【0055】
[変形例]
以上、本発明に係る金属蒸気放電ランプおよび照明装置を実施の形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明に係る金属蒸気放電ランプおよび照明装置は、上記の実施の形態に限定されないことはいうまでもない。
【0056】
以下に、変形例を説明するが、基本的に上記実施の形態に係るランプ10との相違点のみを説明し、ランプ10と同様の点ついては説明を省略する。また、ランプ10と同じ部材には同じ符号を付する。
【0057】
図6は、変形例1に係る金属蒸気放電ランプを説明するための断面図である。図6に示すように、口金400は、上記実施の形態に係る膨出部407(図2参照)が形成されていない構造であっても良い。その場合は、口金400の形状をシンプルにすることができる。
【0058】
図7は、変形例2に係る金属蒸気放電ランプを説明するための断面図である。図7に示すように、口金400の外管側端部405は、外管300の開口部301内に挿入されていなくても良い。その場合は、例えば、外管300の開口部301側の端面305を口金400の外管側端部405の端面408に当接させた状態で、外管300と口金400とが接着剤600で接着される構成としても良い。外管300の開口部301側の端面305を口金400の外管側端部405の端面408に当接させる構成とすれば、口金400に対する外管300のランプ軸X方向における位置決めが不要である。
【0059】
図8は、変形例3に係る金属蒸気放電ランプを説明するための断面図である。図8に示すように、口金410は、エジソンタイプに限定されず、例えばスワンタイプであっても良い。口金410は、有底筒状の本体部411と、当該本体部411に植設された一対の二段ピン412,413とを有する。この変形例では、導入線122,123がモリブデン製の外部リード線124,125のみで構成されており、導入線122,123の一端部は内管200の封止部201内において金属箔120,121と接合されている。一方、導入線122,123の他端部は、本体部411を貫通し、二段ピン412,413に挿通された状態で、かしめ部分414,415において二段ピン412,413と電気的および機械的に接続されている。
【0060】
さらに、この変形例では、口金410と外管300とが接着剤600ではなく、締合部材700によって接合されている。締合部材700は、例えば短筒状であって、外管300の開口部301に口金410の本体部411の外管側端部416を当接させた状態で、それら開口部301と外管側端部416とを覆うように外嵌されている。具体的には、外管300の開口部301は拡径しており、締合部材700の外管側縁部701は開口部301の外表面形状に沿って縮径しており、これにより外管300が締合部材700から外れないようになっている。一方、口金410の本体部411の外表面417には、ランプ軸Xを挟んで対向する位置にランプ軸Xに沿った溝部418が形成されており、締合部材700の口金側縁部702の溝部対応位置をかしめることによって、かしめ部分703と溝部418とが係合しており、口金410が締合部材700から外れないようになっている。
【0061】
なお、外管300と口金410とが締合部材700によって接合され、さらに接着剤600によっても接合された構成としても良い。
図9は、変形例4に係る金属蒸気放電ランプを説明するための断面図である。図9に示すように、外管300は、例えば、中間部303における、放電管100の本管部102に相当する領域の内径および外径が、それ以外の領域の内径および外径よりも大きくなっているような形状、すなわち中間部303の一部に膨出部306を有する中膨形状であっても良い。膨出部306を設けることにより放電管100からの熱による外管300の温度上昇を低減することができ、外管300の材料の歪点からの裕度ができて適合する照明器具20の選択の幅を広げることができる。さらに、放電管100の破損時の安全性も向上する。その場合、膨出部306における外管300の内周面304と内管200の外周面205との隙間は、最大で5[mm]になるよう設計されていることが好ましい。
【0062】
図10は、変形例5に係る金属蒸気放電ランプを説明するための断面図である。図10に示すように、外管300は、開口部301とは反対側の端部302a(上記実施の形態においては閉塞部302に相当する部分)が閉塞しておらず開口した構成であっても良い。その場合は、前記開口した端部302aに、例えば金属またはセラミック製の蓋部材800を取り付け、当該蓋部材によって端部302aの開口を塞いだ構造とすることが考えられる。蓋部材800は、例えばキャップ状とすることが考えられる。
【0063】
上記構成において、蓋部材800の強度を上記実施の形態に係る閉塞部302の強度よりも高くしておけば、放電管100の破裂により内管200の放電管近傍部分が割れて先端部202が吹き飛んだ際に蓋部材800が破損し難く、より破片が飛散し難い構成とすることができる。なお、蓋部材800の強度は、材料選択や寸法設計により調整可能である。
【0064】
図11は、変形例6に係る金属蒸気放電ランプを説明するための断面図である。図11に示すように、外管300と内管200との隙間に規制部材900を設けても良い。
規制部材900は、内管200の先端部202の外側であって外管300の閉塞部302の内側に配置されており、内管200を外囲する環状部901と、内管200の先端部202を跨ぐアーチ部902とを有する。
【0065】
環状部901は、例えば、長尺板状の部材を内管200の外径よりも小さい径の環状(例えば八角形の環状)に湾曲または屈曲させたものであって、環状部901内に内管200が挿入されると、内管200の管軸を中心とした径方向に環状部901が拡径する。
【0066】
例えば、規制部材900は、外管300を内管200に被せる前に予め外管300の内部に挿入される。そして、内管200に外管300を被せたときに、内管200の挿入に伴って環状部901が拡径して環状部901の外面が外管300に接触する。一方、環状部901の内面は内管200に接触しているため、規制部材900によって内管200および外管300の姿勢が矯正され、外管300の管軸と内管200の管軸とが一致する。
【0067】
なお、規制部材900は、必ずしも内管200と接触していなくても良く、外管300とのみ接触していても良い。すなわち、規制部材900と内管200との接点が全くない場合もありえる。例えば、内管200が口金400に対して一定以上傾いた場合にのみ規制部材900と内管200とが接触する構成とした場合は、内管200の傾きが許容の範囲内であるときは傾きを修正する必要がないため、規制部材900と内管200との接点がない場合もあり得る。
【0068】
また、規制部材900は必ずしも外管300と接触していなくても良く、内管200とのみ接触していても良い。すなわち、規制部材900と外管300との接点が全くない場合もありえる。例えば、規制部材900を先に内管200に取り付け、後から外管300を被せた場合に、内管200の傾きが許容の範囲内であれば規制部材900は外管300に接触しない。このように、内管200の傾きが許容の範囲外の場合のみ規制部材900と外管300とが接触し内管200の姿勢が修正される構成とした場合は、内管200の傾きが許容の範囲内であるときは傾きを修正する必要がないため、規制部材900と外管300との接点がない場合もあり得る。
【0069】
アーチ部902は、環状部901に延設された長尺板状の部材をアーチ状に湾曲または屈曲させたものであり、放電管100破裂時に外管300の破損を防止する機能を有する。放電管100が破裂すると、内管200の放電管近傍部分が割れて、内管200の先端部202が外管300の閉塞部302に向かって吹き飛ぶ場合があるが、アーチ部902によって先端部202の閉塞部302への衝突が阻止されるため、外管300の破損を防止することができる。
【0070】
なお、本発明に係る規制部材は、内管200(チップオフ部分204を含む)を支持し、かつ複数のツメにより外管300の内面304に当接する形態であっても良い。この構成では、たとえば外管300の内面に規制部材900のツメを当接させることにより、放電管100の破裂時に外管からの摩擦力及び応力を内管200の先端部202に伝え、内管200の先端部202が吹き飛んで外管300の閉塞部302に衝突する速度を減衰させることができる。また、規制部材は、チップオフ部分204のみを支持し、かつ複数のツメにより外管300の内面304に当接する形態であっても良い。
【0071】
図12は、変形例7に係る金属蒸気放電ランプを説明するための断面図である。本発明に係る規制部材のさらなる変形例として、図12に示すように、1本の金属線をコイル状に曲げて作製した規制部材910であっても良い。規制部材910は、内管200の外周面205に巻き付けられた第1コイル部911と、内部にチップオフ部分204が収まるように外管300の閉塞部302と内管200の先端部202との間に配置された第2コイル部912と、それら第1コイル部911および第2コイル部912を連結する連結部913からなる。第2コイル部912の一端は外管300の閉塞部302に接触し、他端は内管200の先端部202に接触しており、放電管100の破裂時は第2コイル712のばね作用によって、先端部202が閉塞部302に衝突する速度を減衰させることができるため、外管300の閉塞部302の破損を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、放電管、内管および外管を備えた、特に消費電力が100W以下の低ワットタイプでコンパクトな三重管構造の金属蒸気放電ランプに利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 照明装置
10 金属蒸気放電ランプ
20 反射鏡
100 放電管
200 内管
201 ピンチシール部
300 外管
301 口金側端部
400 口金
405 外管側端部
406 外周面
407 膨出部
600 鍔状部材
700 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側にピンチシール部を有し内部に放電管が配置された内管が、口金と外管とで囲まれた空間に収容され、前記内管のピンチシール部と前記外管とが接着剤で接合された金属蒸気放電ランプであって、
前記ピンチシール部には、前記外管の内周面形状に沿った外周形状を有する鍔状部材が外嵌されており、前記接着剤は、前記外管内における前記鍔状部材よりも前記口金側において前記鍔状部材によって堰き止められた状態で固化していることを特徴とする金属蒸気放電ランプ。
【請求項2】
前記接着剤は、前記鍔状部材との間に隙間が生じないように充填されていることを特徴とする請求項1記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項3】
前記口金の外管側端部は前記外管の口金側端部内に挿入されていることを特徴とする請求項1または2に記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項4】
前記口金の外周面には前記外管の口金側端部を当接させるための膨出部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項5】
前記接着剤によって前記外管と前記口金とが接合されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項6】
前記接着剤によって前記内管のピンチシール部と前記口金とが接合されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の金属蒸気放電ランプと、当該金属蒸気放電ランプから発せられた光を所望方向に反射させる反射鏡とを備えることを特徴とする照明装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−43588(P2012−43588A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182593(P2010−182593)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】