説明

金属表面の電解研磨作業に用いる電解液

【課題】金属表面の電解研磨作業において、電解液の洗浄不足による残存電解液を簡単に確認できるようにすることで、残存電解液成分による金属表面の変色問題を改善できる電解液を提供する。
【解決手段】金属表面の電解研磨作業に使用する電解液であって、蛍光顔料、蛍光染料または蛍光性を有した染料などの蛍光体を添加した電解液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属の表面加工方法の一つである電解研磨作業において、電解液の洗浄不足によって発生する金属の変色問題を解決することができる電解液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属の表面を磨く加工方法として電解研磨という加工方法があり、金属を電解液と接触させながら直流又は交流電圧を印加して加工するものであり、ステンレス鋼においても、電解研磨法によって溶接後の焼け取り部分を表面研磨している。
【0003】
なお、電解研磨法において、金属と電解液を接触させる方法として、電解液に被研磨材となる金属(ワーク)を浸漬させる浸漬式や、電極とワークの間に天然または合成の不織布を置いた簡易式がある。
【0004】
現在まで使用されてきたステンレス鋼の電解液としては、交流、直流、交直重畳にかかわらず、また、浸漬式、簡易式等の方式を問わず、硫酸、シュウ酸、酢酸、燐酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、酢酸、グルコン酸、グリコール酸、コハク酸、フッ化水素酸もしくはそれらのアンモニウム、カリウム、ナトリウム塩の一種もしくは二種以上の塩を配合したものなどがある(一例として、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−231413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電解研磨による加工処理後の金属の洗浄を完璧に行わない場合は、ワークの隙間などに残った電解液が時間と共に徐々に染み出し、後ほど予期せぬ変色が現われる現象が多々見られた。
【0007】
そのため、電解研磨処理後の電解液は完璧に洗浄する必要があるが、完璧に洗浄したと判断するための情報が乏しく作業者の経験に頼る部分が多かった。
【0008】
電解液が酸性タイプの場合は、pH指示薬などの使用により残存酸の検出も可能であるが、チェック後に再洗浄の必要があり手間がかかるので普及するには至っていない。
【0009】
以上のように、電解液の洗浄不足は後々の金属の変色等の不具合を生じるが、電解液の洗浄の確実性を確認する適切な方法がなかったため、電解処理後に予期せぬ変色が現われ作業者を困らせることがあった。
【0010】
そこで、この発明は、金属表面の電解研磨作業において、電解液の洗浄不足による残存電解液を原因とした変色に至る問題なくすため、誰でも簡単に残存電解液の存在を確認でき、変色問題を大幅に改善できるような電解液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、この発明は、金属表面の電解研磨作業に使用する電解液であって、蛍光顔料、蛍光染料または蛍光性を有した染料などの蛍光体を添加したことを特徴とする電解液である。
【0012】
電解研磨作業に用いる電解研磨液に、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光性を有した染料、その他の蛍光性を有する材料一般からなる、いわゆる蛍光体材料の一種または二種以上を添加することにより、電解液洗浄後のワークに暗室で長波長の紫外線であるブラックライトを照射すれば、電解液が洗浄不足の場合、金属表面の残存電解液成分が光るので、誰でも簡単に残存電解液成分を確認でき、残存電解液成分が確認されたら更に洗浄を行い再びブラックライトを照射して洗浄効果を確認できる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、この発明の電解液を用いることにより、電解研磨後の洗浄不足を簡単に確認することができるので、電解研磨後の洗浄不足による変色を著しく減少させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
5%の硫酸ナトリウム水溶液に蛍光顔料を添加し、5センチ角のSUS304を重ね、一部に隙間を作るよう溶接したワークを15Vの交流で電解研磨して不完全な洗浄を行った。
【0015】
その後、ワークを暗室に持ち込みブラックライトを照射すると、隙間部が光りだし残存電解液の存在が確認できた。
【0016】
電解液の存在が確認されたワークを再洗浄し、再びブラックライトを照射し、隙間部の残存電解液が無くなったことを確認し、電解液の完全な洗浄・除去を行うことができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面の電解研磨作業に使用する電解液であって、蛍光顔料、蛍光染料または蛍光性を有した染料などの蛍光体を添加したことを特徴とする電解液。

【公開番号】特開2012−21173(P2012−21173A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138762(P2010−138762)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(503017138)
【Fターム(参考)】